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効果的な人材育成の具体例をわかりやすく解説!

効果的な人材育成の具体例をわかりやすく解説!

人材育成をどのように進めるべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

企業の業績や顧客満足度を向上させるには、人材育成によって従業員のレベルを高めることが大切です。どのような方法が効果的なのか、具体例を参考に自社に合う育成方法を考案しましょう。

本記事では、効果的な人材育成手法の具体例7つと、他社の成功事例10選を紹介します。人材育成の施策を考案する際の必要要素もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

人材育成とは?

人材育成とは、従業員の能力を高めて、企業の成長や業績向上に貢献できる人材を育てることです。人材育成によって従業員一人ひとりの能力が高まれば、生産性も向上し業績アップにつながります。

さらに、質の高いサービスを提供できるスキルや知識が身につけば、顧客満足度を向上させて、企業の評判アップにもつながるため重要です。

人材育成に注力するべきか悩んでいる方は、次のポイントを確認しましょう。

  • 人材育成の定義と目的
  • 人材育成の重要性とメリット

以下では、それぞれの詳細を解説します。

人材育成の定義と目的

農林水産省が公表した資料によると、人材育成の定義は下記のとおりです。

企業の経営戦略の実現に向け貢献できるよう、従業員を職種や階層などでグループ分けを行い、その階層において必要な知識、スキルの習得を促すとともに、意欲を喚起することで人材を育成すること

引用:農林水産省|第1章 経営人材育成について

人材育成とは、従業員の知識習得やスキルアップ、さらにモチベーションを向上させることを指します。職種や入社年数などで従業員をグループ分けし、一律のスキル習得を目指すことで、組織全体の能力を向上させます。

また、厚生労働省が公表した「働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」によると、全体の8割を超える企業が人材育成を行う目的を「従業員の能力アップにより労働生産性を向上させる」ためと回答しました。

▼人材育成を行う目的

1_人材育成目的

その他にも全体の6割ほどが「従業員のモチベーションを維持・向上させる」と「数年後の事業展開に必要な人材を育成する」ためと回答しています。

人材育成は、従業員の能力やモチベーションを高め、企業全体としての業績アップおよび安定的な発展を図るために重要な施策です。

人材育成の重要性とメリット

厚生労働省が公表した「人材育成の現状と課題」によると、「競争力をさらに高めるため強化するべきもの」として「人材の能力・資質を高める育成体系」がもっとも注目されています。

▼自社の競争力の源泉と、競争力を更に高めるため強化すべきもの

2_競争力強化に必要なもの

人材育成が重要視される理由は、以下のようなメリットがあるためです。

人材不足を補える

少子高齢化に伴い労働人口が減少している現在では、従業員一人ひとりの能力を高める人材育成が必要です。人手不足で悩んでいる企業も、各従業員の能力が高ければ、生産性を向上させて業績アップにつなげられます。

採用力・定着率向上につながる

人材育成に注力している企業は、労働者からすると「自分のスキルを磨きキャリアアップのチャンスが拡がる優良企業」に見えるため、できるだけ長く働きたいと考えるものです。そのため、採用力・定着率を向上させて人材不足の課題を解消できます。

顧客満足度を向上させられる

従業員の能力が高ければ、質の高いサービスを提供し納品スピードも早まるため、QCDが向上します。QCDは、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の頭文字を取った顧客満足度の向上につながる重要な指標です。

今後の事業展開に必要な人材を確保できる

人材育成は、人材不足の課題を解消するだけでなく顧客満足度を向上させ、将来的な事業発展に備えるために重要です。厚生労働省が実施した「令和5年毎月勤労統計調査特別調査」によると、平均勤続年数は13.4年でした。

性別

平均勤続年数

男女計

13.4年

男性

14.7年

女性

12.5年

現在、主戦力として活躍しているベテラン従業員も、数年後には退職している可能性があり、企業が長期的に業績を上げるためには若手人材の育成が必要不可欠です。

将来的な事業展開に向けて、若手人材を育成し顧客満足度の維持と新規顧客の獲得を行い、組織力を向上させましょう。

効果的な人材育成の必須要素

人材育成の施策を考案するためには、必須要素を把握しておく必要があります。

効果的な人材育成の必須要素は、次のとおりです。

  1. 明確な目標設定がされている
  2. 継続的なフィードバックと評価システムがある
  3. 学習文化と機会が提供されている
  4. スキルレベルに合わせたカリキュラム設定がある

以下で、それぞれの必須要素を確認しましょう。

1.明確な目標設定がされている

目的が不明瞭な状態で人材育成計画を実施しても、思いどおりの成果を得られない可能性があります。自社の課題を洗い出し、人材育成計画で達成するべき目標を明確化することで、実施するべき施策を考案できます。

人材育成の目標設定では、組織の経営戦略と連動した具体的な目標を設定するのが重要です。例えば、経営戦略が「市場でのシェア率を向上させる」ことであれば、競合他社にはない独自のスキルやアピールポイントを磨く人材育成計画が適しています。

また、いきなり達成が難しい目標を掲げても、従業員のモチベーションを向上させられません。短期・中期・長期のバランスのとれた目標設計で、最終目標であるKGI(重要目標達成指標)を達成するために中間プロセスの目標であるKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。

目標達成率を伝えて従業員のモチベーションを維持・向上させるために、定期的な評価とフィードバックによる進捗管理が必要です。

2.継続的なフィードバックと評価システムがある

研修や自己学習を促すだけの人材育成では、従業員のモチベーションを維持できません。継続的なフィードバックと評価システムがあれば、従業員が自発的にスキルアップに励む環境をつくれます。

例えば、定期的な1on1ミーティングを実施して、上司からのフィードバックがあれば、研修に取り組む姿勢や自己学習のやり方を改良できます。

モチベーションを維持・向上させるためには、上司や部下、同僚などさまざまな関係者から評価される「360度評価」など、多角的な視点からのパフォーマンス評価が効果的です。

成長度合いを可視化する評価指標があれば、従業員が目標に対する達成度を把握し、自発的にスキルアップに励めます。

例えば、厚生労働省が公表した「人材育成の活用方法」で紹介された「職業能力評価シート」のように、自己評価と上司評価、上司からのフィードバックを記載できるツールがあれば、モチベーションを維持しながら研修や自己学習の推進が可能です。

▼職業能力評価シートの具体例

3_職業能力評価シート例

なお、厚生労働省が実施した「上司からのフィードバックと働きやすさについて」の調査によると、上司からのフィードバックが実施されないと「働きにくい」と感じる従業員が多く、頻繁にフィードバックを行っている事業所では「働きやすい」と感じる結果が判明しました。

▼上司からのフィードバックの頻度と働きやすさ

4_フィードバックの頻度と働きやすさ

継続的なフィードバックは、従業員の働きやすさにもつながるため、評価システムの導入とあわせて定期的なフィードバックを実施してください。

3.多様な学習機会が提供されている

人材育成の効果を高めるには、企業が一方的に研修を実施するだけでなく、従業員が能動的に学べる環境づくりが必要です。

従業員が学びたいと思った際に学べる学習環境を整備すれば、従業員の自主性を育み、能動的にスキルアップを促せます。

なお、厚生労働省が公表した「人材育成の現状と課題」によると、1割強の企業が将来の管理職や経営幹部を計画的に育成するための早期選抜を実施しています。

早期選抜者を対象に実施している人材育成の施策は、次のとおりです。

▼早期選抜者に実施している育成メニュー

5_早期選抜者に実施している育成メニュー

また「人材育成の現状と課題」で、管理職の育成・登用方針別に人材育成の取り組みを調査した結果、次のような施策が挙げられました。

▼管理職の育成・登用方針別にみた人材育成の取り組み実施状況

6_人材育成のための取組実施状況

上記の内容をふまえ、より効果的な人材育成を実施するためには、OJT、Off-JT、メンタリング、eラーニングなど多様な学習機会を提供することが大切です。

さらに、知識共有を促進する職場環境が整えば、従業員それぞれの知識を組織内に共有し、組織全体の能力アップにつなげられます。

4.スキルレベルに合わせたカリキュラム設定がある

効果的な人材育成を実施するためには、従業員それぞれのスキルレベルに合わせたカリキュラム設定が必要です。

すべての従業員に同じ内容・レベルの研修を実施しても、スキルが不足している場合はついてこれず、すでに到達しているレベルの従業員には研修が不要になります。

そこで従業員の現在のスキルレベルと潜在能力に応じたカスタマイズされたプログラムを設定すれば、個々に必要なスキル・知識を習得させ、組織全体の競争力を高められます。

例えば、厚生労働省が公表した「人材育成の活用方法」で紹介されたキャリアアップを参考に、職業能力評価基準で設定されるレベルに沿った能力開発の道筋を明確化しましょう。

▼キャリアアップの具体例

7_キャリアアップ例

▼レベル区分の目安

8_レベル区分の目安

具体的なキャリアアップを提示すれば、従業員が自発的にどのスキルを磨くべきか、目指すべき方向性と取り組むべき自己学習の内容を明確化できます。

技術的スキルとリーダーシップやコミュニケーション能力などのソフトスキルを育成したうえで、明確なキャリアパスの提示と長期的な成長支援が必要です。

具体的な人材育成手法

商工中金が公表した「中小企業の人材育成の状況について」によると、約8割の中小企業がOJTに取り組んでいる結果が判明しました。

▼中小企業の人材育成の施策別取組状況

9_中小企業の人材育成取り組み率

しかし、OJTのみに取り組んでいる企業の割合はわずか7%であり、ほとんどの企業は複数の施策を組み合わせて実施しています。

具体的な人材育成の手法として、下記のような施策が効果的です。

  1. オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)
  2. オフ・ザ・ジョブ・トレーニング(Off-JT)
  3. eラーニング
  4. メンタリングとコーチング
  5. メンター制度
  6. MBO(目標管理制度)
  7. 1on1ミーティング

それぞれの施策を確認して、自社で実施する人材育成手法を検討しましょう。

1.オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)

オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)は、実際に現場で働きながら仕事内容やスキルを習得する研修手法です。基本的に先輩従業員と新人従業員がバディを組み、業務内容や作業手順を確認しながら、仕事に慣れていきます。

経験豊富な先輩に付いて、実際に働きながら業務習得を目指す「シャドーイング」がOJTの基本的なスタイルです。先輩従業員に進捗を確認しながら作業に慣れていき、顧客と接さない仕事や簡単な仕事など、責任の少ない業務から指導できるため、安心して作業に慣れてもらえるメリットがあります。

簡単なタスクから複雑なタスクへと移行していき、新人が独り立ちできるまで教育が続くため、定着率向上にもつながります。実際に、厚生労働省が実施した「能力開発の実施と従業員の離職率との関係」の調査でも、計画的なOJTを実施した企業は、従業員の離職率が低い傾向にありました。

10_OJTと離職率

また厚生労働省が公表した「人材開発政策の現状と課題について」でも、教育訓練の中でOJTを重視している企業は7割以上もいました。

11_OJTを重視している割合

以上のようにOJTは、先輩従業員の指導力を育成し、新人従業員が安心して働けるまで責任感の少ない仕事からステップアップして育成できるため、多くの企業が取り組んでいます。

2.オフ・ザ・ジョブ・トレーニング(Off-JT)

オフ・ザ・ジョブ・トレーニング(Off-JT)は、セミナーや集合研修など業務から離れて知識を習得する研修手法です。大人数を研修会場に集めて人材育成を行うため、研修にかける手間を軽減できます。

ただし研修会場の利用費や会場までの交通費などコストがかかり、現場を離れて研修するため仕事終わりや休日に時間を取らなければなりません。業務時間内に研修を実施する場合は、業務がストップするため事前にスケジュールを調整する必要があります。

Off-JTは、座学形式の講座聴講だけでなく、下記のような実践形式の研修も可能です。

Off-JTの施策例

概要

具体例

ワークショップ

参加者が主体的に取り組むグループでの問題解決演習

グループでの謎解き脱出ゲーム研修

ロールプレイング

実践を想定した模擬演習

接客シナリオの実践

ケーススタディ

実際に起きた事例を分析・検討する研究演習

実際のサロン運営の課題解決

Off-JTは一同に従業員が集まって研修を実施するため、社内コミュニケーションの活性化やエンゲージメントの向上が期待できます。実際に厚生労働省が実施した「能力開発の実施と従業員の離職率との関係」の調査では、OFF-JTを実施している企業は離職率が低い結果が判明しました。

12_OFF-JTと離職率

また、厚生労働省が実施した「令和4年度能力開発基本調査」によると、実施した・今後実施したいOFF-JTの内容は、以下のとおりです。

▼実施した・今後実施したいOFF-JT(複数回答)

13_実施した・実施予定のOFF-JT

新人・中堅・管理職など役職別の集合研修を実施した割合が多く、語学やプログラムスキルなど特定のスキルアップを目的とした研修の実施率は低い傾向にあります。

3.eラーニング

eラーニングは、インターネットを活用してオンライン教材で人材育成を行う研修手法です。パソコンやスマートフォンから研修を受講できるため、時間や場所の制限を解消して、従業員のスキル・知識習得を促せます。

eラーニングで実施できる具体的な研修内容は、次のとおりです。

eラーニングの主な内容

具体例

オンデマンド動画講座

あらかじめ録画した動画コンテンツを、インターネット上で視聴し学習するオンライン研修

インタラクティブな学習モジュール

インターネット上でリアルタイム配信するオンライン研修

パソコンやスマートフォンでシステム上に用意されたオンライン教材を視聴するだけでなく、リアルタイムで質疑応答を交えながらオンラインで研修することも可能です。

なお、厚生労働省が実施した「令和4年度能力開発基本調査」によると、自己啓発の実施方法でもっとも取り組まれている施策が「eラーニングによる学習」でした。

▼自己啓発の実施方法(複数回答)

14_自己啓発の実施方法

eラーニングによる学習は、受講者が時間や場所を選ばずに学習できるだけでなく、研修会場の用意や交通費がかからないため、従業員側と企業側双方の負担が少ないメリットがあります。

4.メンタリングとコーチング

メンタリングとコーチングを行えば、従業員の不安や心配を解消し、人材育成と定着率の向上を同時に実現できます。

メンタリングは、指導を受けるメンティが指導者であるメンターとマンツーマンで対話し、不安や疑問などを相談し解消する手法です。コーチングも同じように、指導を受けるクライアントが指導者であるコーチと対話し、課題解決に向けてのアドバイスを受けます。

双方の違いは、対話の中でアドバイスがあるかどうかです。

メンタリングはメンターの人生経験やノウハウをメンティに共有し、課題解決に向けてアドバイスするのに対して、コーチングではコーチがクライアントの質問や問い合わせを傾聴するのみに留まります。

コーチングでは、コーチの人生経験やノウハウに基づいたアドバイスを得られないため、クライアント自身が対話の中から答えを導き出す必要があります。

メンタリングやコーチングでは、1対1の指導セッションと定期的なフィードバックによって、従業員の悩みを解消しながら必要な知識やスキルを教育できます。

さらに、指導者である先輩従業員のマネジメントを磨けるため、指導者と受講者双方の人材育成を同時にできる点が大きなメリットです。

5.メンター制度

メンター制度は、新人従業員や若手従業員を先輩従業員がマンツーマンでサポートする制度です。

OJTが技術的な指導を行うのに対して、メンター制度は従業員の悩みや心配など精神的なケアを目的としています。新人従業員の将来的なキャリアパスや仕事に関する悩みを先輩従業員に相談できるため、精神的に安定した状態で仕事に取り組めます。

厚生労働省が公表した「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によると、「メンター制度で得られる直接的な効果」は、次のとおりです。

15_メンター制度の主な効果

メンターである先輩社員の人材育成意識が向上し、メンティの後輩社員はモチベーションや知識・スキルが向上するため、双方の人材育成に高い効果を発揮します。

なお、メンター制度を導入する際は、下記の「施策を成功させるために必要なもの」を準備しましょう。

16_メンター制度を成功させるために必要なもの

事前に説明会や研修会を行い、組織全体にメンター制度の導入を周知し、組織全体で施策に取り組む風土を構築することが大切です。

6.MBO(目標管理制度)

MBO(目標管理制度)は、「Management by Objectives(目標管理)」の略称で、1945年にアメリカの経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した人材育成手法です。

MBOでは、企業や上司が目標を決めるのではなく、従業員自らが組織の達成目標に向けて、自分が貢献できる目標を設定します。上司と部下が相談しながら個人目標を定め、定期的なフィードバックにより達成度の評価を受ける流れが一般的です。

MBOは、従業員が自ら目標を設定し、達成するために必要な行動を考え、実行することでモチベーションの維持と「自発的に目標達成を目指す自主性と行動力」を養えます。

MBOを実施するメリットは、主に次のとおりです。

企業側のメリット

従業員側のメリット

組織の目標と方向性を統一できる

セルフマネジメントスキルが身につく

人材育成につながる

目標達成を目指す過程で成長できる

人事評価がしやすくなる

モチベーションが向上する

人材育成につながるだけでなく、企業側と従業員側双方にメリットがある施策なので、組織力を向上させたい場合はMBOを実施しましょう。

7.1on1ミーティング

1on1ミーティングは、人材育成やモチベーション向上を目的とした、上司と部下によりマンツーマンでの面談です。

複数人で行う通常のミーティングでは話しづらい「悩みや相談」「私的な会話」などを通じて、上司と部下の信頼関係を構築する目的もあります。普段は相談しにくい内容を上司に打ち明け、課題を解決することで、悩みを解消した状態で仕事に取り組めるようモチベーションを管理します。

週1回や月1回など頻度は組織によって異なりますが、定期的に上司とマンツーマンで面談できる機会を設ければ、部下は現在抱えている課題を打ち明けやすいでしょう。

リクルートマネジメントソリューションズが実施した「1on1ミーティング導入の実態調査」によると、1on1ミーティングを導入した目的・背景として次のような理由が挙げられました。

▼1on1ミーティングを導入した目的・背景

17_1on1ミーティング導入目的

さらに、1on1ミーティングを導入したことで、個人や組織に生じた影響は、次のような効果を得ています。

▼1on1ミーティング導入により得られた効果

18_1on1ミーティング導入効果

▼1on1ミーティング導入により職場・組織に生じた変化

19_1on1ミーティング職場や現場への効果

個人的な影響と組織単位での効果のどちらも「上司と部下の関係性が良好になった」と回答した割合が最多です。さらに部下と上司のモチベーション向上や職場の雰囲気が改善されたことで、より働きやすい環境へと変化しています。

効果的な人材育成の具体例

人材育成の施策を考案する際は、以下のような他社で効果があった具体例を参考にしましょう。

ロミンガーの法則:Nike

世界的なスポーツメーカー「Nike」は、人材育成プログラムに「ロミンガーの法則」を取り入れています。

ロミンガーの法則とは、米国のリーダーシップ研究機関であるロミンガー社が、さまざまな経営者を対象に「リーダーとしての成長に役立った要素」を調査した結果、下記のバランスが重要だと判明した法則です。

成長に重要な要素

割合

経験

70%

薫陶(他者からの影響による成長)

20%

研修

10%

20_ロミンガーの法則

引用元:人材育成の「70:20:10」の法則| 一般社団法人日本能率協会JMA

自らの経験が70%、他者からの薫陶が20%、研修が10%と、経験による成長が大部分を占めています。

ナイキの人材育成プログラムが実務経験(70%)、周囲からの学び(20%)、正式な教育(10%)のバランスを意識した構成になっているため、ロミンガーの法則を意識した人材育成の具体例として注目されました。

社内のリーダーシップ育成プログラムなどで、従業員自らがプロジェクトに取り組み、現場での実践や先輩社員からの指導、チームメンバー間のフィードバックなどを通じた「経験学習」を重視しています。

ロミンガーの法則をもとにした人材育成プログラムを通じて、チームメンバー同士がフィードバックし合うことにより、エンゲージメント向上とイノベーション文化の醸成、さらにリーダーシップ能力の強化につながった事例です。

メンタリングプログラム:Google

世界的なIT企業「Google」では、従業員同士が学び合い、コーチングし合えるメンタリングプログラムを人材育成に取り入れています。

Googleで実施されているトレーニングの80% が、「g2g(Googler-to-Googler)」と呼ばれる社員同士のネットワークを通じて行われます。さまざまな部門の社員が、コースの指導や1on1メンタリング、学習教材の構築など人材育成に積極的な姿勢で取り組んでいます。

メンタリングプログラムでは、新入社員1人に対して1人のメンターを割り当て、定期的な1on1ミーティングを実施して、悩みやキャリアパスの相談がしやすい環境を整えました。

業務上の課題解決を支援するだけでなく、キャリア開発のアドバイスを提供することで、新入社員が早期戦力として活躍しています。

さらにメンターから組織文化を伝承するため、メンティにもGoogleの自律的に仲間とともに成長する精神が根付いていきます。新入社員が即戦力として活躍できるだけでなく、メンター側のリーダーシップ能力が向上する効果的な人材育成の具体例です。

シャドーイング:マクドナルド

ハンバーガーチェーン店「マクドナルド」は、人材育成にシャドーイングを実施していると、一部のビジネスジャーナル記事やリーダーシップ開発関連の書籍で触れられています。

シャドーイングとは、ダイバーシティ・インクルージョン推進本部が公表した資料で、以下のように定義付けられています。

メンターの日々の仕事に同行し、様々なレベルでのコミュニケーションや意思決定を間近に見ることで、上位職研究者としての仕事のスキルや行動規範を学ぶもの

引用元:ダイバーシティ・インクルージョン推進本部|上位職を目指す女性研究者のためのメンタリング・シャドウイング研修支援事業 SP

マクドナルドは、店舗内でのOJTを重視し、新任マネージャーやチームリーダーが熟練スタッフの働き方を近くで観察する機会を設けています。ただ仕事を観察するだけでなく、熟練スタッフからのフィードバックを得て、スキル習得につながる点がシャドーイングを実施するメリットです。

従業員が店舗運営の全体像を把握し、意思決定や顧客対応、在庫管理などのマネジメント業務をリアルタイムで学ぶ機会を提供することで、リーダー人材のスキルアップを図っています。

シャドーイングにより、マニュアルだけでは学べないリーダーシップや問題解決スキルを身につけた人材育成の具体例です。

美容系企業の人材育成具体例

人材育成に取り組みたい美容サロンなどの美容系企業は、以下の具体例を参考にしましょう。

株式会社アン

美容室経営と美容関連商品販売、アイラッシュ・ネイルサロン経営を行っている「株式会社アン」では、「人間味あふれる最高のおもてなしを提供できる人づくり」を目標として人材育成に取り組んでいます。

ただカッティングやカラーのスキルを磨くだけでなく、温かく顧客から好かれる人柄やチームで協働する自発性、人間的な自律性などの人間力強化を重視しています。

具体的な取り組みは、次のとおりです。

  • 新入社員研修(入社式翌日より3週間)
  • ディズニーランド研修
  • 親孝行研修
  • 社内学年別研修
  • 社長塾
  • 表彰制度
  • ありがとうカード制度
  • ABC活動(地域の養護老人施設や児童養護施設で毎月ボランティア活動)
  • 障害者の就労支援
  • 支援学校でのイベント協力
  • ビジョン発表大会
  • 店舗対抗朝礼大会
  • 店舗対抗カウンセリング大会
  • 対話集会
  • 理念と経営勉強会

ディズニーランドでの研修やありがとうカード制度など、ユニークな施策を多数実施し、従業員満足度の向上と人間力の強化を行っている事例です。

また、育児休暇取得後も安心して復帰できるよう、出勤日数や勤務時間を自由に調整できるサロンづくりを行っており、育児や介護など従業員の環境に合わせて働ける選択肢を多数用意しています。

そのため、従業員のモチベーションを維持・向上させ、定着率の向上にもつながっています。

参考元:人材育成事例373|厚生労働省

株式会社ミルボン

美容室向け化粧品メーカーの「株式会社ミルボン」は、顧客である美容師の要望を叶えるために「課題解決力を有する顧客の立場で行動できる人材」を育てる人材育成に取り組んでいます。

具体的な人材育成の取り組みは、次のとおりです。

  • ミルボンパーソン研修(美容室の事業やミルボンの戦略について理解を深める独自の検定制度へ向けた研修)
  • フィールドパーソン研修(学科研修、美容技術研修、体験学習の3本柱で構成された営業に必要なスキル研修)
  • グローバルタレント基礎研修(コミュニケーションの本質を理解し、国内外を問わず他者と協力して目標を達成するスキル習得する研修)
  • 若手社員向けのキャリアデザイン研修
  • 中堅社員向けのリーダーシップ研修
  • 管理職向けのマネジメント研修

新人社員には、ミルボンパーソン研修とフィールドパーソン研修を組み合わせて人材育成し、美容業界や美容室のニーズや基礎知識、自社の風土や戦略への理解を深めます。さらに、座学やOJT・体験学習を通じて育成するフィールドパーソン研修は、美容室に営業をかけるために必要な知識やスキルを習得可能です。

人材育成により従業員のスキルが向上することで、離職率が低下し従業員満足度の向上につながりました。

参考元:人材育成事例117|厚生労働省

まとめ

人材育成の具体例から見る、施策を考案する際に重視すべきポイントは次のとおりです。

  • OJTや1on1ミーティングなど先輩従業員が新人従業員をマンツーマンで教育する制度は、双方の人材育成を効率的に実施できる
  • スキルアップだけでなくメンター制度やメンタリングとコーチングによる精神的なケアも重要
  • eラーニングやMBOなど従業員の自発性を重視する人材育成も必要
  • ロミンガーの法則やシャドーイングなど経験を重視した人材育成が効果的

本記事で紹介した具体例を参考に、自社の組織力を強化する人材育成の施策を実行してください。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。