アイビューティ白書によると、アイビューティ関連の市場規模は2023年には5000億円の突破が見込まれており、右肩上がりの傾向です。
人手不足やサービス拡大を理由に、アイリストの派遣を検討するサロンも多いかもしれません。
そこで本記事では、アイリスト派遣のメリット・デメリットと、自社に派遣を導入すべきか判断するポイントをわかりやすく解説します。注意点もあわせて説明しますので、派遣の依頼を検討している方はぜひ参考にしてください。
アイリストの派遣について
アイリスト派遣の現状と、雇用方法について解説します。
派遣で働くアイリストの割合
ホットペッパービューティーの調査によると、契約社員や派遣社員で働くアイリストは美容業界のなかでも最も割合が高いことがわかりました。
▼【職種別】契約社員・派遣社員で働く人の割合
美容職種 |
契約社員や派遣社員で働く人の割合 |
アイビューティー(アイリスト) |
9.4% |
ネイル(ネイリスト) |
8.8% |
エステティック(エステティシャン) |
7.4% |
リラクゼーション(セラピスト) |
4.2% |
ヘア(美容師) |
4.2% |
全ての美容業職種 |
5.4% |
※ホットペッパービューティーの調査資料をもとに作表
一方で「アイリストの働き方ごとの割合」を見ると派遣以外の雇用形態で働くアイリストの割合は低いとの結果も出ています。
▼アイリストの働き方ごとの割合
働き方 |
割合 |
パート・アルバイト |
32.8% |
正社員 |
27.2% |
業務委託・フリーランス |
16.7% |
オーナー |
13.2% |
契約社員・派遣社員 |
9.4% |
その他 |
0.7% |
※ホットペッパービューティーの調査資料をもとに作表
以上の結果から、美容職のなかでは派遣のアイリストは比較的確保しやすいといえます。その一方で、他の働き方に比べて、派遣社員として働くアイリストは相対的に数が少ない傾向です。そこで、他の雇用形態も検討しつつ補助的に派遣社員を活用する方法がよいと考えられます。
派遣と他の雇用方法の違い
派遣と他の雇用方法で大きく異なる点は、雇用主や指揮・命令の所在です。それぞれの特徴を表にすると次のとおりです。
雇用形態 |
雇用主 |
特徴・備考 |
派遣 |
派遣会社 |
|
正社員 |
職場のオーナー |
|
契約社員 |
職場のオーナー |
|
パート・アルバイト |
職場のオーナー |
|
業務委託 |
なし |
|
参考:厚生労働省「さまざまざな雇用形態」
派遣労働者は派遣会社と雇用契約を結び、指揮命令は派遣先企業が行う一方、直接雇用では企業が労働者と雇用契約を結び、指揮命令も自社で行います。また、契約社員のほうが正社員としての採用がしやすい点も特徴です。
ただし、派遣社員でも紹介予定派遣制度があるため、気に入った人材については双方の合意のもと正社員として採用することもできます。
派遣のアイリストに働いてもらうメリット・デメリット
ここからは、派遣のアイリストに働いてもらうメリットとデメリットについて説明します。
派遣でアイリストを雇用するメリット
厚生労働省の行った調査によると、派遣社員を就業させる理由の上位は以下の結果となりました。
※アイリストが分類される「生活関連サ-ビス業,娯楽業」のデータを参照
以上の結果を元に、次から詳しく解説します。
迅速にスタッフを確保できる
迅速にスタッフを確保できると、繁忙期に人手不足にならずに済みます。アイビューティーサロンの場合、シーズンによって需要が大幅に異なるため、急な人員不足に悩まされることも少なくはありません。
特に人手不足となりやすいのは、以下の時期です。
- 12月~1月:年末のクリスマスやイベントが多く、成人式に向けた前撮りや当日の依頼も増えやすい
- 3月~4月:卒業式、入学式で依頼が増えやすい
また、年間を通して6月から10月までは需要が高まる時期といえます。理由は、プールや汗に強いまつ毛エクステを始めようとする人が増えるからです。
実際に夏場は冬場に比べて、「マツエク」で検索する人の数が増える傾向にあります。
▼「マツエク」の検索ユーザーの年間推移(Googleキーワードプランナー)
派遣の場合は、予め登録されている人材から条件に一致した人材を紹介してもらえるため、このような季節的な需要の変化にも柔軟に対応できます。
即戦力人材が確保しやすい
派遣登録をする際、登録時にスキルチェックを行っていることが一般的です。スキルチェックによって所持している資格や、どこまでのレベルの仕事を担当できるのかが明確にされているため、即戦力人材を確保しやすいのです。
スキルチェックを実施することで、美容師免許がありながらもスキルのないスタッフが派遣される失敗を防ぐことにつながります。
アイリストは、美容師免許さえあれば未経験でも務められます。しかし美容師免許があっても経験が浅い場合、条件に見合ったレベルを満たさない可能性もあります。
その点、派遣雇用であれば一定の経験や技術を積んだアイリストを派遣してもらいやすくなります。
派遣でアイリストを雇用するデメリット
次に、派遣でアイリストを雇用するデメリットについて説明します。
厚生労働省の行った調査によると、派遣労働者を依頼しない理由の上位は以下のとおりでした。
上記の調査結果を、アイリストの雇用に当てはめて詳しく解説します。
費用が高額になりやすい
派遣を依頼すると、派遣先が派遣元企業に料金を支払います。派遣料金には、派遣スタッフに支払う賃金と派遣会社のマージンが含まれており、派遣社員の賃金を払うだけではありません。
日本人材派遣協会によると、派遣手数料(マージン)には以下が含まれます。
- 営業利益
- 派遣会社の諸経費
- 派遣スタッフの有給休暇費用
- 社会保険料
直接雇用するのに比べてマージンの上乗せが発生するため、費用は高額になりやすいです。マージンの比率は会社によっても異なるため、派遣雇用を利用する場合は必ず事前に確認しておきましょう。
組織形成が進まない
派遣雇用の大きなデメリットは、組織としての成長ができない点です。先ほど紹介した派遣社員を雇用しない理由に関する厚生労働省のアンケート結果でも「技能・技術、知識等が社内に蓄積しないため」との回答が、最も多い「従業員が不足していない」を除き、3番目に多く集まっています。
派遣社員は、長く働けない可能性が高い上、賞与が出ないこともあり、直接雇用されている社員とは隔たりができてしまいやすいことも特徴の1つです。エン・ジャパン株式会社が行った派遣のメリット・デメリットについての調査では、派遣のデメリットとして以下の回答が集まりました。
- ずっと同じところで働けないため、キャリアアップしづらい。(30代男性)
- 正社員だと「賞与が出るまで頑張ろう」というモチベーションになるが、派遣ではない。(20代男性)
- 世間からは「正社員より責任がない」と見られがちだと思う。(30代女性)
引用:エン・ジャパン株式会社
以上の理由から、派遣社員はモチベーションが上がりにくく、任された仕事を淡々とこなすだけになり、サービスレベルが低下するリスクがあります。
臨時の人員採用は社員教育も行き渡りにくく、サービス向上にもつながりません。根本的な売上げアップを目指すには、派遣雇用が不向きな可能性も視野に入れておきましょう。
派遣を雇用したい時の募集方法
派遣雇用を利用したい場合、一般的には派遣会社に欲しい人材を伝えて条件に一致した人材を派遣してもらいます。派遣会社には、大きく分けると総合型と特化型があります。
簡易的にまとめると、総合型は職種を問わずに幅広く募集ができるタイプ、特化型はある限定した職種に特化しているタイプです。
ここからは、どちらの派遣会社のタイプを選ぶとよいのか、それぞれの特長と注意点を解説します。
美容系特化の派遣会社を利用する
業界に特化した派遣会社を利用すると、業界経験者が派遣会社の担当となっていることが多く、オーナーやサロンの悩みを深く理解して対応してくれます。
アイリストの場合、アイリストに限定した派遣会社を探すと難しいですが、メイクアップアーティストや美容系全般を取り扱う派遣会社ならば利用可能です。
地域によっては対応していない、もしくは登録者が少ないこともあるため、登録前に担当者へ対応地域や得意な地域は確認しておきましょう。
注意点としては、特化型の派遣会社の場合、業界の理解は深いですが、派遣会社としての対応実績が少ない可能性があります。トラブル時や想定される問題の対処など、不安なことがある際には事前にどのような対応ができるのかを確認しておくと安心です。
美容系に特化した派遣会社は、以下で紹介していますのであわせて参考にしてください。
総合型派遣会社を利用する
総合型の派遣会社は特化型に比べると登録者数が多く、豊富な紹介実績があるのが大きな特徴です。登録者数が多いことは、人材が集まる早さに直結します。
また、派遣会社に起こりやすいトラブルの対処にも慣れていることが大半です。たとえば、繁忙期に派遣社員を複数名雇用した場合の給料の差や、既存スタッフとのコミュニケーションなど、対応の難しい問題にも担当スタッフが間に入って円満に調整してくれることが期待できます。
一方で、アイリスト派遣を総合型派遣会社で募集する懸念点は、スキルのあるスタッフの雇用についてです。専門知識が乏しいため、スキルチェックが適正に行われていない可能性があるかもしれません。
ミスマッチを防ぐには、雇用を決定する前にオーナー自身でスキルを確認したほうが確実です。
派遣での雇用に迷った時に確認するポイント
派遣雇用はメリットばかりではないことを踏まえ、自店舗では派遣雇用がよいのか、それ以外の雇用形態がよいのかに迷ったオーナーもいるかもしれません。
ここからは、派遣を利用するかを判断するために重要なポイントについて解説します。自店舗の状況を想像しながら、派遣雇用をするのかを考えてみてください。
トータルの費用を確認する
派遣雇用を利用する場合、派遣されたスタッフへの賃金を含めた派遣料金が必要です。派遣料金には、賃金とマージン以外にも別途手数料を含めていることもあります。
厚生労働省の行った調査によると、派遣料金を8時間換算した平均は2万4909円との結果でした。時給換算すると3000円を超えています。
しかし、株式会社リクルートの行った調査によると、1人あたりの新卒採用には93.6万円、中途採用には平均で103.3万円が必要であるというデータもあります。高額な採用コストを考えると、割高でも派遣社員の雇用のほうが効果的なケースもあるでしょう。
このように、費用を考えるときは短期間で見るのではなく、長期的な費用も踏まえて検討する必要があります。
他の雇用形態も検討する
雇用形態には、派遣社員以外もあります。特に美容業界で昨今注目されているのが、業務委託やフリーランスでの雇用です。
業務委託は、オーナーと事業主の契約で成立します。正確には自店舗のスタッフとして雇用する訳ではないため、社会保障費をはじめ、一般的な直接雇用で発生する費用をカットできます。
また、アイリストのような専門性の高い業務の場合、割高になる代わりにスキルの高いスタッフと契約しやすいのもメリットです。ただし、成果報酬が主になるため、業務内容の把握や管理が難しい点や、派遣社員と同様にノウハウが蓄積されない点には注意が必要です。
また、子育てを理由に一旦現場を離れたスタッフが復帰しやすい短時間正社員や、アルバイト・パートも選択肢に含められます。
フラットな目線で、自店舗に合っている雇用形態を考えてみましょう。
派遣雇用に関する取り決めを理解する
派遣の仕事は、さまざまな法律に則り定められています。中でも派遣雇用で知っておかなければならないのは、労働者派遣法と労働基準法についてです。
労働者の権利を守ることを目的に、次の行為はしてはいけないこととして定められています。また、派遣雇用の期間も定められているため、あわせて覚えておくとよいでしょう。
派遣雇用の禁止行為
派遣雇用をする際、以下のような行為は法律に則り禁止されています。
- 契約にない仕事を依頼する:契約書に記載されている業務内容以外のことをお願いすることはできません。
- 無理な勤務時間変更:深夜や早朝など、強引な勤務時間変更は契約違反です。
- 契約外の残業・サービス残業:契約書に記載がない場合、残業を断る権利があります。
- 二重派遣:派遣社員を更に別の子会社へ派遣することは禁止されています。
- 労働者の選定:事前面接や履歴書の提出といった応募者を選定する行為はしてはいけません。面談は可能です。(※正社員登用を前提とした紹介予定派遣は例外です)
参考:厚生労働省「労働者派遣事業雇用管理等援助事業」派遣相談事例集
業務時間外のミーティングや朝礼なども、派遣会社との契約内容によっては違法行為になり兼ねません。契約時間を調整するか、ミーティング不参加でも意思の疎通が図れる仕組みを構築するなど、円滑に営業する工夫も求められます。
派遣雇用の期間
派遣雇用をしたスタッフが同一の事業所で働けるのは、原則3年以内と決められています。3年を超えた契約を希望する場合、直接契約への切り替えをするしかありません。あるいは、派遣先を支店のような別事業所に変えることによる延長は可能です。
また、労働者派遣法の改正後は派遣社員の雇用を守るため、契約期間を30日以内とする日雇い派遣も一部の例外を除いて認められていません。
ただし、日雇い派遣と混合されやすい日々紹介はオーナーが直接雇用します。派遣ではないため、この定めには抵触しません。
人手不足が慢性的か一時的か判断する
オーナーや経営者は、年間や数年先のサロンの状況を予想して人員計画を立てる必要があります。
一時的な人手不足を補う方法として派遣の雇用は有効ですが、長い目で見ると安定して働けるスタッフが必要かもしれません。
例えば、急なシフト変更に毎回ギリギリの人数で調整したり、都度外部に派遣を依頼したりしている場合、余裕を持った採用をしたほうがスタッフ全体の満足度も向上するでしょう。
アイリストの求人掲載をするなら、美容業界に特化した求人サイトのリジョブがおすすめです。アイリスト志望会員数4万2000人(2022年4月時点)を超える登録者数を誇るため、店舗規模や地域に限らず低コストかつ多くの反響が期待できます。
掲載についてのお問い合わせは、以下のリンクからお気軽にご相談ください。
関連リンク
派遣で雇用した時の注意点
派遣雇用したとしても、安定して働いてもらえるとは限りません。派遣社員は帰属意識が低いため、正社員よりも辞めやすい傾向があります。
ビズヒッツの行った調査によると、派遣を辞めたいと思う理由について以下の理由が挙がりました。
以上の内容を踏まえ、働きにくさを感じないようにするためにも、受け入れるオーナーや店舗スタッフが心がけるとよいことについてまとめました。自店舗での受け入れ時の参考にしてください。
正社員と同様の対応を心がける
派遣社員の雇用改善を目的とし、令和2年4月から同一労働同一賃金制度が施行されました。同様の業務内容を行っている派遣社員と正社員の差をなくし、均等・均衡を目指すものです。
受け入れるオーナーやサロンのスタッフには、賃金以外の部分でも同様の心がけが求められます。アンケート結果でも、「正社員との待遇差」「正社員からの風当り・疎外感」は収入の次に気になるとの回答が集まっていました。
同じ仕事をしても正社員と評価が異なったり、名前を覚えてもらえず「派遣さん」とずっと呼ばれたりすると虚無感に襲われる(30代 男性)
引用:ビズヒッツ
同じサロンを支える仲間と捉える意識付けが大切です。休憩室の使い方や業務中のコミュニケーションの取り方などに差を付けないよう、オーナーは受け入れ前に伝える必要があります。
スキルアップの機会を設ける
エン派遣の調査によると、「仕事を通じた成長やスキルアップに興味があるか」への回答は「ある」、「とてもある」を合わせると9割近くもの人が興味を持っていることが分かりました。
チームからの疎外感を減らし、やりがいを感じて継続してもらうためにも、日々の成長実感は大切な要素です。
派遣なので任せられないと最初から決めつけず、新しく任せられそうな仕事があれば積極的に任せてみるのもよいでしょう。
もちろん、契約以外の仕事を依頼する場合、契約書内容の更新が求められます。とはいえ、後から追加できない訳ではありません。双方で話し合い、お互いが納得の上で記載内容を更新しましょう。
まとめ
本記事をまとめると、以下のとおりです。
- アイリストの派遣割合は少ない
- 派遣のよいところは、迅速なスタッフ確保と即戦力人材の確保
- 派遣の悪いところは、費用が割高になりやすい点と店舗が成長できない点
- 派遣雇用に迷ったら、長期的な視点で派遣以外の雇用形態も検討
- 派遣を雇用した場合、正社員との待遇格差やモチベーションアップに配慮
アイリストの派遣は、メリットばかりではありません。本記事を参考にデメリットや注意点も加味して、自店舗に合った選択をしましょう。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部