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個人オーナーも必見!エステサロンの平均客単価と売上を上げる鍵とは?

個人オーナーも必見!エステサロンの平均客単価と売上を上げる鍵とは?

エステサロンの規模に関係なく、店舗運営において重要となるのが「客単価」です。売上げを増やし、利益を出す健全な運営には客単価を意識した対策を打つ必要があります。

本記事ではエステサロンの平均客単価や、客単価を上げるための施策を解説します。

売上げが伸びずに困っているサロンオーナーや、これからサロン経営を考えている方はぜひ参考にしてください。

エステサロンで客単価を重視すべき理由とは?

エステサロンの客単価は、以下の2つに影響を与える可能性が上がります。

  • 売上げや利益
  • エステティシャンの定着率

客単価が低いと、客数が増えても売上げや利益は大きく上がりません。個人サロンから中規模サロンまでエステサロンの規模に関係なく、売上げや利益を伸ばすためには客単価アップが大切です。

また客単価が低いと利益が上がりにくいため、エステティシャンに高い給与を支払えません。その結果、離職につながる可能性が高くなります。

リジョブの調査によると、求職者がエステサロンに求める条件でもっとも高かったのは「給与」でした。

▼求職中のエステティシャンが企業に求める条件

1.求職中のエステティシャンが企業に求める条件

つまり、客単価を上げて利益を増やせばエステティシャンへ高い給与を支払えるため、エステティシャンの定着率アップが期待できます。

客単価と同時に時間単価も意識する

客単価に加えて時間単価も意識しましょう。

時間効率を示す「タイパ」という言葉が生まれるほど、現代人にとって「時間」は重要です。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査でもエステサロンの「1回当たりの利用金額」は増えているのに「サロンにかかった時間」は短縮しており、タイパ重視の思考が強いと考えられます。

▼エステサロンの1回当たりの利用金額とかかった時間(女性/フェイシャル利用者/実数回答)

 

2023年(n=433)

2024年(n=494)

1回当たりの平均利用金額

7071円

7431円

サロンにかかった平均時間

69分

65分

※ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期《エステサロン》を元に作表

ボディ・痩身メニューや男性利用者の場合も同様に、利用金額は増えているのにかかった時間は短縮しています。

プライベートや仕事で忙しい人の場合、短時間でも効果を実感してもらえれば、客単価を上げることが可能です。

エステサロンの平均客単価

エステサロンの平均客単価は7431円(女性・フェイシャルの場合)です。ボディ・瘦身では8003円、男性の平均客単価はフェイシャルが4955円、ボディ・瘦身が5176円となっています。

エステサロンの平均客単価は年代によっても異なるため、次の項で詳しく解説します。

客単価がもっとも高いのは50代女性

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、女性で客単価がもっとも高いのは50代で9572円でした。

次いで高いのは60代ですが、40代は50代や60代より低いものの、前年と比較すると9.1%と増減率が高い結果となっています。

2.年代別1回当たり利用金額

画像出典:ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期《エステサロン》

40代や50代は子育てが落ち着き、自分のために時間やお金が使えるようになる方も多いことが理由のひとつと考えられます。

またエイジングサインが目立つようになる40代は、30代までより高い効果が期待できるワンランク上の施術にステップアップする人が多いのも理由のひとつでしょう。

株式会社ウィルミナの調査によると、8割超の女性が「女性の価値が外見で判断されている」と感じています。

3.外見で判断されていると感じたことがあるか?

特に仕事や職場、友人や知人との交流で美容のプレッシャーを感じると回答している人が多く、社会に出る年齢であり、エイジングサインが気になる40代や50代で単価が上がる理由につながっているようです。

男性の客単価も上昇中! 売上げの鍵となるのは30代

コロナをきっかけに男性の美容意識も高まっており、男性の客単価も上昇しています。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、特に30代がフェイシャル、ボディメニューともにもっとも利用金額が高い結果となりました。

施術メニュー

年代

1回当たりの平均利用金額

フェイシャル

20代

4288円

30代

5447円

40代

4902円

ボディ・痩身

20代

4038円

30代

5925円

40代

5632円

※ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期を元に作表

株式会社クロスマーケティングが行ったスキンケア実施のきっかけに関する問いでは、30代以降は「年齢を重ねる中で外見のケアが重要だと感じた」がトップに上がっています。

▼スキンケア実施のきっかけTOP5(数字=%/複数回答)

4.スキンケア実施のきっかけTOP5

30代の男性も女性と同様に、日常的に年齢に伴う外見の変化を感じ、エステでプロの手による肌や体のお手入れを始める人が多いようです。

エステサロンの客単価が上がらない理由

客単価が上がらないエステサロンは、以下の3つのいずれかに当てはまる可能性があります。

  • メニューやオプションの魅力が伝わっていない
  • 価格を重視する顧客が多い
  • 割引しすぎている

詳しく解説するので、当てはまっている場合は早急の改善をおすすめします。

メニューやオプションの魅力が伝わっていない

客単価が低い場合、メニューやオプションの魅力が顧客に伝わっていないかもしれません。

またエステティシャン自身が高価格帯メニューやオプションのよさ、特長を理解していないことも考えられます。エステティシャンが商品のよさがわかっていないと、顧客にも伝わらず、自信をもっておすすめできません。

お客様は綺麗になりたくて来店しています。エステティシャン自身がメニューやオプションを理解し、顧客にむけて魅力を伝えられるようになることが大切です。

価格を重視する顧客が多い

客単価が上がらないのは「価格を重視する」顧客が多い可能性があります。

価格は顧客がエステサロンを選ぶ際に重視するポイントのひとつです。

しかしホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、現在利用しているエステサロンを継続している理由として「料金がリーズナブル」と回答しているのは1割にも満たない結果となりました。

▼現在利用しているエステサロンの継続理由(フェイシャル利用者/女性/複数回答/n=499)

理由

割合

ネット予約できる

30.1%

スタッフの技術が高い

14.8%

予約が取りやすい

12.4%

サロンの居心地がよい

9.8%

料金がリーズナブル

9.0%

※ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期を元に作表

新規顧客だけでなくリピート顧客の客単価も低いのであれば、価格を魅力と感じる顧客のみが残っている可能性があります。

価格以外の魅力を増やし、客単価を上げても集客できるような改善が必要です。

割引しすぎている

割引のしすぎも客単価を下げる大きな要因のひとつです。

割引が続くと顧客は割引後の価格が正規価格と感じるようになり、正規の価格で利用や購入しなくなります。

また、初回価格と正規価格に差があり過ぎるとリピートにもつながりにくく、結果として客単価の低下を招きます。

商品やサービスの価値を低評価し、利益率の低下にもつながります。過度な割引をしているのであれば見直しましょう。

エステサロンの客単価を上げる方法

エステサロンの客単価を上げる方法を8つ紹介します。

自店の客単価を下げている理由や、店舗の顧客層に合わせてできるものから実施してみましょう。

顧客を分析する

客単価を上げるためには顧客の分析をし、客単価アップの対象顧客を決める必要があります。

自店の顧客を以下の画像のように、年間利用回数と1回当たりの利用金額で4つのゾーンに分類しましょう。

 

もっとも客単価アップを狙えるのが左上のAゾーンです。年間利用回数が高く、タイミングやおすすめの内容次第ではワンランク上のメニューや、オプションメニューの追加を狙えます。

またBのゾーンはすでに高単価顧客ではあるものの美容意識が高いため、季節限定や数量限定など付加価値を提供できれば、さらなる客単価アップが可能です。

以上の分析はあくまで一例ですが、顧客分析によって講じるべき対策がわかります。

まずは自店の既存顧客を分析し、顧客層を明らかにしましょう。

リピート率が悪い場合は対策を講じる

リピート率が悪い場合には対策を講じる必要があります。

Salon Knowledgeの調査によると、エステサロンのリピート率は新規予約から3カ月以内、6カ月以内どちらの場合も約20%です。

エステサロンがあるエリアや取り入れているメニューによってリピート率は異なるため、上記のリピート率はあくまで目安ですが、極端にリピートが少ない場合は改善が必要です。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、エステサロンを利用する人の約半数が「施術」でリピートを決めています。次いで「仕上がり確認」「カウンセリング」となっています。

▼【フェイシャル】「サロンをまた利用したい」と思った場面(n=1000/20~59歳の女性/複数回答)

6.サロンをまた利用したいと思った場面

リピート率が悪いエステサロンはカウンセリングや施術を見直しましょう。

また5位の「事前に口コミで確認」からもわかるように、口コミもリピートするかの判断材料となっています。リピート率改善に向けた対策を取る際は、口コミの内容も参考にしましょう。

リピート率を上げる施策については、下記の記事で詳しく解説しています。


自社のウリやエステティシャンの強みを分析する

客単価を上げるには自社のウリやエステティシャンの強みを分析し、活かすことが大切です。

そもそも客単価は顧客満足度の指標のひとつです。客単価が低いのは顧客に高い満足や価値を享受できていない可能性が考えられます。

他社と差別化できる技術や特化したメニューは強みとなり、客単価アップにつながります。

鳥取県のエステサロンを調べたところ、既にいくつかのサロンがあったので、誰もやっていないジャンルを取り入れて他とは違うことをしたいと考えました。(中略)東京で「まつげパーマ」と「眉毛ワックス」が流行っているらしいという情報をキャッチ。鳥取ではまだ普及していなかったので「これだ!」と思い、東京までまつげの施術を学ぶスクールへ行きました。

引用:モアリジョブ|毛穴ケア専門サロン ATAHANA(アタハナ)経営者 エステティシャン 西原千晶さん

理想の客単価を決める

顧客を分析し、自社の強みが明確になったら、次は理想の客単価を決めましょう。

溶剤や人件費、家賃など店舗運営にかかる経費を試算した上で、目標の売上げを決めます。目標金額を現状集客できている顧客数で割れば、目指す客単価が明確になります。

また店舗のあるエリアの雰囲気や流動客の層も理想の客単価を決める指標となるので、エリアの分析も大切です。

―もうひとつの(顧客集客の)転機は?

「ECLART」に入社し、単価の見直しを行ったことです。「ECLART」では美大卒のブランディングと赤坂という土地柄にあわせ、1人ひとりに丁寧な接客を行うスタイルに変更しました。

引用:モアリジョブ|美容師/「ECLART CENTRAL 赤坂」エグゼクティブディレクター まっきーさん

エステサロンは飲食店と比べて仕入れにロスが出にくいため、やり方次第で利益を上げやすい業種です。そのためにも理想の客単価を明確にしましょう。

価格設定を見直す

客単価を上げるためには価格設定の見直しが大切です。

客単価を作る軸の部分であり、価格設定が低いとオプションや商品販売に力を入れても高い効果を得られない可能性があります。

近隣のエステサロンと比べた際や利益率が低すぎる場合は、早急に価格設定を見直すべきでしょう。

なお経済産業省のデータによると、エステサロンが含まれる生活関連サービス業の利益率は約40%ですが、エステサロンのみの場合は一般的に15%といわれています。

目標とする利益率や健全な店舗運営に必要な利益率に合わせて、価格設定を見直しましょう。

商品の販売促進を行う

客単価を大きく上げるために有効なのが商品の販売です。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、男女ともにエステサロンの商品購入率は高まっています。

7.商品購入率

ボディ・瘦身利用者への調査でも男女ともに商品購入率は前年比の約8〜9%高い結果です。エステサロンの商品は施術との関連性が高く、結果を求める美意識の高い人は興味をもってもらえます。

ただし、商品販売においては顧客との信頼関係も大切です。無理やり買わされたと思われないためにも日頃から信頼関係を積み重ねておきましょう。

――a+(商品)の売上は順調ですか?

いま広告を一切出していないので、サロンに来てくださるお客様と、僕のインスタを見てくださる方のみへの告知になっています。そんな中で、ご来店されたお客様にはほぼほぼ使っていただいていて、リピートしてくださる方も多いです。それは、いままでスタッフがお客様と接してきたコミュニケーションの賜物だと思っているので、現状に関しては満足しています。

引用:モアリジョブ|(株)アニムスディレト代表取締役 大澤隼人さん

回数券やサブスクリプションを導入する

回数券やサブスクリプションの導入は客単価アップに有効です。

回数券は購入する日以外はエステサロンでの支払いが発生しません。サブスクリプションの場合も基本的に口座引き落としかクレジットカード請求のため、エステサロンでの支払いはありません。

施術日に支払いがないことで支払っている感覚が弱まるので、オプションメニューの追加や商品購入など、その他の売上げにつながる可能性が高くなります。

定期利用や期限に縛られるのが嫌な方もいるので、都度利用と回数券もしくはサブスクリプションの選択を可能にしておくのがよいでしょう。

定期的に新メニューや限定オプションを取り入れる

エステサロンでの客単価アップには、季節や顧客の悩みに合わせた新メニューや限定オプションの導入もおすすめです。

とくにフェイシャルの場合は春から夏にかけては美白、夏終わりにはピール、秋から冬は保湿といったように、季節に合わせたケアが大切です。

また人には「他人とは違うものが欲しい」というスノッブ効果と呼ばれる心理が働き「限定」に惹かれるといわれています。

長く通う人を飽きさせないためにも、定期的な新メニューや限定オプションを入れましょう。

エステサロンの客単価アップには人材採用も重要な鍵となる

エステサロンの客単価アップには人材採用も不可欠です。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、4〜5割の人が「スタッフの対応」や「カウンセリング・施術方向性決定」の場面で「また利用したい」と感じています。

▼フェイシャル「また利用したい」と思った場面(n=1000/来店~施術~仕上がり確認/リピート意向者/複数回答)

場面

割合

スタッフの対応

受付時の対応が丁寧

51.3%

スタッフが細やかな気遣いができる

46.2%

笑顔で出迎えてくれる

45.7%

カウンセリング、施術方向性決定

施術について丁寧に説明や確認をしてくれる

42.9%

悩みや状態に合わせた施術、提案ができる

39.7%

※ホットペッパービューティーアカデミー 顧客満足調査(エステサロン編)を元に作表

以上はいずれもエステティシャン個人の対応(接客)が影響するものです。

どんなによいエステサロンでも、よいメニューがあっても結局顧客は人につきます。顧客を惹きつける魅力のある人材の採用が客単価アップには不可欠です。

不安を煽って通わせるというやり方は古いのではないでしょうか。お客様のよいところを褒めて、優しく接し、お互いに楽しい時間を過ごす。そういうコミュニケーションの取り方がベストかなと私は思います。

引用:モアリジョブ|MIROOM ミールーム オーナーエステティシャン 町田美香子さん

技術のほか、接遇や営業もできる人を採用する

エステティシャンは技術だけでなく、接遇力や営業力も不可欠です。

先述のように顧客はカウンセリングなど、施術以外の場面でもエステサロンを評価します。施術がよくてもカウンセリングや仕上がり確認に不満を感じれば、リピートしなくなります。

また、顧客に不快感を与えない商品提案や案内をできるスキルも重要です。

高い技術力などエステティシャン個々の強みは大切ですが、基礎の部分は一定以上持ち合わせている人を採用するようにしましょう。

育成を担える人材の採用も大切

エステサロン運営には人材育成も大切です。

リジョブの調査では業種別求人検索ランキングの第2位に「未経験歓迎」が上がっています。

▼業種別 求人検索ランキング

8.業種別 求人検索ランキング

エステティシャンの職を探している人の中には未経験者が多いため、人材を確保する上で育成を担える人材も不可欠なのです。

一方で、求職者のこだわりたい条件においては「スキルアップできる環境」と回答した人が20代では3番目、30代と40代では2番目に多い結果となっています。

育成スキルは、エステティシャンをする上で強みとなるスキルのひとつです。人材採用の際には先を見据えて育成まで担える人材の採用に努めましょう。

求職者のこだわりたい条件の詳細は下記ホワイトペーパーをダウンロードしてご覧ください。(ダウンロード無料)

まとめ

本文を総括すると次のとおりです。

  • エステサロンの客単価は7431円(女性・フェイシャルの場合)
  • 客単価がもっとも高いのは女性は50代、男性は30代
  • 客単価を上げるには顧客分析と自社の強みを知ることが先決
  • 価格設定の見直しや回数券、商品販売強化を合わせて行う
  • 客単価アップに貢献する人材採用も大切
田中 久美(Tanaka Kumi) プロフィール画像
執筆者情報
田中 久美(Tanaka Kumi)
温泉施設や大手スポーツクラブのエステティックサロン、大型リラクゼーションサロンにて、エステティシャンやアロマセラピストとして勤務。エステティックサロン勤務時代は人材採用や育成、店舗管理なども担当。 その後独立し、現在は完全貸切のアロマリラクゼーションサロンを運営。約20年の知識や技術を活かし、集客や経営、接客などを自身で行う。約7~8割がリピート顧客で、30代から50代の女性を中心に指示を得ている。