整骨院の開業に向けて事業計画書の作成が必要なものの、何をどう書けばよいのか、融資が通る事業計画書の作り方がわからないとお悩みではないでしょうか。
本記事では、整骨院の事業計画書を作成する3つの意味や、融資が通りやすい事業計画書の書き方のポイントを具体的な例文とともに解説します。
事業計画書の作成過程で開業目的を明確にし、計画的な経営を実現させましょう。
整骨院が事業計画書を作成する3つの意味
整骨院が事業計画書を作成するのには下記3つの意味があります。
- 開業目的の明確化
- 融資を受ける
- 計画的な経営ができる
それぞれの意味について解説します。
1.開業目的の明確化
事業計画書を作成する最も基本的な意味は、整骨院を開業する目的やビジョンを明確にすることです。
目的とは、たとえば「なぜこの地域で開業するのか」「どのような施術やサービスを提供するのか」といったものです。目的やビジョンが明確になれば、効率的かつ計画的に経営を進められます。
また、事業計画書には自身の経歴や創業の動機を記入する欄があり、これらを丁寧に記述すれば、自分がやりたいことや強みを再確認できます。自分の強みは競合優位性を作るうえで重要なポイントとなるため、しっかりと考えて記入しましょう。
2.融資を受ける
整骨院の開業には、物件の賃貸料や内装工事費、施術機器の購入費など、多くの初期投資が必要です。しかしほとんどの場合、自己資金だけでは足りず、金融機関からの融資を受けます。
金融機関から融資を受ける際、判断の基準となるのが事業計画書です。融資担当者は事業計画書を通じて、整骨院の収益性や返済能力を評価します。つまり、どれだけ優れた施術技術を持ち、開業のイメージが明確であっても、事業計画書の作成が不十分であれば、融資審査は通りません。
また、開業後も追加の設備投資や事業拡大のために再度融資を受ける場合があります。その際にも、更新された事業計画書が必要となるため、定期的な見直しや更新も重要です。
3.計画的な経営ができる
事業計画書は、計画的な経営を行うための基盤にもなります。
事業計画書には具体的な目標数値(月間患者数、売上高、利益率など)と、それを達成するための施策を記述します。この計画があれば、経営の進捗を確認しつつ、目標達成に向けて適切な調整を行えます。
たとえば「開業後6ヵ月で月間患者数100名、売上高100万円」という目標を設定していれば、実際の数字と比較して進捗を確認できます。
また、目標に届かない場合は「広告宣伝を強化する」「新たなサービスを導入する」などの対策を検討・実施できます。
【例文あり】整骨院の事業計画書の書き方とポイント
事業計画書の書き方とポイントを下記、実際の流れに沿って解説します。
- 会社概要
- 創業動機、ビジョン
- 事業内容
- 競合分析と競合優位性
- ターゲット市場
- マーケティング状況・結果
- ビジネスモデル
- 販売計画
- 仕入・経費計画
- 事業化計画
- 店舗計画
順番に見ていきましょう。
1.会社概要
会社概要では、経営者である自身の経歴や保有資格、実務経験など、整骨院経営の基盤となる情報を記載します。
【記入ポイント】
- 管理職や店長としての経験があれば詳細に記述
- 従業員数や雇用形態(正社員・アルバイト・家族従業員など)を明確に示す
- 経営者の職歴や事業実績は、整骨院で提供予定のサービスを視野に入れて整理・記述する
【記入例】
会社名:健康堂整骨院 代表者:山田太郎 資本金:100万円 従業員数:2名 所在地:東京都世田谷区用賀0-000 一年後の目標年間売上高:1,200万円 【経営者略歴】 1979年5月 東京都生まれ 2002年3月 国立理工大学工学部卒業 2002年4月 医療機器メーカー入社、低周波治療器開発担当 2009年3月 整骨院開業を志し退職 2009年4月 柔道整復師専門学校入学 2013年3月 柔道整復師国家資格取得 2013年4月 整骨院グループに入職 2016年7月 主任柔道整復師に昇進 2020年10月 独立開業に向け自己研鑽 2023年3月 累計施術患者5,000名以上の経験を積む |
2.創業動機、ビジョン
なぜ整骨院を開業しようと決意したのか、その目的や背景、そして目指す姿を記述します。融資担当者に共感してもらえるよう、客観的な視点で妥当性を説明することが重要です。
【記入ポイント】
- 整骨院を開業するきっかけについて触れつつ、客観的な視点で妥当性を説明
- 地域への想いやコンセプト、得意とする分野など、競合と差別化できる点を強調
- 長期的なビジョンも含めて記載し、事業の発展性を示す
【記入例】
創業動機 12年間の整骨院勤務を通じて、特にスポーツ障害や姿勢改善に関する専門技術を磨いてきました。近年、当地域ではオフィスワーカーの増加に伴い、長時間のデスクワークによる腰痛や肩こりに悩む方が増加しています。しかし、既存の整骨院では対症療法が中心であり、根本的な改善に取り組む施設が少ないと考えておりました。 目標とする資金も蓄積し、ターゲット層に適した駅前の物件も確保できたことから、このたび開業を決意いたしました。 ビジョン 「痛みのない快適な日常生活の実現」をコンセプトに、単に痛みを取り除くだけでなく、日常生活の改善指導まで含めた総合的なケアを提供いたします。5年以内に地域で最も信頼される整骨院となり、将来的には姿勢改善専門の教室も併設した複合施設へと発展させることを目標としています。 |
特に、企業のビジョンは採用活動にもつながる重要な項目であるため、将来を見据えて丁寧に記述しましょう。
見学だけのつもりで「ReCORE鍼灸接骨院」を訪れた山下さんは、企業のビジョンに共感し、その場で就職を決めたといいます。また実際に入社をしてみると、人を大切にしている企業の姿勢が見え、これこそが急速に成長している理由だと感じたそうです。
引用元:モアリジョブ|「ReCORE鍼灸接骨院 アトレ亀戸」院長/鍼灸師(はり師・きゅう師)山下雅史さん
3.事業内容
整骨院で提供するサービスの具体的な内容や特徴を記述します。保険診療と自費診療の内容、料金設定なども明確に記述しましょう。
【記入ポイント】
- 「体的な商品・サービスの概要」では競合と差別化を意識する
- 具体的な施術名や特徴、使用する器具、料金も含めて詳しく記述
- 保険診療と自費診療を分けて記載し、売上シェアを併記
【記入例】
(1)具体的な商品・サービスの概要
(2)消費者の課題
(3)消費者の課題解決策
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4.競合分析と競合優位性
開業予定地域における競合状況を分析し、自院の強みや差別化ポイントを明確にします。競合との比較を通じて、なぜ自院が選ばれるのかを説明するのが重要です。
【記入ポイント】
- 競合院の特徴や強み・弱みを客観的に分析
- 自院の差別化ポイントを具体的に記述
- 競合に対する優位性を数値や具体例で示して説得力を上げる
- 「競合状況」の調査対象は多く、詳細なほどよい
【記入例】
競合状況:開業予定地から半径2km圏内に5院の整骨院・接骨院が存在します。 A院:駅から徒歩10分、保険診療中心(営業時間9:00-18:00) B院:駅前立地、保険・自費混合、姿勢矯正に強み(営業時間9:00-19:00) C院:住宅地内、高齢者向け訪問施術も実施(営業時間8:30-17:30) D院:商業施設内、美容鍼に特化、女性向け(営業時間10:00-21:00) E院:スポーツ整体中心、学生アスリート層に強み(営業時間13:00-22:00) 当院の競合優位性
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「株式会社マーサメディカル」の鈴木彩夏さんは、手技療法の領域で差別化を図り、顧客満足度を向上させたと語っています。
手技を用いて治療を行う「手技療法」を大切にしています。とくにトリガーポイントマッサージを行っていることが治療の大きな特徴です。トリガーポイントとは体の深層部にある患者様が自覚していない痛みやコリの黒幕で、そこに基本的には手技でアプローチすることで痛みの原因を改善することが可能になります。
また短い時間での効果提供にもこだわっており、忙しい患者様たちに満足をいただけるように治療技術を高めています。
引用元:モアリジョブ|「株式会社マーサメディカル」求人担当 鈴木彩夏さん
5.ターゲット市場
整骨院のメインターゲットとなる患者層を明確に定義します。漠然とした「近隣住民」ではなく、具体的な属性やニーズを記述しましょう。
【記入ポイント】
- 誰が読んでも具体的にイメージできるような書き方を意識
- 年齢層、性別、職業、生活習慣、悩みなど、具体的な属性で表現
- ターゲット設定の根拠も添えて説得力を上げる
【記入例】
(1)市場規模 株式会社矢野経済研究所の調査では、国内の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場の市場規模は9,850億円と推計しています。 (2)具体的なターゲット市場 居住人口:約34万6,279人(新宿区の統計令和5年度版より) 昼間人口:約338万1,000人(東京都昼間人口の予測調査より) 厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によると、人口千人に対して91.2人が腰痛を訴えており、肩こり、頻尿などを抑えて最も多いです。この数値を昼間人口に適用すると、潜在的な需要層は約30万8,347人と推計されます。 J-Net21の調査では、成人の利用率は「年1回以上」が約40%と報告されています。この数値に基づくと、定期的な利用者層は約12万3,397人と見込まれます。 |
6.マーケティング状況・結果
開業に向けたマーケティング戦略や、すでに実施している施策、またはその結果を記述します。顧客獲得のための具体的な計画を示すのが重要です。
【記入ポイント】
- 認知拡大のための具体的な広告宣伝計画を記載
- Webサイトやホームページ、SNSなどのデジタルマーケティングも含める
- 予算配分や期待される効果も具体的に示す
【記入例】
J-Net21の調査をもとにターゲット層を定義
(1)サービスメニュー最適化
(2) 集客戦略
(3)リピート促進策
これらの施策により、高い潜在需要層の獲得と、リピート率向上による収益安定化を目指します。 |
7.ビジネスモデル
整骨院の収益構造を明確に示し、どのように安定した経営を実現するかを説明します。保険診療と自費診療のバランスや、リピート率向上の施策なども記述しましょう。
【記入ポイント】
- 全体像を一目で分かるように図表化する
- 収益の柱となるサービスと、その割合を明確に示す
- 初診から再診へのフロー、自費診療への誘導方法を記述
- 長期的な利益確保のための戦略を記述
【記入例】
8.販売計画
整骨院の売上予測を具体的な数値で示します。客単価、来客数、営業日数などから算出した売上高を根拠とともに記載しましょう。
【記入ポイント】
- 客単価×1日あたりの来客人数×営業日数で売上高を算出
- 保険診療と自費診療それぞれに分けて記述
- 開業初期と安定期を意識して段階的に記述
【記入例】
販売先名 |
所在地 |
回収条件 |
販売単価(円) |
販売数量(人) |
売上高(円) |
粗利益 |
一般顧客(自費診療)ビジネスパーソン |
新宿区周辺 |
100%当日現金回収 |
1年目:6,000 2年目:6,300 3年目:6,500 |
1年目:800 2年目:1,100 3年目:1,400 |
1年目:4,800,0002年目:6,930,0003年目:9,100,000 |
95% |
一般顧客(自費診療)20-30代女性 |
新宿区周辺 |
100%当日現金回収 |
1年目:5,500 2年目:5,800 3年目:6,000 |
1年目:650 2年目:950 3年目:1,200 |
1年目:3,575,0002年目:5,510,0003年目:7,200,000 |
95% |
スポーツ選手(自費診療 |
新宿区周辺(および提携先) |
100%当日現金回収 |
1年目:7,500 2年目:8,000 3年目:8,000 |
1年目:400 2年目:550 3年目:700 |
1年目:3,000,0002年目:4,400,0003年目:5,600,000 |
95% |
一般顧客(保険診療 |
新宿区周辺 |
30%当日現金回収(70%翌々月末入金) |
1年目:1,500 2年目:1,500 3年目:1,500 |
1年目:2,4002年目:3,3003年目:4,000 |
1年目:3,600,0002年目:4,950,0003年目:6,000,000 |
85% |
合計 |
- |
- |
- |
- |
1年目:14,975,0002年目:21,790,0003年目:27,900,000 |
- |
9.仕入・経費計画
整骨院の開業及び運営に必要となる費用を項目ごとに具体的に記述します。この際、仕入先名や支払い条件なども明確に記述しましょう。
【記入ポイント】
- 具体的な支払金額を示す
- 項目ごとに可能な限り詳しく記述
- 自己資金額や親類・知人からの借入金に関する情報があれば記述
【記入例】
経費項目 |
仕入先名 |
支払い条件 |
支払金額(円) |
治療用消耗品 |
メディカルサプライ株式会社 |
20日締め翌月15日払 |
1年目:120,000 2年目:150,000 3年目:200,000 |
水道光熱費 |
- |
月末締め翌月末払 |
1年目:180,000 2年目:202,000 3年目:205,000 |
人件費・代表 |
- |
月末払い |
1年目:400,000 2年目:450,000 3年目:500,000 |
人件費・スタッフ |
- |
月末払い |
1年目:200,000 2年目:220,000 3年目:300,000 |
リース料 |
医療機器リース株式会社 |
月末締め翌月末払い |
1年目:100,000 2年目:150,000 3年目:200,000 |
家賃・共益費 |
- |
前月末払い |
1年目:200,000 2年目:200,000 3年目:200,000 |
その他経費 |
- |
都度/月末払い |
1年目:100,000 2年目:150,000 3年目:200,000 |
合計 |
- |
- |
1年目:1,300,000円 2年目:1,522,000円 3年目:1,805,000円 |
10.事業化計画
開業する整骨院がどのように利益を上げていくのか、事業の見通しを具体的に記述します。整骨院の経営が軌道に乗るまでの具体的なステップがイメージできるよう意識しましょう。
【記入ポイント】
- 採用予定がある場合はその旨を記述
- 利益見込みは根拠のある数字と併記
- 借入金の返済計画に大きく関わる項目であると意識する
【記入例】
11.店舗計画
整骨院の立地選定理由や、店舗の内装・設備計画について具体的に記載します。ターゲット層へのアクセスや競合との差別化を考慮した計画を示しましょう。
【記入ポイント】
- 立地選定の理由を明確に示す
- 患者満足度を高める工夫を記述
- 内装や設備の詳細、レイアウト計画も具体的に記載
【記入例】
オープン時期
場所
建物
|
【店内レイアウト】
【整骨院向け】融資が通りやすい事業計画書を作成する6つのポイント
融資が通りやすい事業計画書を作成する際のポイントは次の通りです。
- コンセプトの明確化
- 立地・商圏・競合のリサーチ
- 実績やスキルのアピール
- 損益分岐点の想定
- データに基づいた客観的な売上予測
- 従業員計画を綿密に練る
以下で詳しく見ていきましょう。
コンセプトの明確化
整骨院業界は、個人事業主から大手まで多くの事業者が参入する競争の激しい市場です。このような環境で顧客に選ばれる整骨院になるためには、明確なコンセプトをもたなければなりません。
コンセプトとは、あなたの整骨院が「どのような価値を提供するのか」「どのような整骨院を目指すのか」を表現したものです。たとえば、「スポーツ障害に特化した整骨院」「産後ケアに強い整骨院」「最新機器を用いて根本改善を目指す整骨院」といった特色をもたせることで差別化できます。
具体的に、事業計画書にコンセプトを記載する際のポイントは以下の通りです。
- 誰が読んでも理解できる明確な表現で、自院の独自性を伝える
- 抽象的な表現ではなく、具体的なサービス内容や施術方法を記載
- 施術内容、内装、価格設定などすべての要素に一貫性をもたせる
コンセプトが明確でないと、あなたの整骨院の特色が見込み客や融資担当者に伝わらず「ありふれた整骨院」として認識されてしまう可能性があります。そのため、まずはターゲットとなる患者層のニーズを分析し、そこにマッチしたコンセプトを設定しましょう。
立地・商圏・競合のリサーチ
整骨院は店舗ビジネスであるため、立地選定が成功のカギを握ります。そのため、事業計画書には、選定した立地の根拠と、その周辺の商圏分析、競合調査の結果を詳細に記述しましょう。
具体的に、以下の情報を含めると説得力が増します。
- 人口動態
年齢層、性別、世帯構成などの詳細
- 昼間人口と夜間人口
オフィス街なら昼間人口、住宅街なら夜間人口を参照
- 所得水準
地域の平均所得は自費診療の需要予測に役立つ
- 交通アクセス
徒歩、車、公共交通機関からのアクセス性
たとえば、「開業予定地から半径1km圏内の人口は約15,000人、そのうち30-50代のオフィスワーカーが約40%を占め、慢性的な肩こり・腰痛の潜在患者層が多い」といった具体的な分析結果を記載するとよいです。
続いて競合調査は、自院のポジショニングや差別化ポイントを決めるうえで重要になります。具体的に、以下を含めると説得力が上がります。
- 競合院の数と種類
整骨院はもちろん接骨院、整体院、マッサージ店なども含む
- 各競合院の特徴
コンセプト、ターゲット層、施術内容、価格帯、営業時間などを調査
- 強み・弱み分析
各競合院が提供しているサービスの強みと弱み
- 差別化ポイント
各競合と比較して自院が提供できる独自の価値
たとえば「半径500m以内に3軒の整骨院があるが、いずれも保険診療中心で、産後ケアやスポーツ障害に特化した施術を提供している院はない」といった分析結果は、自院の差別化ポイントを明確に示せます。
実績やスキルのアピール
整骨院は人の健康や身体に関わるサービスを提供するため、経営者の実績やスキル、資格は顧客や融資元からの信頼獲得において非常に重要な要素です。
項目ごとに紹介すべき項目を紹介します。
【職歴・経験】
- 他の整骨院での勤務経験(特に役職や責任者としての経験)
- 扱った患者数や得意とした症状・施術法
- 大手院や有名院での勤務歴
【資格・専門知識】
- 柔道整復師、はり師、きゅう師などの国家資格
- 機能解剖学、スポーツ医学などの専門分野の知識
- 民間資格や認定資格(各種療法の認定資格など)
【研修・セミナー実績】
- 国内外の専門研修への参加歴
- 最新技術や施術法の習得状況
- 継続的な学習姿勢を示す実績
たとえば「柔道整復師の資格取得後、都内大手整骨院チェーンで5年間勤務し、月間平均300名の患者施術を担当。特にスポーツ障害の施術に特化し、プロスポーツ選手のリハビリも手がけた経験があります。」といった具体的な記載が効果的です。
損益分岐点の想定
事業計画書に損益分岐点の詳細な分析を含めることで、融資担当者に対して「経営感覚をもった院長」という好印象を与えられます。
たとえば、損益分岐点の売上高から、1日あたりに必要な患者数を算出し、事業計画書に反映するなどの方法が考えられます。具体例を見てみましょう。
【前提】
- 保険診療の患者単価が平均1,000円
- 自費診療の患者単価が平均6,000円
- 保険と自費の比率が7:3
- 損益分岐点の売上高が月87.5万円
- 月間22日営業
【前提を加味した平均患者単価】
(1,000円×0.7) + (6,000円×0.3) = 2,500円
【月間必要患者数】
87.5万円 ÷ 2,500円 = 350人
【1日あたり必要患者数】
350人 ÷ 22日 ≒ 16人
この計算により、損益分岐点を超えるために1日あたり最低16人の患者が必要だということが分かります。この数字をもとに、集客計画や施術スケジュールを立て、事業計画書に反映しましょう。
データに基づいた客観的な売上予測
事業計画書の中で最も重要な項目の一つが売上予測です。特に融資審査においては、返済能力の判断材料となるため、根拠のある客観的な売上予測が重要視されます。そのため、感覚的な「こんなものだろう」という予測ではなく、データに基づいた説得力のある数字を示しましょう。
まず売上予測は、段階的に予測します。具体的に、以下のような段階に分けて予測するとよいでしょう。
- 開業期(1〜3ヶ月)
- 成長期(4〜6ヶ月)
- 安定期(7〜12ヶ月)
- 拡大期(13ヶ月〜)
【売上予測の基本計算式】
月間売上 = 患者数 × 患者単価 × 来院頻度
たとえば、開業3ヵ月後の売上予測は次のように立てます。
保険診療患者:50人 × 1,000円 × 3回/月 = 15万円
自費診療患者:30人 × 6,000円 × 2回/月 = 36万円
月間売上予測:51万円
また、売上予測の説得力を上げるために、以下のような根拠を付与するとよいです。
【商圏分析に基づく潜在患者数】
「商圏内の30-50代の働き盛り世代は約8,000人。厚生労働省の調査によると、このうち約30%が腰痛や肩こりに悩んでいるとされ、潜在的な患者数は約2,400人と推定される」
【競合状況を踏まえた市場シェア】
「商圏内に類似コンセプトの整骨院は2軒あり、それぞれ月間約200人の患者を抱えていると推測。新規参入ではあるが、差別化したサービス提供により、初年度は市場の約5%(120人/月)の獲得を目指す」
【業界データを活用した平均値の参照】
「日本柔道整復師会の調査によると、開業2年目の整骨院の平均月間患者数は約150人、平均再来院率は70%とされている。当院では差別化により再来院率80%を目指す」
このように、データに基づいた客観的な売上予測を行えば、融資審査を有利に進められます。
従業員計画を綿密に練る
整骨院の事業成功には優秀なスタッフの確保が不可欠です。そのため、事業計画書には具体的な人員計画を盛り込み、運営体制と人件費予測を明確に示しましょう。
また、JAFCOが起業家に対して行った調査によると「採用に関する失敗」が最も多いという結果が出ています。よって、事業計画書における従業員計画の項目は、書類としてだけではなく、経営を続けるうえでも重要といえます。
この従業員計画を作成するポイントは、開業時から患者数増加に合わせて段階的に作成し、人件費を最適化することです。具体例を見てみましょう。
人員状況 |
|
開業時 |
院長+受付1名 |
3ヵ月後 |
院長+受付2名 |
6ヵ月後 |
院長+受付2名+施術アシスタント |
1年後 |
院長+受付2名+施術アシスタント+柔道整復師 |
なお、採用コストは、業界特化型の求人サイトを利用することで、ターゲットを絞った採用活動が可能になり、ミスマッチ防止や採用コスト最適化につながります。
たとえば、美容ヘルスケア業界に特化したリジョブを利用すれば、整骨院の開業時からの人材確保をサポートし、事業計画の実現可能性を高めることが可能です。
採用の成功事例や売上を最大化できる採用ノウハウについては、以下の無料でダウンロードできる資料で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
本記事では整骨院の事業計画書作成について解説しました。事業計画書を作成する際の重要なポイントは以下の3つです。
- 数値情報を記載する際は根拠を併記する
- 明確なコンセプト設定と競合との差別化が重要
- 立地と競合のリサーチは綿密に行う
事業計画書は整骨院経営の羅針盤となる重要な要素です。本記事を参考に説得力のある事業計画書を作成し、スムーズで計画的な整骨院開業を実現させましょう。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部