美容師を雇用する立場として「労働基準法に違反していないか」「労働時間や休憩を適切に付与できているか」を心配している方も多いのではないでしょうか。
昨今は働き方や働く環境を整えている美容室も増えており、スタッフ側が求める水準も高くなっています。ただ一方で、思わぬところで違反をしてしまうケースも少なくありません。
そこで本記事では、労働基準法について「労働時間・休憩・有給休暇」「違反・トラブルを避けるためのポイント」など、美容師を雇用する立場として理解すべき内容を紹介します。スタッフの定着率向上や採用力アップのためには欠かせない内容ですので、ぜひ参考にしてください。
労働基準法とは?美容師を雇用する側の基礎知識
労働基準法とは、労働者の権利を守り、公正な労働環境を確保するための法律です。
「労基法」と略称で呼ばれることもあり、労働条件の原則や決定についての最低基準が定められています。正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣労働者、外国人労働者などに対しても適用されます。
主要な項目としては、以下が挙げられます。
- 労働条件の明示(第15条)
- 解雇の予告(第20条)
- 賃金の支払(第24条)
- 最低賃金(第28条)
- 労働時間(第32条)
- 休憩(第34条)
- 休日(第35条)
- 時間外および休日の労働(第36条)
- 時間外、休日および深夜労働の割増賃金(第37条)
- 年次有給休暇(第39条)
- 就業規則(第89条)
- 労働者名簿の作成(第107条)
- 賃金台帳の作成(第108条)
- 労使に関する記録の保存(労基法109条)
美容師業界においても、休憩や休日の付与、時間外労働(残業)の扱いなど、課題に挙がりがちな項目が目立ちます。
なお、違反の疑いがある場合、労働基準監督署による立ち入り調査が実施されます。実際に違反が認められた場合には是正勧告が行われ、勧告に応じない場合は刑事手続に移行する可能性があります。さらに、違反内容によって罰則の種類は異なりますが、雇用主に対して6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金などが課せられることもあります。
こうしたリスクを避けるためにも、以降で紹介する労働基準法の基本原則やポイントを理解しましょう。
美容師の労働時間は1日8時間・週40時間以内が原則
労働基準法では、1日8時間・週40時間以内の労働時間を原則(法定労働時間)としています。もちろん美容師も例外ではなく、この基準を超える労働は違法です。
ただし、美容師業界において「全くの残業なし」は現実的ではありません。そのため、一定の時間外労働や休日労働の発生を労使間で認める「36協定」を締結の上、必要に応じて残業を行うのが一般的です。
勤務時間は基本的に実質9時間で、何時から何時まで働くかは各々の自由。ですが、うちの場合は予約が集中するのは夕方以降なので、13時〜22時の勤務スタイルが多いですね。残業をするかしないかは本人に任せています。残業の有無は毎回聞きますが、あくまで確認です。「働いてくれ」とは言いません。
引用:モアリジョブ|Bee dandy オーナー 松井祐太さん
なお、商業に属する理美容業の場合、特別措置として労働者(パート・アルバイト含む)が10名未満の場合は、法定労働時間が「週44時間」まで認められている点も理解しておきましょう。
美容師に必要な休憩は勤務6~8時間で45分以上・8時間超えで60分以上
労働基準法により、労働時間が6〜8時間の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は60分以上の休憩を与えなければなりません。また、労働基準法において「途中付与」「一斉付与」「自由利用」の3原則が示されています。
各ポイントをまとめると、下記の通りです。
休憩に関する労働基準法のポイント |
|
労働時間6~8時間の場合 |
休憩時間45分以上 ※8時間ちょうどなら45分で良い |
労働時間8時間を超える場合 |
休憩時間60分以上 |
途中付与の原則 |
労働時間の途中で与える |
一斉付与の原則 |
全労働者に一斉に与える ※商業にあたる美容師は適用外 |
自由利用の原則 |
休憩中は業務から完全に離れる |
以下では、3原則に沿ってより詳しく解説します。
途中付与の原則
休憩時間は労働時間の途中に与えなければなりません。始業前や終業後にまとめて休憩時間を与えることは認められず、勤務中に心身を休められるようにする必要があります。
美容師の場合、予約や来客が連続して気づけば休憩を取れていなかったケースも起こりがちです。そこで、各スタッフが休憩を取りやすいよう事前に休憩時間を決めておくのも有効といえるでしょう。
休憩時間もきっちり1時間取ってもらっています。
僕、お腹が空くとイライラしちゃうので(笑)。最高のパフォーマンスを提供するためにも自分がきっちり休憩してリフレッシュしたいってのもあるんですよね。
どこで休憩時間を取るかは事前にスタッフに聞きます。外にご飯を食べに行っても全然OK。新橋には飲食店がいっぱいありますから(笑)
引用:モアリジョブ|Bee dandy オーナー 松井祐太さん
一斉付与の原則
原則としては、全従業員が一斉に休憩を取ることが求められます。ただし、以下の業種については、適用除外が認められています。
- 運輸交通業:鉄道会社、航空会社など
- 商業:百貨店、コンビニエンスストアなど
- 金融業:銀行、証券会社など
- 広告業:広告代理店など
- 映画・演劇業:映画製作会社、劇団など
- 通信業:携帯電話事業者など
- 保健衛生業:病院、薬局など
- 接客娯楽業:旅館、テーマパークなど
美容室は商業と見なされるため、適用除外対象です。実際のところ、美容室においてスタッフ全員が同時に休憩を取るのは業務運営上、困難な場合も多いでしょう。ただし、一斉付与を避ける場合でも、全スタッフに休憩が適切に与えられるための配慮は欠かせません。
自由利用の原則
休憩時間は労働者が自由に使えるものでなければなりません。つまり、休憩中は業務から完全に解放されており、顧客対応や業務指示に従う必要がない時間にする必要があります。
美容師の場合、休憩中であっても電話応対や来客対応が求められるケースが散見されますが、それらは労働基準法に違反する可能性があるのです。そのため、休憩室や休憩スペースを設けて空間を隔離したり、リフレッシュを兼ねて外で休憩したりといった工夫が有効といえるでしょう。
有給休暇は継続勤務6カ月+出勤8割以上で必ず与える
従業員が入社してから6カ月間にわたって継続勤務しており、その間の出勤率が8割以上であれば、「年次有給休暇」を取得する権利が発生します。もちろん美容師にも適用され、繁忙期やシフト管理に影響を及ぼすため計画的な対応が求められます。
厚生労働省が発行した資料によると、継続勤務年数に応じた付与日数は、以下の通りです。
なお年次有給休暇が10日以上付与される労働者については、年間で5日間の有給休暇を取得させることが義務付けられています。
また、有給休暇の取得は従業員の権利であり、雇用者がこれを拒否するのは不可能です。ただし、事業運営に対して明らかに支障をきたす場合には、取得日を変更する「時季変更権」を行使できます。
とはいえ「忙しいから」「人手が足りないから」といった漠然とした理由では認められません。時季変更権を行使する場合には、事業運営への影響を具体的に説明して、従業員の理解を得るようにしましょう。
美容師業界においては、有給休暇の取得が難しいと感じる人も少なくありませんが、モチベーションや健康を維持するためにも、積極的な取得の推進が求められます。
美容師への賃金は毎月決まった期日に全額を支払う
労働基準法では、賃金は毎月少なくとも1回、決められた日に全額を支払うことが義務付けられています。美容師を雇用する場合においても同様であり、遅延や分割支払い、法令外の天引きなどは認められません。
こうした原則はまとめて「賃金支払の5原則」と呼ばれています。
賃金支払の5原則 |
|
通貨払い |
・賃金は通貨で支払い、現物支給は禁止 ・労働者の同意があれば銀行振込は可能 |
直接払い |
・労働者本人へ支払う ・代理人や親権者などへの支払いは不可 |
全額支払い |
・分割払いは禁止 ・所得税など法令で定められたものや労使協定で定めたもの以外は控除(天引き)不可 |
毎月1回払い |
・毎月少なくとも1回は賃金を支払う(賞与などは除く) |
一定期日払い |
・「毎月15日」のように一定周期の支払期日を定める(賞与などは除く) |
なお労働基準法から派生した最低賃金法によると、地域別最低賃金や特定最低賃金を比較して高い方を越える金額を労働者に支払う必要があります。美容室は、どの地域でも特定最低賃金に該当する職種ではないため、地域別最低賃金を満たすように給与を設定するとよいでしょう。
実際の賃金相場
最低賃金を越えるように給与を設定するのは最低限必要なことですが、実際に人材を採用する場合、給与を最低賃金以上にするだけでは、うまくいかないものです。そこで、実際の賃金相場も把握しておくことをおすすめします。
下記は、美容師業界に従事する20〜30代の304⼈を対象に実施したアンケート調査結果の一部です。業界の賃金相場や、経験年数と月収の関係性が見て取れます。
この調査結果から、実状として経験年数を問わず月収16万円〜20万円に該当する美容師の割合が多い点が明らかとなりました。
一方で、下記をみると現在の給与に対して「やや不満・かなり不満」と回答している割合は62%であり、半数以上が不満に感じているのが分かります。
これらの結果を踏まえて、募集をかける際にはボリュームゾーンである「月収16万円〜20万円」を超える条件を提示できれば、積極的な応募を期待できるでしょう。また、経験年数9年以上になると、26万円以上の割合が一気に増加しています。ベテラン層を募集したい場合には26万円以上の給与を提示する必要があるといえます。
以下のPDF資料では、美容師業界における給与の現状や理想、転職意向との関連性について、アンケート調査結果を詳しく紹介しています。貴重なデータが満載ですので、ぜひこちらから無料ダウンロードの上、ご活用ください。
美容師の労働基準法における違反・トラブルを避けるポイント
美容師の労働基準法における違反・トラブルを避けるためのポイントを、9つ紹介します。
新たに美容師を雇う際は労働条件を書面で明示する
労働基準法に基づき、新たに美容師を雇い入れる際には、以下の労働条件を明示しなければなりません。
労働条件の明示は、労働基準法に抵触しないためだけでなく、採用後に雇用主と美容師間での認識のずれやトラブルを未然に防ぐためにも不可欠です。多少の手間は発生しますが、良好な雇用関係の構築のためにも詳細まで明文化し、双方で確認・共有するようにしましょう。
求人票で明示する必要のある項目
また重要な関連事項として、新たに人員の募集を行う際には、募集開始から労働契約締結までの間、求人票や募集要項において下記のような労働条件の明示が「職業安定法」で定められています。
▼最低限明示しなければならない労働条件
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間
- 就業場所
- 就業時間
- 休憩時間
- 時間外労働
- 賃金
- 加入保険 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険
- 受動喫煙防止措置
- 募集者の氏名または名称
- 派遣労働者として雇用する場合はその旨
詳細は、厚生労働省のリーフレットをご参照ください。
なお美容ヘルスケア向けの求人サイト「リジョブ」は、求人票の書き方がわからない方でも安心して利用していただけます。電話で個別にインタビューして専任スタッフが求人広告を作成するので、ぜひご相談ください。詳細については、下記の資料をダウンロードしてご覧ください。
スタッフ10名以上なら就業規則の作成・届け出が必須
常時10名以上の労働者を雇用している場合は、就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添えて労働基準監督署に届け出る必要があります。作成した就業規則は、見やすい場所に掲示するなど、各労働者への周知徹底も義務付けられています。
「10名以上」のカウントについては、正社員やアルバイト・パートなどを問いません。例えば、複数の美容室を運営しており、1店舗あたりは10名に満たなくとも合計人数が10名以上となる場合は対象となります。
具体的には、以下の内容を定めて記載しなければなりません。
作成にあたり一定の手間を要しますが、スタッフが増えた場合でも労務管理がしやすく、トラブル防止に有効です。作成に際しては、厚生労働省が公開しているモデル就業規則を参考にするとよいでしょう。
営業時間外の業務があるなら「36協定」を結ぶ
36協定(サブロク協定)とは、法定労働時間を超えて従業員に残業や休日労働をさせる場合に、あらかじめ雇用者と従業員の間で結ぶ協定です。正式名称を「時間外労働・休日労働協定」といいます。
特に美容室では、清掃や片付け、レジ締め、予約管理、商品や備品の管理や発注など営業時間外での業務が発生しがちです。そのため、あらかじめ36協定をスタッフとの間で結んでおく必要があります。
ただし、36協定を結んだとしても残業を無制限に行えるわけではなく、原則として「1か月45時間・年間360時間まで」です。例外的に、特別の事情によって労使間で合意があった場合には、原則を超えた残業も認められますが、以下の上限を超えてはなりません。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平
- 均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えるのは、年6か⽉が限度
引用:改正内容(時間外労働の上限規制)|厚生労働省
これらの上限を超えた場合は、罰則として「6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦」が科されるおそれがあります。
残業代など割増賃金を正しく支払う|時間外のカット練習はどうなる?
残業(時間外労働)、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、割増賃金を支払う必要があります。
具体的な算定方法は、以下の通りです。
割増賃金額=1時間当たりの賃金額×労働時間数×割増賃金率(※) |
※割増賃金率
種類 |
支払う条件 |
割増賃金率 |
時間外 (残業手当) |
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合 |
25%以上 |
36協定の限度(1ヶ月45時間・1年360時間)を超えた場合 |
25%以上 |
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時間外労働が1ヶ月を超えた場合 |
50%以上 |
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休日 (休日手当) |
法定休日(週1日)に勤務させた場合 |
35%以上 |
深夜 (深夜手当) |
22時から5時までの間に勤務させた場合 |
25%以上 |
とりわけ美容師業界では、営業時間後にカット練習など技術向上のためのトレーニングが行われるケースが多く見受けられますが、これが残業に該当するか否かは「会社指示」か「自己意思」かによって決まります。
まず会社指示の場合は、残業の対象となります。対して、自己意思の場合は、残業代の支払い対象にはなりません。
ただし、会社からの明確な指示はないものの、暗黙の了解によって断るのが困難な状況下にある場合は、残業と見なされます。たとえば次のようなケースが考えられます。
「新人はカット練習をするのが当たり前になっている」
「これまでの先輩がそうしてきたから同じようにすべき」
また、営業時間外の清掃や予約管理、備品管理なども同様であり、業務の一部や慣習的な作業として組み込まれている場合は残業として扱われます。
繁忙・閑散でシフト調整したいなら「変形労働時間制」を導入する
「変形労働時間制」とは、業務の繁忙・閑散などに応じて労働時間を柔軟に調整・設定できる制度です。美容師業界では、時季やイベントによって忙しさが変動しやすいため、有効な制度といえます。
変形労働時間制には「1年単位・1カ月単位・1週間単位」の3種類があり、導入のしやすさや制約の少なさから、美容師業界では「1カ月単位」を選択するケースが多く見られます。
実際に1カ月単位の変形労働時間制を導入した場合、対象期間1か月のなかで1週間当たりの労働時間の平均が法定の範囲内に収まるなら、「特定の日に8時間、特定の週に40時間(スタッフ10名未満なら44時間)を超えて労働することが可能」となります。
このように労働時間を柔軟に調整できれば、業務効率を高めつつ労働基準法を遵守できます。ただし、変形労働時間制の導入に際しては、労使間での協定や、就業規則への追加記載と労働基準監督署への再提出が必要な点は留意しましょう。
有給休暇の取得方法や取得日数に制限をかけない
有給休暇の取得方法や取得日数に制限をかけてはいけません。例えば、以下のケースは労働基準法違反と見なされてしまうため注意が必要です。
- 1週間前までに申請しなければ有給休暇の取得を認めない
- 付与されているよりも少ない日数しか取得させない
- 有給休暇の取得を理由に人事評価を下げた
- 退職前の有給休暇の全消化を認めない
- 申請がないからといって取得義務の年5日を取得させない
もし、有給休暇の取得が店舗運営などに支障をきたす場合には、先述した「時季変更権」の行使を検討しましょう。その際には、有給休暇の取得による影響度合いを具体的に説明し、当人から理解と納得を得るのが大切です。
労働者名簿・賃金台帳を作成して保存する
新たに美容師を雇用する場合、労働基準法に基づき「労働者名簿」と「賃金台帳」を作成し、保存することが義務付けられています。
「労働者名簿」の記載事項は、以下の通りです。
- 氏名・性別・生年月日・住所
- 従事する業務の種類
- 雇入れの年月日
- 退職または死亡とその事由(解雇の場合はその理由)
- 履歴(入社前の経歴、入社後の異動など)
「賃金台帳」の記載事項は、以下の通りです。
- 氏名・性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数
- 基本賃金・各種手当の金額
- 労使協定により賃金の一部を控除した場合はその額
いずれも必要事項が記載されていれば、様式は問われません。
また、労働者名簿と賃金台帳は、原則5年間にわたり保存する必要があります。これらを正確に管理・保存しておけば、労働トラブルが発生した際に証拠として提示して、適切な対処が可能です。
美容師も体が資本!健康診断は採用時と毎年1回
健康診断は採用時と毎年1回、必ず受診させなければなりません。厳密には労働基準法から派生した「労働安全衛生法」によって定められているところです。
とりわけ美容師は、長時間の立ち仕事による足の疲労や腰痛、肩こりなど、身体に負担がかかりやすい職業といえます。さらに、刃物を用いた細かい作業を行うため、心身ともに健康な状態を維持することが求められます。
定期的な診断を通じて健康状態の把握やケアを促し、健康トラブルを未然に防ぎ、持続的に活躍できるような労働環境を整えましょう
また、健康診断の結果は記録として5年間保存する必要があり、労働基準監督署による監査対象にもなります。これを怠れば罰則が科される可能性もあるため、定期的な実施とあわせて診断結果の適切な管理も大切です。
解雇する場合は30日以上前に予告する
解雇を行う場合には、少なくとも30日前に予告しなければなりません。予告は口頭でも有効ですが、後々のトラブル防止のため解雇日と具体的な解雇理由を記載した「解雇通知書」を作成するのが望ましいといえます。
また、解雇予告を行わずに即解雇する場合には、「解雇予告手当」を支払わなければなりません。解雇予告手当の金額は「過去3か月の平均賃金×30日(以上)」です。もし、解雇予告を行うが解雇日まで30日を切っている場合には、下記の例のように「不足する日数分(例の場合は10日分)の解雇予告手当」を支払う必要があります。
例:11月10日に「11月30日で解雇する」と予告する場合
ただし、「刑法犯に該当する行為」や「遅刻・欠勤が多く数回にわたる注意をしても改めない」といった解雇対象者の責任とすべき事由がある場合、「解雇予告除外認定制度」により、予告無しでも解雇予告手当の支払いが不要となります。
美容師の解雇は稀なものの、いざ生じた場合には裁判沙汰やトラブルに発展するケースも少なくありません。従業員の解雇は慎重に行い、必要に応じて労働基準監督署への相談をおすすめします。
まとめ
美容師を雇用する側として労働基準法の遵守は、既存スタッフの定着、新規スタッフの採用、企業や店舗に対するイメージの維持などにおいて不可欠です。あらためて、「思わぬ違反をしていないか」「美容師が労使関係に対して不安・不満を抱いていないか」といった観点から見直してみましょう。
その際、以下のような労働基準法の基本を理解することが求められます。
- 美容師の法定労働時間は1日8時間・週40時間以内(10名未満なら週44時間以内)
- 「36協定」を締結すれば、法定労働時間を超えても良いが上限はある
- 美容師に必要な休憩は勤務時間で異なり、休憩中は業務から完全に解放される
- 有給休暇は継続勤務6か月+出勤8割以上で発生(年5日の取得義務に注意)
上記以外にも、本文にて労働基準法の違反・トラブルを避けるポイントを紹介していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部