物価高の昨今、人材採用を進めたくても十分な採用コストを捻出できない企業も少なくありません。
人材採用にかかる費用を抑えるためにおすすめなのが、国や地方自治体が企業に支給する助成金です。
ただし、助成金を受給するには定められた要件を満たす必要があります。
そこで本記事では、助成金ごとの要件や支給額をわかりやすくまとめました。助成金の申請を検討している方や、申請したいが複雑な手続きを理解できていない方はぜひ参考にしてください。
人材採用で需給できる「雇用関係助成金」とは?
雇用関係助成金とは、人材採用や雇用に関わる費用の一部を支給してくれるもので、厚生労働省が主導で実施する制度です。
助成金は融資と異なり、返済の必要がありません。資金繰りを圧迫しないため、要件に当てはまる助成金は積極的に活用しましょう。
なお助成金は採用活動に限らず、雇用費用や雇用環境改善、人材育成のために活用できます。
今回は2025年2月時点の採用に関係する助成金について深掘りし、わかりやすく解説します。
人材育成に関する助成金については下記の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みいただき、貴社の人材力向上にお役立てください。
雇用関係助成金を受給するための条件
雇用関係助成金は、以下4つの条件(支給要件)を満たす事業主に支給されます。
- 雇用保険に加入している事業所
- 審査に必要な書類を整備、保管している
- 必要に応じて書類を提出し、調査や審査に協力する
- 各助成金ごとに定める要件を満たす
さらに支給申請日および支給決定日の時点で、雇用被保険者が事業所に所属していなければなりません。
また過去に不正受給した事業主や労働保険料の未納、労働関係法で違反のある事業主など、不支給要件に該当する事業主は助成金を受給できません。
雇用関係助成金の支給要件・不支給要件の詳細は下記サイトをご覧ください。
参照:雇用関係助成金に共通の支給要項|厚生労働省
人材採用で受給できる助成金
人材採用で受給できる助成金の概要と支給要件、支給額などをまとめて解説します。
各助成金には支給期間が定められているため、申請を検討している方は終了にならないよう注意してください。
産業雇用安定助成金
産業雇用安定助成金には以下3つの支援コースがあります。採用活動の場合、3つ目の「産業連携人材確保等支援コース」が該当します。
- スキルアップ支援コース
- 災害特例人材確保等支援コース
- 産業連携人材確保等支援コース
産業連携人材確保等支援コースは、景気の変動や産業界の状況変化により、事業を一時的に縮小し、生産性向上に向けた取り組みに必要な人材受入れを支援するものです。
【主な受給要件】
- 「(A)事業再構築補助金※1」または「(B)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)※2」の事業計画書の申請を行い、ものづくり補助金の採択および交付決定を受けている
- 生産量や売上げ高が上記の事業計画書を申請した日の直近3カ月(※3)の平均値が前年同期に比べ10%以上減少している
- 今回採用の労働者を雇い入れる6カ月前から助成金の支給期間までの期間で労働者を解雇していない
など
※1 独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施
※2 ものづくり補助金事務局が実施
※3 申請日のある月を含む
採用する労働者は受給した補助金(AまたはB)事業の関連業務に就いているなど、採用する人材にも条件があります。雇用保険加入や無期雇用など雇用形態や支払い賃金(年間350万円以上)に関しても取り決めされています。
中小企業 |
中小企業以外 |
|
助成額 |
250万円/人 (125万円×2期) |
180万円/人 (90万円/2期) |
助成対象期間 |
1年 |
産業雇用安定助成金の詳細は下記サイトをご覧ください。
産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)|厚生労働省
早期再就職支援助成金
早期再就職支援助成金には4つのコースがあり、採用に関係する助成金は以下の3コースです。
- 雇入れ支援コース
- 中途採用拡大コース
- UIJターンコース
1.雇入れ支援コース
雇入れ支援コースの助成金は再就職援助計画(※)などの対象者を、離職後3か月以内に期間の定めがない労働者として雇い入れ、かつ継続して雇用することが確実である事業主に対して支給されます。
※事業規模の縮小などで離職を余儀なくされる労働者が多数発生する場合に、事業主が再就職の援助を行うもの
【主な受給要件】
- 支給対象者を離職日の翌日から3か月以内に、期間の定めがない労働者として雇い入れる(有期雇用から無期雇用への変更や紹介予定派遣は対象外)
- 支給対象者を一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れる
再就職援助計画等の対象者を雇い入れた場合の助成金には「早期雇入れ支援」と「人材育成支援」があります。
▼早期雇入れ支援の助成金
種別 |
助成額 |
通常助成 |
30万円/人 |
優遇助成 |
40万円/人 |
優遇助成とは一定の成長性が認められる事業所の事業主が、指定の事業所から離職した者を雇い入れた場合に受けられます。
人材育成支援は早期雇入れ助成の支給対象となる方に対して、雇い入れ日から6カ月以内にOFF‐JTやOJTなど訓練を開始した場合に上乗せして受給可能です。
受給額は通常助成か優遇助成、また実施する時間によって異なります。
雇入れ支援コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
2.中途採用拡大コース
中途採用拡大コースの助成金は中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用の拡大を図る事業主に対して支給されます。
【主な受給要件】
- 中途採用計画を作成し、管轄の労働局に届け出る
- 中途採用計画期間中に2人以上の対象労働者の雇い入れや、中途採用率を20ポイント以上向上させるなど定められた取り組みを実施する
など
なお対象となる労働者は以下5つの条件をすべて満たす必要があります。
- 中途採用である
- 雇用保険の被保険者である
- 無期雇用である
- 過去1年間、同事業所で就労していない
- 過去1年間、同事業所の事業主と密接な関係のある事業所で雇用されていない
▼ 中途採用拡大コースの助成金
助成額 |
補足条件 |
|
中途採用率の拡大 |
50万円 |
ー |
45歳以上の中途採用率の拡大 |
100万円 |
・採用時45歳以上 ・中途採用率20ポイント以上拡大 ・うち45歳以上の労働者で10ポイント以上上昇 ・該当の45歳以上の労働者全員の賃金を前職時より5%以上上昇 |
中途採用拡大コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
3.UIJターンコース
UIJターンコースの助成金は東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対し、その採用活動に要した経費の一部を事業主に支給されます。
【主な受給要件】
- 事業所の所在地を管轄する労働局に採用活動に係る計画書を提出し、認定を受けている
- 計画書に定めた計画期間に募集パンフレットの作成や就職説明会など、要件に定められた採用活動を行っている
- 東京圏からの移住者※、かつ雇用保険の被保険者、継続雇用が確実であるなど定められた要件を満たす労働者を雇い入れる
など
※地方公共団体が実施する移住支援事業を利用したUIJターン者に限る
▼ UIJターンコースの助成金
助成率 |
上限 |
|
中小企業 |
1/2 |
100万円 |
中小企業以外 |
1/3 |
100万円 |
なお中小企業の基準は業種(産業)によって異なります。
UIJターンコースの詳細は下記サイトをご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は身体のハンディキャップや機会損失により、継続的な雇用や正規雇用されていない人材の採用を支援するものです。
以下、採用に使える5つのコースについて順に解説します。
- 特定就職困難コース
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
- 就職氷河期世代安定雇用実現コース
- 生活保護受給者等雇用開発コース
- 成長分野等人材確保・育成コース
概要と支給要件、支給額、支給期間
1.特定就職困難者コース
特定就職困難者コースの助成金は高年齢者や母子家庭の母、身体や知的障害者等の就職困難者を、ハローワーク等の紹介で継続雇用の労働者として雇い入れた事業主に支給されます。
【主な受給要件】
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介で雇い入れる
- 雇用保険の被保険者として雇い入れ、継続雇用が確実である
▼ 特定就職困難者コースの助成金
対象労働者 |
支給額 |
助成対象期間 |
支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外 |
60~240万円(50~100万円) |
1~3年(1~1.5年) |
30~40万円×2期(25~33万円×2期もしくは3期) |
短時間労働者 |
40~80万円(30万円) |
1~2年(1年) |
20万円×2期(15万円×2期) |
※()内は中小企業以外の事業主への支給額、期間です
支給額や助成対象期間、支給対象期ごとの支給額は対象労働者の置かれている環境や障害の度合いによって異なります。
特定就職困難者コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) |厚生労働省
2.発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの助成金は、ハローワーク等の紹介により発達障害者や難病患者を継続雇用の労働者として雇い入れる事業主に対して支給されます。
【主な支給要件】
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介で雇い入れる
- 雇用保険の被保険者として雇い入れ、継続して雇用する
▼発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの助成金
対象労働者 |
企業規模 |
支給額 |
助成対象期間 |
支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外 |
中小企業 |
120万円 |
2年間 |
30万円×4期 |
中小企業以外 |
50万円 |
1年間 |
25万円×2期 |
|
短時間労働者 |
中小企業 |
80万円 |
2年間 |
20万円×4期 |
中小企業以外 |
30万円 |
1年間 |
15万円×2期 |
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) |厚生労働省
3.就職氷河期世代安定雇用実現コース
就職氷河期世代安定雇用実現コースの助成金は、就職氷河期に正規雇用の機会を逃した人をハローワーク等の紹介で正規雇用労働者として雇い入れる事業主に支給されます。
【主な支給要件】
- 下記に当てはまる人を雇用すること
・1968年4月2日から1988年4月1日生まれ
・過去5年間に正規雇用労働者として雇用された期間の通算が1年以下
・過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
・安定した職業に就いておらず、就労に向けた支援を受けている
・正規雇用労働者としての雇用を望んでいる
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介で雇用する
- 正規雇用労働者として新たに雇用する
▼就職氷河期世代安定雇用実現コースの助成金
企業規模 |
支給額 |
助成対象期間 |
支給対象期ごとの支給額 |
大企業 |
50万円 |
1年 |
25万円×2期 |
中小企業 |
60万円 |
1年 |
30万円×2期 |
就職氷河期世代安定雇用実現コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)|厚生労働省
4.生活保護受給者等雇用開発コース
生活保護受給者等雇用開発コースの助成金は、ハローワークまたは地方公共団体において、通算して3カ月を超える支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者を、ハローワーク等の紹介で正規雇用労働者として雇い入れる事業主に支給されます。
【主な支給要件】
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介で雇い入れる
- 雇用保険の被保険者として雇い入れ、継続して雇用する
▼生活保護受給者等雇用開発コースの助成金
対象労働者 |
支給額 |
助成対象期間 |
支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外 |
60万円(50万円) |
1年(1年) |
30万円×2期(25万円×2期) |
短時間労働者 |
40万円(30万円) |
1年(1年) |
20万円×2期(15万円×2期) |
※()内は中小企業以外の事業主への支給額、期間です。
生活保護受給者等雇用開発コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース) |厚生労働省
5.成長分野等人材確保・育成コース
成長分野等人材確保・育成コースには「成長分野」と「人材育成」の2つがあります。
いずれも要件を満たす場合、上記「特定求職者雇用開発助成金」1から4の助成金より高額の助成金を受給できます。
(成長分野)
高年齢者や障害者等の就職困難者を成長分野の業務(デジタルや研究・技術の業務)に雇い入れ、雇用管理や能力開発に取り組む場合に高額な助成金を支給。
(人材育成)
未経験の就職困難者を対象に人材開発支援助成金による50時間以上の人材育成を行い、5%以上の賃上げを行った場合に高額な助成金を支給。
【主な支給要件】
- 対象労働者は対象となる各コースの支給要件を満たす(共通)
- ハローワーク等の紹介で雇い入れる(共通)
- 成長分野等の業務に従事させる(成長分野)
- 雇用管理改善または職業能力開発の取り組みを行う(成長分野)
- 未経験の職業に就くことを希望している者である(人材育成)
- 訓練後、訓練と関連した業務に従事させる(人材育成)
など
▼成長分野等人材確保・育成コースの助成金
対象労働者 |
支給額 |
助成対象期間 |
支給対象期ごとの支給額 |
|
短時間労働者以外 |
高年齢者(60歳以上) 母子家庭の母等 就職氷河期世代の者 生活保護受給者等 など |
90万円(75万円) |
1年(1年) |
45万円×2期(37.5万円×2期) |
身体・知的障害者 発達障害者 難治性疾患患者 |
180万円(75万円) |
2年(1年) |
45万円×4期(37.5万円×2期) |
|
重度障害者等 |
360万円(150万円) |
3年(1年6カ月) |
60万円×6期(50万円×3期) |
|
短時間労働者 |
高年齢者 母子家庭の母等 生活保護受給者等 など |
60万円(45万円) |
1年(1年) |
30万円×2期(22.5万円×2期) |
障害者 発達障害者 難治性疾患患者 |
120万円(45万円) |
2年(1年) |
30万円×4期(22.5万円×2期) |
※()内は中小企業以外の事業主への支給額、期間です。
成長分野等人材確保・育成コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース) |厚生労働省
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金には以下の3コースがあります。
- 一般トライアルコース
- 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
- 若年・女性建設労働者トライアルコース
1.一般トライアルコース
一般トライアルコースの助成金は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、無期雇用契約を前提にトライアル雇用する事業者に支給されます。求職者の早期就職を支援する目的として制定されました。
【主な支給要件】
- ハローワーク等の紹介で雇い入れる
- 原則3カ月のトライアル雇用をする
- 通常の労働者と同じ所定労働時間(30時間/週)である
- 定められた対象労働者の要件に該当する
・無期雇用の雇い入れを希望している
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等に求職申し込みしている
・安定した職に就いておらず学生でない
▼一般トライアルコースの助成金
支給額 |
助成対象期間 |
補足 |
4万円(5万円※) |
最長3カ月 |
対象期間の助成金は一括で支給される |
※対象労働者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合
一般トライアルコースの詳細は下記サイトをご覧ください。
2.障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
障害者トライアルコースは、就職が困難な障害者を一定期間雇用し適正を見極め、障害者の早期就職の実現を目指すものです。短時間トライアルコースの場合、週の所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、同期間中に20時間以上の労働時間を目指します。
対象の労働者を規定条件のもと雇い入れた事業者に支給されます。
【主な支給要件】
- ハローワーク等の紹介で雇い入れる
- 障害者トライアル雇用等の期間に雇用保険被保険者資格取得の届出を行う
- 3~12カ月の短時間トライアル雇用をする(短時間トライアルコースの場合)
- 以下の対象労働者を雇用する
・継続雇用を希望しており、障害者トライアル雇用制度の理解とトライアルでの雇い入れを希望している者(短時間トライアルコースも同じ)
・障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、本助成金コースの条件4つのいずれかに該当する者
・精神障害者または発達障害者である(短時間トライアルコースの場合)
など
▼障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの助成金
対象 |
支給額 |
助成対象期間 |
障害者トライアル雇用 |
月額最大4万円/人※ |
最長3カ月※ |
障害者短時間トライアルコース |
月額最大4万円/人 |
最長12カ月 |
※対象者が精神障害者の場合、月額最大8万円×3カ月+月額最大4万円×3カ月(最長6カ月)
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの詳細は下記サイトをご覧ください。
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース |厚生労働省
3.若年・女性建設労働者トライアルコース
若年・女性建設労働者トライアルコースとは、建設事業主を対象とした助成金のひとつです。建設事業主等が建設労働者の雇用環境の改善や、建設労働者の技能向上を図るための取り組みを行った際に支給されます。
【主な支給要件】
- 35歳未満の若年者や女性を一定期間トライアル雇用する
- 雇い入れした者を建設工事現場の作業に従事させる
- 中小の建設事業主である
- 雇用管理責任者の選任を行う
▼若年者・女性建設労働者の助成金
支給額 |
助成対象期間 |
4万円/人※ |
最大3カ月 |
※就労した日数等により減額となる場合もある
若年者・女性建設労働者の詳細は下記サイトをご覧ください。
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金には以下の2コースがあります。
- 地域雇用開発コース
- 沖縄若年層雇用促進コース
1.地域雇用開発コース
地域雇用開発コースの補助金は、雇用機会が特に不足している地域の事業主が事業所の設置や整備を行い、その地域に居住する求職者を雇い入れる場合に支給されます。
【主な支給要件】
(1回目の支給)
- 管轄の労働局長に計画書を提出する
- 計画期間内に設置・整備する
- 計画期間内にハローワークの紹介で被保険者の常時雇用を3人以上(創業の場合2人以上)雇い入れる
- 完了日の被保険者数が計画日の前日に比べて3人以上(創業の場合2人以上)増加している
など
(2回目・3回目の支給)
- 被保険者数の維持
- 対象労働者の維持
- 対象労働者の職場定着
▼地域雇用開発コースの助成金
設置・整備費用 |
対象労働者の増加数 |
|||
3(2)~4人 |
5~9人 |
10~19人 |
20人以上 |
|
300万円以上 |
50万円 |
80万円 |
150万円 |
300万円 |
1,000万円以上 |
60万円 |
100万円 |
200万円 |
400万円 |
3,000万円以上 |
90万円 |
150万円 |
300万円 |
600万円 |
5,000万円以上 |
120万円 |
200万円 |
400万円 |
800万円 |
※()は創業の場合
助成金の額は設置設備費用や対象労働者数に応じて、上記の表をもとに1年ごとに最大3回支給されます。
さらに中小企業事業主の場合、1回目の支給額は上記金額の1.5倍、中小企業の事業主かつ創業者の場合は2倍になります。
地域雇用開発コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
2.沖縄若年者雇用促進コース
沖縄若年者雇用促進コースの助成金は沖縄県内において、事業所の設置・設備に伴い、沖縄県内に居住する35歳未満の若年者を雇用した事業者に支給されます。
【主な支給要件】
- 計画書の提出
- 指定する条件を満たした施設設置等
- 対象労働者の雇い入れ(沖縄県内に居住する35歳未満、常時雇用の被保険者であるなど)
- 沖縄県内居住の新規学卒者の雇い入れ(中小企業事業主の場合)
- 事業所における労働者数の増加
など
▼沖縄若年者雇用促進コースの助成金
沖縄若年者雇用促進コースの助成金は、期間中に対象者に支払った賃金額に下記の割合を乗じた額が支給されます。
対象者の種別 |
中小企業以外 |
中小企業 |
対象労働者 |
1/4 |
1/3 |
沖縄新規学卒者 |
ー |
1/3 |
なお対象者1人につき、年間120万円を上限に定めています。
沖縄若年者雇用促進コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
通年雇用助成金
通年雇用助成金は、北海道や東北地方などの積雪または寒冷の度が高い地域の事業主が、冬季期間に離職を余儀なくされる季節労働者を通年雇用した場合に支給されます。
【主な支給要件】
- 季節労働者を冬の期間も継続して同一の事業所で就業させた場合
- 季節労働者を季節的業務以外の業務で継続して雇用した場合
- 季節労働者に職業訓練を実施した場合
など
▼通年雇用助成金
通年雇用助成金の支給額は雇用形態によって異なります。対象者1人につき支払った賃金額に下記の表の割合を乗じた額が支給されます。
雇用形態 |
支給額 |
支給回数 |
助成対象期間 |
事業所内(外)就業 |
2/3もしくは1/2 |
最大3回(1年ごと) |
ー |
休業を実施 |
1/2もしくは1/3 |
最大2回 |
1月から4月 |
業務転換を実施 |
1/3 |
ー |
業務転換の日から6カ月 |
職業訓練を実施 |
1/2もしくは2/3 |
ー |
ー |
通年雇用助成金の詳細は下記サイトをご覧ください。
キャリアアップ助成金
採用で使えるキャリアアップ助成金は以下の2つです。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
1.正社員化コース
正社員化コースの助成金は有期雇用労働者等を正社員化した場合に支給されます。
▼正社員化コースの助成金
正社員化前の雇用形態 |
||
企業規模 |
有期雇用労働者 |
無期雇用労働者 |
中小企業 |
80万円(40万円×2期) |
40万円(20万円×2期) |
大企業 |
60万円(30万円×2期) |
30万円(15万円×2期) |
なお派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合や、対象者が母子(父子)家庭の母(父)の場合などには上記金額に加算額が加算さて支給されます。
正社員化コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
2.障害者正社員化コース
障害者正社員化コースは障害者の雇用促進と職場定着を図るために実施されるものです。
【主な支給要件】
- 有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換した場合
- 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換した場合
▼障害者正社員化コースの助成金
支給対象者 |
措置内容 |
支給総額/人 |
助成対象期間 |
支給対象期ごとの支給額 |
重度身体障害者 重度知的障害者 精神障害者 |
有期雇用から正規雇用へ転換 |
120万円(90万円) |
1年(1年) |
60万円×2期(45万円×2期) |
有期雇用から無期雇用へ転換 |
60万円(45万円) |
30万円×2期(22.5万円×2期) |
||
無期雇用から正規雇用へ転換 |
60万円(45万円) |
30万円×2期(22.5万円×2期) |
||
重度以外の身体障害者 重度以外の知的障害者 発達障害者 難病患者 高次脳機能障害と診断された者 |
有期雇用から正規雇用へ転換 |
90万円(67.5万円) |
45万円×2期(33.5万円×2期) |
|
有期雇用から無期雇用へ転換 |
45万円(33万円) |
22.5万円×2期(16.5万円×2期) |
||
無期雇用から正規雇用へ転換 |
45万円(33万円) |
22.5万円×2期(16.5万円×2期) |
※()内は中小企業以外の事業主への支給額、期間です。
障害者正社員化コースの詳細は下記サイトをご覧ください。
助成金の対象となり得る採用力強化策
採用に直接関連する助成金でなくても助成金を使って労働環境を整えることで、自社の魅力が高まり採用力強化につながります。
現在行っている、もしくはこれから行おうとしている採用施策が助成金の対象となる場合もあります。
いくつかの事例をあげながら解説するので、参考にしてください。
人事評価制度の整備
企業の採用がメンバーシップ型の雇用からジョブ型雇用に変わるのと並行して、人事評価の対象も個人の能力発揮や仕事における成果へと変わりつつあります。そしてその根幹となる、人事評価制度の整備が早急な課題として挙げられます。
人事評価制度の整備は「雇用管理制度助成コース」の対象となり得るため、優秀な人材確保のためにも活用を推奨します。
厚生労働省では職業能力を適正に評価する、公正で透明性の高い仕組みとして「職業能力評価基準」の策定がされています。
事務系職種のほか、製造業や建設業、美容業含むサービス業など50業種248職種の基準が公開されており、自社の業務にあった基準から利用目的に合わせたカスタマイズが可能です。
バイクの購入から売却までをトータルプロデュースする流通サービス業「株式会社バイク王&カンパニー」では職業能力評価基準を活用し、人事評価制度や管理職の人事考課制度の改定などを行いました。
改定によって賃金が低下する社員には内容を理解してもらうため、個別交渉を行い緩和措置の導入で同意を得られるよう工夫したといいます。
▼関連リンク
また人事評価制度の整備は、低賃金長時間労働のイメージが強い美容業界でも進んでいます。
iiiでは、努力している人が報われる会社にしたい気持ちから、自己評価と他者評価を組み合わせた評価制度を作りました。
僕は、ちょっとしたズレが人間関係を悪化させ、組織構造を乱すと考えています。たとえば、評価項目にある「誠実な対応」は、指摘されたことに対して素直に「ありがとう」と「ごめんなさい」がいえるのか、態度に表せるのか、当たり前の礼儀ができるかを可視化することができるんです。
引用:モアリジョブ|iii代表取締役 寺村優太さん
研修制度の充実化
研修制度の充実は「雇用管理制度助成コース」や「人への投資促進コース」「職業適応援助者助成金」などさまざまな助成金の対象となり得ます。
交通誘導やイベント警備業務などを行う「株式会社セキュリティ庄内」では新規の人材確保のため、従業員の働きやすい環境作りに取り組みました。
有給休暇を取得しやすいよう、必要に応じて代替要員を手配するなど労働環境を整えたほか、安定的な受注のために研修や教育の充実と資格取得支援を導入しました。
研修で警備レベルを上げたことにより、発注元の信頼に安定的な受注を実現し、それに伴って従業員の継続的な賃上げにつなげられているそうです。
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参考:地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集|厚生労働省
メンター制度の導入
メンター制度の導入は「雇用管理制度助成コース」の対象となり得ます。
メンターとは自身が仕事やキャリアの手本となり、新入社員に助言や指導を行うなど成長や精神的なサポートをする人を指します。
業務委託型の美容室やマッサージ店を運営する「株式会社 トシックスホールディングス」は、美容師経験のない社長が現場の美容師の意見を柔軟に取り入れることで、スタッフの高い満足度を実現している企業です。
キャリア形成や成長のサポートのためメンター制度を導入し、定期的な面談や技術講習、経営にまつわる勉強会の実施で、キャリアアップを目指す人にも柔軟に対応しています。
▼内部リンク
参考:モアリジョブ|株式会社トシックスホールディングス 副社長 登坂さおりさん
自社にはメンターに適した特別に優秀な人材はいないと感じる人もいるかもしれません。ただメンターは指導が上手でなくても構わないのです。
メンティー(サポートを受ける人)が気負わず頼れる人や、メンティーにはない見識や知識をもつ人をメンターに指名し、導入を進めましょう。指導を通じてメンター自身が成長できる点も、メンター制度の魅力です。
テレワーク環境の整備
テレワーク環境の整備は「テレワークコース」の補助金対象となり得ます。
厚生労働省の調査によるとテレワークを利用した従業員のうち半数以上が「家族と過ごす時間」が増えたと回答しています。
テレワークには「業務に集中できる」「タイムマネジメントを意識する」などのメリットがあったとの回答もあがっています。
通勤時間の削減で心身の負担が軽減されるため、育児中や介護中であっても離職せずに能力が発揮できるのは、従業員だけでなく企業にとっても大きなメリットといえるでしょう。
学術研究や専門・技術サービス業の「株式会社日建設計総合研究所」では、裁量労働型社員を対象にスタートしたテレワークを、2015年7月から標準型社員や契約社員にも拡大しました。
また作業場所を自宅と限定するのではなく、コワーキングスペースも選択可能に変更するなど柔軟な対応を行っています。
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参考:テレワーク活用の好事例集|厚生労働省
上司が疑心暗鬼になると、部下がテレワークを取得しにくくなります。テレワーク中の過剰な監視は控え、信頼関係を構築し在宅勤務の普及に努めましょう。
まとめ
本文を総括すると次のとおりです。
- 助成金を受給するには雇用保険加入など、定められた条件を満たす必要がある
- 一部ハローワーク経由での採用が条件となる助成金がある
- 助成金額は企業の規模や採用する労働者の能力・環境によって異なる
- 雇用形態の変更や雇用継続のための労働環境整備など、採用以外でも支給される助成金がある

- 執筆者情報
- 田中 久美(Tanaka Kumi)