マツエクサロンの開業を検討するにあたって「どのくらいの資金が必要なのか」「どんな資格が必要なのか」「本当に儲かるのか」といった不安を抱えている方も多いでしょう。
そこで本記事では、マツエクサロン開業に必要な資格から具体的な開業資金、効果的な集客方法まで、開業成功に必要なすべての情報を網羅的に解説します。
実際の成功事例も交えながら、あなたの開業への背中を押すための実践的な知識をお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
マツエクサロン開業の将来性
開業するにあたり、マツエクサロン業界の将来性が気になる人もいるでしょう。
ここではマツエクサロンの市場動向や、利益率について、客観的な情報をもとに解説します。
マツエクサロン業界の市場動向
マツエクサロン業界は、近年目覚ましい成長を遂げており、開業を検討する方にとって非常に魅力的な分野となっています。
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、アイビューティーサロン市場は2024年に1,179億円という過去最高の市場規模を記録しました。
特に注目すべきは、コロナ禍で一時的に減少した需要が完全に回復し、さらに成長軌道に乗っている点です。「時短美容」への関心の高まりや、リモートワークの普及により目元への注目度が上がったことも、市場拡大の要因として挙げられるでしょう。
また、以下の通り、女性だけでなく男性の利用率が年々増加している点にも注目です。
以上の点から、開業する人にとって、マツエクサロン業界は非常に魅力的な業界といえます。
マツエクサロンは儲かる?
結論、マツエクサロンは高い収益性が期待できるビジネスです。その理由は、先述した利用率の安定性と、客単価の高さにあります。
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、女性の1回あたりの利用金額は2024年に5,299円と直近5年間で最高額に達しています。これは2022年から継続的な増加傾向を示しており、顧客の支払い意欲の向上が確認できます。
特に40代女性の利用額増加は顕著で、この客層をターゲットにした経営戦略が成功のカギを握っているといえるでしょう。
このように、マツエクサロンは低コストかつ高収益を実現できるビジネスモデルであり、市場の成長性と合わせて考えると、開業を検討する方にとって非常に有望な選択肢といえるでしょう。
マツエクサロンの開業方法とメリット・デメリット
マツエクサロンの開業方法は主に3つです。
- 自宅で開業
- 店舗を借りて開業
- フランチャイズ開業
それぞれのメリット・デメリットを解説します。
自宅で開業
自宅でマツエクサロンを開業する方法は、初期費用を最も抑えられる選択肢として多くの方に選ばれています。
【メリット】
- 持ち家の場合は店舗家賃が不要になる
- 賃貸物件の場合でもテナント契約より比較的安い
- 通勤時間がなくプライベートと両立しやすい
- 小規模から始められ徐々に事業を拡大できる
【デメリット】
- 住宅地だと集客面で不利になりやすい
- 近隣住民への影響を考慮する必要がある
- マンションの管理規約で店舗利用できない可能性あり
自宅開業では、保健所の定める設備基準をクリアする必要があり、実地検査も実施されます。管轄の保健所によって基準が異なるため、事前に詳細を確認しておきましょう。
店舗を借りて開業
店舗物件を借りての開業は、本格的なサロン経営を目指す方に向いています。
【メリット】
- 集客に有利な立地を自由に選択できる
- 店舗の規模や内装を自由に設計できる
- ビジネスとプライベートを明確に分離できる
- 複数スタッフでの運営も視野に入れやすい
- 居抜き物件を活用すれば改装費用を削減できる
【デメリット】
- 毎月の家賃負担が継続的に発生する
- 保証金や仲介手数料などの初期費用が高額
- 改装費用が予想以上にかかる場合がある
- 契約期間中は撤退しにくい
店舗を借りる場合、立地や規模によって費用は大きく変動します。一方で、レンタルサロンを活用すれば、必要な設備が整った状態で開業でき、初期費用を50万円前後まで抑えることが可能です。
フランチャイズ開業
フランチャイズ契約による開業は、経験が浅く開業に不安を感じている方におすすめの方法です。
【メリット】
- 確立されたブランド力を活用できる
- 本部から経営ノウハウや技術指導を受けられる
- 集客支援や広告宣伝のサポートがある
- 開業後も継続的なフォローアップが期待できる
【デメリット】
- 毎月のロイヤリティ支払いが必要
- 本部の方針に従う必要があるため自由度が制限される
- 加盟金や保証金などの初期費用が高額
フランチャイズでは、加盟金だけで数百万円が必要なケースが多く、総合的な開業資金も高額になりやすい傾向にあります。しかし、その分安定した経営基盤を築きやすいです。
マツエクサロンの開業に必要な資格
マツエクサロンの開業に必要な資格は次の通りです。
- 美容師免許
- 管理美容師免許
以下にて詳しく見ていきましょう。
美容師免許
マツエクサロンの開業において、美容師免許は絶対に必要な資格です。
2017年に経済産業省が「グレーゾーン解消制度」でマツエクの施術が「美容」に該当するという見解を示したことにより、マツエク施術は美容師法の適用を受けることが明確化されました。
美容師免許取得の流れは次の通りです。
- 美容専門学校(2年制)の卒業または通信課程(3年制)などの修了
- 美容師国家試験(筆記・実技)の合格
- 美容師免許の申請・取得
美容師免許を持たずにマツエク施術を行った場合、美容師法違反として処罰される可能性があります。また、保険適用外の事故が発生した際のリスクも高まるため、必ず取得しておきましょう。
管理美容師免許
美容師が常時2名以上が勤務するサロンを運営する場合や、サロンの衛生管理責任者として配置される場合、管理美容師免許が必要となります。
取得条件は次の通りです。
- 美容師免許の取得
- 美容師免許を取得してから3年以上の実務経験
- 都道府県知事が指定する講習会の受講(通常1日程度)
管理美容師の主な役割は次の通りです。
- サロン内の衛生管理全般の監督
- 従業員への衛生指導
- お客様の安全確保
- 感染症予防対策の実施
1人で自宅サロンを運営する場合は管理美容師免許は不要ですが、将来的にスタッフを雇用する予定がある場合は、早めの取得を検討しましょう。
マツエクサロンの開業に必要な届出
マツエクサロンの開業には、下記の届出が必要です。
- 美容所開設届書
- 開業届
それぞれについて詳しく見てみましょう。
美容所開設届書
マツエクサロンの開業において、美容所開設届書の提出は必須の手続きです。なお、店舗を継承する場合でも同様の手続きが必要になります。
美容所開設届書の手続きの流れは次の通りです。
- 事前相談
- 必要書類の準備
- 検査手数料の支払い
- 施設基準・衛生設備などの検査
- 許可書の受取り
書類提出後、保健所職員による実地検査が行われます。基準を満たしていれば、数日後に確認書が発行されます。
美容師法では届出をせずに営業すると法律違反となり、30万円以下の罰金に処される可能性があるため、必ず適切な手続きを行いましょう。
なお、検査はサロン開設の2日前までに完了させなければなりません。
開業届
マツエクサロンの開業により新たに事業を始める場合、開業届の提出も重要な手続きです。
提出先は、納税地を所轄する税務署で、提出期限は事業開始から1ヵ月以内となっています。
開業届を提出しなくても罰則はありませんが、以下のメリットがあります。
- 青色申告の承認申請が可能
- 青色申告特別控除(最大65万円)を受けられる
- 事業所得として経費計上の範囲が広がる
- 屋号での銀行口座開設が可能
また、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出すれば、青色申告特別控除(最大65万円)を受けられます。
提出期限は、申告年の3月15日までで、1月16日以降に開業する場合は、開業日の2ヵ月以内です。
開業当初は美容所開設届書の準備や内装工事などで多忙になることが予想されるため、可能な限り早めに提出しておくとよいでしょう。
マツエクサロンの開業に必要なもの
ここでは、マツエクサロンの開業に必要な物件と設備・備品を紹介します。
物件
マツエクサロンの物件選びは、開業後の集客と経営に大きく影響する重要な要素となります。良い物件のポイントは次の通りです。
- 駅近や繁華街などアクセスの良い場所
- ターゲット層(特に40代女性)が通いやすい立地
- 駐車場の有無や公共交通機関の利便性が高い
- 競合サロンの商圏と重複していない
- 保健所基準に適合している
物件選定時は、必ず保健所に相談し、美容所としての基準を満たせるかを事前に確認しておきましょう。
設備・備品
マツエクサロンの運営には、施術用設備から衛生管理用品まで幅広い備品が必要です。
具体的に必要な設備・備品は次の通りです。
【設備】
- 施術用ベッド・リクライニングチェア
- ワゴン
- 鏡
- 紫外線消毒器
【施術用具・消耗品】
- タオル
- シザー
- スクリューブラシ
- コットン
- メイク落とし・化粧水
【環境整備用品】
- 加湿器
- 空調設備
- 照明器具
なお、ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、アイビューティーサロンでの商品購入率は以下の通りです。
お客様に人気の商品 |
詳細 |
まつ毛美容液 |
購入率が最も高く、リピート購入も期待できる |
アイケア商品 |
目元専用の保湿・ケア用品などが人気 |
メイク関連商品 |
アイライナー、マスカラなどが人気 |
ホームケア用品 |
自宅でのアフターケア商品として人気 |
これらの商品を導入すれば、追加収益源として月間売上の向上につながりやすくなります。1回あたりの客単価を5,000〜7,000円に向上させることも可能です。
マツエクサロンの開業に必要な資金
ここでは、マツエクサロンの開業に必要な資金の目安を紹介します。
開業資金
店舗開業、自宅開業、シェアサロン開業、それぞれの平均的な開業資金を紹介します。
店舗開業の平均的な開業資金は「230万円~」程度で、主な費用は次の通りです。
かかる費用 |
内容 |
物件取得費 |
保証金、仲介手数料、前家賃など |
内装費 |
保健所基準に適合させるための改装費用など |
備品費 |
本格的な設備一式の購入費用 |
自宅開業の平均的な開業資金は「~150万円」程度で、主な費用は次の通りです。
かかる費用 |
内容 |
内装費 |
美容所基準に適合させるためのリフォーム費用など |
備品費 |
必要最小限の設備購入など |
宣伝広告費 |
地域密着型の宣伝活動 |
シェアサロン開業の平均的な開業資金は「50万円」程度で、主な費用は次の通りです。
かかる費用 |
内容 |
広告宣伝費 |
SNSを中心とした低コスト集客 |
備品費 |
個人用の施術道具のみ |
運転資金
店舗開業、自宅開業、シェアサロン開業、それぞれの平均的な運転資金を紹介します。
店舗開業の平均的な運転資金は「月30万円~」程度で、主な費用は次の通りです。
かかる費用 |
内容 |
家賃 |
立地により大きく変動(東京都心部では月50万円以上も) |
人件費 |
人件費:スタッフ1名につき月20万円程度が目安 |
光熱費 |
店舗規模に応じた電気・水道代 |
その他 |
保険料、税金、ローン返済など |
自宅開業の平均的な運転資金は「月2万円~」程度で、主な費用は次の通りです。
かかる費用 |
内容 |
家賃 |
不要(既存住居を活用) |
人件費 |
基本的に一人運営のため不要 |
光熱費 |
家庭用に施術分が上乗せ |
維持費 |
非常に低コストで運営可能 |
シェアサロン開業の平均的な運転資金は「月1万円~」程度で、主な費用は次の通りです。
かかる費用 |
内容 |
施設利用料 |
時間単位での支払い(別途) |
消耗品費 |
施術に使用する材料のみ |
なお、開業直後は集客が安定せず赤字になる可能性が高いため、およそ6ヵ月分の運転資金を事前に用意しておくことが推奨されています。
マツエクサロンの開業に活用できる補助金・助成金
まずは以下の表をみて補助金と助成金の違いを把握しておきましょう。
項目 |
助成金 |
補助金 |
管轄 |
厚生労働省 |
経済産業省 |
目的 |
雇用の安定など |
新規事業での活用など |
給付額 |
10~1,000万円程度 |
100万~10億円程度 |
受給の条件 |
条件のクリア |
選考により決定 |
返済の必要性 |
返済の必要なし |
返済の必要なし |
マツエクサロンで活用できる助成金
マツエクサロンで活用できる助成金は次の通りです。
- キャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金
- 地域雇用開発助成金
- 両立支援等助成金
キャリアアップ助成金
助成対象は、労働者の待遇の改善に取り組む事業主で、種類は「正社員化コース」「社会保険適用時処遇改善化コース」の2つです。
受給条件 |
「キャリアアップ計画書」を作成・提出し、計画書通りにキャリアアップを実施 |
受給金額 |
労働者1人当たり最大80万円 |
適用場面 |
スタッフを増やしたい方や、賃上げを考えている方におすすめ |
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、スタッフの教育や育成、休暇などに関わる資金を支援してもらえる助成金です。
マツエクサロン開業で利用できるコース |
|
助成金額 |
最大2,500万円 |
給付の条件 |
コースにより異なる |
対象者 |
事業者 |
活用場面 |
スタッフのキャリアアップを目指したい方 |
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金は、地域の雇用拡大を目的として作られた助成金で、厚生労働省が指定している地域にマツエクサロンを開業した場合に受給されます。
支給条件 |
|
受給額 |
雇用する人数により40~900万円を3年間 |
注意点 |
継続的な労働者の雇用や、労働管理が受給条件となる点に注意 |
両立支援等助成金
両立支援等助成金は、育児や出産、介護を行うスタッフに対して、働きやすい環境を提供するための助成金です。
活用可能なコース |
|
給付の条件 |
コースにより異なる |
受給金額 |
20~60万円(コースにより異なる) |
活用場面 |
スタッフの育児・介護との両立支援 |
マツエクサロンで活用できる補助金
マツエクサロン開業で活用できる補助金は次の通りです。
- 事業再構築補助金
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、過去に別の事業を経営していた方が、マツエクサロンを開業した時に申請できる補助金です。
給付の条件 |
|
補助金額 |
スタッフが20人以下の場合、最大1,500万円 |
IT導入補助金
IT導入補助金は、ITツールの導入を支援する補助金です。
補助の対象となるツール |
|
給付の条件 |
|
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、事業の拡大を支援するための補助金です。
給付の条件 |
|
上限額 |
50万円 |
マツエクサロン開業までの9ステップ
マツエクサロン開業までの9ステップは以下の通りです。
- 事業計画書とコンセプトの作成
- 物件選び
- 資金調達
- 内装・外装工事
- スタッフ採用
- 開業に必要なものの準備・提出
- 広告・宣伝
- 効果測定
- 調整と改善
ステップごとに詳しく解説します。
1.事業計画書とコンセプトの作成
マツエクサロンを開業するにあたって、サロンのコンセプト作りや事業計画書の作成は、経営の基盤となる非常に重要な要素です。
事業計画書の重要性については、「Short CUT hair & make」 代表の一原充志さんもインタビューのなかで以下のように語っています。
まず事業計画書(事業の内容や、資金計画など具体的な項目を書面にすること)を作成することから始まります。事業計画書を書いていくうちに、自分がどれだけの規模感で経営したいのか、どれくらいの坪数でやりたいかなどが見えてきます。物件や機材を選び、内装の見積もりを出し、トータルでいくらお金が必要になるのかはっきりと見えてきた段階で、融資へと動きます
引用元:モアリジョブ|「Short CUT hair & make」 代表 一原充志さん
しっかりとした事業計画書を作成すれば、融資や補助金申請時の重要な資料としても活用できます。
2.物件選び
マツエクサロンの開業は立地によって集客が大きく左右されるため、物件選びは事業成功のカギを握っています。
「THEATER」 代表の佐々木達也さんは、先を見越した物件選びが重要だと語ります。
こだわりもありましたからディーラーさんも厳選しました。独立して1店舗目って、4〜5席くらいの小さな店舗で始める人が多いと思うんです。僕らも、創業時はレセプションを入れて9人だったから、そのくらいの規模でもと考えていました。でも、それっていつかは、来たいお客様も新しいスタッフも入れなくなるんですよね。だから、先のことを考えて大きい店舗で絶対始めようと思いました。実際、1店舗目の「THEATER」は16席あります。
引用元:モアリジョブ|「THEATER」 代表 佐々木達也さん
物件選定のポイントは次の通りです。
- 周辺の競合サロンの存在と差別化の可能性
- 公共交通機関からのアクセスの良さ
- 視認性と看板設置の可能性
- ターゲット層の通行量と商圏の重複度合い
- 駐車場の確保状況
立地の状況によって賃貸料は大きく変わるため、集客力と経営コストのバランスを考慮したうえで物件を選定しましょう。
3.資金調達
資金調達は主に、以下4つの選択肢があります。
-
自己資金
最も理想的だが、全額確保は困難な場合が多い
-
日本政策金融公庫
民間金 融機関よりも金利が低く、創業融資に適している
-
銀行融資
事業計画書の質が審査に大きく影響
-
補助金・助成金
返済不要だが、受給まで時間がかかる
特に日本政策金融公庫は創業支援に積極的で、無担保・無保証での融資も可能なため、開業時の資金調達先として検討しておくとよいです。
また、一原さんは資金調達の際、経験のある行政書士に同行してもらったことで想定より多くの資金が集まったと語っています。
850万円借りることができました。自己資金650万円とあわせて、最終的な金額はトータルで1500万円。内訳は、内装費に950万円(デザイン料込み)、店舗費に150万円(敷金、礼金、仲介手数料、前家賃など)、美容設備費260万円(美容器具、材料、備品、商品)、その他諸経費と2か月分の運転資金130万円を合わせた金額です。自己資金の一部は両親から借りています
引用元:モアリジョブ|「Short CUT hair & make」 代表 一原充志さん
4.内装・外装工事
次に、マツエクサロンを開業する店舗物件の内装および外装工事を実施します。
工事の工程に合わせて以下も同時進行させましょう。
- 保健所基準に適合した設計と工事
- 必要な器具や設備の購入・搬入
- 電気、ガス、水道などのライフライン契約
工事期間中は収益が発生しないため、スケジュール管理を徹底し、できるだけ短期間での完成を目指しましょう。
5.スタッフ採用
マツエクサロン開業の成功において、優秀なスタッフの採用は事業成功の大きな一助となります。優秀なスタッフがいれば、顧客満足度の向上やリピート率の確保にも期待できます。
「BRIDGE」代表の大川正博さんは、スタッフに寄り添い、環境を改善したことで創業期を乗り切ったと語っています。
時代によって異なりますが、創業期の秘訣としてはスタッフに寄り添ってきたことが大きいと思います。現在は店舗数が多いため店長などに任せていますが、当時は僕自身も店舗を訪れて頻繁にスタッフとミーティングしていました。そこで、スタッフ1人ひとりの意見を吸い上げ、働き方や労働環境の改善に努めていたんです。
引用元:モアリジョブ|「BRIDGE」 代表 大川正博さん
採用のタイミングは研修に必要な期間を考慮し、オープンの1ヵ月ほど前に決定するのが理想的です。
効率的に求人活動を行いたい場合は、成功事例を参考にし、自社にとって最適な方法を探りましょう。以下はアイリスト業界の成功事例ですのでぜひ参考にしてください。
6.開業に必要なものの準備・提出
次に、マツエクサロンの開業に必要な手続きや備品準備を完了させます。
具体的には、各種保険の加入手続き、美容所開設届書や開業届の提出です。美容所開設届書は、オープンの1~2週間前まで、開業届は開業後1ヵ月以内に提出しましょう。
開業までに用意しておきたい備品や設備は次の通りです。
- 施術用機器一式の準備
- 衛生管理用品の完備
- 予約システムや決済システムの導入
- 消毒・清掃用品の準備
すべての準備が整ってから保健所の実地検査を受けるため、漏れのないようチェックリストを作成して管理するとよいです。
7.広告・宣伝
マツエクサロンの開業を知ってもらうために、ターゲット顧客層に合わせた効果的な広告・宣伝活動を展開します。
具体的な宣伝方法は次の通りです。
- SNS(Instagram、Xなど)の運用
- Googleビジネスプロフィールの最適化
- 地域情報誌やフリーペーパーへの掲載
- オープンキャンペーンの実施
株式会社リクルートの調査によると、お店を変えようと思った場面で一番多かったのは、「口コミの評判が悪い」で33.0%でした。つまり、広告・宣伝をするうえで重要なのは利用者の口コミです。
集客の際は「新規顧客をどう獲得していくか」と同時に「自然に口コミを書いてもらうにはどうするべきか」も同時並行で考えておきましょう。
8.効果測定
開業後は定期的に各種指標を測定し、経営が順調かを定期的に確認しましょう。
マツエクサロンにおいて、測定すべき重要指標は次の通りです。
- 新規顧客数とリピート率
- 月間売上と利益率
- 客単価の推移
- 予約率と稼働率
- 口コミ評価とSNSでの反応
上記データに基づいた客観的な評価により、改善点の早期発見や対策実施がしやすくなります。
従業員がいる場合は、数値を共有し、改善方法を話し合うとよいです。数値を共有することで従業員にも当事者意識が生まれ、改善案や問題点などを積極的に出してくれるようになります。
9.調整と改善
効果測定の結果をもとに、継続的な改善を行いましょう。
改善する際の具体例は次の通りです。
- サービス内容の見直し
- 新メニューの追加
- スタッフ教育による技術・接客力の向上
- 料金体系の最適化
- 集客方法の改善と新規開拓
- 顧客満足度向上のための施策実施
開業は終わりではなく始まりです。継続的な改善を行い、地域に愛される安定したマツエクサロンを築いていきましょう。
マツエクサロンの開業を成功させる集客のコツ
マツエクサロンの開業を成功させるために重要な集客のコツは次の通りです。
- ターゲットの選定
- 競合優位性の確立
- ターゲットに合った集客方法の選定
それぞれのコツについて解説します。
ターゲットの選定
効果的な集客を実現するためには、データに基づいた正確なターゲット選定が重要です。
ホットペッパービューティーの調査によると、マツエクサロンの利用率が高い年代(男女別)は以下のようになっています。
【女性の利用率】
20代:21.3%(最高利用率)
30代:13.1%
15~19歳:12.2%
【男性の利用率】
20代:9.3%
30代:6.3%
15~19歳:6.2%
上記の通り、女性の20代が圧倒的に利用率が高いですが、前述した市場調査では40代女性の利用額増加が顕著である点も押さえておく必要があります。
男性については30代と15~19歳で大きな差がない点や、幅広い年齢層にアプローチ可能な点が特徴です。
これらのデータから、メインターゲットは20~30代女性(高利用率・継続性)に絞り、サブターゲットを40代女性(高単価・安定収入)にするなどが考えられます。
競合優位性の確立
他のサロンとの差別化を図るためには、特定分野への特化が効果的です。
ホットペッパービューティーの調査によると、アイビューティーサロンでのメニュー利用率には明確な傾向があります。
たとえば、上記の傾向から以下のような特化戦略が考えられます。
- オーダーメイド・つけまつげに特化したサロン
- 自然な仕上がりに特化したナチュラル系サロン
- ボリューム重視の華やかスタイル専門サロン
また、競合優位性を見出す際には、同じエリアのサロンを徹底的にリサーチすることが重要です。
リサーチした情報をもとに価格設定や店内の雰囲気等で他のサロンとの違いを打ち出し、お客様に「このサロンでサービスを受けたい」と思っていただけるようなサロンを作りましょう。
ターゲットに合った集客方法の選定
ターゲット層の行動パターンに合わせた集客ツールの選択は、効率的な顧客獲得につながります。まず、ホットペッパービューティーの調査によると、予約方法には明確な年代・性別差があります。
年代別で詳しく見ると、30代の女性は、10代・20代の女性に比べて「通っているサロンの専門アプリ」で予約する傾向が高いです。
一方、男性については年代による差が顕著でした。たとえば、20代男性は、LINEを利用して予約する人が多く、30代男性はホットペッパービューティーを利用する傾向にあります。
このように、年代や性別によって利用する媒体は異なるため、予約システムや集客方法はサロンの雰囲気やターゲットに合ったものを導入しましょう。
マツエクサロン開業の成功事例
ここでは、マツエクサロンの開業に成功した事例を紹介します。
なぜ成功できたのかを分析し、開業のヒントを探っていきましょう。
成功事例1.株式会社KAMILLE
株式会社KAMILLEの成功は、スタッフ一人ひとりの集客力を組織的に育成している点にあります。
SNS運用の指導です。昨今の美容業界での集客はSNSがメインになっているため、弊社ではSNSマーケティング部を設置して、さまざまな分析を行ったうえで導き出した撮影、投稿方法などをスタッフに細かく教えています。社内講習だけでなく、定期的に外部講習もあり、多角的な集客スキルを身につけることができます。
弊社は売上に応じてインセンティブが発生する形なのですが、SNS指導の成果もあってデビュー半年で多くのスタッフが月収30万円を実現しています。
引用元:モアリジョブ|「株式会社KAMILLE」 代表 矢口俊貴さん
開業時の応用ポイント
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また採用は、雇用して終わりではなく、その後の教育環境も重要です。同社は、入社後にも成長できる環境づくりを徹底し、個人の集客力をさらに向上させています。
弊社ではSNSマーケティング部を設置して、さまざまな分析を行ったうえで導き出した撮影、投稿方法などをスタッフに細かく教えています。社内講習だけでなく、定期的に外部講習もあり、多角的な集客スキルを身につけることができます。
弊社は売上に応じてインセンティブが発生する形なのですが、SNS指導の成果もあってデビュー半年で多くのスタッフが月収30万円を実現しています。
引用元:モアリジョブ|「株式会社KAMILLE」 代表 矢口俊貴さん
上記の事例からも分かる通り、マツエクサロンの開業において、優秀なスタッフの採用は事業成功の大きなカギを握ります。採用経験がない方は、以下の成功事例を参考にしてみてください。
成功事例2.SOLuz eyelash salon
「SOLuz eyelash salon」の新谷さんは、豊富な経験とスキルがあれば、スムーズに開業し、軌道に乗せられると述べています。
副店長を務めた大手サロンには2年ほど在籍していましたが、大手ならではの頻繁な店舗移動を負担に感じ、転職することにしました。その後の3年間くらいは2店舗ほど都内のサロンを回り、チーフやマネージャーなど、様々な役職を経験しました。
(中略)
未経験者や現職のアイリストに技術を教えたり、施術のチェックをしたりする技術講習の場面には、よくお招きいただいていました。サロンワークの傍ら、トレーナーの立場も経験することができたのは、自身のさらなるスキルアップにもつながったと思います。
引用元:モアリジョブ|「SOLuz eyelash salon」 新谷美咲さん
またアイリストは、一対一で接客する仕事であるため、常にお客様目線をもつことが重要だとも述べています。
「お客様目線」を徹底することです。できる範囲内ではありますが、休みの日には同業のアイラッシュサロンだけでなく、世の中のあらゆるサービスを体験しに行き、お客様の立場に立つことを意識するようにしています。
アイリストは技術者ではありますが、だからこそ、お客様に寄り添う姿勢を大切にしたいです。
引用元:モアリジョブ|「SOLuz eyelash salon」 新谷美咲さん
開業時の応用ポイント
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まとめ
マツエクサロンの開業は、適切に準備し、戦略的にアプローチすれば高い成功確率を見込めます。
成功のポイントは次の通りです。
- 綿密なターゲット選定を行う
- 競合優位性を確立する
- ターゲットに合った集客施策を実施する
まずは小規模から始めて段階的に事業を拡大し、安定した経営基盤を築いていくとよいです。しっかりとした事前準備を行い、成功確率を高めましょう。

- 執筆者情報
- 山田 大地(Yamada Daichi)