人材定着のために何をすべきか悩んでいるオーナーも多いのではないでしょうか。
人材不足に直面する業界が多い現代、離職を防止する対策が求められています。そのためにも、人材定着に有効な取り組みとマネジメント方法を実践することが重要です。
本記事では、人材定着に有効な取り組みとマネジメント方法を解説します。人材定着の成功事例も解説しますので、ぜひ最後までご一読ください。
人材定着とは?
人材定着とは、従業員が組織に留まり、継続的に働くことを指します。人材を確保する意味では「リテンション」とも表現され、優秀な人材の流出を防ぐための重要な概念です。
ここでは、人材定着率の計算方法と人材定着率の平均と課題について解説します。
人材定着率の計算方法
人材定着率の計算方法は、次のとおりです。
定着率(%)=(一定期間経過後の定着人数÷一定期間開始時の従業員数)×100 |
たとえば、以下のケースは、定着率を次のように計算します。
2024年1月1日時点の従業員数 |
120人 |
2024年12月31日時点の従業員数 |
90人 |
定着率の計算式 |
90人÷120人×100=75% |
なお定着率と離職率は対となる指標であり、次の計算式で求められます。
離職率(%)=100%-定着率 |
つまり、上記のケースでは「100%-75%=25%」の計算式で求められ、離職率は25%です。
日本における人材定着率の平均と課題
日本における人材定着率の平均は、次のとおりです。
雇用区分 |
離職率 |
定着率 |
一般労働者 |
12.1% |
87.9% |
パートタイム労働者 |
23.8% |
76.2% |
引用元:厚生労働省|令和5年 雇用動向調査結果の概要「入職と離職の推移」
なお、厚生労働省の令和5年雇用動向調査によると、産業別の離職率は次のとおりです。
引用元:厚生労働省|令和5年 雇用動向調査結果の概要「産業別の入職と離職」
美容業が属する「生活関連サービス業、娯楽業」の離職率は、一般労働者で20.8%でした。全産業の平均離職率が12.1%であることをふまえると、美容業を含む「生活関連サービス業、娯楽業」は離職率が高い傾向にあります。
人材定着はなぜ重要なのか
人材定着が重要視される理由は、次のとおりです。
- 採用コストを抑えることができる
- 生産性・業務効率を維持・向上できる
- 顧客満足度を維持・向上できる
- 企業としてノウハウを蓄積できる
- 企業文化の浸透・発展が見込める
- 競合優位性を確保できる
- 長期的な戦略立案が可能になる
それぞれの理由から、人材定着が企業にもたらすメリットと、人材流出によって生じるデメリットを確認しましょう。
1.採用コストを抑えることができる
人材が定着すると、新規人材採用にかかる広告費や人材紹介手数料・人件費などの採用コストを抑えられます。
昨今は各企業が採用コストの増加に悩まされており、人材定着によるコストカットが求められます。マイナビの「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」によると、2021年〜2023年において「中途採用コスト」が増えたと回答した企業の割合は次のとおりでした。
▼採用コストが増えた企業の割合
年度 |
割合 |
2021年 |
29.1% |
2022年 |
37.2% |
2023年 |
37.8% |
また、厚生労働省の「求人企業に対する調査」によると、採用1件あたりにかかるコストは次のとおりです。
さらに採用した人材を育成するには、新人従業員の給与だけでなく教育担当者の人件費もかかります。コスト削減のためにも、人材定着への取り組みが欠かせません。
2.生産性・業務効率を維持・向上できる
定着率が高い職場は人材が離職せず、業務の引き継ぎの頻度が減り、代わりに人材の熟練度が上がっていくことから、組織の生産性・業務効率の維持や向上につながります。
加えて、従業員同士が協力して目標を達成していく過程で、チームワークが育まれます。そのため、組織内でコミュニケーションを取りながら業務改善し、生産性と業務効率を向上させられます。
日本労働調査組合のアンケートでは、仕事を辞めたい理由の第1位は38.6%の同率で「職場の人間関係」「評価・待遇に不満」がもっとも多かったです。
定着率の高い組織は、長く働く従業員が増えるため、組織内のチームワークを強化できます。その結果、人間関係が理由で辞める従業員が減り、さらに定着率を向上できるでしょう。
人材定着をしている組織は、生産性や業務効率を向上させやすく、持続的なパフォーマンスを維持しやすいです。
3.顧客満足度を維持・向上できる
人材が定着すると、ノウハウのある人材が増え、高い生産性・業務効率を実現できます。さらに働く環境への不満がない・少ない状態だと、顧客のことに思考を割く余裕が生まれるため、顧客満足度の向上につながります。
また顧客からすると、頻繁に従業員が変わる店舗より、馴染みの店員が接客する店舗は愛着が湧きやすいものです。
以上の理由から、定着率が高い職場は顧客満足度が高くなるため、経営戦略としても重要視するべきです。
4.企業としてノウハウを蓄積できる
人材が離職しない場合、従業員が保有する経験や知識を横展開し、組織内に人材が持つノウハウを貯めることが可能です。一方、離職率が高い職場では、従業員の経験や知識が浅く、組織内にノウハウが蓄積しません。
また、離職率が高い組織は、従業員が不満を抱えているケースが多く、企業のために貢献したいと思う意識が欠けていることもあります。
リクルートが実施した「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査」によると、中小企業・中堅企業ともに「若年層や外国人社員の人材定着ができていない」と回答した企業が30%以上いました。
若年層が定着しない組織は、次の世代にノウハウが引き継がれないため、組織力強化のために人材定着が必要です。
5.企業文化の浸透・発展が見込める
企業風土や文化は、長く働く従業員たちによって築かれるため、離職率が高い組織では、企業文化の浸透も発展も見込めません。長く働く人材が増えると、企業文化を体現する社員が増え、新規採用時にも企業理念や文化に共感した人材が入社しやすくなります。
電通が実施した「企業変革のための企業文化に関する従業員意識調査」によると、企業変革の成果を実感している企業のうち、「企業文化が影響している」と回答した割合は78.7%でした。
企業変革は、組織力の向上と競争力の強化につながるため、人材定着によって企業文化の浸透・発展を促進しましょう。
6.競合優位性を確保できる
人材を定着させれば、他社へ従業員の知見とノウハウが流出する事態を防ぎ、競合優位性を確保できます。現在は優秀な人材を獲得するために、各社が採用力・定着力を強化している人材獲得競争が起きている時代です。
マイナビの「企業の雇用施策に関するレポート(2023年版)」によると、企業の成長には人材の長期定着が重要だと考えている企業は、全体の85%いました。
上記のデータからも、多くの企業が人材の定着を競争優位性の基盤と認識しています。
さらに離職率が高い企業は、社会的に「ブラックな印象」を与えてしまうため、市場での企業価値・組織力の低下につながります。
7.長期的な戦略立案が可能になる
定着率が高いと人材が離職しないため、次期リーダーや経営層を育成する時間があり、長期的なプロジェクトを実現することも可能です。優秀な人材やリーダー格となるポジションを育成するには、膨大な時間とコストがかかるため、定着率が低いと育成計画を実行できません。
HR総研が実施した「次世代リーダーの育成に関するアンケート」によると、次世代リーダー人材が必要だと考えている企業は全体の8割いました。
▼次世代リーダー人材の重要性
▼次世代リーダー人材育成・確保に関する取り組み状況
特に従業員数が多い大企業ほど、リーダー人材の育成を重要視しており、積極的に育成・確保に関する取り組みを行っています。
人材が定着しない原因
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果」によると、令和5年度に転職した労働者が、前職を退職した理由は次のとおりでした。
退職理由 |
男性の割合 |
女性の割合 |
仕事の内容に興味を持てなかった |
7.4% |
5.0% |
能力・個性・資格を活かせなかった |
5.1% |
5.4% |
職場の人間関係が好ましくなかった |
9.1% |
13.0% |
会社の将来が不安だった |
5.2% |
4.6% |
給与など収入が少なかった |
8.2% |
7.1% |
労働時間、休日などの労働条件が悪かった |
8.1% |
11.1% |
結婚 |
0.3% |
1.6% |
出産・育児 |
0.3% |
1.6% |
介護・看護 |
0.5% |
1.2% |
その他個人的な理由 |
17.3% |
25.1% |
定年・契約期間の満了 |
16.9% |
9.8% |
会社都合 |
5.8% |
5.3% |
その他の理由(出向を含む) |
14.0% |
6.9% |
採用時のミスマッチは、どの退職理由にも当てはまるため、人材定着のために面接で条件のすり合わせや認識の相違を解消する対策が必要です。また、契約期間後に従業員に続ける意思があっても、企業側が更新しない場合も退職としてカウントされます。
上記の退職理由から考えると、人材が定着しない主な原因は以下のとおりです。
- 給与・待遇面への不満
- キャリア開発の機会不足
- 組織文化や職場環境の問題
- ワークライフバランスに関する問題
- 仕事の意義や目的が不明瞭
- 経営の不安定さや将来性への不安
- 最新技術や変化への適応不足
- 個人のライフステージとの不適合
それぞれの原因を確認して、人材定着に向けた対策を実施しましょう。
原因1.給与・待遇面への不満
給与・待遇は、労働者のモチベーションを維持する重要な要素で、不満がある場合は転職を検討する可能性があります。具体例として、次のような状況では給与・待遇面の不満が募り、退職者が増えます。
- 業界平均や同業他社と比較して低い給与水準
- 昇給・昇進の機会が少ない、または不透明
- 福利厚生制度の不足や不適切な運用
- 公平性や透明性に欠ける評価制度
なお、国税庁が公表した「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は次のとおりでした。
区分 |
平均年収 |
全給与所得者 |
459万5000円 |
正社員 |
530万3000円 |
正社員以外 |
201万9000円 |
従業員の給与・待遇を改善する場合は、同業種の平均給与より高い待遇を用意すると、従業員の満足度を向上させられます。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、「理容・美容師」の経験年数別の平均年収は次のとおりです。
経験年数 |
所定内給与額 |
年間賞与その他特別給与額 |
全理容・美容師平均 |
305万1000円 |
84万6000円 |
0年 |
208万4000円 |
8000円 |
1~4年 |
237万3000円 |
40万3000円 |
5~9年 |
310万5000円 |
88万4000円 |
10~14年 |
360万7000円 |
101万3000円 |
15年以上 |
403万6000円 |
166万1000円 |
美容師の平均年収は、全業種の平均より低い傾向にあるため、競合他社と比較して給与・待遇への不満が生じないよう対策しましょう。
原因2.キャリア開発の機会不足
昇給やキャリアアップ制度が不透明であったり、新しい仕事を任せてもらえなかったりする場合、「この職場にいても成長できない」と離職を検討する可能性があります。
リクルートが実施した「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」によると、20〜30代の離職理由として半数以上が「充分なキャリア構築がされない」にあてはまると回答しました。
他にも「思った配属先と違った」「伸ばしたいスキルが伸ばせそうになかった」などの場合もキャリア開発の可能性を見い出せず、人材流出につながります。
原因3.組織文化や職場環境の問題
上司や組織による不当な扱いや劣悪な職場環境は、従業員から敬遠されてしまい、離職率が増加します。たとえば、次のような問題がある場合、離職率が増加するため要注意です。
- ハラスメント(パワハラ、セクハラなど)の存在
- 上司や同僚との人間関係の悪化
- 組織の価値観と個人の価値観の不一致
- 不適切な責任分担
- 適切なフィードバックやコミュニケーションの欠如
- 重要な経営情報や意思決定プロセスの不透明さ
- オープンなコミュニケーションを阻害する組織構造
- 非金銭的な認識(表彰、感謝の表明など)の不足
特に、近年は働き方改革やハラスメント防止の推進、人材を資本として捉え価値を最大化させる人的資本経営が注目されています。
原因4.ワークライフバランスに関する問題
仕事に費やすエネルギーと、家庭や趣味などプライベートに費やすエネルギーのバランスが取れていないと、人生全体の充実感や満足感が低下します。
ワークライフバランスに関する具体的な問題例は、次のとおりです。
- 長時間労働や過度の残業
- 休暇取得の難しさ
- 柔軟な勤務形態(フレックスタイム、リモートワークなど)の欠如
- 過重な業務負担
- メンタルヘルスケアの不足
労働時間や年間休日数だけでなく、フレックスタイムやリモートワークなど柔軟な働き方を導入しているかで、ワークライフバランスが大きく変わります。
原因5.仕事の意義や目的が不明瞭
「仕事に興味を持てない」「やりがいがない」などモチベーションが低下すると、職場に定着する目的を持てずに離職するケースがあります。国土交通省が公表した「年代別の働く上で重視すること」では、次のような理由が多く挙がりました。
※上位を抜粋
全年代をとおして、「給与・賃金」や「仕事のやりがい」と回答した労働者が多い傾向でした。具体的には、次のような状況の際に仕事の意義や目的を見い出せず、離職するべきか悩んでしまいます。
- 会社のビジョンや目標が不明確または共感できない
- 自分の仕事が組織にどう貢献しているかがみえない
- やりがいや達成感を感じられない業務内容だ
原因6.経営の不安定さや将来性への不安
経営の不安定さや将来性への不安は、従業員が離職を考えるきっかけになり、厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果」でも、退職理由を「会社の将来が不安だった」と回答した労働者が男性で5.2%、女性は4.6%いました。
具体的には、次のようなケースだと経営や企業の将来性に不安を感じます。
- 経営状況の悪化や業績の低迷
- 頻繁な組織変更や方針転換
- 業界全体の先行き不安
従業員の定着率を向上させるためにも、経営を安定させる必要があります。
原因7.最新技術や変化への適応不足
昨今、各社でAIやビッグデータ・IoTなどの最新技術を導入して、業務効率・生産性を向上させる企業が増加しました。技術面だけでなくリモートワークやフレックスタイム制度など新しい働き方や、業界のトレンドに追いつけない組織は「このまま残っていてもいいのか」と不安になってしまいます。
たとえば、次のような状況だと従業員は組織に残ることに不安を感じ、離職を検討してしまいます。
- デジタル化やAI導入への対応の遅れ
- 業界トレンドに追いつけない組織の体制
- 新しい働き方(リモートワークなど)への対応不足
従業員に企業の将来性と個人の成長性を含む「期待値」を提示して、人材定着を実現しましょう。
原因8.個人のライフステージとの不適合
結婚や出産・介護などを機に今までどおりの働き方が困難になった場合、従業員が離職してしまいます。企業ができる対策は、結婚や育児・介護と仕事を両立させられるような支援や援助制度の立案です。
下記のように、支援制度が充実していない場合は、ライフステージの変化で従業員が離職します。
- 育児・介護との両立支援制度の不足
- 転勤や異動に関する柔軟性の欠如
- 個人の価値観やライフスタイルの変化への対応不足
人材を定着させる施策
人材を定着させる施策として、次のようなものが効果的です。
- 職場環境・労働環境を改善する
- 評価の透明性を確保し、待遇を最適化する
- キャリア開発の支援を積極的に行う
- 会社のビジョンや仕事の意義を明確化し、共有する
- 技術革新を柔軟に受け入れる組織文化を醸成する
それぞれの施策を参考に、離職につながる原因を対策して人材定着につなげましょう。
1.職場環境・労働環境を改善する
職場環境や労働環境が良好で、従業員がストレスや身体的な無理をせずに働ける職場は、長く働きたくなるものです。さらにワークライフバランスを実現させ、個人のライフステージと適合する働き方を提供することで、「従業員を大切に扱う企業」とホワイトなイメージが定着します。
人材紹介会社ロバート・ウォルターズの調査によると、人材定着のためにワークライフバランスを求める従業員が約8割もいる結果が判明しました。
対して、企業側は人材定着にワークライフバランスが重要だと理解している割合が約3割と、従業員側と大きなギャップがありました。
具体的には、次のような施策を実施すれば、職場環境・労働環境を改善できます。
- オープンなコミュニケーション文化の醸成
- 多様性と包括性(D&I)の推進
- 社内イベントやチームビルディング活動の推進
- 職場環境の物理的改善(オフィスデザイン、設備更新)
- フレックスタイム制度の導入
- リモートワーク・在宅勤務制度の整備
- 有給休暇取得の促進(計画的付与制度など)
- ノー残業デーの設定や残業時間の上限管理
- 育児・介護支援制度の充実(短時間勤務、休業制度など)
- 副業・兼業の許可や支援
- 定期的な従業員満足度・エンゲージメント調査の実施
- 調査結果に基づく改善活動の推進
- 従業員の声を経営に反映させる仕組みづくり
- 従業員主導のプロジェクトやイニシアチブの支援
- ストレスチェックの定期実施
- カウンセリングサービスの提供
- マインドフルネスプログラムの導入
- 長時間労働者への産業医面談の実施
2.評価の透明性を確保し、待遇を最適化する
競合他社の給与水準を参考に従業員が納得する待遇を用意し、業績連動型のボーナス制度を導入すれば、従業員の成果に応じて報酬を上乗せできます。
ただ従業員の給与・待遇を改善するだけでは、人件費がかかり赤字化する可能性があるため、企業としても納得感のある待遇を設定しましょう。企業として取り組むべき施策例は、次のとおりです。
- 競合他社と競争力のある給与水準の維持
- 業績連動型ボーナス制度の導入
- ストックオプションや従業員持株制度の実施
- 柔軟な福利厚生(カフェテリアプラン)の導入
jinjer株式会社の調査では、福利厚生の実施目的として人材定着・確保が主な理由として挙げられました。
なお、厚生労働省の「人材確保に効く事例集」で紹介された給与・待遇面の不満を解消する施策例は、次のとおりです。
- 従業員が社内での自分の役割・貢献・価値を確認できるような処遇を行う
- 長期勤続に対して手当支給・褒賞・メッセージカードの手交を行う
- 賃金を納得性があるものとする
- 退職金制度を整備する
3.キャリア開発の支援を積極的に行う
キャリア開発の支援を積極的に行えば、従業員が「この企業に残れば成長できる」と感じ、定着率を向上させられます。キャリア開発支援につながる施策として、次のようなものが効果的です。
- 個別のキャリアプラン策定支援
- 社内公募制度の実施
- 外部研修や資格取得支援制度の充実
- メンタリング・コーチングプログラムの導入
厚生労働省の「人材確保に効く事例集」で紹介されたキャリア開発につながる施策例は、次のとおりです。
- 離職防止・モチベーション維持・人材育成のために配置転換を行う
- 従業員が将来展望を持てるキャリアパスを設計する
- 定着しやすい新人教育を行う
- 従業員が育てられている・成長していると実感できる体制を構築する
4.会社のビジョンや仕事の意義を明確化し、共有する
人材が定着しない原因である「仕事の意義や目的が不明瞭」と「経営の不安定さや将来性への不安」を改善するために、会社のビジョンや仕事の意義を従業員に伝える次のような施策が必要です。
- 会社のビジョン・ミッションの浸透活動
- 個人の目標と組織の目標の連携(OKRなど)
- 社会貢献活動への参加機会の提供
- 経営情報の定期的な共有
- 中長期的な事業計画の策定と共有
- 新規事業開発への従業員参加機会の提供
- 財務健全性の維持と透明性の確保
- 従業員の提案制度や改善活動の促進
厚生労働省の「人材確保に効く事例集」で紹介された「仕事のやりがいや企業への信頼性を高める施策例」として、次のようなものが効果的です。
- 従業員の意識(価値観など)を把握する
- 会社の経営理念を明確化し、従業員がそれを理解し共感できるようにする
- 従業員が会社への誇り・帰属意識・連帯感・将来性を感じられるようにする
- 従業員が働きがい・働きやすさを感じられる組織文化を作る
- 従業員同士がお互いに尊重し、信頼できる組織文化を作る
- 従業員が前向きな意欲を持てる組織文化を作る
- 組織をまとめるリーダーのポストを新設する
5.技術革新を柔軟に受け入れる組織文化を醸成する
最新技術を取り入れることで、従業員の業務負担を軽減できるため、心身的な疲労による休業や離職を防止できます。次のように、技術革新を柔軟に受け入れる施策を実践すれば、最新技術や変化へ適応できていない組織への不安を払拭できます。
- 最新技術の活用促進
- デジタルスキル向上研修の実施
- 新技術導入時の従業員参加型プロジェクト
- イノベーションラボの設置
- クロスファンクショナルチームの形成促進
人材定着の成功事例
人材定着の施策を考案するため、他社の成功事例を参考にしましょう。人材定着を成功させた5社の成功事例を紹介します。
C保育園|管理者研修とハラスメント対策によって働きやすい職場環境を実現
東京都内で6つの保育園を運営するC保育園は、全体で120名の職員が勤務しており、うち108名が保育士として保育業務に携わっています。
しかし、園のトップである園長の異動が多く、スタッフとの信頼関係の構築が難しい課題がありました。スタッフ間のコミュニケーションや信頼関係の構築に課題が生じたため、次の施策を実施しました。
- 一般職員向けの「職員の心得」と園長向けの「施設長の心得」を作成
- 管理職研修を実施
- ハラスメントに関する規定類の整備
結果として、一般職員と管理者の双方が働きやすく、横のつながりを感じる職場づくりによって、人材定着を実現させました。
参照元:厚生労働省|人材確保に「効く」事例集
D保育園|有給休暇取得促進によるワークライフバランスの実現
30年以上の歴史を持つD保育園は、10年以上勤務する職員がいるほど定着率が高い職場ですが、職業の特性から長期休暇を取得しにくい課題がありました。
児童を預かるという特性上、シフトに穴を空けにくく、結婚や出産で退職した職員は短時間勤務での復帰しか難しい課題に悩まされていました。そこで職員のライフワークバランスを実現するために、年次有給休暇の計画的付与を実施しました。
全員が長期休暇を取得できるよう、業務改善を行い職員同士のコミュニケーションが活性化した成功事例です。
参照元:厚生労働省|人材確保に「効く」事例集
F訪問看護ステーション|人材不足と人事評価の不信感を払拭
F訪問看護ステーションは、訪問看護の他にデイサービスや居宅介護支援事業所、障害者就労支援サービスも実施している看護事業所です。
F訪問看護ステーションでは40名を超える従業員が勤務していますが、常勤の看護師が不足していました。さらに人事評価に対して「代表の好みが反映されているのでは」と不信感が組織内の一部に生じていました。
人材不足と人事評価への不信感は、離職率の増加につながる課題です。解消するため次のような施策を実施しました。
- Webサイト全体を改修し、応募率の増加につなげる
- 法人内で専任の採用担当を設置し、会社紹介対応や面接の段取りなどを強化
- 社員紹介制度による採用の強化
- 現在が必要としている人材・職種の情報を発信
- 人事評価の公平感を意識した運用マニュアルを作成
- 社内コミュニケーションの強化
採用力の強化と人事評価制度の改善だけでなく、優秀な人材を獲得し定着率を向上させるために、社内コミュニケーションの強化に取り組んでいます。
参照元:厚生労働省|人材確保に「効く」事例集
株式会社日本テクノ開発|上司と部下の双方向コミュニケーションによる人材育成
ITコンサルティング事業を展開する株式会社日本テクノ開発では、階層別・職務別の専門教育を強化し、幅広い活動ができる人材育成に取り組みました。主に以下の2点に重点を置き、人材定着につながる育成プログラムを実施しました。
- 従業員に均等かつ業務に即時対応した教育の機会を与える
- 従業員自らが潜在能力や保有能力を発掘・開発し、成果に結びつけるための意識を啓発するとともに、教育訓練環境の整備を図る
引用元:厚生労働省|人材育成事例035
具体的には、従業員のスキルアップ・キャリアアップにつながる次のような教育支援制度を設けています。
- 専門技術や業務知識の習得を目的とした「専門研修」
- 職能等級や職位応じて行う「階層別研修」
- 自己啓発に積極的な社員を支援するための「STUDYAID」制度
引用元:厚生労働省|人材育成事例035
従業員のスキルアップ・キャリアアップを支援し、組織力の強化と人材定着を実現させた成功事例です。
株式会社ファーストリテイリング|全員経営による経営理念・組織文化の構築
ユニクロを運営しているファーストリテイリングでは、「グローバルワン・全員経営」と「現場・現物・現実」を経営理念として従業員に浸透させ、本質的な課題解決ができる人材育成を行っています。
具体的には、次のような教育研修やプログラムを実施し、従業員が経営者の視点を持って働けるよう育成しています。
- 代表取締役会長兼社長である柳井正氏が著した書籍を使用した教育研修の実施
- 柳井氏を含む各国のCEOなど、執行役員とのダイレクトセッションの機会を提供
- 各種教育研修プログラムの展開
引用元:人材確保と育成 | FAST RETAILING CO. LTD.
他にも、社内コミュニケーションの強化や情報共有や意見交換を行う「サステナビリティウィーク」の定期開催、ダイバーシティ推進の取り組みなど、労働環境を整える対策が施されています。
まとめ
人材定着を目指す上で重要なポイントは、次のとおりです。
- 待遇面や組織風土を改革し、長く働きたい職場環境を整備する
- 従業員のスキルアップやキャリアアップを支援し「企業に残る価値」を提供する
- 企業のビジョンや経営情報を共有し「企業の将来性」を提示する
- 技術革新や働き方改革によりライフワークバランスを実現させる
人材が定着しない原因を把握し、自社の課題を解決する施策を行えば、人材定着が可能です。離職率を抑えながら採用力の強化につながる施策を実行し、定着率の高い組織づくりを行いましょう。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部