人手不足の傾向にある美容師業界では、スタッフがすぐに辞めてしまうと、経営に大きな負担になります。
そのため、美容師が辞める本当の理由を理解して、正しい対策を講じることが大切です。
客観的なデータをもとに、美容師が辞める理由や離職を防ぐために知っておくべき要因について解説します。
美容師が辞める理由とは?転職理由データから解説
美容師が仕事を辞める際は、離職の理由についてなかなか本音を語らないため、正確に把握するのが難しいものです。転職理由に関する客観的データから、仕事を辞める本当の理由を把握しましょう。
美容師の転職理由データ
スタッフがすぐに辞める状況を打開するためには、客観的なデータをもとに辞める要因を分析することが大切です。
その際に役立つデータが、転職理由を集計したアンケートの結果です。
たとえば、株式会社リクルートや株式会社イーグラント・コーポレーションが、現役美容師に対して転職理由のアンケートを実施しているので、それを参考にしてみましょう。
引用:美容師さんのためのお役立ち知識|株式会社イーグラント・コーポレーション
中盤以降の章では、以上のデータをもとに美容師が職場を辞める要因を網羅的に解説します。スタッフが辞める要因に、自社の状況が当てはまらないか確認してみてください。
約半分の退職者は本音を話さない
退職を申し出たスタッフが表面上で話していることを鵜呑みにせず、本音を理解しようと努めなければ、次々に出てくる退職者を減らすことは難しいでしょう。
株式会社エンが行った調査 の結果を見ても、退職者の約半分は本音を話さないことがわかります。
さらに 同社が行った別の調査 によると、退職の建前では「仕事の領域を広げたい」が最も多かったのに対して、本音は「報酬をあげたい」が最多となりました。
他の結果を見ても、建前と本音には大きな違いがあることがわかります。
このように仕事を辞めるスタッフは本音を語らない場合も多いため、客観的なデータをもとに退職の要因を分析することが大切です。
求人内容と相違を無くす
すぐに辞めるスタッフを減らそうとした場合、求人内容と実際に働いた場合の労働条件を合わせることも大切です。
Biz Hitsが行ったアンケート調査 によると、入社後にすぐに転職した理由として「求人内容との相違」が2番目に多い結果となりました。
求人内容と実際に働いた場合の労働条件が異なると、スタッフが企業に不信感を抱いてしまいます。その結果、仕事を続ける意欲が削がれて、スタッフがすぐに辞めてしまうと考えられます。
すぐに辞めるスタッフを減らすためにまずやるべきこと
スタッフがすぐに辞めてしまわないように対策をする際には、客観的に判断をしたり、実際にスタッフと話したりすることが大切です。
客観的に判断する
退職の理由を客観的に判断するためには、 厚生労働省が発表しているストレスチェックアンケート をもとに、スタッフに匿名でアンケートを行うのもひとつの手段です。
ストレスが原因で退職をするスタッフは、退職の理由について本音を語らずに、なんらかの前向きな建前を伝える傾向にあります。
引用: 【退職理由の8割はストレス】会社に前向きな退職理由を伝えた人でも、7割前後は実はストレスが原因で退職していた|株式会社マイシェルバ(PR TIMES)
そのため実施したストレスチェックアンケートをもとに、ストレスの要因を分析して対策を施すと、すぐに辞めるスタッフを減らせる可能性があります。
または、 働き方・休み方改善ポータルサイトの「企業向け自己診断」 を行って、労働時間や休暇が適切に設定されているのかを確認するのもおすすめです。
実際にスタッフと話す
実際にスタッフと話して、本音を聞き出そうと努めるのもおすすめです。職場環境を一緒に改善したい姿勢を示しつつ、スタッフの身になって現状を変えていこうと努めると、本音に近い意見を聞き出せる可能性があります。
スタッフから職場に対する不満や希望についての本音を聞き出せたら、オーナーや経営者自身が対策を考えて、スタッフに伝えるようにしましょう。
その際に職場改善をスタッフに丸投げしてしまうと、さらに不信感が募る可能性があるので注意してください。
スタッフと一緒に改善することを示しながら、対立の構図を作らないようにすることが大切です。そのためにも、まずはスタッフが美容室を辞める要因について見ていきましょう。以降では、要因を6つに分けて解説します。
要因1:給与条件
先述したデータを確認するとわかるように、退職の本音は「報酬を上げたい」が最も多かったです。そのため離職を防ぐには、給与条件に対する不満をしっかりと把握しておくことが大切です。
リジョブの調べ をもとにデータを示しながら、給与条件に対する具体的な不満を紹介します。
相場と合っていない
美容師の給与が相場よりも低いと、仕事を辞めたくなると考えられます。美容師の給与で最も多いのは、月16~20万円です。ただし勤務日数・時間が少ない方も含まれており、フルタイムのみの場合は相場がもっと上がるため、その相場を下回らないように注意しましょう。
エリア別に給与を分析すると、さらに詳しい相場がわかります。エリア別のデータについては、次のページから無料ダウンロードできますので、ぜひご利用ください。
〜求人給与相場が分かる〜美容・ヘルスケア業界業種×エリア別 平均給与データ
給与が相場を下回ると、美容師が転職サイトを使って給与条件で検索した際に、自社の求人票が表示されなくなります。比較すらしてもらえなくなるので、少なくとも相場を上回る給与を設定した方がよいでしょう。
成果・能力に見合っていない
給与条件に不満がある理由として、
「責任やポジションに⾒合わないから」
「仕事の成果がきちんと反映されていないから」
「⾃分の能⼒が評価されていないから」
などの成果・能力に見合っていないという意見があります。
成果や責任、能力に見合った給与体系にしたい場合は、給与に対する評価システムを見直すことで対応できます。
スタッフの求める生活水準を満たしたり、労働時間と見合う金額まで給与を上げたりすることが難しい場合は、評価システムを見直すのもひとつの手段です。
要因2:働き方
美容師業界には労働時間が長い、休みが少ないといった業界全体の働き方に関する課題があります。辞めるスタッフを減らすためにも、労働時間や休暇についての対策は不可欠といえるでしょう。
労働時間が長い
とくにアシスタントスタッフが、労働時間の長さについての不満を抱えることが多いようです。
アシスタント時代は、朝8時にサロンに着いて雑用を済ませ、11時から営業開始。20時に営業は終わるけど、そこからマネキンやカットモデルなどで練習をしていた。サロンを出るのは22~23時が多かったかな。
引用: Yahoo!ニュース
さらに 日本経済新聞に掲載された美容師への取材記事 によると、勤務時間が長い割に収入が上がらない場合も、不満を抱える一因になります。
一方で労働時間を改善することで、出産後の離職を考えるスタッフの退職を防げます。
ママさんに対しては、「オーナーと相談しながら出勤日数、働く時間を自分たちで決めて下さい」という風に、以前からママさん制度が充実していたんですね。自分がパパになってから話が通じやすかったし、急遽の早退や、子どもの行事で遅れて出勤する場合などに理解あるお店だったんです。
引用: モアリジョブ
出勤時間を自由にするのも、スタッフの負担軽減につながり離職予防になります。
一定水準まで売り上げを伸ばしたスタッフさんは自由出勤、自由シフトのフレックス制になります。前日まで予約が入らなければ休んでもいいし、早く仕事が終わったら定時までいなくてもいい。空いた時間は家族と過ごす時間を大切にしてください、というスタンスなんです。
引用: モアリジョブ
休みが少ない
休みが少ないと、十分な休養を取ることができずスタッフの疲労回復や心身のリフレッシュが不十分になります。
さらに昨今の労働環境のトレンドに、休日を増やそうという流れがあります。
NHKニュース でも、2025年4月から国家公務員にも週休3日が導入されることが報道されました。これは、国家公務員の人材不足解消を目的に打ち出された施策です。
世間では休日を増やす傾向にあるなか、美容師業界が週休1日のままでは、ますます人手不足が悪化する可能性があるため注意が必要です。週休1日の美容室が多い傾向は、ハローワークの求人票からも伺えます。
実際にハローワークで週休2日制の条件で美容室を検索したところ、1万1284件中5496件がヒットしました。(2023年9月15日時点)
つまりハローワーク内では週休2日制を採用している美容室が、半数にも満たないことになります。しかし弊社が運営するリジョブの場合、完全週休2日制を採用する美容室が多くみられるため、今後はリジョブの美容室で見られるような傾向が、広がりを見せることが期待されます。
また子どもを抱える世代には、育休や産休制度のある美容室は魅力的です。余裕があれば、長期休暇制度の導入を検討するのもおすすめです。
理解のあるサロンを探すことが重要。昔に比べると産休や育休の制度が整っているサロンが増えていると思うので、自分にあったお店を探せば続けられるはずです。
引用: モアリジョブ
またインスピレーションを大切にする美容師にとって、休日の確保は仕事のパフォーマンス向上にもつながります。
休日に外出したときに見つけたキレイな物を、デザインの参考用に写真におさめているんです。デザインされたものだけに注目するのではなく、街中の色々なところに目を向けるようにしています
引用: モアリジョブ
休みの時間がスタッフの感性を育てると考えると、休日の増加は経営にもプラスに働くといえます。
仕事とプライベートの両立が難しい
働き方に柔軟性がないと、仕事とプライベートの両立が難しくなります。
仕事とプライベートのバランスは、年齢とともに変化するものです。
たとえば独身者の多い若手の場合は、仕事に使う時間を確保しやすく、遅い営業時間でも頑張れます。
しかし結婚や育児などを経て、自分の時間を家族のために使うようになると、確保すべきプライベート時間が長くなったり、働く時間に柔軟性が求められたりします。
そのため子どもを持つ世代であれば、子どもが発熱したときなどは、すぐに休ませてくれる店舗の方に人材が流れる可能性があります。
スタッフの働き方に対する理解を示すお客さんが多かったり、代わりのスタッフが対応できる環境が整っていたりすると、小さい子どもがいるスタッフも働きやすくなるでしょう。
子どもが幼いと急な発熱などで店を休まざるを得ない日もあります。お客さまの中にはお子さんやお孫さんがいらっしゃる方も多く、ありがたいことに私たちの状況を理解してくださっています。万が一、休んでしまったときには別のスタッフが代わりに対応しますが、子どもの事情であれば「よくあること」と、受け止めてくださるので、感謝しています。引用: モアリジョブ
また家族との時間を大切にしたいスタッフであれば、17時や18時くらいに退勤できる職場が好まれます。
子育てをするスタイリストのスケジュール
引用: モアリジョブ
要因3:仕事内容
厚生労働省 によると、仕事の負荷要因について労働時間以外をあげると、次の4つに分けられます。
- 「勤務時間の不規則性」
- 「事業場外における移動を伴う業務」
- 「心理的負荷を伴う業務」
- 「身体的負荷を伴う業務」
ここでは、以上のなかでも心理的負荷を伴う業務と、身体的負荷を伴う業務について解説します。
業務負荷が高い
業務負荷が高いことで発生する負担として、主に心理的負担が考えられます。
たとえば美容師の場合、ノルマ達成がきついとストレスを抱えてしまい心理的にも大きな負担を抱えてしまいます。
また施術以外の商品を販売するノルマ(店販)を課すと、それも美容師の心理的負担になるので注意が必要です。
JOBOONが行った調査 によると、96.7%の美容師が店販で苦労したり、つらかったりした経験があると答えています。
具体的には、次のような声が聞かれました。
アシスタント3年目の美容師です。店販のノルマがあるため商品を売るしかないのですが、自分の担当でないお客さんにゴリ押しでものを買ってもらうのが辛いです。自分のせいで失客してしまうのでは?と最近いつも悩んでいます。
引用: JABOON
店販でお客さんに商品の話をするのが苦手すぎて、対応中もそのことばかり頭をよぎってしまう。ふつうのお客さんとの会話が上の空になったり、適当な相槌でごまかしてしまうことがあり辛かった。
引用: JABOON
以前、所属していたサロンでは、毎月決められたノルマ分を売らないと、商品の購入を強要されていた(商品を実際に使って、良さを体験する必要があるからとのこと)。給与は当時手取り13万ほどで買取が辛かったが、お客さんに押し売りみたいになるのも嫌で板挟みだった。
引用: JABOON
以上のように店販が苦手な美容師も多いので、ノルマを課す際には慎重になったほうがよいでしょう。
体調を崩してしまう
身体的な負担としては、薬剤での手荒れや立ち仕事による腰痛、ハサミの使い過ぎによる手首の腱鞘炎などが考えられます。
東北労災病院が、仕事上で手荒れになった患者の職業を調べた ところ、理・美容師が最も多い結果となりました。
手荒れを防ぐためには、パーマやカラーリングで薬剤を扱う際に、ゴム手袋の着用を徹底したり、薬剤に関する知識をスタッフに共有して予防意識を高めたりすることなどが考えられます。
腰痛については、継続的な立ち仕事で腰に負担がかかる点や、シャンプーで腰を曲げる前傾姿勢などが原因として考えられます。
スタッフに適度に休憩を与えることで、腰への疲労を軽減できるようにするとよいでしょう。
また美容師が使うハサミは、親指だけを動かす構造になっていて、一般的なハサミよりも手首に負担がかかりやすい特徴があります。
若手スタッフに手首を痛めないためのハサミの使い方や、ケアの仕方などをアドバイスすると、身体的な健康上の問題を予防できます。
要因4:サロン・会社との方向性
サロンや会社の方向性の違いには、スタイルや感性、および会社・事業の方向性、社風・組織文化・雰囲気が合わないことなどが挙げられます。
スタイルや感性が合わない
スタッフのスタイルや感性がサロンと合わないと、職場にいづらくなって美容室を離れやすくなります。
美容室のスタイルや感性は、既存の客層やお客さんの好みにも影響を与える事柄なので、簡単には変えられないでしょう。
しかし、もしスタッフの自由にして良い土壌が整っているのであれば、それを伝えてスタッフの自主性を重んじると、スタッフ離れを抑えられます。
会社・事業の方向性と合わない
事業の方向性について会社の意見とスタッフの考えにズレがあると、スタッフがストレスを抱えて仕事を辞めやすくなります。
たとえば、
- 会社が売上げを優先して、スタッフがそれについていけない
- プライベートを重視したいのに技術力の向上ばかりを求められる
- 技術力を高めたいのに、スタッフ教育が充実していない
- 安定した生活を送りたいのに、経営状況に不安がある
など、会社が描く事業の方向性や現状に対して、スタッフが思っていたのとは異なる場合に、離職しやすくなります。
とくに経営状況に対する不安は、スタッフの生活に直結する問題なので、大きな離職要因になりえます。
経営状況に不安がある場合は、今後の展望をスタッフに伝えて不安を取り除いてあげましょう。
社風・組織文化・雰囲気が合わない
社風とは、企業が大切にする価値観や信念を指します。また組織文化とは、組織のメンバー間で共有される行動原理や考え方です。
これらは、雰囲気と共になかなか言葉にして表しづらいものです。そのため、これらが合わないと、「なんか思っていたのとは違う」という不満をスタッフに抱かせてしまうことがあります。
たとえばプライベートを大切にしたい美容師が、イベントや飲み会が好きなスタッフの多い美容室で働くと、組織文化や雰囲気が肌に合わず浮いた存在になるかもしれません。
スタッフ採用の前に体験入社などを実施して、社風や組織文化、雰囲気を体験してもらい、入社前に合うのかどうかを確認してもらうのもひとつの方法です。
体験入社を行うことにより、採用のミスマッチを防ぎ、エンゲージメントを高め、離職率を低くできます。企業と求職者の双方がマッチングを確かめた上で採用に至るからです。
引用: 体験入社
入社を検討している段階で、1日の実務を行っていただくことによって、社風や社内文化、開発体制などを体験してもらい、入社後のミスマッチをなくすことが目的です。そして、受け入れ側としてもミスマッチを事前に防ぐために実施しています。
引用: 体験入社
要因5:キャリアアップ
キャリアアップはスタッフが仕事を頑張る動機付けになるため、離職を防ぐためにも確認しておくべき要因です。
現在はどの業界も教育制度が整っており、企業が主体的にスタッフのキャリアアップを支援する時代になりました。
美容業界もスキルは自分で身に付けるものという固定観念から脱却して、教育制度を整えていくことが大切です。
研修制度が整っていない
ホットペッパービューティーの調査 によると、半数以上の美容師が研修を受けていないことがわかります。
さらに3割以上の美容室には、研修制度がないこともわかりました。研修制度がないとスタッフのモチベーションが低下したり、スキル不足で売上げが低下したりするリスクがあります。
研修制度を充実させることで、モチベーション低下によるスタッフ離れを防ぎ、美容室の質の底上げを図りましょう。
私たちの育成法は“ダブル教育”という方法をとっています。まずは通常のベーシックの教育カリキュラムがあって、このカリキュラムを消化していくとジュニアスタイリストになれます。
でもそれはベーシックにすぎないので、これと同時進行で、パーマのスペシャリスト、カラーのスペシャリスト、カットのスペシャリスト、着付けのスペシャリスト、メイクのスペシャリストになるためのカリキュラムもこなしてもらいます。
ベーシックとスペシャリストの2つのカリキュラムをこなしてもらうから、ダブル教育、というわけです
引用: モアリジョブ
基本的には週2回、平日と土曜日にアシスタントとスタイリストの合同レッスンを行います。会社として、技術・接客・人間性・営業から成る基本カリキュラムがあります。
これを各店舗が、自分達の求める人材に特化したカリキュラムにカスタマイズ。
その上で、個人へのバランス調整を行います。例えば“カットの技術は高いが接客は苦手”なスタッフは、技術カリキュラムの項目を一旦減らして接客の勉強を増やす、といった感じですね
引用: モアリジョブ
育成する人がいない
美容室でスタッフ育成を行う人がいない場合は、OJTの強化をおすすめします。OJTとは、上司や先輩が一般スタッフに技術や接客の指導を行うことです。
ホットペッパービューティーの調査によると、美容室におけるOJTの実施率は50%前後を推移している状態です。(観察による知識や技術の習得はOJTに含めず)
さらに3人に1人が、新しい知識や技術を習得する機会がまったくないとも回答しており、OJTを実施する余地はまだまだ残されているといえます。
美容室でOJTを実施すると、仕事中に教育ができるので、遅くまでトレーニングする必要がなく、人材教育に費やす時間的負担を軽減できます。さらに実践に則した技術指導ができるため、スタッフの成長スピードの加速が期待できます。
1年目くらいのスタッフの負荷はだいぶ減ったのではないかと思いますね。業務を終えてからの練習と、朝からきっちり学ぶ練習では、身につき方、体の負担が全然違いますし、自分の時間も増えるのではないかと。
引用: モアリジョブ
毎日毎日アシスタントに入ってもらうようになると、結果的にそれがアシスタントのOJT(※日常業務を通じた従業員教育のこと)にもなって、入社半年のアシスタントでもバレイヤージュをできるようになるなど、店舗全体の技術力がかなりアップしたんです。
引用: モアリジョブ
成長に必要な経験が積めない
アシスタント時代は雑用や練習ばかりで、実務経験を積めないという悩みを抱える若手スタッフもいます。
僕が大きく変わったのは、25歳でフリーランスになったときで、アシスタント時代はとくに練習が大っ嫌いでしたね。ウィッグに向かって練習することになんの意味があるんだと思って、先輩から「2時間練習しろ」と言われても、先輩が帰ったのを見計らって、こっそり帰ってしまうような人間でした
(中略)「お客さまのために」を意識するようになったら、練習がまったく苦ではなくなりましたね。今では練習をしないと不安になるくらいです(笑)。
引用: モアリジョブ
たくさんのお客さまのカットができるようになりたいという方は、すぐに技術者になるために「カリキュラムが速く進むところが良い」「雑用ばかりで僕がやりたかったことはコレじゃない」といった思いがありがち
引用: モアリジョブ
若年層は雑用に対してネガティブな印象を持ちがちですが、雑用には仕事に対する基礎能力を身に付けるための業務が凝縮されているともいえます。
美容師であれば、雑用をするなかでさまざまな人と接してコミュニケーション力を鍛えたり、シャンプーを通していろいろな人の頭に触れたりできるため、それが将来的に接客やカットに活きてきます。
雑用や練習が多いことに不満があるスタッフには、その大切さを伝えるのも効果的な人材教育です。
要因6:人間関係
「女の転職タイプ」 によると、人間関係の不満については、上司と先輩、同僚の順に多い結果でした。
気づかないうちに相手に不快な思いをさせたり、見えないところでスタッフ同士の対立が生じたりするケースもあります。
人間関係の悪化もスタッフが辞める大きな要因となるので、どのようなことが考えられるかしっかりチェックしておきましょう。
オーナー・上司・先輩と合わない
龍谷大学の企業の上司・部下に対する調査 によると、若手をはじめとした一般職クラスのスタッフは、オーナーや上司、先輩などの管理職クラスのスタッフに対して、会話のテンポやノリの違いなどによる話しづらさを感じています。
また仕事とプライベートの境目が曖昧な上司への違和感を抱いており、親睦会や飲み会などの必要性に疑問を持っているケースも多いです。
JOBOONが美容師に対して行ったアンケート では、次のような人間関係の悩みが寄せられています。
- 「思っていることがうまく伝わらない・伝えるタイミングを掴めない」
- 「先輩に言いたいことがあるけど言えない」
- 「上下間で視点が異なり対立気味になっているとき」
- 「パワハラ。きつく言われて強制される」
同僚・部下と合わない
また エン・ジャパンの調査 によると、同僚や部下に対して「不平不満が多い」「自分の意見や考えに固執する」「人柄が信頼できない」などの悪い印象を持つことで、人間関係が悪化していることがわかりました。
JOBOONが美容師に対して行ったアンケート では、次のような同僚や部下に対する不満が寄せられています。
- 「オーナー不在時のみ周囲につらく当たるスタッフがいる」
- 「ヘルプ時の態度が悪い」
- 「価値観の違い」
美容室内で起こる人間関係の問題を解消するためには、「前向きなあきらめ」がスタッフに根付くように研修を行うのも有効な手段のひとつです。「前向きなあきらめ」とは「これまで生きてきた環境が違うのだから、考え方や価値観がお互いに違うのは当然だ」という意識を持てる状態をさします。
前向きなあきらめのスタンスで、相手を肯定できるようなスタッフを育てると、お互いを好意的に捉えやすくなります。その結果、意見の対立や衝突が生じにくくなるので、人間関係の改善が期待できるのです。
まとめ
- 退職するスタッフは本音を話さないことが多いので、客観的なデータをもとに退職の要因を分析することが大切
- 対策をする場合は、客観的に判断したり、実際にスタッフと話して一緒に改善したりする姿勢を示すことが重要
- 給与条件、働き方、仕事内容、会社との方向性、キャリアアップ、人間関係などの要因に対して対策をすると効果的
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部