専門学校に求人票を出すことで、即戦力として活躍しやすい人材の採用を期待できます。
ただ一方で、「大学向けの求人票と内容や提出方法は違うのか」「具体的にどのような内容を書くべきか」「より応募につながりやすい書き方を知りたい」など悩みを抱える採用担当者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、専門学校向けの求人票の出し方や記載のポイント、学校との信頼関係を築く方法について紹介します。
専門学校の求人票とは
専門学校の求人票とは、企業が専門学校の学生を対象に募集を行うために提出する書類です。企業情報、職種、勤務地、勤務時間、給与、応募条件など、学生が就職先を判断するための基本的な情報を記載します。
専門学校では、就職担当者が学生に対して求人情報を紹介することが多いため、求人票は学校側の信頼を得るうえでも重要なツールとなります。提出方法は紙媒体やWeb入力フォームなど学校によって異なり、提出の際には学校ごとの指定フォーマットに従う必要があります。
大学・短大の求人票との違い
大学や短大の求人票との最大の違いは、「職業に直結した専門性を重視しているかどうか」です。
大学や短大では、一般教養や学術的な知識を中心に学んでいるため、採用後に研修やOJTで育成する前提の採用が主流です。一方で、専門学校は現場で必要とされる技術や資格取得に特化した教育が行われており、学生は明確な職業目標を持って進学しているケースがほとんどです。
そのため、企業側もより具体的なスキルセットや業務内容を求人票に記載し、専門性を活かせる環境であることをアピールする必要があります。
また、大学・短大では学生が自主的に求人票を閲覧して応募するケースが多いのに対し、専門学校では就職指導担当の教員が企業情報を学生に紹介・推薦するケースが多くみられます。こうした点も、専門学校向けの求人票においては「学校側にも伝わる内容・信頼性」がより求められる理由のひとつです。
専門学校に求人票を出すメリット
専門学校に求人票を出す主なメリットについて解説します。
まず前提として、専門学校への進学率は一定の割合を保っており、特に文部科学省の「令和6年度学校基本調査(確定値)」によると、専門学校への進学率(過年度卒を含む)は24.0%と、前年度から2.1ポイント上昇し過去最高を記録しました。
こうした背景からも、専門学校に求人票を出すことの有効性を理解できるでしょう。
そのうえで、具体的なメリットとしては以下の3つが挙げられます。
特定分野の人材に対するアプローチを効率化できる
各専門学校は、美容、医療、IT、デザイン、建築、美容など、特定の業界や職種に特化した教育を行っています。そのため、自社の業務内容とマッチする学科を持つ専門学校に求人票を出せば、必要なスキルや資格を持った学生に対して効率的なアプローチが可能です。
特に採用ターゲットが明確な企業にとって、無駄の少ないマッチングを実現できる手段となるのです。
即戦力人材の採用につながりやすい
専門学校では、実習や現場に近いカリキュラムを通じて、実務に直結したスキルを磨いた学生が多く在籍しています。企業はこうした学生を新卒の段階から採用することで、入社後すぐに業務に取り組める即戦力人材を確保しやすくなります。
特に中小企業や教育リソースの限られた企業にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
地元密着型の採用活動ができる
多くの専門学校は地域に根ざしており、地元出身で地元での就職を希望する学生が多く通っています。地域密着で人材を確保したい企業にとって、地元の専門学校に求人票を出すことは、長期的な定着を期待できる採用手法となります。
Uターン・Iターンを希望する学生との接点も持てるため、地域活性化の観点からも注目されています。
専門学校への求人票の出し方と手順
専門学校への求人票の出し方と手順を、下記6ステップで紹介します。
- 採用したい職種や対象学生を明確にする
- 対象となる専門学校をリストアップする
- 各学校の求人受付方法と締切を確認する
- 求人票を作成する
- 専門学校へ提出する
- 提出後のフォローを行う
以下では、各ステップについてより具体的に紹介します。
1.採用したい職種や対象学生を明確にする
まず最初に行うべきは、どのような職種で、どのような人材を採用したいのかを具体的に定めることです。
たとえば、美容師やネイリスト、ITエンジニア、デザイナー、医療技術者など、専門学校で養成される職種を想定し、求めるスキル・資格・人物像を明文化しておくと、後のステップがスムーズになります。これらは求人票の記載内容にも大きく関わるため、慎重に設定しましょう。
2.対象となる専門学校をリストアップする
次に、自社の採用ニーズに合致する学科・コースを持つ専門学校を探してリストアップします。業界ごとに特色ある専門学校があるため、業界団体の会員校一覧や地域の職業能力開発協会などを活用して情報を集めましょう。
なお全国展開ではなく、特定の地域で採用したい場合は、実習内容や卒業生の就職先などを確認し、地元密着型の学校を優先的にリストアップすると効果的です。
3.各学校の求人受付方法と締切を確認する
専門学校によって、求人票の提出方法や受付期間は異なります。郵送、メール、専用フォーム、あるいは求人票送付専用サイトなど、学校ごとにルールが決められているため、各校のキャリアセンターや就職担当部署の公式情報を必ず確認しましょう。
また、年度初めや学期の切り替わり時期に締切が集中することもあるため、早めの確認と準備が重要です。
4.求人票を作成する
求人票には、会社情報、募集職種、勤務条件、応募条件など、学生が判断材料とする情報を明確かつ正確に記載します。
加えて「求める人物像」や「企業の魅力」なども簡潔に盛り込むことで、応募意欲を高める効果が期待できます。フォーマットは学校指定のものを使用する場合が多いため、事前に入手しておきましょう。
なお、求人票の書き方のポイントについては、後の項目で詳しく解説します。
5.専門学校へ提出する
作成した求人票は、各専門学校のルールに従って提出します。複数校に送る場合は、内容に不備がないか事前に再確認し、一括送信でも丁寧な対応を心がけましょう。紙媒体での提出が必要な場合は、返信用封筒を同封するなどの配慮も必要です。
また、対象の専門学校を訪問できる場合は、就職担当者とアポイントを取り「学生たちの就活状況のヒアリング」や「求める人物像の伝達」など採用に関する情報交換を兼ねて手渡しで提出するのも有効です。
6.提出後のフォローを行う
求人票は提出したら終わりではなく、その後のフォローも欠かせません。たとえば、学校の就職担当者への電話確認や、インターンシップの案内、学校訪問の提案など、継続的な関係構築が効果的です。
また、学生からの応募状況を定期的にヒアリングすることで、次年度以降の採用活動に活かす情報も得られます。
専門学校の求人票に掲載すべき内容と記載例
専門学校の求人票に掲載すべき内容について解説します。
基本的には、各専門学校が指定するフォーマットを用います。web上でExcelやPDF形式で公開しているケースが多いです。
もし求人票フォーマットの指定が無い場合は、自社で用意する必要があります。その際は、必要項目に沿ってヌケ・モレが無いようにしなければなりません。
以下では、主要な掲載内容を記載例とあわせて紹介します。なお、ここでは美容業界とIT業界の2パターンを例として用います。
会社情報
会社名、所在地、業種、設立年、従業員数など、基本情報をわかりやすく記載します。事業内容は簡潔にまとめ、学生にも理解できる表現を意識しましょう。特に、自社の強みや特徴を短くアピールする一文を加えると、印象が残りやすくなります。
▼記載例1(美容業界):
【会社情報】 株式会社〇〇(本社:大阪市北区) 設立:2010年/従業員数:50名 事業内容:ヘアサロン運営(大阪・兵庫で5店舗展開) 「自分らしく輝ける毎日」をテーマに、20代を中心としたお客様へトレンドスタイルを提案する地域密着型サロン。 |
▼記載例2(IT業界):
【会社情報】 株式会社〇〇(本社:東京都新宿区) 設立:2005年/従業員数:120名 事業内容:ITソリューションの企画・開発・運営 「社会に役立つ技術を、わかりやすく。」をモットーに、幅広い業界の課題解決に取り組んでいます。 |
募集職種と仕事内容
学生が最も関心を持つのが、どんな仕事をするのかという点です。専門分野と業務がどうつながるのかを明示し、業務内容を専門用語を使いすぎずに具体的に説明しましょう。
▼記載例1(美容業界):
【募集職種】 美容師アシスタント(正社員) 【仕事内容】 シャンプー・ブロー・カラー補助・受付対応・清掃などのサロン業務全般。 先輩のサポートを受けながら、営業中トレーニングでスキルアップ可能。平均2年でスタイリストデビュー。 |
▼記載例2(IT業界):
【募集職種】 システムエンジニア(正社員) 【仕事内容】 顧客との要件定義、システム設計・開発、テスト業務など。 入社後はOJTを中心に、先輩社員のもとで実務経験を積みながら成長をサポートします。 |
また紙幅に余裕があれば、配属先やチーム構成、1日の仕事の流れなどもあると、職場のイメージが湧きやすくなります。
勤務条件(給与や福利厚生など)
給与(月給・手当)、賞与、勤務時間、休日休暇、残業の有無、勤務地など、労働条件は詳細に記載することが求められます。特に初任給は比較されやすいため、明確に数字を記載しましょう。福利厚生の記載も、安心感につながります。
▼記載例1(美容業界):
【勤務条件】 初任給:220,000円〜(技術・皆勤・固定残業手当含む) 勤務地:大阪市内の各店舗(希望考慮) 勤務時間:10:00〜19:00(休憩1時間) 休日:月8日/夏季・冬季休暇あり/有給休暇制度 福利厚生:社会保険完備、交通費支給(上限15,000円)、ウィッグ支給、講習費補助 |
▼記載例2(IT業界):
【勤務条件】 初任給:220,000円〜(基本給+固定残業・各種手当含む) 勤務地:東京・名古屋・大阪の各オフィス(希望を考慮) 勤務時間:9:00〜18:00(休憩1時間) 休日:完全週休2日制(土日祝)/夏季・年末年始休暇 福利厚生:社会保険完備、交通費全額支給、資格取得支援、社内イベントあり |
応募条件と求める人物像
必要な資格・スキルや学科・専攻などの応募条件に加えて、「こんな人材を歓迎します」といった人物像の記載も有効です。学生が自分の特性と照らし合わせやすくなります。
▼記載例1(美容業界):
【応募条件】 美容師免許取得予定者(202〇年3月卒業予定) 【歓迎する人物像】 ・お客様に笑顔を届けたいという気持ちのある方 ・チームで協力できる方 ・SNSなどの情報発信が得意な方も歓迎 |
▼記載例2(IT業界):
【応募条件】 情報処理系学科の卒業見込み、または基本的なプログラミング経験のある方(独学可) 【歓迎する人物像】 ・自ら考えて行動できる方 ・チームで協力しながら仕事を進められる方 ・新しい技術や知識への興味・関心が高い方 |
育成制度やキャリアパス
就職後の成長イメージを描けるように、入社後の研修、スキルアップ支援、昇進制度などを紹介しましょう。長期的なキャリアを考える学生にとって、働き続けられるかの判断材料になります。
▼記載例1(美容業界):
【研修・育成制度】 入社後は週2回の社内カリキュラムで基礎から丁寧に指導。営業中トレーニングOK。 【キャリアパス】 アシスタント(1年目)→ トップアシスタント(2年目)→ スタイリスト(平均2年半)→ トップスタイリスト/店長/独立支援制度利用 |
▼記載例2(IT業界):
【研修・育成制度】 入社後は3カ月の研修期間あり(ビジネスマナー・技術研修・OJT) 社外セミナーやeラーニングも活用可能 【キャリアパス】 新入社員 → 中堅エンジニア(3年目) → プロジェクトリーダー → マネージャー/スペシャリスト |
応募方法・選考フロー
応募の手順や必要書類、選考の流れ(書類選考→面接→内定など)を簡潔に記載します。スケジュールが明確にわかると、学生が行動を起こしやすくなります。
▼記載例1(美容業界):
【応募方法】 履歴書(写真付き)を郵送またはメール添付で送付 【選考フロー】 書類選考 → 面接(1回) → サロン見学(希望者) → 内定 【応募締切】 202〇年2月末まで(定員に達し次第締切) |
▼記載例2(IT業界):
【応募方法】 履歴書(写真付き)および成績証明書をメールまたは郵送でご提出ください 【選考フロー】 書類選考 → 一次面接(オンライン) → 最終面接 → 内定 【応募締切】 202〇年2月末まで(採用予定数に達し次第終了) |
連絡先・担当者情報
不明点の問い合わせ先として、採用担当者の氏名、連絡先(電話・メール)を明記しましょう。学生が安心して応募できるよう、対応窓口の情報は丁寧に書くのがポイントです。
▼記載例(業界問わず):
【連絡先・担当者情報】 株式会社〇〇 採用担当:(氏名) TEL:(電話番号) MAIL:(メールアドレス) 見学・面談の希望も随時受け付けています。お気軽にご連絡ください! |
専門学校の求人票における書き方のポイント
専門学校の求人票における書き方のポイントを、4つ紹介します。
専門学校生向けに伝わりやすい表現を心がける
専門学校生の多くは、社会人経験がなく、業界や職種についての知識もまだ限定的です。そのため、求人票には専門用語や業界特有の言い回しを極力避け、学生の立場に立った「わかりやすい日本語」で表現することが非常に重要です。
たとえば、「OJTによる早期戦力化」と書くよりも、「入社後は先輩社員のサポートを受けながら実際の仕事を覚え、半年ほどで一人立ちを目指します」と具体的に記す方が、学生にもイメージが伝わりやすくなります。
また、「リーダーシップを発揮して活躍できる職場」といった抽象的な表現よりも、「チームで協力して課題に取り組み、仕事に慣れてきたら後輩の指導にもチャレンジできます」と書くことで、実際の働き方が見え、安心感を与えられます。
他社との差別化ポイントを示す
多くの企業が同時期に求人票を出すなかで、学生の印象に残るためには「自社ならではの魅力」を示す必要があります。
たとえば、業界の中でも「年間休日数が業界平均より多い」「1年目から企画に関われるチャンスがある」など、他社と比較して「自社がどこで勝負できるか」を提示します。
また、給与・福利厚生・研修制度などの制度的な違いだけでなく、「職場の雰囲気」「社員同士の関係性」「離職率の低さ」といったソフト面の情報も含めれば、企業文化に魅力を感じてもらえる可能性が高まります。
自社で求人票フォーマットを準備する際は、記載欄を設けてアピールしましょう。専門学校の指定フォーマットの場合は、自由記載欄や関連する欄で一言でも構わないので示すだけで印象は向上します。
募集職種の魅力を具体的に書く
学生が求人票を読んで最も注目するのが「どんな仕事をするのか」という点です。ただ職種名だけを記載するのではなく、その職種の業務内容、やりがい、1日の流れ、入社後の育成プロセスなど、できる限り具体的に書きましょう。
あわせて、その仕事が社会や顧客にどう貢献しているのか、どんなスキルが身につくのかを示すと、職種の魅力がより明確になります。例:「お客様の生活をより快適にする提案ができる」「将来はマネジメントや新規事業にも挑戦できる」など、長期的な視点を持たせることも重要です。
キャリアパスや働き方を丁寧に説明する
専門学校生は、「どんなキャリアが描けるのか」「どのような働き方をしているのか」という情報に敏感です。キャリアパスや働き方に関する情報が求人票にしっかり記載されていると、応募への意欲が高まりやすくなります。
たとえば、以下のような内容を含めると効果的です。
- 入社後の教育ステップ:「入社後3カ月は研修期間として、社内制度や商品知識をしっかり学べるカリキュラムを用意しています」
- キャリアの流れ:「入社1年目は〇〇職、3年目にはリーダー職、5年目には本社スタッフとして企画に携わる先輩もいます」
- 働き方の柔軟性:「残業は月平均10時間以下で、シフト制によりプライベートとの両立も可能です」「産休・育休取得率は100%、復帰後も時短勤務が可能です」
実際の先輩社員のキャリア例を紹介することで、よりリアルなイメージを持たせることができます。学生にとって「ここで働く将来像」が具体的に描けるような情報提供を心がけましょう。
専門学校へ求人票を出す際の注意点
専門学校に求人票を提出する際には、基本的なマナーと事務的なルールを守ることはもちろん、実際の採用成果につなげるための戦略的な視点も求められます。
以下の点に注意することで、より効果的な採用活動が可能になります。
必要記載事項や提出方法など基本を徹底する
専門学校に求人票を提出する際は、まず基本的なルールや必要事項を正確におさえましょう。
たとえば、求人票の掲載事項や提出方法が学校ごとに指定されているケースが多いため、必ず指示に従う必要があります。最近ではWeb入力やPDF提出などオンライン対応が主流ですが、郵送やFAXが必要な学校も存在します。
フォーマットを間違えたり、旧様式を使ってしまうと、再提出の手間が発生する可能性もあるため注意が必要です。
記入内容に関しても、誤字脱字や記載漏れがないよう慎重に確認することが求められます。特に、給与や勤務地、勤務時間など学生が最も気にするポイントに誤りがあると、応募者の不信感を招き、企業イメージにも悪影響を及ぼしかねません。
このように、求人票の提出は「ただ出せばよい」というものではなく、細部まで丁寧かつ正確に作成・提出する姿勢が、専門学校や学生との信頼関係構築につながるのです。
応募が得られないケースも事前に想定しておく
見落とされがちなのが、「求人票を出しただけでは応募が来ない可能性もある」という現実です。専門学校の学生にとっては、求人票は多くの中の一つに過ぎません。仮に応募がなかった場合のフォロー体制をあらかじめ準備しておくことが、安定した採用活動には欠かせません。
たとえば、他の採用手法も並行して進めておくのが有効です。具体的には、求人媒体への掲載、SNSを活用した情報発信、専門学校主催の企業説明会や就職フェアへの参加などが考えられます。
求人票によるアプローチはあくまで「入口」であり、それをきっかけに企業の魅力を伝える「接点づくり」を多面的に行うことが、専門学校生の採用を成功させるカギです。
なお以下の資料では、「求人媒体の選び方」など採用成功のために必須となるポイントを大きく4つ紹介しています。ぜひ無料ダウンロードのうえ、採用成功に役立ててください。
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専門学校との関係構築で採用成功率を高めよう
専門学校からの応募を安定的に確保し、より自社に合った人材を採用するためには、単に求人票を提出するだけでなく、学校との関係性を築く必要があります。
以下では、関係構築のための具体的な取り組みを、事例を交えて紹介します。
職場見学や職業体験、実習の機会を提供する
学生が将来の働くイメージを持てるよう、職場見学や1日職業体験、インターンシップ(実習)の機会を設けましょう。
現場の雰囲気や仕事の流れを実際に体験することで、自社への理解が深まり、応募へのハードルが下がります。特に、実習を通じて学生が職場に馴染みやすくなれば、そのまま採用に至るケースも多く、実践的な人材育成にもつながります。
▼専門学校中央農業大学校の事例
学校での学習と職業教育連携企業における実習を組み合わせて実施し、企業実習の成績
評価を行うデュアルシステムの教育プログラムを開発している。
概要
- 年間を通じて週2日を企業連携実習とし、終日、農業法人での実習を実施している。
- 学生は長期の実習により、個別の作業を体験するだけでなく、栽培から出荷までの一連の業務を経験することができ、職業意識を高めることができる。
▼中央動物看護専門学校の事例
企業等が学生に求めるレベルや実習での実施事項に関して、実習先と綿密に打合せを行
い、企業等のニーズと学生の学修到達度に応じた実習を実施している。
概要
- 企業等実習においては、職場見学的側面の強いものから、従業員と同等の実務が求められるものまで、実施事項のレベルが多様である。そのため、事前に企業等の期待を確認・調整し、実習参加時のギャップを低減している。
- 実習の受入れ先企業等とは、受入れの条件や学校の責任範囲等について契約を取り交わし、改めて書面で確認を取るようにしている。
学内説明会へ積極的に参加する
専門学校では、企業を招いた学内説明会が定期的に開催されています。これらのイベントに積極的に参加することで、学生に直接アプローチできる機会を得られます。
パンフレットだけでは伝わらない職場の魅力や社員の人柄を伝えるチャンスとして、採用活動における効果は非常に高いです。
また以下の事例のように、会社説明会には学生と近い世代の社員も参加すれば、より学生とのコミュニケーションを取りやすくなります。専門学校のOB・OGがいる場合は特に有効です。
主に、美容専門学校が主催する会社説明会に参加してもらっています。学生の子たちも歳が近い人の方がいろいろ聞きやすいでしょうから(笑)。実際に話しかけやすいといった声もいただいています。
この間まで学生だったからこそ、学校との接点が多かったり、先生ともつながっていたり。そうすると、サロンとの連携も取りやすいんです。
引用:モアリジョブ|BEAUTRIUM 南青山店マネージャー 久住桃子さん
社員を講師として派遣する
専門学校の授業に企業の社員を外部講師として派遣するのも、有効な関係構築の手段です。自社の技術や職種に関連したテーマで話をすることで、学生との接点が生まれ、会社の認知度や信頼度が高まります。
また以下の事例のように、専門学校への講師派遣は「社員の成長」にもつながります。
多くの美容専門学校に講師を派遣しています。サロンで美容師としての技術を獲得できるのは当然ですが、その技術や知識を今度は講師として学生たち教えられるようになります。
美容専門学校で講師としてカットやカラーを教えると、自分自身の技術力や指導力まで高められるいい経験になります。
引用:モアリジョブ|ELRHODES 渋谷店 マネージャー 兼 井上陽平美容研究所 採用担当 岩崎勝利さん
さらに同事例において、派遣講師を通じて自社に適した人材と出会い、採用にまで至ったことが述べられています。
ELRHODESや母体の井上陽平美容研究所から、美容専門学校の講師を派遣していますが、その講師たちの評価がすごく高かったのが彼なんです。実際に彼の面接を担当して、積極性と快活さに好感がもてたことですね。
引用:モアリジョブ|ELRHODES 渋谷店 マネージャー 兼 井上陽平美容研究所 採用担当 岩崎勝利さん
以上のように講師派遣を通じて専門分野の現場知識を提供すれば、学校側からも信頼を得やすくなるのはもちろん、求める人材の採用も期待できるのです。
まずは専門学校との接点をつくることが重要
いずれにしても関係構築の第一歩は、専門学校との「接点づくり」です。まずは電話やメールで求人票提出の相談をしたり、学校見学に訪れたりするなど、気軽にコンタクトを取ることから始めましょう。
「最初の一歩」を踏み出すことで、採用支援に積極的な学校であれば、今後の説明会やインターン受け入れなどにつながる可能性があります。
ここまでで紹介した以外にも、下記のような接点のもち方もあるので、参考にしましょう。
美容学校への取材をさせてもらい、それぞれの学校の特徴や魅力がわかるように記事を作っているので、そこでもつながりができています。学校に電話をしたり、ホームページから問い合わせをしたりして、取材依頼をするのですが協力してくださる学校も多いんです。取材時には、学校のガイダンスがあれば、参加させてもらえるようにお伝えしています。
引用:モアリジョブ|美容室「OjOmano」CHO(人事最高責任者) 倉田晋吾さん
就職担当者と継続的なコミュニケーションをとる
専門学校の就職担当者とは、定期的な連絡や情報交換を心がけましょう。学生の傾向や就職意識、指導方針などを聞き取ることで、求人の打ち出し方や選考方法の改善に役立ちます。
また、企業の採用ニーズを明確に伝えることにより、学校側から自社に合った学生を紹介してもらえるケースも増えます。信頼関係が構築されることで、学校からの協力も得やすくなります。
専門人材が必要なら業界特化型の採用手法も有効
専門知識や技術が求められる職種の採用では、一般的な求人媒体だけでは求める人材と上手く出会えないケースも少なくありません。その場合、業界に特化した採用手法を取り入れると、より質の高い人材にリーチ可能となります。
特に美容業界であれば、美容専門学校や業界団体と連携し、ターゲットに直接アプローチできるチャネルの活用が有効です。本記事で紹介した専門学校への求人票の提出や、教職員とのネットワーク構築はもちろん、学校主催の就職説明会やセミナーへの参加も、企業の認知度向上と魅力づけにつながります。
また、学生の進路選択に大きな影響を与えるのが「現場のリアルな声」です。採用活動を単なる募集にとどめず、キャリア支援の一環として学生と関わる姿勢が、企業理解を深め、ミスマッチのない採用に結びつきます。
なおリジョブでは、こうした取り組みの一環として、美容専門学校生向けの就職支援セミナー「リジョブカレッジ」を開催しています。⾃己分析を通じて「なりたい美容師像」を明確にし、現場で活躍する美容師の話や就活を終えた先輩の体験談を共有することで、学生が在学中に何を学び、経験すべきかを導きます。
そのうえで、セミナーを通じて得た学生のリアルな声や就活状況を、新卒採用を強化する企業様にフィードバックする機会も設けており、企業と学生双方が納得のいく雇用の創出を目指しています。
専門人材の採用を検討されているのであれば、業界に精通・特化した企業が提供する採用サービスを活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
専門学校の求人票とは、企業が専門学校の学生を対象に募集を行うために提出する書類です。専門学校では、就職担当者が学生に対して求人情報を紹介するケースも多いため、求人票は学校側の信頼を得るうえでも重要なツールといえます。
専門学校に求人票を出す際のポイントを、あらためて整理しておきましょう。
- 専門学校は実務に直結した人材が多く、即戦力の採用につながりやすい
- 求人票には具体的なスキルや人物像を記載し、専門性をアピールすることが重要
- 学校ごとの提出ルールや締切を事前に確認しておくことが必要
- 提出後も、学校との関係を深めるフォローが採用成功のカギとなる
正しい知識と丁寧な対応で、専門学校との信頼関係を築き、理想の人材採用を実現しましょう。

- 執筆者情報
- 高橋祐哉(Takahashi Yuya)