良い人材を採用するためには給与が重要な指標だと理解していても、実際にどれくらいの年収に設定すれば良いかわからず悩んでいる経営者は少なくありません。
本記事では給与設定に悩む経営者に向けて、エステティシャンの年収と、給与設定をする際の注意点やポイントを解説します。
エステティシャン採用がうまくいかずに悩んでいる経営者や採用担当者は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
エステティシャンの給与体系
リジョブが20〜30代のエステティシャン181人に行った調査によると、現在の給与体系は以下のとおりでした。
上記をもとにエステティシャンに多い、以下4つの給与体系について特徴やメリット、デメリットを解説します。
- 月給固定制
- 基本給+歩合制
- 完全歩合制
- 時給制
月給固定制
月給固定制とは成果に関わらず、毎月固定の給与額を支払うものです。多くの企業や職種で多く取り入れられており、週休2日で1日実働8時間が一般的です。
リジョブの調査では2番目に多い給与体系でした。
エステティシャンにとっての月給固定制のメリットは、閑散期や繁忙期など売上状況に関係なく安定した収入を得られる点です。
最近ではワークライフバランスの観点から週休2日と週休3日の選択制など、休日や働き方を選べるエステサロンも増えつつあります。
経営側にとって月給固定制は売上や利益に関係なく、一定の人件費がかかってしまうものの、毎月の経費を試算しやすくなるのが利点です。
基本給+歩合制
「基本給+歩合制」はエステサロンで最も多く取り入れられている給与体系です。
月給固定制では売上の大きさに関係なく同賃金となるため、売上に貢献しているエステティシャンの不満につながる可能性があります。
基本給に歩合制を足すことで売上に応じて手取り給与が増えるため、頑張って成果を出したエステティシャンへ給与という形で還元できます。
また基本給で一定の保証をしつつ、エステティシャンのモチベーションを上げられるのも「基本給+歩合制」の利点といえるでしょう。
目標を100%達成してからインセンティブを支給するだけでなく、途中の時点でもある程度の達成率を超えていればインセンティブの対象となります。また1回数百円にはなりますが、施術した人数に応じて、接客手当も付きます。さまざまな形でインセンティブを支給しているためモチベーションアップにもつながります。
引用:モアリジョブ|株式会社バイオテクノロジービューティー 人事部・宇佐美文野さん
ただ昨今は安定志向が強く、基本給の底上げを望む声も多い傾向です。
基本給と歩合のバランスについての調査では、7割を超えるエステティシャンが「基本給が高く歩合が低い」ほうが良いと回答しており「基本給が低く歩合が高い」の回答を大きく上回る結果となりました。
頑張りを評価して給与に反映してほしいと考える一方で、ある程度安定した給与を求める人が多いことがわかります。
完全歩合制
完全歩合制はその名の通り、基本給のない歩合制で給与を支払う給与体系です。
歩合率はエステサロンによって異なりますが、40〜50%が多い傾向です。なかには60%を超える高い歩合率を導入しているところもあります。
売り上げ次第では高収入を狙える給与体系ですが、収入が確約されていないのがエステティシャンにとってはデメリットです。
そのため完全歩合制としつつも、昨今では給与の最低保証を行うところが増えてきています。
時給制
時給制とは働いた時間に応じた給与を支払う給与体系です。パートタイムやアルバイトなどの多くは時給制を採用しています。
子育てや介護、自分の時間などプライベートを優先しつつ、エステティシャンとして働きたい人に向いている働き方です。
地域によって最低賃金や平均給与が異なります。2025年5月時点のエリア別のエステティシャン平均時給は以下のとおりです。
▼エリア別エステティシャン平均時給
時給制は固定ではないため、閑散期などに人件費を抑えられるメリットがあります。ただ月給固定制や「月給+歩合制」のような正社員に比べて、責任感の観点からモチベーションが低くなる可能性があります。
給与相場の詳細は、下記ホワイトペーパーを無料ダウンロードしてご覧ください。
エステティシャンの平均年収は?
リジョブの調査によるとエステティシャンの平均時給は1,152円、正社員の平均月収は220,568円です。
以下のデータと先に解説した内容をもとに、エステティシャンの平均年収を「正社員」「パート・アルバイト」「完全歩合制」の場合に分けて算出しました。
正社員の場合
エステティシャンで正社員として勤務した場合の平均年収は、約265万円です。
厚生労働省がまとめた「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとに算出した一般労働者の年収は約382万円のため、エステティック平均賃金は全産業の平均年収より117万円低い傾向です。
さらに産業別に見た場合もエステティシャンが属する「生活関連サービス業,娯楽業」の産業は、賃金の高い産業との格差が大きい結果となっています。
▼産業別にみた賃金
産業 |
賃金(年収/月収) |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
492万円/41.0万円 |
学術研究,専門・技術サービス業 |
476万円/39.7万円 |
金融業,保険業 |
472万円/39.3万円 |
生活関連サービス業,娯楽業 |
334万円/27.9万円 |
※令和5年賃金構造基本統計調査をもとに作表
パート・アルバイトの場合
パートやアルバイトで勤務の場合、勤務時間によって年収が異なります。社会保険の関係から、短時間勤務を希望するエステティシャンもいます。
今回は短時間勤務と正社員と同様のフルタイムシフトで働く、2つのパターンでパートやアルバイトの年収を試算しました。
▼パート・アルバイトの年収シミュレーション(時給1,152円で試算)
働き方 |
年収 |
短時間勤務(週4日、実働4時間)※1 |
94万円 |
フルタイム勤務(週5日、実働8時間)※2 |
232万円 |
※1:「1カ月=17日」で試算
※2:「1カ月=21日」で試算
家族の扶養内で働きたい人へは、年収が一定額を超えないように配慮が必要です。
また時給制のスタッフが多い場合、シフト管理をしっかり行っていないと人件費が膨れ上がる原因となるため、注意しましょう。
完全歩合制の場合
完全歩合制の場合、顧客ひとりに対しての売上額がポイントとなります。
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、顧客1人の1回あたりの利用額は平均7,431円、平均利用時間は65分です。
上記金額をもとに2つの勤務パターンと2つの歩合率で試算しました。
▼完全歩合制の年収シミュレーション
働き方 |
歩合率40% |
歩合率50% |
週5日フルタイム勤務(実働8時間)※1 |
300万円 |
375万円 |
週6日勤務(実働8時間)※2 |
342万円 |
446万円 |
※ 週5日勤務と週6日勤務ともに1日の施術人数を4人で試算
※1:「1カ月=21日」で試算
※2:「1カ月=25日」で試算
完全歩合制は正社員やパート・アルバイトのように雇用契約を結びません。そのため、通常パート・アルバイトや正社員にかかる社会保険料や労働保険料が不要です。
月収20万円の正社員を雇う場合、1人あたりにかかるコストは年間40万円ほどになるため、差し引きすると週5日、実働8時間の場合は正社員とほぼ同額となります。
ただどれくらいシフトに入れるか、歩合率はどうするかでかなり支払い額に違いが出るため、求人をかける際にはしっかりと検討しましょう。
エステティシャンの福利厚生やボーナスの考え方
昨今、福利厚生やボーナスに力を入れるエステサロンも増えてきています。
創業50年以上になる株式会社ボンでは「全従業員の物心両面の幸福を追求し、美しさの提供を通じて社会に貢献する」を経営理念に掲げ、さまざまな福利厚生を取り入れています。
基本的には週休2日制で、日曜日が定休のお店もあります。また女性の多い職場ですので、育休制度やママさんが働きやすい環境の整備も欠かせません。ママさんだけが働いている9時から17時までしか営業していないサロンもあるため、安心して働くことができます。
引用:モアリジョブ|株式会社ボン 教育部センター長 原田知佳さん
その他、エステサロンで導入されている福利厚生には海外研修や夏季休暇、社員旅行などがあります。また独立支援の福利厚生は意識の高い人材の獲得に有効です。
またリジョブの調査によるとエステティック業界に従事する人が思う理想の給与体系で最も多かったのは「基本給+歩合+賞与」でした。
画像出典:給与の実態と理想、転職との結びつきをアンケート調査! 給与に関する調査レポート −エステティシャン−
ただ現在の給与体系が「基本給+歩合+賞与」だと回答した人は20%を切っており、現実と理想の乖離が大きい結果となっています。
福利厚生やボーナスは働く人のモチベーションアップや、ライフワークバランスに一躍を担います。福利厚生は一部の法定福利を除き、必ず入れないといけないものではありませんが、他社と差別化を付け、良い人材を獲得するにも強みとなるでしょう。
スタッフの給与設定の改善で期待できる効果
給与設定の改善は、以下の3つの効果が期待できます。
- エステティシャンの定着率が上がる
- 顧客満足度が向上する
- 売上や利益が上がる
エステティシャンの定着率が上がる
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、エステティシャンの離職理由でもっとも多かったのは「給与に関して不満があったから」でした。
▼美容職業を辞めた理由(エステティシャン経験者/2024年/n=3,220)
辞めた理由 |
割合 |
給与に関して不満があったから |
24.4% |
職場の人間関係が良くなかったから |
22.0% |
休みが少ないなど労働時間への不満があるから |
21.7% |
※ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2024をもとに作表
給与は生活をするうえで欠かせないもので、自身の労働や成果に対する評価と捉える人も少なくありません。
リジョブの調査でも給与に対する不満な理由として「労働時間と見合わない」や「求める生活水準に対して不足している」ことを上げた人が上位を占めています。
給与の見直しは離職の食い止めにつながり、定着率を上げる効果が期待できるでしょう。
顧客満足度が向上する
給与設定の改善は従業員満足度(以下、ES)の向上につながり、ひいては顧客満足度(以下、CS)の向上につながると考えられます。
ハーバード・ビジネススクールのJ.S.Heskett(ヘスケット)教授やW.E.Sasser,Jr(サッサー)教授らが提唱したものに「サービス・プロフィット・チェーン」があります。
ESとCSの相関関係を説明したもので、企業が社内サービスの質を上げることで従業員の満足度が上がり、生産性の向上につながると考えられます。
さらに生産性の向上は顧客へのサービスの質が高まるため、顧客満足度の向上が期待できるというわけです。
売上や利益が上がる
スタッフの給与を上げると売上や利益アップが期待できます。
言うまでもなくエステサロンの売上は顧客の来店で成り立ちます。さらに売上の多くは一部の優良顧客が支えており(パレートの法則)、新規顧客の集客より既存顧客の集客のほうがコスパが良い(1:5の法則)といわれています。
先の項で解説したように給与を上げることで従業員満足度が高まり、接客サービスの質が良くなります。
エステサロンをリピート利用する理由の上位3つ(※)は「施術」「仕上がり確認」「カウンセリング」といずれもエステティシャンの接客サービスに関係するものでした。(※ホットペッパービューティーアカデミーの顧客満足度調査)
画像出典:「また行きたい!」VS「もう行かない…」男女で異なるリピート・離脱の分かれ目は?|調査・研究 | 美容業界の調査はホットペッパービューティーアカデミー
エステサロンの売上や利益を上げるにはリピート率を上げることが重要です。スタッフの給与アップはリピート率を上げ、結果的にサロンの売上や利益アップにつながります。
パレートの法則や1:5の法則についても上記の記事で解説しています。
エステティシャンが年収に関して重視するポイント
リジョブがエステティシャンに行った給与に関する調査によると「現在の給与に満足している」と回答した理由は以下のとおりです。
とくに多かった3つの理由について解説します。自社のスタッフの給与設定で反映できているか、確認してみましょう。
自分の能力が評価されているか?
エステティシャンは、自分の能力が給与に反映されているかを敏感に察知します。
たとえ同年齢、同期入社であっても実力や成果は異なります。
成果を出さないスタッフと同額の給与では、頑張っているスタッフは評価されていないと不満に思います。
また歩合制があっても基本給がいつまでも同じでは、評価されていないと感じる人も少なくありません。
リジョブの調査によると「新入社員の給与を上げたタイミング」で最も多かったのは半年から1年以内でした。しかし約3割のエステサロンでは入社して間もない、3カ月以内で給与を上げています。
画像出典:美容・ヘルスケア業界の採用担当者に聞いた!求職者に提示する給与の考え方
給与設定は入社歴や他のスタッフとの比較ではなく、個々の能力に応じた評価が大切です。
労働時間に見合っているか?
給与は生活やプライベートを充実させるうえで欠かせないものですが、多くの人にとって収入がすべてではありません。
リジョブの調査によると美容職の求職者がこだわりたい条件の1位は「休日・労働時間」でした。下記のデータは20代のものですが、30代や40代も転職でこだわりたい条件の1位は「休日・労働時間」です。
とくに子育て中の期間に当たる30代では7割近い人が「休日・労働時間」にこだわり、求人活動を行っています。
給与が少なくても、休日や労働時間に見合うものであれば満足する人はいます。最近では週休2日と週休3日の選択肢を設け、それぞれの労働時間に見合った給与設定を行うサロンもあります。
給与を上げるという思考だけでなく、労働時間に合った給与設定も取り入れてみましょう。
美容職の求人者がこだわりたい条件など「求人動向」の詳細は、下記のホワイトペーパーで解説しています。
求める生活水準に足りる額か?
給与設定をする際は生活水準に十分な額であるかと確認しましょう。
冒頭でも解説したようにエステティシャンの収入は他業種や平均年収より低い傾向です。さらに最近は物価高もあり、物価上昇に応じた給与アップが求められています。
加えてエステティシャンは自身も美容にコストをかけ、綺麗でいることも仕事のひとつです。
すべての美容代を負担する必要はありませんが、福利厚生費に美容代を入れたり、研修費という名目で競合他社へ行くための費用を負担したりと、美容費に対するサポートも必要です。
エステティシャンの給与設定で重要な5つのポイント
エステティシャンの給与を設定する際には、以下5つのポイントに留意しましょう。
- 求職者のニーズにマッチした給与設定をする
- 業界やエリアの平均給与や年収を知る
- ライフステージが変わっても働き続けられる福利厚生を整える
- 売上に直結しない部分も評価基準に入れる
- 売上に対しての人件費率を意識する
求職者のニーズにマッチした給与設定をする
給与設定する際には求職者のニーズにマッチさせることが大切です。
株式会社マイナビの調査によると、転職先決定理由の1位は「給与が良い」でした。
しかし女性に絞って見てみると「希望の勤務地である」や「休日や残業時間が適正範囲内で生活にゆとりができる」の理由が上回っています。
▼転職先決定理由(複数回答/上位抜粋)
リジョブがZ世代のエステティシャンに行った調査でも、就職や転職でこだわりたい条件として「人間関係・社風」や「休日・労働時間」などの割合が高い結果となっています。
つまり子育てや家族、休日などプライベートを優先したい人にとって、給与がすべてではありません。とはいえ、離職理由で「給与に対する不満」が1位に上がっているように、給与を条件に職場を選ぶ人が多いのも事実です。
能力ごとに給与アップできるよう、給与ステージを段階で設定したり、休日数に合わせたいくつかの月給を用意したりと、さまざまなニーズに対応できるとよいでしょう。
関連リンク
業界やエリアの平均給与や年収を知る
良い人材を採用するには業界やエリアの平均給与や年収を知り、平均より上回る給与であることが大切です。
現在の時給や正社員の平均月収については冒頭で触れましたが、リジョブの調査によるとエステ業界でも良い人材獲得のため月給のベースを上げる企業が増えています。
画像出典:美容・ヘルスケア業界の採用担当者に聞いた!求職者に提示する給与の考え方
とくにエステ激戦区では、平均給与より高い水準で給与設定されている場合もあります。定期的に見直しを行う企業も多いため、給与設定の際は最新のデータを確認しましょう。
ライフステージが変わっても働き続けられる福利厚生を整える
結婚や出産、子育てなど女性にはライフイベントが多く、そのたびに仕事とプライベートのバランス調整が求められます。
ライフステージが変わっても働き続けられる福利厚生を整えることで、優秀な人材に長く働いてもらえます。
いまは施術より教育・研修対応の時間が長いのですが、座学研修はリモートなので、自宅でも対応することができます。(中略)子どもが体調不良でも出勤しなさいという方針ではないので、会社の体制やスタッフに本当に助けられています。
引用:モアリジョブ|整体サロンPOWWOW研修・育成担当 泉さん
SNSアプリ「GRAVITY」が女性を対象に行った「理想の福利厚生に関する調査」では以下の結果となりました。(HiClubまとめ)
画像出典:女性518人に聞いた「理想の福利厚生」ランキング、1位は? | マイナビニュース
上位には家賃補助や生理休暇に加えて、子育て支援や託児所といった子供に関係するものや、キャリアアップのための資格取得がランクインしています。
スタッフが安心して結婚や出産を選択できる環境や、キャリアアップを望めるなど働き続けられるための福利厚生は良い人材の獲得にもつながるでしょう。
売上に直結しない部分も評価基準に入れる
給与設定を行う際は売上に直結しない部分も評価基準に入れましょう。
エステティシャンは契約や売上など数字で成績がわかる職種です。しかし資格取得のための努力やスタッフ育成のように、すぐに成果の出ないものや間接的に店舗の売上に貢献するものもあります。
目に見える成果だけの評価は一部のスタッフからの不満の原因となります。仕事に対する姿勢や他のスタッフのサポートなど目に見えない貢献や成果にも目を向け、給与設定をしましょう。
売上に対しての人件費率を意識する
給与を設定する際は、売上に対しての人件費率を意識しましょう。人件費は固定費になるため、高く設定すると経営を圧迫する恐れがあります。
また一度設定すると下げるのは難しいので、設定する際に売上に対して健全な比率であるかの確認を怠らないようにしてください。
政府の統計データによるとエステサロン含む「生活関連サービス業,娯楽業」の売上高に対する人件費率は13.8%です。もし自社の人件費率が13.8%を超えている場合、人件費や経営の見直しをすべきかもしれません。
健全な店舗運営を続けるためにも人件費率を意識した給与設定が大切です。
エステティシャンの採用で失敗を防ぐ5つのポイント
エステティシャンの採用を成功させるには、以下の5つのポイントを意識しましょう。
- 求職者が求める条件に合う求人掲載をする
- 求職者が給与ダウンと引き換えに求める条件を知る
- 試用期間を設けてスキルや能力を判断し、給与を決定する
- 給与は下げることが難しいため、給与下限の設定は慎重に行う
- 採用したい人材や自社のカラーを明示する
求職者が求める条件に合う求人掲載をする
求人募集の際には求職者が求める条件に合う内容を掲載しましょう。
リジョブの調査によると転職を検討している人のうち、約35%の人が「もっと実力を評価してくれる店に行きたい」と回答しています。
画像出典:給与の実態と理想、転職との結びつきをアンケート調査! 給与に関する調査レポート −エステティシャン−
実力の評価とは「仕事の成果に見合った給与」や「責任やポジションに見合う給与」を指します。給与が同じなのに仕事量や責任が増えていく環境では、頑張り続けることはできません。
求人掲載で成果やポジションに応じた昇給や報酬があるとしっかり明示し、求職者の目に留まるようにしましょう。
求職者が給与ダウンと引き換えに求める条件を知る
求職者のなかには給与が下がっても給与以外で自分の求める条件をクリアしていれば、入社したいと考える人もいます。
リジョブの調査によると回答した半数以上の人が、転職する際に給与が下がることを「条件付きで受け入れられる」と回答しました。
全体的に割合が高いのは「勤務時間に融通が利く」「休日が増える」などワークライフバランスに関連するものでした。
3年未満の人では「業務の負担が減る」「より好きな仕事ができる」、3年以上の人では「自分の能力・スキルを高められる」の割合が高めといったように経験年数でも異なる結果となっています。
自社がどのような人材を求めているかで、給与と引き換えに出す条件も異なります。求める人材が給与と同等に何を重要としているのかを知り、求人条件に盛り込みましょう。
試用期間を設けてスキルや能力を判断し、給与を決定する
エステティシャンを採用する際は試用期間を設けて、スキルや能力を判断し、給与を決定することをおすすめします。
試用期間とは企業側が労働者の適性を評価・判断するための期間で、正規採用時より低い給与設定や契約の終了が認められています。
ただし、適性を判断するために合理的な期間を超えた試用期間は無効とされるので、設定時には注意が必要です。
また試用期間を設ける場合、試用期間がある旨やその期間、給与が異なる点について、求人票や募集要項に明記しなくてはいけません。
給与は下げることが難しいため、給与下限の設定は慎重に行う
労働者との合意がない給与の減額は労働契約法上、認められていません。(労働契約法第9条)
いくつか特例はあるものの裁判で認められることは異例で、基本的に給与を下げるのは難しいと考えておきましょう。
そのため給与下限の設定は、慎重に行わなくてはなりません。
リジョブの調査によると、美容・ヘルスケア業界の採用担当者は「求人広告の給与下限を今より上げるため」には以下の条件が必要だと回答しています。
画像出典:美容・ヘルスケア業界の採用担当者に聞いた!求職者に提示する給与の考え方
約4割の採用担当者が「経営状況の向上」が給与下限を上げるために必要だと考えています。
ただ売上や利益を上げるためには、優秀な人材が必要不可欠です。優秀な人材を採用するには、求職者に多く利用されている求人媒体を選びましょう。
総会員数70万人超・業界従事者の2人に1人が登録している「リジョブ」は状況に応じた求人活動が可能です。
採用したい人材や自社のカラーを明示する
採用したい人材や自社のカラーの明示で、採用の失敗を軽減できます。店舗経営が明確な目標がないと成功しないように、人材採用の場においても明確化は大切です。採用したい人材が不明瞭では、自社にマッチしない人材の採用につながりかねません。
また自社のカラーを明示しておかないと採用しても「自分の個性に合わない」と、早期離職につながる恐れもあります。
採用したい人材や自社のカラーがわからない採用担当の方は、以下のホワイトペーパーを参考にしてください。採用活動の失敗を防ぐ方法のチェックポイントと3つのステップを、ワークシート形式で解説しています。
埋めるだけの簡単ステップでダウンロード無料です。
まとめ
本記事を総括すると次のとおりです。
- エステティシャンの平均年収は正社員の場合「約265万円」
- エステティシャンが理想とする給与体系は「基本給+歩合+賞与」
- 給与設定をする際には「能力への正当な評価」など、エステティシャンが重視するポイントを盛り込む
- 売上に対する人件費率や給与下限の設定も意識する

- 執筆者情報
- 田中 久美(Tanaka Kumi)