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美容室の人件費とは?利益を左右する各経費や削減事例を紹介

美容室の人件費とは?利益を左右する各経費や削減事例を紹介

美容室の人件費とは、美容室を運営する上で従業員に支払われる費用の総称です。給与や各種手当のほか、福利厚生費や教育費なども含まれており、利益を高めるためには見直しや最適化が欠かせません。

そこで本記事では、美容室における人件費やその他経費について整理した上で、利益を高めるポイントを経費削減と生産性向上の観点から解説します。さらに、具体的な事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

美容室の人件費とは

美容室の人件費には、福利厚生費や研修費など、従業員に関するコスト全般を含みます。美容室経営において人件費は多くの割合を占めるため、適切な管理が求められます。

下記は、美容室の人件費にあたる主要な項目を一覧表にまとめたものです。

▼美容室の人件費一覧

項目名

概要

基本給

スタイリストをはじめ各スタッフに支払われる固定給。経験やスキルに応じて金額は異なる。

歩合給

各スタイリストの売上や店舗全体の業績に応じて支払われる成果報酬。

技術手当

特定のスキルや技術を持つスタッフへの追加報酬。

役職手当

店長やリーダーなど、役職に応じた手当。

資格手当

美容師免許以外で業務に有効な資格保持者への手当。

賞与(ボーナス)

年末や半期ごとに支払われる成果に基づく特別報酬。

福利厚生費

従業員が働きやすい環境を整えるための費用。

・社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険など)

・通勤費

・制服や道具の支給費用

・健康診断の費用

教育・研修費

スキルアップのための研修や講習会への参加費用や、店舗独自のトレーニングプログラムの実施費用。

退職金

一定期間以上勤務したスタッフに対して退職時に支払われる金銭。

美容室の経費のうち人件費が占める割合

美容室における経費のうち人件費が占める割合は、約40%です。

以下は、業界別に経費のうち人件費が占める割合を示した一覧表です。厚生労働省による中小企業実態基本調査(厚生労働省:令和5年版)を基に作成しました。

◆経費のうち人件費が占める割合一覧表(業界別)

業界名

経費のうち人件費が占める割合

生活関連サービス業のうち、

理容・美容・洗濯・浴場業

41.9%

建設業

46.3%

製造業

43.8%

情報通信業

45.7%

運輸業・郵便業

43.1%

卸売業

45.4%

小売業

42.2%

宿泊業、飲食サービス業

43.2%

各業界とも、経費のうち人件費が占める割合には大差がありません。

なお、統計上「生活関連サービス業のうち、理容・美容・洗濯・浴場業」には、理容・美容以外の業種も含まれます。ただ一般的にも美容室における経費のうち人件費が占める割合は40~50%程度といわれているため、目安としては「約40%」と理解しておけば問題ないでしょう。

美容室の利益を左右する人件費以外の経費

人件費以外にも様々な経費があります。店舗の利益率アップにつなげるためにも、以下の各項目について理解しておきましょう。

消耗品費

美容室では、シャンプーやトリートメント、カラー剤、パーマ剤、スタイリング剤など、多くの消耗品を日常的に使用します。いずれもサービス提供に欠かせないアイテムであり、経費においても一定の割合を占めます。

また、タオルやヘアブラシ、ケープ、フェイスパッドなど、施術や接客に用いる各種備品も消耗品費に含まれます。

地代家賃

店舗を借りる場合には地代家賃が発生します。賃貸契約では、家賃だけでなく契約期間や更新料、敷金・礼金などの諸費用も考慮しなければなりません。

また、美容室を運営する上での理想的な家賃比率は、売上に対して10%未満といわれています。例えば、店舗の売上が月150万円の場合なら、家賃は15万円以下です。

なお、厚生労働省による中小企業実態基本調査(厚生労働省:令和5年版)を基に算出すると、美容室が属する「生活関連サービス業のうち理容・美容・洗濯・浴場業」の家賃比率は「4.8%」でした。他業界も含む数値とはいえ、理想的な数値を維持できている企業・店舗が多いようです。

水道光熱費

美容室ではシャンプーの際に水を多く使用するため、水道代が高額になりがちです。ドライヤーやスタイリング器具の使用頻度も高く、電気代もかかります。

水道光熱費を適正に抑えるためには、節水やエネルギー効率の良い設備への変更、営業時間外の無駄な電気使用を避けるなどの工夫が求められます。

広告宣伝費

美容室の認知度を高めて顧客を増やすためには、広告宣伝費の投入が欠かせません。例えば、チラシ作成やポスティングの費用、SNS広告・ホームページの運営費など、顧客獲得に向けた施策には費用がかかります。

広告宣伝費において無駄な支出を避けるためには、ターゲット層を明確にした上で的確にリーチできる手法と媒体を選び、費用対効果を検証することが重要です。

減価償却費

美容室の設備や内装、施術用の機器類(シャンプー用の椅子、カラー用の設備、各種スタイリング器具)などは、経年劣化や使用によって価値が減少します。そのため、会計上「減価償却費」として経費計上されます。

例えば、50万円で購入したシャンプー椅子が5年間使用できる場合、1年あたり10万円の減価償却費として計上します。設備投資を行う際には、事前に減価償却費を計算し、長期的な経費負担を把握しておくのがよいでしょう。

その他の経費

美容室の経営では、その他にもさまざまな経費が発生します。例えば、各種税金や火災保険料、清掃費、駐車場代、通信費、セキュリティ対策費などが挙げられます。

細かい出費も含まれており、積み重なることで経営を圧迫する可能性があります。経費の明細を定期的に確認し、無駄な支出がないか見直すようにしましょう。

美容室の経費を抑えて利益を高める重要ポイント

美容室の経費を抑えて利益を高めるための重要ポイントを、4つ紹介します。

人件費の削減は慎重に行う

人件費は美容室経費の中で最も大きな割合を占めますが、削減には注意が必要です。単に給与を下げたり人員を減らしたりするだけでは、スタッフのモチベーション低下や離職率の増加を招き、結果的にサービス品質の低下や顧客離れを引き起こすリスクがあります。

下記の通り美容就業実態調査2024においても、美容師が転職した理由の1位は「給与に対する不満」であったことからも、より慎重に行うべきといえます。

▼美容師が転職した理由

美容師が転職する理由

割合

給与に対して不満があったから

33.7%

サロンの雰囲気やテイストが合わなかったから

21.8%

仕事内容がハードだったから

20.0%

拘束時間に関して不満があるから

19.3%

上司(オーナーや店長など)と考え方・意見が合わなかったから

18.0%

働いているスタッフの人柄が良くない・自分とは合わなかったから

15.7%

また人材難の現代において、新たな人員を確保するには相応の採用コストを要します。そのため、既存スタッフの生産性向上を図った上で給与を高め、定着率アップにつなげる方が得策です。詳しくは、次の項目で述べます。

定着率を高め、採用費を抑える

スタッフの離職率が高いと、新規採用にかかるコストが増え、美容室経営の負担となります。定着率を高めれば、採用費の削減とともに店舗運営の安定化が図れます。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

  • 働きやすい職場環境の整備

柔軟なシフト管理や有給休暇の取得推進により、スタッフの満足度を向上させる。

  • キャリアパスの提示

昇給や役職の明確な基準を設け、長期的に働く意欲を引き出す。

  • コミュニケーションの強化

スタッフ間やオーナー・店長との信頼関係を築き、働き続けたいと思える職場環境を整える。

薬剤やタオルなど消耗品の仕入を見直す

美容室で使用する各種薬剤やタオルなどの消耗品は、日々の営業活動に不可欠であり、使用量も相当です。そのため、仕入や管理方法の見直し次第でコストを大幅に削減できる可能性があります。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

  • 仕入先の比較検討

複数の仕入業者を相見積もりで比較し、同品質でより安価な供給元を選定する。

  • 共同仕入れの実施

近隣の美容室や同業者と連携し、大量購入による割引を受けられる「共同仕入れ」により単価を抑える。

  • 在庫管理の徹底

過剰発注や在庫切れを防ぐため、月ごとの使用量を把握し適正な発注量を維持する。

  • リフィル製品(詰め替え用品)の活用

シャンプーやトリートメントの詰め替え用を購入することでコストを削減する。

  • タオル管理の効率化

リースや業務用クリーニングではなく、工数や負担を勘案しつつ自店舗での洗濯を検討する。

広報手段の最適化で広告宣伝費を抑える

新規顧客を獲得するためには、広告宣伝費も必要です。より効果的な手段を選ぶことでコストを削減できます。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

施策

内容

SNSの活用

XやInstagram、TikTok、LINEなど、無料で利用できるSNSを活用して店舗の魅力を発信する。

口コミの促進

既存顧客に口コミやレビューを書いてもらうことで、広告費をかけずに新規顧客を呼び込む。

デジタル広告の効率化

Google広告やFacebook広告のターゲティング設定を最適化し、無駄な広告費を削減。

地域密着型の宣伝活動

地域イベントへの協賛や地元企業との連携を通じて、低コストで効果的な宣伝を行う。

ただし、「口コミの促進」について「高評価をすると割引」のように、何らかのインセンティブと引き換えに高評価を求める行為は、景品表示法(ステルスマーケティング告示)違反となるため注意しましょう。

美容室の生産性を上げて利益を高める重要ポイント

美容室の利益を高めるには、人件費などの経費を削減するだけでなく、店舗運営およびスタッフの生産性を向上させることが重要です。そのためのポイントを、3つ紹介します。

定着率・活躍率が高い人材を採用する

美容室の生産性を高めるためには、長く活躍し続けられる人材の採用が鍵です。もしミスマッチな人材を採用してしまうと、追加の採用コストがかかるだけでなく、チーム全体のモチベーション低下につながるなど生産性にも悪影響を与えます。

採用時に大切なのは、どの企業も欲しがるような人材を求めるよりも、自社でこそ活躍できる人材を選定し、その可能性を引き出す育成を行うことです。

そのため採用活動時には、応募者のスキルや経験だけでなく、働き方の価値観や職場文化との適合性を見極めるようにしましょう。特に「理念」に対する適合性を重視する企業は多く存在します。

第一条件は、会社の理念を理解してくれていること。「有名だから」「聞いたことがあるから」という感覚だと、もし入社できたとしても1年くらいで「何か違いました」と辞めてしまうことが多いんです。

引用:モアリジョブ|株式会社エターナル 準執行役員/LallYou 渋谷 代表 守道さん

いい人材が集まってくれたことが、とても大きいと思っています。弊社の理念に共感し、お店を展開していくことを一緒に楽しみながら成長してくれるスタッフが揃ったときに、急激に成長をしたと感じます。

引用:モアリジョブ|リタ株式会社 営業最高執行責任者 小森谷亮太さん

人材育成によって生産性を高める

育成によって各スタッフの技術や接客力を磨き、美容室の生産性を高めましょう。スタッフ一人ひとりの能力を最大限に引き出せば、限られたリソースでも高い成果を得られます。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

  • 技術研修の定期実施

カットやカラーのスキル向上を目的とした社内外の研修機会を提供する。

  • 接客スキルの強化

顧客満足度を高めるコミュニケーションスキルや提案力のトレーニングを行う。

  • マルチタスクの推奨

アシスタントでも受付や在庫管理など複数の役割を担えるよう教育する。

  • 成果を評価する仕組み

売上や顧客満足度に応じたインセンティブ制度を設け、モチベーションを維持する。

こうした施策を通じたスタッフの成長は、店舗全体のサービスレベル向上につながり、生産性を底上げします。

IT化で業務の効率化を図る

業務の効率化は、美容室の生産性を向上させる上で欠かせない要素です。特にIT化を推進すれば、手間のかかる業務を効率化し、スタッフが本来の業務に集中できる環境を整えられます。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

  • 予約システムの導入

オンライン予約システムを導入することで、電話対応の負担を減らし、顧客の利便性を向上させる。

  • レセプションのIT化

受付や会計業務をタブレットや専用端末で自動化し、待ち時間を短縮するとともに、受付スタッフの負担を軽減する。

  • 売上管理ツールの活用

売上や在庫状況をリアルタイムで把握できるツールを導入し、経営判断を迅速化する。

  • 顧客データベースの整備

来店履歴や顧客の好みをデジタルで管理し、リピート率を高めるための接客に活用する。

  • 勤怠管理の自動化

出退勤やシフトの管理をクラウドツールで行い、管理業務の効率を高める。

こうしたITツールの活用により、業務の無駄を省きつつ美容室全体の生産性が高まれば、利益向上につながるでしょう。

美容室の経費削減や生産性向上に関する好事例

美容室の経費削減や生産性向上に関する好事例を、4つ紹介します。

完全マンツーマンの施術で人件費を抑えつつ差別化

美容室「hair dress V.I.E.W」は、競合店が高めの料金設定で顧客ごとにスタイリストとアシスタントをつけるなか、顧客とスタイリストの完全マンツーマンにより人件費を抑え、安価な価格設定を実現しました。その結果、経費削減および競合店との差別化に成功しています。

他のサロンよりも低価格の施術が維持できるのはアシスタントを一切雇わないでマンツーマンにしたからです。人件費をかけないことがコスト削減に繋がりましたね。

引用:モアリジョブ|美容室「hair dress V.I.E.W」オーナー 鎌田竜也さん

レセプションのIT化による経費削減と接客の質向上

美容室「ALBUM SHIBUYA」はレセプションのIT化によって、人件費を抑えつつ質の高い接客を提供する仕組みを構築し、競争力のある価格設定を可能にしました。結果として、美容室激戦区である渋谷において口コミ評価1位を獲得しています。

再来店以降は電話番号と生年月日を入れていただければ受付終了です。スタイリストがレセプションの仕事をすると、どうしてもお客様から離れる時間ができてしまいますが、まずそれがなくなりました。

(中略)顧客管理もすべてアプリなのでスマホひとつでできるので施術以外の仕事が楽になりましたね。それにより人件費のコストも圧縮されて、いまの価格を実現することができました。

引用:モアリジョブ|美容室「ALBUM SHIBUYA」マネージャー 積大輔さん

営業時間内のレッスンで残業を無くし、学習効率も向上

美容室「kaut」ではレッスンをすべて営業中に行っており、残業はありません。同店の代表はその理由を次のように語ります。

練習に100%集中できるからです。私が若手の頃は営業後の深夜練習が当たり前で、終電で帰ってから3時間ほどの睡眠で出社する毎日を過ごしていました。

そのため、常に疲れていてサロンワークで一杯一杯になり、練習になかなか身が入りませんでした。同じ内容のレッスンでも体力がある状態で行ったほうが、覚えがよいに決まっています。

引用:モアリジョブ|美容室「kaut」代表 前田浩明さん

人件費以外のコスト削減で高待遇を実現

複数の美容室を展開する株式会社One Bloomは、「社保完備・完全週休2日制・指名売上40%バック」という地方においては特に高待遇な条件を実現しています。こうした条件を実現できている背景には、次のような経営上の努力と工夫があります。

人件費以外の経費をどれだけ削れるかです。一番大きいのは家賃。儲けを出すための家賃比率は売上の10%未満が鉄則と言われますが、Lond Bloomでは約2%に抑えられています。この浮いた8%に加えて僕の役員報酬を下げることで、かなりの額をスタッフに還元できています。

引用:モアリジョブ|株式会社One Bloom 代表取締役社長 津賀雅也さん

また津賀さんは、スタッフにもコスト感覚を持ってもらう点を重視しています。例えば、カラー剤も1g単位で材料費を計上しており、スタッフが薬剤を余計に調合したら厳しく指摘します。経験や勘に頼った「これくらいで良いだろう」ではなく、数字に基づいたルールを示し、確実に実践できる環境づくりが重要と述べています。

まとめ

美容室の人件費は、給与や福利厚生費など店舗運営の大部分を占める経費です。本記事では、美容室経営における人件費の重要性や経費削減の具体的なポイントについて解説しました。

以下のポイントを押さえて、効率的な経費管理と利益向上を目指しましょう。

  • 人件費は美容室における経費の約40%を占めており、単なる削減ではなく生産性向上と給与水準の適正化が重要
  • スタッフの定着率を高めることで、採用コストを抑えつつ店舗運営の安定化を図れる
  • 人件費以外にも消耗品費や地代家賃、水道光熱費、広告宣伝費などの適正化も利益向上に寄与する

美容室の経営を成功させるためには、スタッフと経営者の双方が満足できる仕組み作りが欠かせません。本記事の内容をもとに、自店舗の経費や運営方法を見直してみてください。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。