人手不足が話題となる昨今では、正社員雇用だけでなく非正規雇用も注目されています。株式会社マイナビが行った調査では、「正規社員の採用ができないため」を理由に、34.6%の企業が派遣社員の採用活動を実施しているとの回答が集まりました。
美容業界でも例外はなく、派遣社員の雇用を検討しているオーナーは多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、派遣美容師を雇用するメリット・デメリットを比較してみました。また、派遣会社を関東と関西、全国に分けて、各地域ごとに紹介します。派遣会社を選ぶポイントも解説するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
派遣で美容師を雇用するメリットとデメリット
派遣の美容師を採用することには、多くのメリットがあります。技術職である美容師の場合、即戦力人材の確保も期待できるでしょう。
ただし、派遣を雇用することはメリットばかりではありません。知らなければ後悔するデメリットもあります。
ここからは具体的なメリットとデメリットを比較して説明するので、自分の店舗では派遣社員が合っているのかをまずは検討してみてください。
派遣美容師を雇用するメリット
派遣美容師を雇用するメリットとして、期間を限定して必要な美容師を確保できる点が挙げられます。
美容室は、年間を通して常に忙しいわけではありません。ほかの職業と同様に、繁忙期と閑散期があります。
美容室の繁忙期は、一般的には3月と12月といわれています。3月は年度末のため入学式や卒業式があり、髪を整える人が増えるために需要が上がります。同じく12月もクリスマスや成人式の前撮りなど、イベントが増えるために忙しくなる傾向です。
派遣労働者は、このようなピンポイントの繁忙期の対処にぴったりです。短期での雇用ができるうえに比較的早く就業が開始できます。
さらに、現場で活躍できる即戦力採用も期待できます。厚生労働省の行った調査では、派遣労働者を就業させる理由の上位に「専門性を活かした人材を活用するため」と回答がありました。
※美容業の含まれる「生活関連サービス業・娯楽業」を抜粋して作図
特に美容師専門の派遣会社は、現場で活躍していた人材が多数登録されている会社も多くあります。ほかの非正規雇用と比べても教育する時間も短縮でき、欠員補充の即効性に大きな期待ができるでしょう。
派遣美容師を雇用するデメリット
メリットもある一方、派遣美容師を雇用するには費用面や技術面でのデメリットもあります。また、「店舗としてのチーム作り」という観点では適していない場合もあるため、その点を十分検討したうえで依頼することが重要です。
厚生労働省の調査では、派遣労働者を受け入れない理由の第2位と第3位には、「費用がかかりすぎるため」や「必要な能力を備えた派遣労働者をすぐに確保するのが難しいため」といった、派遣美容師の活用に伴うデメリットが挙げられています。
※美容業の含まれる「生活関連サービス業・娯楽業」を抜粋して作図
・ずっと同じところで働けないため、キャリアアップしづらい。(30代男性)
・正社員だと「賞与が出るまで頑張ろう」というモチベーションになるが、派遣ではない。(20代男性)
・「直接雇用と違い、ボーナス分相当が加算されているため時給が高い」と初回の面談で説明を受けたが、やはり賞与という形でいただけたほうがモチベーションにも繋がる。(30代女性)
引用:エン・ジャパン株式会社「派遣のメリット・デメリット」調査
このように、派遣美容師はモチベーションが上がりにくいことも割り切って雇用する必要があります。慢性的な人手不足なのか、一時的なものなのかを判断し、慎重に利用しましょう。
【全国】美容師に特化したおすすめの派遣会社2選
ここでは全国展開している派遣会社を2社紹介します。
対応実績は公開されていない場合もあります。気になる派遣会社があれば、直接自店舗のある地域には対応しているのかを確認してみてください。
リクエストQJキャスティング
リクエストQJキャスティングは、株式会社セイファートが提供する、美容師専門の派遣・アルバイトサービスを提供する派遣会社です。特徴を挙げると次の通りです。
- 美容に特化した歴史ある会社が運営!
- 全国3カ所の拠点が利用可能
- 派遣サービス以外にも豊富な人材紹介サービスの取り扱い
親会社である株式会社セイファートは、1991年創業以来、美容業界に特化したサービスを幅広く提供しています。
美容業界の人材育成にも力を入れており、英国の美容教育機関HABIAとの業務提携や、英国教育機関「City & Guilds」と締結し、日本初の国際美容技能試験の実施など、国内だけでなく海外の技術を取り入れた経営戦略を行っています。
派遣サービスでは、東京本社に加え東海ブランチ(愛知)、関西ブランチ(大阪)と複数の支社を展開し、サービス登録者のサポートをしています。
アリスキャリアサービス
引用:アリスキャリアサービス
アリスキャリアサービスは、子供専門写真スタジオとして全国で展開しているスタジオアリスグループの提供する着付け・美容師に特化した派遣サービスです。特徴を挙げると次の通りです。
- 登録者は全員スタジオアリス勤務経験者!
- 北海道から沖縄まで全国に登録者が在中
- 比較的低コストでの利用が可能
登録者は4500名以上(2023年3月時点)おり、登録者がスタジオアリスでの勤務を経験した人ばかりのため、接遇やマナーにも精通した美容師を派遣で雇用できます。
派遣期間は31日以上から可能で、長期での人材派遣も依頼が可能です。登録スタッフは、北海道から九州沖縄まで全地域に居住しており、地域を問わずに依頼ができます。
利用料も平均的な人材派遣会社がマージン率20~30%とされているなかでは、20%以下と低めの設定です。派遣事業紹介のページでも「低コストを実現!」と謡っている点からも、リーズナブルな価格が期待できるでしょう。
【関東】美容師派遣に特化したおすすめの派遣会社4選
ここからは、美容師派遣に特化した派遣会社のなかでも関東に対応した会社を紹介します。
首都圏・神奈川や千葉に店舗のあるオーナーや経営者は、利用できる派遣会社がないかを検討してみてください。
スタッフワン
引用:スタッフワン
スタッフワンは、主に東京・神奈川・埼玉のサロンに対応した派遣会社です。仕事情報の登録時に求めている美容師のランクも指定できます。さらに単発~中長期での契約も可能です。特徴を挙げると次の通りです。
- 最短1日から依頼可能!
- 公式LINEやメール・電話など豊富な問い合わせ方法
- スタイリスト・アシスタントなど美容師のランク指定もOK
派遣契約は最短1カ月からしかできない法律上の決まりがあります。そのため、派遣契約のみの会社では1日単位での契約はできません。しかし、スタッフワンでは業務委託契約や日々紹介にも対応しています。
ですので、スタッフワンであれば「急にスタイリストが◯名欲しい」「アシスタントが1日だけ欲しい」のような少人数、最短期間からの人材補充もでき、希望に合わせた人員配置がしやすくなっています。
自店舗の求めている条件を相談すれば、最適な契約方法の案内が受けられるため、気になる人は公式LINEやメール・電話で問い合わせてみてください。
きっとホット
引用:きっとホット
きっとホットは、主に東京・神奈川・埼玉・千葉に対応している派遣会社です。派遣事業に加えて紹介事業も行っているため、1日単位から求めている人材をオーダーできます。特徴を挙げると次の通りです。
- 短期間・繁忙月のみなど、幅広い要望に対応可能!
- 登録料不要の成果報酬型
- 担当は美容師と派遣事業の経験者
スポット紹介も依頼でき、スタッフの休日や病欠など、緊急性の高い状況での人材補充にも利用可能です。もちろん、繁忙月のみ、次の採用までのつなぎの1カ月以上の派遣業務にも対応しています。
登録料は不要です。きっとホットは、美容師と人材派遣の双方を経験しているスタッフが対応してくれるので、現場スタッフやオーナーに寄り添った人材派遣・紹介が期待できるでしょう。
ステラスタッフ
引用:ステラスタッフ
ステラスタッフは、1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)のエリアに対応している派遣・紹介会社です。派遣と紹介事業をしているため、ステラスタッフでも1日から必要な人材の補充ができます。特徴を挙げると次の通りです。
- 1日から、翌日からといった緊急性の高い人材確保にも対応
- 派遣期間終了後の直接雇用も相談OK
- 紹介利用なら完全成果報酬型
派遣期間が終了後、双方の希望が合えば直接雇用も叶うため、派遣期間を能力・サロンとの適性を見極める期間として使い、ミスマッチのない長期人材の獲得へつなげることも可能です。
紹介利用の場合、完全成果報酬型なので余計なコストも発生しません。派遣利用であれば、入職後のメンタルサポートも専任コーディネーターが丁寧に行ってくれます。
どちらがよいかわからなくても、登録フォームから必要情報を入力して問い合わせればアドバイスしてもらえるため安心です。
美容師派遣Goodnavi
美容師派遣グッドnaviは、東京・神奈川・千葉・埼玉の案件を主に取り扱う美容師専門の派遣・紹介会社です。登録しているのは20〜40代が多く、若手から経験豊富な美容師まで、幅広い人材が登録しています。特徴を挙げると次の通りです。
- 登録者は20~40代が中心
- 最短翌日からの派遣も対応可能
- 面倒な交渉は営業担当が代行するので受け入れ負担減
最短で翌日からの派遣も可能で、急な欠勤や病欠でもスピーディーに対応できます。派遣期間は1日から利用できます。事業所登録後に付いてくれる担当者は美容師の実務経験があるスタッフがそろっており、親身になった対応が期待できるでしょう。
登録美容師との交渉も営業担当が行ってくれるため、受け入れ時のサロンへの負担も極力減らしてくれます。
【関西】美容師に特化したおすすめの派遣会社3選
ここからは、美容師派遣に特化した派遣会社のなかでも関西に対応した会社を紹介します。
地域や予算、対応可能な範囲など、各社の特徴を比較して自店舗にぴったりの派遣会社を見つけましょう。
トータルプランニング(総合計画)
引用:トータルプランニング
トータルプランニングは、大阪・神戸・京都エリアに対応した、美容師に特化した人材派遣・紹介会社です。トータルプランニング(株式会社総合企画)は創業が1987年で、美容師派遣ではかなりの老舗といえます。特徴を挙げると次の通りです。
- 創業から25年以上と美容師派遣の老舗人材派遣会社
- 料金表が明確な成果報酬型
- 女性目線のサポートでモチベーションアップ
契約時に直接事業所へ訪問する必要がなく、ホームページか電話から遠隔での依頼者情報登録が可能です。料金表が公開されており、スタイリスト・アシスタントともに以下の金額目安で依頼できます。
|
平日 |
土日祝 |
---|---|---|
スタイリスト |
1850円/時間 |
2150円/時間 |
アシスタント |
1650円/時間 |
1800円/時間 |
引用: 基本料金プラン (2024年12月1日時点)
登録美容師への福利厚生で高級ホテル内のフィットネスクラブやスパの無料利用もあり、充実したサポートも行っています。
女性目線に立った福利厚生や現役スタイリストプランナーによるヒアリング・サポート対応など、現場の目線に立った支援が期待できそうです。
D-decide(ディーディサイド)
引用:ディーディサイド
大阪府寝屋川市にあるD-decide(ディーディサイド)は、大阪・神戸・京都・奈良・滋賀・和歌山の関西ほぼ全域に対応している人材派遣会社です。特徴を挙げると次の通りです。
- 関西全域に対応している人材派遣会社
- 元は美容室経営を中心に事業展開
- サロン目線のマッチング・サポートの期待大
D-decideを運営している株式会社Dukaエレガントは、枚方・寝屋川エリアで実際に美容室を数店舗経営しています。Dukaはスワヒリ語で”小さな店”を指し、2003年オープンから美容室としてお客様と向き合い続けてきました。
D-decideを立ち上げたのは、自店舗が派遣美容師を利用したときに派遣会社が美容師や美容室のことをわかっておらず、不便を感じた経験からだそうです。基本的には最短期間2カ月の契約からですが、サロン目線で相談に応じてくれる良心的な対応が期待できるでしょう。
D-decideでは、登録費用や事務手数料は不要で、勤務実績に応じた成果報酬型の支払い方法で対応しています。
コンティフォース
コンティフォースは、関西全域を対象エリアとした派遣会社です。登録者は5000名を突破(2024年12月時点)しており、登録店舗数も多く、掲載内容も公式サイトからお仕事検索で登録されている情報を閲覧できます。特徴を挙げると次の通りです。
- 関西全域に対応した大手の美容師派遣会社
- 登録者5000人超えで幅広い要望に対応
- 明瞭費用と対応でコストパフォーマンスが高い
派遣会社として美容師の福利厚生や交通費支給の充実の保障もしており、登録者は安心感を持って派遣先に就業できるでしょう。
美容師だけでなく、ネイリストやアイリスト、メイクアップアーティストなどサロンワーク全般の職種に対応しているため、成人式や結婚式の着付けやメイクのヘルプが必要なトータルサロンにもおすすめです。
コンティフォースでは、中長期勤務の希望者が多く登録しており、派遣スタッフでも自店舗のスタッフと同様に人材マネジメントもできます。
さらに派遣社員の社会保険費はコンティフォースが負担するため、店舗の負担は実際に従業員が勤務した実績に応じた人材派遣サービス料金のみです。人的費用も正社員登用よりも比較的抑えられます。
派遣会社を選ぶポイント
美容師派遣会社には多くの会社があり、自店舗にあっている登録先を見つけるのは容易ではありません。そこでここからは、派遣会社を選ぶときのポイントを解説します。
美容師派遣ならではの部分、派遣会社全般の部分両方について説明するので、会社選びの参考にしてください。
トータルの費用を確認する
トータルの費用を確認する際には、次の点に注意しましょう。
- 登録スタッフ向けに公開されている募集条件以外にも、登録料や手数料を求められることが多い
- 実際の事業内容が「人材紹介事業」の派遣会社がある
- 派遣契約や人材紹介(日々紹介)契約、業務委託契約など、契約の形態によって金額換算方法も異なる
- 契約スタッフへの給料に関係なく、一律で派遣人数に則って固定金額が発生することがある
- 提示している給料に加え支給する交通費、紹介料の負担が必要なパターンがある
以上のようにさまざまなケースが考えられるため、事前に換算方法や報酬発生のタイミングなどは確認しておきましょう。
また、厚生労働省により許可番号が発行された派遣元事業主には、平成24年以降は労働者派遣法に則ったマージン率の公表が義務付けられています。人材サービス紹介サイトで事業所名を入力すれば調べられますので、登録情報を確認しておくと安心です。
対応エリアを確認する
今回紹介した派遣会社の例でわかるように、特に専門職の派遣会社のほとんどが全国に対応していません。全国対応としていても詳細を見ると本州以外はなかったり、一部地域には対応していなかったりという可能性もあります。
派遣会社によっては登録自体はできるかもしれませんが、登録者が希望エリアにいなければ人材補充は進みません。
派遣先情報が非公開の場合もありますが、自店舗地域の求人情報の取扱実績や派遣実績があるのかもヒアリング時に忘れずに確認しましょう。
派遣登録者数の多さを確認する
派遣登録者数が多ければ、条件に合った人材が見つかりやすくなります。同じようなサービスがあった場合、登録者数の多いほうを優先的に利用するのもひとつの手です。
ただし、派遣会社によっては登録者数を公開していないパターンもあります。厚生労働省職業安定局の運営する人材サービス総合サイトに登録者数の欄はあるものの任意の入力であり、小規模事業所はほとんどが記載していません。
そのようなときに、登録前でも有効な情報となる数値として、以下が考えられます。
- サイトのPV数
- 公式LINEアカウントの友だち登録者数
- Google検索の掲載順位
目につく機会が多いと、登録者数が多い可能性は高いでしょう。ただし正確とはいえませんので、あくまで参考程度にし、ほかの情報と照らし合わせて判断してください。
派遣会社の強みを把握する
派遣会社によって強みとしている部分は異なります。大手の総合型派遣会社であれば、登録者数の多いことや、派遣事業自体のノウハウの豊富さは魅力です。一方、専門職への理解が乏しく、美容師やサロンならではの悩みには寄り添えないかもしれません。
同じように、美容師専門の派遣会社でもスピーディーな対応を得意としていたり、登録者へのサポートの手厚さを重視していたりと各社異なる魅力があります。
自店舗の状況や将来像と照らし合わせて、依頼する期間や人材はある程度定めたうえでぴったりな派遣会社を探しましょう。
派遣以外の雇用形態も比較・検討する
リクルートの行ったアンケートでは、非正規雇用の雇用形態別の採用活動の実施状況を聞いたところ、エステ・理美容の派遣社員1.7%と全職種中で最も低い実施率との回答でした。
ほかの非正規雇用形態が多いかといえば、アンケートの選択肢であるアルバイト・派遣社員・契約社員・嘱託はいずれも比率が低く、最も多い嘱託でも2.5%という結果です。アンケートの選択肢には、業務委託や日々紹介、フリーランスは含まれていません。
派遣契約には、「日雇派遣(30日以内)の原則禁止」の決まりがあります。1日のような短期間雇用はできません。美容師の必要な要件に合致しないため、紹介事業を並行して行っている会社が多くあります。
人材不足なら求人サイトの利用もおすすめ
急ぎでの人材補充に派遣や紹介事業を行っている会社もよいのですが、本当の意味での人手不足解消にはつながりません。
年間を通して働いているスタッフの欠勤やシフト希望に自店舗のスタッフだけで応えられないなら、正社員やアルバイト・パートなど、ほかの雇用方法も検討してはいかがでしょうか。
美容師に特化した求人サイトも数多くあります。以下の記事では、美容師求人におすすめの求人サイトを紹介しています。基本掲載料金や掲載求人数、サイトPV数まで参考になる情報を多数解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
本記事では、美容師派遣を利用するメリット・デメリットと地域別の美容師派遣会社を紹介し、派遣会社の選び方を解説しました。記事の内容をまとめると、以下の通りです。
- 美容師派遣のメリットは、限定期間に人員確保ができることと即戦力人材の補充
- 美容師派遣のデメリットは、人材のスキル不足のリスクと人材育成が止まること
- 派遣会社を選ぶときは費用やエリア、登録者数と強みを要確認
派遣契約は中長期の人材確保には有効ですが、30日未満の契約はできません。派遣と紹介の両方を行っている人材派遣・紹介会社を利用したり、派遣以外の契約方法も視野に入れたりすることも必要かもしれません。
利用後に「イメージと違った」と後悔しないためにも、まずはこの記事を参考に幅広く情報を集め、本当に自店舗に必要な人材補充のかたちを考えてみるところからはじめてみてください。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部