セラピストを確保する方法のひとつに、派遣があります。厚⽣労働省「労働者派遣事業報告(年度報告)」によると、派遣先事業所数は平成21年以降は減少しました。しかし平成の終わりから令和にかけて再び増加傾向にあり、派遣スタッフへの需要が拡大していることがわかります。
近年では働き方の多様化が進んでおり、非正規雇用や業務委託契約で働く人材も増えてきました。実際に、セラピストは自営やフリーランスで働いている人が多い職種です。しかし、少ないながらも派遣で働くセラピストも存在しており、派遣会社からセラピストを確保しようと考えているサロンのオーナーもいるのではないでしょうか?
本記事では、派遣でセラピストを確保する場合の注意点やメリット・デメリットについて解説します。長期的な人材確保につなげる方法についても解説するため、派遣セラピストの活用を考えている方はぜひ最後までご覧ください。
派遣セラピストとは
派遣セラピストとは、派遣会社に登録しているセラピストのことです。そもそもセラピストとは、利用者の心身をリラックスさせる人を指します。ハローワークの職業分類によると、アロマセラピストやカイロプラクター、リフレクソロジスト、リラクゼーションセラピストなどが該当します。
近年では、職種を超えてセラピストとして働くケースが増えてきました。「医療・看護・保健の職業」に分類されているあん摩マッサージ指圧師や柔道整復師の方もセラピストとして働く場合があります。
派遣セラピストは、サロン側にとって柔軟に人材を確保できる手段であり、働く側にとっては自由度の高い働き方を実現する選択肢となっています。
派遣で働くセラピストの割合
「job tag」のデータ(※2024年12月時点)によると、セラピストは自営やフリーランスで働いている人が多いものの、派遣で働くセラピストも存在します。派遣で働いているリラクゼーション系セラピストや治療系セラピストは以下のとおりです。
リフレクソロジスト:5.6%
アロマセラピスト:1.8%
柔道整復師:4.2%
あん摩マッサージ指圧師:3.9%
少ないながらも派遣で働いているセラピストは存在しているため、派遣会社に依頼するのも、人材を確保する手段のひとつといえます。
派遣の仕組み
派遣労働とは、労働者と人材派遣会社との間で雇用契約を締結し、人材派遣会社は労働者派遣契約を結んでいる派遣先に労働者を派遣する仕組みです。労働者に賃金を支払うのは派遣会社であり、サロンではありません。
セラピストに派遣スタッフとして働いてもらう場合、サロン側はセラピストと雇用契約を結ぶのではなく、派遣会社と派遣契約を締結します。派遣スタッフとして訪れたセラピストには、派遣契約書で定められた範囲で業務遂行を指示できます。
派遣と他の雇用方法との違い
派遣と他の雇用方法との違いをまとめると、以下のとおりです。
雇用形態 |
雇用主 |
特徴 |
正社員 |
職場のオーナー |
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契約社員 |
職場のオーナー |
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パート・アルバイト |
職場のオーナー |
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派遣スタッフ |
派遣会社 |
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業務委託契約 |
なし |
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派遣スタッフは他の雇用方法とは異なる点が多いため、注意が必要です。次の章では、派遣のセラピストを受け入れるうえでの注意点を解説します。
派遣のセラピストを受け入れるうえでの注意点
派遣のセラピストを受け入れるうえでの注意点として、以下の4つが挙げられます。
- 契約以外の仕事を指示できない
- 契約期間が最長で3年であることを理解する
- 従業員の採用コストと派遣コストを比較する
- 派遣されるスタッフを選考できない
ここでは、それぞれの注意点について解説します。
契約以外の仕事を指示できない
労働者 派遣法第26条 により、派遣先が派遣労働者に対して指揮命令できるのは、派遣元との間で締結する労働者派遣契約に記載された業務のみと定められています。そのため、派遣でセラピストを受け入れた場合、契約以外の仕事は指示できません。
たとえば、業務改善やサービス向上の目的でミーティングを開催するにあたって、派遣セラピストにも参加してもらいたい場合もあるでしょう。しかし、派遣契約書にミーティングへの参加が記載されていなければ、派遣セラピストは参加できません。
そのため、ミーティングや勉強会などの契約前に想定できる業務については、派遣契約書に盛り込んでおきましょう。
契約期間が最長で3年であることを理解する
労働者派遣法第40条の2により、派遣スタッフを受け入れられる期間は、事業所単位と個人単位ともに、原則3年までと定められています。3年を越えて派遣セラピストに仕事を依頼したい場合は、次のような措置が必要です。
- 派遣スタッフを交代する
- 別の部署や場所で働いてもらう
- 社員登用する
3年を超えて1つの場所で同じ人材に働いてもらいたいのであれば、社員登用する必要があることを理解しましょう。
従業員の採用コストと派遣コストを比較する
派遣セラピストを長期間雇うとコストが高額になることもあります。そのため社員やアルバイトを採用した場合のコストと比較して、コストパフォーマンスのよい方法で従業員を確保することが大切です。
厚生労働省の「令和4年派遣労働者実態調査の概況」によると、企業が派遣労働者を受け入れない理由に対する回答で「今いる従業者で十分であるため」の56.2%に次いで「費用がかかりすぎるため」が29.4%でした。
一般社団法人日本人材派遣協会の調査によると、人材派遣の時間単価には、派遣スタッフに支払う給与以外にも、労働社会保険料や派遣社員の有給休暇の費用といった費用が含まれています。
派遣セラピストを雇う場合、給与以外にも派遣会社に派遣料金を支払うため、社員を雇うよりコストがかかります。厚生労働省の「労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、令和4年における派遣料金は全業務平均で1日(8時間換算)あたり24,909円でした。
派遣セラピストを活用する場合は、その費用対効果を見極める必要があります。
派遣されるスタッフを選考できない
派遣の目的は労働力の提供であり、特定の人材を雇用することが目的ではありません。そのため、労働者派遣法第26条第6項により、労働者を派遣先企業の基準で選抜する行為が禁止されています。つまり派遣セラピストに対して面接をしたり、書類選考をしたりできません。
仮に経験者という簡単な条件しか提示しなかった場合、以下の事例のように仕事上のトラブルに発展する可能性もあります。
外から経験者を雇ったのですが、この世界は学ぶ場所が変わると教え方が全く変わってしまいます。そうすると、『私は悪くない。あなたの技術が悪い』といった『否定』が始まります。そして、仲間を認め合わなくなってしまいました。
引用:モアリジョブ|株式会社ファクトリージャパングループ(FJG) 代表 小牧めぐみ さん
このようなトラブルを回避するためにも、スキルや経験、特性などの条件を具体的かつ詳細に整理し、人材派遣会社に提示することが大切です。
派遣会社を活用してセラピストを確保するメリット・デメリット
派遣会社を活用してセラピストを確保する場合、さまざまなメリット・デメリットが存在します。自社の予算や状況、費用対効果を検討したうえで派遣の活用を決めましょう。
派遣会社を活用してセラピストを確保するメリット
派遣は、繁忙期や欠員補充に対応できることが大きなメリットです。厚生労働省の「令和4年派遣労働者実態調査の概況」でも、派遣スタッフを就業させる理由として「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」の回答が76.5%と、最も高い結果となりました。
労働基準法や労働者派遣法の範囲内であれば、契約期間や勤務時間を柔軟に設定できるため、週3日勤務や1日4時間勤務といった設定も可能です。必要に応じて労働力を調整できることは社員にはないメリットといえるでしょう。
また、給与計算や社会保険の手続き、健康診断などの労務管理は人材派遣会社が行います。派遣スタッフの採用も、条件を伝えておけば適した人材を見つけてくれます。労務管理や採用活動の工数削減ができることも派遣を活用するメリットのひとつです。
派遣会社を活用してセラピストを確保するデメリット
派遣を活用するデメリットとして挙げられるのは、コストがかかることです。前述したように、派遣スタッフを活用する場合、給与以外にも派遣会社に派遣料金を支払う必要があり、社員を直接雇うよりコストがかかる場合があります。
人材についても、条件の提示はできるものの、特定の人材を選ぶことはできないため、求めるレベルのスタッフが就業してくれるとは限りません。1度派遣契約を締結した場合、契約期間中に企業側から契約を解除できないリスクもあります。
また、派遣スタッフを受け入れられる期間は、事業所単位・個人単位ともに原則3年までと定められています。そのため、長期的な組織構築を目的とした人材活用には適していません。
厚生労働省の「令和4年派遣労働者実態調査の概況」によると、企業が派遣労働者を受け入れない理由に対する回答として、コスト以外にも以下の回答結果がありました。
- 必要な職業能力を備えた派遣労働者をすぐに確保することが困難であるため:17.7%
- 技能・技術、知識等が社内に蓄積しないため:12.9%
派遣の活用はあくまでも一時的な労働力の補助であり、長期的な人材確保や組織構築が目的であれば、社員としての雇用を優先したほうがよいでしょう。
長期的な人材確保につなげる方法
派遣スタッフが働ける期間は最長で3年のため、長期的な人材確保には適していません。事業規模の拡大を目指すのであれば、マネジメント業務を任せられる人材も確保したいサロンもあるでしょう。
そのため、一時的な労働力の確保として派遣を活用した場合でも、並行して採用活動に取り組むことが必要です。セラピストは専門知識が求められるため、特化型の求人サイトを利用するほか、派遣スタッフを社員登用するのもひとつです。
ここでは、それぞれの方法について解説します。
特化型求人サイトを利用する
セラピストは専門知識が求められるため、採用媒体は総合型の求人サイトよりも特化型の求人サイトの活用がおすすめです。たとえばリジョブであれば、セラピストに該当するエステティシャンやリラクゼーションの求人を取り扱っています。細かくジャンルや資格を指定できるので、求める人材を集めやすいこともメリットです。
正社員にこだわらず、副業やダブルワークの人材を雇用するのもひとつの方法です。以下の事例のように、空いた時間にセラピストとして働きたい人材も存在します。
訪問看護の現場のなかでリラクゼーションを取り入れるようになり、利用者さんから嬉しいお言葉をいただくことが多くなりました。そこで、そういったリラクゼーションがもたらす小さな幸せは、病気の有無に関わらず誰にとっても大切なことだと感じたんです。
でも、訪問看護の仕事は大好きで辞めたくないので、空いた時間にできることがあればと、出張型のアロマトリートメントサロンをスタートしました。
引用:モアリジョブ|petit bonheur 森本早紀 さん
ただし、採用活動を始めたら求めている人材がすぐに見つかるとは限りません。求人開始から採用までかかる時間を把握して採用活動を開始することが大切です。
リジョブでは、採用ターゲットと出会うためのノウハウを提供しています。手順を詳しく知りたい場合は、無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。
派遣スタッフを社員登用する
派遣された人材に長く働いてもらいたいのであれば、派遣契約終了後に雇用契約を締結する方法もあります。派遣スタッフを社員として雇用できれば、新たに社員を採用するよりも教育コストはかかりません。
フルタイムではなく、短時間勤務の社員として雇用するのもひとつです。3arrows株式会社では、短時間正社員制度を導入し、子育て中の人材の採用に成功しています。
週30時間の勤務でも正社員になれる、短時間正社員制度を導入しています。福利厚生がまだまだ整っていない会社が多いなか、短い勤務時間でも正社員になれるのはメリットがとても大きいのではないかと思いますね。子育て中の方などにとても好評です。
引用:モアリジョブ|3arrows株式会社 代表取締役 今井 基成 さん
ただし、派遣スタッフを社員登用する場合、派遣会社との合意が必要です。社員登用の可能性や時期などについては、派遣会社の担当者と事前に相談し、合意を得ておきましょう。
紹介予定派遣として派遣契約する
社員登用を考えているのであれば、紹介予定派遣として派遣契約する方法もあります。紹介予定派遣とは、派遣スタッフが、派遣先企業と直接雇用契約を締結することを前提として派遣契約を交わす制度です。
紹介予定派遣は、最長6カ月の派遣期間終了後、労働者と派遣先企業とで合意があれば、直接雇用契約を締結できます。直接雇用を前提としているため、労働者派遣法第26条第6項で定められた、派遣先企業が労働者を特定する行為の禁止が適用されません。
そのため派遣契約時に、人材に対して書類選考や面接などの選考行為をすることも認められています。ただし紹介予定派遣の場合、派遣期間は最長で6カ月です。「見極める時間が欲しい」「社員契約はまだ早い」と思っていても、派遣契約の延長はできないため、6カ月の間に社員契約を決断する必要があります。
まとめ
セラピストとは利用者の心身をリラックスさせる人で、アロマセラピストやカイロプラクター、リフレクソロジスト、リラクゼーションセラピストなどが該当します。セラピストは自営やフリーランスで働いている人が多いものの、派遣で働くセラピストも存在しており、派遣でセラピストを確保するのも、人材を確保するひとつの方法といえるでしょう。
ただし、派遣の活用にはさまざまな制約があり、特に以下の4つに注意する必要があります。
- 契約以外の仕事を指示できない
- 契約期間が最長で3年であることを理解する
- 従業員の採用コストと派遣コストを比較する
- 派遣されるスタッフを選考できない
派遣はあくまでも一時的な労働力の補助であり、長期的な人材確保や組織構築が目的には適していません。一時的に派遣を活用したとしても、並行して採用活動に取り組みましょう。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部