定着率とは?指標の重要性と向上施策を紹介
正社員の転職率はコロナで一時的に落ち込んだものの、ほぼ右肩上がりが続いています。マイナビの調査によるととくに30〜50代のミドル世代男性で転職者が多く、転職者の約半数を占めている状況です。
転職が当たり前になっているとはいえ、転職つまり離職は定着率の低下を招き、企業にとってせっかく育てた人材を失うことになります。
企業の7割弱が従業員の定着状況について問題視しており、事業規模の小さい企業ほど人手不足を実感しています。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
この記事では定着率の現状や、定着率が企業に与える影響そして改善方法について解説します。
定着率とは
定着率とは入社して一定期間経過後に働き続けている従業員の割合を示す指標です。
定着率の数値が高い企業ほど従業員の離職が少ないことを示しており、働きやすい環境であると言えるでしょう。逆に定着率の数値が低い場合、離職者が多いことを示すものになり、組織に問題があると考えられます。
2023年3月期から有価証券を発行している上場企業は、有価証券報告書に人的資本の記載が義務付けられました。
人的資本とは個人がもつ能力やスキルを付加価値を生み出す資本とする考えのことです。企業価値を高めていくには人材が不可欠であり、投資すべき対象として従来の人的資源から変化してきています。
開示義務付けがされた、人材育成方針や男女育休取得率などの6項目に「定着率」の記載が含まれているわけではありません。
しかし、定着率は企業の人的資本に対する姿勢と現状を示すものであり、求職者が応募先を選定する際の指標にもなっています。
定着率と離職率の違い
離職率とは入社から一定期間経過後に離職した人の割合を出したもので、定着率と離職率を足すと100になります。
定着率と離職率は相関関係にあります。定着率が高い企業は離職率が低く、離職率が高い企業は定着率が低いというわけです。
どちらも企業の従業員の動向を示す指標であり、企業の人的資本に関するデータとして役立ちます。
定着率の計算方法
定着率の計算方法は下記の2つどちらでも算出できます。
①(一定期間後の在籍社員数÷一定期間開始時に入社した社員数)×100=定着率(%)
②100-離職率=定着率
①の計算式で下記の2020年4月に入社した新卒を例に定着率を算出してみましょう。
(例)
A 2020年4月 20人入社
B 2023年3月 16人(20人中4人離職)
〈計算式〉
(B 一定期間後の在籍社員数÷A 一定期間開始時に入社した社員数)×100=定着率(%)
(16÷20)×100=80%
つまり2020年4月新卒入社の定着率は80%です。
算出タイミング
定着率は基本的に年度区切りの年単位で算出されることが多い傾向です。厚生労働省など公的なデータの多くが年度区切りで算出されています。
ただ明確な定めがあるわけではないため、必要な時期や目的に応じて算出して問題ありません。
算出する期間についても定められてはいませんが、一定期間の動向を分析する際には1年、3年、5年を目安にすることが多いようです。新卒入社の定着率については、3年を基準に算出されています。
ただ入れ替わりが激しい業種では、1年未満で算出されることもあります。
また事業規模が小さい場合、対象となる母数が少なくなるため、定着率の取り扱いには注意が必要です。
算出時期によっても定着率に大きなブレが生じることも考慮しておきましょう。厚生労働省のデータによると、入職者も離職者も上半期に約6割が集中しています。
日本企業における定着率の傾向
日本企業における昨今の定着率の傾向を、就労形態や産業別に解説します。
なおデータは厚生労働省が公表している「令和4年雇用動向調査結果の概況」を参考にし、全体を100とし離職率を引いたものを「定着率」としています。
日本全体の平均
厚生労働省が発表した令和4年雇用動向調査によると、近年の日本企業の定着率は85%前後で推移しています。コロナウイルスの影響を強く受けた2020年〜2021年の間は入職者が大幅に減少したものの、離職者も若干減少したため定着率はむしろ若干増える結果となりました。
また歴史的な円安や東日本大震災の影響を受けた2010〜2011年と、コロナウイルスが流行し始めた2020年を除いては、ほとんどの年で入職者のほうが多い傾向も見て取れます。
社会情勢などの影響から新規雇用が減少する時期は定着率は上昇し、状況が改善する頃に離職者が増えるため定着率が悪化する傾向にあります。
このことからも定着率は日本の景気を表す指標とも言えるでしょう。
就労形態別
出典:厚生労働省「就業形態別入職率・離職率」
定着率は就業形態によって大きく異なります。
一般労働者の定着率が90%前後で推移しているのに対して、パートタイム労働者は70〜80%と低めの定着率で推移しています。
厚生労働省がまとめたデータによると、パートタイム・有期雇用労働者の約7割を占めるのは女性です。パートタイムを選ぶ理由は無期雇用・有期雇用ともに6割近くが「自分の都合の良い時間(日)に働きたいから」、次いで「勤務時間・日数が短いから」というものでした。
そして株式会社マイナビが20〜50代の既婚女性に行った調査では「家事・育児・介護等との両立がしやすいから」というのがもっとも多い理由として上がっています。
一方でパートタイムを辞める理由(退職代行OITOMA)には「仕事が忙しすぎる・ストレスが大きい」がトップにきており、気軽さと自由さを求めてパートタイムを選んだにも関わらず想定以上の負担により退職を選ぶ人が多いものと考えられます。
さらに女性パートタイム労働者の約6割は配偶者の収入で暮らしていることも、一般労働者との定着率の差に影響を与えているようです。
産業別
厚生労働省がまとめた「令和4年産業別入職率・離職率」をもとに各業種の定着率を計算して、値の低い順に並べると次の通りです。
▼各業種の定着率
業種 |
定着率 |
宿泊業、飲食サービス業 |
73.2% |
サービス業(他に分類されないもの) |
80.6% |
生活関連サービス業、娯楽業(美容ヘルスケア業界含む) |
81.3% |
医療、福祉 |
84.7% |
教育、学習支援業 |
84.8% |
※「 厚生労働省「産業別入職率・離職率(令和4年(2022)) 」をもとに100%から各業種の離職率を差し引いて作表
以上より定着率がもっとも低いのは「宿泊業・飲食サービス業」で、「サービス業(他に分類されないもの)」「生活関連サービス業・娯楽業」と続いています。
一方で同データによると、逆に定着率の高い業種は「鉱業・採石業・砂利採取業」「金融業・保険業」そして「製造業」です。
グラフからも分かるように、定着率は業種によっても大きく異なります。自社の定着率の高低を判断する際には、同業種を参考にするのが良いでしょう。
なお次の記事では、定着率を計算する際のもととなる離職率について、産業ランキングを詳しく紹介しています。
新卒者
厚生労働省が発表した新規学卒就職者の離職状況から算出すると、新規学卒就職者の就職後3年以内の定着率は大学卒で68.8%、高校卒で63.1%でした。日本企業の近年の定着率(85%前後)と比べると圧倒的に低いのがわかります。
出典:厚生労働省「新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内の離職率」
また新規大卒就職者の定着率は事業規模によっても異なります。
新規大卒の離職率は規模が大きい事業所ほど低い傾向です。つまり定着率は規模の大きい事業所ほど良いと言えるでしょう。
アデコが新卒入社後3年以内に離職した20代の男女に向けた調査によると、早期離職の理由として「自身の希望と業務内容のミスマッチ」が約38%「待遇や福利厚生に関する不満」が33%「キャリア形成が望めない」が約30%でした。
従業員の不満や不安に対して、大企業では部署移動を行うなど対応できる場合もありますが、中小企業の場合、できる対応に限りがあります。
社会人経験のない新卒者にむけては、入社前に業務内容や福利厚生などに関する説明をしっかり行っておくことが鍵となるでしょう。
定着率が重要視される理由
定着率を上げることは企業側にも働く側にもメリットがあります。定着率が重要視される主な理由を3つ解説します。
人材確保や人材育成につながる
人的資本という考えが主流になったように、人材は企業の成長には欠かせません。
HR総研が行った人的資本調査の結果によると、調査に回答した233社のうち約7割が「経営戦略に紐づけた人材戦略とKPIを設定」しています。
それほどに経営において人材は欠かせない存在であり、優秀な人材の確保が求められます。
また定着率は人材育成にも深く関係します。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」
従業員5人以上を抱える企業2万社に「中心的な業務で一通りの仕事をこなせるようになるまでにかかる期間について尋ねたところ、小規模から大規模いずれの企業でも約4割が3〜4年を要すると回答しています。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」)
一通りの仕事をこなせるようになった従業員には「より専門性を高める」ことや、「管理・監督的な立場(マネジメント層)になる」ことを求めているとも回答しています。
人材は企業にとって大切な資本であり、店舗運営にも欠かせない存在です。その人材を育成するのもまた人であり、定着率を高めることで人材育成を行える人へと成長させられます。
従業員のモチベーションが高まる
定着率の低さは従業員のモチベーションを下げる可能性があります。
離職者が担当していた業務は必然的に、残っている従業員に割り当てられます。元々抱えていた業務があるのに、さらに業務負担が増えることはモチベーションが下がる大きな原因となるでしょう。
また次の項にも関係しますが、育成してもすぐに離職されてしまうと時間をかけて教えたことが無駄になり、さらにまた新しく入ってくる人へ一から教えることになります。
定着率を高めることで従業員は自分の業務に集中でき、育成にかかわる従業員の負担も少なくなり、モチベーションアップにつながります。
採用・教育コストの低減
株式会社リクルートが運営する就職みらい研究所によると、2019年採用にかかった平均コストは新卒採用で93.6万円、中途採用で103.3万円でした。
採用にかかる費用の内訳は以下のようなものです。
- 面接や選考に関わった者の人件費
- 通信費や内定通知の発送、履歴書の返送のための郵便費用
- 求人広告費用や人材紹介会社へ支払う報酬
- 採用セミナーや集団面接の開催費用、採用イベントへの参加費用
他にも採用のためのサイト制作や交通費の支給など、採用にはさまざまな費用がかかります。入社が確定してからの研修の準備や実施にも多額の費用が必要です。
定着率が低いと求人募集と採用を繰り返すことになるため、経営にとって痛手です。また隠れ経費として、次の人材確保までに派遣社員を雇うなど、さらに追加の経費がかかることも考えられます。
離職率が高い企業は採用や教育に余分なコストが関わっていることを理解し、改善する必要があります。
定着率を上げるためにできること
HR総研が233社に行った調査によると約8割の企業で、社内の優秀人材が重視する指標や取組みの開示ができていないと回答しています。
うち6割強の企業では「従業員向けに人的資本情報の開示をしていない、もしくは社内の優秀人材が重視する指標や取組みが明確になっていない」という状況です。
人的資本情報の開示は2023年3月31日以降、有価証券を発行している企業のうち大手企業約4,000社に対して義務化されたものです。しかし対象でなくとも、優秀な社員の定着のためには情報開示は不可欠であると言えるでしょう。
定着率の改善を図るうえで人的資本情報の開示と合わせて取り組むべきなのが、働き手が何を理由に辞めていくのかを知ることです。
厚生労働省の調査では男女ともに前職を辞めた理由の上位2つが「人間関係」と「労働条件の悪さ」でした。民間業者が実施した退職に関する調査(リクナビNEXT)でも似たような結果となっています。
採用のミスマッチをなくす
出典:株式会社リクルート「就職白書2020(就職みらい研究所)」
就職や採用活動に関する調査(株式会社リクルート)によると、就職活動において学生が知りたいと思った情報で多かったのは「経営方針・事業戦略」次いで「勤務地」「仕事内容」についてでした。
それに対して実際知ることができたのは「経営方針・事業戦略(47.7%)」「勤務地(42.2%)」「具体的な仕事内容(39.5%)」と、仕事内容についてはもっとも低い結果となっています。
新卒入社後3年以内に退職した経験のある人の4割近くが「自身の希望と業務内容のミスマッチ」を退職理由としてあげており、面接時点でのミスマッチが原因として考えられます。(アデコ株式会社による調査)
面接で聞けなかった、もしくは就職活動側が理解したことと違っていたという理解の相違も原因かもしれません。
転職が当たり前となった昨今、企業は少しの理解の食い違いが離職につながることを念頭におき、採用活動に取り組むべきと言えるでしょう。
評価制度をつくり、運用・見直しを行う
給料や昇給の基準となる評価制度は見える化をし、公平性のあるものでなくてはなりません。
人事評価は組織の目標達成や企業の成長に必要な人材の確保や育成の目的もありますが、従業員のモチベーションアップに深くかかわるものでもあります。
人事評価は3つの方法で行います。
「能力評価」
従業員がもつスキルや能力をもとに判断します。業務適性や育成の方向性を知るためにも必要な評価です。
「業績評価」
企業の売上や利益にどれだけ貢献したかを評価するものです。外的要因が影響する場合や事務職など評価が難しくなる場合もあるため、一定の判断基準やルールを定めておく必要があります。
「情意評価」
従業員の勤務態度や業務に対する意欲・行動などを評価します。他の2つと異なり、主観が入りやすい評価手法であるため、査定の際には注意が必要です。
最近は「SmartHR」や「カオナビ」といった個人の能力や実績を分析し、管理できるアプリやツールが増えてきています。
また定期的に部下と上司が1対1で行う面談「1on1」を取り入れることも、業務に対する明確なイメージをもってもらい、仕事への意欲を高める有効な手段です。
柔軟な働き方の制度を作る
多様化する社会において働き方を選べるか否かは、就職や転職する際の大きな判断基準となっています。
総務省がまとめたデータによると2005年以降、女性就業者数は右肩上がりで推移しており、令和3年では3,000万人を超えています。
しかし育児や家事に関わる時間はいまだに女性のほうが多く、6歳未満の子供がいる家庭に絞って見てみると妻は夫の3〜4倍の時間を育児や家事に費やしているのが現状です。(総務省統計局)
実際、妊娠・出産・子育てを理由に仕事を辞めた経験のある人は男性6.2%に対して女性は56.6%と非常に高くなっています。(内閣府男女共同参画局)
そのため女性従業員比率がとくに高い美容業では、これまで定着率に悩まされてきました。
しかし、最近では減少傾向(美容サロン就業実態調査〈2023年4月〉)にあり、2023年には過去もっとも低い46.5%となっています。
これにはサービス業であっても「日曜日を定休日にする」「自由出勤」「自由シフト」など、ママでも働きやすい環境作りが進んでいることが影響していると考えられます。
ライフステージの影響を大きく受ける女性の定着率を上げるには、テレワークやフレックスタイム制の導入、時短勤務など、柔軟な働き方を可能な範囲で整えていくことが重要です。
社内のコミュニケーションを円滑にする
社内のコミュニケーション不足はミスやトラブルの原因になるなど、業務に支障をきたすのはご存じの方も多いのではないでしょうか?
ただコミュニケーション不足は業務上の問題だけでなく、人間関係の悪化や会社への不信感の火種、ひいては離職の原因となる場合もあります。
厚生労働省の離職理由のデータを見てみると、男性35〜39歳では「会社の将来性への不安」が、そして「人間関係の問題」に関しては男女ともに多くの世代でトップにきています。
人間関係の問題はもちろんのこと、会社の将来性への不安もコミュニケーション不足が少なからず影響しています。
少しのすれ違いが誤解を生み、不信感へとつながります。とくにクリエーター業や美容業、事務職など、業務を個々で行う業種は積極的にコミュニケーションを取らないと関係性が希薄になりがちです。
目白にある美容室「Lusso」のオーナー小島亮さんは離職率を下げたいという思いから働きやすい環境作りに加えて、コミュニケーションのための社員旅行やキャンプのイベントや個人面談などを定期的に設けるようにしました。その甲斐あって同サロンでは直近3年間退職者を出していません。
リモート勤務の影響や効率化を追い求めることで、コミュニケーションの機会が少なくなりがちです。コミュニケーションを通じて早めに従業員の不安や不満に対処することは、定着率の改善が期待できます。
定着率が悪いと感じている人はコミュニケーションの時間を十分に取れているか見直してみましょう。
給与・福利厚生を充実させる
エン・ジャパン株式会社がまとめた福利厚生に関するアンケートによると、希望する福利厚生として最も多かったのは家賃補助(寮・社宅・住宅手当含む)、次いで健康診断・人間ドックでした。
物価高が影響してなのか、とくに20代では家賃補助を望む人が多く、回答者の約8割が「あると嬉しい福利厚生」と回答しています。
ところが同調査に回答した約7割の人が「福利厚生の手厚さ」と「給与が成果報酬的に上がること」を比較した場合、給与が上がる方が良いと答えています。背景には平等ではなく、成果を認めて欲しいという気持ちがあるようです。
とはいえ今後転職先を検討する際「福利厚生の有無や内容を重視する」と回答した人の割合は74%となっています。
現状、従業員数が300人を超える大企業ほど福利厚生制度は充実しており、30人未満の小規模企業では大企業ほど整っていません。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
とくに働き方や住宅支援に関する制度は小規模企業では弱く、良い人材の定着率を上げるためには給与と合わせて充実させていくことを検討していくべき点と言えるでしょう。
キャリアサポートを充実させる
前述のエン・ジャパン株式会社の福利厚生制度に関する調査結果からもわかるように、スキルアップや資格取得支援制度のニーズは高まっています。
終身雇用が終焉を迎え、転職が当たり前となった現在では次のステージや将来を見据えた働き方を求める人が少なくありません。
大手企業では半数以上が、中小企業でも4社に1社以上が「社外の自己啓発に関する情報提供、経費補助」を行っています。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構(企業における福利厚生の実態に関する調査)」
これまで店舗内での技術力アップに留まりがちだった美容業界も、座学に加え、店舗経営を学ぶ外部研修への参加や社外の美容師との交流など、キャリアアップサポートを行うようになってきています。
キャリアサポートを充実させることは求人募集に有利になるだけではありません。
向上心の高い人や自立心のある人を雇用できる確立が高くなるため、企業側にとってもメリットが大きいと言えるでしょう。
定着率の高い企業が実践している具体的な事例
定着率が高いとされる企業が行っている事例を紹介します。
事例1 多様性を意識した職場づくりで90%以上の定着率を誇るネイルサロン
ネイルサロン「NAILsGUSH・NAIL MAFIA」は多様性を意識した職場環境づくりで、定着率が低いとされる美容業界でオープンから6年間、90~95%の定着率を維持しています。
たとえば従業員のキャリアプランに対するニーズの多様性に配慮して、管理職とプレイヤーの両方で昇級できるシステムを整えました。管理職への昇進のみではなく、プレイヤーとして技術力の高さを正しく評価され高い収入を得られるような人事評価システムを導入しています。
昇進しないと高収入を得られないという一辺倒な考えだけではなく、さまざまな形で頑張りが給料に反映される環境を整えています。
また妊娠や出産を経た従業員が希望通りに働き続けられるように職場環境を整え、多様な働き方を受け入れたことが高い定着率につながっているようです。
出典:脅威のスタッフ定着率!ネイリストが辞めないお店のつくりかた【NAILsGUSH・NAIL MAFIA オーナーネイリスト/木下さとこさん】#2 | モアリジョブ (relax-job.com)
事例2 新卒社員の3年後の定着率100%「四国電力」
新卒社員の3年後の定着率を調べた調査で全業種でトップになったのは四国電力でした。同社は若手社員に事業提案の機会の提供や、スキルアップのための国内・海外留学を積極的に進めています。
またフレックスタイム制度や時間単位休暇の導入を行うなどライフワークバランスへの理解も、新卒社員の定着につながっているようです。
事例3 自己都合退職者2.4%「日立システムズ」
自己都合退職者が脅威の2.4%という実績を誇る日立システムズ。同社は住宅手当として賃料の50%の支給や、有給休暇とは別に勤続10年以降5年ごとに5連休のリフレッシュ休暇を付与しています。
さらに不妊治療休暇や、子供が小学校を卒業するまでの期間は時間外や深夜勤務制限・免除といった、さまざまな育児関連制度を設けるなど女性社員の活躍推進に力を入れています。
まとめ
本記事を統括すると次のとおりです。
- 定着率とは入社して一定期間経過後に働き続けている従業員の割合を示す指標のことで、離職率と相関関係にある
- 近年の日本企業の定着率は85%前後で推移しており、とくにパートタイム労働者やサービス業で低い傾向にある
- 定着率を上げると人材確保や人材育成につながり、採用コストの削減にもなる
- 社内のコミュニケーションを円滑にし、柔軟な働き方など福利厚生を充実させることで定着率を改善が期待できる
転職をする人は珍しくありませんが、転職するのはライフワークバランスや自己成長のためであり、転職が目的ではありません。
働き手が転職を望まない魅力的な職場環境を整えることで、定着率は改善できます。離職者が多い企業はまずはその理由を見つけ出すところから始めてみましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部