「住宅街における店舗経営ノウハウを知りたい」
「住宅街で開業するメリット・デメリットを知りたい」
店舗の出店場所を探している際に、住宅街での開業を検討して、このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。住宅街での店舗経営は、繁華街とは異なり周辺住民をターゲット層にする必要があります。店舗を黒字化させるために、住宅街ならではの経営ノウハウと集客方法を把握し、徹底的に対策しましょう。
本記事では、住宅街における店舗経営ノウハウを詳しく解説します。住宅街に開業するメリットとデメリット、効果的な集客方法もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
住宅街で店舗経営するメリット
不動産情報サービスのアットホーム株式会社が、貸店舗を借りた経験がある方に「借りた店舗の立地条件」を調査したところ、駅前や商店街・繁華街と回答したケースが多いという結果でした
▼借りた店舗の立地条件
特に飲食店は、住宅街より人が集まりやすい繁華街や駅前の立地が好まれる傾向にあります。ただし、飲食店以外の店舗では繁華街や商店街より住宅街の需要が高く、必ずしも住宅街での店舗経営が不利になるわけではありません。
住宅街で店舗経営すると、繁華街や都市部にはない下記のようなメリットを得られます。
- 初期費用・ランニングコストを抑えられる
- リピーターを獲得しやすい
- 競合が少ない
- テイクアウトやデリバリーの需要が高い
- 地域密着型の店舗として多様な展開ができる
それぞれのメリットを確認して、住宅街で開業すべきか検討しましょう。
初期費用・ランニングコストを抑えられる
「2024年度新規開業実態調査」によると、2024年に開業した事業者の約4割が500万円未満で開業しています。
▼開業費用の比率
さらに平均値は985万円ですが、中央値は580万円です。
▼開業費用の平均値・中央値
住宅街に店舗を出すと、都市部の駅前や繁華街などの人気エリアに比べて賃料を抑えられます。
飲食店の店舗物件をサポートする「飲食店ドットコム」が公表しているデータによると、同じ大阪市内の谷町線沿線でも、都市部の東梅田駅と住宅街の田辺駅周辺では、平均坪単価に2倍以上の差がありました。
▼都市部(東梅田周辺)の店舗賃料相場
▼住宅街(田辺駅周辺)の店舗賃料相場
都市部の店舗では坪単価100万円を超えるケースも珍しくないのに対して、住宅街の店舗では坪単価20万円未満が63%を占めています。
さらにアルバイトやパートを雇う際も、都市部ほど時給が高い傾向にありますが、住宅街では最低賃金や比較的低い時給でも、近隣住民が「近くで働ける職場」を求めて、応募してくれる可能性があります。
店舗経営にかかるコストを抑えたい方には、住宅街での開業がおすすめです。
リピーターを獲得しやすい
住宅街での店舗経営は、近隣住民からの口コミ・評判で収益性が大きく変動します。近隣住民から評判が良いと、口コミで新規顧客が増えてリピーター化します。
住宅街では近隣住民のネットワークが強く、対応やサービスの質が良ければ口コミで拡散されやすいでしょう。反対にサービスの質が悪いと口コミで顧客離れを招き、閉業に追い込まれるリスクもあるので注意が必要です。
住宅街の中にある医療モールに併設されたエステサロン「ソワン沙季」を経営する山下晃代さんは、住宅街に店舗を経営するメリットを下記のように述べています。
20代から80代のご高齢の方までが訪れており、施設にご入居の方はもちろん、面会にいらっしゃったご家族の方にもご利用いただいています。面会に訪れている方のなかには介護疲れを抱えているお客さまもいらっしゃるため、医療施設に隣接してエステサロンがあるととてもよろこんでいただけますね。また医療従事者の方が癒しを求めて来店されることも多く、『夜勤明けにすぐに足を運べるのでうれしい』と好評をいただいています
引用:モアリジョブ|エステサロン「ソワン沙季」代表 山下晃代さん
繁華街や駅近より、住宅街の店舗は近隣住民との関わりが深く、リピーターを獲得しやすいメリットがあります。
競合が少ない
競合が少ない環境でビジネスを展開できる点も、住宅街に店舗を出すメリットです。
マンションの一室にあるプライベートサロン「ディーネ」を20年以上経営している柳原京子さんは、店舗開業の際に出店場所を工夫しています。
ネイルサロンが少ないエリアを調べて出店場所を決めました。やはり競合が多いと新規の集客は難しくなりますからね。当時の白金高輪には、住宅街で需要があるにもかかわらずサロンがまったくありませんでした。そこで出店をしたところ、狙い通り『興味はあるけどどこに行けばいいかわからない』と思っている人の目にうまくとまり、多くの方が足を運んでくださいました。今も、お客さまは近くにお住まいの方や近辺で働いている方がほとんどです
引用:モアリジョブ|プライベートサロン「ディーネ」代表 柳原京子さん
競合が多い環境では、お客さまを獲り合うかたちになるため、自店舗への集客が難しいようです。対して住宅街であれば、競合が比較的少ない市場でビジネスを展開できるため、収益性を確保しやすいメリットがあります。
ただし、住宅街で店舗を開業する際にも、事前に競合店調査を実施しておきましょう。目立たないところに競合店があるかもしれません。
テイクアウトやデリバリーの需要が高い
飲食店の場合、店舗内で食事を楽しむ顧客だけでなく、テイクアウトやデリバリーの需要を重視することが大切です。テイクアウトやデリバリーは席を利用せずに売上げを上げられるため、満席時や繁忙時でも機会損失を防げます。
また、席数が限られている小さな店舗でも、席数に関わらず売上げを上げられるメリットがあります。
住宅街は家が近いので、テイクアウトやデリバリーの需要が高く、面積が限られている店舗でも十分な収益を確保しやすいです。
また、コロナ禍からテイクアウト・デリバリーの需要が増えており、住宅街で外食・中食サービスを提供すれば、高い収益を得られる可能性があります。外食・中食市場情報サービスを提供するサカーナ・ジャパン株式会社の調査によると、2024年度のデリバリー市場規模は7967億円で、コロナ前比90.5%増の推移です。
▼デリバリー市場規模推移(億円)
カフェ併設美容室「GILLIA」は、美容室でありながらも1階にカフェを併設しており、近隣の方々が集まる憩いの場として繁盛しています。オーナーsakaiさんは、カフェと美容業の店内サービスだけでなくテイクアウトの需要に気づき、近隣住民の顧客獲得に成功しました。
テイクアウトもできるので、帰宅途中に立ち寄っていただくご近所のお客さまもいらっしゃいますね。
引用:モアリジョブ|カフェ併設美容室「GILLIA」オーナー sakaiさん
地域密着型の店舗として多様な展開ができる
地域のリピーターと接点が増え、地域コミュニティの場として機能すれば、従来の営業だけでなくイベントや他店舗とのコラボなどさまざまな展開が可能です。
高級住宅街である松濤にある「THE CENTRAL」のゼネラルマネジャー小嶋猛さんは、住宅街ならではの地域密着・顧客との親密な関わりを重視しています。
豊富にドリンクを揃えたり、常連の方にいただいた差し入れを、他のお客さまにおすそ分けをしたりすることも多く、このスタイルがハマる方はファンになってくださいます。
またバーベキュー大会や、開店1周年、2周年パーティーといったイベントを定期的に開催しているんです。お客さまが友達を誘って足を運んでくださるので、毎回100人くらいの規模になります。イベントをきっかけにお店を気に入っていただいた方が、後日髪を切りにご来店されることも多く、好循環が生まれていますね
引用:モアリジョブ|美容室「THE CENTRAL」ゼネラルマネジャー 小嶋猛さん
地域密着型の店舗として地域住民に愛されるようになれば、安定した収益と地域活性化の両方を実現できます。
住宅街で店舗経営するデメリット
住宅街での店舗経営は、メリットだけでなく下記のようなデメリットも存在します。
- 人通りが少なく新規顧客の来店率が低い
- 団体客の獲得が難しい
- 従業員の採用が難しい
- 騒音・臭気トラブルに発展するリスクがある
人通りが少なく新規顧客の来店率が低い
繁華街やオフィス街であれば、人通りが多く通りすがりに来店する方も多いです。
一方で住宅街は通りすがりの来店が少なく、新規顧客を獲得するにはマーケティングが欠かせません。
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出店場所 |
オフィス街 |
繁華街 |
住宅街 |
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来店きっかけ |
・ランチ需要 ・仕事帰りの夕食 ・飲み会 ・同僚との会食 |
・買い物や遊びのついで ・観光・イベント参加時 ・SNS映えによる新規流入 |
・通勤・通学帰り ・家族の外食習慣 ・地域コミュニティでの口コミ |
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店舗運営コスト |
・賃料は高め ・人件費は高め ・日中が中心のため夜間の稼働効率は課題 |
・賃料は非常に高い ・24時間営業など人件費も大きく負担 |
・賃料は比較的安い ・固定客中心で広告費は抑えやすい |
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リピート率 |
・平日はランチや定番利用で多め ・週末や祝日は来客減少 |
・観光客や新規客中心なのでリピート率は低い ・常に新しい流行が求められる |
・固定客や近隣住民の利用が多くリピート率高い ・安定経営につながりやすい |
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競争率 |
・同業態の店舗が密集しやすい ・価格やスピード勝負になりやすい |
・大手チェーンに集客が集中する ・有名店が集中するため競争激しい |
・競争率は比較的低い ・同業の競合店が近隣にある場合は顧客の獲り合いになる可能性も |
とはいえ、繁華街やオフィス街に比べて、リピート率が高く店舗運営コストを抑えやすいメリットがあるため、集客に成功すれば住宅街で安定的な店舗経営を実現できます。
団体客の獲得が難しい
オフィス街や繁華街は団体客の予約など「客単価の高い集客」が見込めます。ただ、住宅街では店舗のキャパシティ上、家族連れなどの予約が限界の場合が多く、会社の打ち上げや同窓会・忘年会などの大人数の団体獲得が難しい傾向にあります。
住宅街で店舗経営する際は、団体客の獲得を目標とせず、個人が何度もリピートしたくなる「親しみやすい馴染みの店」を目指しましょう。
従業員の採用が難しい
学生アルバイトなどの従業員を獲得するにも、労働者の多くは繫華街やオフィス街などアクセスのしやすい場所で仕事を探すものです。そのため、住宅街で従業員を雇うには近隣住民から募集をかける必要があり、応募数が限られてしまいます。
日本政策金融公庫が実施した「2024年度新規開業実態調査」によると、開業時の平均従業員数は2.9人です。
▼開業時の従業員数
業種や店舗規模によって必要な従業員数は異なりますが、採用が難しい場合でも効果的な採用戦略を実施すれば、必要な人員を確保できます。下記の資料では、美容・ヘルスケア業界が採用戦略を立てる際に役立つ情報をまとめていますので、人材採用を成功させるために読んでおきましょう。
騒音・臭気トラブルに発展するリスクがある
住宅街に店舗を出すと、周辺は人が生活している住宅ばかりなので、騒音や臭気に気を付けなければなりません。近隣住民とトラブルに発展すると、店舗の評判が悪くなるので要注意です。
騒音・臭気トラブルを予防するために、下記の対策を実施しましょう。
【騒音トラブルへの対策】
- 早朝や深夜の営業は控える
- 閉店作業の音(食器片付け・ゴミ出し・搬出入)も近隣配慮を徹底する
- 厨房や換気扇の音漏れを抑える消音ダクトを設置する
- スピーカーは「天井埋め込み型+音量制御」で外部に漏れにくい工夫を施す
- 出入り口付近に風除室や二重ドアを設置し、音漏れを軽減する
- テラス席や屋外での長時間の利用を制限する
- 店員が店外で大声で会話・呼び込みをしないよう徹底する
【臭気トラブルへの対策】
- 厨房からの排気は、屋上までダクトを延長し、隣接住宅に直接当たらないよう配慮する
- 活性炭フィルターや脱臭装置を導入する
- 強い油煙や香りが出やすい調理(焼肉・フライ・スパイス系)の扱いは要注意
- メニューを工夫して「煙が少ない調理法」に寄せる
- 生ゴミは毎日廃棄し、店舗内や外に溜めない
- 業務用密閉ゴミ箱を導入する
- 清掃・消臭剤を活用して害虫・異臭対策を徹底する
それぞれの対策を実施して、騒音・臭気トラブルを防いで、近隣住民から愛される店舗運営を心がけましょう。
住宅街の店舗経営におすすめの集客方法
住宅街は人通りこそ少ないものの、地域密着による信頼性や高いリピート性、テイクアウト・デリバリー需要のメリットがあります。
繁華街やオフィス街にはない地域特性を活かして、異なる手法を組み合わせれば、効率的に集客できます。
住宅街の店舗経営におすすめの集客方法は、下記の5つです。
- MEO対策
- SEO対策
- SNSマーケティング
- チラシやDM配布
- デリバリーサービスへの登録
それぞれの集客方法を確認して、自店舗に適した方法で新規顧客を獲得しましょう。
MEO対策
住宅街において、来店のきっかけをつくるうえで重要なのがMEO(Map Engine Optimization)です。ECマーケティング株式会社が、Googleマップを活用している店舗に「MEO実施の効果」を調査した結果、約6割が来店数・問い合わせ数の増加を実感しています。
▼MEO実施の効果
Googleビジネスプロフィールに、下記のような店舗情報を細かく登録すると、地名+業態検索で上位表示を狙えます。
- 住所
- 営業時間
- 写真
- メニューなど
多くのユーザーは「近所のカフェ」「地域名 レストラン」などで検索して、来店する店舗を探します。そのため、MEO対策は新規顧客への接触機会を大幅に増やせます。加えて、口コミへの返信や投稿機能を活用すれば、地域内での信頼と情報更新を継続的に行い、検索上位を維持できるのです。
MEO対策では、利用者とのコミュニケーションや鮮度の高い情報提供が重要になるため、「口コミが投稿された場合は返信する」「最新の写真や情報に更新する」など、アルゴリズムで上位表示される工夫を実施しましょう。
SEO対策
ホームページやブログを活用した基本的なSEO対策は、住宅街店舗における長期的な集客方法です。口コミラボが実施した「消費者アンケート調査」によると、お店を探す際の方法としてGoogle検索がもっとも利用されていました。
▼お店を探す際に何で調べる?
また、同調査によるとSNSの利用頻度が高いZ世代でも、お店探しの際はGoogle検索をもっとも利用している傾向が判明しました。
▼Z世代がお店を探す際の方法
店舗の強みやこだわり、地域や業種に関連するキーワードで、記事や紹介ページを充実させれば、検索エンジン上での認知が広がります。
記事やページが蓄積されることでWeb資産となり、来店意欲の高い見込み客を継続して集められる点が魅力です。一方、成果が出るまでに時間と努力が必要であるため、継続的な更新・改善を意識することが大切です。
自社でSEO対策を実施できない場合は、外部の専門家へのアウトソーシングも検討しましょう。
SNSマーケティング
住宅街にある店舗では、SNSを通じた「ファンづくり」が集客のカギを握ります。InstagramやX(旧 Twitter)、LINEなど、ターゲット層に応じたプラットフォームを選び、料理や店内風景、スタッフの様子などを魅力的に発信しましょう。
InstagramやTikTokでは、おしゃれな写真で視覚的訴求を行い、ハッシュタグによる発見性も高められます。アシスタント時代からSNSを活用し、デビュー後すぐに予約枠を埋めた美容師のnanaさんは、SNS発信による「ファンづくり」が集客に重要だと語ります。
今でこそ当たり前だと思われていますが、周りのSNSに取り組んでいた先輩方から教えていただいていたので、常々「ファン化」を意識しながらSNSと向き合ってきました。
引用:モアリジョブ|美容サロン「GARDEN Shibuya」スタイリスト nanaさん
SNS上で「この店の常連になりたい」と思わせるコミュニケーションを重視し、コメントやDMの返信も迅速に行い信頼性を積み上げましょう。SNSフォロー者にクーポンを提供するなどのキャンペーンも、リピーター獲得につながる施策です。
チラシやDM配布
住宅街の店舗では、アナログながらチラシやDMの配布が集客につながる可能性があります。住宅街で店舗経営するうえで、重視すべきターゲット層は近隣住民なので、チラシを投函できる距離の住宅に直接アプローチをかける集客方法が適しています。
モアリジョブが、2021年にコロナ禍の集客に悩む美容師を対象に「現在実施している集客方法」を調査した結果、ホームページ制作やSNS運用の次に、チラシやDMの配布が挙げられました。
▼集客のために導入している方法は?
チラシやDMは、近隣住民への情報浸透に優れ、店舗の存在を認知してもらう最初のステップとして効果的です。チラシは「一目で内容が伝わるデザイン」を重視し、クーポンや割引サービスを付けるなど、手に取ってもらう工夫を施しましょう。
地域情報誌への広告掲載や、DMでのキャンペーン案内も初来店を誘導する集客方法として有効です。プレオープン前にチラシやDMを近隣住民に配布して、店舗の認知度を高めましょう。
デリバリーサービスへの登録
住宅街で飲食店を運営する場合、テイクアウト・デリバリー需要が高いため、デリバリーサービスへの登録で認知度を高められます。近隣住民は「おいしい状態」で自宅まで届く飲食サービスを好み、店舗からの距離が近いほど注文してもらえる可能性が高いです。
出前館やUber Eatsなどの主要プラットフォームに登録すれば、メニューやサービス内容をオンライン上で訴求できるため、新たな顧客層へアプローチできます。コロナ禍以降、宅配需要は拡大傾向にあるため、開業早期にデリバリーサービスへ登録して近隣住民への認知度アップを狙いましょう。
住宅街で店舗経営する際のコツ
住宅街での店舗経営は、駅前や繁華街のように大量の通行人をターゲットにするのではなく、地域住民との関係構築が重要です。短期的な集客よりも、長期的な信頼とリピートを生む工夫が、安定的な収益確保につながります。
住宅街で店舗経営する際は、下記のコツを実践しましょう。
- コンセプトや事業内容に適した出店場所を選ぶ
- 地域住民の特性とニーズを理解する
- 地域密着のイベントを開催する
それぞれのコツを実践して、住宅街での店舗経営を黒字化させましょう。
コンセプトや事業内容に適した出店場所を選ぶ
住宅街の中でも下記のような種類があり、それぞれの特性を理解しておくことが大切です。
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住宅街の種類 |
特徴 |
適している店舗 |
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新興住宅街 |
子育て世帯や若年層のファミリー層が多い |
ベーカリーやファミリー向けの店舗 |
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成熟住宅地 |
長年住んでいる高齢者世帯が多い |
落ち着いた雰囲気や健康志向の業態 |
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単身者居住地 |
一人暮らし世帯が多い |
コンビニやテイクアウト中心の業態 |
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高級住宅街 |
経済的に余裕がある世帯が多い |
品質やブランド力を重視した上質なサービス |
店舗のコンセプトや事業内容と住宅街の特性を照らし合わせ、マッチする立地を選ぶことが店舗経営のコツです。
地域住民の特性とニーズを理解する
住宅街で長期的に店舗を運営していくには、地域住民の属性やライフスタイルを理解する必要があります。
たとえば、ファミリー層が多いエリアでは「子連れでも安心して利用できる」店舗が、高齢者が多いエリアでは「バリアフリーで落ち着ける雰囲気」が求められます。単身者が中心のエリアでは「価格の手頃さ」や「短時間で利用できる手軽さ」に需要が集まるでしょう。
住民の特性を調査するには、自治体の人口統計や地域イベントの参加層を確認する市場調査が必要です。住民の声に耳を傾け、サービスや商品を調整すれば、自然と「地域に愛される店」として定着していきます。
地域密着のイベントを開催する
住宅街の店舗経営では、ただサービスを提供するだけでなく、地域交流の拠点として機能させることが大切です。
地域住民が集まる憩いの場として広まれば、リピーターを増やして安定的な収益を見込めます。地域住民に愛される店舗として認知度を広めるために、下記のような地域密着型のイベントを開催しましょう。
- オープン時に試食会や内覧会を行う
- 周年記念に特典付きキャンペーンを実施する
- 季節ごとのイベント(ハロウィン・クリスマス・夏祭りなど)に合わせた特別メニューを提供する
- 子ども向けのワークショップを開催する
- 住民参加型のフリーマーケットを開催する
- 住民参加型のバーベキューを開催する
地域密着のイベントを開催すれば、口コミによって店舗の存在が広がり、新規顧客獲得にもつながります。
住宅街で店舗を出店する前の事前準備
住宅街での出店は、地域住民を中心としたリピーター戦略が重要になり、開業前の事前準備を怠るとトラブルや経営難に陥るリスクがあります。
下記の事前準備を行って、店舗の出店場所や資金準備・マーケティング施策の実施など、店舗開業の準備を進めましょう。
- 用途地域を確認する
- 商圏分析を行う
- ペルソナ設定を徹底する
- 余裕を持って運転資金を準備する
- 店舗併用住宅を検討する
開業前に上記の準備を進めておけば、住宅街の店舗経営で失敗するリスクを軽減できます。
用途地域を確認する
住宅街で出店する際には、「用途地域」を確認する必要があります。
用途地域とは、都市計画法で定められた制度で、土地の利用目的を「住居系」「商業系」「工業系」などに分類し、どのような建物を建てられるかを規制するものです。用途地域の分類は、国土交通省が公表した下記の表を参考にしてください。
たとえば、第一種低層住居専用地域では、静かな住環境を守るために大規模店舗の出店はできず、小規模な飲食店やサービス業に限られます。一方、近隣商業地域や準住居地域であれば幅広い業態でビジネスを展開可能です。
出店候補地の用途地域を、事前に自治体の都市計画図や国土交通省の情報サイトで調べて、営業開始後の違反やトラブルを未然に防ぎましょう。
商圏分析を行う
住宅街の出店では「その地域にどれだけの需要があるか」を把握するために、商圏分析が欠かせません。商圏分析では、対象エリアの人口・年齢構成・世帯数・平均所得などを調べ、どの層にニーズがあるかをリサーチしましょう。
さらに、競合店舗の数や業態を調査し「競合が少なく需要が高い立地」を選べば、住宅街の店舗経営を成功へと導けます。近隣に理容店はあるものの、まつ毛パーマやカラーなどに対応できるおしゃれな美容サロンがない場合は、競合と大きく差別化できるため、顧客の獲り合いを防げるでしょう。
ゼンリンや商圏データサービスなどを活用すると、人口動態や人流を可視化でき、店舗を出店する立地を判断できます。
ペルソナ設定を徹底する
地域密着で長く愛される店舗づくりには、「誰に来てもらいたいか」を明確にするペルソナ設定が欠かせません。
たとえば、住宅街で美容サロンを開業する際は「30~40代の女性客・共働きの子育て世帯」など具体的な人物像・生活像を描きましょう。ペルソナを設定することで、商品ラインナップや価格帯、営業時間など店舗の方向性を定められます。
また、ペルソナ設定を徹底すれば、マーケティングやサービス内容に一貫性が生まれ、無駄な広告費も削減できます。
余裕を持って運転資金を準備する
開業資金だけでなく、半年~1年ほどの資金は用意しておきましょう。なぜなら、オープン直後は固定客が定着するまで時間がかかるため、売上げが不安定になるケースが多いからです。
日本政策金融公庫が発表した「2024年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達額は平均1197万円でした。
▼開業資金の平均調達額
設備投資や広告費に資金を使い切ってしまうと、初期赤字を補えず閉店リスクが高まります。余裕資金を確保することは、予期せぬトラブルにも対応できる安心材料となるため、十分な運転資金を用意してから開業しましょう。
店舗併用住宅を検討する
住宅街で出店する際には「店舗併用住宅」を選択肢に入れるのもひとつの手です。店舗併用住宅とは、住居と店舗を一体化させた建物で、自宅の一部を店舗として利用する形態です。
店舗併用住宅には、下記のようなメリット・デメリットがあるため、自身のライフスタイルや事業計画に合うか検討してみましょう。
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メリット |
デメリット |
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まとめ
住宅街における店舗経営のポイントは、下記のとおりです。
- 住宅街は競合が少ない環境で、リピーターを獲得しやすい
- 新規来客や団体客の獲得が難しいので集客・マーケティングが必要不可欠
- 地域密着型の店舗として愛されるために地域イベントや交流が欠かせない
- コンセプトや事業内容と地域特性の相性を見極めて出店場所を決める
- 開業前の事前準備を徹底して、閉店リスクを下げる
本記事で紹介した集客方法や開業前の事前準備・店舗経営のコツを実践して、住宅街で愛される店舗づくりを目指しましょう。
- 執筆者情報
- 山藤 寛司(Santo Hiroshi)