中途採用における給与の決め方は?給与計算や相場の考え方を解説
中途採用者は新卒と違い、年齢や職歴がバラバラであったり、前職で支払われていた賃金額が違っていたりします。そのため、新卒採用の初任給のような統一した給与を採用条件として提示することは難しいと考えられます。
業界の相場や自社の給与体系、求職者の前職の給与額および希望額を加味したうえで、雇用側と労働者側の双方が納得できる形で給与を決定することが大切です。
本記事では、中途採用における給与の決め方について基本的な4パターンを紹介します。さらに給与を決める際のポイントや流れ、トラブル例と対処法を解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
中途採用における給与の決め方
中途採用における給与の決め方として、次の4パターンが考えられます。
- 前職よりも高い給与にする
- 自社の相場を基準にする
- 実績や成果をもとに決める
- 業界の相場を参考にして決める
まずは給与の決め方について基本を押さえましょう。
前職よりも高い給与にする
転職後に給与がアップした人が多いことを考慮すると、中途採用において前職よりも高い給与を提示するのも採用数を上げるひとつの手段です。
令和5年雇用動向調査結果の概況によると、転職後に賃金がアップした人は37.2%に上りました。賃金の変動を年齢別で示すと次の通りです。
▼【年齢別】転職後に賃金がアップした人の割合
とくに19歳~30代半ばにかけて、40~50%程度で推移しており、多くの企業が前職よりも高い賃金を提示して人材を確保していることがわかります。
自社の相場を基準にする
年齢給や職能給、職務給などの自社の相場を基準に中途採用の給与を決める方法もあります。各給与体系について、メリットとデメリットを挙げると次の通りです。
名称 |
基準 |
メリット |
デメリット |
年齢給 |
年齢や学齢、最終学歴の卒業年次 |
従業員のライフステージに見合った給与を確保でき、安心感を与えられる |
頑張った人が正当に評価されない可能性がある(実績を上げた若手社員が、年齢の高い社員よりも給与が低いままで、不満を抱える) |
職能給 |
従業員の職務遂行能力 |
従業員の能力アップへのモチベーションにつながり、企業の成長につながる |
能力やスキルの蓄積を評価基準とするため、結果として勤続年数が長い社員が有利になる傾向がある。(若手社員が優れた成果を上げても、スキルの蓄積年数が足りないため評価されにくい) |
職務給 |
従業員が従事する職務内容 |
職務の価値に応じて給与が設定されるため、「なぜその給与なのか」が明確で、従業員間の不公平感が減る |
職務内容が固定化されていると、職務以上の成果やスキルを発揮しても給与に反映されにくい場合がある(「頑張っても給与が変わらない」と社員が感じてモチベーションが低下することがある) |
職能等級制度は、日本で一般的に採用されてきた給与制度で、たとえば製造業では等級1や等級2などと能力ごとに等級が決められ、それに応じて給与も変わるケースが多いです。
一方、職務給のわかりやすい例として美容業界のアシスタントやスタイリストなどの職務によって給与が異なるケースが挙げられます。また整骨院や整体院などのヘルスケア業界でも、一般や中堅、院長(管理職)と職務ごとに給与に差をつけて採用時に、給与が決められることがあります。
実績や成果をもとに決める
これまでの実績や成果に応じてレベル分けして、中途採用の給与を決定することもあります。例えばIT業界の場合、経済産業省の調査をもとにしたレベルごとの平均給与は、次の通りです。
部下を指導したり、チームリーダとして活躍した実績があったりすると、給与も一気に上昇する傾向にあります。
業界の相場を参考にして決める
業界の相場をもとに中途採用の給与を決める場合は、厚生労働省の賃金構造化基本統計調査を参考にするとよいでしょう。具体例として、「理容・美容師 」をもとに年齢別の収入を紹介すると次の通りです。
▼令和5年の賃金構造化基本統計調査(理容・美容師)
年齢 |
月収 |
年間賞与 |
年収 |
~19歳 |
19万9600円 |
5300円 |
240万500円 |
20~24歳 |
22万3700円 |
2万6500円 |
271万900円 |
25~29歳 |
31万0900円 |
8万8300円 |
381万9100円 |
30~34歳 |
38万1800円 |
10万1600円 |
468万3200円 |
35~39歳 |
43万4000円 |
14万7200円 |
535万5200円 |
40~44歳 |
39万2500円 |
16万1500円 |
487万1500円 |
45~49歳 |
38万0000円 |
15万6300円 |
471万6300円 |
50~54歳 |
31万9000円 |
5万1800円 |
387万9800円 |
55~59歳 |
36万8300円 |
19万4700円 |
461万4300円 |
60~64歳 |
30万3100円 |
8万2600円 |
371万9800円 |
65~69歳 |
21万5800円 |
2万5300円 |
261万4900円 |
70歳~ |
38万4500円 |
1900円 |
461万5900円 |
他の業界についても、賃金構造化基本統計調査をもとに年齢別の年収を計算できるので、ぜひ参考にしてください。なお、美容ヘルスケア業界についてはリジョブの調査結果も参考にしてみてください。
関連リンク
中途採用で給与を決める際のポイント
中途採用で給与を決める際には、以下のポイントを意識しましょう。
- 同一価値労働同一賃金を原則を守る
- 評価基準を整備する
- 就業規則を確認する
それぞれについて解説します。
同一価値労働同一賃金を原則を守る
同一価値労働同一賃金の原則は、同じ職務内容や責任を持つ従業員には、雇用形態や採用経路にかかわらず、同じ水準の賃金を支払うべきであるという考え方です。特に日本では、2020年の「働き方改革」に伴う法改正によって、正社員と非正規社員の待遇差解消が求められるようになりました。この考え方は、中途採用者に対しても公平な評価基準を設けるために必要不可欠です。
たとえば、正社員が受けている福利厚生や手当について、同じ職務を行う中途採用者が不利になる状況を避ける必要があります。
また、具体的な給与の決定にあたっては、業務内容や成果、責任範囲に基づいて透明性のある基準を設けることが信頼関係の構築につながります。公平な賃金体系を維持すると、採用後のモチベーション向上や離職率低下にもつながります。
評価基準を整備する
業務の内容や責任の程度、過去の実績などをもとに評価基準を整備することは、公平な賃金決定においては不可欠です。
専門的なスキルや資格を持った求職者は、その能力に見合った報酬を得ることが期待される一方で、企業側もその価値を正当に評価する必要があります。実際にマイナビの調査によると、転職で年収が上がった理由として、スキルや実績、経験の評価という回答が最も多かったようです。
一方で美容ヘルスケア業界の場合、技術職と管理職とのキャリア形成において起こりがちな報酬や待遇のギャップを防ぐことが大切です。技術職であるプレイヤーと管理職であるマネジメントの評価についてバランスを取ることを心がけましょう。
たとえば、ネイルサロン「NAILsGUSH」「NAIL MAFIA」の場合、技術職と管理職の両方が高い報酬を得られるキャリアプランを準備して、スタッフが納得して働ける職場づくりを実現しています。
キャリアプランが「管理職への昇進」一辺倒なんです。プレイヤーがより高い収入を得るには、管理職になるしかない。でも本来は、プレイヤーとしてその腕を磨き続けることも、リーダーになることと変わらず尊いはず。
リーダーになることや、数字管理を苦手とする人もいて当然です。そういう人達も、頑張った分だけ高い収入になるような人事評価システムを構築しています。当社は月のお休みは10日間、8時間きっかりで残業はゼロ。それでも、月収40万円を超えるプレイヤーネイリストは珍しくありません。
管理側として新しいチャレンジをするも良し、技術を追求してスペシャリストを目指すも良し。結婚・出産などを機に気持ちが変わったっていいと思う。働く人それぞれが納得できる、自分らしい生き方を支援するのがポリシーです。
引用:モアリジョブ|ネイルサロン「NAILsGUSH」木下さとこさん
中途採用の際にも、技術職と管理職の両方に対応したキャリアプランを紹介すると、多様な人材採用につながりやすくなるでしょう。
就業規則を確認する
中途採用者の給与を決定する際は、就業規則に記されている以下の情報を確認しましょう。
- 賃金の決定方法:基本給や各種手当の算定基準
- 賃金の計算方法:労働時間や日数に基づく具体的な計算方法
- 賃金の支払方法:現金払い、銀行振込など、支払いの手段
- 賃金の締切日と支払日:月末締め翌月○日払いなど、締め日と支払日のスケジュール
- 昇給に関する事項:昇給の有無やその基準、時期などの規定
以上の項目は、労働基準法第89条において「絶対的必要記載事項」として定められており、就業規則に必ず記載しなければなりません。 また、厚生労働省が提供するモデル就業規則の第6章「賃金」では、これらの事項について具体的な規定例が示されています。
就業規則で定められている給与について確認すると、中途採用した人材との労使間のトラブルを未然に防げるでしょう。
中途採用で給与を決める流れ
中途採用で給与を決める際は、次の流れで進めてください。
- 求人票での条件確認
- 選考過程でスキル確認
- 希望条件とのすり合わせ
- 内定時に書面で提示
- 必要に応じて交渉
各ステップについて詳しく解説します。
求人票での条件確認
求人票に基本給や各種手当など、具体的な給与条件が明確に記載されているかどうか確認しましょう。労働基準法第15条では、賃金(給与)や労働時間などの労働条件を明示するように義務付けられています。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
引用:労働基準法第十五条
また給与を求人票に記載する際には、以下のポイントを意識すると中途採用を希望する求職者の応募への意欲を高められます。
以上は中途採用の応募数を増やすコツの一部です。ホワイトペーパーでは、さらに詳しく解説しているので、「今の採用手法で効果が出ない...」とお悩みの場合は、ぜひダウンロードしてご覧ください。
内部リンク:採用成功のための必須チェックポイント
選考過程でスキル確認
書類選考や面接を通して、応募者のスキルや経験を詳細に把握できると、合否判定に活かせます。特に面接の際には、以下のような評価シートを使って各面接官の評価基準を統一することが大切です。
▼面接評価シートの具体例
以上のような5段階評価のシートを準備しておくと、「即戦力として働けるかどうか」もしくは「どのような職務を担当してもらえるか」を客観的に判断できます。職務内容は給与を決める際の判断基準にもなるため、評価シートをもとに中途希望者に適正な評価を下せるようにしましょう。
希望条件とのすり合わせ
給与の希望条件とのすり合わせについて、事前に面接で前職の給与額について詳細を確認するとよいでしょう。
前職の給与は、書類選考時に記載してもらう方法もあります。しかし、求職者の意見や前職での業績、希望など、書面では把握しづらい情報を事前に面接で確認すると、企業側から提示する給与額を考えやすくなります。
また、求職者の希望する具体的な給与額も確認しましょう。仮に前職の給与と希望額に差がある場合、その理由を説明してもらうと、双方が納得できる形で給与額を調整できます。
給与に関する話をする際は、求職者と企業の間で認識の違いが生じないよう、自社の給与体系を明確に示すことも重要です。昇級システムについても具体的に伝えてあげると、求職者の働くモチベーションを高められます。
たとえば美容ヘルスケア業界の場合、基本給だけではなく歩合給を採用しているケースが多いです。
基本給に売り上げと指名歩合などを加算していますし、毎年昇給するシステムにもなっています。ネイルやヘアなどの美容手当も全スタッフに支給しているので、スタッフ自身も美容やファッションを楽しみながら仕事を続けられます。
定期的に待遇改善を図ることはサロンの信頼度にもつながるし、サロンとスタッフ双方のメリットになると思っています。
引用:モアリジョブ|Fast Lash 錦織桃さん
歩合給の割合やシステムについても詳しく説明すると、求職者に働くことの魅力を伝えられるため、採用決定後の内定辞退を防げます。
内定時に書面で提示
中途採用の給与を決定する過程で、採用したスタッフに対して内定時に正式な給与額を書面で提示することが重要です。労働基準法第15条第1項では、雇用する側は労働契約の締結に際し、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならないと規定されています。
具体的な明示事項には、賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切日および支払日などが含まれます。これらの事項は書面での明示が義務付けられており、内定通知書や労働条件通知書で正式な給与額を提示する際、求人票や面接時に提示した内容と相違がないよう注意が必要です。
労働条件通知書の記載内容が求人票と異なる場合、労働者との信頼関係を損ない、トラブルの原因となる可能性があるため注意しましょう。企業は、内定時に適切な書面を交付し、労働者が安心して働ける環境を提供する責任があります。
必要に応じて交渉
企業側から提示した給与額について応募者から交渉があった場合には、誠実に対応し、お互いが納得できるまで話し合いましょう。多くの求職者が給与額の交渉を申し出る傾向にあるため、給与交渉に備えることも大切です。
マイナビの調査によると、半数以上の求職者が給与交渉を申し出ることがわかっています。
求職者が希望に見合った能力やスキルを持ち合わせているのかを書類選考や面接で判断し、両者が納得できる給与額を決定しましょう。
中途採用の給与トラブルと対処法
中途採用の主な給与トラブルとして以下の3つが挙げられます。
- 給与に見合った働きをしてくれない
- 早期に退職してしまった
- 既存のスタッフからの反発があった
本項では以上のトラブルについて概略や事例および、対処法について解説します。
給与に見合った働きをしてくれない
中途採用において、「給与に見合った働きをしてくれない」という課題は、多くの企業で見受けられます。主な要因として、採用時にスキルや経験が期待に達していないことや業務内容や職場環境への適応が不十分であることが挙げられます。
これに対処するために、まずは試用期間を設け、その間に中途採用者のスキルや業務適性をチェックしながら、業務内容を共有したり、研修を行ったりするとよいでしょう。
特に美容ヘルスケア業界の場合、施術者という立場で顧客と接することになるため、中途採用者には試用期間中に一定のスキルを身に着けてもらうことが大切です。
整体院「ベアハグ」の場合、4ヶ月間の試用期間を設けたうえで、試験も実施し未経験で入社した中途採用者のスキルアップを図っています。
店舗での試用期間4ヶ月を経て本採用となります。その後のスキルアップに関しては、整体の技術を身につけたい人は、NPO法人日本スポーツトレーナー協会が運営している東京スポーツトレーナー学院で学ぶことができます。6ヶ月のカリキュラムを修了し試験に合格後、整体師となるわけです。
引用:モアリジョブ|整体院「ベアハグ」鈴木さん
研修制度も充実しているため未経験でも始められることがポイントです。
ベアハグは研修制度があるので、まったくの未経験から始めることができます。入社の流れとしては、書類審査と面接を受けて採用が決まると、まず現場に出る前に約3週間の研修があり、ここでボディケアやフットケアを行うボディセラピストとしての技術を身につけます。それと同時に技術以外の接客や事務などの研修も受け、その後、店舗に配属となります。
引用:モアリジョブ|整体院「ベアハグ」鈴木さん
このように未経験者の採用を前提とする場合、採用した人材が給与に見合った働きをしてくれるように、試用期間を設け研修制度を整えることも大切です。
早期に退職してしまった
給与や待遇や評価制度に不満がでて早期に退職する事態を防ぐためにも、求人票に給与体系を明記することが大切です。
何ができるとどんな待遇になるのかを伝えて、求職者が入社後の条件を具体的にイメージできるようにしましょう。
▼求人票における給与の伝え方の例
以上のように入社してから経過した期間ごとに給与のモデルを記載するとよいでしょう。さらに応募者と同じ条件の方が自社で働いている場合、面接で事例として伝えるのもおすすめです。
中途採用者の早期離職を防ぐ取り組みには、他にもさまざまな方法があります。下記の無料ダウンロード資料にまとめましたので、ぜひご覧ください。
既存のスタッフからの反発があった
中途採用者の給与が既存スタッフよりも高い場合、職場内で不公平感が生まれ、反発が生じる可能性があります。特に長期間勤務してきたスタッフほど不満を抱えやすいため、経営者や人事担当者には注意が求められます。
対処法として、給与の算定基準や評価制度を透明化し、納得感を得られる仕組みを構築することが重要です。たとえば既存スタッフに対して、スキルアップやキャリア形成を支援する研修制度を提供し、評価基準を明確にすると、個々の貢献が給与に反映される環境を整えられます。
厚生労働省が提供する「職業能力評価シート」や「事業内職業能力開発計画」などを参考にして、公平な人事制度を導入しましょう。
まとめ
本記事の内容をまとめると次の通りです。
- 転職者の37.2%が転職後に賃金が増加しており、とくに若年層では40~50%が増加していることから、中途採用の給与を決める際には前職よりも高い給与を検討するのもひとつの手段。
- 中途採用の給与を決める際には年齢給や職能給、職務給など自社の給与体系を基準に決める方法が一般的ですが、それぞれのメリット・デメリットを加味した上で、適切な評価基準を整備することが重要。
- 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」などの公的データを活用して、業界の年齢別収入データを参考にするのもおすすめ。
中途採用者の給与設定では、公平性と透明性を重視し、自社相場や業界データを活用することが重要です。給与体系や評価基準を整備したうえで、求職者に対してそれを明確に示すことが、雇用側と採用側の双方が納得できる雇用関係の構築につながります。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部