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店舗運営を効率化する方法とは?妨げている要因、役立つツール、改善事例などをわかりやすく解説!

店舗運営を効率化する方法とは?妨げている要因、役立つツール、改善事例などをわかりやすく解説!

ラ・シンシア株式会社の調査によると、リピート率の向上や新規集客、スタッフの育成など、多くの経営者が店舗運営において様々な悩みを抱えています。サロン経営に関する調査

出典:ラ・シンシア株式会社「サロン経営に関する調査」

限られた人材や予算で店舗を運営し利益を上げるには、業務や作業の効率を高めていく必要があります。

まずは店舗を運営する中で効率を下げている要因を見つけ出し、次に正しいステップと方法で改善していきましょう。

この記事では美容業や飲食業など、個人消費者を対象とした店舗運営の効率化について解説します。

店舗運営とは

店舗運営とは店舗を運営していくうえで必要な仕事や業務を指します。

業種や店舗の規模や形態(独立店舗かフランチャイズか)によっても異なりますが、利益を出せる店舗を運営していくための基本的な部分は同じです。

店舗マネジメントと混同されがちですが、店舗マネジメントの場合は売上や利益といった経理面を含めたものを指します。

店舗運営の基本的な仕事

店舗運営における基本的な仕事は、主に以下の6つです。

1.店づくり・レイアウト

業種によっても異なりますが、飲食業や美容業ではコンセプトに合わせた店づくりが重要なポイントとなります。ターゲットとする客層や販売するもの、狙う客単価に合った店づくりが店舗運営において欠かせない要素と言えるでしょう。

また店づくりと合わせて意識したいのがレイアウトです。導線を考えたレイアウトにしておくことでスタッフが動きやすく連携も取りやすくなります。

お客様が落ち着く空間も、綿密に考えられたレイアウトから生まれます。

2.お客様への接客・サービス

来店したお客様を案内したり、商品を提供もしくは販売したりします。

最近ではスーパーマーケットなどのセルフレジ、飲食店でのタブレット注文など接客・サービスをほぼ必要としない形も確立しています。とはいえ、人による接客・サービスは店舗運営をする上でゼロにすることは難しいでしょう。

さらに美容室やエステのような技術自体が商品になっている業態では、店舗運営における接客・サービスの重要性はより高いものと言えます。

3.売上管理

健全な店舗運営を行う上で重要となるのが売上管理です。

広域な意味での売上管理は店舗マネジメントや店舗経営にあたりますが、日々の売上やコスト管理などは店舗運営の仕事に含まれます。

予算や経費を把握し、利益を上げていくための売上管理は店舗運営の仕事です。

4.在庫・仕入れ管理

在庫や仕入れ管理は一歩間違えると店舗運営を圧迫しかねません。在庫は売上になるため、経理上は資産として計上しますが、賞味期限切れや流行遅れとなり商品価値を失うと負債に変わります。

美容業ではオンラインストアでの定期配送サービス、飲食店ではお取り寄せグルメといったように各業界で過剰な在庫や仕入れリスクを軽減する工夫がなされています。

5.販促活動・ブランディング

どんな店づくりや商品に力を入れて良い店を作ったとしても、知ってもらわなければ意味がありません。

また一度集客に成功しても、さまざまな理由から失客はつきものです。そのため店舗運営では集客し続けるための販促活動が欠かせません。

同時に店舗のブランディングも重要です。ターゲットとする客層のイメージを定めて、店づくりや接客・サービスを通して店のブランドイメージを高めていく必要があります。

6.人材の採用・教育・勤怠管理

店舗運営において人材はなくてはならないものです。

大手フードサービス業ではタブレット注文やロボットによる配膳などの導入によって、少数のスタッフでの店舗運営が進んでいます。

とはいえ、クレーム対応や不具合が生じたときの対応には人材はなくてはなりません。

円滑な店舗運営をおこなうためにも人材を採用し、教育、管理することは店舗運営の必須業務です。

店舗運営の効率化を妨げている要因

小売業で働く従業員の業務内容についての意識調査

出典:NEXWAY「小売業で働く従業員の業務内容についての意識調査」

NEXWAYが小売業で働く従業員を対象におこなった調査によると、重要だと感じるほとんどの業務において十分な時間が取れていません。

重要な業務に費やす時間を増やすためには、無駄を省いて業務効率化を高める必要があります。

また業種にもよりますが、店舗では人ありきの運営も多く、効率化を下げている特有の問題も生じています。

ここでは主な要因5つについて解説します。

深刻な人手不足

人手不足に関する実態調査

参考資料:厚生労働省「人手不足に関する実態調査」

厚生労働省がまとめた人手不足に関する実態調査によると「(求人)募集をしても、応募がない」と回答した企業割合は、飲食・サービス業をトップに医療福祉やサービス業などで6割を超えています。

人手不足で1人あたりの業務負担は高くなり、日々の業務をこなすので手一杯になってしまい、店舗運営の効率化まで頭が回らないという状況に陥っているのです。

東京商工リサーチの調査によると2024年1〜4月の美容室の倒産件数は46件と過去10年の同期比で最多となっています。円高による美容資材の価格上昇に加え、人件費、光熱費の高騰、そして人手不足が倒産に拍車をかけています。

マニュアル化ができていない

業務のマニュアル化には業務品質の均一化や向上、人材育成におけるコスト削減や指導レベルの統一化など、さまざまなメリットがあります。

マニュアルのない状態では提供するサービスの品質にムラが生じたり、無駄なコストが生まれたりする原因になってしまいます。

それだけでなく複雑な業務が属人化してしまい、特定の人しかできない業務が発生することで運営の効率化の低下にもつながります。

マニュアル化することで個人の采配に委ねられがちな接客サービスにおいても、新人スタッフでも対応でき、お客様からの不満も生まれにくくなるでしょう。

受付で名前を聞く、シャンプーをする、カウンセリングシートを記入するなど、お客様の導線を14のステップに細かく分けて、それぞれで行うサービスを考えています。サービスの内容の詳細を少しだけ紹介すると、たとえばカラーをした後に待っていただく時のお声掛けの内容です。『なぜこの待ち時間が必要なのか』を伝える必要があり、それを説明するマニュアルがあります。

引用:モアリジョブ

情報伝達が円滑にできていない

出典:ProFuture株式会社/HR総研

HR総研が企業の人事責任者に行なった「社内コミュニケーションに関するアンケート」によると、回答した95%以上の人が社内のコミュニケーション不足は業務の障害になると考えています。

事業規模に関係なく、コミュニケーション不足による業務障害の内訳は「迅速な情報共有」が事業規模に関係なくもっとも多く、約8割が支障をきたすと認識していました。

情報伝達が円滑に行われないと口頭での確認が増えたり、何度も同じ話を別のスタッフにしないといけなかったりと、業務に支障をきたします。

無駄な作業が多い

企業のムダ調査

出典:リクルートワークス研究所「企業のムダ調査」

リクルートワークス研究所が行った「企業のムダ調査」の「自組織におけるムダが指摘される業務や作業」に関する設問では、10項目以上において約3割の回答者が無駄を感じているという結果になりました。

とくに「上司が必要だというので実施している」業務や「わざわざ時間がかかる方法でやっている」業務があると回答した人は4割近くに上っています。

無駄な作業に時間を費やすことで本来集中して行いたい仕事に時間を使えなくなり、業務負担が増える原因を作り出しています。

無駄と感じる作業の多くは、人が手や時間をかける必要がないものです。ITツールを活用すれば、煩雑な事務作業ももっと簡素化できます。

デジタルツールを活用していない

現代の店舗運営の効率化に欠かせないのがデジタルツールです。

ここまで紹介した店舗運営の効率化を妨げる原因は「デジタルツールを活用していない」ことに集約されると言っても過言ではないでしょう。

業種や業務によってはアナログでしか対応できないこともあります。しかしデジタルに変えても質が落ちないものに関しては、積極的にデジタルを活用することを推奨します。

出産をきっかけに大きく変えたのが、業務のデジタル化です。

(中略)

アナログでしかできないこと、デジタルでできることが明確になったのも収穫でした。接客はアナログでしかできないけど、そのぶんバックヤードの仕事をデジタル化で圧縮すれば、仕事の質は落とさず、より効率のいいパフォーマンスが発揮できるとわかったんです。

引用: モアリジョブ

店舗運営の効率化に役立つECRSの原則

ECRSの原則

店舗運営の効率化に役立つのが「ECRSの原則」です。店舗運営に関わって間もない人にとっては聞き馴染みのない言葉かもしれません。

ECRSとは業務改善効果の高い施策の順番と考え方を示したものです。4つの原則を基にしており、それぞれの頭文字を取って「ECRS」と言います。

Eliminate(排除)

Eliminateとは「取り除く」という意味をもつ単語です。

店舗運営の効率化を目指す際にまずチェックしたいのが無駄な業務です。単に慣例化した作業など無くしても問題のない業務をあぶり出します。

たとえば技術を必要とする仕事でも今ではYouTubeやインスタグラムで情報発信されており、簡単に知識を増やせます。時間を拘束し座学で行ってきた研修も、簡素化できる方法があるかもしれません。

こうすべき!といった先入観や思い込みを一度取り除いて、ゼロから必要・不要を検討してみましょう。

Combine(結合と分離)

Combineとは「組み合わせる」「結びつける」という意味をもちます。

不要な作業や業務を取り除いたら、次に考えるべきなのが「結合」です。

日々行っている業務の中には、一本化することで更なる効率化につながるものもあります。

たとえばネイルサロンの場合、1人のお客様に対して2人の施術者が付くことで手と足のネイルを同時に進められ、お客様の滞在時間の短縮につながります。

またCombineの工程では同時に「分離」も検討しましょう。業務には分離して行うことで結果的に時間や手間が短縮されるものもあるからです。

Rearrange(入替えと代替)

Rearrangeは直訳すると「並べ替える」「組み替える」という意味になります。

業務の順序や場所、物・人の配置を入れ替えることで、業務の効率化を上げられないかを確認します。

美容室を例にとってみてみましょう。

美容室でヘアカラーをするお客様は、カットのみのお客様よりシャンプーの回数が増えます。シャンプー台に近い席に案内することで、店内を移動する時間の短縮になります。

またカットが苦手でカラーが得意なスタッフは、思い切ってカラー専門スタッフにしてしまうことで研修に費やす時間を削減でき、スタッフのモチベーションアップにもつながります。

Simplify(簡素化)

Simplifyとは簡略化するという意味をもちます。

物事はなぜか次第に複雑になる傾向があります。形式的になっている業務や時間のかかる業務はもっとシンプルにできないか、一度分解して簡素化を検討してみましょう。

先述したデジタルツールを活用すれば自動化できますし、煩雑な作業もパターン化することで属人化の抑制も可能です。

店舗運営の効率化を進めるステップ

PDCAサイクル

では次に店舗運営の効率化の進め方を解説します。店舗運営の効率化を進める際に意識したいのが「PDCAサイクル」です。

PDCAとは1950年代に品質の父と言われるW・エドワーズ・デミングが提唱したフレームワークで、「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」の頭文字を取ったものです。

ステップ1:業務の洗い出し

PDCAの始めはP(計画)です。目標・目的を設定し、実行計画を立てていきます。店舗運営の効率化を目的とした場合、P(計画)プロセスにおける重要ポイントは「業務の洗い出し」です。

店舗運営の効率化を下げる原因を作り出している要因を見つけるために、問題に関わる業務を洗い出していきます。

ステップ2:問題箇所の特定・ピックアップ

ステップ2「D(実行)」では店舗運営の効率化を妨げている問題箇所の特定を行います。

ここでいう実行とは計画立てたことを着実に実行するだけでなく「試行」という意味も含みます。

そのため、問題箇所の特定は安易に行わずに、いくつかのパターンで検証していくことも必要です。

ステップ3:改善案の検討・実行

ステップ3でいよいよ改善案の検討・実行を行います。

先述したECRSの原則のCombine(結合と分離)やRearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)を取り入れましょう。

ここではPDCAサイクルのC(評価)のプロセスを参考に進めます。第1ステップのPの計画通りに進まなかった場合も進んだ場合も、その原因の分析が鍵となります。

進めてきた改善策を数値化し、具体性をもった検証結果をまとめて行きます。

ステップ4:振り返り・さらなる改善案の検討

最後にC(評価)のプロセスでおこなった分析を基に、さらなる改善案を検討します。

改善案を検討する際には下記の3つをポイントに進めます。

  • このまま計画通りすすめる
  • いくつかの点を改善しながら継続する
  • 計画を中止もしくは延期する

置かれている状況により最適な改善策は異なります。

このPDCAサイクルは繰り返し行うことで最適化を目指すものです。うまく行かなかったとしてもさまざまなパターンで繰り返し行ってみましょう。

店舗運営の効率化に役立つツール

ITツール導入のきっかけ

出典:パーソルホールディングス株式会社「ITツール導入のきっかけ」

店舗運営において求められる業務には「店舗運営・人材・売上の管理」「マニュアル作成」「販促管理」などがあります。

それぞれに適したツールを導入することで、情報共有や分析、改善がしやすくなります。

店舗運営管理

店舗運営では店舗間やスタッフ間で、情報共有をしておかなければならないことが多々あります。

規模や業種を問わず、多店舗展開の店舗運営管理におすすめなのが、チェーンストア向けのクラウド型多店舗業務支援サービス「Shopらん」です。

59,000店舗が導入しており、多店舗特有の情報共有やスタッフ教育に便利なツールです。

ほかにも本部と店舗、店舗と店舗のコミュニケーションやマネジメントの効率化におすすめな「STORE+」、さまざまなSNSと公式ホームページの一元管理や口コミをまとめて閲覧できる仕組みも搭載した「Canly」などがあります。

人材管理

シフト管理、採用管理、給与管理、勤怠管理などの効率化におすすめなのが、クラウド型会計ソフトを提供するフリー株式会社の「freee人事労務」や、人事労務ソフトシェアNo.1を誇る「SmartHR」です。

勤怠管理から年末調整、マイナンバー管理まで人事労務に関わる業務を一括管理できます。

さらにSmartHRでは、スキル管理や人事評価などタレントマネジメントも可能です。

売上管理

売上の傾向や客単価など売上管理の煩雑さの解消には「AirREGI」や「スマレジ」がおすすめです。

いずれもPOSシステムと連動しており、商品管理や売上分析までさまざまな機能を合わせもっています。会計ソフトなど他社が提供するサービスとも連携できるため、店舗運営の効率化に役立ちます。

さらにスマレジは楽天市場などECサイトにも連携可能で、美容室やアパレルショップのようなネットショップで販売拡大を見込める業種に向いています。

マニュアル作成

マニュアルは提供するサービスや技術を均等にするために不可欠です。属人化した業務や情報共有にはマニュアル作成に特化したツールを活用しましょう。

とくに美容師やエステティシャンのように技術を伴う研修には「Teachme Biz」や「shouin+」のような動画レビューや編集機能が付いたツールがおすすめです。

マニュアル作成も簡単で、撮影した動画から動画や静止画を切り取り、手順に追加していくだけで簡単にマニュアル作成ができます。

販促管理

顧客へのプロモーションやDMなどの販促活動は不特定多数へ行うのではなく、年齢や来店履歴など顧客情報をもとに効率的に配信することで売上アップを見込めます。

管理や分析機能がついた「Liny」や「reservia」ならお客様に合わせた配信ができ、定期配信機能を利用すれば販促管理の効率化にも有効です。

さらにreserviaならGoogle検索やGoogleマップから直接予約完了できる機能もついており、新規獲得にも貢献してくれます。

店舗運営を改善した具体的な事例

最後にデジタルツールを活用して店舗運営を改善した、具体的な事例を3つ紹介します。

ここでは厚生労働省がまとめた「デジタル化による生産性向上のすすめ(美容業編)」を基に解説します。

事例1「予約システムの導入で作業を中断することが少なくなった」

予約システムの活用のメリットはオンラインで予約が完結するため、予約や問い合わせの電話がなるたびに作業している手を止める必要がないという点です。

また24時間365日いつでもどこでもお客様のタイミングで予約ができるため、失客のリスクが減るのも利点です。

電話での問い合わせが減ったことにより、作業を中断することがあまりなくなりましたね。

引用: reservia

予約管理をアナログでやるのはとても大変なんです。私たちが寝ている間にも予約が入ることもありますし、それを手入力で対応するのは本当に苦労しました。

引用: reservia

事例2「新規の予約は9割がインスタグラム経由」

昨今ではSNSでサロンやお店探しをする人も増えてきています。

業種によってどのSNSが向いているかは異なり、Xやインスタグラム、Facebookなどが代表的なものです。

カットデザインやヘアカラー、ネイルなどはインスタグラムがよく活用されています。直感的に自分の好みや流行りのスタイルが分かるため、店舗の宣伝にも適しています。

新規の予約は9割がインスタグラム経由。多くの方が僕の投稿したスタイルなどを見て来てくださるので、今まで培った技術や魅せ方の研究が活きていると実感しています。

引用: モアリジョブ

事例3「サブスクサービスの導入で安定収入と回転率の向上」

動画配信サービスや服レンタルなどあらゆるジャンルで導入されているサブスクリプションサービス。美容業界や飲食業界でも導入する店舗が増えています。

飲食店ではラーメンやコーヒー、モーニング、美容系ではセルフエステや美容室のシャンプー・ヘッドスパなど様々です。

主に月額制であるため、月々の安定収入につながります。さらにサブスク利用可能時間を店舗の回転率が低下する時間や曜日に設定することで、回転率の向上も期待できます。

まとめ

本記事を総括すると次のとおりです。

  • 店舗運営の効率化を下げている要因を見つける
  • ECRSの原則とPDCAサイクルで業務の見直しと改善
  • デジタルツールの活用で作業効率アップ

人にしかできない業務とデジタルツールを活用できる業務を切り分けて、店舗運営の効率化を目指しましょう。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。