エステティシャンは資格がなくても始められる仕事のため、未経験者を採用してスタッフとして働いてもらうケースが多く見られます。実際、サロンの利用者を未経験からエステティシャンとして育成し、働いてもらうこともあります。
実はスタッフのほとんどが、もともとはお客さまとしてサロンを利用していました。入社に至る経緯としては、初めて施術を受けた際に感動して後日『技術を身につけたい』と連絡をいただくことが多いですね。
引用:モアリジョブ|会員制エステサロン『Salon ERIMES』 代表取締役社長 滝田エリさん
未経験者をエステティシャンとして働かせるためには、しっかりとした育成システムが必要です。接客スキルや施術スキルなど、指導するべきことが多いため、マニュアルや評価シートを作成することが求められる場合もあります。
本記事では、エステティシャンの育成に関するメリットやポイントを解説します。また、実際の育成事例も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
エステティシャンを育成するメリット
まずはエステティシャンを育成するメリットを把握して、自社で育成を強化する目的について考えてみましょう。4つのメリットを紹介するので、参考にしてください。
離職を防げる
エステティシャンの育成に力を入れると、スタッフの離職を防ぐ効果が期待できます。実際、アイリストのトレーナーを務める下山さんは、スタッフ育成マニュアルを作成したり、定期的に勉強会を開いたりして、離職防止の対策を行ったそうです。
スタッフ育成マニュアルを確立し、随時マニュアルの更新を図りました。いまでは、未経験でもこれさえ頭に入れておけば絶対売れるという内容のマニュアルを確立しています。定期的にオンラインの勉強会も開催していて、技術はもちろん接客面での悩みもケアするなどアフターフォローも手厚くなっています。
引用:モアリジョブ|アイリスト トレーナー 下山さん
育成システムを通してエステティシャンの実力が向上したことで、リピート率がアップしました。その結果、サロンの売上があがり、それをスタッフに給与として還元することで、労働条件の改善にもつなげています。
育成に力を入れたことがスタッフの実力アップと売上の増加、給与のアップという好循環を生み出し、離職率の低下につながりました。
サービスの質が向上する
エステティシャンの育成に力を入れると、スタッフのオペレーション能力や接客スキルが向上し、店舗全体のサービスの質が改善します。
質の高いサービスを提供し続けると、リピーターの獲得にもつながり、安定した集客を実現できるでしょう。
エステサロンの場合、コースに申し込んでもらうことがリピーター獲得につながります。さらに顧客がコースに申し込むかどうかは、料金以上にスタッフの接客力や技術力の影響を受けます。
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、コースに申し込んだ理由として「スタッフの接客が良かった・技術力があると感じたから」という回答が最も多かったようです。
▼コースに申し込んだ決め手
項目 |
回答の割合 |
---|---|
スタッフの接客が良かった・技術力があると感じたから |
41.9% |
金額に見合う効果がありそうだと感じたから |
32.8% |
料金がお得だったから |
28.9% |
体験メニューの施術が良かったから |
25.1% |
自分に合った提案(予算や目標・通える頻度など)をしてくれたから |
23.3% |
※ホットペッパービューティーアカデミーの調査をもとに上位5つを抽出して作表
さらに「金額に見合う効果がありそうだと感じたから」や「料金がお得だったから」などのコース料金に起因する項目以上に、スタッフの能力が重視されていることがわかります。
以上の結果からもエステティシャンの育成に力を入れて、スタッフ一人ひとりが質の高いサービスを提供できるようになると、コースに申し込んでくれる顧客が増えリピーター獲得につながります。
また質の高いサービスが提供されると、お客様の満足度が向上するため、自然とその評判が口コミで広がる点もメリットのひとつです。特にエステ業界では、施術だけでなく接客や細やかな配慮が重要視されるため、優れたサービスが提供されれば、それが多くの人に口コミが伝わり、来店者数の増加が期待できるでしょう。
業務効率が向上する
業務効率の向上を目的にスタッフを育成するケースは多いです。東京商工会議所の調査によると、直近1年間において、業務効率化や生産性向上を目的に研修・教育訓練を実施した企業が最も多い割合を示しました。
▼直近1年間に実施した研修・教育訓練
エステ業界では、スタッフにマニュアルに基づいて行動するよう指導し、業務の効率化を図ることがよくあります。入店から退店までのフローの中で、次回の予約案内のタイミングやトーク内容を細かく定めておくことで、顧客対応がスムーズになり、1人の顧客にかける時間を短縮できます。
次の記事ではエステサロンの接客マニュアルの作成手順や具体例を紹介しているので、ぜひご覧ください。
採用の成功率アップにつながる
エステティシャンの育成システムを整えると、未経験者や成長意欲の高い経験者を採用できるため、採用の成功率アップにつながります。エステティシャンの場合、資格がなくても施術ができるため、システムを整えてサロン内で育成するのも採用戦略として有効です。
実際に他業種で働くお客様を勧誘してエステティシャンとして採用するケースもあります。
直接的なきっかけは、私が「ジェイエステティック」にお客として通っていたときにスタッフの方から誘っていただいたからです。それまでアパレルの仕事をしていたのですが、けがを理由に退職しまして、そこから居酒屋でアルバイトをしている状態でした。そのときに友達から勧められて通っていたのが「ジェイエステティック」だったんです。
引用:モアリジョブ|ジェイエステティック渋谷駅前店 主任 松木さん
未経験者をエステティシャンとして採用する場合は、資格取得をサポートするのもポイントです。エステは資格がなくても施術ができますが、資格を取得した方が顧客に安心感を与えられます。
私の場合は新卒ですぐに入ったサロンも研修が手厚かったし、転職したサロンも外部から講師も招いてくれて社内でスキルアップの講習をおこなってくれるところでした。そのエステサロンの方針にもよりますが、会社によっては社内でしっかりと資格取得のサポートなど研修制度を設けているケースもあります。
(中略)
資格取得をしていなくても施術や接客は問題ないと感じますが、お客様からは資格や肩書がある方が安心してもらえます。
引用:モアリジョブ|エステティシャン 原田 育代
育成システムや資格取得制度が整っていると、それをもとに未経験者が働きやすい職場であることをアピールできます。実際にリジョブの求人事例のなかにも、未経験者でも応募できる理由を添えることで採用に成功した事例があります。
▼未経験者の採用に成功した求人広告事例
他にも採用に成功した求人広告事例を資料にまとめましたので、詳細については下記よりダウンロードしてご覧ください。
エステティシャンに教育すべき内容
エステティシャンに教育すべき内容について具体例を挙げると次の通りです。
- エステティシャンとしての心構え
- 施術スキル
- 接客スキル
- 美容に関する基礎知識
- マネジメントスキル
それぞれについて事例を交えながら解説します。
エステティシャンとしての心構え
エステティシャンは、美容を通じて顧客の生活に寄り添い、心身を癒す役割を担います。そのため、専門的な技術や知識だけでなく、以下のような心構えを大切にすることをスタッフに伝えましょう。
- 常に顧客の立場に立って考え、期待以上のサービスを提供すること
- 新しい技術やトレンドを学び続ける姿勢をもつこと
- 他のスタッフとの連携を大切にすること
一般社団法人 日本エステティック協会の理事長、荘司礼子氏は、彼女が理事長を務める専門学校の教育理念として「つくす心」を紹介しています。
国際文学園 国際文化理容美容専門学校の教育理念は「つくす心」。言い換えれば奉仕やボランティア精神を意味します。それは決して自分を犠牲にすることではなく、人と接することで自らを成長させるという考え方です。状況に応じて、相手にとって何が必要かを瞬時に判断する力が求められます。
(中略)
日々の積み重ねを通じて「つくす心」を育むことが、人間としての成長にもつながるのです。
引用:お客様に尽くすと覚悟すること、それがエステティシャンの心構え|エステティック通信
「つくす心」を大切にする姿勢は、エステティシャンとしてだけでなく、人としての成長にも深く関わってきます。この精神を持ち続けることで、より高いレベルのサービスを提供できるだけでなく、自己成長にもつながります。
施術スキル
エステティシャンの核となる主な施術スキルとして、たとえばハンドマッサージや機器を用いた施術が挙げられます。エスティシャンを育成する場合、まずはこの2つを軸に指導するとよいでしょう。それぞれの施術効果を挙げると次の通りです。
施術カテゴリー |
効果 |
---|---|
ハンドエステ(手を使った施術) |
施術のリラクゼーション効果を高める リンパの流れを改善して、老廃物の排出を促す |
エステ機器を用いた施術 |
脂肪を体外に排出することによる痩身効果 |
実際の教育では、基本的な技術から応用的な手法まで段階的に学べるカリキュラムが必要です。特にエステ業界では、流行や新しい技術が次々に登場するため、常に最新の情報を収集し、エステティシャンの技術をアップデートし続けることが求められます。
美容の情報は日進月歩。技術を常にアップデートしていかなければならないと考えているので、定期的に研修会を行うなど、スタッフ全員の学習にはかなりの時間を使っています。私とフェイシャルを担当するスタッフは月に7、8回、外部の講習会に出て新しい情報を仕入れるようにしていて、そこで得た知識は日々の施術やカウンセリングの際にお客さまに還元。
引用:モアリジョブ|医療提携トータルエステティックサロンMIRANSA GINZA 代表 大川あつ子さん
エステティシャンには獲得した知識や技術をお客様に還元するように伝えておくと、顧客満足度の向上が期待できます。
接客スキル
エステティシャンにとって、技術と同様に重要なのが接客スキルです。エステティシャンに接客指導する際のポイントについて具体例を挙げると、次の通りです。
▼エステティシャンに接客指導をする際のポイント
指導項目 |
指導のポイント |
---|---|
丁寧な挨拶や言葉遣い |
言葉遣いとトーンにも気を配り顧客に安心感を与え、信頼を築けるようにする |
カウンセリングスキル |
顧客のニーズや悩みを的確に把握し、最適な施術を提案できるようにする |
プロフェッショナリズムの徹底 |
清潔感のある服装や髪型、マナー、姿勢を徹底する |
心地よい距離感 |
施術中の体の接触に関しては、お客様が不快に感じないよう細心の注意を払うようにする |
施術後の対応 |
施術後のアフターケアや次回の提案して、信頼関係を築けるようにする |
またエステティシャンの接客スキルを向上させるためには、ロールプレイングが効果的です。顧客対応のシミュレーションを行うことで、実際に顧客に接する場面での対応力を磨けます。
美容に関する基礎知識
美容に関する基礎知識の具体例として、肌や身体の構造が挙げられます。お客様の悩みを解消するためには、これらの基礎知識を身に着けたうえで施術ができるようにエステティシャンを育成する必要があります。
たとえば肌のターンオーバーについての知識があれば、適切な通院間隔について理由を示しながら説明できるので、納得して通ってもらえます。
また、化粧品や美容機器の成分や効果についての知識を深めることも重要です。これらの知識があると、お客様に製品や施術の効果について明確に説明でき、納得してもらいやすくなります。
例えば、スキンケア製品に含まれる主な成分について、次のような働きや肌への影響があることをエステティシャンに理解してもらうとよいでしょう。
- ヒアルロン酸が保湿に優れている
- ビタミンCは肌の明るさを引き出す
- レチノールはターンオーバーを促進する
以上のような基礎知識をもとに説明ができるとお客様が納得して製品を購入したり施術を受けたりするため、エステティシャンの仕事に対するやりがいや自信につながります。
マネジメントスキル
経験を積んだエステティシャンの中から店長やマネージャーを育成するためには、マネジメントスキルに関連した研修を取り入れる必要があります。
エステティシャンに求められるマネジメントスキルとは、リーダーシップを発揮してチームを指導し、店舗運営を円滑に進める能力です。またスタッフを指導するためには、コミュニケーション力も欠かせません。業務の進行管理やスタッフの教育をしっかり行い、チームワークを築くことが求められます。
エステティシャンのマネジメント業務ついて、具体例を挙げると次の通りです。
- スタッフのスケジュール管理
- スタッフの教育・育成
- チームワークの促進
- 売上や顧客満足度の分析
- クレーム対応
- 店舗運営の過程で起こる問題の解決 など
さらに、スタッフに対してモチベーションを高めるための方法や、業務の効率化を図るためのマネジメントスキルを身につけることが、サロンの成長につながります。
エステティシャンを育成する際のポイント
エステティシャンを育成するためには、単に技術を教えるだけでなく、スタッフが自分のキャリアを築けるような環境作りをすることも重要です。ここでは、エステティシャンを効果的に育成するためのポイントをいくつか紹介します。
資格取得をサポートする
エステティシャンが資格を取得すると、お客様からの信頼を得やすくなります。信頼を得ると、通院指導やセルフケアの指導が効率的に行えます。そのためエステティシャンの資格取得をサポートする体制を整えることが大切です。
サロン内で研修を実施したり、資格取得に必要な勉強や実技試験の費用をサポートしたりして、具体的な支援を行うことが育成環境を整えることにつながります。
サロン内で積極的に情報提供を行い、必要な学費や試験料の補助を検討することで、スタッフのモチベーション向上にもつながります。資格取得を通じて、エステティシャンの専門知識や技術が向上し、サロンの信頼性も高まります。
マニュアルを作成する
エステティシャンの育成には、標準的な業務の進め方や施術の手順をまとめた「マニュアル」の作成が欠かせません。マニュアルは、新人スタッフが業務を理解し、正確に実施できるようにするための重要なツールです。施術手順や接客マナー、機器の使い方などを詳細に記載すると、スタッフが自信を持って業務に取り組めます。
また、マニュアルは単に業務のガイドラインとしてだけでなく、スタッフが自分の進捗を確認するための指標にもなります。業務のチェックリストを設けることで、スタッフが毎回の施術や業務の流れを確認し、ミスを防げるでしょう。
スタッフ育成を見直す一環としてマニュアルを見直し売上が伸びたケースもあるので、マニュアル作成は店舗を運営するうえで大きなメリットがあります。
技術的なこと、接客のことも大切ですが、いちばん重要なのがカウンセリングです。お客さまとの会話の中で、お客さまが何を求めているのかを、くみ取らなくてはいけません。教育するために1年かけてマニュアルを作りました。営業が始まる前にロールプレイを繰り返して、身につくように訓練しました。少しずつ効果が現れて、私がエステティシャンとしてサロンに出なくても売上が伸びていきました。
引用:モアリジョブ|(株)KAIKA 代表取締役 HAZUKIさん
エステサロンのマニュアルを作成する場合は、次の記事を参考にしてください。
評価シートを作成する
エステティシャンの成長を促すためには、定期的にスタッフのパフォーマンスを評価する仕組みを作ることが重要です。評価シートを作成し、技術力や接客態度、業務の進捗状況など、複数の視点からスタッフを評価すると、スタッフ自身の強みや改善点を把握できます。
評価は単なる数値化ではなく、具体的なフィードバックを文章で残すことが重要です。例えば、施術のスピードやお客様とのコミュニケーション力、施術後のアフターケアの質など、細かい部分まで評価し、その都度フィードバックを行うことで、スタッフの成長を促進します。
エステティシャンの育成に役立つ評価シートについては、下記の厚生労働省の資料を参考にしてください。
▼評価シートの具体例
▼各番号の項目と記載内容
番号 |
記入項目 |
記載内容 |
---|---|---|
1 |
評価対象者の職種・職務、レベルの特定 |
使うシートの種類をスタッフの職務やレベルに合わせて選ぶ |
2 |
自己評価の実施 |
最初に、スタッフが自分自身の知識やスキルをチェック(〇:一人でできている、△:ほぼ一人でできている、×:できていない) |
3 |
上司評価の実施 |
自己評価が終わったら、次に上司が評価を実施。判定基準は自己評価と同じ。 |
4 |
上司による「コメント」の記入 |
評価のポイントや理由などを記載。 |
5 |
上司コメントを踏まえたフィードバック(面談) |
上司コメントを記入後、上司と部下で面談を実施し、互いの評価が異なっている場合は、その評価を付けた理由や、知識・スキルを向上させるための対策を話し合う。 |
以上のような評価シートを使って、定期的にスタッフとの面談を実施し、進捗状況を確認するとともに、次の目標設定を行うと効率的にエステティシャンを育成できます。
キャリアパスを明確にする
エステティシャンが長期的に働き続けるためには、キャリアパスが明確であることが大切です。スタッフが自分の将来像を描けるように、キャリアアップの道筋を提示しましょう。例えば、最初は基本的な施術を担当し、次に専門的な技術を学び、さらにはマネジメント職やリーダー職に進むといったキャリアステップを設けることが一般的です。
厚生労働省の資料によると、企業によっては次のように、プレイヤーとマネージャーの2つのキャリアパスを設定するケースもあります。
▼キャリアパスの例
以上のようにキャリアパスを明確にすると、スタッフは自分の成長を実感し、目標に向かって努力する意欲が高まります。
また定期的にキャリアアップのための研修やスキルアップの機会を提供すると、スタッフの満足度と定着率が向上します。キャリアパスを設計する際には、各ステップに必要なスキルや資格を明確にし、目標達成のための具体的なサポートを行いましょう。
育成を担当する指導者を確保する
指導力のある育成担当者を確保すると、スタッフの成長が加速します。指導者は、エステティシャンとしての技術や知識だけではなく、人材育成のノウハウやコミュニケーション能力も必要です。
指導者には、定期的にスタッフにフィードバックを行い、モチベーションを高める役割を担ってもらいます。また、育成担当者が効果的な研修プログラムを作成し、新人や若手スタッフに対して一貫した教育を行うことで、サロン全体の技術水準の向上につながるでしょう。
エステティシャンへの効果的なフィードバックのやり方
ここでは、エステティシャンにフィードバックする際は意識すべき点について、3つに分けて解説します。
面談を準備する際に注意すべきポイント
フィードバックを効果的に行うためには、事前の準備が不可欠です。面談前にしっかりと情報を整理し、どのように話を進めるかを考えておくことが重要です。事前に以下の2つをチェックしておきましょう。
- フィードバックを受けるエステティシャンの優れている点や課題点
- フィードバックを受けるエステティシャンと評価者との間で評価に違いがある項目
以上の2点を事前に把握しておくと、フィードバック面談がスムーズに進みます。
フィードバックをする際のポイント
フィードバックを行う際は、エステティシャンが納得し、モチベーションを高められるよう配慮することが重要です。そのためにも以下の点を意識してフィードバックを行ってください。
- 優れている項目について、本人の「強み」として伝える
- フィードバックを受けるエステティシャンと評価者との間で評価の食い違いが生じた場合、該当の項目についてその評価にした理由をエステティシャンに尋ねる
フィードバックをする際は、エステティシャンに納得してもらうことが大切です。評価者はエステティシャンの心情にも配慮しながら、丁寧なフィードバックを心がけましょう。
面談を終了する前にやるべきこと
面談の終了前に、次に向けてエステティシャンが行動できるようにすることが大切です。以下を実施して面談を終了するようにしてください。
- エステティシャン本人に目標を設定してもらう
- エステティシャンの取り組みを支援することを約束し、励ます
面談後、エステティシャンがフィードバックの内容を自分なりに振り返りやすいよう、簡単なメモを渡すことも有効です。次回のフィードバックの予定日を決め、継続的なサポートを約束すると、エステティシャンが前向きに業務に取り組めます。
【事例集】エステティシャンの育成術
エステティシャンの育成に役立つ工夫や成功例について、次の3つの事例をもとに紹介します。
- 売上が伸びた事例(株式会社KAIKA)
- 未経験者を活かすことに成功した事例(Salon ERIMES)
- エステティシャンの個性を重視する事例(Lupine. total beauty)
以上について、オーナーのコメントを引用しながら紹介します。
株式会社KAIKA
株式会社KAIKAの表取締役HAZUKIさんは、エステティシャンとして施術を担当しながら経営も行っていた。しかし30歳を境にスタッフの育成に注力をするためにエステティシャンを引退。その後、HAZUKIさんが一線を退いたことで売上が1億円も落ち込みました。
この状況を打開するために、マニュアルを整え、ロールプレイングを繰り返しエステティシャンの実力の底上げを図りました。
翌年の売上が1億円も下がったんですよ。経営を盛り返すためにも、スタッフ教育を徹底しました。技術的なこと、接客のことも大切ですが、いちばん重要なのがカウンセリングです。お客さまとの会話の中で、お客さまが何を求めているのかを、くみ取らなくてはいけません。教育するために1年かけてマニュアルを作りました。営業が始まる前にロールプレイを繰り返して、身につくように訓練しました。少しずつ効果が現れて、私がエステティシャンとしてサロンに出なくても売上が伸びていきました。
引用:モアリジョブ|株式会社KAIKA 代表取締役 HAZUKIさん
以上の結果、HAZUKIさんがエステティシャンとして働かなくても売上を伸ばせるようになりました。マニュアルとロールプレイングに力を入れた結果、エステティシャンの育成が成功した事例です。
Salon ERIMES
Salon ERIMESではエステティシャンの接客の質を高めるための工夫として、一流の店舗やホテルを訪問して上質な接客を体験してもらっています。
一流のお店やホテルにみんなで足を運び、接客を体験する研修を定期的に行っています。お客さまの立場で体感しなければ、ホスピタリティの大切さを学ぶことはできませんからね。また人気店のセラピストを招いて、勉強会を開くこともあります。素晴らしいサービスを提供しているお店はたくさんありますから、サロン内にとどまらず積極的に外部と交流を図ることはとても大切だと思いますね
引用:モアリジョブ|会員制エステサロン『Salon ERIMES』 代表取締役社長 滝田エリさん
人気店のセラピストを外部講師として招くこともあり、外部の専門知識や経験を積極的に取り入れています。多くの未経験者がエステティシャンとして施術を担当できるようになったことを考えると、このサロンの育成術は優れているといえます。
実はスタッフのほとんどが、もともとはお客さまとしてサロンを利用していました。入社に至る経緯としては、初めて施術を受けた際に感動して後日『技術を身につけたい』と連絡をいただくことが多いですね。未経験の方から『入社したい』と伝えられたこともあり、その時は当時開催していたスクールを案内して、まずは基礎から学んでもらいました。
引用:モアリジョブ|会員制エステサロン『Salon ERIMES』 代表取締役社長 滝田エリさん
エステティシャンの育成システムが整うと、以上のように採用ターゲットの幅が広がり、活動を優位に進められる点も魅力です。
Lupine. total beauty
Lupine. total beautyは、ヘアサロンとエステ、フェイシャル、アロママッサージを行うトータルビューティーサロンです。当サロンでは、スタッフひとり一人の個性を大切にした育成に取り組んでいます。
――では、そのスタッフの育成については、どのようにお考えでしょうか。
まずオーナーの意見としては「一人一人可能性があるので、それを伸ばしていきたいと思っています。自分がやりたいことに対して主体性を持って取り組み、夢を実現できる店にしたい」ということです。
引用:モアリジョブ|会員制エステサロン『Salon ERIMES』 代表取締役社長 滝田エリさん
各スタッフは得意分野を伸ばしながら、その知識や技術をお互いに教え合う風土があり、チーム全体で成長できる環境が整っています。一方で、ヘアサロンのカラー調合や髪質改善などの特殊技術を必要とする施術については、詳細なマニュアルが用意されています。業務の進め方を指導するにあたり、マニュアル通りに進める部分と、スタッフが主体的に進める部分とのバランスがうまく取られている点が特徴です。
トータルビューティーサロンという、さまざまな職種が集まる職場でありながら、お客様の悩み解決という同じ目的をもってスタッフが成長できる環境が整っています。
まとめ
本記事を総括すると次の通りです。
- エステティシャンの育成は、サロンの成長に直結する
- スタッフの定着率向上や採用成功率のアップにつながり、人材確保が期待できる
- 施術スキルや接客スキルなどの実務指導だけではなく、エステティシャンの心構えを伝えることも大切
- フィードバックを行う際には、エステティシャンの心情に配慮しつつ前向きになれるような伝え方をする
エステティシャンの育成システムを整えると、自信を持って未経験者を採用できるようになるため、採用ターゲットの幅が広がります。売上にもつながる事例もあるので、人材確保や店舗運営についての課題解決の手段としてエステティシャン育成に取り組んでみましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部