新卒の離職率とは?大手でも関係なし!産業別の傾向や離職原因を解説!
X(Twitter)で退職代行というキーワードがトレンド入りするほど、新卒の若者に関する離職が注目されています。NHKでも取り扱うほどになっており、退職代行業者のインタビューの中には、次のように新卒者の依頼が増えているようです。
この企業では4月1日から4月15日までに678件の依頼があり、このうち、16%あまりにあたる110人が新入社員でした。去年は、4月の1か月間で50人ほどだったということで、大幅に増えています。
※引用:NHK首都圏ナビ|NHK
NHKの特集の中には、人が集まる都市部であっても美容師の働き手不足が深刻で、席が空いているのに予約が取れない状況になっているという内容も紹介されていました。新卒者がすぐに離職しやすい業界として有名な美容師業界では、安い給料や結婚、子育てなどの幅広い問題を抱えているからです。
とはいえ、少子高齢化によって起こる人口減少で、どの業界でも人手不足が深刻になっており、このニュースは他人事ではないと感じる人は少なくないでしょう。そこで新卒者の離職率についての情報や離職する要因、さらに新卒者の離職率を下げるための対策についても解説してあります。若手が少なくなっていて、人手不足に危機感のある人は参考にしてみてください。
離職率とは?
帝国データバンクによると、正社員の人手不足は52.6%となっており、一部の業界では約7割もの企業が人手不足だと答えています。離職率が高いまま放置していると、慢性的な人手不足に陥りやすいといわれており、それだけ経営を続けていく上で離職率を意識することの重要性が高くなってきているといえるでしょう。
離職率について知るためには、言葉の意味や定義などを理解しておかないと正しい判断ができません。そこで離職率の言葉の定義や計算方法、定着率との違いについてまとめてあります。それを参考に、自社の新卒の離職率について考え直してみましょう。
離職率とは?
この記事で紹介する離職率とは、今の仕事から離れた割合のことです。退職ともいわれるもので、ザックリ言うと同じ意味だと思っていいでしょう。解雇であっても自己都合で退職した人であっても同じ離職とカウントされます。ただし国が出している統計の中には、退職後に次の仕事が決まっていない状態を離職という言葉を使う時があるので注意しましょう。今回の定義とは少しだけ意味が違います。
離職率の計算方法については、様々な種類があります。例えば、月間離職率と年間離職率です。年間での離職率を計算できれば、日本の統計と比較しやすくなり、自社での新卒の離職率の目安がわかるようになります。面談などを使って社員とコミュニケーションがとれていれば、月間離職率の計算で新卒の離職率が増えた原因を把握しやすくなるでしょう。
離職率の計算については、以下で詳しく解説します。自社で計算できるようになると、社内のトラブルを把握しやすくなるので、覚えておいて損はありません。
定着率との違い
定着率は、離職率と正反対の意味で使われる統計です。離職をせずに、自身が勤める企業に在籍し続けている人の割合を指します。定着率が高い企業は、社員たちにとって居心地のいい企業であり、魅力的な数値ともいえるでしょう。逆に離職率が低くなるので、相関関係にあると思っておいてください。
定着率の計算については次のようになります。
【企業に在籍している人の数 ÷ 入社時の在籍人数 × 100 = 定着率(%)】
これが基本となる定着率の計算方法です。上記でも紹介しましたが、定着率も月間や年間の計算方法など、様々な種類があります。
【(〇年に在籍していた人の数 - 〇年に離職した人数)÷ 入社時の在籍人数 × 100 = 年間定着率(%)】
上記は年間の定着率を表しています。内容を少し置き換えると離職率の計算も可能です。新卒の離職率の計算については、次のように計算します。
【新卒社員の離職人数 ÷ 新卒社員の在籍人数 × 100 = 新卒社員の離職率】
この計算方法ではなくても、定着率から100を引いてしまえば離職率になります。例えば、定着率が80%なら離職率は20%です。どちらか一方の計算方法がわかっているだけで、離職率も定着率もわかるようになるので覚えておきましょう。
新卒者の離職率
厚生労働省が出している「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」を見れば、新卒者の3年以内の離職率がわかります。
・高卒就職者:37.0%
・大卒就職者:32.3%
約3割の新卒者が3年以内の離職しており、各業界の人手不足の深刻さがこれだけでもわかります。しかし、これから紹介する新卒者の過去の離職率の統計を見れば、さほど違いがありませんでした。違いがないということは、若手の人材流出を防ぐ対策をしても、さほど変化がなかったことがわかります。
新規高卒就職者
新規高卒就職者に関する離職率は、令和2年の段階で37.0%となっています。平成16年が49.5%と過去に最も高い離職率となっていましたが、そこから徐々に下がり始めて、平成22年から令和2年までほとんど同じ離職率です。就職して1年目で離職する新規高卒就職者が平成16年付近では多かったのですが、令和2年では15.1%と就職して3年目の新規高卒就職者の離職率に近づいています。
新規大学卒就職者
新規大学卒就職者 に関しては、3年目の新規大学卒就職者の離職率が令和2年時点で32.3%となっています。離職率の数値の変化を比較すると新規高卒就職者の離職率よりは低くなっていますが、平成16年をピークに離職率が低下していき、平成22年からはほぼ横ばいです。
就職して1年目で離職する新規大学卒就職者も全体的に少なく、3年目で離職した新規大学卒就職者と大きな違いはありません。新規高卒就職者と比較して、新規大学卒就職者のほうが安定している印象です。
離職率の高い産業
産業別での新卒者の離職率を比較 してみると、主にBtoCでの業種の離職率が高い傾向があります。新規高卒就職者も新規大学卒就職者も同じです。以下は離職率が比較的高かった業種をまとめています。
産業 |
新規高卒就職者 |
新規大学卒就職者 |
宿泊業,飲食サービス業 |
62.6% |
51.4% |
生活関連サービス業,娯楽業 |
57.0% |
48.0% |
教育,学習支援業 |
48.1% |
46.0% |
小売業 |
48.3% |
38.5% |
医療、福祉 |
46.4% |
38.8% |
長時間労働の影響で束縛時間が比較的長く、土日や祝日などの休日出勤が多いところも大きな原因になっているからでしょう。ここ最近の若者が求める仕事の捉え方が変わっており、家庭を重視している人が増えているのも大きな要因といえます。
新卒者が離職する要因
アデコ株式会社が行ったアンケートでは、3年以内に離職してよかったと答えた新卒者が、77.3%という大きな数値を出しています。なぜここまでの多くの新卒者が、3年以内に離職して満足できるのか調べてみたところ、厚生労働省が調査しているデータがありました。それを参考に、新卒者が離職する要因についてまとめてあります。
業務のミスマッチ
新卒者が3年以内に離職する要因となっているのは、業務のミスマッチです。理想となる働き方ができると思って入社したのに、実際に働いてみると、理想と現実のギャップで仕事へのモチベーションが上がらず、すぐに離職してしまうといったケースは少なくありません。
「前職の離職を決意する決め手となった理由」という厚生労働省での統計では、「仕事が面白くない」と答えた人の割合が12.8%と比較的多く、「会社の経営者や経営理念・社風に合わない」と答えた人も11.8%もいました。
また、職場を辞めた後に、次の職場を探していても、理想の仕事につけない若者も一定数います。その理由を聞いたところ、「「希望する職種・内容の仕事がない」と答えた若者が多かったというデータもあります。それだけ理想を高くもっている新卒者が少なくないと思っておきましょう。
――その後、長く大手のエステサロンに勤めていたのでしょうか。
いえ。辞めてまったく関係ないアルバイトとかをやっていました。大手のエステサロンは売り上げ重視。技術を一生懸命磨くというよりは、売り上げを上げることだけが目的という感じだったので、だんだんとつまらなくなってきてしまったんです。
※引用:モアリジョブ|エステティシャン 高橋ミカさん
新卒者の中には技術を早く学びたいと思っているのに、売上に直結する営業ばかりをさせられて、面白くないと感じる人も少なくありません。新卒の離職率を下げるためには、新卒者の希望に合わせて業務を任せるなど、柔軟な働き方ができる仕組みづくりが必要になります。
待遇や福利厚生に不満がある
「前職の離職を決意する決め手となった理由」という厚生労働省が出した統計では、「給与に不満」と答えた新卒者が26.6%と最も多い結果となりました。退職した新卒者の4人に1人が給与に対して不満を感じています。さらに、「労働時間が長い」と答えた新卒者も、給与に不満がある新卒者に次ぐ21.8%となっており、待遇や福利厚生がいかに大事かわかるかと思います。
しかし、現在では経営のやり方によっては、労働者に対する待遇や福利厚生を充実させることは可能です。実際に上記のように、待遇や福利厚生に力を入れようと、経営を工夫する企業は少なくありません。
世間では「美容師は給料が安い」とか「休みが取れない」と言われていますが、経営のやり方によっては給料をもっと高く、休みも取れるようになるのではないかと、可能性を感じられるようになりました。
※引用:モアリジョブ|大垣峰志さん
ここまで意識しないといけない理由は、仕事と家庭を両立させたい人が増えているからです。特に男性の育児への参加が一般的になっているところも大きいでしょう。社会全体が、男性の育児休暇を取得しやすい環境を整えようとしています。
厚生労働省によると、男性が休暇を希望した理由の中で「産後、妻が産院にいる間:67.4%」と「妻が退院するとき:71.1%」と、それぞれ高い数値と出ていました。女性に関して言えば、総務省の出した統計を見ると、仕事と家庭を両立する人の割合は73.4%とかなり高い数値が出ています。
つまり仕事と家庭の両立が一般的になりつつある現在では、労働環境などの待遇や自由に働き方が決められない職場だと思われると、離職する新卒者が増えてしまうリスクが高くなると思っておきましょう。
キャリア形成が見込めない
内閣府の経済社会等の日本の将来像に関する世論調査によると、全体の69.0%もの人が将来に不安を感じていると答えていました。日本経済が悪くなっているという自覚があるからでしょう。そこで内閣府では、「三位一体の労働市場改革の指針」の中で、次のように考えを推進するようになりました。
働き方は大きく変化している。「キャリアは会社から与えられるもの」から「一人ひとりが自らのキャリアを選択する」時代となってきた。
※引用:三位一体の労働市場改革の指針|内閣官房より
つまり、キャリア形成は企業に任せるのではなく、自身で考えるようにしようというものです。パーソル総合研究所が行ったアンケートでは、20代正社員のキャリアに対してのイメージが強まったという結果が出ており、キャリア形成に対しての意識の強さがこれだけでもわかります。それなのに、企業側でキャリア形成が見込めないとわかれば、離職率が高くなるのも納得できるでしょう。
企業の将来性に期待がもてない
少し昔の時代では、大手企業は安心という話があったのかもしれませんが、現在ではあまり楽観できない状態が続いています。大手証券会社でもあった山一証券が突然倒産したという話は、平成不況といわれる言葉の代表格のニュースでした。その後も北海道拓殖銀行が破産するなど、就職すれば安心といわれる時代は終わっています。
将来性のない企業で働いていると、急にリストラされるリスクも考えなければいけません。そのため、内閣府の世論調査では69.0%もの人が将来に不安を感じていると答えています。
ちなみに将来性がない企業とは、次のようなポイントに当てはまる企業です。
- 業績がよくない状態が続いている
- トラブルが多くて労働者のモチベーションが低い
- 人手が足りずにサービス残業も横行している
さらに離職率が高い企業は、将来性がないと感じられるポイントのひとつといわれています。新卒者から不振に思われないように、早めに対策を始めておき、若手の流出を防ぎましょう。人手が足りなくなるだけで労働者の余裕がなくなり、仕事へのモチベーションが下がります。業績を上げるためには、モチベーションが大事だという事例も少なくありません。
リピート率が50%のAさんが店長を任されていたお店に、Bさんというリピート率30%の人がきて、入れ替わったところ、その月にリピート率が逆転したんです。降格したAさんは30%になり、昇格したBさんは50%に。技術と接客が1カ月でそんなに変わるわけがないので、これはモチベーションの差なんだなと気付きました。
※引用:モアリジョブ|濱浩太朗さん
負のループが始まる要因となるので、職場の雰囲気はしっかりチェックしておきましょう。その都度仕組みを見直しておき、新卒者も含めて労働者が働きやすい環境を作っておくと、離職率低下の予防がしやすくなります。
人間関係がよくない
厚生労働省が発表した、現在の職場を離職した理由についての統計があります。その中で20~24歳の若者の1位が「人間関係がうまくいかなかったから」でした。38.4%と高い数値となっており、人間関係で離職するリスクが高まることがわかります。
特に現在では、セクハラやパワハラといったものが社会問題になっており、企業としても何かしらの対応をしないといけません。厚生労働省の「若者の離職理由」によると、「職場の人間関係がつらい」という理由で離職した若者が15.6%いました。さらに、「仕事上のストレスが大きい」と答えた人は21.7%と、それを上回る結果となっているからです。
化粧品販売会社から出向した先のY社において、美容部員として勤務していたXがY会社の実施する販売コンクールにおいて販売目標数を達成しなかったため、その後に開催された研修会において「罰ゲーム」として、Y社の従業員Y1らに意に反してコスチュームを着用して参加することを強制され、別の研修会でコスチュームを着用したスライドが投影されたことから、休業を余儀なくされる精神的苦痛を被ったとして、不法行為を理由として損害賠償を請求した。
※引用:パワーハラスメントの定義について|厚生労働省
このように業務上必要のない行為をさせて、精神が病み、休みをとらないといけないほど疲弊させた事例は少なくありません。休む程度なら未だしも、離職に繋がることもあります。
『院長と上手くいかずに悩みます。整骨院や治療院は上に立つ上司、つまり院長と仲が悪かったり、上手く行かなかったりするととても大変です(鍼灸師・29歳・男性)』
※引用:モアリジョブ
パワハラなどの人間関係の問題は、上司に相談して解決するケースもありますが、その上司との人間関係がよくない時はどうすることもできません。八方塞がりになれば、離職されるのも無理はないでしょう。
企業が新卒者の離職率を下げるためにできること
企業が新卒者の離職率を下げるためには、次のポイントを意識して経営のやり方を見直す必要があります。
- 採用の面接でミスマッチを防ぐ事前説明をしっかり行う
- 新入社員研修制度を充実させる
- 適切な労働時間管理
- キャリア支援を含めた育成を行う
- 人事評価制度の整備
- 社内コミュニケーションを活性化させる
それぞれどのポイントを意識して、新卒者の離職率を下げればいいのか具体例を出しながら紹介しています。
採用の面接でミスマッチを防ぐ事前説明をしっかり行う
レバレジーズ株式会社が作った「若いもの仕事白書」によると、現在の仕事に就いた理由についての統計を出してくれています。
- 1位 希望する仕事内容だったため(31.0%)
- 2位 最初に内定をもらえたため(8.8%)
- 3位 福利厚生が整っているため(8.4%)
- 4位 希望する収入が得られるため(7.6%)
- 5位 希望の勤務地で働けるため(7.4%)
これを見ればわかるように、仕事内容を重視して企業を選んでいる若者が、31.0%と3人に1人いることがわかります。しかし、自分のやりたい内容と違う仕事を任されたことに対して不満を感じ、離職している若者も少なくありません。
「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため(男性28.4%、女性20.4%)
※引用:「初めての正社員勤務先」を離職した理由|独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)
少し前の時代では、仕事はお金のためにするものだという考えもありましたが、現在の若者は違います。楽しさを重視して仕事を選んでおり、その結果が、上記のような統計として表れているのでしょう。つまり、新卒者の離職率を下げるためには、新卒者の希望する内容に合わせた仕事に就けるように仕組み化する必要があります。
新入社員の働く目的の推移をみると、2000(平成12)年以降、「楽しい生活をしたい」とする者の割合が大きく上昇して2012(平成24)年度には最も高い割合となり、逆に「経済的に豊かな生活を送りたい」とする者の割合は低下傾向にあり、働くことに関する最近の若者の意識は、経済的な側面よりも、自分自身が「楽しく」生活できるかどうかという点を重視していることが分かる。
※引用:仕事に関する意識|平成25年版 厚生労働白書
会社というのは慈善事業ではありません。利益が出ないと倒産してしまうので、新卒者の意見を全て受け入れられないのも事実です。そこで面接の段階で、丁寧に仕事内容についての事前説明を行いながら希望を聞きこんでおき、お互いのミスマッチが起こらないようにしましょう。面接を疎かにしていると、せっかく時間をかけていい人材を見つけたとしても、すぐに離職して若手が育たなくなってしまいます。
新入社員研修制度を充実させる
新人研修制度を充実させられれば、新卒者の離職率を下げられます。それは、新卒者の離職する原因となるポイントをカバーしやすくなるからです。厚生労働省が出した統計によると、20~24歳の若者の離職した原因の上位に、「人間関係がうまくいかなかった(38.4%)」や「賃金が低かった(23.8%)」、「労働条件(賃金以外)がよくなかった(22.3%)」となっています。
つまり、次のような原因で新卒者の離職率が高くなっているのなら、新入社員研修制度を充実させてみましょう。
- 新卒者のキャリア形成に力を入れていなかった
- 人間関係が原因で離職する新卒が多かった
- 新卒者の給料が安い
新入社員研修制度は、企業に必要なスキルや知識が学べるだけでなく、基礎的なコミュニケーション能力も向上できます。上記の原因に合わせた研修制度を作れば、新卒者の不満を解消しやすくなるでしょう。
有休を取りやすいなど福利厚生が充実していることと、研修制度が充実していることが理由だと思います。特に研修制度は半年をかけて、目もとの構造を学ぶ座学から具体的な技術の指導までカリキュラムを組んでいます。半年間で基準をクリアできなければ研修期間を延長して、とことん学んでもらいます。逆にマスターするペースが早ければ期間を短縮することもできるんですよ。
※引用:モアリジョブ|笛木清美さん
研修制度が充実していれば、求人が増えたという事例もあります。それだけ新卒者が見ている部分は給料だけではありません。新入社員研修制度を見直して、新卒社員のキャリア形成の手助けをしやすくしておきましょう。
適切な労働時間管理
適切な労働時間管理ができずに、長時間労働を続けていると新卒者に限らず、集中力が下がって100%の力で仕事をこなせなくなってしまいます。その結果、上司に怒られる頻度が増えるなどして、仕事へのモチベーションを低下させてしまうことは避けられません。仕事へのストレスが増大する原因となってしまうので注意しましょう。
法定の労働時間、休憩、休日
・使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
・使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
・使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
※引用:厚生労働省
このような適切な労働時間を管理できている企業だと、新卒者にとっても仕事をする上での安心材料となります。また、休日出勤を増やさないことも、新卒者の離職率を下げるポイントです。仕事も家庭も両立させたい若者が増えているからこそ、適切な頻度で休日を設けましょう。
また、経営者側が労働時間を守っているつもりであっても、新卒者にとっては仕事への負担が大きくなっているケースもあります。
当時働いていたサロンは朝練、夜練が毎日かならずあって、1日の拘束時間がかなり長かったのと、休憩時間もほとんどなく、1日中ひたすらにシャンプーをし続ける状態でした。1人ひとりのお客さまと向き合う時間もなく、当時は疲れ果てていましたね。
アシスタントなので仕方がない部分もあるのですが、それだけ拘束時間が長いのに、お給料が少ないことも追い打ちとなって・・・。まわりの友人が大学に通いながらアルバイトをして得ている給料よりも、少ないこともあったんです。毎日辞めたいと思っていましたし、家に帰ってよく泣いていました。
※引用:モアリジョブ|大野絵莉香さん
練習やスキルの勉強などは労働と関係ないからといって時間外手当も出さずにいると、新卒者のストレスが溜まり、離職率を上げるだけです。練習やスキルアップのための勉強を強制するのなら、時間外手当を出すなどして、新卒者の不満を溜めないようにしましょう。
キャリア支援を含めた育成を行う
新卒者の多くは社会人経験が少なく、キャリア形成についての知識もありません。しかし厚生労働白書によると、次のように自分のキャリアについての興味が強くなっている傾向があります。
企業の選択理由としては、「自分の能力・個性が生かせるから」とする者の割合が最も高くなっており、若者は、仕事をしていく上で、能力形成をしていけるかどうかという点を重視しているものと考えられる。
※引用:仕事に関する意識|平成25年版 厚生労働白書
「入社してみたけど何も教えてくれない会社だった」と新卒者が思えば、すぐに離職される可能性が高くなるので注意しましょう。また、現在の若者はスマホの普及によって、ネットリテラシーが高い人が増えています。就職先に関しても、スマホを使った情報収集で会社を比較し、就職先を決めている人も多いと言います。
現代の学生はネットリテラシーが高いため、さまざまな情報をたくさん取り込み、その中から取捨選択をしているようです。現に、試験に来る人たちの多くがほかのサロン様と比較した中から選んで来てもらっています。
10年前は、サロンのブランド力を比べて選ぶのが主流でしたが、今は「働いている人」にスポットが当たっていると思います。
※引用:モアリジョブ|池戸 裕二さん
キャリア支援を含めた育成に力を入れるのなら、ネットを使って情報を拡散できるようになっておきましょう。離職率対策としてだけでなく、求人数も増える可能性があります。
人事評価制度の整備
厚生労働省が出している「前職の離職を決意する決め手となった理由」では、給料に対する不満と答えた人が26.6%もいて、離職した転職者の中で1位となっています。それだけ賃金に対する不満は大きいので、人事評価制度の整備は必須事項です。
人事評価制度は昇給に関わるため、新卒者の仕事へのモチベーションを維持する大事なポイントです。人事評価制度を作るだけでなく、新卒者がわかりやすい内容に整備しておくようにしましょう。中には昇給の内容にこだわって様々なルートを作って昇給しやすくし、離職率を下げたという企業もあります。
ネイル業界は、なぜこんなにも個人サロンという形での独立が多いのか?と問いを立てた時に、現存の人事評価制度に問題があることに気がつきました。キャリアプランが「管理職への昇進」一辺倒なんです。プレイヤーがより高い収入を得るには、管理職になるしかない。でも本来は、プレイヤーとしてその腕を磨き続けることも、リーダーになることと変わらず尊いはず。
リーダーになることや、数字管理を苦手とする人もいて当然です。そういう人達も、頑張った分だけ高い収入になるような人事評価システムを構築しています。
※引用:モアリジョブ|木下さとこさん
現在は多様性の時代ともいわれていますが、自由な働き方ができて多様性を許容している企業だと、若者にも魅力的に感じるのではないでしょうか?新卒者が自由に働いて給料がアップできれば不満も溜まりにくくなり、離職率を下げられるポイントとなります。
社内コミュニケーションを活性化させる
厚生労働省 の「前職の離職を決意する決め手となった理由」の中で、人間関係によって離職したと答えた人の割合が15.6%と多かったように、新卒者とのコミュニケーションが円滑になるような仕組みを作ることも大事になります。やり方は様々ありますが、積極的に新卒者への面談を定期的に行うことを大事にしている企業もあります。
面談では仕事からプライベートまで、何でもフランクに話してもらうようにしています。実際、スタッフからも「話を聞いてもらうと安心する」と言われていて、「松尾クリニック」と呼ばれるほど気軽に相談できる存在になれています。みんなが挫けそうになった時にもうちょっと頑張ろうと思えるように、この役目は続けていきたいです。
※引用:モアリジョブ|松尾薫さん
ここで大事になるのは不満を少なくさせるというよりも、社内の雰囲気を悪くさせないことです。例えば上司に仕事のアドバイスをもらいたいと新卒者が思ったとしても、社内の雰囲気が悪いと聞きたいことも気軽に相談できません。気を遣って相談できたとしても、徐々にストレスが溜まって、それが離職のキッカケになる可能性すらあります。
社内の雰囲気をよくするためにも、コミュニケーションを活性化させる取り組みを行いましょう。
まとめ
2024年の現在では、退職代行サービスの依頼が急増し、新卒者の離職に対して注目されている時代になりました。離職率が高くなれば、人手不足も深刻化し、会社の業績も悪くなる一方です。
特に4月の初旬に退職代行を利用する新入社員が大幅に増えており、問題の深刻さが浮き彫りになっています。新卒者がすぐに離職するのは、次の4つの理由が考えられます。
- 業務のミスマッチや待遇への不満
- キャリア形成が見込めないこと
- 企業の将来性に対する不安
- 人間関係の悪さ
これに対し、企業が新卒者の離職率を下げるためには、採用時には希望の働き方を聞き出し、丁寧に業務内容を説明していきましょう。
さらに、研修制度の見直しを早急に始めて、家庭などのプライベートの時間を確保しやすい労働環境も作るようにしてください。社内でのコミュニケーションを取りやすくするために、面談はもちろん、雰囲気のいい会社づくりに力を入れることも大事になります。ここまで徹底して新卒者が違和感なく働ける企業の仕組みづくりができれば、徐々に離職率は下がっていくはずです。
まとめ
2024年の現在では、退職代行サービスの依頼が急増し、新卒者の離職に対して注目されている時代になりました。離職率が高くなれば、人手不足も深刻化し、会社の業績も悪くなる一方です。
特に4月の初旬に退職代行を利用する新入社員が大幅に増えており、問題の深刻さが浮き彫りになっています。新卒者がすぐに離職するのは、次の4つの理由が考えられます。
- 業務のミスマッチや待遇への不満
- キャリア形成が見込めないこと
- 企業の将来性に対する不安
- 人間関係の悪さ
これに対し、企業が新卒者の離職率を下げるためには、採用時には希望の働き方を聞き出し、丁寧に業務内容を説明していきましょう。
さらに、研修制度の見直しを早急に始めて、家庭などのプライベートの時間を確保しやすい労働環境も作るようにしてください。社内でのコミュニケーションを取りやすくするために、面談はもちろん、雰囲気のいい会社づくりに力を入れることも大事になります。ここまで徹底して新卒者が違和感なく働ける企業の仕組みづくりができれば、徐々に離職率は下がっていくはずです。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部