離職率とは?全体の動向や、離職率が高い企業の特徴と対策も解説
離職率とは、働きやすい職場を作れているのかを知るためにも必要な指標のひとつです。経営者は離職率をはじめとしたあらゆる数値を把握し、分析・改善を行わなければなりません。
しかし、いざ離職率を見ると言っても見方や計算方法、似た言葉との違いが分からない経営者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、離職率についての知識、動向から離職率の高い職場の特徴まで解説します。離職率を下げるための行動までお伝えしますので、離職率が気になっている方はぜひ参考にしてください。
離職率とは
離職率とひと言で言っても、具体的な定義や計算方法を説明できない経営者も多いかもしれません。離職率は法律で規定があるわけではないので、各企業や店舗ごとに算出する必要があります。
ここでは、離職率の定義と計算方法、似た言葉である定着率との違いについて詳しく解説します。
離職率の定義とは?
離職率とは、一定の期間で退職した従業員数の割合のことです。「一定の期間」としているのには理由があり、離職率を求める期間に定めはありません。
厚生労働省が調査する際に定めている期間はあるものの、それがどの企業にも当てはまる正しい期間ではないのです。
一般的には1年の退職者数で求めるケースが多いですが、企業の状況によって期間を調整し、最適なデータとして算出します。
離職率が高いのは悪い職場と捉える必要はなく、離職率が上がっている原因が見えているなら問題はありません。たとえば、定年退職者が多かったり、ベンチャー企業でステップアップのための離職が多かったりなどです。
離職率を比較するときは、なるべく似た状況と同期間で比べると良いでしょう。同期間で悪くなっている場合、職場改善の必要がないかを検討する余地があると言えます。
離職率の計算方法
離職率の計算方法は、正しい定義があるわけではありません。今回は、厚生労働省の雇用動向調査結果で採用している離職率の計算方法からある程度引用して計算してみましょう。
調査の概要では該当の調査は1年間の期間で行っており、1月〜12月の期間を対象に以下の計算式で導いているとの記載があります。
これを元にして、一般的な会社での離職率を計算するときは、以下の式が多く用いられます。
離職率=離職者数÷(対象期間の)在職者数×100 |
期間は1年か3年、対象範囲は新卒もしくは全従業員とすることが一般的です。
たとえば、期間は3年間、全従業員が100名いる企業で10人の退職者が出ている場合の離職率の求め方は以下の通りです。
離職者数:10人 ÷ 全従業員数:100人×100=0.1 0.1×100=10 →離職率は10% |
厚生労働省の算出方法では1月時点ですが、一般的な企業では期初〜期末としており、4月始まりであれば4月〜翌年3月の期間で算出します。また、中途入社は除外することが多いです。
定着率とは?離職率との違い
離職率と似た言葉で、定着率があります。定着率とは、入社後から一定した期間働き続けている従業員数の割合のことです。離職率が一定期間で退職した人数に対し、定着率はその逆と言えるでしょう。
定着率も離職率と同じく、求め方に決まった規定はありません。ただ、定着率を計算により求めることは可能です。定着率を求めるには、入社時の従業員数と現在の在職者数で算出できます。
求めるときには、以下の数式で求めましょう。
定着率=現在の従業員数÷入社時の従業員数×100 |
たとえば、期間を3年、入社時に10名、現在の従業員数が7名の定着率を求める場合、以下のように計算します。
現在の従業員数:7名÷入社時の従業員数:10名×100=0.7 0.7×100=70 →定着率は70% |
定着率を上げることで人事採用の時間やコストを削減できるだけでなく、質の良いスタッフの育成にもつながります。経営者にとってはどちらも重要な指標です。
離職率を下げるのはもちろんですが、定着率を上げることも考えて経営していく必要があるでしょう。
日本における離職率の現状
日本全体の平均を知らなければ、自社が良いか悪いかを分析できません。平均と比較してはじめて対策を考えるべき事態に陥っているのか、数値的には高いものの平均的な数値で焦る必要がないのかを判断できます。
ここからは、厚生労働省の行っている調査結果を元に、日本の離職率の現状について分析、解説します。
雇用動向調査から読み取れる全体の傾向
離職率や入職者数の数値は、厚生労働省の雇用動向調査によって調査されています。雇用動向調査の対象は、全国の事業所のうち、5人以上の労働者を雇用する事業所を対象に無作為に抽出したものです。
最新である令和5年度上半期の調査では対象となる離職者数は44,049人でした。
2023年の上半期は離職率が8.7%、入職率は9.7%となっています。前年と比較してみると、離職率に変動はありません。
それでは、これまでの動向を追ってみるとどうでしょうか。2009年から23年までの離職率と入職率の推移は以下の通りです。
2019年には一時的に高くなっていたものの、ここ数年を比較すると離職率に大きな変動はないようです。
次に、産業別の入職率と離職率を見てみましょう。
入職率は、採用者数と言い換えられます。生活関連サービス業や宿泊・飲食はどちらも入職率、離職率ともに高い数値です。採用者は多いものの離職率も高いため、人手不足は埋められていないと考えられます。
新卒者の離職率の傾向
採用後に人材が定着できているかは、新卒者の離職率に限定すると見えてきます。同じく厚生労働省の調査した結果によると、令和5年10月発表の3年以内の離職率は高卒で37.0%、大卒で32.3%となりました。
いずれも3割を超えており、なかでも宿泊業、飲食サービス業では高卒62.6%、大卒は51.4%と半数を超える人数が退職しています。業種別分類の新卒離職率ワースト5は以下の通りです。
次いで美容業も含まれている生活関連サービス業、娯楽業は高卒57.0%、大卒で48.0%とこちらも半数を超える勢いです。
早期退職した理由は、リクルートのアンケート結果によると、「労働環境・条件がよくない」が最多の25%を占めており、次に「給与水準に満足できない」が18.4%で続きます。
同調査では、退職していなくても会社を辞めたいと思ったことがある人も集計しており、58.8%と高い割合であることも無視はできません。
なぜ近年、離職率に注目が集まるのか
帝国データバンクの調査した人手不足企業の推移では、2024年は最高水準だった2018年の53.9%とほぼ同水準といえる51.0%も正社員が不足していると回答しています。
2022年から人手不足企業の推移は横ばい状態であり、業種別に見てもいずれも50%近くの割合であり、ほぼ全業種が人手不足と回答している状況です。
このように人手不足企業が増えている昨今では、離職率に敏感になっている経営者が増加するのは当然の傾向と言えます。
離職率は採用側からすれば、同業他社と比較することで自社が正常な運営ができているのかを確認できる指標です。安定した経営をするには、異常値や把握できない数値がないかを常に確認する必要があります。
また、求職者からすると離職率が高い職場を把握できると早期退職や入職後のミスマッチを避けられる可能性があります。入社後に確認すれば、退職へと踏み出す後押しになる場合もあるでしょう。
離職率が高い企業の特徴
離職率が高い企業には、決まった特徴があります。もしも退職者が相次いでいる場合、今から説明する企業の特徴に該当するかもしれません。
「自社では絶対に問題はない」と思わず、まずはどのような状況かを改めてチェックしてみてください。
長時間労働や残業が慢性化している
長時間労働や、残業の慢性化は労働者にとって高いストレスの原因です。昔は残業しても仕事をこなすことが美徳とされたときもありましたが、現代では良いと思っている人はほぼいないと言えるでしょう。
リクルートは、「仕事とプライベートの理想的バランス」について新人・若手と上司・育成担当者に分けてアンケートを取っています。アンケートは以下の結果となりました。
新人・若手のほうが仕事とプライベートのバランスに、プライベートを多く求めていることが分かります。さらに、同アンケートで新卒3年以内を対象に「仕事で労力をかけて得たいもの」についても集計をしています。
1番多いのは「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させる」という回答です。
以上のアンケート結果から、現代の労働意欲はプライベートの充実が大きな比重を占めており、長時間労働や残業によってプライベートがなくなれば離職意欲が高まる可能性は高いと言えるでしょう。
人事評価制度が整っていない
HRテクノロジー総研の行った人事評価についてのアンケートでは、人事評価に満足している人と満足していない人へそれぞれ、職場の満足度について質問しています。
アンケート結果では、人事評価に納得している人の職場満足は85.1%であるのに対し、納得感がない人は17.4%しか職場に満足していませんでした。
評価制度があったとしても、実際に勤める従業員が満足していなくては意味がありません。アデコグループの行った調査では、人事評価制度の見直しの必要性を77.6%の人が「必要がある」と回答しています。
しかし、評価する側が同じく問題意識を持っているかというと、気付いていないケースもあるかもしれません。
同アンケートでは、評価者側へ自分が適切な評価ができているかを質問しています。肯定的な回答をしたのは77.8%で、約8割に近い人が適切な評価と考えているようです。
ただ、多くを占めているのは「どちらかというとそう思う」と、はっきりと自信のない回答となっており、評価側も完璧な制度を整える難しさを実感しているかもしれませんね。
対策としては、経営者側から勇気を持って現場のスタッフへアンケートを取るのもひとつの解決手段です。記名では正直に回答しにくいため、匿名で行いましょう。
また、評価基準に数値をなるべく入れたり、実際の評価者の意見を多く取り入れたりなどしていくと、評価への不満はなくなる可能性が高くなります。
社員のモチベーションが低下している
社員のモチベーションが下がると、職場にいる必要性が見いだせなくなり、離職につながります。
モチベーション低下の原因はさまざまです。Biz Hitsがモチベーションが上がらない原因と対処法をアンケート調査しており、最も回答を集めたのは「仕事内容に興味がもてないとき」となっています。
組織の下に行くほど、その業務をしている意義が分からずに仕事をしているケースがあります。特に若手社員は、会社の方向性や力を入れることについての重要な会議など、会社内のすり合わせの場に出席しないことが多くなりがちです。
意味も分からない状態で同じ作業の繰り返しや、やりたくない業務をするとモチベーションは当然下がってしまいます。
どうしても行わなければならない場合にも、なぜ今その仕事は必要なのか、なぜその人に任せているのかといった動機付けをしてあげると良いでしょう。
人材の育成制度が整っていない
新人受け入れや初期研修、メンター制度など入社後の育成環境が整っていないのも離職率が高くなる原因のひとつです。
HR総研のアンケートでは、若手の直近離職率別に新入社員のオンボーディング施策の実施状況を質問したところ、以下の結果となりました。
離職率が低い会社では、入社直後の導入研修や上司との対面面談、フォロー研修など、入社後のフォローを手厚くしている印象です。それでは、全ての企業が満遍なくできているかというと、規模が小さくなるとフォローが薄れている傾向にあるとの調査結果も出ています。
上は、同アンケートで企業規模別に分けた実施しているオンボーディング施策の状況です。
ベンチャー企業や中小企業の中心である300名以下の規模では、導入研修や定期面談まではできていても、定期的なフォロー研修、キャリアデザインの設計が実施できていないことが分かります。
もちろん規模によって必要な施策は異なりますが、長期で職場にいればどのように成長していけるのか、将来のビジョンが語れているかなど、現代の若手社員が求める方向性のフォローについて見直してみると良いかもしれません。
休暇が取りにくい
プライベートの充実を重視する傾向があるなかで、長時間労働と同じく休暇が取りにくいことも離職率を上げる大きな原因です。
特に慢性的な人手不足、もしくは人員にゆとりがない会社にありがちな状況として有給の取得ができないことが挙げられます。できるとしても罪悪感があったり、休んだことを責められたりするような環境も同様です。
事実、労務SEARCHの行った有給休暇のアンケートでは、取得しにくい原因の1位と2位に挙げられています。
労務のアナウンスが不足しており、有給休暇の取得が義務付けられているのを知らない可能性もあります。2019年4月より、年10日以上の有給休暇が付与されている場合、年5日の取得は義務となりました。取得できなければ労働基準法違反です。
厚生労働省の調査結果では、有給休暇は取得率が62.1%と労務改善が進み改善してきてはいます。とはいえ、十分に周知できていないのであれば、アナウンスや取得促進を行うことで従業員満足度が上がる可能性は高いでしょう。
ハラスメントが横行し、企業として対応していない
昨今ではさまざまなハラスメント問題があります。特に問題視されているのは、厚生労働省のハラスメント対策サイトによると以下5つです。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- 妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(マタハラ)
- カスタマーハラスメント
- 就活ハラスメント
5つのうちで経営者に注意が必要なのは、セクハラと妊娠・出産に関わるハラスメント、いわゆるマタハラでしょう。この2つは、加害者側が気付かずに行っている可能性が高いからです。
セクハラには「男らしい」「女らしくない」のような性別役割の分担意識に基づく発言も含まれています。
また、妊娠・出産に伴う休業申請関連の妨害や、それらを理由にした不利益がある扱い(減給や降格など)は禁止されており、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の違反行為です。
企業の対策窓口があるケースもありますが、中小規模の企業や店舗では上司や上長の裁量に任されています。軽く見ずに誠実に対応しなければ、離職率は上がってしまうでしょう。
働き方の柔軟性がない
離職率が高い企業は、リモートワークの導入や働き方の多様化に対応できていないのかもしれません。
リモートワークの導入は、各社が進める動きがあります。新型コロナの流行をきっかけに導入が進み、新型コロナの流行が落ちついてもリモートワークの働き方を続けたい意向は高い傾向です。
2023年5月にAZWAYの行ったリモートワーク意向についてのアンケートでは、7割近い人が「企業はリモートワークを続けるべき」と回答しています。
また、柔軟性には評価制度の多様化も含まれる可能性があります。
美容業の平均離職は2年目で80%と言われているなか、多様性を重視し、それぞれに合わせた評価制度を導入したことで離職率を5~10%を維持している木下さんは、評価制度について以下のようにお話をされています。
ネイル業界は、なぜこんなにも個人サロンという形での独立が多いのか?と問いを立てた時に、現存の人事評価制度に問題があることに気がつきました。
キャリアプランが「管理職への昇進」一辺倒なんです。プレイヤーがより高い収入を得るには、管理職になるしかない。でも本来は、プレイヤーとしてその腕を磨き続けることも、リーダーになることと変わらず尊いはず。
リーダーになることや、数字管理を苦手とする人もいて当然です。そういう人達も、頑張った分だけ高い収入になるような人事評価システムを構築しています。
引用:リジョブ/「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」木下 さとこさん
人間関係が悪い
「新卒者の離職率の傾向」や、「社員のモチベーションが低下している」の見出しで紹介した離職率が上がる職場のアンケート結果では、どちらも上位に人間関係や職場の雰囲気の悪さが挙げられています。
望んだ仕事に付いたとしても、人間関係に恵まれなければモチベーションが上がらないということです。では、具体的に「誰」との人間関係が悪いことが大きなストレスになるのかを見てみましょう。
エン転職のアンケートで、「誰との人間関係に悩んでいるのか」という質問への回答が以下の通りです。
上司が圧倒的に多く、半数以上を占めています。上司が威圧的だったり、話を聞く姿勢がなかったりといった問題は、一番関わる時間が多くなるからこそ実感しやすいのでしょう。
上司との相性が悪ければ、業務全体に支障をきたします。話しかけにくい結果、報連相自体が滞り、対処が遅れて大問題に発展するかもしれません。
しかし、こういった上司や身近な人とのトラブルは、日常会話や面談からしか見えないものです。上司に任せきりにせず、経営者からも社員に語りかけ、そういった兆候がないかを注意する必要があります。
離職率を下げるためにできること
離職率を下げるためには、職場の問題を経営者が認識しなければなりません。認識するには、退職理由のヒアリングやコミュニケーションの活性化が有効です。
また、育成・研修制度といった受け入れ態勢の見直しも行いましょう。ヒアリングを実際に行うのは上長かもしれませんが、環境を整えるのは経営者の仕事と言えます。
ここからは、離職率を下げるためにできる具体的施策について解説します。
退職する理由をヒアリングする
退職についての一般的な話を聞いても、自社に当てはまるのかが分からないこともあります。しかし、実際に退職する人は何かしらの理由があって退職を選択した人です。つまり、自社の問題を具体的に理解している可能性は高いと言えるでしょう。
最初に退職を申告した際には会社の不満ではなく、家庭の事情や次へのステップアップのため、と説明しているかもしれません。では、本音を話して退職したかというとどうでしょうか。
全国退職者支援会の実施したアンケートでは、8割近くも本音を伝えていないという回答結果でした。伝えない理由はさまざまですが、「後腐れなく辞めたい」のほかに「通じる相手ではないから」が上位にランクインしています。
この結果から推測できるのは、上司や人間関係に不満を感じた場合、上司当人ではなく経営者や人事担当者がヒアリングすることで本音を話してくれる可能性があります。
退職者へ「自社の改善に役立てたい」のような本音を伝えれば、回答から会社の抱えている本当の課題が見えるかもしれません。
コミュニケーションを活性化させる
仕事で悩みを抱えたとき、相談できる環境を整えることは大切です。社内でのコミュニケーションが活発になれば、1人で悩むこともなくなり、離職率低下につながるでしょう。
コミュニケーションの活性化には、個別での面談も大事ですが全体での意見交換の場を作ることも効果的と言えます。ポイントは、会議のような堅苦しい場にはしないことです。あわせて上長は発言を控えることで、従業員からの意見を引き出しやすくなります。
これは会社全体のルールなのですが、店長の発言率10%以下を目標にしています。それまでのミーティングでは店長が司会をしていたのですが、スタッフが順番で担当するようになったんです。
(中略)
――ミーティングのやり方を変えたことで、何か変化はありましたか?
スタッフがとてもイキイキするようになったと思います。最初はみんな恐る恐るという感じだったのですが、だんだんと自信を持って率直な意見を言えるようになりました。私がすべてを決めて決定事項として伝えるより、自分で考えることや意見が採用される楽しさ、それがお客さまに喜んでもらえることが、やりがいになっていると感じます。
引用:モアリジョブ/「エサージュ 渋谷店」店長 須永茜さん
須永さんは、記事の中でスタッフ同士の活発な意見交換を通じ、その人の考えを知ることや信頼関係の向上にもつながったと語っています。
自分の意見が取り入れてもらえる喜びから、自主的に考えて動くようにもなり、意欲的に仕事に取り組めるようになった好事例です。
多様性がある働き方ができる環境を整備する
多様性のある働き方とは、リモートワークなどへの対応だけではありません。自由な勤務時間や就業日数なども、男女平等に働く今の時代だからこそ求められます。
女性の社会進出が進んでいる昨今、長く働きたいと考えている女性がこれからの働き方に臨んでいることについて株式会社スタジオテイルがアンケートを実施した結果、「無理のないペースの労働」や「仕事と家庭のバランスの両立」に回答が集まりました。
家事・育児や介護がある人にとって週5日のフルタイムは難しいと感じる人も多いかもしれません。
少ない日数・短時間でも働ける職場づくり、フレックスタイム制度の導入などをすることで離職率は下げられるでしょう。
育成・研修制度の見直し・整備を行う
育成や研修制度について、何かしらの制度を行っている会社は多いでしょう。しかし、行っている施策が「若手社員の満足を得ているか」や、「現場でどれだけ生かされているか」を考えたことはあるでしょうか?
または経営者が考えていたとしても、研修実施者や育成者にまで考えが浸透していないかもしれません。
若手社員への研修や育成制度に目が向きがちですが、東京商工会議所のアンケート結果では重点的に育成が必要なのは中堅層(社会人経験4〜10年)であると回答が集まっています。
中堅層の研修では、育成のためのマインドセットが重要です。株式会社ディスコがニーズの高いプログラムを質問したところ、実施している研修と比較すると入社直後の研修のみではなく、中堅研修や管理職・中堅社員研修が高いことが分かりました。
中堅層以上の研修は、社内ではなく社外研修の実施も効果的です。中堅層の育成を進めることで若手層への教育の質も上がり、全体の離職率を低下させることが期待できます。
福利厚生を充実させる
福利厚生には、法定福利と法定外福利があります。法定福利は義務なので当たり前ですが、法定外福利の充実や、範囲の拡大をすることで離職率を下げられる可能性があるでしょう。
法定福利は、社会保険全般や子ども・子育ての拠出金のような法律によって義務となっているもの。法定外福利には、住宅手当や交通費、退職金などの法律に定められていない福利厚生が該当します。
福利厚生を受けられるのは、正社員のみならず全社員です。アルバイト・パート、派遣も関係はありません。これは2020年4月より施行されている改正後の「パートタイム・有期雇用労働法」や「労働者派遣法」によって義務付けられています。
万が一まだ対象を絞っている場合、全社員に対象範囲を変更しましょう。
また、昨今ではスポーツクラブ利用やリゾート宿泊の割引、オフィスの飲み物飲み放題などさまざまな法定外福利が導入されている傾向です。社外の福利厚生アウトソーシングサービスを導入するのも良いかもしれません。
広い視野で従業員が本当に必要としている、喜ぶ福利厚生を考えてみましょう。
面談を定期的に行えるように仕組みを整える
面談は、従業員が気持ち良く働くために必要不可欠と言えます。定期的な面談には、さまざまなメリットがあり、従業員の満足度を上げるだけでなく離職してしまうかもしれない原因を知ることにも効果的です。
特に女性従業員が多い場合、職場で勤務中には話しにくい話題もあるかもしれません。
プライベートな話もするようにしています。女性スタッフが多いため、人生の転機も多くある中、今いるスタッフと協力しながら目標に向かうには、仕事以外のプライベートもある程度は知る必要があると思っています。プライベートの精神状態が仕事に直接影響することも大いにありますので。
引用:リジョブ/「middle daikanyama」代表 丸岡奈央さん
丸岡さんは、個人面談やこまめなコミュニケーションを通じ、スタッフとの二人三脚の接客によりモチベーションをアップしつつ、店舗の売上も伸ばしています。
とはいえ、個人面談は面談時間のスタフィングを整えたり、実施に対する理解を得たりしなければ労働時間内のスムーズな実行ができません。
従業員から話しかけやすい雰囲気を作ることはもちろん、個人面談の重要性を日ごろから周りに伝え、店舗を抜けやすい環境を作り出すようにしましょう。
まとめ
離職率の問題は、昨今の人材不足が顕著な日本で高い関心を集める話題です。離職率に決まった定義はなく、計算方法は経営者がどれくらいの期間で集計を取りたいかに左右されます。期間を定めたら、この記事で紹介した計算方法で数値を算出してみてください。
自社の離職率を求めた後は、日本の平均や同規模の同業他社と比較してみましょう。高い場合、気付かないうちに離職率の高い企業の特徴に該当しているかもしれません。フラットな目線で、自社を再点検しましょう。
離職率を下げるカギは、コミュニケーションと育成にあります。福利厚生などの当たり前を充実させながら下げるためにできることを、この記事を参考にして考えてみてください。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部