開業を検討している方にとって、起業の失敗は最も大きな懸念材料でしょう。中小企業庁の調査によると、2023年度の開業率は3.9%、廃業率は3.9%と同水準で推移しており、起業にはリスクが伴うことは事実です。
しかし、同庁の調査によると業後5年の企業生存率は80.7%となっており、適切な準備により成功の可能性を高められるのもまた事実です。
そこで本記事では、起業でよくある7つの失敗要因とその対策、失敗する人の特徴、実際の起業家の体験談を通じて、開業の失敗を防ぐ具体的な方法を解説します。
起業は失敗しやすい?上手くいく確率とは
中小企業庁の調査によると、2023年度の開業率は3.9%、廃業率も3.9%となっており、開業率と廃業率が同水準で推移しています。つまり、新しく事業を始める人と事業をやめる人の数が、ほぼ同じということです。
▼開業率(青)と廃業率(オレンジ)の推移
一方で、同庁の「中小企業の起業・創業に関する調査」では「創業後5年を経過した日本における起業後の企業生存率は80.7%」というデータも示されています。
業種別に見ると「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」は開業率・廃業率ともに高く事業所の入れ替わりが盛んです。一方で、「運輸業、郵便業」などは開業率・廃業率ともに低く安定的な傾向があります。
したがって、起業には一定のリスクが伴いますが、適切な準備と継続的な取り組みによって成功の可能性を高めることは十分に可能であるといえます。
「起業の失敗=終わり」ではない
起業は失敗したからといって、そこで終わりではありません。
近畿経済産業局の調査によると、スタートアップ企業の84.8%が一般的に「失敗」を連想させるような経験をしています。しかし、注目すべき点は再チャレンジ経験のある起業家の90.0%が「再チャレンジして良かった」と回答している点です。
この調査では、再チャレンジの内容として「事業転換」が55.8%と最も多く、次いで「再起業」32.6%、「事業再生」30.2%となっています。つまり、失敗を経験した多くの起業家が早い段階で事業を見直し、新たな形で挑戦を続けているのです。
再チャレンジに成功した理由として最も多かった回答は「一貫した信念を持った取り組み」でした。次いで「前の会社の経験が活きた」「従業員の意識改革・チームワークの向上」「前の会社の取引先との繋がり」が続いています。つまり、起業経験そのものがアドバンテージとなり、次の成功につながっているケースは非常に多いのです。
したがって、起業の失敗は決して「終わり」を意味するものではなく、むしろ次の成功への貴重な経験として捉えられます。
起業のありがちな失敗7選と対策
起業・開業でよくある失敗は次の通りです。
- 資金繰りができない
- 採用活動の失敗
- マーケティング知識の欠如
- コンプライアンス違反
- 立ち上げメンバーとの不仲
- 社会情勢の軽視
- 競合調査の不足
以下にて上記の失敗例と対策を紹介します。
1.資金繰りができない
開業時に多くの起業家が直面するのが資金不足の問題です。
具体的には、事業開始時点で十分な運転資金を準備できていないケースや、売上は計上されているものの入金のタイミングが遅れてキャッシュフローが悪化するケースなどがあります。
「Sui」代表の冬樹さんが資金繰りに苦しんだ経験を語ってくれました。
僕を含め最後に残っていたスタッフにも未払い分の給料がかなりありましたが、もう諦めるしかなかったですね。初期費用にかなり資金が必要だったので、銀行に融資してもらいました。融資してもらうには、僕という人間をどれだけ信頼してもらえるかがカギになります。美容師という仕事を続けるうえで、信頼関係が何よりも大切。銀行との関係も、実は数字だけではなく融資の担当者と僕の間に信頼関係がないと成り立たないのだと実感しました。
引用元:モアリジョブ|「Sui」代表 冬木慎一さん
対策としては、事業計画を綿密に立て、資金管理を適切に把握することが挙げられます。
起業にあたって初期費用や運転資金がどれくらい必要になるかを計算し、余裕をもって資金を確保しておくとよいでしょう。
2.採用活動の失敗
ジャフコグループの調査によると、全体の25%が「採用」で失敗したと報告されています。
採用でよくある失敗パターンは次の通りです。
- スキル不足の人材を採用してしまう
- 企業文化にマッチしない人材を選んでしまう
- 採用コストをかけすぎて資金を圧迫する
特に起業後の創業期は、即戦力となる人材が求められるため、採用活動が重要視されます。
対策としては、まず求める人材像を具体的に定義するのが大切です。必要なスキルレベル、経験年数、価値観などを明文化し、面接時には複数の観点から評価しましょう。また、試用期間を設けて実際の業務適性を見極めるのも有効な手段となります。
3.マーケティング知識の欠如
マーケティングに関する知識がないと、持続的な経営が難しくなります。どれだけ優れた商品やサービスを開発しても、適切な顧客にリーチできなければ売上につながりません。
マーケティング知識の欠如により失敗するケースは次の通りです。
- ターゲット顧客の設定が曖昧で効果的な宣伝ができない
- 競合他社との差別化が図れていない
- 新規は獲得できているがリピーターを増やせない
これらの課題を解決するためには、市場調査を十分に行い、自社の強みを明確にしたうえで戦略的なマーケティング活動を展開する必要があります。
対策としては、まず徹底的な市場調査から始めるとよいです。ターゲット顧客の属性、ニーズ、購買行動などを詳細に分析し、競合他社の動向も把握しましょう。そのうえで、自社の強みを活かした差別化戦略を策定し、効果的な販促活動を展開するのが効果的です。
4.コンプライアンス違反
帝国データバンクの調査によると、2024年のコンプライアンス違反による倒産は過去最高の388件となっています。法令違反は企業の信頼を失墜させ、場合によっては事業継続そのものを困難にします。
▼コンプライアンス違反による倒産件数
特に注意が必要なのは個人情報の取り扱いです。顧客データの管理体制が不十分だと、情報漏洩が発生した際、多額の損害賠償や社会的信用の失墜につながります。このため、創業時からコンプライアンス体制を整備したうえで定期的な見直しを行い、リスクを最小限に抑えることが大切です。
その他の対策としては、事業に関わる法令を事前に調査し、チェックリストを作成するのが効果的です。
また、従業員への教育研修を定期的に実施し、コンプライアンス意識の向上を図ることも重要です。不明な点があれば専門家に相談し、適切な対応策を講じるようにしましょう。
5.立ち上げメンバーとの不仲
創業時から一緒に事業を立ち上げたメンバー同士の対立は、企業の存続に関わる可能性があります。
たとえば、経営方針の違い、利益配分への不満、権限の所在をめぐる争いなどが原因となり、チーム全体の士気低下や業務停滞を招くケースがあります。
特に共同創業者の場合、お互いが対等な立場であることが多いため、意見の対立が長期化しやすい傾向があります。また、起業当時は良好な関係だったとしても、事業が成長するにつれて価値観の違いが表面化し、関係が悪化するケースも珍しくありません。
対策としては、創業時に役割分担と権限を明確に定めることです。あるいは定期的にコミュニケーションの機会を設け、お互いの考えや懸念を率直に話し合える環境を整えるのも一つの手段となります。万が一対立が生じた場合は、第三者に仲裁を求めてもよいでしょう。
6.社会情勢の軽視
日本政策金融公庫の調査によると、新型コロナウイルスの影響を受けた企業は多く、社会情勢を加味したリスク回避の重要性が分かります。実際の調査では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全体の75%が「売り上げが予定より減った」と回答しており、その深刻さがうかがえます。
▼新型コロナウイルス感染症によるマイナスの影響の内容
このように、社会情勢の変化は事業計画に大きな影響を与える可能性があります。
また、新型コロナウイルス以外でも、経済状況の悪化、法改正、技術革新、消費者行動の変化など、外部要因による影響を軽視していると、突然の環境変化に対応できずに経営を圧迫させてしまう恐れがあります。
対策としては、事業計画の策定時に複数のシナリオを想定しておくのが有効です。楽観的な予測だけでなく、悲観的な状況も考慮したリスク管理体制を構築しましょう。
また、業界動向や社会情勢に関する情報収集を継続的に行い、変化の兆しを早期に察知できる体制を整えておくのも重要です。トレンドに関する情報はX(旧Twitter)や、有識者が運営するブログサイトなどを定期的にチェックしておくとよいでしょう。
7.競合調査の不足
市場における競合他社の動向を把握せずに事業を開始すると、価格競争に巻き込まれたり、差別化が図れなかったりして苦戦を強いられる可能性があります。
また競合調査が不十分だと、前述したマーケティング戦略の策定にも支障をきたし、効果的な販促活動が実施できません。
競合調査の不足による失敗例としては以下が挙げられます。
- 類似サービスの存在に気づかずに市場参入した結果すでに確立されたブランドとの競争に敗れる
- 競合の価格設定を把握せずに高すぎる価格を設定してしまう
- 競合の強みを理解せずに同じ土俵で勝負してしまい敗れる
対策としては、市場参入前の徹底的な競合分析の実施です。直接的な競合だけでなく、代替サービスや潜在的な競合も含めて調査し、それぞれの強み・弱みを把握しましょう。そのうえで、自社独自のポジショニングを確立し、競合との明確な差別化を図ることが成功へのカギとなります。
起業に失敗する人の特徴
起業に失敗する人には以下のような特徴があります。
- 起業が目的化している
- 資金計画を適当に立てる
- 友人と準備不足のまま起業した
- 経営者の思考になっていない
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
起業が目的化している
起業を志す人の中には、事業の成長や社会貢献よりも「起業すること」自体に価値を見出してしまう人がいます。本来、起業は理想を実現するための手段であるべきですが、それが目的となってしまうと方向性を見失いやすくなります。
このタイプの起業家は、会社設立の手続きや資金調達といった準備段階に多大なエネルギーを消費してしまい、肝心の事業運営に必要な体力や集中力が残っていないことが多いです。
また、起業後の具体的なビジョンが曖昧なため、市場の変化に対応できずに短期間で事業を畳むケースも珍しくありません。
成功するためには「なぜ起業するのか」「どのような価値を社会に提供したいのか」を明確にし、起業はそれを実現するための手段だと認識することが重要です。社会に提供したい価値が明確になっていれば活動に一貫性が生まれ、顧客からの評価も得やすくなるでしょう。
資金計画を適当に立てる
起業時は初期投資に加え、事業が軌道に乗るまでの運転資金を十分に確保しておく必要があります。資金計画が甘いまま起業してしまうと、予想以上に資金が必要になった際に対応できず、早期に事業継続が困難になる恐れがあります。
日本政策金融公庫の調査によると、「250万円未満」(20.1%)と「250万~500万円未満」(21.0%)で4割以上を占めています。開業費用の平均値は985万円で、中央値は580万円でした。
資金繰りの際、特に注意すべきなのは、売上が発生してから実際に入金されるまでのタイムラグです。請求書を発行しても支払いまでに1〜2ヵ月かかるのが一般的で、その間の運転資金が不足すると黒字倒産に陥る危険性があります。
対策としては、最低でも1年分の運転資金を確保し、キャッシュフロー計算書を活用して現金の流れを常に把握しておくことです。楽観的な予測だけでなく、厳しい状況も想定した資金計画を立てておきましょう。
友人と準備不足のまま起業した
仲の良い友人との共同起業は、お互いを理解しているという安心感がある反面、ビジネスパートナーとしての適性を見極めずに進めてしまうリスクがあります。
友人関係とビジネス関係は全く別物であり、役割分担や責任の所在を曖昧にしたまま起業すると、後々深刻な対立を招くリスクもあります。
実際に友人との起業で関係が悪化した事例も報告されています。
一緒に起業して友情が崩壊しかけてます。
昔から仲の良い友達二人が1年ほど前に起業しました。しかし、さっそく喧嘩ばかりで上手くいっていない様子です。
二人から個別にいろいろ相談されるのですが、私にはどちらが正しいかさっぱりわかりません。
(中略)
ある社員をBがクビにすると言い出したことでAが反発したところ、Bが「じゃあお前も出ていけ。金は俺が出してるから逆らえないよ」と脅したことが原因で大喧嘩になったらしいです。
引用:Yahoo!知恵袋
このような事態を避けるためにも、起業前に明確な契約書を作成し、出資比率、役割分担、意思決定プロセスなどを文書で取り決めておくとよいです。
経営者の思考になっていない
会社員から起業家への転身で最も困難なのは、思考パターンの切り替えです。雇われる立場では上司の指示に従って業務を遂行すればよいですが、経営者はすべての判断を自分で下す必要があります。
経営者に求められる能力には、戦略的思考力、数字への感覚、リスク管理能力などがあります。特に重要なのは、売上や利益だけでなくキャッシュフローを常に意識し、資金繰りを適切に管理することです。また、市場の変化を敏感に察知し、事業方針を柔軟に修正する判断力も必要不可欠です。
経営者思考を身につけるためには、日頃から数字に基づいた意思決定を心がけ、長期的な視点で事業を捉える習慣を身につけることが重要です。
起業や開業の失敗を防ぐ5つのポイント
起業や開業の失敗を防ぐポイントは次の通りです。
- 事業計画の詳細な設計
- 差別化ポイントの明確化
- 小さい規模での起業
- 世の中のニーズや情勢をくみ取る
- ビジネスパートナーの選定
以下にて解説します。
1.事業計画の詳細な設計
事業計画書は起業家にとって設計図のような存在です。単に形式的に作成するのではなく、内容を深く理解し、実践で活用できるレベルまで落とし込むのが重要です。
「LICe by afloat」代表のムッシュ豊田さんは、事業計画書の重要性について次のように語っています。
多くの美容師は10年経験を積んで独立する場合、その10年間は美容の勉強しかしていません。でもサロンをするとなると、それだけではダメなんです。クリエイターとしてだけでなく、ビジネス的なセンスも必要になる。
例えば材料費は何%か、家賃は売上の何%かなどを知っているか、自分が書いた事業計画書をきちんと理解できているか。それらを理解するためには、いろんなことを学ばなければいけません。
僕の場合は、いろんな本を読みました。独立を決めてからは仕事と並行して、経営の本をたくさん読んだり、簿記や不動産も勉強しましたね。
引用元:モアリジョブ|「LICe by afloat」代表 ムッシュ豊田さん
この事例から分かるように、専門技術だけでは事業運営は成り立ちません。財務管理、マーケティング、法務など幅広い知識を身につけ、事業計画の各項目を具体的に理解することが成功への第一歩となります。
2.差別化ポイントの明確化
競合他社との差別化は、事業の持続的成長に欠かせない要素です。同じようなサービスが溢れる市場では、独自性を打ち出せなければ価格競争に巻き込まれてしまいます。
「PHEME」代表の中島健之さんは、差別化戦略について興味深い洞察を語っています。
例えばインスタグラムは今や誰もがやっていて、いろいろな情報や発信が溢れています。だから工夫や差別化がカギになりますよね。
(中略)最初の頃は可愛いモデルさんのおしゃれなスタイル写真にある程度の需要があった。そこから徐々にリアルな方向にシフトし、お客様のビフォーアフター写真が増えていきました。
最近は、サロンに来てもらう前に、いかにお店のことを知ってもらうかが重要になってきたなと感じています。みんなが施術している風景を動画で撮ってリールで流したりとか。見てくれた方が「行ったことがないけど、PHEMEのことを語れる」くらいまでアピールできたら、集客にも求人にもつながるのかなと思います。
引用元:モアリジョブ|「PHEME」代表 中島健之さん
この事例から学べるのは、差別化は一度決めれば終わりではなく、市場の変化に応じて継続的にアップデートしていく必要があるということです。
また、SNSなど特定分野に強いスタッフを採用することで、自社の弱い部分を補強できる点も重要なポイントです。
3.小さい規模での起業
初期投資を最小限に抑えて事業をスタートさせれば、失敗時のダメージを軽減できます。最初から大規模な設備投資や人員確保を行うと、売上が想定通りに伸びなかった場合に資金ショートのリスクが高まります。
また小規模起業のメリットは、市場の反応を見ながら徐々に事業を拡大できる点にもあります。顧客のニーズを把握してからサービスを改良し、需要が確認できた段階で本格的な投資を行うほうが安全です。「副業からスタートして軌道に乗ってから本業に移行する」という選択肢も有効な立派な戦略といえるでしょう。
4.世の中のニーズや情勢をくみ取る
市場環境や消費者ニーズの変化を敏感に察知し、事業戦略に反映させることが重要です。特に近年はAI革新やライフスタイルの変化が激しく、昨日まで通用していた手法が突然効果を失うことも珍しくありません。
成功する起業家は、業界動向だけでなく社会全体のトレンドにも注意を払い、早めに事業方針を調整します。
加えて、定期的な市場調査や顧客ヒアリングを実施し、変化の兆しを見逃さない体制を構築することも競争優位の維持には重要です。
5.ビジネスパートナーの選定
適切なビジネスパートナーとの出会いは、事業成功のカギを握る重要な要素です。単なる友人関係ではなく、ビジネスに対する価値観や目標を共有できる相手を見つけるとよいでしょう。
「MANHATTAN」代表の垣内綾子さんは、アメリカでのビジネスパートナー探しについて次のように振り返っています。
英語が通じるとか、伝わりにくいなどは気にしていませんでした。それよりも熱い想い!熱意があれば相手にしっかりと伝わるものだと思っています。プレゼン後、彼が言ってくれた言葉は『君のパッションは素晴らしい!それだけの情熱があるのならぜひ一緒にやりたい』と。このとき、私はアメリカで最高のビジネスパートナーを見つけることができた瞬間。私の夢が実現に向かった第一歩でした。
そこからアメリカでの出店までは、乗り越えなくてはならない課題が多く本当に大変でしたが、ビジネスパートナーになってくれた彼と、二人三脚でひとつひとつクリアしていき、なんとか夢を実現にすることができたんです
引用元:モアリジョブ|「MANHATTAN」代表 垣内綾子さん
この事例が示すように、ビジネスパートナーには技術的な能力だけでなく、共通のビジョンに向かって困難を乗り越える意志の強さも求められます。お互いの強みを活かし合える関係性を築けるかどうかが、事業成功の分かれ道となるでしょう。
起業・開業した際に失敗した事例
ここでは、起業・開業した際に失敗した事例を紹介します。
実際の事例から学べることは非常に多いです。以下にて詳しく見てみましょう。
株式会社クレアトゥールウチノ|資金繰りの大変さ
開業して間もない頃、資金繰りが上手くいかず悩んでいた内野邦彦さんは父の言葉に救われたと語ります。
どうしたらいいものか、父に相談したんです。そうしたら「おまえ、飯は食えているのか?」って聞かれたんです。「食べてます」と答えたら、「それなら良いじゃないか。おまえが本当に良いと思ってやっていることならそれでいい。おまえに運があればやっていけるし、運がなければ終わるだけ」と言われました。父いわく「世の中にはしっかり勉強しても成功しない人がいる。7割が運で3割が努力」。この言葉で気持ちがすごくラクになりました。36年間いろいろなことがありましたが、この当時のことを思えばどんなことでも乗り越えられます(笑)。
引用元:モアリジョブ|「株式会社クレアトゥールウチノ」代表取締役 内野邦彦さん
起業を考えている人へのアドバイスについても次のように語っています。
自分の信じてきたことを貫くこと。信念を曲げないことですね。それと同時に時代の変化に沿わせる柔軟な考え方も必要です。例えば、スタッフを指導するとき、「そうだよね」って寄り添うことが求められます。
それからつねに覚悟を持っていることも大事です。
(中略)
いかに「オリジナリティ」のあるサロンをオープンできるか、他店との差別化を図れるかが鍵になるでしょう。だからといって、「パーソナル」というかキャラクター頼みの営業戦略は長続きしません。その人がいなくなったら終わりだし、飽きられる可能性もあります。売っている技術が良くなければお客さまは定着しません。
引用元:モアリジョブ|「株式会社クレアトゥールウチノ」代表取締役 内野邦彦さん
この事例から学べる起業・開業のポイントは次の通りです。
- 資金繰りが厳しい時期でも、基本的な生活が維持できていれば諦める必要はない
- 経営者自らが積極的に営業活動(ポスティングなど)に取り組む姿勢が重要
- 信念を貫く強さと同時に、時代の変化に対応する柔軟性が必要
- キャラクター頼みではなく技術力による差別化を図ることが長期的な成功につながる
- 困った時は信頼できる人に相談して精神的な支えを得ることも大切
美容室「e-Sugar」|法律との兼ね合い
e-Sportsに特化した美容室をオープンした佐藤けいすけさんは、意外な壁にぶち当たったと語っています。
元々は美容室にゲームを置き、「ゲームのできるサロン」を謳いたかったのですが、調べていくうちに美容室には法律的な観点からゲームが置けないことがわかって試行錯誤したことです。e-Sportsに特化しているサロンにゲームがないのはさみしいと思ったので、どうにか置く方法はないか模索し、美容室と事務所のスペースを仕切りでわけることで実現しました。カットが終わったあとで、事務所スペースに移ってゲームプレイを楽しんでもらっています。
引用元:モアリジョブ|「e-Sugar」代表 佐藤けいすけさん
この事例から学べる起業・開業のポイントは次の通りです。
- 業種特有の法的制限については事前に詳しく調査するべき
- 法的な制約に直面しても創意工夫で解決策を見つけられる
- コンセプト実現のために、空間設計や運営方法を柔軟に見直す姿勢が重要
- 専門的な法律については、開業前に専門家に相談するのが望ましい
美容室「AWAKE」|社会情勢のリスク
「AWAKE」をオープンした渡辺康則さんですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた時の状況を語ってくれました。
34歳で前の会社を辞めて、「AWAKE」をオープンしたのが35歳になる誕生日の3日前。新型コロナウイルスの流行が原因で、いろいろ予定が狂ってしまった部分もあるのですが、35歳という目標はなんとかクリアしました。
引用元:モアリジョブ|「AWAKE」代表 渡辺康則さん
続けて渡辺さんは、小規模で開業し、採用にこだわったことが成功のカギだったと語ります。
最初は小規模で始めることにしました。軌道に乗るまでは、家賃や人件費を払って維持していけるギリギリの少人数でやろう、と。それから、前サロンの現役スタッフを引き抜かないということは決めていました。
美容師は僕と妻、そして僕の専属アシスタント経験のある子の3人。そしてレセプション兼サポートをしてくれるスタッフが1人。互いに信頼関係ができている、合計4人でスタートしました。
引用元:モアリジョブ|「AWAKE」代表 渡辺康則さん
この事例から学べる起業・開業のポイントは次の通りです。
- 予期せぬ社会情勢の変化にも対応できる柔軟な事業計画が必要
- 小規模スタートにより固定費を抑え、リスクを最小限に抑えるのが重要
- 信頼関係が築けているスタッフとの開業が事業安定につながる
- 明確な目標設定(35歳で開業するなど)がモチベーション維持に役立つ
起業に失敗した場合の悲惨なリスク
起業に失敗した場合、次のようなリスクがあります。
- 借金・自己破産
- 再就職の難航
- 体と心が壊れる
事前にリスクを把握しておけば未然に防げる可能性が高まります。それぞれのリスクについて詳しく見てみましょう。
借金・自己破産
日本政策金融公庫の調査によると、起業に失敗したときのリスクとして最も多くの人が懸念しているのは次のような点でした。
- 「安定した収入を失うこと」(69.8%)
- 「借金や個人保証を抱えること」(63.6%)
- 「事業に投下した資金を失うこと」(59.0%)
上記のような資金面の問題が多いです。
起業したばかりの企業は実績が乏しく、会社としての信用力が不足しているため、経営者個人が連帯保証人となって借入を行うケースが多くなります。この状況で事業が失敗すると、会社が倒産しても個人の借金返済義務が残り、返済できない場合は自己破産に至る可能性があります。
もちろん、自己破産したからといって二度と起業できなくなるわけではありません。前述した起業家への調査結果でもあったように、過去に倒産や自己破産を経験しながらも再起し、大きな成功を収めた経営者も存在します。
しかし、一度自己破産すると金融機関からの信頼は大幅に低下し、その後の資金調達が極めて困難になるのは事実です。
再就職の難航
起業に失敗した後、当面の生活費を確保するために会社員として再就職を目指すケースは多いですが、この過程で困難に直面するケースもあります。
一度経営者として自由な判断と責任を経験すると、組織の一員として上司の指示に従う働き方に適応するのが困難になる場合があります。
また、採用する側の企業からは「扱いにくい人材」と見なされることもあり、特に40歳を超えている場合は年齢的な制約も加わって就職活動が長期化する恐れがあります。経営者経験があることで、組織への忠誠心や協調性に疑問を持たれることも珍しくありません。
とはいえ、スタートアップやベンチャー企業では起業経験を評価してくれる場合もあります。自分の経験を活かせる環境を見つけて、再就職の成功率を高めるのも一つの手段であることを覚えておくとよいでしょう。
体と心が壊れる
起業の失敗による精神的・身体的な負担は深刻な問題です。事業の行き詰まりによる強いストレス、将来への不安、周囲からの期待に応えられない罪悪感などが重なり、うつ病や不安障害といった精神的な不調を引き起こす可能性があります。
特に家族を養っている経営者の場合、自分だけでなく家族の生活にも影響を与えてしまうという責任感から、過度なプレッシャーを感じることがあります。
また、失敗への恐怖から適切な判断ができなくなり、さらに状況を悪化させてしまう悪循環に陥ることもあるでしょう。
このような状態になる前に、信頼できる相談相手を見つけておく、定期的に専門家のアドバイスを受けるなどの対策を講じておくことが大切です。
起業・開業の成功には採用が重要
起業・開業において、多くの経営者が見落としがちなのが人材採用の重要性です。どれだけ優れたアイデアや技術をもっていても、それを実現し成長させるためには適切な人材が不可欠です。実際、中小企業庁の調査でも「最も優先度が高い経営課題」として「人材の確保」「人材の育成」が上位に挙げられています。
事業の成長段階において、経営者一人でできることには限界があります。特に、顧客が増加して業務量が拡大する局面では、優秀なスタッフの存在が事業の持続的発展を左右します。多様な経験やスキルをもつ人材が加われば直接的な集客力アップや、競合他社との差別化にもつながります。
しかし、先述したように多くの起業家が採用活動で苦戦しているのも事実です。
「いつから採用準備を始めればよいか分からない」
「求職者が求める条件を把握できていない」
「採用にかかる費用が予測できない」
といった課題を抱える経営者が多く見られます。
そこで、これから独立・開業をして将来的にスタッフの採用を検討している方向けに、採用に関する実用的なデータや他社事例をまとめた無料の資料をご用意しています。
採用準備のタイミングから具体的な採用手法、費用対効果の高い求人方法まで、実践的な情報を網羅的に紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
起業・開業の失敗を防ぐためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 最低1年分の運転資金を確保し、キャッシュフロー管理を徹底する。
- 市場分析、競合調査、差別化戦略を含む包括的な事業計画を作成して定期的に見直す
- 信頼関係が築けるスタッフの採用を心がけて小規模スタートで固定費を抑制しながら段階的に人員を拡充する
- コンプライアンス遵守、社会情勢の変化への対応、法的制約の事前調査など多角的なリスク対策を実施する
起業には確かにリスクが伴いますが、近畿経済産業局の調査では再チャレンジ経験者の9割が「再チャレンジして良かった」と回答しています。
失敗は終わりではなく、次の成功への貴重な経験となる可能性もあるため、ぜひ積極的にチャレンジしてみてください。
- 執筆者情報
- 山田 大地(Yamada Daichi)