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店舗運営のよくある課題とその解決策とは?課題の見つけ方〜解決までのステップや改善事例をわかりやすく解説!

店舗運営のよくある課題とその解決策とは?課題の見つけ方〜解決までのステップや改善事例をわかりやすく解説!

店舗運営をするなかで、経営者は誰しも課題に悩むことがあるのではないでしょうか。厚生労働省の調査した結果では、店舗ビジネスが主である生衛業(理・美容、クリーニング、ホテルなど18業種)の経営課題は客数の減少や店舗の老朽化、客単価の減少など、さまざまな点にあるとしています。

経営者に求められるのは、自店舗の抱える課題の洗い出しと早急な対策です。本記事では、店舗運営においてよくある課題や、その解決策を厚生労働省のデータを元にお伝えします。

さらに、具体的な解決までのステップも解説します。実際に行動する際に役立つ改善例を交えてわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

店舗運営とは

店舗運営とは、店舗の状況に合わせた売上や利益の目標を設定し、目標に向けて在庫や人員を管理したり、集客したりすることです。

目標を達成するためには、魅力的なレイアウトや内装の作成、店舗のプロモーション・販促、働くメンバーの管理や育成まで、多くのことをこなさなければなりません。

店舗運営に必要なことは、店舗の取り扱い商材や経営方針によっても変わります。販売業であれば、商品の仕入れ・在庫管理も店舗運営の一環です。

店舗運営における主な業務

店舗運営で行う具体的な業務は、主に以下の7つがあります。

① 開店・閉店業務
② 接客業務
③ 仕入・在庫業務
④ 売上管理業務
⑤ スタッフ管理/教育業務
⑥ 販売促進業務
⑦ 顧客管理業務

店舗運営の目標は、経営に支障がないように利益を出すことです。従業員規模によって経営者自身の業務範囲は変わるものの、上記の7つについては必ず行う必要があります。

経営者は、業務が円滑に回る方法を常に模索しなければなりません。特に顧客満足につながる接客業務、スタッフ管理/教育業務は経営者に高いレベルが求められます。

人材育成や採用は重要な地盤であり、地盤が揺らいでは顧客管理や販促業務を行っても求める成果は得られないでしょう。

また、店舗に課題があるとすれば7つの業務のなかに必ず隠れています。まずは自身が行っている業務について、棚卸ししてみましょう。

解決への詳しいステップについては、この後で解説します。

店舗運営の難しさ

店舗運営は、誰しもが円滑にできるわけではありません。単に商品やサービスを提供するだけでなく、先述したように多方面でのマネジメントが求められるためです。

事実として、 帝国データバンクの調査 によると、店舗として代表的な飲食店の倒産件数は増加傾向にあり、2024年度は年間894件と最多を記録しています。

飲食店の倒産件数推移

同様に美容室の倒産件数 も、2024年度は年間で197件と過去最多を更新しました。

美容室の倒産件数推移

これらの数字は、消費者ニーズの変化や物価高、人手不足など、日々の運営に関わる課題がいかに深刻化しているかを示しています。

店舗運営は景気や社会情勢の影響を受けやすく、判断の一つひとつが事業の存続を左右します。安定した運営を続けるためには、現場の効率化と同時に、データに基づく経営判断や柔軟な戦略転換が不可欠といえるでしょう。

店舗運営でよくある課題とその解決策

店舗運営の課題への対策については、国も重要視しています。その解決のため、厚生労働省は代表的な店舗型ビジネス業界である生衛業に向け、よくある課題と改善のためのガイドラインをまとめた「生産性&効率アップ必勝ガイド」(以降は「必勝ガイド」と記載)を作成しました。加えて、生衛業16業種に向けた業種別の改善マニュアルも作成しています。

今回は、主に上記ガイドラインと、改善マニュアルを参考に、現場で起こりがちな10の課題とその解決策についてご説明します。

1.特長のある店舗づくりができていない

経営者が抱える課題の1つとして、他店舗との差別化ができておらず、集客につながらないことがあります。

たとえ長く経営している店舗であっても、市場は変化しており昔よりも競争は激化しているとまずは認識しましょう。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査 では、2024年上半期における美容室の市場規模は、2022年以降ほぼ横ばいの状態です。一方で 日経新聞の報道 によると、美容室の数は過去10年で約4万件も増えており、実にコンビニの5倍に相当します。つまり、限られた市場を増加傾向にある店舗同士でうばい合うような状態となっているのです。

▼美容室の市場規模推計

美容室の市場規模推計

こうした背景を踏まえると、 改善マニュアル で指摘された経営上の問題「客数の減少」は依然として最重要課題に位置するといえます。

美容経営者の課題

他店舗と同じ価値を提供しているだけでは、客数増加は見込めません。課題を解決するには、自店舗独自のバリュープロモーション(顧客への提供価値)の創出が必要です。

自店舗と周辺店舗の客層や人の流れを分析し、お客様が真に求めているサービスを考えてみてください。周辺店舗との違いが自店舗内では見えないときには、常連客の声に耳を傾けてみるのもよいでしょう。

2.集客力が弱く、新規顧客開拓ができていない

客数減少の原因には、特長のある店舗づくりに付随する問題として「集客力の弱さ」と「新規顧客開拓の不足」が挙げられます。

自店舗の客数が増えずに他店舗にお客様が流れてしまっている場合には、自店舗の集客力が弱いことが原因かもしれません。

改善マニュアル」の消費者動向についての調査結果では、お客様は口コミやインターネットによる店舗検索などの評判により利用する店舗を決定しています。

美容室検討の情報源

また、お店を決める理由は、「明確な料金開示」や「手ごろな金額」、「従業員の経歴」を重要視している人が多いようです。

上記を元にした即効性のある解決策としては、多くの人の目に触れる予約サイトや店舗のWebサイトのメニューを充実させ、より明確化してみましょう。Googleマップの情報を使用してプロモーションできる「グーグルマイビジネス」の活用も有効です。

本記事の1.2の課題へのヒントは、必勝ガイド内の内容をさらに細かく解説している「特長ある店舗・施設づくりで業績を改善しよう」に記載されています。

また、SNSやICTを活用した集客法については、ICT初心者向けの「 ICTを活用して集客力を高めよう」編、具体的活用法は「② SNSの特性を集客に活かそう」編に解説されていますので、自身の知識レベルに合わせて参考にしてみてください。

3.コストがかさみ、収益性が低い

利益を上げるのに即効性のある施策は、コストカットです。余分なコストが掛かっていないか、店舗全体の経費を見直してみましょう。

必勝ガイドの「費用を削減して収益性を高めよう」編によると、店舗運営に掛かる経費のうち、削減しやすいのは以下のポイントです。

削減しやすい経費の例

消耗品費

安い他社製品への変更

発注量・使用量を減らす

仕入れ業者の変更

水道光熱費

長期的運用を視野に入れたメンテナンス

人件費

採用費の削減

宣伝広告費

集客サイト費用の削減

4.顧客満足度が低い

お客様は、店舗に対する期待値を上回らなければ満足にはなりません。想定通りの体験では、顧客満足度は上がらないのです。予想を超える接客をすることで、はじめてお客様は満足します。

お客様への声掛けを当たり前レベルから満足レベルにアップするには、 厚生労働省の生産性アップ用のマニュアル に記載されている下記のような顧客アンケートを作成するのが効果的です。

▼顧客アンケートのサンプル

ポイントは、要望・ご意見欄や、お客様が過去感動した利用体験など、自由に記載できる欄を用意すること。生の声を収集することで、真にお客様が求めているサービスが見えるでしょう。

また、生衛業では清潔感や設備の新しさも重視されています。しかし、普段の業務をしながらでは細かいところまで目が行き届かないかもしれません。

店舗全体を見直す策としては、お客様目線になったチェックリストを作成し、今一度サービスが行き届いているか全従業員で確認するのも効果的です。

5.リピート顧客が少なく、客単価が低い

消費者アンケート結果では、美容室を利用する決め手となる1位は立地ですが、2位は「担当者の技術や提案力が良いから」となっています。

美容室を利用するお店を決めている理由

また、お店に行くのをやめた理由の2位も「担当者の技術や提案が良くなかった」という回答です。

美容室に行くのを辞めた理由

再来店のお客様が少ない場合、スタッフによる適切な提案やアドバイスができていないのかもしれません。また、客単価が低い場合にも提案力不足が疑われます。

提案力を上げる方法の一例としては、個別カルテの作成がおすすめです。お客様としては会話内容を覚えられていることが嬉しいうえに、従業員にとっては前回来店時の会話を元にした自然な追加メニューの提案ができるようになります。

トーク例

「前回は髪の長さをそのままにして形を整えただけだったので、今回は気分を変えてパーマに挑戦してみましょう! 」

「前回来店時に縮毛矯正されていますが、その後のケアや髪の痛みは大丈夫ですか?当店では、ヘッドスパやケアメニューも充実してます。良かったらついでにどうです? 」

ただし、強引ではなく自然に提案することも大切です。商売気を出し過ぎるとお客様には敬遠されます。居心地の良い空間づくりを優先しましょう。

下記事例のように、お客様の悩みに寄り添いつつ自然にリピートにつなげていく流れを創出するのも有効です。

 

お客さまの多くは、くせ毛など何らかのお悩みを抱えていることがほとんどですから、時間をかけてお話を聞きながら、一つひとつ不安やお悩みを解消していきます。

仕上がりの「一番良い状態」を保たせるためにはどれくらいの頻度で通うのがベストかをお伝えします。そうすると、自ずと来店する頻度が計算でき、その場で次回予約につなげることができます。

引用: モアリジョブ |株式会社Hair Life Plan代表 成田順一さん

また、2回目来店を促すためのスタンプカードや、限定クーポンも効果的です。昨今ではLINEでも簡単に作成可能ですので、特別感を付与して再来店動機につなげましょう。

6.外国人の顧客が少ない

円安が続くなかでインバウンドの流れが強まっています。客数減少が悩みなら、新規顧客開拓に外国人も取り込む方向で動きましょう。具体的に行える施策は、以下のような内容です。

行うこと

ポイント

日本ならではの「おもてなし」を行う

  • 特別なことではなくまごころを込めた接客
  • 丁寧なあいさつや気遣いが重要

メニューやサービス説明を多言語対応にする

  • よく説明する内容に絞る
  • 訪日ゲストに合わせて用意できるように英語、中国語などに対応する

スマートフォンを使った言語通訳機能の活用促進

  • スタッフに来店シミュレーションをする

クレジットやキャッシュレス決済の導入

  • 国際規格のカード・決済方法に対応する

行うことは日本人対象と変わりません。外国人観光客の特性やならではの特徴を考えて、自店舗で可能なおもてなしを考えます。

キャッシュレス決済の導入については、 IT導入補助金制度 の対象になる可能性もあります。導入前に、対象条件を確認しておきましょう。

また外国人観光客を誘致するには、Googleマップ上で店舗を上位に表示させるための「MEO対策」も有効です。海外ユーザーの多くがGoogleマップをナビ代わりに使用しているため、英語をはじめ多言語対応にしておくと「言葉が通じる・行きやすい」という印象を与えられます。

世界中で利用されている無料のwebサービスを活用しています。赤坂にはホテルが多いため、観光で訪れた海外の方にもサロンを利用していただきたいからです。活用しているサービスはいくつかあり、たとえば『Google map』などにサロン情報が載せられる『Googleマイビジネス(現Googleビジネスプロフィール)』を利用しています。

引用: モアリジョブ |ネイルサロン「DRESS UP」  

7.従業員のスキルとモチベーションが低い

従業員のスキルとモチベーションをいかに高めるかは、店舗運営における重要課題のひとつです。

特に美容室は、お客様が1~3時間と長時間滞在する空間です。そのため、お客様は店舗全体の雰囲気やスタッフの対応をより重視しています。

従業員のモチベーションが低ければ、スタッフの態度も悪くなりがちです。また、優れたスキルを指導したとしても、望む結果にはつながらないでしょう。

解決するには、「従業員のスキルとやる気を高めよう」編で解説されているような受け入れ時の教え方を工夫するのもひとつの手段です。入社後に適切な指導ができていれば、モチベーションはおのずと上がるでしょう。

スタッフの定着率を高めるには、店舗全スタッフの協力が必要です。できる限り全員で読み合わせをし、育ちやすい受け入れ姿勢を考えましょう。

また、スタッフに育成を任せるのもよいですが、経営者も月1回程度の個別面談の機会を設け、なるべく現場の声に直接耳を傾けてください。日常会話ではなく、面談でしか言えないことも多くあり、離職率低下につながるでしょう。

8.作業しにくい職場環境や作業導線になっている

店内でスタッフが物を探していたり、何をどこに置いたかスタッフ同士で確認し合ったりしてはいないでしょうか? また、よく使う設置物や置き場が遠く、無駄な動きが多くはないですか?

思い当たる場合、定物定位置に戻せるような仕組みづくりと、導線の見直しを行いましょう。「作業しやすいお店・職場にしよう」編を参考にした職場環境の改善で行えることは、主に以下のとおりです。

行うこと

ポイント

備品の必要最低限数の洗い出し

  • ・最も多く使う時ではなく、「最低限」を意識する
  • ・減らし過ぎて不便がでないように、予備備品は若干は残しておく

備品の戻り保証(物が決まった位置に戻せる仕組み)付け

  • 管理番号を付けたり、必要な備品以外は入らないようにしたりする
  • 使用頻度の高い備品は全スタッフから近い位置にする

導線の見直し

  • 店舗レイアウトに人の動きを書き込む
  • 導線がぶつかっている、もしくは移動距離が長い位置を改善する
  • 導線改善に費用が必要な場合には長期的視野も検討する

もちろん、スタッフの導線とあわせて、下記事例のように「お客様の来店から退店までの導線」を配慮・工夫することも欠かせません。

僕は『お客さまが通る導線を完璧にすることが大切だ』と思っています。言い換えると、『ご来店からお帰りまでを満足させ続ける』ということです。

そこで、僕たちは内装作りに徹底的にこだわりました。たとえば『NEHAN』では、待合いスペースに外向きのカウンターを設置しています。街中のカフェにある窓際の席をイメージしていただけると分かりやすいかもしれません。

つまり、お客さまには外を眺めながら待っていただきます。このスタイルを採用した理由は、もったいない失客を防ぐためです。

引用: モアリジョブ |株式会社SENJYU 統括代表 森越道大さん(現同社 会長)

お荷物を預かる、次の行動の誘導をするなど、案内する人間がいるかいないかでサロンに来店したときの安心感が違うと思うんです。ゲストが入店から帰宅まで安心して任せてもらえる動線づくりを意識しました。

引用: モアリジョブ |Door代表取締役 吉澤 剛さん

9.仕事の効率が悪い

美容室の労働時間には、お客様と関わる時間と、清掃や整理などの直接関わらない時間があります。どちらも短縮できれば、残業時間削減やサービス向上に利用できるでしょう。

仕事効率を上げるには、現状の作業時間を把握し、以下の4つの目線で作業を見直します。

  1. 作業をなくせないか?
  2. 作業を同時あるいは別々にできないか?
  3. 順序やタイミングを変えることで効率良くならないか?
  4. 作業をもっと簡単にできないか?

参考:「効率的に作業しよう」編

時間改善を行う際には、店舗で最も人気のあるメニューから行うとよいでしょう。改善を行った後、スタッフ同士で意見交換をし合うことも大切です。

特に歴の長いスタッフほど、作業を変更することに抵抗感を覚えやすいため、なぜ行わなければならないのかを事前に説明し、理解を得てから取り掛かるようにしてください。

下記は、作業効率を高めて顧客満足度アップに集中して取り組めるようにした好事例です。

髪の毛が下に落ちていたら、すぐにはかなくてはいけないというルールもなくしたんです。「ECLART」はすべての店舗が全席個室となっているので、髪の毛をほかのお客さまが踏むこともないですし、問題はないと考えました。

またドライヤーのコードをきれいに巻かなくてはいけないというルールもありません。お客さまからとくに指摘を受けることもないですし、そこまで気にされている人はいないのかなと思うんです。それよりももっと本質的な技術で、お客さまを喜ばせることに集中したいと思っています。

引用: モアリジョブ |株式会社ECLART 代表 南裕大さん

10.ヒューマンエラーが多く発生している

人的ミス(ヒューマンエラー)の原因には、うっかりしたミスと手抜きなどのあえて行っているミスの2パターンがあります。あえて行っているミスは、個別指導やモチベーション向上によって改善するしか方法はありません。

しかし、うっかりミス型は、店舗側の心がけ次第で予防が可能です。人的ミスは、「人的ミス(ヒューマンエラー)をなくそう」編で以下の4つに分類できると記載されています。

人的ミスの種類分別

改善する手順は、まずはサービスを工程に分けて、工程ごとにミスが起こりやすい事象を上記4つのエラーに分けて書き出しましょう。そのうち、すでに改善されているものは消し、対策可能なことを絞り込みます。

次に、なぜそのミスが発生するのかを考え、対策を実行しましょう。たとえば、美容室の予約間違いやチェック漏れがある場合、操作の簡単なシステムに変更することや、Web上でお客様入力だけで完成するシステムへ変更することで防げるかもしれません。

対策はひとつの方法には限りません。スタッフ全員で意見を出し合い、全員で防ぐ意識を持てるようにすることも大切です。

また経営者や責任者の立場であれば、ミスをしたスタッフに対する対応も重要です。ミスを責めるのではなく、本人の気づきを促し、成長につなげることが店舗運営にとってもプラスに作用します。

感情的に叱らないことを大切にしています。一方的な指摘は、叱る側のストレス発散でしかありません。なぜミスをしてしまったのか、スタッフが気づくことでようやく成長につながるので、理解してもらうことを目指して思いやりを持ちながら対応しています。

引用: モアリジョブ |「東京ヴァンテアン」取締役社長 中林章さん

11.SNSやWebを活用した集客が弱い

従来のチラシ配布や看板広告だけでは、現代の消費者にアプローチするには限界があります。SNSやWebを使った集客は、低コストでリーチを拡大でき、かつ「興味を持った見込み客」を効率的に誘導できる点が強みです。

特に、一般的な店舗運営ではSEO、MEO対策、口コミサイトの活用などが基本戦術とされており、これを補完する形でInstagram、X、YouTubeといった SNS発信が集客チャネルとして重要になっています。

実際、SNSやWebを用いた店舗集客の成功事例も多く見られます。

約3万人がグーグルマップ上で『Door代官山』をタップして、それからホームページに飛び、スタッフやサロンのSNSを見て、そして気に入ったら予約をする。この流れが多いですね。ちなみに、現在『代官山 美容室』で検索をかけると私たちがトップで表示をされます。

引用: モアリジョブ |美容室「Door代官山」

オープン当時はInstagramでキャンペーンを行ったんです。「Instagramで感想や写真をアップすることを条件に価格をお安くする」というような内容でした。

この方法で、インスタをアップした方の紹介という形で、お問い合わせが多くなっていきました。大きく広告を打つよりは、こうした方が「コンセプトに合ったお客さまが来てくれる」と思っていたので、そこは戦略通りでしたね。

引用: モアリジョブ |鍼灸サロン「Hariest」 代表 倉内夕さん

こちらの記事では、上記以外にも様々な成功事例を紹介していますので、あわせてご覧ください。

12.離職率が高く、人手不足が慢性化している

店舗運営において、安定した人員体制を築けないことは売上・サービス品質・顧客対応すべてにネガティブな影響を及ぼします。採用してもすぐ辞めてしまう、応募が集まりにくいといった課題は、多くの店舗で深刻化しています。

こうした人手不足対策として注目されているのが、勤務時間やシフトの柔軟化、未経験者の受け入れ、リファラル採用などを組み合わせた多様な採用チャネルの活用です。

さらに、育成制度の整備やキャリアパスの明示、定期的なフォロー面談といった定着支援策も不可欠です。業務の効率化を進めて不要な手間を減らすと同時に、働きやすい職場文化を醸成することで、人材の離脱を防ぎやすくなります。

また以下の資料では、定着率が上位の企業3社が実際に取り組んでいる事例を紹介しています。一般的な福利厚生とは異なる視点での取り組みが行われていますので、ぜひ無料ダウンロードのうえ、ご活用ください。

 

店舗運営のデジタル化が生産性向上のカギ

中小企業庁の調査 では、店舗が多く含まれる「小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」の労働生産性が、他業種と比較すると低いことが示されています。

▼労働生産性(企業規模別・業種別)

労働生産性(企業規模別・業種別)

 

人手不足や生産性向上は、デジタル化の導入を進めれば改善できることも多くあります。そこでここからは、厚生労働省の作成した デジタル化推進マニュアル の内容を参考に、課題と具体的取り組み例を紹介します。

業界の生産性課題

製造業や通信業などと比べて、なぜサービス業の生産性は低くなるのでしょうか。それを考えるにはまず、生産性とは何かを知る必要があります。生産性とは、投入資源に対してどれくらいの成果があったかで計算します。

つまり、オートメーション化やIT化が進む製造業と比べると、人件費が多く必要なサービス業の生産性が下がることは当然なのです。

さらに昨今の働き方の変化や少子高齢化、物価上昇による経費圧迫などが生産性低下を後押ししています。

生産性向上に向けた取り組み

デジタル化の導入で改善できるのは、人件費と宣伝広告費です。デジタル化による売上向上も、生産性アップと言えます。

人件費削減には、キャッシュレス決済や、顧客・勤怠管理ツールの導入が効果的です。人的リソースが削減できる箇所がないかを検討しましょう。

ただし、ツールによっては導入コストだけでなく、維持費用が高いケースもありますので、費用対効果を考えて導入は進めてください。

集客で発生する宣伝広告費は、SNSの活用で削減できます。TwitterやInstagram、Facebookなどを活用して、美容室のスタッフやスキルを宣伝しましょう。

取り扱う題材を決める際には、お客様の悩みに寄り添った内容にするとフォロワー数増につながります。

主にインスタグラムを使って集客を行っています。最近はTik Tokもはじめました。つねにトレンドを意識しながらお客さまのお悩みを解決する動画を投稿しています。

SNSでは「透明感カラー」と「パーソナルカラー」を推しています。「透明感カラー」は多くの女性の悩みである色落ちの際の赤みを抑えるカラーのこと。

引用:モアリジョブ/Of HAIR銀座店・GRAN CLUB Of HAIR 齋藤大智さん

他社研究もできればベストです。より多くのファンを獲得できるでしょう。

1~10位の方のSNSは必ずチェックするようにしています。上位に入っている美容師さんの投稿は、時代や世の中の需要にフィットしていると思うんです。そこで最新の潮流を掴んで、自分の投稿に取り入れるようにしていますね。

引用:モアリジョブ/「cache cache」前田渉さん

SNSを通じてお客様とより近い関係になることで、リピーターも獲得できるかもしれません。

お客様との繋がりも大事にしています。お客様とフォローし合うことで、交流を深めるツールとしても役立っています。お客様がストーリーズや投稿している内容を把握しておくと、次回来店いただいたときに話が広がり、コミュニケーションがとりやすくなるんです。

引用:モアリジョブ/「hair&make first」舩木宏哉さん

SNSは、低予算で使える集客ツールです。ぜひ、成功事例を参考に有効活用してみてください。

課題発見から解決までのステップ

ここでは、具体的に自店舗で動けるように、課題の発見方法から解決までの5つのステップとポイントを解説します。

課題発見から解決までの5ステップ

先述した「よくある課題」すべてに共通する進め方ですので、実行するときの参考にしてください。

ステップ1:自店舗の課題を把握・特定する

自店舗の目標に対する課題は何かを書き出します。経営者がする場合は、とにかく気になる点を書き出すだけでも最初は問題ありません。厚労省のマニュアルなども参考にしながら、以下の4つのカテゴリーに分けて現状と問題点・課題を細分化して書き出してください。

  1. 売上(顧客数・平均単価)
  2. 財務体質・コスト
  3. 業務プロセス
  4. 人員・人材

書き出すときには、関わるスタッフも巻き込むとよいでしょう。たとえば、残業時間の短縮を目標とするなら、スタッフと一緒に何にどれくらいの時間を掛けているかを表にします。

書き出した項目を「10.ヒューマンエラーが多く発生している」で紹介した4つのエラーに分類していき、次の優先順位を決めるステップへと移りましょう。

ステップ2:課題の優先度を決める

書き出した後は、改善しやすさ、費用対効果と必要な労力を元に優先順位を付けます。理想は、費用対効果が高く、改善の労力はあまりかからない事項からの改善です。

とはいえ、時間や金額を先行投資することで大きな見返りが期待できる課題にも取り組んでよいでしょう。

改善しやすさには、費用だけでなく時間も含まれます。ホームページ開設による集客アップの施策など、取り組んでから半年程度経たなければ効果が見えない施策もありますので、いくつかの対策を同時並行で進めることも必要です。

ガイドラインの項目に沿って進めるのもよいですが、自店舗の状況的に取り組むのが難しい可能性もあります。チェック結果はあくまで参考程度に留め、経営者として取り組むべき課題を認識しましょう。

ステップ3:課題に対する目標を設定する

課題に取り組む前に、具体的な目標を決めます。目標を決めるときは、以下のポイントを意識してください。

  1. 測定可能な具体的数字にする
  2. 目標達成の期日を設定する
  3. スモールステップを設ける

上記の内容に沿って目標を設定した例は次のとおりです。

  • 魅力ある店舗づくりに取り組む→客数の前月・前年比達成を半年後
  • スタッフの提案力の強化→客単価アップを3カ月後
  • 費用の削減→販管費◯円減を半年後

具体的数値は、前年や前月を参考にするのがわかりやすいです。また、売上減少の要因に競合の出店のような外的要因が強いと考えられる場合には「現状予測との差をどれくらい埋めたいか」で設定しましょう。

最終目標は全項目に共通して「売上の向上」かもしれませんが、どのように動くかを決めるには個別目標の設定もしなければ目的意識が共有しにくくなります。客単価や客数など、なるべく細かい数字の目標を設定してください。

ステップ4:課題の解決策を検討・実行する

具体的にどう動いていくのかを考え、実行します。計画表を作成し、5W1Hに落とし込みながら計画を立てましょう。たとえば、スタッフのスキル向上を図りたい場合、以下のように設定すれば、実効性が高まります。

5w1h

また施策を着実に進行するために、スケジュール表を作成しましょう。スケジュール作成をすることで、進捗を確認しながら計画の修正を行えるようになります。

計画の実行と成功には、スタッフの意識と協力が欠かせません。休憩室や朝礼などで目標の進捗が目に見えるようにし、常にスタッフ同士の話題になるように場を作りましょう。また、達成した後のビジョンを伝えてモチベーションを上げるのも経営者の大事な役割です。

ステップ5:解決策の実行前と実行後を比較する

施策の実行後には、必ず振り返りをしましょう。振り返りをするのはこまめにする必要はなく、1カ月ごとなどのおおまかな期間でも構いません。実行してみてどのように変わったのか、効果はあったのかを見直します。

数字を目標にしてはいますが、振り返るときに数字のみにこだわるのは好ましくないでしょう。店舗運営をしているからには、スタッフのモチベーションやお客様の反応にも意識を向ける必要があるためです。

施策を進めるなかでスタッフの不満や戸惑いが出ていないか、常連のお客様からの従来との違いについてのご意見が集まっていないかといった、生の声も確認するようにしてください。

店舗運営を安定させるためのマネジメントの考え方

店舗運営を長期的に安定させるには、日々のオペレーションを個人の経験や感覚に頼るのではなく、仕組みとしてマネジメントする視点が欠かせません。

現場任せの運営では、担当者が変わるたびに品質やサービス水準がばらつき、顧客満足度の低下を招くこともあります。ここでは、店舗運営を安定させるために取り組むべき3つのマネジメントポイントを解説します。

オペレーションを標準化して属人化を防ぐ

接客対応や会計処理、在庫管理などが人によって異なると、サービス品質のバラつきやクレーム発生の原因になります。

こうした“属人化”を防ぐには、業務マニュアルやチェックリストの整備が有効です。作業手順を可視化することで、誰が担当しても同じ水準のサービスを提供できるようになり、新人教育の効率化にもつながります。

カウンセリングやお客さま対応において最も大切なのは、いかにお客さまの心情をくみ取ることができるかということです。当店では、すべてのスタッフさんが同じ水準で接客ができるよう、「お客さま対応マニュアル」を作成しています。

引用: モアリジョブ |美容室「CHOUCHOU」経営者 武藤鎌矢さん  

また、引き継ぎや店舗間での人員移動が発生する際も混乱が少なく、全体の生産性向上に寄与します。

スタッフの意欲を高める評価制度を整える

店舗運営を支えるのは、現場で働くスタッフのモチベーションです。やりがいを感じられない職場では離職率が上がり、人手不足が慢性化する原因となります。

そのため、売上などの数値成果だけでなく、接客態度やチーム貢献度、改善提案なども含めた多面的な評価制度を導入することが重要です。

現存の人事評価制度に問題があることに気がつきました。キャリアプランが「管理職への昇進」一辺倒なんです。プレイヤーがより高い収入を得るには、管理職になるしかない。でも本来は、プレイヤーとしてその腕を磨き続けることも、リーダーになることと変わらず尊いはず。

リーダーになることや、数字管理を苦手とする人もいて当然です。そういう人達も、頑張った分だけ高い収入になるような人事評価システムを構築しています。

引用: モアリジョブ |NAILsGUSH・NAIL MAFIA オーナー 木下さとこさん

スタッフが自分の努力を正当に認められていると感じられれば、モチベーションが維持され、結果として顧客満足度の向上にもつながります。

課題共有や信頼構築を目的としたミーティングを習慣化する

店舗運営を安定させるには、現場で働くスタッフ同士や経営層とのコミュニケーションの場を定期的に設けることが欠かせません。

日々の課題や成功体験を共有できる環境が整っていないと、改善のスピードが落ち、組織の一体感も生まれにくくなります。そのため「定期ミーティング」や「勉強会」を店舗文化として根付かせるとよいでしょう。

たとえば、以下のような取り組み事例があります。

店舗では、店長やマネージャー陣とスタッフのミーティングを月に1回は設定してもらっています。内容としては、スタッフがどんなことをしたいのか、どんな自分になりたいのかを掘り下げてもらったり、将来の目標が決まっているのであれば、その実現のために今の自分がやらなくてはいけないことを確認してもらっています。

引用: モアリジョブ |株式会社ACTgrow 代表取締役社長 菊地翔太さん

オーナーが率先して、スタッフみんなが意見を言いやすい環境を作ってくれています。毎週日曜日の夜、営業後に内部で勉強会を兼ねたミーティングをするんです。その時に、いいことも悪いことも、日頃思っていることや感じていることを自由に話せるような雰囲気作りができていて。スタッフみんなで腹を割って話しているので、入社したての頃は私も驚いたし、入ってきたばかりのアシスタントの人たちもびっくりしていますね。

引用: モアリジョブ |「garden otakanomori」ヘアスタイリスト 福本玲香さん

まとめ

美容業は、担い手が増加している一方で、利用するお客様は減少している傾向があります。多くの経営者は客数減少に悩んでおり、解決のための施策を模索しているのです。

本記事では、厚生労働省の作成したガイドラインマニュアルの内容を参考に、経営者が抱えがちな課題とそれに対する施策、実行のための動き方について解説しました。とくに重要なポイントは以下の通りです。

  • 店舗運営の課題は「特長づくり・集客・収益性・人材」など多岐にわたるため、まず現状を棚卸しして課題を明確化する。
  • 厚生労働省の公的資料なども活用し、自店に合う改善ステップを実行する。
  • データ分析と現場の声をもとに、差別化戦略・コスト削減・顧客満足度向上・人材育成を継続的に見直す。
  • 課題を一つずつ改善していくことで、長期的な売上向上とスタッフ定着率の向上につながる。

店舗の数だけ悩みがあり、解決に取り組む難しさがあるかもしれません。この記事を参考に、まずは冷静に店舗の現状を見つめ、取り組む課題を分析したうえで目標を設定してみてください。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。