保険請求の厳格化や競合の増加により、整骨院業界では業績悪化に陥る院が少なくありません。
これに加えて「売上げが思うように上がらない」「適切な経営指標がわからない」など、多くの整骨院経営者が課題を抱えています。
そこで本記事では、整骨院経営で押さえるべき4つの経営指標から、売上げアップにつながる具体的な施策7選まで、成功事例とともに詳しく解説します。
効果的な経営戦略を構築し、競合に負けない安定した整骨院経営と年収向上を実現しましょう。
整骨院業界の将来性
株式会社矢野経済研究所の調査によると、コロナ禍で陰りを見せた柔道整復・鍼灸・マッサージ市場ですが、翌年の2021年から再び右肩上がりの傾向にあります。
また帝国データバンクの調査によると、整骨院・療術・マッサージ業者の収入高合計は2018年度に前年度比4.8%増の2038億4800万円となりました。ただし、この成長の背景には店舗数の増加があり、1店舗あたりの売上げは減少傾向にあります。
実際、同調査の業歴別の分析では「10年未満」の業者が759社(36.3%)と全体の3分の1以上を占めており、近年の新規参入ラッシュを示しています。また従業員数「10人未満」の業者が全体の81.4%に達し、小規模経営が圧倒的多数を占める厳しい業界構造となっています。
そして最も深刻な問題は、倒産件数の急激な増加です。以下のとおり、東京商工リサーチの調査によると、倒産件数は一時期横ばいの動きを見せるものの、結果的には増加の一途をたどっています。
なお、2025年に倒産した55件のうち、83.6%が売上げ不振が原因だったことがわかりました。また、倒産した44件はすべて負債1億円未満、従業員も10名未満の小・零細規模が大半を占めており、個人経営の整骨院がいかに難しいかを物語っています。
整骨院を経営している人の平均年収
整骨院を経営している人の平均年収は、経営の規模によって大きく異なります。以下では、整骨院の規模に分けて平均年収を試算し、解説します。
1人整骨院の平均年収
整骨院経営者の年収は、経営規模によって大きく異なります。1人で整骨院を経営する場合、経営者が自ら施術も行うため施術件数は限られますが、収入は施術料に比例しています。
たとえば1回あたり平均3500円程度として、1日18人の施術を月22日実施した場合、単純計算で月商138万6000円、年商1663万2000円です。
ただし、これは売上げベースであり、家賃や諸経費、税金を差し引くと実際の手取り額はかなり少なくなる点に留意しておきましょう。
複数の従業員を雇用している整骨院の平均年収
複数のスタッフを雇う場合、スタッフの給料や社会保険などの経費はかかりますが、施術件数も総収入も増えやすくなります。
たとえば、自分を含めて3名の施術者がいれば、上記の3倍の売上げとなり月収415万8000円、年収4989万6000円です。
人件費や税理士費用などを差し引くと手取り額は大幅に下がりますが、1人整骨院よりは多くなるでしょう。
複数の整骨院を経営している人の平均年収
複数の整骨院を経営する場合、経営者は主として管理業務に専念し、収入は各店舗の利益で決まります。
3店舗経営で月950万円の売上げがあれば、年間売上げ高は1億1400万円となります。利益が8~12%あれば成功といえる水準です。
ただし規模が大きくなるにつれ、施術技術よりも折衝力やマネジメント能力が重要になる点に留意しておく必要があります。
整骨院の経営が難しい理由
整骨院の経営が難しい理由は次のとおりです。
- 保険請求の厳格化
- 競合の増加
- サービス業としての意識が薄い
それぞれを詳しく解説します。
保険請求の厳格化
整骨院経営において最も大きな影響を与えているのが、厚生労働省による保険請求の厳格化です。
従来、柔道整復師が運営する整骨院では、骨折、捻挫、打撲、脱臼、挫傷の5つの外傷に対する施術に公的保険が適用されてきました。しかし、慢性的な腰痛や肩こりなど保険対象外の症状を外傷と偽る「不正請求」が問題となったため、平成24年3月の厚生労働省通知により審査が大幅に厳格化されました。
具体的には、多部位請求や長期施術に対する調査が強化されました。「3部位以上負傷」「3カ月を超える長期継続」「月当たり10~15回以上の頻回施術」などに対し、保険者による文書照会や聞き取り調査が実施されるようになったのです。
この結果、保険診療に依存してきた整骨院は大幅な収入減少に直面し、自由診療への転換を余儀なくされています。
参考:柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について|厚生労働省
競合の増加
整骨院業界では新規参入が相次ぎ、競争が激化しています。厚生労働省の調査によると、平成30年から令和2年の2年間で柔道整復師数は2769人(3.8%)増加し、7万5786人に達しました。
一方、柔道整復の施術所は同期間でわずか287か所(0.6%)の増加にとどまり、5万364カ所です。
施術所数の増加に対して柔道整復師数の増加幅が圧倒的に大きいことから、個人開業と継続する難しさが伺えます。特に都市部では、同一商圏内に複数の整骨院が乱立する状況が見られ、患者の獲得競争が激化しています。
超高齢社会における需要増加を見込んで開業するケースが多いものの、結果的に市場の細分化が進み、一院あたりの患者数は減少傾向にあります。
サービス業としての意識が薄い
従来の整骨院経営では、「技術力があれば患者が来院する」という職人的な発想が根強く残っていました。しかし、現在の競争環境では、サービス業としての意識改革が不可欠です。
実際、多くの整骨院経営者はマーケティングや顧客満足度向上に向けた取り組みが足りず、結果として新規患者の獲得やリピーターの確保に苦戦しています。
たとえば、予約システムの導入、院内環境の整備、スタッフ教育、情報発信など、サービス業として当然行うべき取り組みが後手に回っているケースが多いです。
また、患者さんとのコミュニケーション不足により、施術効果の説明や治療計画の共有が十分でないことも、患者満足度の低下につながっています。
保険が使えず自由診療の重要性が高まるなか、患者に対する価値提供とその適切な説明能力は今後さらに重要な要素となるでしょう。
整骨院の経営者が押さえるべき4つの経営指標
整骨院の経営者が円滑な経営を進める上で押さえるべき4つの経営指標は次のとおりです。
- 利益率
- 人件費
- 地代家賃率
- 広告比率
以下にて詳しく見ていきましょう。
1.利益率
利益率(営業利益率)は、売上げに対する利益の割合を示す重要な指標で、計算式は以下のとおりです。
利益率(%)=利益(円)÷売上げ(円)×100
安定経営を実現している整骨院では、利益率4~6%程度を維持しているケースが多く見られます。初期段階では利益率4~6%を目標として設定し、経営が軌道に乗った段階で利益率12~18%を目指すような長期的な視点が重要です。
利益率の改善には、売上げの向上と経費削減の両面からのアプローチが必要です。自由診療メニューの充実により単価を上げる一方で、継続的な経費の見直しが求められます。
2.人件費
人件費の適正性は「労働分配率」で評価できます。整骨院では仕入れ原価が少なく、売上げに占める人件費の割合が多いためです。
労働分配率の計算式は次のとおりです。
労働分配率(%)=人件費(円)÷売上げ(円)×100
人件費には基本給与のほか、社会保険料、研修費用、福利厚生費なども含まれます。
整骨院業界では労働分配率が38~42%程度となるのが一般的です。理想的には労働分配率を28~32%程度に抑制しつつ、スタッフの待遇は維持できるよう売上げの増加を図るのが重要です。
効率的な予約システムの導入や業務のマニュアル化により、少ない人数でも高い生産性を実現できる体制作りがポイントです。
3.地代家賃率
地代家賃率は、売上げに占める賃料の割合を示す指標で、計算式は次のとおりです。
地代家賃率(%)=地代・家賃(円)÷売上げ(円)×100
一般的に地代家賃率は8~12%が適正とされています。ただし、整骨院では立地が集患に大きく影響するため、家賃を抑制する目的で立地条件を妥協し過ぎるのはよくありません。
駅近や住宅街の中心部など、ターゲット患者がアクセスしやすい立地を選定し、その立地で十分な売上げを確保できる事業計画を策定するのが重要です。
4.広告比率
広告比率は、売上げに占める広告宣伝費の割合を示す指標で、計算式は次のとおりです。
広告比率(%)=広告宣伝費(円)÷売上げ(円)×100
整骨院業界は従来、広告への投資が少ない傾向にありましたが、競争激化により認知度向上の重要性が高まっています。
理想は広告比率2~4%程度とし、ホームページ制作、SNS運用、地域密着型の広告展開など、効果的な投資対象を見極めた上で広告を活用しましょう。
整骨院の売上げアップにつながる施策7選
整骨院の売上げアップにつながる施策は次のとおりです。
- ターゲットの明確化
- 客単価の向上
- 施術数の増加
- 経費削減
- リピート率の向上
- 適切な施術料金の設定
- 集客施策を充実させる
それぞれの施策について解説します。
1.ターゲットの明確化
効果的な集患を実現するためには、明確なターゲット設定が重要になります。ターゲットを明確化すれば、マーケティングメッセージの統一性が保たれ、限られた広告予算を効率的に活用できるためです。
J-Net21の調査によると、整骨院を「よく利用している」と回答した年代で最も多かったのは60代の男女それぞれ5%で、この世代をメインターゲットとして設定するのが効果的と考えられます。
60代をターゲットとする場合、加齢による身体の不調や慢性的な痛みに対するケアニーズが高いため、健康維持や予防的施術に重点を置いたサービス設計が重要になります。
また、この世代は口コミによる情報収集を重視する傾向があるため、既存患者からの紹介を促進する仕組み作りも効果的です。
さらに、ターゲットのライフスタイルに合わせた営業時間や施術メニューの設定により、顧客満足度の向上も期待できます。
2.客単価の向上
J-Net21の調査によると、1回あたりの利用料金のボリュームゾーンは1000~3000円でした。
▼1回あたりの利用金額
ここから客単価の向上を図る場合、3000~5000円の価格帯を狙うことになります。同調査では、この金額帯でもっとも多い年代は20代、40代の男性であるため、この層に注力することで客単価の向上を期待できます。
客単価向上のためには、自由診療メニューの充実させる工夫が必要です。
たとえば、美容整体、スポーツ整体、リラクゼーション施術などの付加価値の高いメニューを導入すれば単価アップを目指せます。
また、施術後のアフターケア商品の販売や、定期的なメンテナンスプランの提案なども有効です。
3.施術数の増加
施術数を増加させるには、新規患者の獲得と既存患者の来院頻度を高めるアプローチが必要です。
新規患者を獲得するには、地域密着型の集客活動や効果的な広告展開があります。
一方、既存患者の来院頻度を高めるには、定期的なメンテナンス施術の提案や、症状の改善状況に応じた継続的なケアプランの作成が効果的です。
また、施術時間の効率化も施術数増加につながります。スタッフのスキル向上や、機器の導入などを行い、質を保ちながら施術時間を短縮すれば、より多くの患者に対応できるようになるでしょう。
4.経費削減
経費の削減は利益率を高める直接的な手段です。特に、前述した整骨院の主要経費である人件費については、労働分配率を適正水準に保ちながら、効率的な人員配置が求められます。
設備投資においては、必要最低限の設備選定とROI(投資利益率)の見極めが重要です。高額な機器導入の前には、患者ニーズの詳細な分析と収益予測を行い、投資効果を慎重に検討する必要があります。
また、材料費や在庫管理の最適化も経費削減に向けた検討要素です。複数のサプライヤーとの価格交渉や、適切な在庫レベルの維持により、無駄な支出を削減できます。
さらに、電気代や水道代などのランニングコストについても、省エネ機器の導入や節約意識の徹底により削減が可能です。
5.リピート率の向上
J-Net21の調査によると「どちらかといえば利用したい」と考えている人の割合は男性で14%、女性で13%でした。この層に効果的にアプローチし、リピート利用を促進するのが重要になります。
▼今後の利用意向
リピート率向上のためには、初回来院時の丁寧なカウンセリングと診断により、患者との信頼関係を築くことが求められます。加えて、施術効果の定期的な確認と、それにもとづくアフターケアにより、患者の満足度を保つことも大切です。
また、回数券制度やポイントカード、定期メンテナンス割引などの制度を導入するのも効果的です。患者の目線に立ち「もう一回来院したくなる整骨院かどうか」を基準に考えるとよいでしょう。
6.適切な施術料金の設定
料金設定は競合他院との差別化と収益確保のバランスを考慮する必要があります。地域の相場調査を行い、自院の提供価値に見合った適正価格を設定するのが重要です。
また、保険診療と自由診療の価格体系を明確に区別し、患者が納得できる価格説明を行うことで、料金に対する理解を得られやすくなります。
さらに、定期的な料金見直しも必要です。物価上昇や人件費増加を考慮しつつ、患者の支払い能力と市場動向を分析して、適切なタイミングでの料金調整を行い、持続可能な経営を実現させましょう。
7.集客施策を充実させる
効果的な集客には、複数の広告媒体を組み合わせた多角的なアプローチが大切です。
たとえば、ホームページやSNSを活用したデジタルマーケティングと、チラシや看板などの従来型広告を効果的に組み合わせれば、幅広い層にリーチできます。
地域密着型の集客活動では、地元イベントへの参加や、近隣施設との提携により、地域での認知度向上を図りましょう。
また、Googleマップ上の口コミやレビューサイトでの評価向上も非常に重要です。質の高いサービス提供により、自然発生的な好評価の獲得も重要ですが、口コミを促すアプローチも欠かせません。
整骨院の客単価を向上させる3つの方法
整骨院の客単価を向上させるのに効果的な方法は次のとおりです。
- 自費メニューの導入
- 顧客満足度の向上
- 他院にない高度な施術の提供
詳しく見ていきましょう。
1.自費メニューの導入
高い売上げを見込めない保険診療から脱却するためには、自費メニューの導入が欠かせません。自費メニューは価格設定の自由度が高く、保険診療と比較して高い利益率を確保できるためです。
具体的な自費メニューとしては、美容整体、スポーツパフォーマンス向上施術、リラクゼーション目的のマッサージなどがあげられます。
また、自費メニューは競合他院との差別化要素としても有効です。独自性の高い施術メニューを開発して地域内での競争優位性を確立すれば、患者の来院を促せます。
自費メニュー導入時の重要なポイントは、既存の保険診療との明確な差別化です。患者に対して自費メニューの特徴と効果をわかりやすく説明し、その価値に納得してもらいましょう。
2.顧客満足度の向上
顧客満足度の向上は、客単価アップにつながります。
たとえば、柔道整復師であり経営プランナーの九鬼良さんは、「当たり前のことが当たり前のようにできる接骨院」が売上げを伸ばしていくのだと語ります。
基本的には、当たり前のことを当たり前にやっているかということを見ます。今人気の店も0歳のときがあるわけです。0歳から、他店を研究したり、チラシを配ったり、お客様に来ていただけるための努力をして店を育てたわけです。それは当たり前のこと。例えば、女性の患者さん、お客様を増やしたいという店が、スリッパやトイレが汚かったり、先生が休憩中にたばこを吸って、その匂いがしたり、掃除が行き届いていないというようなことが多々あるわけです。そんなお店が、会計上の数字をどんなにイジっても売上があがるわけがない。
(中略)
『なんとなくいいな』と思う店は、人がつくり出した息吹を感じるんです。お客様の多くも、綿密なリサーチをして店を選ぶのではなく、直感的に『なんとなく、ここがいいな』と思って選び、通ってくださるわけです。そして、その『なんとなく』をつくるのが、当たり前のことを当たり前にしている、ということだと思うんです
引用:モアリジョブ|「株式会社givers」柔道整復師兼経営プランナー 九鬼良さん
九鬼良さんが述べているとおり、顧客満足度向上の基本は、清潔で快適な環境づくりと丁寧な接客対応です。
院内の清掃徹底、設備の適切な管理、スタッフの身だしなみや言葉遣いなど、基本的な要素の積み重ねが患者の信頼獲得につながります。
また、患者一人ひとりに対して丁寧なカウンセリングと症状説明を行い、安心感と信頼関係を構築するのも重要です。施術効果の定期的な確認と適切なアドバイスを提供すれば、患者満足度も継続的に向上するでしょう。
3.他院にない高度な施術の提供
競合との差別化を図るためには、専門性の高い施術技術の習得と提供が重要です。
たとえば、最新の治療技術や特殊な手技を導入すれば、他院では受けられない価値を患者に提供できます。
高度な施術を提供するためには、継続的な技術向上と専門知識の習得が必要です。各種セミナーへの参加、専門資格の取得、先進的な治療機器の導入などにより、施術の質と専門性を高められるでしょう。
また、特定の症状や疾患に特化した専門性を確立するのも効果的です。たとえば、スポーツ外傷の専門治療、産後骨盤矯正、高齢者向けの機能改善施術など、明確な専門分野をもてば該当する患者からの支持を得られます。
整骨院の経営はスタッフ育成の環境づくりが重要
整骨院の経営は、スタッフ育成の環境づくりも重要になります。整骨院の運営をともに伴走するスタッフがいれば、経営を軌道に乗せやすいだけでなく、中長期的な運営をしやすくなるためです。
スタッフ育成の環境づくりをする際のポイントを見てみましょう。
- 自院にマッチしたスタッフの採用
- 接客力と技術が向上する環境づくり
- スタッフの定着率が上がる環境と労働条件の提供
以下にて詳しく解説します。
自院にマッチしたスタッフの採用
整骨院業界に特化した採用プラットフォームの活用は、効果的な人材確保のカギとなります。
なかでも美容・ヘルスケア業界専門の求人サイト「リジョブ」は、業界特化型の採用において高い実績をもつサービスです。
リジョブの特徴として、美容・ヘルスケア業界の求職者の転職満足度98%という高い実績があります。これは、Web検索での上位表示により閲覧されやすく、豊富な求人案件と使いやすいサイト・アプリ設計により、求職者が理想の職場を見つけやすい環境が整っているためです。
また、総会員数は70万人を超えており、新規登録者数も月間6700人と活発なため、豊富な人材から最適な候補者を見つけられます。
さらに、スカウトメール機能により、こちらから積極的にアプローチできる点も大きなメリットです。特に、個人店舗に強いという特徴があり、1~3店舗規模の企業の掲載数が最も多くなっています。
加えて、関東圏だけでなく地方での採用にも強く、全国的な人材確保が可能です。整骨院に特化した採用を行いたい場合は、ぜひ活用してみてください。
接客力と技術が向上する環境づくり
接客力と技術が向上する環境を構築できれば、自院の中長期的な発展につながります。関東に44院を展開する株式会社ほねごりの部長、丸山さんも育成環境に力を入れていると語っています。
「ほねごり」では入社から1カ月間は本社でみっちり研修を行います。基本的には1週目は座学を学んでもらい、その後3週間を使って技術の研修を行う形です。あまり経験がない方でも安心して技術を学び、働ける環境が整っています。
引用:モアリジョブ|「株式会社ほねごり」HR部 部長 丸山洋生さん
上記事例のとおり、体系的な研修プログラムの構築は、スタッフの技術向上と定着率改善につながります。入社初期の集中研修により、院の方針や技術標準を統一し、新人スタッフの不安を軽減できるでしょう。
効果的な研修環境づくりには、座学と実技のバランスが重要です。医学的知識や解剖学などの理論的基礎を座学で学び、実際の施術技術は段階的な実技研修で習得させることで、確実なスキルアップを実現できます。
また、継続的な技術向上のための環境整備も必要です。定期的な勉強会の開催、外部セミナーへの参加支援、資格取得奨励制度などにより、スタッフのモチベーション維持と専門性向上を図りましょう。
スタッフの定着率が上がる環境と労働条件の提供
スタッフの長期定着を実現するためには、働きやすい環境と適切な労働条件の提供が不可欠です。
特に、整骨院業界は労働環境がブラックなイメージをもたれることが多いため、そのイメージを払拭する取り組みが重要になります。
取り組みのポイントは次のとおりです。
- 適正な労働時間の設定
- 過度な残業や休日出勤を回避
- 有給休暇の取得促進
- 研修時間を労働時間として計算
- ワークライフバランスを重視した働き方の提供
これらを意識すれば、定着率の向上に加え、スタッフの健康面も維持できるでしょう。また、職場内のコミュニケーション環境の整備も重要です。定期的な面談による悩み相談やキャリア相談の機会を設けて、スタッフ間の良好な関係性を維持すれば、働きやすい職場環境を構築できます。
さらに、スタッフの成長支援制度を充実させるのも効果的です。具体的には、院内での昇進機会の明示、独立支援制度、専門技術習得のための研修費用補助などにより、スタッフの将来への不安を軽減し、定着率の向上を図れるでしょう。
整骨院・接骨院経営の成功事例3選
整骨院・接骨院経営の成功事例を紹介します。実際の成功事例から、自院に活かせるポイントを見出しましょう。
成功事例1.株式会社givers
21院の接骨院を経営する安藝さんは、技術力と患者さんとのコミュニケーションにより信頼関係を構築したと語ります。
自分が、できなかったから努力してここまでの分院展開になったんだと思っています。柔道整復師になったばかりの頃は本当に下手で、知識も技術力ありませんでした。できない自分が嫌で一生懸命勉強して、知識と技術力のレベルをあげることだけを考えていました。この努力のおかげか、自分の接骨院を開業後、最初から患者さんが来てくれました。江戸川橋院では、引越をした患者さんが引越先から来院されたり、東京にある整骨院にもかかわらず、関東全県から来院があったりと、患者さんとの信頼関係で成り立っています。
引用:モアリジョブ|「株式会社givers」代表取締役 安藝泰弘さん
この事例から学べる経営成功のポイントは次のとおりです。
- 技術力向上への継続的な努力と学習が経営の基盤となる
- 知識不足や技術不足を認識して素直に改善に取り組む姿勢が重要
- 患者との信頼関係構築が長期的な成功につながる
- 質の高い施術により口コミや紹介が自然発生する
- 遠方からでも通いたくなる価値提供が分院展開のカギ
成功事例2.酒井慎太郎さん
TV出演をきっかけに全国・海外から患者さんが来るようになったという酒井さんは「前を向くことの大切さ」が重要だと語っています。
開業してからの苦労はあまりありません。経営者の方々はみんなそうだと思うのですが、いろいろ考え込まないようにしています。キリがないですからね。クレーム等もある時はありますし、いただいた意見に耳を傾けることも大事ですが、自分が落ち込みすぎてしまうと人を診ていられなくなってしまうでしょう。目の前の悩んでいる患者さまのために自分の力を100%出しきることに専念して、今まで続いてきた感じです。
引用:モアリジョブ|柔道整復師 酒井慎太郎さん
この事例から学べる経営成功のポイントは次のとおりです。
- メンタルの安定と前向きな姿勢が経営継続のカギ
- ネガティブな要素に過度に囚われない精神的な強さが必要
- クレームや意見は受け入れつつも過度に落ち込まない対応力が重要
- 目の前の患者に100%集中することが最も大切
- 患者への献身的な姿勢が結果的に成功につながる
成功事例3.のぞみ整骨院グループ
のぞみ整骨院グループ代表の橋口さんは、一人ひとりに合ったサービスの提供で来院数を倍増させ、今は静岡県に4つの接骨院を展開しています。
その橋口さんは次のように述べています。
病院に通う患者様の目的はほぼ一つです。早く治りたい、早く痛みをとりたい。早く通院を卒業したいのが一般的です。でも整骨院に来る患者様の目的はもっと多彩です。疲労をとるためにマッサージをしてほしい人、体の調整をしてほしいアスリート、明日の試合のためにテーピングをしてほしい選手、先生との会話を楽しみにしているおばあちゃん。整骨院は、病院には求めないことを求める患者様がすごく多いんです。
整骨院を成功させるには、患者様一人一人のニーズに応えることが大事だと気づきました。それぞれのニーズに応えるために、全身マッサージ、耳ツボダイエット、鍼灸治療、アロマ・リンパドレナージュなど自費診療メニューを増やし、一人一人の患者様に接するようになってからは来院数が倍増していきました。
引用:モアリジョブ|のぞみ整骨院グループ代表 橋口望さん
この事例から学べる経営成功のポイントは次のとおりです。
- 患者の多様なニーズを理解しそれぞれに対応することが重要
- 治療だけでなくリラクゼーションやコミュニケーションも価値として提供
- 自費診療メニューの充実により収益性と患者満足度を両立
- 画一的なサービスではなく個別対応が差別化要素となる
- 患者の真のニーズを把握することで来院数の大幅増加が可能
まとめ
整骨院経営を成功させるポイントは以下のとおりです。
- 利益率・人件費・地代家賃率・広告比率の4つの経営指標を適正水準で管理する
- ターゲット明確化と客単価向上により売上げアップを図る
- 自費メニュー導入と顧客満足度向上で収益性を強化する
- 業界特化型の採用媒体を活用してスタッフ育成環境を整備する
整骨院業界は競争が激化していますが、適切な経営戦略と継続的な改善により必ず成果を上げられます。
本記事で紹介した施策を参考に、自院の強みを活かした経営を実践し、持続可能な整骨院経営と年収向上を実現してください。
- 執筆者情報
- 山田 大地(Yamada Daichi)