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失敗しない美容室の広告運用とは?費用対効果を高める手法とデザインのコツも紹介

失敗しない美容室の広告運用とは?費用対効果を高める手法とデザインのコツも紹介

お客様が何も言わずに来なくなる…あなたの美容室でも同じことが起きていませんか?

実は、ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、顧客の約3割が、来店をせずに別サロンへ行ってしまうというデータがあります。いわば『サイレント離脱』とも呼べるこの問題ですが、恐ろしいことに、その割合は年々増加傾向にあるようです。

新規顧客の獲得は、既存顧客の5倍のコストがかかることを示す「1:5の法則」を考えると、顧客離れの予防が、いかに重要かお分かりいただけるでしょう。

では、なぜ顧客は静かに去ってしまうのでしょうか?その背景には、SNSやWebで発信される競合他社の魅力的な情報、つまり「広告」の存在があります。

本記事では、激しい競争の中で新規顧客を獲得する方法はもちろん、今いる大切なリピート顧客を「サイレント離脱」させないための、攻めと守りの広告戦略について、具体的な手順を交えながら解説します。

美容室の経営に「広告」の視点が不可欠な理由

顧客の約3割が、何も言わずに来なくなる「サイレント離脱」をご存知でしょうか?

その背景には、コンビニの5倍にも達する厳しい競争環境と、Webや口コミでお店を選ぶという顧客の変化があります。もはや、良い技術だけで顧客に選ばれる時代ではありません。

広告は、新規集客だけでなく、お店の価値を高め、お客様との絆を育み、採用にも繋がる経営全体への「投資」です。

この厳しい時代を乗り越えるための具体的な広告戦略を、以下で解説します。

現在の美容室経営は「待つ」だけでは生き残れない

あなたのサロンの周りには、何軒の美容室があるでしょうか? 近年、近所に新しい美容室が頻繁にオープンしたという話も、もはや珍しくないかもしれません。

厚生労働省が公表しているデータでは、全国の美容室の数は、令和4年度時点で約27万軒にものぼり、今もなお増え続けています。

1_美容室を探す際の最初に使う情報源の違いを示したアンケート調査

この数字がどれほど多いか、身近なものと比べてみましょう。日本フランチャイズチェーン協会のデータによれば、全国のコンビニエンスストアの総数が約5万5,000軒ですから、美容室はそのおよそ5倍も存在する計算になります。

お客様にしてみれば、この無数の選択肢の中から、たった一軒のサロンを選びます。どれだけ素晴らしい技術や接客を提供していても、まずお客様にその存在を知ってもらわなければ、比較の土俵にすら上がれません。

「良いお店を作れば、誰かが見つけてくれる」という時代は、終わりを告げたといってもよいでしょう。意図的な情報発信、つまり「広告」の視点がなければ、生き残ることさえ難しいのが、現代の美容室経営を取り巻く厳しい現実です。

美容室選びの主流はWebサイトと口コミ

上記では、美容室がコンビニの約5倍も存在する、厳しい競争環境についてお伝えしました。 では、これほど多くの美容室の中から、顧客としてはどのようにして「通い続けたい一軒」を見つけているのでしょうか?

ホットペッパービューティーアカデミーの調査の調査によると、顧客が現在のサロンを知ったきっかけは、「予約・口コミサイト」が31.5%で最も多くなっています。次いで、「友人・知人の口コミ」が23.0%です。

▼現在利用サロンの認知経路(きっかけ・情報源)※女性/複数回答

現在利用サロンの認知経路(きっかけ・情報源)

割合

予約・口コミサイト(ホットペッパービューティーなど)

31.5%

友人・知人の口コミ・おススメを聞いて

23.0%

サロンを街で見かけて

15.5%

SNS(LINE・Instagram・Facebook・X(旧Twitter)など)

3.4%

この2つを合わせると54.5%となり、実に半数以上の顧客が、Webサイトか口コミでお店を見つけている事実を理解できます。

1位の「予約・口コミサイト」が示すのは、顧客が自分から積極的に情報を探し、お店を比べて選んでいるという現代の行動スタイルです。つまり、Webサイト上に、お店の魅力が伝わる分かりやすい情報がなければ、比較の土俵にすら上がれません。

2位の「友人・知人の口コミ」も非常に重要です。これは、第三者からの客観的な評価がいかに強力な決め手になるかを示しています。

そして現代において「口コミ」は、予約サイトのレビューやSNS上の評判というかたちで、より広く、早く拡散していきます。

以上から、今のお客様は、かつてのようなチラシや看板の情報だけでなく、「Web上の客観的な情報」と「信頼できる第三者の評価」を頼りに、訪れるサロンを決めているといえるでしょう。

世代で異なる情報ニーズへの対応

顧客がWebサイトや口コミを頼りに美容室を探す時代では、すべての顧客に同じ情報を発信すればよいのでしょうか?実は、ここにもう一つ大切な視点があります。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、サロン選びに対する価値観には、世代間で明確な違いが見られます。

▼コロナ禍で、美容サロン利用に対する価値観で変化のあったものは?

2_美容室の利用に対する年代別の価値観の違いがわかるグラフ

上記の内容をまとめると、以下のようになります。

  • 10代・20代の若年層:多くの情報からじっくり選びたい
  • 30代以上:サロン選びに時間をかけたくない

この違いはなぜ生まれるのでしょうか?若年層は「失敗したくない」という気持ちが強く、SNSなどでたくさんの情報を集めて、納得できるまで比較検討する傾向があります。

一方で、30代以上は仕事や家庭で忙しく、信頼できる情報を手早く見つけたい、というニーズが高いと考えられるでしょう。

こうした違いを理解すれば、おのずと情報発信の方法も変わってきます。

若年層に届けたいなら、お店のこだわりや世界観が伝わるよう、Instagramやブログで豊富な情報を提供しましょう。

30代以上に届けたいなら、メニューや価格、お店の強みが一目で分かるよう、予約サイトやGoogleマップの情報の整理が求められます。

このように、届けたい顧客の世代によって、求められる情報の質と量は異なるという点を意識しておいてください。

美容室で活用できる広告は新規集客以外にも幅広い効果が期待できる

「広告」と聞くと、新しいお客様を呼び込むためのもの、という印象が強いと感じる人もいると思います。しかし、広告がお店にもたらす効果は、それだけにとどまりません。

まず、広告には美容室の「価値」を高める効果があります。お店の個性や名前を多くの人に知ってもらい、良い印象を持ってもらう「ブランディング」と呼ばれる活動に、広告は不可欠です。

実際に、朝日新聞社が掲載しているJ-MONITORの定型調査では、「広告に触れる機会が多いほど、そのお店への印象が良くなる」という結果も出ており、広告がお店の価値を高める手助けとなることがわかります。

次に、一度ご来店いただいた顧客との「絆」を深める効果です。

美容室からのダイレクトメールやLINEで届く季節の挨拶やお得な情報も、顧客との繋がりを保ち、再来店を促すための大切な広告活動となっています。

さらに、見過ごされがちですが「採用」への効果も欠かせません。美容室の魅力が伝わる広告は、顧客に対してだけでなく「ここで働きたい」と考える未来のスタッフにも届きます。

良い広告は、結果として「質の高い人材採用にも繋がる」と思っておきましょう。

このように、広告は単発の集客だけでなく、以下のように経営全体を支えるための重要な「投資」です。

  • 美容室の価値向上
  • 顧客との関係維持
  • 人材獲得 など

これらの視点を持つことが、広告をより戦略的に活用するための第一歩となります。

美容室の目標達成に繋がる広告の種類と選び方

以下では、「あなたのお店に合った広告はどれか」を見つけるための、具体的な種類と選び方を解説します。

広告選びの基本は、とてもシンプルです。まず「誰に、どうなってほしいのか」という目的を決め、次にその目的に合った手段を選びましょう。この2つの手順で、広告選びの失敗は大きく減らせます。

詳しい内容は以下でまとめますので、ぜひあなたの美容室に合った方法を見つけてみてください。

広告を出す目的を明確にする

広告を出そうと考えた時、多くの方がまずクーポンサイトへの掲載を検討します。しかし、その前に不可欠なステップがあるのを忘れてはいけません。

以下のように、クーポンサイトで安易に集客した結果、顧客は増えても利益が出ず、スタッフが疲弊する悪循環に陥ってしまった事例があります。

クーポンサイトは自宅からの近さやクチコミの評価で店を選べるため、掲載すればある程度の来客数は見込めます。いちばん広告宣伝費を使っていた年では、クーポンサイトに一店舗あたり180万、雑誌広告、撮影やチラシ、DMに260万で合計年間620万円。売上の15%も占めていたほどです。

しかし、店舗側としては割引をしているのですから、来店が増えるほど利益率が低くなります。「どうにかしなければ……」という危機感はありつつも、集客方法がほかになく、スタッフはますます休めなくなるという悪循環に陥ってしまいました。

引用:BizHint(ビズヒント)|美容室 GARO オーナー 藪賀郎さん

なぜ、このような事態が起きてしまったのでしょうか?

それは、広告を出す「目的」が曖昧だったからです。「ただ顧客を増やしたい」という漠然とした考えだけでは、目先の集客はできても、長期的な利益や美容室全体の価値には繋がりません。

目的を明確化すべき主な理由は、以下の3つです。

  • 広告の訴求力を高めるため:誰に一番来てほしいのかが決まることで、広告で伝えるべきメッセージも自然と鋭くなる。
  • 無駄な費用を抑えられるため:狙いが定まることで、広告にかける費用を効率的に使用でき、無駄打ちが減る。
  • お店のファンが増えるため:目的がはっきりしたサービスは、顧客の心に響きやすく、満足度を高められ、「ファン」になってもらうきっかけが生まれる。

このように、広告を始める前の「目的設定」こそが、成功への道しるべとなります。

認知度を高めて新規集客の効果を高める広告

目的を明確化したら、次はそのための具体的な広告手法を選んでいきましょう。具体的な手法としては、予約サイトへの掲載、SNS広告、検索結果に表示される広告など多岐にわたります。

では、実際に顧客はどこで情報を探しているのでしょうか?

株式会社ニュートラルワークスが行った美容室利用者に対してのアンケート調査によると、美容室を探す最初の情報源として、「予約サイト」と並んで「Google検索」や「Googleマップ」を挙げる人が非常に多いことが分かっています。

3_コンビニの数を比較するための厚生労働省の美容書数の推移

この結果から、まずはこの両方で美容室の情報が見つかる状態をつくることが、新規集客の基本といえるでしょう。

しかし、来てほしいお客様の年代によっては、少し違った視点も必要です。

例えば、ホットペッパービューティーアカデミーでの調査では、10代の若い世代がサロンを知るきっかけとして、「友人・知人の口コミ」が予約サイトを上回り、さらに「SNS」で知る割合も全体の平均よりかなり高いという結果が出ています。

▼現在利用サロンの認知経路(きっかけ・情報源)※女性/複数回答

現在利用サロンの認知経路(きっかけ・情報源)

15歳〜19歳の割合

全体の割合

友人・知人の口コミ・おススメを聞いて

33.3%

23.0%

予約・口コミサイト(ホットペッパービューティーなど)

31.9%

31.5%

SNS(LINE・Instagram・Facebook・X(旧Twitter)など)

9.8%

3.4%

サロンを街で見かけて

8.8%

15.5%

これらのデータを基に、ターゲットに合わせた手法の使い分けをしてみましょう。

  • 幅広いお客様に届けたい場合:予約サイトへの掲載と、Googleマップへの登録は、まず取り組むべき基本。
  • 若い世代を呼び込みたい場合:上記の基本に加え、Instagramなどでの積極的な情報発信や、思わず口コミしたくなるような魅力的な体験作りが必要。
  • 特定の悩みを持つお客様に届けたい場合:「地域名+髪質改善」といった具体的な言葉で検索した人に直接アピールできる、検索広告がおすすめ。

このように、どのような顧客層に美容室へ来てほしいのかを考え、それに合わせた広告手法の効果的な組み合わせが、新規集客を成功させる鍵となります。

リピート顧客を促進させるための広告

新規顧客を呼び込むのも大切ですが、美容室の経営を安定させるには、顧客に「また来たい」と思ってもらうことが重要です。

マーケティングの世界には、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの5倍かかるという「1:5の法則」があります。ここから、リピート顧客がいかに大切か、お分かりいただけるでしょう。

では、どうすれば顧客との関係を深め、再来店に繋げられるのでしょうか?そこで有効な手段となるのが、今や多くの方が利用する「LINE公式アカウント」です。

LINEが公表しているデータの中には、LINEで送ったお知らせは、その日のうちに約8割が読まれるという内容が記載されており、顧客に情報を届けやすいのが大きな強みだと理解できます。

例えば、新しいクーポンや予約の空き状況をお知らせするだけでなく、チャット機能を使って個別の相談や予約を受け付けるなど、様々な活用ができます。

実際に、以下のサロンではLINEを効果的に活用し、顧客との信頼を深めています。

美容室のネット予約や電話予約が苦手な方へのアプローチにLINE公式アカウントのチャット機能を利用しています。また、新しいクーポンや新商品、イベント、予約の空き状況などのお知らせにも活用しています。発信の速さでお客様からの信頼はとても深くなりました。

引用:LINEヤフー for Business|hair salon Tomte Fika(トムテフィーカ)

ただし、一つ注意点があります。LINEは本来、顧客との「対話」を目的としたツールです。

一方的な宣伝ばかりを送ってしまうと、かえって美容室への印象を損ね、ブロックされてしまう可能性も否定できません。あくまで、顧客との関係を温めるための手段として、丁寧に活用しましょう。

LINEの具体的な始め方や、さらに詳しい運用のコツについては、以下の記事で詳しく解説しています。

美容室の価値を高めるブランディング用の広告

目的が「美容室の価値を高めたい」という場合、考えるべきは「ブランディング」です。

価格の安さで選ばれるのではなく、「あなたのお店だから行きたい」と顧客に思ってもらうことが、ここでいうブランディングだと思っておきましょう。

単にお洒落なロゴを作るだけではなく、美容室の「個性」や「価値」を伝え、他店との違いを明確にしてください。

まずは、美容室の「核」となる想いを見つけましょう。「なぜこの美容室を始めたのか」といった「想い」を言葉にしてみてください。これが、全ての広告の判断基準になります。

美容室の想いが固まったら、次は顧客にその「世界観」を伝えていく作業です。

  • SNSの活用:Instagramなどで、お店の雰囲気やスタッフの人柄、施術のこだわりを写真や動画で見せる。
  • デザインの統一:お店のロゴ、広告で使う色や文字の形などを統一することで、顧客の記憶に残りやすくなる。
  • 物語を語る:美容室の成り立ちや理念といった背景を伝えることで、顧客との感情的な繋がりが生まれやすくなる。

ただし、SNSでただお洒落な写真を投稿するだけでは、予約に繋がりません。以下のサロンの店長も、その難しさについて次のように語っています。

フォロワー数を上げるためには良いかもしれませんが、集客にはつながりにくいのかなと。Instagramの認知度が上がる投稿と、集客につながる投稿はそれぞれ別物だと感じています。

引用:モアリジョブ|Noa.表参道 店長 小嶋正樹さん

この言葉が示すように、「お店を知ってもらうための発信」と「実際に予約してもらうための発信」は、分けて考える必要があります。もちろん、両者の連携も重要です。

ブランディング広告の最終的な目的は、価格競争に巻き込まれず、お店の価値を理解してくれる顧客に選ばれ続けることです。

それは結果として、安定した経営と、スタッフのやりがいにも繋がっていきます。

未来の仲間と出会うための求人広告

顧客に最高のサービスを届けるには、素晴らしいスタッフの存在は欠かせません。しかし今、多くの美容室が深刻な人手不足に悩んでいるのは、現在では当たり前になりつつあるでしょう。

しかし、この状況を逆手にとり、独自の視点で採用を成功させているサロンがあります。

現在、美容室は人手不足が深刻です。美容師免許は持っているけれど、働く時間を確保するのが難しい…という方が多いことに着目しました。子育て中で長時間働けない、ブランクのある休眠美容師の採用にいち早く取り組みました。おかげさまで毎月40人ほどのご応募をいただいています。

引用:モアリジョブ|(株)C&P 営業部 マネジャー 横浜 輝史さん

この事例のように、求人広告は単に募集をかけるだけでなく、美容室の考え方を伝え、求める人材を引き寄せる強力な手段となります。

ターゲットの心に響く求人広告は、以下の3つのステップで作成してください。

  1. 届けたい相手を決める:「どんな人に仲間になってほしいか」を具体的に決める。
  2. 魅力的な求人情報を作る:具体的な待遇や、写真などを使ってリアルな職場の魅力を伝える。求職者が「ここで働きたい」と思える求人情報を作成する。
  3. 情報を届ける場所を選ぶ:完成した求人情報はターゲットが見ている場所で発信する。

詳しい求人広告の作り方については、以下の記事で解説しているので、参考にしてください。

美容室の広告戦略を成功に導くための方法と手順を公開

広告の目的が決まったら、次は実行に移す段階です。以下では、広告戦略を成功に導くための、具体的な方法と手順を詳しく解説します。

戦略的な手順と具体的な手法、そして利益に繋げる工夫を組み合わせることで、広告の効果はより確かなものになります。一つひとつ、着実に実践していきましょう。

広告で成果を出すための基本的なステップ

ここまで目的別の広告手法を見てきましたが、やみくもに始めても成果は出ません。

そこで、広告戦略を成功に導くための、基本的な手順を解説します。以下の流れに沿って進めれば、無駄な失敗を減らしつつ、費用対効果を高められるでしょう。

  1. ターゲット等を分析する「計画」:誰に届けたいか(ターゲット)を定め、競合を分析して自店の立ち位置を明確にする、最も重要な準備段階。
  2. 媒体や予算を決める「実行」:計画に基づき、どの媒体で、どんな内容を、いくらの予算で伝えるか、具体的な行動を決定する段階。
  3. 結果を確かめる「改善」:広告を出しっぱなしにせず、予約数などの結果を分析。次の施策に活かす段階。顧客との対話も、改善のための大切なヒント。

このように「計画→実行→改善」の流れを地道に繰り返すことが、広告を成功させるための確実な道のりです。

ファンを生み出すSNS運用の仕組みとテクニック

今やSNSは、多くのお客様が美容室を探すための重要な情報源です。

しかし、「毎日投稿しているのに、なかなか集客に繋がらない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

成果を出すためには、SNS運用を個人の感覚に頼るだけでなく、お店全体で取り組む「仕組み」が欠かせません。。その仕組みは、主に3つの段階で成り立ちます。

  1. 情報の収集と分析:自店や競合店のSNSを定期的に見て、どんな投稿が人気なのかを分析する。
  2. 成功事例の共有:分析して分かった内容や、うまくいった事例をお店の会議などで共有。「〇〇店のこの動画が参考になるよ」のように具体的に助言し合う。
  3. 無理のない目標設定:「まずは週2回投稿する」のような続けやすい目標を立て、スタッフの自主性を尊重すること。

また、仕組み作りの一環として、スタッフへの「教育」も欠かせません。以下の企業では、専門家を招いた研修を毎月開催しています。

ひとつ挙げると、弊社ではSNSの活用研修を開催しています。今の時代、SNSは美容師にとって集客につながる大事な要素です。毎月外部講師を招いて、効果的な撮影方法や投稿方法、トレンドを押さえた内容作りなどを学べるんです。

引用:モアリジョブ|ファイブスター オフィスマネージャー 関根 美保利さん

このように、新人教育にSNS運用の基本を取り入れるだけでなく、定期的な勉強会を開くことで、サロン全体の活用レベルを高められます。

仕組みと教育が整って初めて、日々の投稿テクニックを発揮できます。特に以下の3つを意識したいところです。

  • 投稿時間の工夫:顧客がスマートフォンをよく見る時間帯を狙って投稿する。
  • ハッシュタグの活用:「地域名+メニュー名」など、探している人に見つけてもらいやすい言葉を選ぶ。
  • 顧客との対話:コメントやDMに丁寧に返信するなど、一方通行にならない関係を作ることが大切。

SNS運用は、短期的な集客だけでなく、美容室のファンを育てる長期的な活動です。仕組み作りと実践テクニックの両輪で、顧客との大切な繋がりを育てていきましょう。

顧客との絆を深める「DM戦略」はタイミングと内容で差をつける

SNSやLINEが主流の今、「ハガキや手紙を送るのは時代遅れでは?」と感じるかもしれません。しかし、このダイレクトメール(DM)こそが、顧客との特別な絆を育むための強力な手段となるのです。

一般社団法人 日本ダイレクトメール協会が公表している調査によると、誕生日など、自分向けに内容が工夫されたDMは、そうでないものより開封されやすい結果も出ており、その効果がうかがえます。

では、具体的な活用法を見ていきましょう。まずは、新規顧客を「常連客」に育てるためのダイレクトメールです。

  • 1通目(来店3日後頃)は感謝を伝えるお礼状:売り込み色を出さず、手書きのメッセージで感謝の気持ちと、その日にお話しした内容などに触れる。
  • 2通目以降(来店2週間後〜)は関係を深めるお便り:ヘアケアのアドバイスや季節のスタイル提案などを通じ、お客様のことを気にかけている姿勢を示すこと。

次に、しばらくご来店の無い「お休み中のお客様」に思い出してもらうためのダイレクトメールです。

来店の「心理的な壁」を下げる工夫として、「新しいシャンプー台が入りました」など、再来店のきっかけとなる理由を伝えてください。

「この手紙を受け取った方限定」といった特別感のある特典を添え、「またお会いできるのを心待ちにしています」という温かい言葉で歓迎の気持ちを伝えるのも大切です。

さらに、ダイレクトメールには隠れた効果もあります。

先ほどと同じく、一般社団法人 日本ダイレクトメール協会が公表している別の調査によると、ダイレクトメールを受け取った人の約2割が、その後インターネットで調べたり誰かに話したりと、何らかの行動を起こしています。

特に20代ではその割合が高く、ダイレクトメールがオンラインでの検索や口コミのきっかけにもなり得るのです。

▼本人宛のDM閲読後に何らかの行動を起こした割合

男性の割合

女性の割合

 

20代

43.3%

37.5%

30代

14.5%

20.0%

40代

31.4%

19.3%

50代

8.9%

5.6%

ダイレクトメールは、手間ひまがかかるからこそ、顧客に「大切にされている」という気持ちが伝わる特別な手段です。一通一通に心を込めて、顧客との温かい関係を築いていきましょう。

広告効果を利益に変えるための店内アプローチの方法

広告の本当の目的は、顧客来店数の増加だけではありません。あなたの美容室を利用する顧客に心から満足していただき、お店の利益にも繋げるまでが広告戦略のゴールです。

以下では、顧客満足度を下げずに、客単価を高めるための、店内での工夫について解説します。

まず、すぐに取り入れられるべき、4つの工夫についてです。

  • 自然な「もう一品」を促す工夫:カットに来た顧客に対して、短時間でできるトリートメントをおすすめするなど、顧客満足度を高める「ついで買い」を提案。
  • 選びやすくする「価格の並べ方」:3つの価格帯の店版アイテムを用意し、最もおすすめしたいアイテムを真ん中に置くと、顧客は安心して選びやすくなる。
  • 「今だけ」の特別感で背中を押す工夫:季節限定メニューなど、「今だけ」の価値を提供することで、普段は試さないメニューにも挑戦してもらうきっかけが作れる。
  • より良いものを提案する工夫:押し売りにならないように、顧客が選んだものよりワンランク上のメニューを、その価値を丁寧に説明した上で提案する。

そして5つ目が、最も勇気がいる「価格の見直し」です。

値上げは「顧客離れを加速させてしまうのではないか」と不安に思う方も多いのではないでしょうか?しかし、以下のサロンオーナーは、顧客と相談しながら価格改定を成功させています。

――すごく理想的で健全な経営だと思います。ちなみに価格改定してもお客さまが離れないように何か工夫はしたのでしょうか?

大切なのがタイミングと値上げをする根拠ですね。私の場合、1度目の価格改定は「予約が取りにくい」という声が、お客さまから出はじめたのが契機となりました。そこでお客さまのお声を聞きながら「マンツーマンを止めて予約枠の時間を圧縮する」「新しいスタッフ入れる」「価格改定をする」という、3つの解決プランを提示したのです。結果的に満場一致で「価格改定」が選ばれました。これまでに4〜5回、同じようにしてお客さまに相談しながら価格改定を行なっています。

引用:モアリジョブ|Pelodias オーナー嶋田 篤士さん

この事例が示すのは、「予約が取りにくい」といった、お客様も納得できる理由やタイミングで、正直に相談する姿勢が、信頼を損なわない鍵だという点です。

ここまで見てきた客単価を高める工夫は、顧客との信頼関係があってこそ成り立つものです。お客様にさらなる価値を提供する方法として、ぜひ取り入れてみてください。

美容室の広告効果を最大化するデザインのコツ

広告の目的や手法が決まったら、次はお客様の目に直接触れる「デザイン」について考えていきましょう。

「デザインは苦手」という方もご安心ください。デザインはセンスだけでなく、正しい手順に沿って考えれば、誰でも美容室の魅力を効果的に伝えられます。

以下では、その具体的な手順を順番に解説します。

デザインの前に決めるべきターゲットの設定

広告のデザインは、届けたい相手が決まって、はじめてその力を発揮します。見た目を考える前に、まずデザインの土台となる「届けたいターゲット」を定めましょう。

まず、近隣の競合店などを参考に、お店の立ち位置を決めます。

次に、「30代、仕事で忙しい女性」のように、理想のターゲット像を一人、具体的に思い描いてください。これができれば、「仕事帰りに寄れる」などの、その人の心に響くメッセージが自然と生まれてくるはずです。

このように「誰に、何を伝えるか」という土台を固められると、効果的な広告デザインを作れるようになるでしょう。

適切な「写真」と「情報」で安心感と信頼を伝える

届けたいターゲットが決まったら、次はその人が抱くであろう「このお店は大丈夫かな?」という不安を、安心感に変える工夫をしましょう。

そのための最も有効な手段が、「写真」と「情報」です。

  • お店の雰囲気や人柄を伝える:髪型の写真だけでなく、お客様が過ごす空間や、スタッフの笑顔がわかる写真を載せておく。
  • 知りたい情報にきちんと応える:住所や営業時間といった基本情報はもちろん、「キッズスペース完備」や「オーガニック製品使用」など、ターゲットに響く特別な情報を加えておく。

このように、顧客の目線に立って、安心できる写真と情報を丁寧に用意することこそが、信頼への大切な第一歩となります。

お店の価値を高めるカラーとレイアウトの基本

広告に載せる写真や情報が決まったら、次はその「見せ方」です。

広告全体の印象を大きく左右する、「色使い」と「情報の配置(レイアウト)」の基本を把握しておきましょう。

  • お店の「個性」に合った色を選ぶ:ターゲットに合わせて、使う色は3色程度に絞ると、上品にまとまっておすすめ。
  • 情報が伝わりやすいように配置する:最も伝えたい言葉や写真を、最初に目に入る場所(基本は左上)に置く。
  • 「安っぽさ」を避ける:特に割引価格を伝える時には注意が必要。赤い大きな文字などで強調しすぎず、全体の調和を考えた上品なデザインを心がけておく。

色や配置は、お店のおもてなしの心を表現する手段のひとつです。届けたい人に対して心地よく情報が伝わるよう、細部までこだわりましょう。

【応用テクニック】マンガやクーポンを活用する

デザインの基本に加え、顧客の行動を後押しする応用編として、以下の仕掛けをチェックしておいてください。

  • クーポンの活用:来店への最後の一押しになる。割引に頼りすぎないよう「初めての方限定」など、目的を絞った活用が大切。
  • 広告マンガ:お店のこだわりや物語を分かりやすく伝え、顧客の記憶に残りやすい。

実際に、以下のサロン経営者もその効果を語っています。

広告マンガは、ほかの広告よりお客様の目にとまりやすいので効果も高く、より集客につながることが期待できます。値段は依頼先によって異なるので、気に入ったイメージと予算に合ったものを選ぶことが可能です。イラストと同様に、基本的にオンラインですべてのやりとりをすることができます。

引用:モアリジョブ|iki by L.O.G 遠井春彦さん

最近ではインターネットで気軽に依頼も可能です。お店の想いを伝える新しい表現方法として、検討してみてはいかがでしょうか?

「クーポンで背中を押し、マンガで心に残す」といった一工夫が、他店との差別化に繋がります。

まとめ

本記事では、美容室の広告をテーマに、その必要性から具体的な戦略、デザインのコツまでを詳しく解説しました。

広告戦略と聞くと、難しく、手間がかかるように感じるかもしれません。

しかし、今回紹介した以下のような内容は、全て「あなたの美容室と顧客をもっと深く繋ぐため」の工夫です。

  • 「良い技術」だけでは生き残れないことを知る:厳しい競争環境と変化する顧客ニーズの中で、広告は経営に不可欠な「投資」のひとつ。
  • やみくもな広告は失敗のもと。まず「目的」を明確にする:「新規集客」「リピート促進」「ブランディング」「採用」など、目的によって最適な広告は異なる。
  • 広告運用は「計画→実行→改善」を繰り返す:常に結果を分析し、次の一手へ繋げる地道なサイクルは、広告効果を高められる。
  • デザインは「誰に何を伝えるか」が全ての土台:センスだけでなく、届けたいターゲットの視点に立って、安心と信頼を伝えることが重要。

まずは、今回紹介した内容から少しでも「これならできそう」と思えるポイントを見つけ出し、気軽に試してみてください。

関 慎一郎(Seki Shinichiro) プロフィール画像
執筆者情報
関 慎一郎(Seki Shinichiro)
美容師として8年間サロンワークを経験。その後、現場の声を活かしながら、Webマーケティングによる集客戦略の立案、補助金制度を活用した資金繰りの改善などに取り組み、創業40年以上の老舗美容室の経営に携わる。Bizリジョブ編集部では、現場と経営の両方を経験した視点から、美容サロンが抱える採用や集客などの課題解決に貢献できるよう、リアルで実践的な情報を発信。