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【経営者必見】アンケートデータ公開!ネイリスト給料の実態と設定における重要ポイント5つ

【経営者必見】アンケートデータ公開!ネイリスト給料の実態と設定における重要ポイント5つ

ネイリストの給与設定は、サロンの売上や採用成功率に大きく左右します。

そこで本記事では、ネイリストの給与相場や、適切な給与を設定するためのポイントなどを紹介します。地域・ポジション別の給与傾向なども解説しますので、自身が運営するサロンに適した給与設定を行いたい人は、ぜひ参考にしてください。

ネイリストの平均年収は?

厚生労働省の調査によると、ネイリストの平均年収は320.6万円で、1時間あたりの賃金は1,527円となっています。ただし、同調査は「令和5年賃金構造基本統計調査」を参考にした数値であり、ネイリスト単体の平均年収でない点に注意が必要です。

一方、国税庁の調査によると、日本の平均年収は460万円であるため、ネイリストの平均年収は全体よりやや低いといえるでしょう。

なお、求人の給与設定の見直しに役立つ「美容ヘルスケア業界の給与相場データ」は、以下の資料で紹介しています。ネイリスト単体でも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

ネイリストの初任給とボーナスは?

ネイリストの初任給は、一般的に15~20万円程度とされています。

ネイリストのボーナスはサロンによって異なりますが「売上ノルマ達成で○○万円支給」「指名料バック」といったかたちで受け取れるサロンもあります。

ただ、サロンによってはボーナスの支給条件が厳しく、結果的に賃金が低くなりやすい傾向にあり、現場からは以下のような声が挙がっています。

基本給18万+歩合、が多いと思います。

歩合は時期やサロンによりますが、2〜8万程度ですかね。

歩合が取れない時(指名客が少ない、閑散期など)はかなり辛いです。

正社員も、全てのメニューに入れるようになり月の売り上げ◯万円越えられたらなど条件が厳しく最低賃金のアルバイトの方も多いです。

わたしは都内の激戦区のサロンにいて月の売り上げ120万とかでやっと手取り24とかでした…閑散期は手取り18笑

引用:Yahoo!知恵袋

ネイリストの残業代は?

残業代の支給は労働基準法で定められているため、適切に遵守しなければなりません。ただ、サロンの対応によって異なるのも実情です。

たとえば、研修期間や自主練の時間などに対して残業代を支払うサロンも存在しますが、一切支払わないサロンもあります。

9時間拘束で、休憩はほぼ取れないと思っていた方が良いと先輩から言われています。休憩が取れていなくてもお給料には反映されないみたいです。また基本残業はしない方針のサロンですが、売上の計算が合わないとみんなで残らなければならない場合がありますが残業代は一切つかないと説明されています。美容業界では普通の事だと思うので仕方がないと思っていますが、ちゃんと休憩が取れたり残業代がつくサロンなんてあるのでしょうか?

引用:Yahoo!知恵袋

残業代を支払わないと、こういった形で口コミが広がり、サロンの評価を落としてしまうリスクがあります。

ネイリストの残業に関しては、こちらの記事もご参照ください。

ネイリストの労働時間はどれくらい?よくある課題や対策も解説

ネイリストの給与体系は?

リジョブの調査によると、ネイリストの給与体系の分布は次の通りです。

1.現在の給与と満足度_給与体系

上記資料などを参考にし「各給与体系のメリット・デメリット」「理想の給与体系」などを解説します。

月額固定制

リジョブの調査によると、ネイリストの給与体系で最も多いのは月額固定性です。

月額固定制のメリット・デメリットについて、ネイリストのアンケート結果をもとに紹介します。

まず、月額固定制は、給与が毎月一定のため、スタッフは安定した生活を設計できます。同調査によると、特に経験年数が浅いネイリストは基本給が高く、歩合率が低い給与体系を望む傾向があります。なぜなら「(基本給が高いと)安心できる」「キャンセル等で売上が取れない場合もある」という声が挙がっているためです。

また、資料にある「繁忙期と閑散期の給料の差額がない方がいい」というコメントの通り、季節変動による収入の波がなく、スタッフの経済的な不安を軽減できます。未経験者や経験の浅いネイリストに対して、安定した給与を保証できることは採用面でも優位になるでしょう。

一方、月額固定制は、成果と報酬が直結しないため、モチベーションの維持が難しいというデメリットがあります。実際、同調査によると全体の73%が「個人の業績や成果が影響する」給与体系を望んでいます。

加えて、アンケートでは「もっと実力を評価してくれる店に行きたい」という転職理由が41%と高い割合を示しています。このため、固定給だけでは実力のあるネイリストを逃してしまうリスクがあるといえます。

基本給+歩合制

基本給+歩合制は、全体で2番目に多い給与体系です。歩合率は10%未満が最も多く、次いで10~15%が多い結果になりました。

2.現在の給与と満足度_歩合率

基本給+歩合制の導入により、成果と報酬の連動によるモチベーション向上を図れます。実際、リジョブの調査によると「歩合率が高い方が給料を増やそうと頑張れる」「自分の成果が評価されていると感じる」という声があり、スタッフの意欲向上に期待できることが分かります。

また、基本給の部分を抑えると、売上変動に柔軟な対応ができるようになるため、サロン経営の安定性向上にもつながるでしょう。

ただし、収入が不安定になりやすくなることから、スタッフに不安を与えてしまうデメリットはあります。実際、同調査では「固定の指名客がいなくて歩合が不安定」という懸念が示されており、適切な歩合率の設定が求められます。

なお、同調査によると理想の歩合率は「15〜20%未満」が31%と最も多いです。歩合率を設定する際は、このあたりを目安に設定するとよいでしょう。

理想の給与体系

リジョブの調査によると、ネイリストが理想とする給与体系は「基本給+歩合+賞与」が最も多く、その他は次のようになりました。

3.理想の給与

また、現在の給与に満足している人の声を多い順に並べると以下のようになりました。

  • 「労働時間に見合っている(約37%)」
  • 「責任やポジションに見合っているから(約32%)」
  • 「自分の能力が評価されていると感じているから(約24%)」

このように、自分の労働の質に見合った給与をもらっている人の満足度は比較的高いといえます。給与設定を見直す場合はぜひ参考にしてみてください。

【ポジション・経験別】ネイリストの給与相場

ここでは、下記ポジション別でのネイリスト給与相場を紹介します。

  • オーナー
  • 店長
  • ジュニアネイリスト
  • ネイル講師

まずは経験別での給与相場を見てみましょう。

経験年数別の給与相場

リジョブの調査によると、給与相場(月あたり)に対する経験年数のボリュームゾーンは次のようになっています。

  • 16万円未満:3年未満
  • 16~20万円:6~9年未満
  • 21~25万円:3~6年未満
  • 26~30万円:9年以上
  • 31~35万円:9年以上
  • 36~40万円:9年以上

一見すると経験年数に応じて給与が上がっていますが「26~30万円」「31~35万円」においては経験年数による大きな差はありません。よって、ネイリストは年功序列ではなく、スキルや知識で給与に差をつける傾向が高いといえます。

オーナーの給与相場

オーナーの給与相場は、スタッフを雇う場合の月収が0~250万円で、年収は1,000~2,000万円、一人で経営する場合の月収は20~50万円で、年収が250~600万円程度です。

スタッフを雇った場合の給与を試算してみましょう。

【売上試算】

平均客単価:6,000円

1日の平均来客数:8人

月間営業日数:26日

月間売上:6,000円 × 8人 × 26日 = 1,248,000円

【経費試算】

家賃:15万円 / 月

人件費(ネイリスト2名):40万円 / 月(基本給20万円 / 人)

消耗品費(ジェル、マニキュア等):売上の15% = 約19万円

光熱費・通信費:3万円 / 月

広告宣伝費:5万円 / 月

その他経費(保険、税理士費用等):5万円 / 月

合計経費:約87万円 / 月

【オーナーの給与相場(営業利益)】

1,248,000円(月間売上) - 870,000円(月間経費) = 378,000円(営業利益)

この営業利益がオーナーの取り分となり、ここから所得税や社会保険料等が差し引かれます。また上記はあくまでも試算であり、場所や人件費などにより大きく異なるため注意してください。

店長の給与相場

店長の給与相場は、月収30~40万円で、年収が400~500万円程度とされています。ボーナスがない会社の場合は、400万円を切ることもあるでしょう。

ネイリスト歴8年目で、店長職の正社員です。

店長手当を入れても手取り16万円台、ボーナスはありません。年収だと240万です。

基本的に残業は禁止で、空き時間で調整させられます。

売上金額や指名に対しての歩合もありますが、"ここを超えたら"という基準が高過ぎて結果0円です。

アルバイトの場合は歩合なしで、ほぼ最低賃金。

会社にもよりますが、無駄な事務処理(同じものを何度も提出させる、しかも使わない)ばかり増やして、方針もブレブレ。どんどん辞めていっています。

引用:Yahoo!知恵袋

ジュニアネイリスト

ジュニアネイリストとは、一般的に経験が1年未満のネイリストです。先ほど紹介したリジョブのデータを見ると、3年未満のネイリストは月収で「16万円未満」「16~20万円」であるため、1年未満は16万円を下回る場合も多いでしょう。

2ヶ月ほど前から個人経営のサロンに就職しました。検定は持っていますがサロン未経験で、最初の1ヶ月は無給料で研修、Jr.ネイリストになってからはフリーランスで月16万円、パーツなどのオプションが歩合性の契約で働いています。月9日休みの営業時間が10-22なのですが、休憩が1時間のみで、体力的にもしんどくなってきました。

引用:Yahoo!知恵袋

ネイル講師

ネイル講師の給与は一般ネイリストよりも高水準で、認定資格の有無が報酬に大きく影響します。たとえば、認定講師資格保持者は正社員の場合、月給25万円~40万円程度になる傾向があります。一方、未取得者は月給20万円前後が相場です。

雇用形態別では、認定講師のフリーランスや非正規雇用の時給は1,500円~3,500円、コンテスト受賞歴があれば時給5,000円のネイリストもいます。ただし、未取得者の時給は平均1,200円程度です。

【地域別】ネイリストの給与相場

ネイリストの給与相場を地域別(高い順)に紹介します。(2025年5月現在)

地域

月収

関東

22.9万円

中国

22.7万円

四国

22.4万円

東海

21.2万円

関西

21.2万円

九州・沖縄

20.6万円

東北

20.2万円

北海道

19.8万円

北信越

19.4万円

参照元:
関東の ネイリスト・サロン平均データ
中国の ネイリスト・サロン平均データ
四国の ネイリスト・サロン平均データ
東海の ネイリスト・サロン平均データ
関西の ネイリスト・サロン平均データ
九州・沖縄の ネイリスト・サロン平均データ
東北の ネイリスト・サロン平均データ
北海道の ネイリスト・サロン平均データ
北信越の ネイリスト・サロン平均データ

ネイリストの給与設定が重要な理由

ネイリストの給与設定が重要な理由は次の通りです。

  • スタッフの質が変わる
  • 競合との差別化につながる
  • スタッフの定着率アップ

それぞれの理由について解説します。

スタッフの質が変わる

給与設定はネイリストのモチベーションに直結し、提供されるサービスの質を大きく左右します。リジョブの調査では、給与に満足している理由として「労働時間に見合っているから(37%)」がトップに挙げられています。十分な報酬を得ているネイリストは、技術向上への意欲も高まるため、結果として顧客満足度の向上にもつながります。

特に重要なのは、給与と評価の連動性です。同調査によると、ネイリストの73%が「個人の業績や成果が給与に影響すること」を望んでいます。そのため、技術力や接客スキル、集客力などを適切に評価し、それらを給与に反映する仕組みを作ることが大切です。

たとえば、資格取得に応じた手当や、売上目標達成へのインセンティブなどを設ければ、スタッフの成長スピードを促進できます。

また給与が低すぎる場合、スタッフは生活のために複数のサロンを掛け持ちしたり、技術向上より施術数を増やすことを優先したりする可能性があります。そのため、スタッフのニーズに合った適切な給与設定を心がけましょう。

競合との差別化につながる

魅力的な給与体系は他サロンとの差別化要因となり、優秀な人材の獲得につながります。実際、リジョブの調査によると、53%のサロンが応募数・採用数を上げるために給与下限を引き上げており、平均で2.5万円程度の増額を実施しています。

競合との差別化において重要なのは、単に基本給を上げるだけでなく、給与体系全体の設計です。リジョブの調査では、ネイリストが理想とする給与体系として「基本給+歩合+賞与」が46%と最も支持されており、従来の「月給固定制(16%)」を大きく上回っています。なお、理想の歩合率は「15〜20%未満」が31%と最多です。

スタッフの定着率アップ

適正な給与体系はスタッフの満足度を高め、定着率アップにつながります。

ネイリスト1年目。低所得で辛すぎ悩んでいます。客観視して転職すべきでしょうか。

28歳独身女性です。

標題のとおり、正社員ネイリスト1年目ですが、収入が少なく貯金も自由なお金もなく、 早くも転職活動しようか悩んで苦しいです。

引用:Yahoo!知恵袋

上記のように、薄給で生活が困窮し始めるとスタッフは転職を考えるようになります。ただ一方で、サロン経営との整合性を取るうえで給与を上げるのが難しい場合もあるでしょう。そういった場合は、別の角度でスタッフの満足度を高めるとよいです。

リジョブの調査によると、転職の際、給与と同等以上に重要な条件として「勤務時間に融通が利く(47%)」「休日が増える(44%)」、「自分の能力・スキルを高められる(35%)」などが挙げられています。これらのニーズを待遇に反映できれば、定着率アップにつながるでしょう。

また昇給の仕組みづくりも重要です。リジョブの調査では、新入社員の給与額を上げるタイミングとして「3ヶ月以内」「6ヶ月以内」を合わせると約40%の企業が早期の昇給を実施しています。

上記を参考にして入社時の給与額だけでなく「どのようにスキルアップすると、どのくらい給与が上がるのか」という将来像を示せば、スタッフの早期離職を防げるでしょう。

ネイリストの給与設定で重要な5つのポイント

ネイリストの給与設定をする際に重要なポイントは次の通りです。

  1. 市場相場の把握
  2. 経験・資格に応じた段階制の導入
  3. インセンティブ制度の設計
  4. 福利厚生の充実化
  5. 経営状況との整合性を保つ

以下にて詳しく解説します。

1.市場相場の把握

まずは業界の市場相場を正確に把握しましょう。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、理容・美容師の年収は経験年数によって大きく異なり、25〜29歳で約382万円、30〜34歳で約468万円となっています。

また、ネイリスト特有の相場としては、リジョブの調査結果によると経験3年未満では月収16〜20万円が多く、経験を積むにつれて21〜25万円、26〜30万円と上昇していく傾向にあります。

さらに、地域差も考慮しなければなりません。都市部と地方では顧客単価や来店頻度に差があり、同じスキルレベルでも給与相場が異なるためです。

加えて、サロンのグレードやターゲット層によっても相場は変動します。競合サロンの求人情報や業界団体の調査データを定期的にチェックし、現状に適した給与レンジを設定しましょう。

2.経験・資格に応じた段階制の導入

ネイリストの経験年数やスキルレベル、保有資格に応じた段階的な給与体系の導入は、スタッフのモチベーション向上に効果的です。

リジョブの調査によると、ネイリストの73%が給与設定に対し、個人の業績や成果が給与に影響されることを望んでいます。これは年功序列よりも、実力や貢献度を評価してほしいという現場の声が反映された結果といえるでしょう。

具体的には「ジュニアネイリスト」「ベテランネイリスト」などのランク設定を行い、昇格の条件や給与差を明確にするなどが挙げられます。この際、技術力だけでなく、接客スキルや集客力、メニューの種類なども評価指標に加えると、多面的な成長を促せます。

また、JNECネイリスト技能検定やJNAジェルネイル検定などの資格取得に応じた手当を設ければ、スキルアップへの意欲を高められます。

3.インセンティブ制度の設計

基本給と歩合給のバランスは、ネイリストの給与体系においてとても重要な要素です。リジョブの調査によると、理想の給与体系として「基本給+歩合+賞与」が46%と最も支持されており、理想の歩合率は「15〜20%未満」が31%で最多となっています。現状の「10%未満」が最も多いことを考えると、多くのネイリストが現在よりも高い歩合率を望んでいるといえます。

また、インセンティブ制度を設計する際は「基本給が高く歩合率が低い」か「基本給が低く歩合率が高い」かの選択も重要です。

本調査によると、経験の浅いネイリストほど基本給の高さを重視する傾向があり、その理由として「安心感がある」「キャンセル等でどうしようもなく売上がとれない場合もある」などが挙げられています。

一方、経験を積んだネイリストは「自分の実力に見合った額を貰いたい」「歩合率が高い方が頑張れる」といった理由から歩合率の高さを重視する傾向にあります。よって、両者のニーズをくみ取った設定が重要といえるでしょう。

社内表彰式という形で達成者を讃えたうえで歩合給を支給し、モチベーション向上につなげている事例もあります。

社内表彰式があります。上半期と下半期の年2回、スタッフが一堂に介して開催されるイベントで、会社から個人と店舗それぞれに与えられた目標の達成者を表彰するんです。多くの人に祝われるという体験はモチベーションにつながると思います。また目標を達成すると、「目標達成給」という歩合給が支給されるので、自分の成長や努力を実感しやすいのもポイントです。

引用:モアリジョブ|「ファイブスター」オフィスマネージャー 関根美保利さん

4.福利厚生の充実化

給与以外の待遇も、人材確保や定着において重要です。リジョブの調査によると「転職で給与が下がることを受け入れられる条件」として、「勤務時間に融通が利く」「休日が増える」が上位に挙げられています。これは金銭的報酬だけでなく、ワークライフバランスを重視する傾向があることを示しています。

特に、ネイリストは手先を使う専門職のため、健康面への配慮が重要です。休日が増えればスタッフの満足度が上がるだけでなく、腱鞘炎などの職業病予防にもなり、結果としてサロン運営の効率化につながります。

また同調査では「自分の能力・スキルを高められる」ことが給与減少を受け入れる条件の一つとして挙げられています。このため、技術向上のための外部セミナー参加費用補助や、資格取得支援制度もスタッフにとって魅力的な福利厚生となります。

5.経営状況との整合性を保つ

理想的な給与体系を設計する際は、経営状況との整合性を保つことが重要です。

美容業界では人件費率30〜40%が適正とされており、経営者はこの数値に基づいて給与を設定する必要があります。

ただし、リジョブの調査から、ネイリストが給与に不満を感じる最大の理由は「労働時間と見合わない(43%)」ことです。同時に満足している理由としても「労働時間に見合っている(37%)」が最多となっており、労働時間と報酬のバランスが重要視されていることが分かります。

したがって、人件費率だけを注視するのではなく、スタッフの満足度や全体の売上を考慮した給与設定が重要といえるでしょう。

ネイリストの採用で失敗を防ぐポイント6選

ネイリストの採用で失敗を防ぐポイントは次の通りです。

  1. 求職者のニーズに合った給料設定
  2. 給料以外での魅力も訴求
  3. 応募者のスキル・経験などに応じた給与提示
  4. 求人要件の明確化
  5. 業界特化型求人の活用
  6. SNSを活用した採用ブランディング

適切な給与設定を行っても、採用が失敗すれば元も子もありません。それぞれのポイントについて理解し、円滑に採用活動を進めましょう。

1.求職者のニーズに合った給料設定

リジョブの調査アンケートで、ネイリストに対し「給与を上げるためにどのような転職をしたいか」という質問を行ったところ「もっと実⼒を評価してくれる店に⾏きたい」「⾃分の個性に合った店に⾏きたい」といった回答がありました。

また、同調査によると、ネイリストの理想の給与体系としては「基本給+歩合+賞与」が46%と最も支持されており、歩合率は「15〜20%未満」が理想とされています。

つまり、ネイリストは自分のスキルや知識が適切に評価されることを望んでいます。

また同調査では、経験3年未満のネイリストは月収21〜25万円、3〜6年では26〜30万円、6〜9年では31〜35万円を理想としています。よって、給与設定の際は、経験年数で異なるニーズに対応する必要があるといえるでしょう。

2.給料以外での魅力も訴求

給与以外の魅力を訴求することで応募率向上につながります。リジョブの調査によると、転職時に給与が下がることを受け入れる条件として「勤務時間に融通が利く」(約47%)「休日が増える(約44%)」「自分の能力・スキルを高められる(約35%)」が上位に挙げられています。

ネイリスト業界特有の課題として、身体的負担や不規則な勤務時間があるため、これらへの配慮を示せば差別化になり、応募率が向上します。

また同調査では「採用決定率を上げるために給与以外の条件を元々の自社規定よりも良くした」という企業は33%存在します。具体的には雇用形態の拡充や、技術を学べる環境の整備などです。

経営状況を鑑みて給与の向上が難しい場合は、上記を参考にして環境や待遇の改善に努めましょう。

3.応募者のスキル・経験などに応じた給与提示

応募者のもつスキルや経験に応じて柔軟に給与を提示することも、採用成功率を高める重要な戦略です。リジョブの調査によると、応募者の情報に基づいて求人の給与下限よりも高い給与を提示した経験がある企業は45%にのぼります。

給与提示の際に参考にした情報は、「スキル・経験業務」(28%)、「経歴」(20%)、「素直さ」(20%)が上位を占めています。

具体的な金額としては、応募者のスキル・経験に応じて平均3.7万円、前職での指名客数に応じて3.1万円、希望する年収に応じて2.9万円、同じ人材条件の給与相場に応じて2.7万円、他社の選考状況に応じて2.2万円の上乗せが行われています。

これらの数字から、優秀な人材を獲得するためには相応の投資が必要であることが分かります。

なお、企業が給与を上げた背景には「急募だった」「有望候補者に併願があった」「前職での圧倒的な経験や実績があった」「欲しいスキル」などが挙げられおり、企業の課題に即した採用が行われていました。

4.求人要件の明確化

採用のミスマッチを防ぐには、求人要件の明確な設定が大切です。曖昧な条件設定は、入社後のミスマッチを生み、早期離職につながるリスクがあります。

たとえば、求人要件がまとまっていないと下記のようなミスマッチが起き、早期離職につながります。

ネイリストをしているのですが、1月に退職し新しい会社に2月からお世話になり始めました。まだ今は研修期間中なのですが、求人内容や想像と違っていたことが多すぎて戸惑っています。

手取りも11万ほどでネイル・髪色・希望休自由ということで給料の面は多少我慢かなと思い入りましたが実際自由というほどの自由ではありませんでした。

施術の仕方も大きく違い0からのスタートの気分です。これからモデルを呼んで経験を積むより、施術の仕方が前職と同じところなどを探したほうが働きがいもお客様にも迷惑がかからないのかなと思ってしまいます。

引用:Yahoo!知恵袋

リジョブの調査によると、ネイリストが転職で給与を上げるために希望する条件として「もっと実力を評価してくれる店に行きたい」と「自分の個性に合った店に行きたい」が各41%で最も多くなっています。求人要件を設定する際はこういった求職者のニーズを反映することが大切です。

また、求人要件は、以下を参考にして具体的に記載しましょう。

項目

詳細

必要なスキルレベル

JNECネイリスト技能検定、JNAジェルネイル検定などの資格級

経験年数

未経験可、〇年以上など

求める人物像

接客が得意、新しいデザインに挑戦したい方など

職場の雰囲気や方針

高級路線、若者向け、主婦層向けなど

5.業界特化型求人の活用

ネイリスト採用では、美容・ヘルスケア業界に特化した求人サイトの活用をおすすめします。一般的な求人サイトと比較して、専門サイトには業界経験者や資格保有者など、質の高い求職者が集まる傾向があるためです。

また、業界特化型サイトでは、技術レベルや得意な施術など、ネイル業界特有の条件設定ができるため、マッチング精度も向上します。

効果的な求人掲載のポイントとして、給与情報の明確な記載が挙げられます。リジョブの調査によると、業界の相場を常に確認し、他社と同等かそれ以上の条件を提示している企業が多いことが分かります。

また同調査によると「入社後、新入社員の給与額を上げたタイミング」について、「3ヶ月以内」と「6ヶ月以内」を合わせると約40%の企業が早期の昇給を実施しています。こういった情報を求人に含めれば応募意欲を高められるでしょう。

6.SNSを活用した採用ブランディング

SNSの活用は、潜在的な求職者へのアプローチとして非常に効果的です。特にビジュアル重視のネイル業界では、InstagramやTikTokなどの画像・動画プラットフォームの活用により、サロンの魅力や技術力をアピールできます。

日常の業務風景やスタッフの作品、技術講習の様子などを積極的に発信すれば「このサロンで働きたい」と思われるようなブランドイメージを構築できるでしょう。

SNS運用のポイントは、単なる求人情報の掲載ではなく、サロンの価値観やスタッフの働きやすさを伝えることです。スタッフのインタビューや、休憩時間の過ごし方、社内イベントの様子などを共有すれば職場の雰囲気が伝わります。また、技術向上のための取り組みや資格取得者の紹介など、キャリア開発に関する情報も魅力的です。

さらに、SNSを通じて構築したブランドイメージは、応募前にサロンの雰囲気を確認したい求職者の助けにもなります。リジョブの調査では、ネイリストが転職時に重視する要素として「自分の個性に合った店」が上位に挙げられており、SNSはその相性を判断する重要な窓口となるためです。

「ファイブスター」オフィスマネージャーの関根さんは、SNS運用の講師を呼んで集伽力アップにつなげています。

ひとつ挙げると、弊社ではSNSの活用研修を開催しています。今の時代、SNSは美容師にとって集客につながる大事な要素です。毎月外部講師を招いて、効果的な撮影方法や投稿方法、トレンドを押さえた内容作りなどを学べるんです。また、講師が1人ひとりの投稿を見て、赤ペン先生のようにフィードバックも行うので成長しやすくなっています。企業が直接的に集客してあげるのではなく、スタッフ個人が発信力、集客力を身につけることを大切にしています。実際、スタッフの平均フォロワー数は一般的な美容師と比べても高い水準になっていると思います。

引用:モアリジョブ|「ファイブスター」オフィスマネージャー 関根美保利さん

まとめ

ネイリストの給与設定を行う際、押さえておきたいポイントは次の通りです。

  • 市場や経営状況に合わせる
  • 理想の給与体系は「基本給+歩合+賞与」
  • 給与設定だけでなく職場環境や成長機会などの改善も大切

ネイリストの給与設定は、単なるコスト管理ではなく、優秀な人材の確保と定着を左右する重要な経営戦略です。適切な給与設定を行い、安定した人材確保につなげましょう

山田 大地(Yamada Daichi) プロフィール画像
執筆者情報
山田 大地(Yamada Daichi)
大学卒業後に上京し、新卒から転職エージェントと人事部を担当。その後、訪問型セラピストの展開を目指してリラクゼーションサロンに勤務する傍ら、副業として始めたWebライターで独立を果たす。現在はWebマーケティングの専門知識を活かし、父が経営する複数店舗の集客支援に従事。転職支援から接客サービス、コンテンツ制作まで幅広い業界経験を持ち、デジタルマーケティングを軸とした事業成長支援を行っている。