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高卒採用のスケジュール|採用者が知っておきたい流れや動き方を解説

高卒採用のスケジュール|採用者が知っておきたい流れや動き方を解説

昨今深刻化している人手不足を背景に、高卒採用における求人倍率は上昇傾向です。例えば2024年度の求人倍率は、全国平均で3.98倍と高い数値を記録しており、企業側は優秀な高校生を採用するためにさまざまな手を講じています。

NHKによると、東京の高校では去年の2倍以上の約200企業から求人資料が届いているとのことです。準備から関係性の構築まで、念入りに準備しなければその他大勢の企業に埋もれてしまうかもしれません。

そこで今回は、失敗しない高卒採用を計画的に行うためにも知っておきたい、高卒採用の決まりやステップごとの注意点を解説します。はじめての高卒採用に取り組む採用担当者にもわかりやすく順を追って細かく解説するので、参考にしてみてください。

高卒選考は全国統一でスケジュールが決まっている

高卒採用の担当者になった際に最初に知っておきたいのは、高卒採用ならではの決まりごとです。なかでもスケジュールについては全国高等学校長協会、主要経済団体、文部科学省と厚生労働省が協議を行い、全国で統一されたスケジュールを毎年提示します。

主に決まっているのは、以下の項目です。

  • ハローワークによる求人申込書の受付開始
  • 企業による学校への求人申込及び学校訪問開始
  • 学校から企業への生徒の応募書類提出開始
  • 企業による選考開始及び採用内定開始

例年と変わらないケースもありますが、異なっている場合もあります。そのため、採用担当者になったときには、必ず厚生労働省の発表を確認しておきましょう。

2025年高卒採用のスケジュール

2025年卒業の高卒採用のスケジュールはすでに発表されています。厚生労働省の発表ページによると、以下の通りです。

ハローワークによる求人申込書の受付開始(※)

6月1日

企業による学校への求人申込及び学校訪問開始

7月1日

学校から企業への生徒の応募書類提出開始

9月5日 (沖縄県は8月30日)

企業による選考開始及び採用内定開始

9月16日

上記の流れは、1つも飛ばすことはできません。ハローワークの承認があってはじめてその後の行程を進められます。ハローワークでの求人申込書を受け取るにも、決まった手順を踏む必要があります。

すでに募集が解禁されており焦る企業もあるかもしれませんが、必ず上記のスケジュールや決まりごとは守るようにしてください。

企業側の高卒採用の採用までの一連の流れとポイント

企業が募集するためのスケジュールは大まかに理解できたものの、即座に募集を開始できるかといえばそう甘くはありません。募集企業として動くにはほかにも準備が必要です。

高卒採用の流れサンプル

ここからは、企業側が高卒採用を開始してから採用を完了するまでの行程をステップごとに解説します。各行程ごとの成功するポイントもあわせて解説するので、成功させたい人事担当者の方は最後までご覧ください。

ステップ1.事前準備する

最初のステップは、募集活動をする前の下準備です。スケジュールでいうと、毎年6月ごろの求人受付開始より前のタイミングで行います。

事前準備の段階で重要となるのは、以下の4つの項目です。

  • 採用計画を立てる
  • 高校新卒求人サイトに情報を登録する
  • 学校訪問する
  • 学卒求人説明会に参加する

この後から各ポイントについて順番に説明します。

採用計画を立てる

採用活動を行うには、まずは採用計画を立てる必要があります。採用計画は、具体的に何人をいつまでに採用するのかを軸に逆算して計算します。

特に注意すべき点は、採用した全ての人材が定着するとは限らないことです。計画する際には、離職する人数も含めて最終的に残る人数で計算する必要があります。

もちろん離職させないための施策も別途重要にはなりますが、採用計画の段階から余裕を持って計画しておきましょう。

2023年10月に厚生労働省から発表された新規学卒就職者の離職状況では、大学卒が32.3%だったのに比べ、高校卒は37.0%を記録しています。

新規学卒者の離職率

さらに業界別に3年以内の離職率を見ていくと、宿泊業・飲食サービス業にいたっては62.6%と半数以上を超える割合です。それ以外にも、生活関連サービス業・娯楽業と教育・学習支援業も高い割合となっています。

▼【令和2年3月卒】新規高卒就業者の産業別修飾語3年以内の離職率

産業

3年以内の離職率

宿泊業・飲食サービス業

62.6%

生活関連サービス業・娯楽業

57.0%

小売業

48.3%

教育・学生支援業

48.1%

医療・福祉

46.4%

業界によって離職率に差があるため、採用計画を立てるときには自分の業種の離職率を把握しましょう。

高校新卒求人サイトに情報を登録する

ハローワークでの申請が始まると企業の動きが慌ただしくなってくるため、準備段階のうちから新卒求人サイトに情報を登録しておくと安心です。採用人数を決めた後にそのまま流れで行うと、登録漏れを防げます。

高卒採用においては、学生への直接のアピールはできません。求人掲載をお願いする学校は絞り込む必要があります。そのため、学生が自ら情報を得られる求人情報サイトにも掲載しておくことで、募集の間口を広げることが可能です。

高卒に特化したwebサイトもあります。掲載できる情報もwebサイトによって異なるため、自社のアピールしたい内容をしっかりと記載できる求人サイトを選定しましょう。

学校訪問する

高卒採用では、採用活動はすべて学校を通じて行う必要があります。そのため、学校と関係性を構築することも大切なステップです。学校訪問は、合計で2回(できれば3回)を目安に複数回に分けて行います。

準備段階で行う学校訪問は、学校の特徴や傾向を理解することが目的で、情報の収集や交換を行います。

アポなし訪問は原則NGです。資料を渡すだけで終わってしまう危険性が高まります。必ず事前に連絡してください。できるなら開校時間中に電話で訪問日時を伝えたうえで、自社をアピールする資料や、欲しい人物像をまとめた資料を用意しましょう。

訪問日当日は、資料と併せて何を話し、聞くのかも整理しておきます。具体的には、例えば以下のような内容がよいでしょう。

伝えること

  • 会社概要
  • 事業内容
  • 福利厚生や育成制度
  • 将来性
  • 高卒採用社員の状況
  • 自社にしかない強み

聞くこと

  • 学校の就職者数や希望者数
  • 生徒が希望する業界や職種
  • 学校の生徒の雰囲気や傾向
  • 求人紹介の方法

現段階では訪問先はあくまで候補のひとつです。学校の担当者の反応や情報を元に、最終的に求人を掲載依頼する学校を絞り込んでいきます。

学校を絞り込むポイント

学校訪問は、採用人数に合わせて訪問数を決定します。1校で確実に採用ができるわけでもないため、1名採用するだけでも複数の高校を訪問しなければなりません。効率よく進めるためにも、自社の雰囲気や職種と合っている学校を訪問先として選定しましょう。

学校を絞るときには、以下の条件を目安としてください。

  1. 高卒で就職する学生が最低でも10~20名以上はいる
  2. 自社に就職実績がある
  3. 専門系の職種の場合は専門科がある
  4. 勤務地とある程度近い(40~50km圏内)

上記に合わせて、職種によっては偏差値なども参考にしてください。

また、専門系といっても現代は多種多様です。しっかりと探せば、美容系の専門学校でも高等課程があります。特に専門職が高卒採用をするときには、範囲を広げて自店舗の業種と一致した専門科がないかを探しておきましょう。

学卒求人説明会に参加する

高卒採用を行うには、原則として学卒求人説明会に参加しなければハローワークで求人申込書が受け取りできません。開催方法は、地方によっても異なります。

  • 現地で研修を受ける
  • オンラインMTGに参加する
  • 作成した動画を視聴・テストに回答する

自治体によってさまざまです。ただし、現地での説明会を受ける場合には参加人数が制限されていることがあります。先着順になっていることもあるため、速やかに応募しなければ定員オーバーしてしまうと順番が後回しになり兼ねません。

期間によっては、参加しなくても申込書を受け取れることもあるようですが、確実にスタートで出遅れないように、会社のある自治体での開催方法と日時の情報は洩れなく確認するようにしましょう。

ステップ2.求人票を作成・ハローワークの許可を得る

学卒求人説明会に参加後、ハローワークから求人申込書を受け取ります。受付開始は基本的には6月1日であることが多いようです。2025年3月卒対象の要項でも、6月1日からとなっています。

提出するのは求人申込書が基本ですが、これまでにハローワークを通じた求人活動の経験がない場合、合わせて事業所登録シートも提出が必要です。

求人票と事業所登録は、どちらもインターネットから仮登録ができます。ただし、仮登録後14日以内にハローワークへ行かなければ無効となるため、期限には注意してください。

また、仮登録前に利用申請が必要なケースもあります。ほかにも、下記のような書類も募集条件によっては求められることがあります。

  • 推薦依頼高校一覧
  • 応募前職場見学実施予定表
  • 求人要項

必要書類が異なるため、特にはじめて利用する場合は企業管轄のハローワークに事前に確認しておきましょう。

申込書では、採用人数や事業情報はもちろんのこと、選考方法から青少年雇用のための情報として研修や社内制度、前年度までの職場環境など、かなり細かい項目について提出します。

掲載後に内容を変更することは原則認められておらず、万が一変更する場合には別途申し出が必要です。内容をよく読み、自社全体で方針を統一して記載してください。

書類の提出が認められ次第、ハローワークから受理印をもらえます。受理印があってはじめて次のステップに進めることが可能です。

ステップ3.求人票を学校に提出する

定められた学校訪問及びに求人情報の解禁日以降に再度学校を訪問します。2回目の学校訪問は、求人票の提出が主な目的です。1回目の学校訪問の印象や情報を元に、訪問先の高校を選定します。

1回目のときに資料が不十分だったり、回答できていない質問があったりした場合、2回目のタイミングで高校の担当者が満足いくように準備して訪問しましょう。

また、高卒採用には、公開求人と指定校求人があります。メリットと違いについてはこの後で解説するので、併せて確認してください。

公開求人と指定校求人の違い

公開求人とは、求人掲載する高校を限定せずに募集をする方法です。ハローワークは「高卒就職情報WEB提供サービス」を運営しており、求人票の項目のうち、「公開希望」の欄を"可"にした場合、このページにて自社求人が全国に公開されます。

学校の先生はIDを使って閲覧可能です。掲載されている情報から生徒に合っていると思われる求人を選んで紹介することもあります。

公開求人は幅広い間口で、とにかく多くの学校にアプローチしたい企業にはおすすめです。

逆に指定校求人とは、求人票を限定して指名した高校のみに提示する方法です。指定された高校内で必要人数を選出するため、希望人数が多かった場合には校内選考を行うケースもあります。

指定校求人は、関係性がすでにある学校や、その学校の特性や特長を理解したうえで学校生を採用する意向が強い場合などに有効です。採用することで学校とのパイプができるため、好条件に宛てはまる学校とつながるきっかけにもなります。

また、専門性の高い職種を募集する際にも指定校求人がおすすめです。

ステップ4.夏休み期間を狙って応募前見学を実施する

学生が実際に応募する前に、職場見学を実施することもできます。応募前職場見学は、学業に支障の出ない期間であることが定められています。そのため、夏休み期間に実施するのが一般的です。

職場見学を行うと、自社の設備や雰囲気を実感してもらえます。ミスマッチによる離職を防ぐためにも、職場の雰囲気を理解してもらうことは有効な手段です。

株式会社学情の実施した学生を対象としたミスマッチについてのアンケート結果では、重視したい項目の上位2つは実際の仕事内容や会社の雰囲気・カルチャーと回答しています。

ミスマッチを防ぐために重視したい項目

職場見学の場で個別の質問回答を行ったり、説明内容を相手に合わせて変更できたりとメリットは多くあります。応募意欲を高める場としてフル活用しましょう。

ただし、職場見学で選考を行うことはルールで禁じられています。以下の事項には特に注意してください。

職場見学は採用選考の場ではありませんので、特に次の点にご留意ください。 

  • 高校、生徒に対して「職場見学のお願い・職場見学確認書」以外の書類提出を求めないでください。 
  • 生徒との面談機会においては、生徒本人の状況等を聴取する等採用選考類似の行為とならないようにしてください。

引用:厚生労働省「新卒者募集のために

ステップ5.応募書類を受理・選考を開始する

夏休みが明けた9月からは、応募書類を受理し選考を進めていきます。高校生が企業に応募する際には、1人1社制のルールが適用されます。

しっかりと学校側がサポートすることを意図としており、応募は原則として1社しか認められていません。不採用でも2社までです。

その1社に選ばれたという自覚を持って選考は誠実かつ慎重に進めましょう。また、選考過程にも定められたルールがあります。書類選考と面接の注意点についてはこの後それぞれ説明します。

書類選考の注意点

高卒採用では、書類選考のみで合否を決定することは禁じられています。応募があった際には、必ず面接や適性検査といったほかの手段も行い、総合的に合否を判断してください。

むしろ、就職経験のない中学・高卒採用においては書類選考よりも面接を実施するように記載されています。

③ 書類選考だけというようにひとつの方法のみで評価しようとせず、総合的に評価するようにしていますか。適性と能力を推し量るうえで、「面接」は欠かせないものです。特に職業経験のない新規中学校・高等学校卒業予定者については、書類選考を経ずに面接選考を実施してください

引用:厚生労働省「新卒者募集のために

面接の注意点

高卒採用では、個人の出生や育ち、思想などを理由に求職者を選考対象から排除することを禁止しています。面接の選考の際にも、基本的人権に配慮した質問をすることが原則です。

新卒者募集のための手引書において、具体的には以下のような事項には特に十分な配慮をすることが記載されています。

本人に責任のない事項

  • 本籍・出生地に関すること
  • 家族構成や続柄、健康状態や収入など
  • 住宅状況
  • 生活環境・家庭環境に関すること

本来自由であるべき事項

  • 宗教や支持政党に関すること
  • 人生観や生活信条
  • 尊敬する人物
  • 思想に関すること
  • 労働組合や学生運動などの社会運動に関すること
  • 購買新聞・雑誌や愛読書に関すること

上記に該当する内容は、基本的に質問しないようにしましょう。

ステップ5.必要人員が集まらない場合は二次募集する

必要な採用人数が集まらなかった場合、二次募集を実施します。二次募集は一連の流れで定められている7月から9月以降に行うため、10月〜11月ごろの活動が最も多くなります。

一次募集終了からあまり期間がないのもあり、採用活動をするときは二次募集も視野に入れて準備しておくとよいでしょう。

厚生労働省の取りまとめによると、一次募集時点での就職内定率が63.0%であることから、二次募集でも約40%近くの学生は採用できる可能性があります。

応募してくる生徒も、すべてが一次募集で採用されなかった学生とは限りません。部活動に全力集中していたり、進路変更を行ったために二次募集から就職活動を開始したりと、思わぬ金の卵な学生が隠れている可能性は大いにあるでしょう。

一斉に受付する一次募集と違い、二次募集はそもそも実施していることを周知しなければ応募者が集まりにくくなります。合同説明会や再度の学校訪問などを通してアピールすることが成功への近道です。

ステップ6.リミットまでに採用活動を完了する

学生の9割以上は12月末には就職活動を終了します。そのため二次募集も含め、12月末を募集活動のひとつの区切りと考えましょう。

また、募集する職種によってはもっと流れが早まることもあります。例えば「工業高校」や「商業高校」の場合、ほとんどの学生は9月末時点で内定を獲得しているようです。逆に通信制・定時制の場合は9月中旬ごろから就職活動を始める学生もいます。

学校によってもタイミングが違うため、こういった情報も含めて学校訪問の際に収集しておくことが大切です。

まとめ

高卒採用のスケジュールでは、以下のポイントが大事です。

  • スケジュールは全国統一のものが定められている
  • 学卒求人説明会に参加、ハローワークでの承認を得るのは必須
  • ミスマッチを防ぐには職場見学が効果的
  • 選考内容もルールがあるため確認して遵守する

高卒採用は、人手不足の会社にとって状況を打開する策となる可能性があります。しかし、人手不足企業が増えている現状、ライバルも急増している傾向です。

確実に準備をし、他社と差を付けたアピールにより人材採用を勝ち取れるように、この記事を参考に施策を考えてみてください。

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