「自社にマッチした人材を採用するための手段を知りたい」
「本当にこの採用ターゲットや募集の仕方でいいのかわからない」
「中途で採用した人材が入社してみたら期待と違う...採用時点でどうすればよかった?」
人材募集に成功してある程度の応募人数を確保できても、採用フェーズに入ると以上の悩みを抱える担当者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、人材採用の手順やコツについて網羅的に解説。中途採用と新卒採用、アルバイト採用の3つにわけて採用のコツを詳しくお伝えします。キャリアマップを採用活動に活かすメリットについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
人材採用を考えるための手順
人材採用は企業の成長を促進したり、業務上の欠員を補充したりするために実施します。もしくは社風の一新や、会社の将来を担う人材の育成を目的に採用をすることもあるでしょう。
それらの目的を達成するためには、人材採用を実施するために次の手順を踏むことが大切です。
- 価値観や志向の言語化
- 採用したいターゲットの明確化
- ターゲットに向けたメッセージの整理
- 求職者の希望の把握
以上の各手順について解説します。
なお、ここでは概要を説明するので、手順を詳しく知りたい場合は無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。
1.価値観や志向の言語化
まずは自社の価値観や志向を明確にして、それを求職者にわかりやすく説明できる状態にしましょう。そのためにも次の手順で、価値観や志向を深堀しましょう。
- 理想の姿や想いを書き出す
- 理想や想いに関連したこだわりや原体験を書き出す
- こだわりのなかから類似したものをグループ分けする
こだわりを言語化すると、そこから価値観や志向が見えてくるでしょう。
▼こだわりをグループ分けした状態
それぞれのこだわりに対して具体的なエピソードや事実をセットにして言語化すると、価値観や志向が具体的でわかりやすい状態になります。
2.採用したいターゲットの明確化
前項で導き出した価値観や志向をもとに、採用したいターゲットを明確にします。そのためには、次の4項目について考えてみましょう。
- 価値観・志向(どんな想いを持っている人が自社に合いそうかを考える)
- 人柄・性格(顧客や既存スタッフとの相性の良い人物像を考える)
- 能力・役割(業務遂行のために必要な能力や役割を洗い出す)
- 勤務条件・働き方(ターゲットの希望にマッチした勤務条件や働き方を提示できないか考える)
3.ターゲットに向けたメッセージの整理
ステップ1で考えた自社のこだわり(価値観や志向)とステップ2で考えたターゲット像をもとに、求職者にアピールするためのメッセージを考えます。
▼ターゲットとなる求職者に向けたメッセージの考え方
求職者の希望と競合の把握
Web上で採用活動を展開する場合、多くのライバル会社と競合することが想定されます。競合するなかで自社が埋没しないようにするためにも、他社との差別化は欠かせません。そのためにも、まずは求職者が求める条件とライバル会社が提示する条件を把握することが大切です。
- 求職者が会社に求める条件を把握して、それにマッチした条件をアピールする
- ライバル会社が求職者に提示する条件を把握して、自社の提示条件が劣る場合は条件を改善したり、別の条件をアピールしたりする
Webやアプリの求人サービスでは、求職者が条件を指定して絞り込み検索をしたり、同一画面上に並んだ求人票を見比べて条件を比較できたりします。
そのことを想定して、ライバル会社に対して優位性を担保したり、差別化できたりする条件を提示するように心がけましょう。
人材採用の種類
人材採用には主に次の種類があります。
- 正社員の中途採用
- 正社員の新卒採用
- 非正規雇用での採用
以上のそれぞれで、人材採用に求められる条件が異なります。
エン「人事のミカタ」の調査によると、中途採用の採用理由として多い項目は、「業務量増加のため」や「欠員が出たため」でした。
つまり、業務量の増加や欠員によって生じた労働力の不足を補うことを目的に、実務経験・スキルがあり即戦力となる中途採用が実施されることが多いようです。一方で、経験があるからこそ採用でミスマッチが起きた場合には、自分のやり方にこだわり適応できず、企業にとってダメージになる可能性があります。
一方で経団連の調査によると、新卒採用ではコミュニケーション能力や主体性などの実務以外のスキルや人柄などから採用の可否を判断するケースが多いようです。
つまり新規採用で獲得した人材には、周囲と良好な人間関係を築くための能力や将来的な成長の糧となる要素が求められます。
またマイナビの人材ニーズ調査によると、アルバイトやパートなどの非正規雇用については、「慢性的な人材不足」や「退職者・休職者分の補填」、「一時的な業務量の変動への対応」を目的に採用する会社の割合が高いです。
これらの人材に対して専門能力や技術力を求める傾向が比較的低く、非専門的な一般業務への補填要員として採用されることが多いようです。
アルバイトやパートは、正社員を採用するよりも人件費を低く抑えられます。そのためマニュアル化できる一般業務の担当者を補う場合は、アルバイトやパートを採用した方が経営上のリスク軽減につながると考えられます。
中途採用のコツ
中途採用の失敗により採用後に後悔しないようにするためにも、しっかりとコツを理解して採用を進める必要があります。
株式会社識学の調査によると、中途採用に関わるなかで採用した人材に対して「こんなはずじゃなかった」と感じた経験を持つ人が、75.7%に上りました。
▼中途採用で「こんなはずではなかった」と感じた経験を持つ人の割合
「こんなはずではなかった」と感じた具体的なエピソードは次のとおりです。
面接では人柄が素晴らしいのに、入社してからは挨拶もできなかったり、コミュニケーションがとれない方で驚いた。
大企業からの転職で期待したが、全く役に立たないことがあった。
経験豊富な職務経歴書の内容と実際の働きぶりがあまりにも違っていた。仕事を一から教えなければならなかった。
すぐに辞めたりあきらめない事をアピールしていたので採用したら、すぐに辛いと言い出し即退職された。
ここでは、以上の状態になることを避けるための方法を紹介します。
即戦力を見抜く
即戦力となる人材を見抜くためには、高い技術力を持つ人材であるかどうかを確認することが大切です。技術力の高い人材を採用すると、顧客に満足してもらえるため業績の向上が期待できます。
とくに技術職はスタッフのスキル次第で、顧客の満足度やリピートに大きな影響を与えます。
お客さまの悩みを解決できる技術力以外に、集客できる理由はないかなと思っています。僕のお客さまで新規でくる方というのは、40代~60代の方が多くて、ほかのサロンでは満足できなかった方がほとんど。
引用:モアリジョブ
個人的に、仕事の時間外で整体学校のセミナーなどを受けに行くようになりました。学んだ技術を施術に取り入れると、さらに反響をいただけて。これは強みになるなと思ったんです。
引用:モアリジョブ
何よりもまず技術力を高めることです。どれだけ設備が整っていても、理想のスタイルを形にできなければお客さまは離れてしまいますからね。
引用:モアリジョブ
転職者の多い時期に採用活動をする
転職者の多い時期に採用活動をすると大きな母集団を形成できるため、採用活動を進めやすくなります。
株式会社かけるが20代に対して行った調査によると、転職の多い時期が1月や4月、10月だった一方で、8月や11月は転職者が少ない結果となりました。
転職時期を選んだ理由としては、「特になし」が最も多く、次いで以下の回答が多かったです。
- 年度初め/期が変わるタイミングに入社したかったから
- 賞与をもらった後だから
- 配属の変更/組織体制の変更により不満がでてきたから
「特になし」の回答が多いことから、転職の開始時期にはこだわらない人が多いようです。そのため中途採用の開始時期については、あまり神経質になる必要はないと考えられます。
しかし予算や人的リソースの関係上、採用活動の時期を限定する必要がある場合は、8月や11月を避けつつ1月や4月、10月を活動の目安にするとよいでしょう。
ミスマッチを避ける
ミスマッチを避けるための施策としてカジュアル面談を実施したり、募集要項に業務内容を正確に書いたりすることが考えられます。
カジュアル面談を実施する
ミスマッチを防ぐための施策として、カジュアル面談を実施する企業もあります。
カジュアル面談とは正規の面接前に行われる面談で、リラックスした雰囲気で企業の社員と応募者がコミュニケーションを取ることが目的です。
採用の可否判断を目的としないため、質問に対する応募者の心理的ハードルが下がります。そのため、応募者は自分の知りたい情報を担当者からしっかりと聞き出せるのです。
会社の業務内容や社風などへの理解を深めて求人に応募できるため、採用後のミスマッチを防げます。
実際に株式会社学情の調査によると、カジュアル面談を実施する企業の6割以上が、実施する目的としてミスマッチの防止を挙げています。
▼カジュアル面談を実施する目的や期待する効果について
募集要項に業務内容を正確に書く
募集要項に業務内容について実態とは異なることを記載したり、あいまいなことを書いたりしないように注意しましょう。
ミスマッチが起きる原因はいろいろあるのですが、ひとつ大きいのは、募集づくりがちゃんとできていないことです。
たとえば、実態以上にキラキラしたような肩書きをつけてしまったり、ふわっとした業務内容で募集要項をつくってしまったりする場合が多いんです。
引用:グリーンジョブズ
業務内容について募集要項で正確に伝えないとミスマッチが起き、業務内容への不満により早期離職につながる可能性があります。
求職者側のニーズを把握する
人材難の現代では、求職者側の労働条件や職場環境に関するニーズを把握して、それをもとに訴求することも大切です。
企業同士が比較されて、求職者のニーズにあった労働条件や職場環境をアピールする企業に人材が流れる可能性があります。
求職者のニーズを把握するためには、前職を辞めた理由を参考にするとよいでしょう。厚生労働省の調べによると、「賃金以外の労働条件がよくなかったこと」や「満足のいく仕事内容でなかったこと」などを理由に前職を辞めた人が多いようです。
※令和2年転職者実態調査の概況をもとに作図
新卒採用のコツ
新卒採用の目的は、企業を支える次世代の人材を育成することにあります。成長した後に、リーダーや幹部候補として企業を支える存在になることが期待されています。
企業の将来を担う人材を確保するためにも、新卒採用のコツをつかんで効率的に採用活動を進めましょう。
学生の会社選びの基準を把握する
学生の会社選びの基準を把握して、新卒者に対して効果的に自社の強みをアピールしましょう。
マイナビのキャリアリサーチLabの調査によると、安定している会社に入りたい学生が最も多いことがわかりました。
▼会社選びの基準
次いで、自分のやりたい仕事(職種)ができることが会社を選ぶ際のポイントになっている学生が多いようです。
しかし小規模事業者などの場合、安定性をアピールすることが難しいケースも多いでしょう。その場合は、求人票に仕事内容を詳しく記載して、その仕事に興味を示す新卒者にアピールするのもひとつの手段です。
若手スタッフが採用に関われるようにする
若手スタッフが採用に関わると、学生と近い感覚で求人原稿を作成できます。学生のニーズが反映された魅力的な求人原稿が期待できるのです。
また若手スタッフが面接に参加すると、採用を決定したことに責任感が芽生えることもあります。責任感により若手スタッフが新入社員の教育に積極的に関わるようになる効果も期待できるようです。
アシスタントを含めた僕たちスタッフ全員と学生1~2名の集団スタイルで行っています。このスタイルを採用した理由は、指導をする際に責任感が芽生えると思うからです。もし、僕たち幹部だけで決めてしまったら、スタッフは教育にあまり前向きになれないと思います。
しかし全員で面接を行っていれば、「自分も関わったからしっかりと指導をしよう」と思うはずです。
引用:モアリジョブ
学校や専門学校とのつながりを作る
学校や専門学校とのつながりを作るのも、新卒採用を成功させるためのコツです。
「(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023」によると、新卒者が初職を探す場合、学校の求人情報や推薦枠、講師・先生のコネクションを利用するケースが多いことがわかりました。
新卒者を採用する場合は、学内説明会を開いたり、学校スタッフとつながりを作ったりして、コネクションを築くとよいでしょう。
▼学校説明会の開催
サロン見学は随時開催中で、学生から電話が来たら対応しており、実際に話をして仕事を見学してもらいます。説明会は美容学校で行い、サロンで開催することはほとんどありませんね。
引用:モアリジョブ
採用は大きく3つのステップがあり、まずはサロンの説明です。開催場所は美容学校かサロンで、サロンに足を運んでくれた学生とは、その時に1時間ほど話をしています。会話の内容は、「どんなサロンで働きたいか」や「現在の就活の進捗」などです。
引用:モアリジョブ
▼学校とのコネクションづくり
採用を担当するようになって多くの美容専門学校を訪問する機会が増え、たくさんの先生方と話をする機会に恵まれています。先生や生徒たちと話をするなかで、「学校から見たヘアサロン」、「学生から見た美容師像」はどんなものなのかを考えるようになりました。
引用:モアリジョブ
僕が編集長を務めている「TOOL MAGAZINE」で美容学校への取材をさせてもらい、それぞれの学校の特徴や魅力がわかるように記事を作っているので、そこでもつながりができています。学校に電話をしたり、ホームページから問い合わせをしたりして、取材依頼をするのですが協力してくださる学校も多いんです。取材時には、学校のガイダンスがあれば、参加させてもらえるようにお伝えしています。
もともと「TOOL MAGAZINE」は僕が発信するために個人的に作ったものですが、今では求人活動になくてはならない存在になっていますね。
引用:モアリジョブ
アルバイト採用のコツ
アルバイト希望者の求める働き方や労働条件が、必ずしも会社が想定する内容と一致するとは限りません。そのため客観的な情報をもとに、アルバイトの希望条件を把握することが大切です。
客観的な情報源として、たとえば働く理由に関する公的な調査や地域の平均時給などが挙げられます。
さらに求人票に業務内容を細かく書いて、ミスマッチを防ぐようにすると、アルバイトの採用が成功しやすくなります。
アルバイトで働く理由をくみ取る
公的データをもとにアルバイトで働く理由をくみ取り、自社の労働条件がその理由を満たせることをアピールしましょう。
男女共同参画局が総務省の調査をもとに作成したデータによると、男女ともにアルバイトで働く理由として「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多い結果となりました。
アルバイトを採用する場合は、シフト制であり、なおかつ働く時間帯や長さにも柔軟に対応できることを伝えるとよいでしょう。
地域の平均時給を把握する
自社が条件として提示するアルバイトの時給が平均を下回ると、他と比較された際に応募対象から外されやすくなります。
平均時給は地域ごとに大きく異なるため、全国平均ではなく自社の所在地における平均時給を把握しましょう。
▼首都圏の平均時給
都道府県名 |
平均時給 |
---|---|
東京都 |
1,289円 |
神奈川県 |
1,251円 |
千葉県 |
1,218円 |
▼地方の平均時給
都道府県名 |
平均時給 |
---|---|
秋田県 |
896円 |
大分県 |
888円 |
青森県 |
879円 |
平均時給が高い地域と、低い地域では300~400円くらいの差があります。店舗でアルバイト採用をする場合は、地域の平均を目安に時給を決めるようにしましょう。各地域の時給については、マイナビのキャリアリサーチLabで紹介されています。
またディップの調査によると、時給は年々増加傾向にあります。
▼時給の推移
定期的に平均時給をチェックして、アルバイト採用で提示する時給の更新をおすすめします。
求人票に仕事内容を細かく書く
ディップがパート・アルバイトに対して行った調査によると、仕事内容を重視して職場を決める人が多いことがわかりました。
▼求人票の記載項目で重視している内容
仕事内容はパート・アルバイトが重視する大切な要素なので、求人票には仕事内容を細かく書くようにしましょう。
さらに、パート・アルバイトの求職者が知りたい仕事内容として「1日の業務の流れ」や「必要なスキル」などが挙げられます。
▼仕事内容欄のなかに記載されていると応募しやすい情報
求職者の不安を解消して、応募しやすくするためにもアルバイト求職者が知りたい情報を掲載するようにしましょう。
キャリアマップを人材採用に活用
自社にマッチした人材を採用したい場合は、キャリアマップを作成して、育成環境に応じた採用戦略につなげるのもひとつの手段です。
育成環境に応じた採用戦略
育成環境に応じた採用戦略とは、人材を育成する環境の整備状況に合わせて、採用方法を考えることです。
たとえば育成環境が整っている場合は、安価な求人媒体で経験が浅い人材を雇っても職場で活躍できる人材へと育てられます。スキルや知識を身に着けるために必要な時間を短縮できるため、早くから戦力になれるでしょう。
一方で育成環境が整っていない場合に経験の浅い人材を雇ってしまうと、職場で活躍するまでに時間がかかる・育成コストが高くて会社にとって負担になる可能性があります。その結果、雇用主と従業員の双方がストレスを抱えて職場環境が悪化するリスクがあるため注意が必要です。
育成環境が整っていない場合は、基準のスキルや経験を満たした人材を特化型の求人サイトなどで探すことをおすすめします。
特化型の求人媒体で自社に必要な人材を採用するためには、はじめにキャリアマップを作成して、自社に必要な人材を明確にすることをおすすめします。
人材採用をはじめる前にキャリアマップを作成する意義
キャリアマップの作成過程で、今どういう人材が欲しいのかを考える機会を得られます。
キャリアマップを通して在籍スタッフのレベルやスキル、役割の実態について整理できるので、担当者が不足している業務内容や業務遂行に必要なスキルを洗い出せるのです。
業務全体をカバーするために必要な人材がはっきりするので、求める人物像やスキルを具体的に伝えやすくなります。
求める人物が明確になると、その人物にリーチしやすい採用方法も選びやすくなるので、採用活動の効率化につながります。
キャリアマップの具体例
エステ業界のキャリアマップを具体例として示すと次のとおりです。
以上のように経験や習熟度などをもとにキャリアマップを整理することで、現在自社にはどのような人材が足りていないのか、どのようなスキルを持った人材を雇えばよいのかが明確になります。
まとめ
人材採用は人材採用は企業の成長を大きく左右することでありながら、ミスマッチした場合に簡単に変更できません。。そのため人材採用のポイントを理解して、効率的に採用活動を進めるようにしましょう。
人材採用を行う上で重要なポイントは次のとおりです。
- 人材採用は新卒と中途、アルバイトのそれぞれでコツがある
- 企業の価値観を言語化したり、使用したいターゲットを明確化したりしてミスマッチを防ぐことが大切
- 教育環境が整っていない場合は、キャリアマップを作成して自社に必要な人材を明確にする
自社で本当に必要な人材を獲得することを意識して、人材採用を進めましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部