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離職率の調べ方とは?自社との比較・分析に役立つ情報と算出方法を解説

離職率の調べ方とは?自社との比較・分析に役立つ情報と算出方法を解説

離職率を知ることは、自社の健康状態を知ることにつながります。また平均と比べて高いのか低いのかを理解できると、自社が抱える経営の問題点や課題がわかるでしょう。

独立行政法人中小企業基盤整備機構の行った人手不足についてのアンケートでは、31.6%が深刻な問題、残りのうち37.6%の企業は人手不足が重要な問題と回答。合わせて7割近い企業が人手不足を問題と捉えている結果となっており、経営者の深刻な悩みを物語っています。

そこで本記事では、離職率の種類や調べ方、算出方法を解説します。離職率の調べ方がわかることで、今後の採用計画や戦略を考える材料にもなるはずです。ぜひ、参考にしてください。

離職率とは?

離職率とは、「ある時点で働いていて、一定の期間が経過した後に退職した人の割合」のことです。この「一定の期間」にはっきりとした決まりはありません。全体的な傾向を見ると、1年もしくは3年の期間で計測することが多いです。

離職率の定義は、国や企業によっても異なります。国が入職者と離職者を算出する雇用動向調査結果が示す離職率は「常用労働者のうち、調査対象期間中に退職・解雇された者」としており、調査期間は1年です。常用労働者には、無期雇用と1ヶ月以上の有期雇用が含まれます。

しかし就活サイトで公表されている離職率は、「新卒入社後3年で退職した人の割合」を指すことが一般的です。調べる情報によって大きく違う結果となるため、離職率を調べるときは結果だけでなく、期間と対象を確認しましょう。

離職率の種類

離職率とひと言にいっても、はっきりとした定義がされておらず種類はさまざまです。自社の離職率を比較するときは、気になる状況にあわせて確認する離職率を変えると分析がしやすくなります。

そこでここからは、離職率の条件のなかでも指標として比較がしやすい離職率の割り出し方と、その離職率の最新の数値を紹介します。

日本企業の全体の平均離職率

コロナ禍の影響など、社会全体の流れとして離職率が高まる傾向の年もあります。年度別に平均と比較したいときは、企業全体の離職率と比較してみましょう。

年度ごとの企業全体の離職率は、厚生労働省の毎年行っている雇用動向調査で確認ができます。算出方法は、以下の通りです。

厚生労働省の離職率計算式

離職率=離職者数÷1月1日時点の常用労働者数×100

この内容を元に算出された令和4年の企業全体の平均離職率は以下の結果となりました。

▼一般労働者とパトタイム労働者の離職率

一般労働者

11.9%

パートタイム労働者

23.1%

労働者合計

15.0%

これだけでは、平均的なのかはわかりにくいでしょう。そこで令和4年より過去の推移を遡ってみましょう。まずは、就業形態別の離職率の変動です。

就業形態別離職率の推移

次に、全労働者数トータルでの離職率の推移です。

離職率の過去推移

推移を追ってみると、全体的に15.0%付近を記録していることがわかります。ただし1枚目のグラフの通り就業形態別によっても大きく異なるので、自社の状況に合わせて比較してみてください。

産業別の離職率

業界によって離職率には差があります。より自社と近い離職率を比較したいときは、産業別の離職率を調べるとよいでしょう。

産業別の離職率も同様に、雇用動向調査結果で確認可能です。まずは令和4年度の産業全体の結果は以下の通りでした。

産業別離職率

次に、離職率の高い職業のワースト3位と離職率の数値は以下の通りです。

順位

業種

離職率

1位

宿泊業、飲食サービス業

26.8%

2位

サービス業(他に分類されないもの)

19.4%

3位

生活関連サービス業、娯楽業

18.7%

2位の「サービス業(他に分類されないもの)」には、自動車整備業、労働派遣サービス産業、廃棄処理業などが含まれています。逆に離職率が低いのは、鉱業、採石業、砂利採取業であることから、直接人と関わる職業になるほど離職率も上がっている傾向と言えそうです。

男女別離職率

男女別の離職率も同様に、雇用動向調査結果から確認できます。片方の性別比率が高い企業は、男女別の離職率も確認しておくと自社と比較しやすくなるでしょう。

資料によると、令和4年の男女別の離職率は以下の通りです。

性別

離職率

13.3%

16.9%

次に、過去の推移については以下の結果となりました。

男女別離職率

離職率の例年の傾向としては、男性は13%前後、女性は17〜18%前後で推移しているようです。女性の離職率が高いのには、ライフスタイルの変化が大きな原因と考えられます。

それを裏付けるデータが年齢階級別の転職入職率です。同資料内の調査結果なのですが、年齢ごとの動きがパートと一般労働者に分けて確認できます。男女それぞれの結果は以下の通りでした。

男女年齢階級別転入職率

女性のデータに注目すると、25〜34歳の部分でパートへの転職者が増えているのがわかります。以上のことから、特に女性は結婚や出産・子育てなどの影響が出やすいと考えられます。そのため自社で調査するときは、対象の年齢にも注意してください。

新卒入社3年以内の離職率

入社してから3年以内は、離職率が高まる傾向にあります。そのため3年以内離職率は、自社の人材が定着しているかを確認するのに適している指標と言えるでしょう。

新卒就職者の離職状況は厚生労働省が隔年で調査を行い、報道関係者向けに公表しています。2024年6月時点の最新データは、令和5年発表の令和2年3月卒業者を対象とした離職状況の発表です。

学歴別にまとめられており、合計した数値の平均は41.2%でした。このうち32.3%と最も離職率が低い大学卒でも、平成7年以降はほぼ離職率が30.0%を超えています。

全体の平均から分析すると、40.0%を超えるならどの業界、学歴にかかわらず平均よりも高い傾向であり、自社に何かしらの大きく上げる要因があると考えたほうがよいでしょう。

最終学歴ごとの離職率

実は学歴ごとでも離職率に差が出ます。学歴による離職率の違いは「七五三現象」とも言われ、中卒は7割、高卒は5割、大卒は3割が退職すると提言されていました。

それでは実際にはどうなのか、厚生労働省の調査結果による最新の情報を見てみましょう。

学歴

離職率

中卒

52.9%

高卒

37.0%

短大卒

42.6%

大卒

32.3%

結果から見ると、大卒の3割は一致するものの、中卒・高卒は改善されているようです。

次に、同資料では産業別の新卒3年以内の学歴別離職率もまとめられています。高校と大学別の離職率の高い職業上位5位は、以下の通りです。

高校

 

大学  

 

宿泊業,飲食サービス業

62.6% 

宿泊業,飲食サービス業

51.4% 

生活関連サービス業,娯楽業

57.0% 

生活関連サービス業,娯楽業

48.0% 

小売業

48.3% 

教育,学習支援業

46.0% 

教育,学習支援業

48.1% 

医療,福祉

38.8% 

医療,福祉

46.4% 

  小売業

38.5%

引用:「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」より抜粋

大学の数値を見ると、ワースト1位が5割を超えているのに対し、最も低い電気・ガス・熱供給・水道業の離職率は10.5%と、産業ごとにかなりの開きがあります。

新卒3年目以内の離職率を比較するときは、学歴と産業もあわせて比較するようにしましょう。

離職率の調べ方

自社の離職率と比較するのに他社の離職率を調べる方法として、主に6つの情報源があります。それぞれの特徴と確認できる情報を解説しますので、欲しい情報を得るのに役立ててください。

就職四季報

就職四季報とは情報誌のことです。年に1回東洋経済新報社が発行しています。この雑誌の特徴は、企業から掲載料を受け取っていないことです。これにより、客観的かつ中立的な立場でデータを掲載しています。

2026年6月時点で最新の2025年版では、1,200社を超える企業のデータが網羅されており、この中に新卒3年以内離職率と全従業員の離職率が含まれます。

ほかにも平均年収や年齢別賃金、従業員数など多くの情報が記載されているため、比較したいデータに合わせて企業が探しやすいでしょう。

ハローワーク

企業に離職者が出た場合、ハローワークに届け出る必要があります。そのため、対応する地域のハローワークであれば、確認したい企業の離職率を教えてくれるかもしれません。

ただし、2024年時点では求人票には直接記載はされていないので注意してください。2013年ごろに2015年から求人票に離職率を掲載する動きがあったようですが、現在は基本的には非公開となっています。

「企業のプライベートな情報」として電話での回答も得られません。ハローワークを直接利用したとき、職員によっては教えてもらえる可能性がある程度に考えておきましょう。

有価証券報告書

有価証券報告書とは、会社の作成した株主や投資家へ向けた報告書のことです。IRとも呼ばれる資料で、企業の経営状況が確認できます。有価証券(株式・債券・手形・小切手)を発行する上場企業は、作成するのが義務です。

ただし、離職率の記載が義務化されているわけではありません。代わりに、2023年3月からは人的資本開示義務化により、人材についての開示範囲は広がりました。

2024年6月時点の有価証券報告書では、主に以下のような人材に関わる情報を確認できます。

  • 資本金・売上・従業員数
  • 人材育成方針
  • 女性管理職比率
  • 男性育休取得比率
  • 男女間賃金格差

以上の情報からも企業の状況の予想はできるでしょう。有価証券報告書は、EDINETという金融庁の作成した情報開示システムから無料で登録せずに閲覧可能です。

帝国データバンク

帝国データバンクは、信用調査などを行う民間の企業です。日本最大級の企業データベースを持ち、独自データを販売することで収益を得ています。

データの種類はさまざまです。営業リスト作成に役立つ企業概要データベースや、企業の関係性データなどの新規顧客開拓に役立つものから、企業間取引に役立つ企業信用調査、倒産予測値まで、あらゆるデータを取り扱っています。

基本的に有料サービスにはなりますが、離職率の分析以外にも役立つ汎用性の高いデータを手に入れられるかもしれません。

実態調査

実態調査は、本記事でも多く紹介した厚生労働省の調査したデータのことです。雇用動向調査と言います。毎年上期・下期分をまとめて1回発表されるのと、上期と下期それぞれの計3回発表されます。

実際調査では、以下の内容が確認可能です。

  • 入職率
  • 離職率
  • 男女別の離(入)職率
  • 就業形態別の離(入)職率
  • 年齢別の入職率・転職率
  • 転職・入職者が前職を辞めた理由
  • 転職・入職者の賃金変動率
  • 各項目の過去推移
  • 各データの比較・掛け合わせ

実態調査は、厚生労働省のホームページから確認できます。離職率以外にも多くの情報がわかるため、退職について気になるときは見てみるとよいでしょう。

人的資本の情報開示

離職率の算出方法

他社情報や比較するべきデータの探し方は理解できたかと思います。そこでここからは、自社で離職率を算出する方法を説明します。

算出する前に目的を認識することが大切です。まずは自社が算出したい目的を考えて、どのような離職率を割り出すのかを検討してみてください。

目的を決定したら人事データから必要な数値を探します。今回は使うことの多い3つのパターンに分けて説明しますので、実際に計算してみましょう。

全従業員の月間離職率

前提として、離職率の計算は分母と分子の数値を変えるだけで基本はすべて同じです。以下の計算式から求められます。

「対象期間の離職者数」÷「対象期間の全体の母数」×100(%)

上記の式を、対象の数値に合わせて変更していきます。つまり、全従業員の月間での離職率を計算するときは、以下の式で算出が可能です。

「月間の離職者数」÷「月初から月末までの在籍者数」×100(%)

たとえば1ヶ月の月間離職者数が3人、1ヶ月の在職者が10人の場合の離職率は以下のように求められます。

3÷10×100(%)=30%

これがすべての計算式の基本です。次からは、ケース別に具体例を挙げて計算してみましょう。

全従業員の年間離職率

月間離職率と同じく、年間の離職率も求めてみましょう。計算式は、以下の通りです。

「年間の離職者数」÷「年間の在職者数」×100(%)

どこからスタートするのかは、企業の自由です。多くは自社の期初もしくは1月1日時点を設定しやすいですが、特にはっきりと決まってはいません。そのため「評価制度を変更しはじめた月から」など、イベントや制度変更の開始日からでも計測はできます。

たとえば4月から評価制度を変更した後1年で退職者が20人、在職者が50人とします。評価制度の導入前である前年の4月から1年の退職者が10人、在職者が70人だった場合、どちらの離職率が高いかを比較してみましょう。

【評価制度変更後】

20÷50×100(%)=40%

【評価制度変更前】

10÷70×100(%)=14.2%

別々に算出すると、評価制度変更後のほうが25.8%離職率が悪化しているのがわかります。

このように、離職率が上がった原因が評価制度に伴う何かかもしれないと予測できれば、評価制度の改良に着手することで離職率が改善するかもしれません。

新卒社員の離職率

最後に、新卒入社後から一定期間の離職率を求めてみましょう。対象範囲を新卒だけとした場合、以下の式で算出できます。

「一定期間の新卒退職者数」÷「一定期間の新卒採用数」×100(%)

例として新入社員を20人採用し、うち3年間で5名が退職してしまった場合の3年以内離職率を求める式は以下の通りです。

5÷20×100=25%

25%とすると高いと捉えられやすくなりますが、母数を変えると印象が変わるケースもあります。

たとえば先ほどの5名の退職者のうち、3年目で退職した人が4名だったとしましょう。母数を「2年以内」に変更すると退職者は1名、採用人数は20人のままにしたとき、結果は以下のように変わります。

1÷20×100=5%

5%というと、かなり離職率としては低いイメージではないでしょうか。極端な例ですが、このように離職率を低く見せることも可能です。他社と比較するときにも、数字のマジックに惑わされないようにしましょう。

離職率の改善に効果的な施策3選

数値を比較して改善するべき状況と気づいたとしても、何を改善すれば良いのかわからない経営者もいるでしょう。特に経営者にありがちな落とし穴として、作成した側の目線に偏ってしまい、客観的には見れなくなりやすいものです。

そこでここからは、離職率を改善するのに効果が高い施策を解説します。

福利厚生や従業員満足度を上げる施策を取り入れる

人手不足が顕著になっている昨今では、従業員満足度を上げるサービスが評価を受けています。エン・ジャパンが行った福利厚生を転職先で重視するかの年代別アンケートへの回答は、以下の結果でした。

福利厚生の重視度

40代までの世代は、福利厚生を重視する傾向がみられます。特に顕著なのは20代で、44%もの人が福利厚生を「かなり重視する」と回答しました。

それではどんな福利厚生を求めているのかという疑問に対して、Biz Hitsが「あったら嬉しい福利厚生ランキング」を発表しています。

あったら嬉しい福利厚生

次に同調査で、男女別の欲しい福利厚生についても発表している結果が以下の通りです。

男女別のあったら嬉しい福利厚生

福利厚生には、法定福利と法定外福利があります。会社規模によっても導入できるかは変わるかもしれませんが、アンケート結果を元に法定外福利も含めて見直ししてみると、離職率を改善できるかもしれません。

評価制度についてアンケートを取り改善する

人事制度で不満が集まりやすいのが、評価制度についてです。株式会社ロイボの行った人事評価のアンケートでは、75.2%と多くの人が不満を感じている結果となりました。

評価制度の不満アンケート

同調査では、「評価によって転職を考えた経験があるか」についてもアンケートをしており、実に71.8%もの人が「ある」と回答しています。

人事評価制度を全従業員が満足するものにするのは、難しいかもしれません。しかし、従業員が何を望んでいるかを知ることはできます。

匿名で良いのでアンケートを取り、満足度や求めることについて聞いてみることが改善の第一歩です。行っていない場合は、実施を検討してみてください。

面談回数を増やす

離職率低下の原因となりやすいのは、上司や役職者との会話不足によるものの可能性もあります。HR総研の行った離職リスクの早期把握に効果のあった取り組みについてのアンケートの1位は、「評価面談以外の定期的な面談」でした。

効果のあった離職リスク早期把握施策

従業員が少数だったり人手不足だったりで、落ち着いた環境で面談をするのは難しい企業もあるかもしれません。そんなときも、経営者の心掛け次第でコミュニケーションの場は増やせます。

1対1でのコミュニケーションを意識しており、たとえばホームページをリニューアルしたかった時は、得意そうなスタッフに『ちょっと、相談に乗ってくれない?』と声をかけて1時間ほど時間をもらっています。

他にも『ありがとう』という感謝を伝えることをはじめ、報告、連絡、相談をこまめに行うことなど、当たり前のルールを大切にしています。

引用:モアリジョブ/「pour toujours」山口 麗さん

日常のコミュニケーションをこまめにすることでも、従業員の状況は見えてくるはずです。もしも思い浮かべた従業員について何もわからない場合、まずはできる限り声がけを増やすようにしてみてください。

まとめ

離職率は、企業が正常な経営ができているのかを知るために重要な指標です。求め方自体はシンプルで、電卓があれば誰でも計算できます。大切なのは中身です。なぜその期間で離職率を知る必要があるのか、何に役立てたいから求めているのかを見失わないようにしましょう。

他社や平均的な離職率は、厚生労働省の資料や四季報などで確認できます。個別の企業を調べる場合、いずれの方法も他社を調べるには基本的にコストが必要です。無料資料からも推測は可能ですが、確実な情報で比較したいときは業界や企業規模・従業員数などから慎重に選んでください。

離職率を求めるときには、分母と分子の関係が大事です。自社が自由に設定できるため、より一層はっきりと目的を認識しなければなりません。この記事を参考にして、自社の経営に役立ててください。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。