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あなたのエステサロンはなぜ集客に苦戦する? 原因解明と「選ばれるサロン」になる秘訣

あなたのエステサロンはなぜ集客に苦戦する? 原因解明と「選ばれるサロン」になる秘訣

  1. エステサロン経営と「集客」の切っても切れない関係性
    1. エステサロン経営者が抱えるリアルな集客の悩み
    2. 集客がエステサロン経営に与える影響の大きさ
    3. 集客の悩みを解消できればエステサロン経営が安定しやすくなる
  2. あなたのエステサロンが集客に苦戦する原因を徹底分析
    1. サロンの存在が顧客に認知されていない
    2. 新規獲得一辺倒でリピーターが育っていない
    3. 技術力や接客力が顧客の期待値に届いていない
    4. 「また来たい」と思わせるサロン全体の魅力が足りない
    5. 顧客とのコミュニケーションが不足している
  3. エステサロンの集客で覚えておくべき基本戦略6つ
    1. 全ての土台であるターゲット設定と自店の強みを明確にする
    2. 「ウェブサイト・SNS・広告」などのオンライン戦略を活用する
    3. オフラインによる施策でリアルな接点を創る
    4. 顧客体験を磨き上げてリピーターを育てる
    5. 口コミや紹介を生み出して信頼の輪を広げる
    6. 効果測定と継続的な改善で集客を最適化する
  4. 新規顧客を獲得するためのエステサロンが意識するべき集客アイデア集
    1. 顧客との接点を最大化! オンライン集客のアイデア一例
    2. リアルな接点も大切! オフライン集客のアイデア一例
    3. オンラインとオフラインの相乗効果で集客力を高める
  5. リピーターが増える! エステサロンの顧客をファン化できる集客術
    1. レベルの高い施術とおもてなしで初回満足度の向上を追求する
    2. 心に響くカウンセリングとアフターフォローで顧客の心をつかむ
    3. 継続的なコミュニケーションと限定特典で特別な「つながり」を育む
  6. 「エステサロンの集客を担える人材」の採用・育成戦略
    1. 集客できるポテンシャルを持つ人材の採用術
    2. 土台として大事な「技術力」と「接客力」を徹底的に高める
    3. 顧客の心を掴む「コミュニケーション力」と「提案力」の育成
    4. 「ここで頑張りたい!」と思わせるモチベーション向上とチームワーク強化
  7. 【要チェック】エステサロン集客における広告規制と法律に関する注意点
    1. 広告表現の落とし穴「薬機法」「医師法」で禁止されることを把握する
    2. 顧客を惑わさない「景品表示法」と「あはき法」の注意点
    3. 契約書面とクーリングオフで「特定商取引法」を遵守する
    4. 「合理的根拠」の提示と誠実な情報開示で広告の信頼性を高める

エステサロン経営を取り巻く環境は、近年ますます厳しさを増しています。

矢野経済研究所のデータによると、2024年度の国内エステティックサロン市場は5年連続でのマイナス成長が見込まれており、さらに、東京商工リサーチの調査によれば、2023年度のエステティック業の倒産件数は大幅に増加し、過去最多に迫る状況です。

このような厳しい状況下で「なぜうちのサロンは集客に苦戦するのだろう」と頭を抱える経営者は少なくありません。

実際に、ラ・シンシア株式会社が行ったアンケート調査では、多くの経営者が顧客満足度やリピート率の向上、適切な価格設定、そして新規集客やPR戦略に課題を感じています。

これらは多くのサロンが直面している、共通の悩みといえるでしょう。

今回は、エステサロンが集客に苦戦する根本的な原因を解明します。そして厳しい時代でも顧客を惹きつけ、ファンに愛される選ばれるエステサロンになるための秘訣を、網羅的に解説しています。

エステサロン経営と「集客」の切っても切れない関係性

エステサロンの経営と集客は、切っても切れない関係にあります。

しかし、その重要性を理解しつつも、多くの方が集客の尽きない悩みを抱えているのが現実ではないでしょうか?

まずは、多くの経営者が直面する集客の具体的な悩みと、その背景を深掘りします。集客が単なる顧客獲得にとどまらず、経営の安定や市場での生き残りをかけたサロンの未来を左右するほどの影響力を持つ点についても解説します。

エステサロン経営者が抱えるリアルな集客の悩み

多くのエステサロン経営者が抱える集客の悩みは、大きく下記の3つに集約されています。

  • 新規顧客の獲得が難しい
  • リピーターとしていかに定着してもらうか
  • 顧客との関係をどう構築すべきか

まず、業界の競争激化により、新規顧客の獲得自体が困難になっています。特に開業直後は多くの競合に埋もれてしまい、自店の存在を知ってもらうことすら難しいのが現状です。

次に、来店したがリピーターとして定着しない問題も深刻な課題といえるでしょう。

実際に、ホットペッパービューティーアカデミーの調査では、新規顧客の3ヶ月以内の再来店率は平均でわずか17%という厳しいデータが出ています。

利用時期の新規リピート率

割合(%)

新規3カ月

17

新規6カ月

21

さらに別の調査によれば、顧客がサロンを変える理由は施術だけではありません。カウンセリングなどのコミュニケーションにもあるとわかっており、顧客との関係構築の難しさがうかがえます。

▼利用していたサロンを「変えたい」と思った場面

1_利用していたエステサロンを「変えたい」と思った瞬間を聞いたホットペッパービューティーアカデミーのアンケート調査

そして、最適な集客方法が分からないというジレンマもよく耳にする問題ではないでしょうか?

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、顧客がサロン探しで口コミやクーポンを重視する点が判明しているため、ポータルサイトは有効な手段といえます。

集客がエステサロン経営に与える影響の大きさ

集客と聞くと、新しいお客様を呼び込むことだけをイメージするかもしれません。

しかし安定したエステサロン経営のためには、新規顧客の獲得と同じくらい、既存の顧客に再び来店してもらうための働きかけも重要です。この両方の働きかけがあって初めて、サロン経営は安定しやすくなります。

また集客に関する努力を続けるべき理由は、主に以下の2点です。

  • 経営の安定:新規顧客の獲得は「1:5の法則」という言葉があるように、既存顧客を維持するコストの5倍かかるといわれている。両者のバランスを取ることが大事。
  • 競争での生存:多くの競合に埋もれないよう、常に新しいとの出会いを求め、既存の顧客との関係を育み続ける必要がある。

これに加えて、顧客のニーズを把握するアンテナにもなるという点も重要となります。

たとえば、ホットペッパービューティーアカデミーの調査からは、近年「ハーブピーリング」への関心が高まっている様子がうかがえます。

▼【ハーブピーリング】検索ワードランキング推移

2_ホットペッパービューティーアカデミーの検索結果「ハーブピーリング」の順位の推移を表した調査結果

このように、集客活動を通じての生の声に耳を傾けると、新しいトレンドをいち早く察知し、それをメニュー開発やサービス改善に活かすことにつながります。

集客の悩みを解消できればエステサロン経営が安定しやすくなる

これまでに見てきたように、集客はサロン経営の根幹をなす重要な方法です。

裏を返せば、この集客の悩みを一つひとつ解消していけば、サロン経営を安定させる最も確かな近道といえるでしょう。

そこで続いて、なぜあなたのサロンが集客に苦戦するのかという根本原因の分析から、具体的な集客戦略まで、順を追って丁寧に解説します。

あなたのエステサロンが集客に苦戦する原因を徹底分析

「集客がうまくいかない」と悩むとき、原因は1つではなく、複数の問題が複雑に絡み合っているケースがほとんどです。

効果的な対策を打つためには、まず自サロンがどの課題を抱えているのかを正確に把握しましょう。

以下では、集客に苦戦するサロンに共通する、見落としがちな5つの根本原因を徹底的に分析します。

これらの原因の中から、あなたのサロンに当てはまるものを見つけ出し、改善への第一歩を踏み出しましょう。

サロンの存在が顧客に認知されていない

集客に苦戦する根本原因は、顧客に「認知されていない」からかもしれません。

効果的な宣伝の不足、独自の魅力やターゲット層の曖昧さが、あなたのサロンを知る機会を奪っています。

それでは、顧客はどこでサロンを見つけるのでしょうか?

ホットペッパービューティーアカデミーのデータによると、主な認知経路は予約・口コミサイト(35.3%)、次いで友人・知人の口コミ(26.3%)と、信頼性の高い情報源が依然として強いという点がわかります。

現在利用サロンの認知経路(美容センサス2024年上期)

割合(%)

予約・口コミサイト

35.3

友人・知人の口コミ・おススメを聞いて

26.3

サロンを街で見かけて

10.8

SNS(LINE・Instagram・Facebook・Xなど)

8.0

しかし、この認知経路は常に変化しているので注意しましょう。

同調査の2年前(2022年上期)のデータと比較すると、SNSは当時ランク外だったのに対し、今回は4位に浮上しています。

逆に、以前4位だったまとめサイトはランク外になるなど、トレンドの変化は明らかです。

現在利用サロンの認知経路(美容センサス2022年上期)

割合(%)

予約・口コミサイト

38.0

友人・知人の口コミ・おススメを聞いて

26.9

サロンを街で見かけて

11.8

まとめ・キュレーションサイト(NAVERまとめなど)

4.4

この変化を捉え、まず自サロンの「魅力」と「ターゲット顧客」を明確にしましょう。その上で、顧客に届く情報発信を戦略的かつ継続的に行ってください。

新規獲得一辺倒でリピーターが育っていない

集客といえば、まず新規顧客の獲得を思い浮かべるかもしれません。しかし、新しいお客様ばかりを追いかける経営には、大きな落とし穴が潜んでいます。

なぜなら、安定したサロン経営の鍵は「リピーター」が握っているからです。マーケティングの世界には、有名な2つの法則があります。

  • 1:5の法則:新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる、という考え方。広告費や初回割引が必要な新規集客に比べ、すでに信頼関係のあるリピーターへのアプローチがいかに効率的かがわかる。
  • 5:25の法則:顧客離れを5%改善するだけで、利益が25%も改善されるというもの。リピーターの定着が、サロンの収益性にいかに直結するかを示している。

これらの法則が示すように、もしリピーター育成を怠れば、常にコストの高い新規集客に追われる悪循環に陥ってしまいます。

では、なぜリピーターは育たないのでしょうか? その原因は、技術以前の「顧客との関わり方」にあるかもしれません。

実際に、ホットペッパービューティーアカデミーの調査では、顧客がサロンに通わなくなる理由として「カウンセリング」が上位にあげられています。施術後のフォローや再来店をうながす特別な案内がない点も、「大切にされていない」と感じる一因でしょう。

技術力や接客力が顧客の期待値に届いていない

エステサロンのサービス品質は、顧客の期待値を上回って初めて評価されます。もし技術力や接客力がその期待に届かなければ、リピートされないだけでなく、悪い口コミの原因にもなりかねません。

それでは顧客が「このサロンはもう利用しない」と判断するのは、どのような瞬間なのでしょうか?

ホットペッパービューティーアカデミーの調査に、顧客が企業への印象を決める「MOT(企業の印象を決める決定的瞬間)」という考え方があります。

この調査によると、顧客がサロンを変えようと思った場面は、「カウンセリング」「施術」「仕上がり確認」が上位を占めました。

「お店を変えよう」と思った段階・場面

割合(%)

カウンセリング・施術方向性決定

27.0

施術

26.7

仕上がり確認

26.0

この結果は、まさに技術力と接客力が直接問われる場面で、顧客がシビアに評価している証拠です。技術が未熟で的確な提案ができないといったことだけでなく、接客態度が悪く顧客に不快感を与えれば、当然ながら信頼は失われ、再来店にはつながりません。

「また来たい」と思わせるサロン全体の魅力が足りない

「施術の技術力に自信があっても、顧客がリピートしない」という原因は、施術以外の「サロン全体の魅力」が足りないことにあるかもしれません。

「何となくまた来たいと思えない」という感覚は、サロンでの総合的な体験価値が顧客の期待に届いていないサインです。

それでは、顧客はいつ「また来たい」と感じるのでしょうか?

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、来店前の時点で顧客が評価を下しています。

「また利用したい」と思った段階・場面

割合(%)

サロンに行く

20.6

サロンを知る

20.5

事前に口コミなどで確認

20.2

このデータは、顧客のサロン選びが、実際の施術を受けるずっと前から始まっていることを示唆しています。

見落としがちなのは、「魅力不足」です。顧客体験の流れに沿って、主に3つの場面に分けられます。

まず、来店前の「情報提供」です。同調査では、サロンを知る段階で好印象を持つ理由として「クーポンが分かりやすい」「料金が納得できる」「ネットの写真がよい」などがあげられました。

「また利用したい」と思った場面【来店前】

割合(%)

クーポンが充実・分かりやすい

44.5

表示されているメニューの料金が安い

41.0

ネットの写真が充実、写真がよい

32.2

予約サイトやSNSでの分かりやすく魅力的な情報発信が、お客様の最初の期待感を育みます。

次に、サロン滞在中の「心地よさ」です。清潔感のある空間やプライバシーへの配慮はもちろん、マニュアル的ではない温かいおもてなしの心が、顧客満足度を大きく左右するでしょう。

そして、施術後も続く「安心感」を得てもらう配慮も重要です。丁寧なアフターケアの説明や、次回の最適な来店時期の提案などが、顧客との信頼関係を築き、次の来店へとつながります。

顧客とのコミュニケーションが不足している

「技術や価格に大きな不満はないはずなのに、なぜかお客様が再来店しない」といった背景には、見過ごしがちな「顧客とのコミュニケーション不足」が潜んでいる可能性があります。

顧客との間に生じた期待値のズレや、言葉にならない不満が静かに蓄積し、顧客離れを引き起こしているのかもしれません。

具体的なコミュニケーション不足には、いくつかのパターンが考えられます。

  • 施術後のフォローアップがないことによる「忘れられ感」
  • お客様の声を軽視することによる「不信感」
  • カウンセリングで本当の悩みを引き出せないことによる「期待値とのズレ」 など

こうしたコミュニケーションの不備が、顧客がサロンを変える「決定的瞬間」につながることは、データからも明らかです。

さらに、別のホットペッパービューティーアカデミーの調査では、その理由として「受付の対応が雑だった」「スタッフに気遣いが感じられなかった」など、技術以前のコミュニケーションの問題が多数を占めているのがわかるでしょう。

3_エステサロンを変更したいと思った具体的な理由を聞いたホットペッパービューティーアカデミーのアンケート調査

対話不足で信頼関係が希薄なお客様は、他店に流れやすくなります。

顧客流出を防ぎリピーターへと育てるには、定期的な連絡や、頂いた声を改善に活かすといった積極的なコミュニケーション戦略が欠かせません。

エステサロンの集客で覚えておくべき基本戦略6つ

集客に苦戦する原因が見えてきたところで、次はいよいよ具体的な解決策について考えていきましょう。

やみくもに施策を打つのではなく、基本となる戦略を体系的に理解し、順序立てて実行することが成功への近道です。

そこで、エステサロンの集客で覚えておくべき6つの基本戦略を、実践的なステップに沿って解説します。

それぞれの戦略がどのように連携するのかを意識しながら、読み進めてみてください。

全ての土台であるターゲット設定と自店の強みを明確にする

具体的な集客施策を考える前に、全ての土台となる「ターゲット顧客」と「自店の強み」の明確化が重要です。この土台作りを、4つのステップで解説します。

  1. 顧客像を具体化する「ターゲット設定」:誰に届けたいかを明確にする作業。理想の顧客像「ペルソナ」を詳細に設定し、集客の精度を高める。
  2. 市場を知り、自店を知る「競合分析」:市場での自店の立ち位置を知る作業。競合の強みや戦略を調査し、どこで勝負すべきかを見極める。
  3. 他にはない魅力を言語化する「自店の強み」の明確化:顧客に選ばれる明確な理由を言語化。技術やコンセプト、顧客の声から独自の強みを探る。
  4. 強みを活かした「差別化戦略」の構築:見つけた強みを活かし、他店との違いを演出。専門特化や卓越した顧客体験で、独自の存在感を築く。

ターゲットを定め、競合を理解し、サロンならではの強みを言語化し、それをもとに差別化を図りましょう。

この揺るぎない土台があって初めて、次に紹介する具体的な集客施策が真の効果を発揮し始めます。

「ウェブサイト・SNS・広告」などのオンライン戦略を活用する

サロンのターゲットと強みが明確になったら、次はその魅力をオンラインで発信します。今や、お客様の情報収集はオンラインが中心。

アルファノート社の調査でも、エステサロンの探し方はオンラインでの戦略が上位を占めており、対策の強化は必須といえるでしょう。

4_エステサロンの探し方について聞いたアルファノート社のアンケート調査

まず、オンライン戦略の土台となるのが、エステサロンの公式な「顔」である自社ウェブサイトです。

次に、ファンを育てる強力なツールがSNSです。特にInstagramはエステサロンと相性がいいとされています。では、具体的な活用例を見てみましょう。

お客様にサロンを知っていただくために、フィードの投稿は「お店について」「プライベート」「美容のノウハウ」を投稿しているとのことです。ストーリーにはフォロワーやご来店いただいたお客様に向けて、お店のことを思い出してもらうために投稿をしているんですね。

引用:モアリジョブ|MooN エステティシャン Misaさん

このように、有益な情報発信と積極的なコミュニケーションで、ファンとの関係を築きましょう。

オフラインによる施策でリアルな接点を創る

オンライン集客が主流の現代でも、地域に根差したエステサロンにとってオフライン施策は極めて重要です。

顧客と顔を合わせるリアルな接点ならではの温かみが得られます。オンラインだけでは深い信頼関係を築きにくいでしょう。

基本となるのは、ターゲットエリアを絞ったチラシのポスティングや、エステサロンの顔となる魅力的な看板の設置です。これに加え、地元のイベントへ積極的に参加し、無料の肌診断などを通じてサロンの雰囲気を直接知ってもらう機会を作ってみましょう。

さらに、集客を加速させるのが他業種との連携です。

たとえば、複数の美容事業者が「小顔」をテーマに共同でイベントを開催したところ、各社の顧客を中心に約40名が来場し、参加店の間で顧客の相互来店が起きたことがありました。

「駒込美容と健康の会」のうちの5社が、初のコラボレーションイベント「小顔マルシェ」を開催。小顔矯正や痩身、美容鍼、美容室、スキンケアの事業を行う美容のプロたちが一堂に会し、各方面からの「小顔」を提案しながら、お客さまへそれぞれ10分ほどの体験を提供した。1日だけの開催だったが、各社のお客さまを中心に約40名ほどが来場。反響はよく、参加した5社の間でお客さまの相互来店が起きるようになった。

引用:ホットペッパービューティーアカデミー|フルールクレール 代表 田中恵美子さん

また、サロン独自のセミナーや季節キャンペーンも来店動機になるでしょう。大切なのは、これらの施策を継続し、オフラインで得た接点をSNSなどでオンラインの関係構築へとつなげる視点です。

手間はかかりますが、オフライン活動は地域での信頼を築き、長期的に安定した集客基盤を作る上で不可欠といえます。

顧客体験を磨き上げてリピーターを育てる

安定したサロン経営に不可欠なリピーターを作る鍵を握るのは、質の高い施術はもちろん、お客様がサロンで過ごす時間全体の「顧客体験」です。

それでは、顧客はサロン選びで具体的に何を重視しているのでしょうか? 株式会社エストラボの調査を見てみましょう。

この調査によると、顧客は価格や効果といった直接的な要素に加え、「信頼性」「安心感」「リラックスできること」、そして「勧誘をされない」といった、サロンでの心地よさや精神的な満足感も重視しているのがわかります。

あなたが美容サロンを選ぶときに重視するものは何ですか?

割合(%)

価格帯

72.4

家からの通いやすさ

47.0

口コミ・評価

46.7

無料お試し体験の有無

46.5

信頼性

43.6

効果

42.6

料金体系が明瞭・開示されている

42.5

安心感

40.9

勧誘・セールスをされない

36.0

リラックスできること

32.1

施術方法・技術

32.0

予約のとりやすさ

29.8

これらはまさに「顧客体験」の核心といえるでしょう。

この「選ばれる理由」から、リピートにつながる顧客体験の磨き方が見えてきます。たとえば、以下のような対策を講じてみましょう。

  • 丁寧なカウンセリングや分かりやすい料金体系で信頼と安心を生むこと
  • リラックスできる空間と温かいおもてなしで心地よさを追求すること
  • 施術後の丁寧なアフターフォローでお客様との関係を継続させていくこと など

結論として、もはや施術技術だけで顧客に満足してもらうことは困難です。

カウンセリングからアフターフォローまで、顧客との全ての接点を見直し、総合的な「顧客体験」の価値を高めていく地道な努力が、高いリピート率を生み出し、エステサロンの安定した経営へとつながります。

口コミや紹介を生み出して信頼の輪を広げる

広告よりも信頼できる集客方法が、顧客からの「口コミ」や「紹介」です。サロン選びで「口コミ・評価」を重視する顧客は多く、その影響力は絶大といえます。

口コミの第一歩は、顧客に「思わず誰かに話したくなる」ほどの感動体験を提供することです。

その上で、口コミの投稿への特典や紹介制度といった「後押しする仕組み」も活用してみましょう。時には、熱意を伝えることも人の心を動かします。あるエステティシャンは、顧客に本気で頭を下げて口コミをお願いしたと言います。

そのお客様達にどうやってこの店を広めてもらうかを考えました。僕、毎回お客様に頭を下げていたんです。「口コミを書いてください! もうニートになりたくないんで!」って。やっぱりね、本気でお願いしていればお客様もきちんと口コミを書いてくれるんですよ。ただ「書いてください」と言うだけでは僕なら書かないので。

引用:モアリジョブ|Lily エステティシャン 田村貴博さん

もちろん伝え方には配慮が必要ですが、本気の想いが顧客の「応援したい」気持ちを引き出すこともあるでしょう。

そして、集まった貴重な「声」は、SNSで発信してさらに広げるのがおすすめです。

個々の口コミの影響範囲には限りがあるため、先ほどのエステティシャンも「不特定大多數の人に広めるにはSNSが必要」と語っています。

とはいえ、お客様が口コミで広められる数には限りがある。だから不特定大多数の人に広めるにはSNSが必要なんです。

引用:モアリジョブ|Lily エステティシャン 田村貴博さん

顧客の許可を得て感想をSNSで発信すれば、口コミの効果は何倍にも増幅されます。

「感動が口コミを生み、新たな優良顧客を連れてくる」といった「信頼の好循環」こそ、広告費を抑えて安定集客を実現する効果的な戦略です。

効果測定と継続的な改善で集客を最適化する

様々な集客施策を実行しても、それだけでは片手落ちです。その効果を検証して改善の繰り返しが重要となります。

集客を真に利益へつなげるには、PDCAサイクルを回すことが欠かせません。このサイクルは、主に以下の3つのステップで構成されます。

  1. 効果測定:実行した施策の成果を測ること。たとえば、来店時のアンケートやアクセス解析ツールを使って把握する。
  2. 分析と評価:収集したデータをもとに、施策の成否を評価すること。数字だけでなく「なぜその結果になったのか」という要因まで深く考察する。
  3. 戦略の見直し:分析結果をもとに、次の一手を考える。効果の高い施策は強化し、低いものは改善または中止する。

集客施策に、一度で完璧なものはありえません。「効果測定→分析→改善」というサイクルを習慣化し、常に最適化を図りましょう。

新規顧客を獲得するためのエステサロンが意識するべき集客アイデア集

集客の基本戦略を理解したところで、ここでは新規顧客を獲得するための具体的なアイデアを掘り下げていきます。

あなたのサロンにあった集客のヒントを見つけ、明日からの行動計画に役立ててください。

顧客との接点を最大化! オンライン集客のアイデア一例

顧客の情報収集がオンライン中心の今、ネット上での情報発信は集客の鍵を握ります。

上記でも示したとおり、サロンを探す手段としてポータルサイトやSNSが上位を占めるという調査結果もあり、オンライン戦略は必須といえるでしょう。

まず、サロンの公式な「顔」となるウェブサイトで、メニューや価格、こだわりを明記し、信頼の受け皿を築きます。

その上で、特に重要なのがInstagramの活用です。ビフォーアフター写真などで視覚的に魅力を伝え、顧客との対話でファンを育てましょう。

あるエステティシャンは、ターゲットに合わせた投稿内容や戦略的なハッシュタグ活用で注目を集めています。

黒田さんによると、お客様に向けての投稿にはお客様からいただいたコメント、同業者に向けての投稿には施術のポイントを書くなど、ターゲットに合わせて内容を変えているようです。

「いいね!」の分散を防ぎハッシュタグ検索で上位を目指すため、投稿は1日1回までに。使用数が約1万件のハッシュタグを10〜15件ほど使って注目を集めています。

引用:モアリジョブ|Mahaloha エステティシャン 黒田竜治さん

他にも、X(旧Twitter)でのリアルタイムな情報発信や、オンライン広告でのターゲット訴求だけでなく、体験キャンペーンによる来店促進など、多様な手法があります。

リアルな接点も大切! オフライン集客のアイデア一例

オンライン集客と並行して、リアルな接点で信頼を築くオフライン施策も地域サロンには不可欠です。顧客と直接顔を合わせる温かみが、長期的なファンを育てます。

基本は、ターゲットエリアを絞ったチラシや、サロンの顔となる看板ですが、成功の鍵は「熱意」にあるのかもしれません。

あるサロンオーナーは、自らチラシを手渡しする地道な行動で、オープン時に予約をほぼ埋めたと言います。

チラシを作ってポスティングをしたり、お店に置いてもらったりしました。その時の思いとしては、男性や年配の方など老若男女問わず知ってもらいたい、犬にだって知ってほしいくらいの気持ちでした(笑)。たとえチラシをお渡しした方が来店されなくても、紹介につながるかもしれないと思ったんです。ポスティングはただポストに入れるだけでなく、庭に人がいたりすると声をかけて直接お渡ししたりして。ビビりでそんなことができる性格ではなかったのですが、オープンしたときに予約がまったく入っていない状態になってしまう方が心が折れると思っていたので、そこは勇気を出しました。

引用:モアリジョブ|facial & body care salon lampo オーナーセラピスト 横澤美穂さん

こうした情熱的なアプローチに加え、地域イベントでの無料体験ブースの出展、紹介者・被紹介者双方にメリットのある紹介制度の導入も効果的です。さらに、美容室やカフェなど他業種との連携は、新たな顧客層へのアプローチを可能にします。

オフラインの活動は手間がかかる一方、地域との揺るぎない信頼を築く上で欠かせません。オンライン施策との連携で、その効果は最大化されるでしょう。

オンラインとオフラインの相乗効果で集客力を高める

これからの新規集客で最も効果的なのは、オンラインとオフラインのどちらか一方ではなく、両者を戦略的に連携させてみてください。

たとえば、SNSやウェブ広告の広範囲への発信力を活かして実店舗への来店をうながすだけでなく、チラシや店内のQRコードからLINE公式アカウントへの誘導で、継続的な関係を築くのもよいでしょう。

このように、それぞれの強みを組み合わせられれば、集客効果は最大化されます。

この連携を成功させる秘訣は、以下の2つです。

  • ウェブサイトから店舗での接客まで一貫したブランドイメージを保ち、信頼感を高めること
  • どの施策が効果的だったかを常に測定・分析し、戦略を改善し続けること

オンラインとオフラインの強みを最大限に活かし、シームレスに融合させましょう。これこそが、競争を勝ち抜くための、これからの集客のスタンダードといえます。

リピーターが増える! エステサロンの顧客をファン化できる集客術

新規顧客の獲得は、あくまでスタートラインです。

サロンが安定的に成長するためには、一度来店された顧客を、繰り返し通ってくれる「リピーター」、さらにはサロンを心から応援してくれる「ファン」へと育てていく視点が欠かせません。

以下では、顧客の心を掴み、熱心なファンへと育てるための具体的な集客術を、ステップに沿って詳しく解説しています。

レベルの高い施術とおもてなしで初回満足度の向上を追求する

エステサロンの安定経営と利益率向上には、リピーター育成が不可欠です。

その全ての始まりは、顧客が初めて来店した際に感じる「初回満足度」をいかに高められるかにかかっています。ここで顧客の心を掴めるかどうかが、次回の来店、そして長期的なファンになってもらえるかの重要な分かれ道といえるでしょう。

では、初回満足度を徹底的に高め、「また来たい」と感じていただくためには、どのような点に注力すべきなのでしょうか?

主に以下の3つの要素が鍵となります。

  • 施術技術の向上:常に技術を磨き最新トレンドを導入し、顧客が効果を実感する施術を提供すること。
  • リラックスできる環境作り:音楽や香り、プライバシーの配慮で安心感を高めて、清潔で心地よい空間を整える。
  • 質の高い接客スキル:顧客に寄り添い、心地よい時間と安心を提供するために、基本的なマナーと共感力を高める教育にも力をいれる。

これらの3つの要素が三位一体となって初めて、顧客は期待を超える「初回満足」を得られます。

心に響くカウンセリングとアフターフォローで顧客の心をつかむ

質の高い施術だけでは、顧客の心を掴むことはできません。

施術前後のきめ細やかなコミュニケーション、特に一人ひとりに寄り添う「顧客ごとに合わせた対応」こそが、信頼関係を築きファンを生む第一歩になります。

その核となるのが、真のニーズを引き出す丁寧なカウンセリングです。顧客が抱える悩みや理想にじっくりと耳を傾け、心から共感する姿勢が「この人は分かってくれる」といった安心感を高められるでしょう。

その上で、お客様に本当に合った施術を、メリットだけでなく経過なども含めて正直に提案し、期待できる効果を共有してください。この丁寧な対話が、信頼の土台を築きます。

そして、施術の感動を持続させ、次へとつなげるのが効果的なアフターフォローです。施術後、その顧客のためだけのホームケアをアドバイスし、いつでも気軽に相談できる窓口を伝えるだけでも、安心感は格段に高まります。

継続的なコミュニケーションと限定特典で特別な「つながり」を育む

顧客がサロンを後にした瞬間から、本当の関係構築が始まります。施術後の継続的なコミュニケーションと「大切にされている」という特別感の演出が、「特別なつながり」を育むからです。

LINE公式アカウントなどを活用した定期的なコミュニケーションが、そのつながりを日常に根付かせるポイントとなってくれるでしょう。

施術後の状態を気遣うメッセージや役立つ美容情報を発信するだけでなく、顧客がいつでも気軽に相談できる窓口を用意することが、深い安心感につながります。

あるエステサロンの代表は、LINEでのサポートについてこう語っています。

カウンセリングで丁寧にお客さまの理想の姿をお伺いした後は、サロン内だけでなく日常生活での悩みも解決できるように公式LINEを通じて常にご相談を受け付けられる状態にしています。たとえばサロンで販売している化粧品も使い方ひとつで効果がまったく変わってくるんです。サロンで説明されただけではわからないこともあると思うので、そんな時はLINEで気軽にご相談いただければすぐにスタッフがお答えします。

引用:モアリジョブ|MIRANSA GINZA 代表 大川あつ子さん

さらに「あなただけ」という特別感を演出する限定特典も、顧客の心を掴む有効な手段です。

たとえば、お誕生日に割引クーポンをプレゼントし、長年のリピーター様へ新メニューの先行案内をするなど、こうしたパーソナルな働きかけが、来店意欲を効果的に刺激します。

LINEを活用した、より具体的なコミュニケーション戦略や集客術に興味がある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

「エステサロンの集客を担える人材」の採用・育成戦略

集客の様々な課題を乗り越え、エステサロンを継続的に成長させるための最も重要な鍵は「人」、すなわちスタッフの存在です。

以下では、採用から育成、そして定着までを一貫した戦略として捉え、スタッフ一人ひとりが輝き、サロン全体の集客力を底上げしていくための具体的な道筋を解説します。

集客できるポテンシャルを持つ人材の採用術

サロンの成長の鍵は、顧客を惹きつけられる「人」の採用にあります。

まず、エステサロンの理念に共感し、高い技術とコミュニケーション能力を持った「求める人物像」を明確に定義し、採用のブレをなくしましょう。

求める人材と出会うために、SNSでの魅力発信や専門学校との連携はおすすめです。

さらに選考では、面接だけでなく「体験入店」で実践力を確認し、既存スタッフからの紹介を活用するなどして、ミスマッチを防ぎます。

採用成功率をさらに高めるための、体系的なノウハウに興味がある方は、こちらの資料もぜひご覧ください。

土台として大事な「技術力」と「接客力」を徹底的に高める

採用した人材を「集客できる人材」へ育てるには、全ての基本となる確かな技術力と、顧客の心に寄り添う接客力を徹底的に高めましょう。

この両輪が、サロンへの揺るぎない信頼の土台を築きます。

まず、プロとしての生命線である技術力を継続的に高めるには、以下の3つの柱を意識して実践に取り入れてみてください。

  • 定期的な研修やセミナーに参加し、常に最新の知識と技術を学ぶ。
  • OJTを通じて、先輩から後輩へ実践的なスキルを継承する。
  • スタッフ間で得意技術や成功事例を共有し、サロン全体のレベルアップを図る文化を醸成する。

次に、顧客に「またこの人に会いたい」と思われる接客力を磨くには、多角的なアプローチが求められます。

  • 様々な場面を想定したロールプレイングで、実践的な対応力を養う。
  • 顧客の真の悩みを引き出す、丁寧なカウンセリング技術を徹底する。
  • 施術後の顧客に合わせたアドバイスなど、きめ細やかなアフターフォローを実践する。
  • 受付から見送りまで、一人ひとりに寄り添う温かいコミュニケーションを心がける。

このように、確かな技術力と心に響く接客力、この両方を絶えず高めていく地道な努力こそが、顧客からの揺るぎない信頼を獲得します。

顧客の心を掴む「コミュニケーション力」と「提案力」の育成

高い技術力は前提ですが、顧客の心を掴むには、真のニーズを引き出す「コミュニケーション力」と「提案力」が欠かせません。

顧客の想いを汲み取る「傾聴力」を基本に、ロールプレイングなどで実践的な対話力と提案力を養いましょう。

これらは小手先の技術ではなく、スタッフの総合的な「人間力」を育てることで磨かれます。あるエステサロンの育成事例を見てみましょう。

プログラム終了時には、“自分はどんなビューティシャンになっていくか”“学んだことを仕事にどう生かしていくか”をテーマに、一人ずつ経営陣の前でプレゼンテーションを行います。この1年間で、技術力だけでなく、人間力もバランスよく向上させていきます。 これによりスタッフのコミュニケーション力が向上したり、壁にぶつかっても自分で解決していく力がついたりして、離職率がぐんと減りました」

引用:モアリジョブ|トータルビューティーサロン uka

この事例が示すように、技術研修と並行し、スタッフの内面的な成長をうながす取り組みが、結果として顧客への提案力や対応力を高めます。

それがスタッフの定着にもつながり、エステサロン全体の力を底上げできるようになるでしょう。

「ここで頑張りたい!」と思わせるモチベーション向上とチームワーク強化

エステサロンのサービス品質は、最終的に「人」、つまりスタッフの意欲と連携にかかっています。

「このサロンで頑張りたい!」とスタッフが心から思える環境を育むことこそが、経営者にとって最も重要な育成戦略といえるでしょう。

スタッフのモチベーションを高めるには、成長できる環境と正当な評価制度が欠かせません。

  1. 店長や教育担当といった明確なキャリアパスを示す
  2. 研修や勉強会で学びの機会を提供する
  3. その頑張りや成果を、技術・売上げ・顧客満足度といった透明性のある基準で評価する
  4. インセンティブとして報酬に結びつける

このサイクルが、スタッフの向上心を刺激します。

同時に、心身ともに健やかに働ける環境と、良好なチームワークも欠かせません。

柔軟なシフト調整や有給休暇の取得推奨といったワークライフバランスへの配慮はもちろん、定期的なミーティングで風通しのよいコミュニケーションを促し、互いに協力し合える文化を醸成することが大切です。

【要チェック】エステサロン集客における広告規制と法律に関する注意点

エステサロンの集客活動は、顧客に魅力を伝える重要な機会ですが、同時に様々な法律による規制と隣り合わせでもあります。

知らず知らずのうちに法律に抵触してしまうと、サロンの信頼を大きく損ないかねません。

以下では、エステサロン経営者が最低限知っておくべき、法律に関する注意点を分かりやすく解説します。正しい知識を身につけ、顧客からの信頼を守り育てるための土台を固めましょう。

広告表現の落とし穴「薬機法」「医師法」で禁止されることを把握する

サロンの魅力を最大限に伝えたい気持ちと、法律遵守のバランスは極めて重要です。表現が一線を超えれば、法的なペナルティを受けるリスクも少なくありません。

ここでは、特に注意すべき広告の「落とし穴」を解説します。

まず、薬機法(旧薬事法)では「シミが消える」といった医薬品的な効果の保証や、過度な誇張表現が禁止されているので注意しましょう。

第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

引用:e-Gov 法令検索|薬機法 第十章 医薬品等の広告

また、医師法では、エステティシャンが「治療」や「矯正」といった医療行為を連想させる言葉を使うことを固く禁じています。

これらの法規制を全スタッフが正しく理解し、日々の接客で不適切な表現を使わないために、サロン独自の接客マニュアルを作成し、定期的に研修を行いましょう。

マニュアルには、具体的な注意点や言い換え表現を盛り込み、トラブルを未然に防ぐようにしてください。

具体的なマニュアルの作成方法については、こちらの記事もチェックしてみましょう。

顧客を惑わさない「景品表示法」と「あはき法」の注意点

前項の薬機法・医師法に加え、顧客を誤解させないために知っておくべき法律が、「景品表示法」と「あはき法」です。

まず「景品表示法」は、実際よりも著しくよい、またはお得であると誤解させる「不当表示」を禁じているので注意しましょう。

たとえば、根拠のない「地域No.1」といった表現や、恒常的な割引なのに「今だけ」と謳う二重価格表示などがこれに該当します。

第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

引用:e-Gov 法令検索|不当景品類及び不当表示防止法 第二章 景品類及び表示に関する規制

また、「あはき法」により、国家資格を持たないエステティシャンが「マッサージ」という言葉を使うことはできません。

広告やメニューでは、「トリートメント」や「ボディケア」といった適切な言葉に言い換えましょう。

これらの法律を正しく理解し、顧客に誤解を与えない誠実な情報提供を心がけてください。それが、長期的な信頼関係と健全なサロン経営につながります。

契約書面とクーリングオフで「特定商取引法」を遵守する

エステサロンの高額なコース契約は、時に顧客とのトラブルの原因にもなり得ます。

そうした事態を防ぐために、経営者が必ず理解しておくべき法律が「特定商取引法(特商法)」です。特商法では、エステの契約が「期間1ヶ月超、かつ金額5万円超」の場合、特別な義務が発生します。

具体的には、契約前と契約後に、サービス内容や解約条件を明記した書面の交付が必要となるので、あらかじめ準備しておきましょう。

そして、最も重要なのが「クーリングオフ制度」への対応で、顧客が契約を無条件で解除できる権利となります。

クーリング・オフには、期間の制限があり、申込書面又は契約書面を受け取った日から8日以内(マルチ商法は20日以内)であれば、書面又は電磁的記録によって無条件で申し込みの撤回や契約の解除ができます。

引用:警視庁|クーリング・オフをご存じですか

特商法を正しく理解し、契約書面の交付やクーリングオフへ誠実に対応しましょう。それが顧客とのトラブルを防ぎ、長期的な信頼を築く、健全なサロン経営の基盤となります。

「合理的根拠」の提示と誠実な情報開示で広告の信頼性を高める

広告はサロンの「顔」であり、その内容は顧客からの信頼を大きく左右します。単に注目を集めるだけでなく、「信頼される情報発信」をすることが、これからの集客では欠かせません。

広告で「この施術は効果的」「当サロンはNo.1」などと謳う際には、それを裏付ける「合理的根拠」を示す必要があります。

たとえば、第三者機関による調査データや専門家の見解などがこれにあたります。客観的な根拠があれば広告の説得力が増しますが、根拠のない効果の標榜は、景品表示法に抵触してしまうかもしれません。

また、顧客を惑わさない「誠実な情報開示」も、信頼を得る上で同じく重要です。以下の3つのポイントを心がけましょう。

  • 「必ず痩せる」といった誇張表現を避け、効果には個人差があることを正直に伝える。
  • 料金体系やキャンセルポリシーなど、顧客が知りたい情報を正確かつ透明性高く開示する。
  • ビフォーアフター写真は過度な加工をせず、誤解を招かないよう細心の注意を払う。

「客観的な根拠に基づいた情報」と「誇張のない誠実な情報開示」の徹底が、長期的な信頼関係を築き、サロンのよい評判を守ります。

まとめ

本記事では、エステサロンが集客に苦戦する原因の分析から、具体的な解決策までを網羅的に解説してきました。

成功への道筋は、以下の4つのステップに集約されます。

  • 原因の特定:自サロンが集客に苦戦する根本原因を、客観的に分析することが全ての始まり。
  • 戦略の立案:ターゲットと自店の強みを明確にした上で、オンライン・オフラインの施策を組み合わせ、リピーター育成や口コミ創出まで含めた基本戦略を立てる。
  • 施策の実行:戦略に基づいてウェブサイトやSNS、地域連携といった具体的な集客アイデアを実行に移す。
  • 土台の強化:集客の鍵を握る「人」の採用・育成に力を注ぎ、同時に、薬機法などの法律を遵守した誠実な情報発信で、揺るぎない信頼を築く。

集客は一度行えば終わりではありません。市場や顧客のニーズは常に変化します。

大切なのはこれまで紹介した施策を継続的に実践し、その効果を測定・分析し、改善を繰り返していくことです。

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Bizリジョブ編集部
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