ネイリストが離職する理由は、「仕事とプライベートの両立が難しいため」「サロンの雰囲気が合わないため」「給与面が不満なため」など多岐にわたります。
こうした離職につながる理由や課題を把握し、待遇や環境の改善を図ることで、安定した店舗運営につなげたいと考えるオーナーや店長も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ネイリストが離職する理由や、その背景にある課題を示した上で、離職を防ぐ取り組みと具体例を紹介します。
ネイリストが離職する理由
ネイリストが離職する理由について、美容就業実態調査2024で明らかとなった上位6項目を紹介します。
▼ネイリストが離職する理由(複数回答)
ネイリストが離職する理由 |
割合 |
ライフイベントのため (結婚・妊娠・出産など) |
26.7% |
仕事とプライベートの両立が難しいため |
20.8% |
サロンの雰囲気やテイストが合わないから |
17.8% |
給与に関して不満があるため (給与が低い、収入が不安定など) |
16.8% |
仕事内容がハードだから |
10.9% |
体調を崩してしまったから |
10.9% |
※「勤務先のサロンが移転・閉店したから 10.9%」は、店舗都合のため割愛します
ライフイベント(結婚・妊娠・出産)のため
結婚・妊娠・出産などライフイベントを離職理由として挙げた割合が最も多く、26.7%でした。
結婚や出産を機にライフスタイルが大きく変化するケースは多いでしょう。引っ越しを伴う場合もあれば、家庭や育児の時間を確保する必要性が高まり、勤続が困難となる場合もあります。
特に育児支援や時短勤務制度などのサポートが不十分な職場では、退職を選ぶネイリストも多いのが実状です。
仕事とプライベートの両立が難しいため
ネイリストの業務は予約優先の性質上、勤務時間が不規則になりがちです。特に土日祝日や夕方以降に予約が集中しやすく、家族や友人との時間を確保しづらい点が、プライベートとの両立を難しくしています。
また、予約や施術の状況によっては残業となる場合もあります。閉店後は、清掃や施錠道具の消毒作業、売上確認なども行う必要があるため、拘束時間も長くなりがちです。こうした働き方に不満を感じ、離職を考えるネイリストも少なくありません。
サロンの雰囲気やテイストが合わないため
職場やスタッフの雰囲気、経営方針などが自らと合わず、離職理由となるケースも多いです。
サロンごとに雰囲気や経営方針は異なります。そのため自らの価値観や目指す方向性と合わなければ、仕事へのモチベーション低下は避けがたいでしょう。
例えば、サロンの内装やメニューが自分の目指すスタイルや技術に合わない場合、やりがいを感じにくくなります。また、スタッフ同士の人間関係や接客スタイルの違いがストレスとなり、離職に至ってしまうケースも散見されます。
給与に関して不満があるため
「給与が低い」「収入が不安定」など給与に関する不満を理由に離職するネイリストも多く存在します。
株式会社リジョブが行った調査においても、ネイリストの約6割が現在の給与に対して「不満」と答えています。
また、不満な理由は以下の通りです。
他の課題とも関連した「労働時間と見合わないから」が約4割で最も多い結果でした。とりわけ3番目には「他社に比べて低いから」が挙がっており、他社の給与水準を意識している割合も少なくないのが分かります。
こうしたデータに加えて理想とする月収など、ネイリストの給与に関する実態を調査した貴重なレポートはこちらから無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
仕事内容がハードだから
仕事内容がハードであることを理由に離職するネイリストも少なくありません。
身体面では一日のうち何時間も同じ姿勢で細かな作業をしなければならならず、首や肩、腰が凝りがちです。数ミリ単位で仕上がりが左右されるため、眼精疲労も蓄積しやすくなります。ジェルネイルの溶剤や除光液などの化学物質によるアレルギー症状などが懸念される場合もあります。
さらに顧客対応にも注力が必要です。クレーム対応が重なれば、精神面的な負担も生じます。
ネイリストって10年続けられればいいと言われるくらいに体力を消耗してしまう職業なんですね。その言葉通り、私自身、ジェルを触りすぎてアレルギー反応を起こすようになってしまって…。現在は手袋をして施術ができていますが、このままずっと元気でいられる保証もない状態で、ネイリスト一本というのは不安だなと感じるようになったんです。
引用:モアリジョブ|ネイリスト moeさん
体調を崩してしまったため
ここまでに紹介した身体面・精神面での負担から、体調を崩してしまうケースもあります。例えば、不規則な休日や休憩、同じ姿勢での長時間作業、顧客やスタッフとの対人ストレスなどが要因として挙げられます。
特に昨今は、業種を問わず「メンタルヘルス不調」が原因で求職や退職に至る人の増加傾向が厚生労働省のデータによって指摘されています。
ネイリストも例外ではありません。身体的かつ精神的にハードな側面をもつため、心身をケアする取り組みも必要です。具体的な取り組みについては後の項目で紹介します。
離職理由の背景にある課題
ネイリストが離職する理由の背景にある主要な課題を、4つ紹介します。
キャリア継続の支援不足
ネイリストが離職する背景には、結婚や出産といったライフイベント後もキャリアを継続できる環境が整っていない点が挙げられます。育児や家庭の事情に配慮した柔軟な働き方や、職場復帰を支援する制度が未整備のサロンも多く見受けられます。
また、キャリアのステップアップやスキル向上を支援する仕組みの欠如も、長期的なキャリア形成を難しくする要因となります。
以上から、企業・店舗側にはライフステージの変化や本人が望むキャリアパスに応じた働き方を選択できる柔軟性が求められます。
長時間労働や時間外労働
ネイリストの仕事は予約制で進むため、1日のスケジュールがタイトになりがちです。顧客の予約が詰まっている場合、休憩時間を十分に確保できず、長時間労働を強いられるケースもあるでしょう。
さらに、技術の向上や準備作業などが時間外労働として発生しやすい環境も問題です。こうした過酷な労働環境が、身体的・精神的な負担を増加させ、結果として離職につながるケースが散見されます。
とりわけ昨今は勤務時間内でトレーニングを行うサロンも増えていますが、勤務時間外や休日を用いて行う店舗も多く存在しています。
スタッフや顧客との人間関係
店長や先輩、同僚を含むスタッフとの人間関係は、ネイリストの離職理由としても重要な課題です。離職につながるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 同僚間の競争意識が高まりすぎて、職場内の雰囲気が悪化する
- 上下関係が厳しく、後輩が萎縮しやすい環境になっている
- 店長と運営方針が合わず、摩擦や衝突が起こりがち
また、接客業として顧客対応のストレスも避けられません。特にクレーム対応や過剰なサービス要求が続くと、ネイリストの精神的負担が増大し、仕事に対する意欲を失いかねません。こうした人間関係の問題が、離職を決断する背景にある課題となっています。
若手の給与は低くなりがち
若手の給与が低くなりがちな点も、離職理由の背景にある重要な課題です。
厚生労働省が公開するデータによると、ネイリストの平均年収は約320万円です。この数値のみを見れば、女性全体の平均年収である316万円とほぼ同水準といえます。
ただ、ネイリストの経験年数が浅い若手層の年収は低くなりがちです。多くの場合、新人スタッフはアシスタント業務からスタートし、売上に応じた歩合給や安定した給与を得るまでに時間がかかる仕組みになっています。また、接客業として身だしなみにも気を遣わなければならず、出費がかさみがちな点も悩みどころでしょう。
こうした背景から収入で生活費を十分に補えず、経済的な不安を感じて早期に挫折してしまう若手ネイリストも少なくありません。
以上のような課題を解決するためには、給与体系の見直しや、若手が早い段階で収入アップを実感できる仕組みづくりが求められます。
ネイリストの離職を防ぐ取り組み
ネイリストの離職を防ぐための取り組みを、6つ紹介します。
柔軟な働き方を実現する勤務体系の導入
ネイリストの離職を防ぐためには、ライフステージや個人の事情に合わせた柔軟な働き方を提供するのが有効です。
具体的には、週休3日制や短時間勤務制、フレックスタイム制などを取り入れて、スタッフ各々のライフスタイルに応じた働き方を実現可能な環境を整えます。
また、リモートでの事務作業やオンラインカウンセリングなど、サロン業務の一部をIT化して通勤の負担を軽減する取り組みも効果的です。
こうした取り組みは、特に結婚や育児などのライフイベントを迎えたスタッフにとって大きな支援となり、離職を防ぐ一助となるでしょう。
営業時間内の練習・研修による長時間労働の是正
ネイリスト業界では、営業時間外の練習や研修が長時間労働の一因となっています。この課題を解決するには、練習やスキルアップの機会を営業時間内で確保しなければなりません。
例えば、週に数時間を「研修タイム」として確保する仕組みや、勤務中でも練習を行いやすいトレーニングスペースの整備などが挙げられます。詳しくは別項目の「取り組み事例」で紹介します。
サロン内の雰囲気やコミュニケーションの改善
サロン内の雰囲気やコミュニケーションの円滑さは、スタッフの働きやすさに直結します。
雰囲気の改善には、定期的なチームミーティングやリフレッシュイベントの実施が効果的です。また、スタッフ同士が率直に意見を交換できる環境を作るために、匿名で意見を募集する仕組みを設けるのも良いでしょう。
さらに、オーナーや店長が各スタッフと積極的にコミュニケーションをとり、個々の悩みに寄り添う姿勢を示せば、職場への信頼を深められます。毎月や四半期に1回程度、課題や悩みの共有を目的とした個別面談を実施するのも有効です。
評価制度と給与の見直し
給与に関する不満を解消するには、明確かつ公平な評価基準を設定し、実績やスキルが適切に反映される仕組みの導入が求められます。
株式会社リジョブの調査においても「給与を上げるためにどのような転職を希望するか」を聞いたところ、「もっと実力を評価してくれる店に行きたい」という回答が最多でした。
この結果から、現店舗での評価制度および給与に不満をもつネイリストが多いことが示唆されます。
では、具体的にどの程度の月収を望むのでしょうか。同調査で「今のスキルと働き方での理想の月収」を聞いた結果、以下のような結果でした。自店の現状と照らし合わせて、給与の見直しに活用しましょう。
なお、このようなネイリストの給与に関する調査データをまとめた貴重なレポートは、こちらから無料でダウンロード可能です。
心身の健康をサポートする施策の整備
前述した通り、ネイリストは身体面と精神面のどちらにも負担がかかりやすい職種です。この課題に対応するためには、オーナー側として心身の健康をサポートする施策が求められます。
例えば、定期的な健康診断の実施、ストレッチのような気分転換を行える休憩スペースの設置などが挙げられます。また、心理的なストレスをより効果的に軽減するためには、専門家によるカウンセリングサービスの提供も有効です。
こうしたスタッフの健康面を考えた施策は、店舗に対するエンゲージメントの向上につながり、離職のリスクを減少させるでしょう。
自社にマッチする人材を採用する
離職を防ぐためには、採用段階でサロンの雰囲気や方針に合った人材を選定するのが重要です。
例えば、面接や実技試験だけでなく、職場体験を取り入れることで、採用前にミスマッチを予防できるでしょう。これにより、候補者が職場環境や働き方、価値観を理解した上で入社を決めれば、採用後のギャップおよび離職リスクを最小限に抑えられます。
さらに、新人スタッフにより早く業務やサロンの雰囲気に慣れてもらうために、フォローアップ制度やメンター制度を活用してサポート体制を整えるのも効果的です。早期離職の防止につながります。
また以下の資料では、美容・ヘルスケア業界の採用成功率を高めるために重要な4つのステップを公開しています。無料ダウンロードの上、ぜひご活用ください。
ネイリストの離職防止に有効な取り組み事例
ネイリストの離職防止に有効な取り組み事例を、6つ紹介します。一部アイサロンや美容室などの事例も含みますが、同じ美容業界の取り組みとして有効なため、ぜひ参考にしてください。
多様性の尊重や管理者向け研修で離職率1割未満
スタッフそれぞれの多様性を尊重した運営や管理者向け研修により、オープンからの6年間、離職率10%未満を維持しているサロンが存在します。美容業界の平均離職率は1年目で50%、2年目で80%ともいわれるなか、驚くべき数値といえるでしょう。
うちの会社は「多様性を楽しもう」という文化がスタッフ全員に根付いているんですよ。
他者の考えを受け入れた上で議論できる土壌があるから、スタッフは安心して意見を交わすことができるし、アイデアの幅も広がる。結果「人が辞めない→会社が発展する」という好循環が生まれています。
引用:モアリジョブ|ネイルサロン「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」オーナー 木下さとこさん
先に紹介した調査データにおいても、「自分の個性に合った店に行きたい」が1位とほぼ同率で2位に挙がっており、多様性を尊重する重要性が示唆されています。
※再掲
また、同サロンはオリジナルの「管理者向けの研修」も導入しており、各スタッフと良好な関係性を築きながら成長をサポートできるリーダーの育成にも注力しています。
管理職向けにオリジナルのリーダープログラムを用意しています。私がこれまで勉強したコーチングの内容や、幼児教育のメソッドなども取り入れたオリジナルのものです。人間が成長する過程を理論的に理解し、現場で実践を含め3ヶ月に渡って学んでいきます。
引用:モアリジョブ|ネイルサロン「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」オーナー 木下さとこさん
フレックスタイム制で柔軟な働き方を実現
各スタッフが柔軟に勤務時間帯を設定可能な「フレックスタイム制」の導入は、新たな人材の確保と定着に有効です。
営業時間は10時〜21時ですが、フレックスタイムが採用されているので、勤務時間は8時間。予約の関係で勤務時間がオーバーしてしまっても、その分別の日に早く帰れるので、美容師時代よりも体はラクですね。
(中略)自分の時間が確保しやすくなりました。そのおかげで、いまは趣味を楽しむ時間が持てています。
引用:モアリジョブ|ネイル&アイサロン「Nail & Eye ao.」ネイリスト・アイリスト 稲垣香子さん
育成マニュアルの整備と技術面・接客面の悩みをケア
育成マニュアルを整備して、スタッフが技術や接客に自信を持てるようにすると、離職防止に効果的です。特に未経験者や若手スタッフにとっては、技術面や接客面に関する指針が具体的に示されたマニュアルや周囲からのサポートが支えになるでしょう。
例えば以下の事例では、育成マニュアルの確立とそれを補完する研修体制によって、未経験者でも成果を上げられる環境を実現しています。
スタッフ育成マニュアルを確立し、随時マニュアルの更新を図りました。いまでは、未経験でもこれさえ頭に入れておけば絶対売れるという内容のマニュアルを確立しています。定期的にオンラインの勉強会も開催していて、技術はもちろん接客面での悩みもケアするなどアフターフォローも手厚くなっています。
引用:モアリジョブ|アイサロン「ロレインブロウ」 トレーナー 下山彩子さん
育児休暇や時間単位休暇で子育てしながらも働きやすく
先に紹介した「ネイリストが離職する理由」では、結婚・妊娠・出産などライフイベントが最上位に挙がっています。
そのため離職を防止するためには、ライフスタイルに変化が生じても、無理なく活躍し続けられる仕組みや制度の整備が欠かせません。
弊社は週休2日制であることに加えて育児休暇の取得も徹底し、さらに復帰後は子供が小学校を卒業するまで育児時短勤務が可能になっています。
実際、弊社には子育てをしながら働く方が多くいるのですが、育休取得率・復帰率はどちらも申請ベースで100%です。ちなみに保育園や学校から急な呼び出しがあったときなどに1時間単位で取得可能な時間単位休暇もあります。
引用:モアリジョブ|「アートネイチャー」人事部採用推進グループ グループリーダー
落合敬一さん
週一の慣らし出勤で復帰をスムーズに
スムーズな産後復帰は、ネイリストの離職を防ぎ、再び活躍してもらうために重要な課題です。その具体的な対策として、「週に1回の慣らし出勤」を採用しているサロンが存在します。
母乳育児や自分の身体がちゃんと順応するかも不安だったので、まずは週一で「慣らし復帰」をしました。いきなり週5で復帰するよりも、早い段階に、少ない日数出勤することで感覚がつかめ、無理なく復帰できたと思います。
引用:モアリジョブ|整体サロン「POWWOW」研修・育成担当 泉さん
営業時間内のトレーニングで採用力アップ
ネイリストが離職に至る背景には、長時間労働があります。とりわけ、自らの施術スキルを高めるトレーニングは不可欠なものの、営業時間外のみでの実施は身体的な負担が大きくなりがちです。
その対策として、営業時間内でトレーニングを行える環境を整備したサロンが増えつつあります。
サロンとは別にトレーニングルームも構えているので、営業時間内に練習をすることが可能です。それによって営業時間後の練習時間を短縮できています。
引用:モアリジョブ|リタ株式会社 営業最高執行責任者 小森谷亮太さん
また、営業時間内トレーニングの認可は求職者にとっても魅力に映り、採用力の強化にもつながります。
求人で「教育型サロン」という打ち出しをしていたのが決め手でした。「営業時間内でトレーニングが可能。営業時間外の時間は自由に使える」という打ち出しを見て、「営業時間内に練習ができて、営業時間外は自由ということは、他の人の2倍練習できる!」と思い、入社しました。
引用:モアリジョブ|美容室「COA銀座」スタイリスト ゆうだいさん
まとめ
ネイリストが離職する理由には、ライフイベントや働き方、職場環境、給与面の不満が大きく影響しています。
これらの課題を解決するには、以下のポイントが重要です。
- ライフステージに応じた柔軟な働き方を可能にするため、育児支援や時短勤務制度などを導入する
- 長時間労働などの身体的・精神的な負担を軽減し、健康を維持する労働環境を整える
- 将来に対する不安を軽減するため、公正な報酬体系を整備し、スキルアップの機会を提供する
以上のような取り組みを可能な分野から進めていけば、離職率は下がり、安定したサロン運営を実現できるでしょう。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部