アイリストの採用において適切な給料設定はとても重要です。しかし、具体的な相場や設定方法が分からず、優秀な人材の確保や定着に苦労している経営者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、雇用形態別のアイリストの給料相場や理想とされる給与体系、福利厚生の現状を詳しく解説します。さらに、採用を成功させるための給与設定の5つのポイントもご紹介します。
適切な給与体系の構築によって人材確保の競争優位性を高め、従業員の定着率向上とサービス品質の安定化を実現しましょう。
【雇用形態別】アイリストの給料相場
ここでは下記、雇用形態別にアイリストの給料相場を紹介します。
- 正社員
- アルバイト・パート
- 業務委託
- サロンオーナー
まずは、経験年数別での給料相場を見てみましょう。
経験年数別の給料相場
リジョブの調査によると、各経験年数でのボリュームゾーンは、3年未満で16万円未満、3~6年未満および6~9年未満で16~20万円でした。また、月収30万円以上を稼ぐ人の経験年数は、6年以上のみという結果になりました。
したがって、アイリストの給料は、経験年数の増加によって向上する傾向にあるといえます。ただし、月収21~25万円のゾーンにおいては、ほとんど経験年数による差が無く、3年未満の人が2番目に多い点に留意しておきましょう。
正社員の給料相場
求人ボックスの調査によると、アイリスト(正社員)の給料相場は月収30.25万円で、平均年収は363万円でした。
一方、国税庁の調査によると令和5年の日本の平均年収は460万円であるため、全体の平均より97万円低いです。
アルバイト・パートの給料相場
求人ボックスの調査によると、アルバイト・パートの平均時給は1,103円で、これを月収に換算すると17万6,480円、年収に換算すると211万7,760円(月に20日、1日8時間で計算)となります。
なお、派遣社員の平均時給は1,301円で、想定される年収は249万7,920円です。
このように、アルバイト・パートの場合は賞与が見込めないため、正社員の給料とは大きな差があります。
業務委託の給料相場
リジョブの調査によると、業務委託の給料相場は、スタッフで21万1,794円、店長(候補)で23万9,826円でした。ただし、この数値は、リジョブに掲載されている求人情報から算出した「月収下限」である点に留意しておく必要があります。
なお、月給上限と月給下限を比較すると次のようになります。
月給下限 |
月給上限 |
|
スタッフ |
21万1,794円 |
58万3,333円 |
店長(候補) |
23万9,826円 |
59万8,985円 |
このように、業務委託は、下限と上限に大きな差があります。これは、施術人数による差が大きいと考えられます。
サロンオーナーの給料相場
サロンオーナーの給料相場は、店舗の規模によって異なります。ここでは、自宅サロンのオーナーになったケースで試算してみます。
【自宅サロンの売上】
単価:4,500円
1日の来客数:5名
営業日数:20日
月間売上:4,500円 × 5名 × 20日 = 450,000円
【月間の経費】
消耗品費:3万円
光熱費:2万円
合計:5万円
【月間利益】
450,000円(売上) - 50,000円(経費) = 400,000円(月給)
400,000円(月給)× 12ヶ月 = 4,800,000円(年収)
自宅サロンの場合、単価や経費の有無によって大きな差があります。高単価で来客数を増やせれば高い月給を見込めるでしょう。
アイリストの給与体系は?
ここでは、下記アイリストの給与体系について解説します。
- 基本給+歩合+賞与
- 月給固定制
- 基本給+歩合
- 完全歩合制
- 理想の給与体系
各給与体系のメリット・デメリットについても解説します。
月給固定制
リジョブの調査によると「月給固定制」は最も多く、特に3年未満のアイリストに多い給与体系でした。
月給固定制は、アイリスト業界において安定志向の強い層から支持される給与体系です。同調査によると、現在の給与体系として最も多く採用されており、特に経験年数の浅いアイリストに適した形態といえます。
最大のメリットは収入の安定性にあり、季節変動や経済状況に左右されず、一定の生活水準を維持できるため、家計計画が立てやすくなります。
一方で、固定給は個人の成果や努力が直接収入に反映されにくいというデメリットがあります。同調査では、給与に不満をもつアイリストの多くが「自分の能力が評価されていない」と感じており、特に技術力や集客力に自信のあるベテランにとっては不満の原因となることがあります。
また理想の給与体系において「月額固定制」は16%のアイリストが支持するにとどまっており、現状とのギャップが見られます。
基本給+歩合
リジョブの調査によると「基本給+歩合」は全体で2番目に多く、特に3~6年目のアイリストに多い給与体系でした。
この体系の主な魅力は、生活基盤となる基本給が保証されつつも、個人の努力や成果が収入に直接反映される点です。調査によれば、特に3〜6年の経験をもつアイリストが「理想の給与体系」として支持しています。
この体系のデメリットとしては、歩合率が低すぎると努力が報われにくく、スタッフに不満を与える可能性がある点です。また、高くし過ぎると経営を圧迫するリスクがあります。
なお、同調査によると、理想的な歩合率については10〜15%が最も支持されており、基本給と歩合のバランスについては「基本給が高く歩合率が低い」体系を望む声が多数を占めています。
基本給+歩合+賞与
リジョブの調査によると「基本給+歩合+賞与」は全体で4番目に多く、特に6~9年目のアイリストに多い給与体系でした。
基本給+歩合+賞与は、アイリスト業界で最も理想とされる給与体系です。同調査によれば、約51%のアイリストがこの体系を望んでいます。
この体系は、基本給により生活の基盤が確保されつつ、歩合制度・賞与によって自身の技術向上や集客努力が直接収入に反映されるため、スタッフのモチベーション維持につながります。
ただし、サロン側にとっては管理の複雑さや経費計算の煩雑さがデメリットとなるケースもあります。また、賞与の査定基準が不明確だと不公平感を生み出す可能性もあるため、透明性のある制度作りが重要です。
完全歩合制
リジョブの調査によると「完全歩合制」は全体で3番目に多く、特に3~6年目のアイリストに多い給与体系でした。
この制度では、アイリストの売上に対して一定の割合が報酬として支払われるため、努力が直接収入に反映されます。同調査によると、経験豊富なアイリストや高い技術力をもつベテランに選ばれる傾向があり、理想の給与体系として約14%が支持しています。
最大のメリットは、固定人件費がなく売上に連動した経費となるため、経営リスクを抑えられる点です。
一方、スタッフの収入に不安定さを生んでしまう点はデメリットです。季節変動や社会情勢による集客の波、体調不良時の収入減少など、生活の安定性を脅かす要素が多くあります。
同調査においても「基本給と歩合のバランス」については、基本給重視の意見が多数を占めており、完全歩合制に対する慎重な姿勢が見られます。
理想の給与体系
リジョブの調査によると、アイリストにとっての理想の給与体系は、安定性と成果報酬のバランスが取れた「基本給+歩合+賞与」が最も支持されており、全体の51%を占めています。
また同調査によれば、理想の歩合率としては10〜15%が最も支持されており、基本給と歩合の割合については「基本給が高く歩合率が低い」体系を望む声が多数です。
その背景には「基本給が高い方が保証されていて安心」「病気になった時などの手当がもらえる」といった安定志向が見られる一方で、「自分の頑張り次第で上がる」という成果連動の仕組みも評価されています。
昇給基準については「個人の業績や成果が影響する」体系を望む声が70%と圧倒的多数を占めており、年功序列よりも実力主義を重視する傾向が強いことが分かります。
なお、給与に不満をもつアイリストの53%が「求める生活水準に対して不足している」と回答しており、理想の月収としては「26〜30万円」「31〜35万円」の範囲に集中しています。
したがって、アイリストは安定した基本給を土台としつつ、自己の成長と努力が適切に評価され収入に反映される公平な給与体系を求めているといえるでしょう。
アイリストの福利厚生・手当・ボーナスは?
ここでは、アイリストの福利厚生・手当・ボーナスについて解説します。
福利厚生
福利厚生は、サロンによって大きく異なりますが、多くのサロンで導入されているのが「社員割引制度」です。自社サービスを割引価格で利用できるため、自身のまつ毛のメンテナンスにかかる費用を抑えられるだけでなく、技術や流行の把握にも役立ちます。
次に注目したいのが「資格取得支援制度」です。アイリスト業界では技術の進化が速く、常にスキルアップが求められます。具体的には、一般社団法人日本まつ毛エクステンション認定機構(JECA)の認定資格といった専門的な資格の取得をサポートする制度があれば、キャリアアップにつながるでしょう。
手当
サロンが導入している手当てで多いのは以下です。
- 指名手当
- 物販手当
- 資格手当
- 役職手当
中でも業績に直結する「指名手当」は、リピーターを増やす努力が直接収入につながるため、モチベーション維持の大きな要素となっています。お客様から指名されるたびに基本給とは別に手当が支給されるため、技術力向上と顧客満足度を高める意欲につながります。
また「物販手当」を取り入れているサロンも多いです。サロンで取り扱っているまつ毛美容液やホームケア商品などを販売した際に、売上の一定割合が手当として支給される仕組みです。スタッフの提案力やコミュニケーション能力に対する評価にもなります。
「資格手当」は、持っている資格や技術レベルに応じて毎月一定額が支給される制度です。美容師免許は基本ですが、それに加えてJECAの「まつ毛エクステンション1級〜3級」や「安全技術師」の資格を取得すると、サロンによっては月額数千円〜1万円程度の手当が加算されることもあります。
こういった制度があれば、資格取得や集客に対する意欲を促せるでしょう。
ボーナス
アイリストのボーナスは、サロンの経営方針や業績によって大きく異なります。一般的には年2回(夏・冬)の支給が基本ですが、四半期ごとに支給するサロンもあり、中には年6回のボーナスを設定している好条件のサロンも存在します。
アイリスト7年目で32歳です。
300万+ボーナス20万×2+指名料+店販バック
という感じで、わたしは役職手当てを別にもらっていて指名料全て含めて年収400くらいです。
引用:Yahoo!知恵袋
ただし、サロンの経営方針によってはボーナスが無い場合もあります。
現在アイリストとして働いています。
昇給なし、ボーナスなし、手取り16~18万。
33歳。
引用:Yahoo!知恵袋
ボーナスの算定方法もさまざまです。基本給の何ヵ月分という形で支給されるケースや、個人の売上に応じて計算されるケースなど、サロンによって仕組みが異なります。
リジョブの調査によると、アイリストが理想とする給与体系として「基本給+歩合+賞与」を選ぶ割合が最も高く、約51%を占めています。よって、ボーナスは積極的に導入したほうがよいといえるでしょう。
アイリストの給料設定が重要な3つの理由
アイリストの給料設定が重要な理由は次の通りです。
- 人材確保の競争優位性アップ
- 従業員の定着率向上
- サービス品質の安定化
それぞれの理由について解説します。
1.人材確保の競争優位性アップ
美容ヘルスケア業界、特にアイリスト業界における人材獲得競争は年々激化しています。そのため、魅力的な給与体系の構築は、単なる採用戦略ではなく、サロンの持続的成長にも作用します。
リジョブの調査によれば、アイリストが給与に不満をもつ理由として「他社に比べて低い」という点が上位に挙げられており、安直な給与設定に対するリスクが示唆されています。
またリジョブの調査では、53%の企業が「応募数・採用数を上げるために給与下限を上げている」と回答しています。さらに、平均約2.5万円の給与下限の引き上げを行っている企業が多く、人材確保のために積極的な投資を行っています。
このことから、戦略的な意図の伴った給与設定が採用成功のカギを握っているといえるでしょう。
2.従業員の定着率向上
リジョブの調査によると、アイリストが給与に不満を感じる最大の理由は「求める生活水準に対して不足している(53%)」であり、次いで「労働時間と見合わない」という声が多く挙がっています。これらの不満が解消されないと、貴重な人材の流出につながるリスクが高まります。
特に経験3〜6年のアイリストは、技術的に成熟し顧客満足度も高い貴重な戦力です。この層の定着率を高めるには、単に基本給を上げるだけでなく、技術力や貢献度を適切に評価する歩合制度の設計が効果的です。
また同調査によれば、理想の歩合率として10〜15%を支持するアイリストが多く、基本給と歩合のバランスについては「基本給が高く歩合率が低い」体系を望む声が主流となっています。
さらに、64%のアイリストが転職を検討しており、その理由としては「単価が高い店に行きたい」(35%)という回答が最も多くなっています。
注目すべきは、給与が下がる転職でも「休日が増える(54%)」、「勤務時間に融通が利く(40%)」などの条件があれば受け入れられるとの回答が多い点です。これは金銭的な報酬だけでなく、ワークライフバランスの実現が定着率向上に重要な要素であることを示しています。
3.サービス品質の安定化
適切な給与体系の構築は、アイリストのサービス品質を安定させる重要な要素です。十分な報酬を得ているスタッフは、経済的な不安から解放され、目の前のお客様へのサービス提供に集中できます。
特にまつ毛エクステンションのような繊細な技術を要する施術では、アイリストの集中力と丁寧さが仕上がりに直結するため、精神的なゆとりが品質の安定化につながります。
アイリストにとって理想的な給与体系は、安定した基本給と成果に応じた歩合のバランスが取れたものです。基本給が生活の安定をもたらし、歩合制度が技術向上と丁寧なサービス提供へのモチベーションを高めます。
リジョブの調査によると、給与に満足しているアイリストの43%が「自分の能力が評価されていると感じる」と回答しており、適正な評価と報酬がサービス品質の向上につながることを示唆しています。
アイリストの給与設定で重要な5つのポイント
アイリストの給与設定で重要なポイントは次の通りです。
- 技術に応じた給与設定
- インセンティブ制度の導入
- 資格取得を促す制度の導入
- 市場にマッチした給料設定
- 経営状況に合った給料設定
それぞれのポイントについて解説します。
1.技術に応じた給与設定
アイリスト業界において、技術レベルに応じた明確な給与区分を設けることは、スタッフのキャリア形成と成長意欲を促進する上で非常に重要です。
厚生労働省の調査によれば、美容師の年齢別年収は25〜29歳で約382万円、30〜34歳で約468万円と、経験とスキルに応じて大きく上昇する傾向がみられます。アイリストにおいても同様の傾向があり、技術の習熟度に連動した給与体系の構築が求められています。
技術レベルは一般的に「新人(経験1〜2年)」「中堅(経験3〜5年)」「ベテラン(経験6年以上)」などと区分され、それぞれのレベルに応じた明確な給与設定があることで、スタッフは自身のキャリアパスを具体的にイメージできるようになります。
たとえば、新人は基本的な施術技術の習得に重点を置き、中堅になると応用技術や顧客管理スキルが求められ、ベテランではより高度な技術や後進の指導能力が評価されるという具合です。
このような段階的な給与体系は、スタッフの成長意欲を刺激するだけでなく「次のステップに進むために何を学ぶべきか」という明確な目標設定にもつながります。技術評価の基準を透明化し、定期的な技術チェックやアセスメントを実施すれば、給与アップへの道筋が見えやすくなり、スタッフの自己啓発意欲も高まるでしょう。
2.インセンティブ制度の導入
アイリスト業界における効果的なインセンティブ制度は、スタッフのモチベーション向上と業績アップに直結します。リジョブの調査によれば、給与に満足しているアイリストの43%が「自分の能力が評価されていると感じる」と回答しており、成果が適切に評価・還元されることが満足度の重要な要素となっています。
インセンティブ制度の設計にはさまざまなパターンがありますが、特に効果的なのは個人の施術売上に連動した歩合制度です。アイリスト業界では10〜15%程度の歩合率が理想とされていますが、単に売上全体に対する一律の歩合ではなく、目標達成度や前月比伸び率などを加味した段階的な歩合率の設定が効果的です。
たとえば、目標売上の80%達成で基本歩合、100%達成で基本+2%、120%達成で基本+5%といった具合に設定することで、常に高い目標に挑戦する意欲を引き出せます。
また、顧客のリピート率も重要な評価指標です。新規顧客の獲得も大切ですが、定期的にメンテナンスが必要なまつ毛エクステンションにおいて、リピーターの確保は安定した売上に直結します。
3.資格取得を促す制度の導入
アイリスト業界において専門資格の取得を奨励し手当に反映させる制度は、スタッフの技術力向上とサロン全体の価値向上に大きく貢献します
たとえば、一般社団法人日本まつ毛エクステンション認定機構(JECA)の「まつ毛エクステンション1級〜3級」や「安全技術師」など、業界にはさまざまな専門資格が存在します。これらの資格取得を経済的な面でサポートし、取得後は資格手当として給与に反映すれば、スタッフのモチベーションを高められます。
資格取得支援制度の具体的な方法は以下です。
- 受験料の全額または一部を会社が負担
- 資格取得のための研修や勉強会を勤務時間内に実施
- 資格取得のための休暇制度を設ける
4.市場にマッチした給料設定
アイリスト業界において、地域や市場の相場に合わせた適切な給与設定は、人材の確保と定着率向上に不可欠です。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、美容師の年齢別平均年収は25〜29歳で約382万円、30〜34歳で約468万円となっています。アイリストの給与相場もこれに近い傾向にありますが、求人ボックスの調査によると、全国平均年収は374万円、地域別では関東地方の時給が最も高く1,112円、九州・沖縄地方が最も低く998円と、地域差が存在します。
市場相場を把握するための情報源としては、厚生労働省の統計調査以外にも、リジョブなどの業界専門求人サイトが公開している給与調査レポートが参考になります。
アイリストを対象とした同調査によれば、月収の理想額は「26〜30万円」と「31〜35万円」に集中しており、この水準を目安に基本給を設定することで、求職者の期待に応える魅力的な条件を提示できます。
5.経営状況に合った給料設定
給与設計を考える際は、売上に対する人件費率を適切に設定するのがポイントです。たとえば、人件費以外にも家賃や広告宣伝費、消耗品費などの固定費があるため、全体のバランスを考慮した設計が不可欠です。
また、給与だけでなく福利厚生を含めた総合的な待遇設計も重要です。社会保険完備、有給休暇、産休・育休制度、資格取得支援など、金銭以外の待遇も従業員の定着率向上に大きく影響します。
リジョブの調査によれば、給与が下がる転職でも「休日が増える(54%)」「勤務時間に融通が利く(40%)」などの条件があれば受け入れられるとの回答が多いことから、ワークライフバランスを重視した総合的な環境整備も給与設計と同様に重要といえます。
経営状況に応じた給与設計の具体的なステップとしては、まず過去の売上データを分析し、年間を通じた収益の変動パターンを把握します。
その上で、繁忙期と閑散期の差が大きい場合は、基本給と歩合のバランスを調整して、従業員の収入の安定化を図る工夫が必要です。たとえば、基本給をやや高めに設定し歩合率を抑える方法や、歩合率は高めに設定しつつ最低保証給を設ける方法などが考えられます。
アイリストの採用で失敗を防ぐ4つのポイント
アイリストの採用で失敗を防ぐポイントは次の通りです。
- 従業員ファーストな環境を構築する
- アイリストの利用率が高い採用媒体を活用する
- 業界に特化した求人媒体を活用する
- 給与アップが難しい場合は他の魅力をアピールする
それぞれのポイントについて解説します。
1.従業員ファーストな環境を構築する
アイリスト採用の成功は、給与だけでなく「働きやすい環境」が決め手となります。前述した通り、リジョブの調査によれば、アイリストが転職先に求める条件として「休日が増える(54%)」「勤務時間に融通が利く(40%)」といった労働環境に関する項目が上位に挙げられています。これは給与以上に働きやすさが重視されている証拠です。
つまり「従業員ファースト」の考え方を取り入れたサロン経営は、採用と定着の両面で大きな効果を発揮します。
美容業界でコンサルティングを行う株式会社CSのオフィスマネージャー、逸見海斗さんは次のように述べています。
大切にしているのは、従業員ファーストです。サービスを直接届ける現場スタッフが幸せでなければ、お客様を幸せにすることはできないので、従業員が働きやすい環境づくりにはとくに力を入れています。ちなみに弊社の年間離職率は5%です。
引用元:モアリジョブ|「株式会社CS」オフィスマネージャー逸見海斗さん
この事例からも分かるように、従業員を第一に考える経営姿勢は、驚異的な低離職率につながっています。厚生労働省の調査によるとアイリストを含む生活関連サービス業の平均離職率は18.7%であるため、5%という数字は圧倒的な定着率を示しています。
従業員ファーストな環境を構築するためには、具体的な制度設計が重要です。たとえば、完全週休二日制の導入、残業ゼロの徹底、有給休暇の取得促進などの「ワークライフバランス」を重視した制度の設計です。さらに、育児や介護などのライフイベントに柔軟に対応できる時短勤務制度や、スタッフの希望を反映したシフト作成なども効果的です。
2.アイリストの利用率が高い採用媒体を活用する
アイリスト採用成功のカギは、ターゲットとなる求職者が実際に利用している媒体選びにあります。ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、アイビューティー(アイリスト)業界での転職媒体として最も利用率が高いのは「美容サロン検索サイト」で28.7%となっています。
特に注目すべきは、一般的な求人媒体とは異なる傾向が見られる点です。ハローワークの利用率は25.5%と一定の利用があるものの、美容業界に特化したチャネルの方が利用率が高い結果が出ています。これは、アイリストが自分のキャリアに関連性の高い専門媒体を重視する傾向があることを示しています。
美容系専門の求人サイトを活用するメリットはいくつかあります。まず、アイリスト職を積極的に探している求職者にピンポイントでアプローチできる点です。
一般的な求人サイトでは、職種が多岐にわたるため、専門性の高いアイリスト人材にリーチしにくくなります。専門サイトでは、すでにアイリスト職での就業を決めている層にダイレクトにアプローチできるため、応募の質が高まります。
また、採用媒体を選ぶ際は、単一の媒体に頼るのではなく、複数の媒体を組み合わせる戦略も効果的です。主力となる美容系専門サイトに加え、フリーペーパー(利用率21.3%)や、各サロンのホームページ(利用率28.7%)なども活用し、多角的なアプローチを心がけましょう。
3.業界に特化した求人媒体を活用する
アイリスト採用の成功には、業界特化型の求人媒体を活用することが非常に有効です。一般的な求人サイトと比較して、美容・ヘルスケア業界に特化した求人媒体は、志望するアイリストにより効率的にアプローチできるという大きなメリットがあります。
たとえば、特化型サイトのひとつ「リジョブ」の場合、求職中のアイリストに役立つコンテンツが多く、具体的には「アイリスト 給料」や「アイリスト 将来性」などのキーワードで、媒体内のコンテンツが検索結果上位に表示されています。
求職中のアイリストに役立つ情報が検索結果に上位表示されるため、そこからアイリスト志望者のアクセスを集められます。その結果、媒体にアクセスしたアイリストからの求人票への応募が期待できるのです。
さらに特筆すべきは、業界特化型求人媒体の「転職満足度」の高さです。リジョブの場合、転職満足度98%という高い数値を誇っています。これは求職者と企業のマッチング精度の高さを示しており、採用後の早期離職リスクを低減する効果も期待できます。美容業界の高い離職率を考えると、この点は非常に重要な要素です。
求人媒体選びは、単に掲載料の安さで判断するのではなく、ターゲットとするアイリスト人材へのリーチ力と、マッチング精度の高さを重視することが、採用成功のカギとなるでしょう。
リジョブの実績や特徴はこちらからご覧ください。
4.給与アップが難しい場合は他の魅力をアピールする
経営状況などの理由で給料アップが難しい場合でも、別の面で満足度を高める工夫は十分可能です。
リジョブの調査によれば、転職で給与が下がることを受け入れる条件として「休日が増える」(54%)が最も多く、次いで「勤務時間に融通が利く」「新たな分野にもチャレンジできる」といった項目が上位にランクインしています。これは、金銭面以外の要素でも十分に満足度を向上できることを示しています。
まず休日面での改善は最も効果的です。美容業界は土日祝日が繁忙期となるため、週休二日制の完全実施が難しいケースも多いですが、平日の休みを固定化したり、連休取得を可能にしたりするだけでも、プライベートの充実につながり満足度は大きく向上します。
また、年間休日数を業界平均より5日でも多く設定するだけで、求人票での訴求力は格段に高まります。
勤務時間の柔軟性も重要な要素です。特にアイリスト業界では女性比率が高く、育児や家庭との両立を重視する傾向があります。
時短勤務制度や、シフト制での柔軟な働き方を導入することで、ライフスタイルに合わせた働き方が実現でき、長期的な定着率向上につながります。同調査でも、特に6〜9年のキャリア層では「勤務時間に融通が利く」点を重視する傾向が強く見られます。
その他、「オーナーとの相性が良い」「スタッフとの相性が良い」といった人間関係の良さも重視されています。よって、定期的な面談や社内イベントなどを通じたコミュニケーションの活性化、風通しの良い職場づくりも、給与面を補う重要な要素となるでしょう。
まとめ
アイリストの給与設定と採用において、現役アイリストに対する調査データを元に導き出された重要ポイントは以下の3つです。
- 安定した基本給をベースに成果に応じた報酬体系を設計する
- 技術レベルに応じた明確な給与区分と成長につながるインセンティブを設ける
- 給与だけでなく休日や勤務時間の柔軟性も含めた総合的な待遇を提供する
適切な給与設計は単なる人件費ではなく、人材確保と定着率向上のための重要な投資です。本記事を参考に、自サロンの状況に合った給与体系を構築し、優秀なアイリストの採用と定着を実現しましょう。

- 執筆者情報
- 山田 大地(Yamada Daichi)