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スタッフが退職する理由とは?離職を防ぐための対策について解説!

スタッフが退職する理由とは?離職を防ぐための対策について解説!

スタッフが退職する場合、その理由を本音で語らないことが多いようです。株式会社アクシスワンの調査によると、会社の退職時に本音を言わずに円満退職をする人の割合が約4割に上ることが分かりました。

「体調を壊した」や「家庭の事情」などのスタッフから伝えられる当たり障りのない退職理由は、正確性に欠けるケースも多いようです。

そのため退職への対策を講じる場合は、公的データや事例を参考にしつつ退職者のホンネを把握できるように努めることが大切です。

本記事では、公的データやニュース、事例をもとにスタッフが退職する本当の理由に迫ります。さらに退職対策について、事例をもとに紹介するので参考にしてください。

スタッフが退職する個人的理由

厚生労働省の調査をもとに、転職者が前職を退職した個人的理由を多いものから順に挙げると、次のとおりです。

▼退職理由の男女別割合

退職理由

男性の割合

女性の割合

労働時間、休日などの労働条件が悪かったから

9.1%

10.8%

仕事が合わなかったから ※1

8.5%

10.2%

職場の人間関係が好ましくなかったから

8.3%

10.4%

給料などの収入が少なかったから

7.6%

6.8%

会社の将来が不安だったから

7.1%

4.4%

家庭の事情で働けなくなったから ※2

1.0%

3.9%

※1:「仕事の内容に興味を持てなかった」と「能力・個性・資格を活かせなかった」の合計

※2:「結婚」と「出産・育児」、「看護・介護」の合計

本項では、以上の各項目について事例を交えながら詳しく解説します。

労働条件が悪いから

先述のデータを見ると労働時間や休日などの労働条件が悪くて、退職するスタッフが最も多いことがわかります。労働条件を適正に保つためには、まずは労働基準法で定められている最低基準をクリアしているかどうかチェックしましょう。

  • 1日の労働時間は8時間以内にする
  • 1週間の労働時間は40時間以内にする
  • 1日の労働時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は最低60分の休憩を与える
  • 毎週最低1日の、4週間を通じて4日以上の休日を与える

参考元:労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省

労働時間が以上の法定時間を超える場合は、労働基準法第36条の規定を守る必要があります。

この法律は通称「36協定(サブロク協定)」と呼ばれ、1日の労働時間が8時間を越える場合は、従業員の過半数を代表するスタッフまたは労働組合との間で「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結して、労働基準監督署に届け出る必要があると定められています。

ただし36協定を結んだ場合でも、残業時間は原則週15時間、月45時間以内に収めなければなりません。また残業や休日出勤が発生した場合は、給与に対して割増した額を支払う必要があります。

業界によっては労働基準を守られていないケースもあり、たとえば美容業界では、次のような現状を訴える美容師もいます。

アシスタント時代は、朝8時にサロンに着いて雑用を済ませ、11時から営業開始。20時に営業は終わるけど、そこからマネキンやカットモデルなどで練習をしていた。サロンを出るのは22~23時が多かったかな。残業手当? 付くわけないじゃん

引用:1日14時間以上働いても「手取り15万円」 美容師らの“苦境”|Yahoo!ニュース

練習の時間を業務外として、残業時間に含めないと、違法となる可能性があるため注意が必要です。練習がオーナーや店長の指示の下で行われている場合は、残業時間に含めましょう。(※1)

また鍼灸整骨院では、次の事例もみられます。

勤務は9時から19時まで、準備のため8時半から出勤準備を始めています。休憩は12時から13時ですが、たまに電話が鳴るため誰かしら対応しています。

完全週休2日制で週5日です。

後ろ残業はありませんが、8時半から既に準備にかかるため前残業はやっています。

引用:Yahoo!しごとカタログ

オーナーや店長の命令下に置かれていれば、上記のような朝方の出勤も残業と見なされるケースがあります。(※2)朝礼や準備のためにスタッフを早めに出勤させた結果、1日の労働時間8時間を超えていないかチェックすることをおすすめします。

※1 参考元:会社の指示ではなく終業後に自主練(美容室)している場合は残業に当たるのか|弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

※2 参考元:早朝出勤、始業前の準備も「残業(労働時間)」にあたるの?|弁護士法人 東京新宿法律事務所

仕事が合わなかったから

スタッフが仕事の内容に興味を持てなかったり、能力や個性、資格を活かせなかったりすると、仕事が合わないと感じて退職する可能性があります。仕事が合わずに仕事を早期退職する事例として、配属ガチャが挙げられます。

配属ガチャで「アタリ」とされるのは、希望の部署や勤務地に配属され、配属結果に納得がいっている状況。たとえ希望通りでなくても、上司に恵まれたり、仕事内容が面白かったり、キャリア形成のうえで有利だったりすると、希望通りでなくてもアタリとなるようです。

一方、「ハズレ」は、部署や勤務先が希望と違ったり、仕事内容が想定と違っていたりする状況。

引用元:「あなたの配属は…営業ね」「じゃ、辞めます」「えっ⁉」…大卒新入社員「配属ガチャ」でハズレ、入社3日でまさかの退社の衝撃|Yahoo!ニュース

「配属ガチャ」がニュースでも取り上げられているように、現在は希望の仕事ができないとすぐに退職するスタッフも多いようです。株式会社インターツアーの調査によると、3割以上の学生が希望の部署・職種でなければ内定を辞退すると回答しています。

▼希望する部署や職種に対する学生の考え

希望する部署や職種に対する学生の考え

以上の結果からもわかるように、入社後の早期退職を防ぐためには、事前に仕事内容の擦り合わせをしっかりと行うことが大切です。

人間関係が悪いから

人間関係の悪さもスタッフの退職につながる主な要因の1つです。たとえば先輩や同僚との人間関係が悪くて、退職するケースが考えられます。人間関係に関する具体的な悩みとして、次のような事例が見られました。

▼先輩の教え方についての悩み

いつも教えてくださる一番近い先輩の言っている単語などがわからないことがよくありました。正直スルーすることも多かったかも…(笑)。

引用:モアリジョブ|エステサロン「12 twelvebeauty(トゥエルブビューティー)」店長 海部祥子さん

先輩の教えた内容を新入社員が理解できずに、意思疎通がおろそかになることで、人間関係が悪化する可能性があります。

▼先輩の接し方についての悩み

いつも馬鹿にした物の言い方や(邪魔だから、どけっつうの。要領悪いっつうの…これしか出来ないでしょーがとか)

ちょっとした事(物を静かに置かないとホコリが立つとか)でキツク説教されます。

引用:Yahoo!知恵袋

先輩が後輩に対してつらく当たると、後輩が人間関係について悩みを抱え退職を考えるようになる恐れがあります。

▼同僚との人間関係についての悩み

退職を考えていますが、店長に言い出せません。

女(38)です。少人数の職場で7年働いています。

リーダー的な存在の同僚に嫌われてしまい1年前から挨拶から仕事の話も全部無視されています。

私にも非があるので謝罪し、話し合いましたが私が性格を変えて変わらないともう無理と言われてしまい、今に至ります。

引用:Yahoo!知恵袋

同僚間の人間関係のトラブルで退職を考えるケースも見られます。当人同士では解決が難しい場合は、上司やマネージャーが間に入るなどしてトラブル解決が求められることもあるでしょう。

給料が少ないから

令和に入って給料の伸びが活発になっているため、以前の賃金のままだと給与が少ないと思われる可能性が高くなります。スタッフが給料に不満を持つと、給料条件の良い会社を求めて、現在の職場を退職する恐れがあります。

厚生労働省の調査によると、平成までは賃金が横ばいの状態が続いていましたが、令和に入って少しずつ上昇傾向が見られます。

▼性別賃金の推移

性別賃金の推移

そして令和4年には、男女ともに過去最高の賃金を記録しました。

現在の賃金の伸びは、物価高の影響によるものと言われています。しかし物価高に対して十分に賃上げが進んでいないとの見方もあることから、今後も賃金の上昇傾向は続くと考えられます。

物価高が賃金の伸びを後押ししている。物価の変動を指す消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は23年平均で3.1%上昇した。ただ、今回の平均賃金の増加幅は物価の伸びには追いついていない。働く人は賃上げの恩恵を十分に得られていない。

引用:2023年の平均賃金、月31万8300円 29年ぶり伸び率|日本経済新聞

以上より賃金が以前のままだと物価に対して相対的に賃金が低くなるため、スタッフの生活が苦しくなり、退職につながる可能性があります。

会社の将来が不安だから

会社の経営状況の悪化による影響が仕事の内容や勤務状況に見られるようになると、スタッフが会社の将来について不安を抱えるようになります。

職場が赤字続きで将来が不安。

方針が変わり、仕事内容が変わり、人件費削減。シフトが減る確定。

その発表後に月々と辞めていく先輩方。

他のパートの人や社員がや各部署のチーフも辞めるらしく退職者のお知らせの紙がはられてました。

引用:Yahoo!知恵袋

一方で会社の業績が良くても不安を抱えるケースもあります。以前は将来が安泰と言われていた大手企業でも、早期退職を大量に募集するニュースが見られるようになりました。

そのため、どんなに業績が良くてもいずれは業績が悪化して、退職を迫られるかもしれないという不安を抱えやすいのかもしれません。

いまのところ会社の業績や給与は悪くはないのですが、今の会社でずっと働いてよいのかというキャリアへの漠然とした不安があります。このまま会社が安泰かどうかはわかりませんし、他社で通用する経験などが身についているのかなど気になっています。

引用:「今の会社にいるのがなんとなく不安」を解決する超納得の方法|ダイアモンドオンライン

スタッフに将来の不安を払しょくしてもらうためには、企業によるキャリア支援の充実も有効です。企業が教育制度を整え、スタッフがスキルアップしやすい環境を整えると、スタッフ自身が自分の能力に自信を持てるようになります。

スキルに自信を持ったスタッフが増えると、自分のキャリアについて将来を悲観しづらくなると考えられます。

家庭の事情で働けなくなったから

結婚や出産、育児、介護などの家庭の事情で働ける時間が削られてしまい、働けなくなるケースも多いようです。

たとえば子育てで働けなくなるケースとして「小1の壁」があります。小1の壁とは、子どもが小学校に上がるタイミングで子育てと仕事の両立が難しくなることを指します。

共働きで保育園に子どもを預けていたころは、預かりの時間が仕事の時間をカバーできていたため、子育てと仕事を両立できていました。しかし子どもが小学生になると、学校に滞在できる時間が保育園のときよりも減少するため、「小1の壁」問題が発生します。

娘が小学校に入学してから、最も悩んできたのが「朝のスケジュール」のことです。

保育園は朝7時から預けることができましたが、小学校の集団登校の時間は7時45分。それを待ってから家を出ると、勤務時間に間に合わなくなったのです。

引用:30分遅くなっただけで…共働き世帯 悩ます「朝の“小1の壁”」|NHK

また親の介護が影響して、働くことが難しくなるケースもあります。ケガや病気は突然起こり、急に介護が必要になるケースがあるのです。そうなると、仕事の時間を確保できなくなり、退職を余儀なくされる恐れがあります。

介護が必要になったきっかけは3年ほど前。浴室で転倒し、アキレス腱(けん)を切ったために自力で歩けなくなったことだった。

介護保険サービスは1回1時間、週2回の訪問介護を利用し、入浴介助や部屋の掃除などをしてもらっていた。

だが、母親は今年2月に腰が悪くなると、さらにトイレや食事のサポートも必要になった。

男性は職場を抜けて介護することが難しい。「要介護1で使えるサービス量には限界もあり、介護保険だけでは仕事との両立は難しい」と感じた。

引用:「仕事と両立難しい」、介護で頼った保険外サービス 利用者は急増中|朝日新聞

このように仕事をしながら介護をする人は、ビジネスケアラーと呼ばれています。高齢社会が進む日本では、ビジネスケアラーに対する支援のあり方に課題を抱えています。

超高齢社会の日本において、生産年齢人口の減少が続く中、仕事をしながら介護に従事する、いわゆるビジネスケアラーの数は増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円と試算されています。

介護者本人への心身負担が発生していることに加え、経済全体で見ても、介護に起因した労働総量や生産性の減少による労働損失の影響は甚大であり、政府として、喫緊の対応が必要となっています。

引用:「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します|経済産業省

優秀な人や真面目な人が退職する理由

昨今は、次のような理由で優秀な人や真面目な人が退職するケースがある点も特徴です。

  • 優秀な人に負担が集中したから
  • 評価に納得できないから
  • 会社の理念に共感できないから

以上は一般ではあまり見られない退職理由です。それぞれについて事例を交えながら解説します。

成長が見込めないから

優秀な人や真面目な人は将来のキャリアについて真剣に考える傾向にあるため、今の会社では自分の成長が見込めないと判断すると退職するケースがあります。

成長が期待できない会社は俗に「ゆるブラック企業」と呼ばれています。識学の調査によると、「収入が増えない」「やりがいが感じられない」などの条件を満たす会社はゆるブラックと見なされるようです。

▼ゆるブラックだと感じる点

ゆるブラックだと感じる点

同調査には具体的に次のようなコメントが寄せられました。

仕事がルーティン化しているため、1年以上勤務しても何も成長しない。(32歳女性/事務)

ノルマは厳しくないが、収入も増えないし成長も見込めない等やりがいが感じられない。(27歳女性/販売・接客)

やりがいのある仕事をなかなか任せてもらえないので自分の成長に繋がらない。(48歳女性/人事・労務)

労働条件では働きやすい企業であっても、ゆるブラック企業の条件に当てはまると、優秀な人材が退職するリスクがあるため注意が必要です。

優秀な人に負担が集中したから

優秀な人物の場合、能力が高いがゆえに多くの仕事量を配分されたり、難易度の高い仕事を割り当てられたりして大きな負担を抱えがちです。この傾向は、とくに慢性的な人手不足に悩む企業に見られることが多く、連鎖退職の引き金になることもあります。

たとえば、人手不足で担当者のいない業務をカバーしようと、社内でエース級のスタッフに業務を担当させたと仮定しましょう。エース級の担当者はすでに多くの業務を抱えており、人手不足をカバーするためにさらに業務の負担が増加します。この状況が続くと、心身ともに疲弊して労働環境に不満を感じ、エース級のスタッフが退職する可能性があります。

エース級のスタッフが辞めたことで他のスタッフが会社の将来に不安を抱えて、連鎖的に退職するケースがあるのです。

企業への聞き取りで「エース級の人材だった〇〇さんが辞めたことで、会社の将来に不安を覚えた若手社員たちが大量に連鎖退職した」という話を何度か耳にした。

引用:読売新聞

このような連鎖退職を防ぐためには、早めに人手不足対策を実施してエース級のスタッフが退職するのを防ぐことが大切です。退職による人手不足の原因や解消法については、次の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

【経営者・人事の悩み】退職による人手不足が深刻化?原因や解消法を解説!

評価に納得できないから

適正に人事評価が行われないと、優秀な人材が評価に納得できずに不満を抱えます。その結果、もっと自分の能力を評価してくれる職場を求めて、現在の職場から退職する可能性があります。

アデコ株式会社が行った調査によると、評価基準が不明確なことが理由で人事評価に不満を抱える人が最も多いことがわかりました。

▼人事評価に不満を抱える理由

人事評価に不満を抱える理由

スタッフが人事評価に不満を抱えるパターンとして、自分の方が優れていると考えたスタッフが自分以上に評価されている際に起こるケースが考えられます。

人事評価が私はとても納得がいかなかったんです。だって仕事ぶりはTさんより私の方がいいと思ってたんで…。例えばTさんは与えられた業務の締切を過ぎてしまうことがちょくちょくあります。それどころか指示メール等を見落としていたり指示を失念していたりして全く手を付けずにいるような失敗もあったりします。でも私はそういったことはないですし、仕事のスピードもTさんより早いという自信があります。

引用:Yahoo!仕事カタログ

または職場の上司が個人的な感情を過度に優先して、人事評価を下すと評価されなかったスタッフが不満を抱えることがあります。

会社の人事評価(評価シート)って、納得出来ませんよね。

どんなに真面目に仕事を頑張っても、絶対、上司の好き嫌いが反映されると思います。

行動と態度の部門が40点満点で32点、自分なりに立てた目標部門が30点満点で15点でした。

引用:Yahoo!知恵袋

評価は上司が下すものなので、感情を全く入れずに評価を下すことは難しいかもしれません。しかし可能な限り評価シートの中に客観的な基準を設け、上司と部下で目標設定のためのミーティングの機会を作ることが、人事評価への不満軽減につながります。

会社の理念に共感できないから

年収の高い優秀な人材ほど、働くに際して会社理念への共感を重視する傾向が強いことを示すデータがあります。株式会社ノースサンドの調べによると、年収600万円以上の人材の方が年収600万円未満よりも、経営理念への共感を重視する人が多かったようです。

▼【年収別】働くに際して経営理念への共感を重視する人の割合

【年収別】働くに際して経営理念への共感を重視する人の割合

経営理念は作るだけではなく、スタッフに共有して会社に浸透させることが大切です。そのためにも、経営理念を掲げるにあたって、まずはわかりやすい言葉で表現するように心がけましょう。難しい文章で経営理念を示すと、スタッフが理解できずに、なかなか社内に浸透しません。

さらに経営理念にまつわるストーリーも共有すると、スタッフの共感を得やすくなります。経営理念が実際の行動に、どのように体現されているのか具体的なストーリーで示してみましょう。

退職を防ぐためにオーナーが取るべき対策

ここまでで解説した退職の理由をもとに、退職を防ぐための具体的な対策を紹介します。労働条件の見直しや人間関係の改善、給与のアップなどについて事例を交えて解説するので、参考にしてください。

労働条件の見直し

美容業界の場合、オーナーとスタッフ間で子弟関係のようなイメージが持たれることが多く、労働条件にも古い慣習が残されているケースもあります。そのため一般企業のような当たり前の労働条件が、まだ浸透していない側面もあります。

メンズ専門サロン「Bee dandy 」オーナーの松井祐太さんは、そのような業界の体質を改善して労働条件が一般企業に近づくように尽力しています。

勤務時間は基本的に実質9時間で、何時から何時まで働くかは各々の自由。ですが、うちの場合は予約が集中するのは夕方以降なので、13時〜22時の勤務スタイルが多いですね。残業をするかしないかは本人に任せています。残業の有無は毎回聞きますが、あくまで確認です。「働いてくれ」とは言いません。

あと、美容師は土日に休めないことが多いですが、申し訳なさそうに「土日に休みたい」と申し出るのはストレスじゃないですか。だから、うちでは月1で日曜定休を導入しています。

休憩時間もきっちり1時間取ってもらっています。

引用:モアリジョブ|メンズ専門サロン「Bee dandy 」オーナー 松井祐太さん

勤務スタイルや労働時間、休日を見直すことで、スタッフが働きやすい職場づくりに取り組んでいます。

人間関係の改善

職場の人間関係を改善する方法の1つに、スタッフ面談の実施が挙げられます。美容サロン「CASA COLOR」では、エリアマネージャーがスタッフ面談を定期的に行い、そこで悩みを聞いてスタッフの心のケアに努めています。

その不満が顔に出ていたり、ミスに対して感じ悪く対応する人が職場にいると、他のスタッフにも影響して雰囲気が悪くなってしまいますよね。最初は小さな不満や悩みでも、時間が経てば大きく膨らんで最終的には退職にいたってしまうこともあります。

そのような事態を防ぐために、スタッフ面談が必要だと思っています。面談では、私はアドバイスをすることより、スタッフの話を聞くことに徹しているんです。もちろんアドバイスが必要なときもありますが、話しを聞いてもらったり、一緒に悩んでもらうだけでも心が軽くなることもあると考えています。

引用:モアリジョブ|美容サロン「CASA COLOR」 エリアマネージャー 松尾薫さん

話を聞いてもらったスタッフからは安心するとの意見も聞かれ、職場に対する不満の軽減により、スタッフの退職防止につながっているようです。

給与アップの検討

給与アップには、退職予防につながる大きな効果が期待できます。そのため大企業の多くが、初任給のアップや既存スタッフの給与のベースアップに努めています。

しかし中小企業の場合、給与アップの難しいケースが多いのも実情です。そのような場合は、人事評価制度を見直して適正に給与アップできる体制を整えるのも退職を防ぐ手段の1つです。

たとえば美容業界の場合、評価の対象が管理職の適正評価に偏ってしまうと、プレイヤーとして活動したいスタッフの反発を招き退職につながる恐れがあります。

ネイル業界は、なぜこんなにも個人サロンという形での独立が多いのか?と問いを立てた時に、現存の人事評価制度に問題があることに気がつきました。キャリアプランが「管理職への昇進」一辺倒なんです。プレイヤーがより高い収入を得るには、管理職になるしかない。でも本来は、プレイヤーとしてその腕を磨き続けることも、リーダーになることと変わらず尊いはず。

引用:モアリジョブ|「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」オーナー 木下さとこさん

そこでネイルサロン「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」ではプレイヤーとして活躍するスタッフも適正に評価できる人事評価制度を作りました。

リーダーになることや、数字管理を苦手とする人もいて当然です。そういう人達も、頑張った分だけ高い収入になるような人事評価システムを構築しています。当社は月のお休みは10日間、8時間きっかりで残業はゼロ。それでも、月収40万円を超えるプレイヤーネイリストは珍しくありません。

引用:モアリジョブ|「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」オーナー 木下さとこさん

その結果、オープンから6年間、離職率5~10%未満を維持しており、40名のスタッフを抱えています。給与アップを検討する場合は、それと同時に人事評価制度についても見直すとよいでしょう。

自社にマッチした人材の採用

自社にマッチした人材を採用するためにも自社の労働条件や仕事内容、方針、理念などをできる限り詳しく公開することが大切です。

ネイルサロン「la vela tokyo」では、サロンの見学会を兼ねて、仕事のやり方や雇用形態、給与体制などを丁寧に説明しています。

選考に進む前に条件やサロンについての説明を丁寧に行う、サロン見学の機会を必ず設けることです。このステップによって採用後のアンマッチを防ぎ、気持ちよく働けるように心掛けています。

サロン見学では30~60分ほどをかけて、設備や道具、雇用形態、給与体制、お店のスタイルなどについて説明します。サロン見学の終わりに「もし興味があったら名刺のアドレス宛に連絡をください」とお伝えをして、選考に進むかどうかを本人に委ねるようにしています。

引用:モアリジョブ|ネイルサロン「la vela tokyo」 オーナー 田崎明日香さん

さらにスタッフ選考の際には、技術面だけではなく、話し方や言葉の選び方、返答のスピードなど多面的にチェックして自社が求める人材かどうかを確認しています。

また都内で複数の美容サロンを運営する株式会社エターナルでは、会社の理念を理解していることを採用の第一条件としています。

第一条件は、会社の理念を理解してくれていること。「有名だから」「聞いたことがあるから」という感覚だと、もし入社できたとしても1年くらいで「何か違いました」と辞めてしまうことが多いんです。

正反対の2ブランドを運営している分、合わない考え方を選ぶとすぐ辞めてしまうんだなというのを、すごく実感します。働き方や考え方に共感できていれば、働き始めてすぐに「合わないな」と感じることはないと思うんです。

引用:モアリジョブ|株式会社エターナル 準執行役員/LallYou 渋谷 代表 守道さん

会社の理念や考え方に共感できるスタッフを雇うことで、仕事が合わないと感じて退職するケースを防いでいます。

勤務時間の見直し

勤務時間を見直すと、育児と仕事の両立に悩む子育て世代や、親の介護の悩みを抱えやすい壮年期世代の働き方に対するニーズを満たせます。

しかし労働時間の短縮や休暇制度の充実が、顧客サービスに影響を与えないように施策を講じることも大切です。

たとえば資生堂はカンガルースタッフと呼ばれる制度を導入して、育児時短制度の影響による売り場スタッフの減少への対策を行いました。

育児時間の代替要員制度「カンガルースタッフ」。従来から育児時短制度はあったものの、夕刻は化粧品売り場が最も忙しい時間帯。それを横目に帰るのは心苦しく、辞めざるをえない美容部員も多かったという。

そこで夕刻以降の時間帯に、美容部員の応援要員としてカンガルースタッフを採用。「働くお母さんを応援します」というバッジをつけてサポートする。06年当時の500人体制は、1万1000人以上に拡大。今は結婚や育児があっても仕事を続ける人がほとんどだという。

引用:資生堂、美容部員が奮い立つキャリアの“見える化”《ものすごい社員教育》|東洋経済

また美容室のなかには、サロンの基本的な営業時間を短く設定して、それ以降はスタイリストの自主性に任せているケースもあります。

結婚・出産しても働きやすいサロンにしようと考え、営業時間を午前10時〜午後5時までという特殊な形態にしました。午後5時が定時で、それ以降の営業はスタイリストの自由にしています。そんな短時間勤務で働けるようにするのも、このお店のコンセプトでした。お客さまもスタッフも子育て中の人がメインになっている、というのがこのサロンの特徴ですね

引用:モアリジョブ|Floren株式会社 代表取締役 鈴木恵太さん

このように育児や介護で働く時間を削減せざる負えないスタッフが働きやすい職場を目指すことで、家庭の事情による退職を防げます。

まとめ

本記事を総括すると次のとおりです。

  • スタッフが退職する場合、本音を語らないことも多いから、客観的なデータをもとに理由を分析して対策を講じることが大切
  • 優秀な人材や真面目な人は、人手不足の負担や評価基準への不満、企業理念への反発で退職することもある
  • 適切な対策を講じると退職するスタッフの数を減らせる

今回は事例を交えてスタッフの退職理由と対策について詳しく解説しました。退職者が出るたびに、その理由を分析して対策を講じることで、スタッフが減少するリスクを抑えられます。今後はスタッフ1人を採用するのも難しくなることが予想されるので、可能な限り退職者を減らして人材確保に努めることが大切です。

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Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。