採用戦略とは?事例に基づく効果的な立案方法を徹底解説!
採用戦略は、採用活動の成否を分ける重要な要素の一つです。
本記事では「そもそも採用戦略とは何か」という点からはじめ、採用戦略の立て方や実施する際のポイントを紹介します。
現代の採用トレンドやデータなどに基づき、適切な採用戦略の立て方を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
採用戦略とは
採用戦略とは、企業が必要な人材を効率的かつ効果的に確保するために立てる計画や方法などを指しています。
具体的には、企業が目指すビジョンや目標に沿って、どのような人材が必要かを明確にし、その人材をどのようにして見つけ、採用し、定着させるかを計画・実行する一連のプロセスです。
また採用戦略は、企業の競争力を高め、持続的な成長を支えるための重要な要素の一つでもあります。
採用戦略が重要な理由
採用戦略による効率的な採用活動は今後、さらに重要性が増します。なぜなら、日本の労働人口の減少が見込まれているためです。
パーソル総合研究所と中央大学が行った調査によると、2030年には専門的・技術的職業従事者で212万人、事務従事者では161万人の人手不足が見込まれています。特にサービス業界と医療・福祉業界では人手不足の傾向が顕著に表れると予想されています。
したがって、企業は今後の人手不足に備え、中長期的な採用戦略の立案が求められるのです。
採用戦略を立てるメリット
採用戦略を立てるメリットは以下のような点にもあります。
- 採用コスト削減
- 応募数の増加
- ミスマッチの予防
以下にて解説します。
採用コスト削減
採用戦略を立てることで、採用コスト削減につながります。採用戦略に沿って採用活動を進めることにより、無駄なコストをカットできるためです。
計画を立てずに採用活動を行うと「どこに多くのコストを使っているか」「どのプロセスがボトルネックになっているか」を把握しづらくなります。するとPDCAを効率的に回せなくなるため、採用コストの最適化が難しくなります。
採用戦略があればプロセスに沿った採用活動ができるため、ボトルネックを見つけやすく、コストや工数を最適化しやすくなります。
応募数の増加
採用戦略に沿った採用活動は、応募数の増加にもつながります。ターゲット像を明確にし、的確な採用方法を実施することで、自社にマッチした人材にリーチしやすくなるためです。
また、ターゲット像が明確になれば、自社に合った求人媒体も選びやすくなります。これにより、効率的にマッチングできるだけでなく、コスト面を最適化することが可能です。
ミスマッチの予防
採用戦略の立案では、自社の魅力や求職者のニーズを調査し明確するため、応募者と企業のすれ違いを無くすことができます。ミスマッチを減らすことは将来的にかかる育成や再雇用のコスト削減にもなるため、企業にとっては非常に大きなメリットとなります。
しかし、こういったメリットを得るためには、正しい手順に沿った採用戦略の立案が欠かせません。以下にて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
採用戦略の立て方を8ステップで解説
採用戦略は次の8ステップで立てましょう。
- 採用戦略チームを作る
- 経営計画をもとに採用計画を作成
- 社内体制の整備
- 採用ブランディングの構築
- 採用ツールの選定
- 採用スケジュールを立てる
- ターゲット像の設定
- PDCAをまわしてブラッシュアップ
以下にて詳しく解説します。
1.採用活動の体制を作る
採用戦略を効果的に立てるためには、まず採用戦略や活動を誰が担うかを決める必要があります。
採用戦略チームを作る場合、人事担当者だけでなく、各部門のリーダーや経営陣を引き入れることが大切です。これにより、各部門のニーズを的確に反映した採用計画を立てられます。
チームを作成したら、チーム内で各メンバーの役割と責任を明確にしましょう。例えば、各求人媒体の契約・出稿や効果検証を担当する人、候補者のスクリーニングを担当する人、面接を担当する人、採用プロセス全体を管理する人などです。
それぞれの役割を設定したら、定期的にミーティングを開き、進捗状況を共有したり、問題点や改善点を議論したりし、常に採用プロセスを最適化しましょう。
採用戦略チームが作成できない場合は「メンバー全員で採用活動に協力する体制を作る」もしくは「一人で採用活動をする」「採用代行に依頼する」といった方法をとる必要があります。例えば、美容室の場合、各種求人媒体に出稿しながら、求人原稿は制作代行を依頼したり、スカウト代行を依頼するなど外部のプロに頼むことも有効です。また、運用コストと工数がかからないSNSを活用し、担当を全員で協力し合うことで業務を分担できます。一人の場合でもSNSであれば運用できるため、スキマ時間を活用しつつ採用活動を進められます。
2.経営計画をもとに採用計画を作成
採用計画は、企業の経営計画や中長期的なビジョンに基づいて作成します。これにより、企業の成長戦略と採用戦略を一致させることが可能です。
採用計画では、具体的な採用目標を設定しましょう。例えば、年間で何名の新卒社員や中途社員を採用するか、各部門でそれぞれ何人を採用するかなどです。
次に、採用活動に必要な予算を策定し、経営計画に歪みがでないよう調整します。なお予算には、広告費、人材紹介会社の手数料、面接の交通費などが含まれます。
厚生労働省が公表している新卒採用における採用戦略を参考にしてみるとよいでしょう。
採用の背景 |
・人手不足が一番の要因 ・将来の中核人材を見据えた若年層の確保 |
求める人材像・人材要件 |
・社会人一般としてのマナーを備えていること ・募集職務に対する経験はあれば望ましいが、重要ではない ・特徴として、既に人材要件の緩和や拡大が行われているこ とが多い |
採用手法 |
・経験を重視せず社内で活躍しているメンバーをイメージし やすいことから、リファラル採用の期待が大きい ・直接応募も人材要件が緩やかな分、面接選考まで進めやす い ・業種や職種によってはハローワークの活用も検討すべき |
評価項目 |
・本人の成長余力(伸びしろ) ・本人の挑戦意欲 ・社風や事業内容への理解 |
定着支援 |
・当該職務に関する育成 ・配属先メンバーの受け入れる風土と現場での育成支援 |
3.社内体制の整備
採用戦略を効果的に進めるためには、社内体制を整備することも重要です。社内体制の整備により、円滑な採用活動を実現させ、企業全体の協力体制を構築できます。
例えば、美容ヘルスケア業界の場合、店舗内で技術を教え合う文化を構築する方法が効果的です。新人だけに関わらず、ベテラン同士で積極的に技術を教え合うことで、自然と新人教育ができる環境を作り出せます。こうした環境はベテラン側にも気付きを与えるため、店舗全体のスキルアップにつながります。
また、採用活動に関する情報を社内で共有し、全社員が採用活動の重要性を理解できるような環境を作ることも大切です。これにより、社員全員が採用意識をもつため、リファラル採用での人材獲得といった副次的な効果を得やすくなります。
4.採用マーケティングの構築
採用マーケティングとは、自社の強みや採用課題を明確にし、それに基づいた戦略を立てることが重要です。
ここでは、3C分析とSWOT分析を用いて、自社の強みと採用課題を発見する方法を紹介します。
【3C分析】自社の強みを発見
3C分析は、
Customer(顧客)
Company(自社)
Competitor(競合)
の3つの視点から自社の状況を分析する手法です。これにより、自社の強みや他社と比較した場合の優位性を発見できます。
それぞれでどういった分析をするのか解説します。
Customer(顧客)
自社がターゲットとしている求職者層を分析します。彼らが求める条件や価値観、興味関心を把握することで、求職者にアピールできる要素を明確にします。例えば、若手エンジニアをターゲットにする場合、最新技術に触れる機会や成長支援プログラムなどが強みとなります。
Company(自社)
自社の強みや特徴を整理します。例えば、企業文化、福利厚生、キャリアパス、研修制度、働きやすさなど、自社が他社に比べて優れている点を洗い出します。この情報をもとに、求職者に対するメッセージを具体化します。
Competitor(競合)
競合企業の採用戦略やブランディングを分析します。競合がどのような手法で求職者を引き付けているのかを理解し、自社との差別化ポイントを明確にします。例えば、競合が福利厚生に強みをもっている場合、自社はキャリアパスの明確さを強調するなどの戦略を立てます。
【SWOT分析】採用課題の発見
SWOT分析は、
自社の強み(Strength)
弱み(Weakness)
機会(Opportunity)
脅威(Threat)
を分析する手法です。これにより、採用における課題を明確にし、改善策を立てることができます。
それぞれでどういった分析をするのか解説します。
Strength(強み)
自社の強みを再確認し、採用活動にどう活かすかを考えます。例えば、魅力的な企業文化や良い研修制度がある場合、これを前面に出して求職者にアピールします。
Weakness(弱み)
自社の弱みを特定します。例えば「給与水準が業界平均より低い」「勤務地が不便」といった弱みです。これらの弱みをどう克服するか、または他の強みでどう補完していくかを検討します。
Opportunity(機会)
外部環境の変化によりプラスの機会を得ることができないかどうかを分析します。例えば、多言語を操れる人材が市場に増えている場合、こうした人材を自社で活かせないかどうかを検討します。
Threat(脅威)
外部環境からの脅威を特定します。例えば、競合企業が同じターゲット層を狙っている場合や、労働市場が全体的にタイトになっている場合などは脅威と捉えられます。これに対してどのように対応するかを検討します。
「こうした分析から得た結果をどう活かせばいいのか?」という人も多いと思います。
例えば、美容ヘルスケア業界などで「創立年数が浅く、新人育成できる環境が整っていない」という弱みがあるケースについて考えてみましょう。この場合、チラシなどで「1年でセラピストになれる」というキャッチフレーズを起用するより、「自分のペースで学ぶことができる」というフレーズを起用したほうが人材とのマッチ度を上げつつ、応募率の向上につなげられます。
このように、強みや弱みを的確に把握することで、具体的かつ効果的な施策の考案が可能になります。
5.採用ツールの選定
自社の採用ブランディングが明確になったら、採用ツールを選定しましょう。
採用ツールは強みが異なるため、それぞれを理解したうえで選択する必要があります。代表的なツールに関しては厚生労働省の調査により、各ツールの強みが明確になっているため参考にしてみるとよいです。
【求人情報サイトの強み】
・多くの求職者からの応募に期待できる(65.7%)
・希望する能力をもった求職者を採用できる(27.4%)
・迅速に求職者を確保できる(27.3%)
【求人情報誌・チラシの強み】
・多くの求職者からの応募に期待できる(51.8%)
・迅速に求職者を確保できる(31.5%)
【ハローワークの強み】
・採用にかかるコストが安い(82.9%)
・多くの求職者からの応募に期待できる(29.1%)
これらの強みを把握しておき、自社の採用戦略に合ったツールを選択しましょう。
6.採用スケジュールを立てる
効果的な採用戦略を立てるためには、詳細なスケジュール作成が重要になります。詳細な採用スケジュールを立てることで、計画的に採用活動を進め、必要な人材をオンスケジュールで確保できます。
具体的には、年度初めに年間の採用スケジュールを作成します。
新卒採用の場合は、インターンシップ、会社説明会、面接、内定通知の時期を具体的に設定しましょう。
中途採用の場合は、求人広告の掲載時期や面接のタイミングなどを計画します。
次は年間計画をもとに、月間・週間ごとの詳細なスケジュールを作成しましょう。これにより、はじめて採用活動に携わる人でもスムーズにやるべきことを遂行できます。
また、各イベントやタスクに対して担当者を明確にし、責任をもって実行できる体制を作っておくことも大切です。
7.ターゲット像の設定
採用戦略を成功させるためには「どのような人材を求めているのか」を明確にすることが重要です。ターゲット像の設定により、採用活動をより効率化できます。
これに伴い、まずは企業が求める理想的な人材のスキル、経験、性格、価値観などを明確化します。
例えば、リーダーシップを発揮できること、特定の技術スキルをもっていることなどです。自社で活躍している人材を深掘りし、選択軸を補強する方法もあります。
具体例として、創立から間もない美容室のターゲット像を見てみましょう。
経験 |
・若手美容師(1~3年) |
性格 |
・積極的なポジティブ ・コミュニケーション能力が高い ・向上心が強い |
年齢 |
・20代前半~30代前半 ・第二新卒者 |
価値観 |
・顧客満足度を第一に考えている ・学び続ける姿勢をもっている ・柔軟性と適応力がある |
地域への貢献意識 |
・地域にサロンを根付かせたいと考えるだけの地元愛がある |
SNSの活用意識 |
・Instagramを積極的に運用して顧客獲得できる |
次に、設定したターゲット人材がどのような市場に多いのかを分析します。例えば、新卒採用では特定の大学や学部、またはサークル活動に注目することが考えられます。
中途採用では、特定の業界や職種にターゲットを絞ることが有効です。
8.PDCAをまわしてブラッシュアップ
採用戦略の効果を最大化にするためには、PDCAサイクルを導入し、常にブラッシュアップすることが不可欠です。
ここでは、採用戦略の実施におけるPDCAの回し方を解説します。
Plan(計画)
採用戦略の実施成功に必要な目標数値を設定します。例えば、採用目標人数、スケジュールなどを詳細に計画します。
Do(実行)
計画にもとづき、採用活動を実行します。求人広告の掲載、説明会の開催、面接の実施など、各ステップを進めます。
Check(評価)
採用活動の結果を評価します。応募数、面接通過率、内定者数などのKPIをモニタリングし、目標に対する達成度を確認します。モニタリングするべきKPIの選定はPlan(計画)の段階で明確にしておきましょう。
Action(改善)
評価結果に基づき、採用戦略を改善します。例えば、応募数が少ない場合は求人広告の内容を見直し、面接通過率が低い場合は面接手法を改善するといった対策が考えられます。
こうしたPDCAサイクルを継続的に回すことで採用戦略がブラッシュアップされ、来年、再来年につながる採用活動を実施できます。
採用戦略を実施する際のポイント
採用戦略を実施する際は次のポイントを意識しましょう。
- 会社全体で共有しながら進行
- 検証と改善を繰り返す
- 人事制度とリンクさせる
以下にて詳しく解説します。
会社全体で共有しながら進行
採用戦略は、会社全体で共有しながら進行しましょう。全体で共有することで、採用活動を効率的に進められるためです。
特に、人材が欲しい部門とは密接に関わりをもつことが重要になります。実際、リクルートが行った調査によると、人材を求めている部門が採用に関わっている企業の方が関わっていない企業に比べて、「採用が上手くいっている」と回答した割合が14.4pt高い結果となっています。
検証と改善を繰り返す
採用戦略を実施する際は、検証と改善を繰り返し、常に最適化を図っていくことが大切です。
具体的には「募集」「選考」「内定」「入社後の活躍」のフェーズごとに課題と成果を洗い出し、次年度に活かすことが重要になります。
そのうえで各フェーズごとの検証を行いましょう。ボトルネックになっている部分を早急に見つけ出し、改善していくことで採用活動を効率的に進められます。
人事制度とリンクさせる
採用戦略は必ず人事制度とリンクさせ、現状の社内状況に合った採用を行うことが重要です。
例えば、入社後のフォロー体制が整っていない場合は、ポテンシャル採用ではなく経験者の採用を優先することで現状の問題をクリアできます。
逆に美容ヘルスケア業界のような専門性の高い業界の場合、育成制度が整っていれば積極的に未経験者を採用できます。ただし、向上心や仕事に対する姿勢などは教育することが困難なため、採用の段階でしっかりと見極める必要があります。
また、採用活動の結果が振るわない場合は、人事制度の見直しも検討しましょう。採用戦略の根幹部分にあたる人事制度を最適化することで、採用が円滑に進みやすくなります。
まとめ
本記事では「採用戦略が重要な理由」「採用戦略の立て方」などを紹介しました。
採用戦略は、企業の持続的な発展に欠かせない重要な要素の一つです。しかし、適切な採用はノウハウを要するため簡単に行うことはできません。
そのため、まずは採用戦略の重要性を会社全体で理解し、そのうえで採用戦略を立案・実施することが重要になります。会社全体から理解を得ることできれば、検証と改善が効率化するだけでなく、縁故採用やリファラル採用などにもつながりやすくなります。
ぜひ本記事を参考にし、企業の未来へつなげるための採用活動を実施してみてください。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部