美容業界は今、深刻な人材不足という大きな課題に直面しています。「求人を出しても理想的な人材に出会えない」「早期離職に頭を悩ませている」そんな経営者も少なくないでしょう。
給与や待遇と並んで、美容師たちがサロン選びの際に極めて重要視しているのが「休日」のあり方です。この記事では、美容師の休日の実態やパターンの種類、キャリアやサロンの規模に応じた設定方法を解説します。
美容師は本当に休みが少ないのか?実態を紹介
具体的なデータや業界の慣習を交えながら、美容師の休日事情の実態を多角的に掘り下げます。
休日は月6~7日でやや少ない
美容師の休日は、一般業種と比較して少ないです。月の休日数は6日~7日程度で、週に1日の休みと隔週でもう1日休みがある「隔週休2日制」に近い形になります。
週休が1日しかない週も珍しくなく、体力的にも精神的にも負担が大きくなりがちです。アシスタントの場合は、休日を技術向上のための研修や練習会に充てるケースも多く実質的な休日はさらに少なくなります。
美容室は土日や祝日に最もお客様が集中するビジネスモデルです。世間一般の休日には働かなければならない特性も、多忙なイメージを強めています。
【職種別・年間休日数の比較表】
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美容師 |
約60日~105日 ※実質休暇はそれ以上だが休日研修が多いため |
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美容師以外の生活関連サービス業 |
108.5日 |
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医療福祉業 |
114.3日 |
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建設業 |
116.8日 |
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全産業平均(日本) |
115.6日 |
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完全週休2日制の企業の目安 |
120日以上 |
美容師の休日数は、全産業の平均より10日以上少ないです。カレンダー通りに休める企業とは、年間で20日以上の差があります。「休みの少なさ」は、人材確保における大きな課題です。
有給消化率は30%と非常に低い
休日の日数以上に深刻なのが、有給休暇の消化率の低さです。美容業界における有給休暇の消化率は37.1%で、他業種と比較して著しく低い水準です。
2019年4月から、すべての企業で「年5日の有給休暇取得」が義務化されました。しかし、美容業界では依然として有給休暇を取得しづらい空気が根強く残っています。
【業種別・有給休暇消化率の比較表】
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美容業 |
約37.1% |
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医療福祉 |
65.3% |
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製造業 |
65.8% |
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宿泊業、飲食サービス業 |
49.1% |
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全産業平均(日本) |
62.1% |
美容師は小規模なサロンが多く、一人でもスタッフが休むとお店が回らなくなりがちです。代わりのスタッフを確保できず、休みたくても休めない状況が生まれます。人気のスタイリストほど予約が詰まっており、長期間休めないため有給取得をためらいがちです。
特に小規模サロンは慢性的な人手不足で常にギリギリの人数で運営しており、有給休暇を取得できるような余裕は少ないといわれています。
休日は月または火のパターンが多い
かつて電力供給が不安定だった時代、電力消費の多い地域や業種ごとに電気を止める「休電日」が設けられていました。美容室で使うパーマ機などは消費電力が大きいため、かつては月曜日が休電日でした。その名残で現在も、月曜日を定休日にするサロンは多いです。
美容院は週末の土日にかけて忙しくなりがちです。その翌日にあたる月曜や火曜を休みにして、スタッフの体を休ませる目的もあります。
休日出勤は他業種より多い
美容師の休日をさらに少なくしている要因が、休日出勤の多さです。特にアシスタントや若手スタイリストは、休日返上で以下に参加するケースが非常に多く見られます。
- 技術研修
- 練習会
- コンテストの準備
- 撮影会
心身を休める休日に仕事があると、プライベートな時間が確保できず疲労が蓄積しがちです。休日に行われる研修が任意参加であっても「参加しないと技術習得が遅れる」「先輩や同僚との関係性が気まずくなる」そんなプレッシャーから、事実上の強制参加となっている場合も少なくありません。
スタッフの成長を願うあまり休日まで研修を詰め込んでしまうと、結果的に彼らの心身を疲弊させ離職につながります。スタッフの体力を十分に考慮し、研修は可能な限り営業時間内に行いましょう。休日に実施する場合は、必ず代休を付与するなどの計画的な運用が求められます。
美容師の休みパターンは3つ
美容室で採用されている代表的な3つの休日パターンについて、特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
【美容師の休日パターン比較表】
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休日パターン |
メリット |
デメリット |
こんなサロンにおすすめ |
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店休による固定制 |
・プライベートの予定が立てやすい ・生活リズムが安定する ・スタッフ全員が同時に休める |
・土日祝日に休めない ・連休が取りにくい ・急な用事に対応しづらい |
・小規模サロン ・地域密着型のサロン ・スタッフの管理を簡素化したいサロン |
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完全週休制 |
・休日が多く心身をリフレッシュできる ・プライベートを充実させやすい ・求人でのアピール力が高い |
・人件費が増加する傾向がある ・スタッフ間のシフト調整が複雑になる ・土日休みは取りにくい場合がある |
・人材確保に力を入れたいサロン ・スタッフの定着率を上げたいサロン ・ある程度のスタッフ数を確保できる中規模以上のサロン |
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シフト制 |
・希望の日に休みやすい(土日も可能) ・連休の取得も調整次第で可能 ・フレキシブルな働き方ができる |
・収入が不安定になる可能性がある ・スタッフ間の調整が必要 ・シフト管理が煩雑になる |
・スタッフ数が多い大型サロン ・年中無休で営業したいサロン ・多様な働き方のニーズに応えたいサロン |
それでは、各パターンを詳しく見ていきましょう。
店休による固定制
店休による固定制は、多くの美容室で伝統的に採用されている、最も一般的な休み方です。サロンが定休日として決めた特定の曜日が、スタッフ全員の休みとなります。
毎週同じ曜日に休めるため、プライベートの予定が非常に立てやすいです。習い事や定期通院など、決まった曜日に時間を確保したいスタッフにとって理想的な働き方といえます。
生活リズムが整いやすく、心身のコンディションを維持しやすいのも魅力です。スタッフ全員が一斉に休むため経営者のシフト管理の手間もかからず、運営がシンプルになる利点があります。
しかし、定休日が固定されているため、土日や祝日には休めません。友人や家族とのイベントに、参加しづらいスタッフも出てきます。大型連休を取得するのも難しく、旅行などの計画が立てにくいかもしれません。
完全週休制
1週間のうち必ず2日は、休みが確保される働き方です。求人を出す際に「週休2日制(月に1回以上、週2日の休みがある制度)」と混同されやすいといわれています。しかし、年間休日数で大きな差が生まれるため、明確に区別する必要があるのです。
この制度を導入している美容室は、近年増加傾向にあります。美容業界全体の働き方改革の推進と、他店との差別化を図り優秀な人材を確保したい経営者の思惑によるものです。
メリットは、休日が多いことによる心身のリフレッシュ効果です。しっかり休息を取れば仕事への集中力やパフォーマンスが向上し、プライベートも充実できます。子育てや介護など、家庭と仕事を両立したいスタッフにとっても非常に魅力的な働き方です。求人市場においても、「完全週休2日制」は強力なアピールポイントとなるでしょう。
スタッフ一人当たりの労働時間が減るため、同じ売上を維持するためには人件費が増加しやすいのがデメリットです。定休日を設けずに営業する場合、スタッフ間のシフト調整が複雑になり管理コストが増大する点も考慮せねばなりません。
シフト制
シフト制は、スタッフ同士で相談しながら、毎週あるいは毎月、自由に休みを決める働き方です。固定の定休日は設けず、スタッフが交代で休みを取ることで、サロンとしては年中無休での営業も可能になります。
最大のメリットは、その柔軟性の高さです。スタッフは自分の都合に合わせて休日を設定できます。「子どもの学校行事に合わせて土曜に休みたい」「友人の結婚式があるので連休を取りたい」というような、個別のニーズに対応しやすいです。
イベントや旅行などの計画も立てやすく、自由度の高い働き方を希望する美容師にとっては非常に適した選択肢といえるでしょう。
しかし、繁忙期には希望休が重なりやすく、スタッフ間での調整が必要になります。譲り合いの精神がなければ、不平不満が生まれる原因にもなりかねません。
経営者も毎月公平で効率的なシフトを作成する必要があり、管理業務が非常に煩雑になります。特定のスタッフに負担が偏らないよう、デジタルツールなどを使った厳重な管理体制が不可欠です。
美容院別の美容師の休みパターン
3つのタイプ別に、採用されやすい休日パターンとその特徴を紹介します。
小規模店は大型連休や土日休みも多い
スタッフ数が数名程度の個人経営店や小規模なサロンでは、オーナーの裁量で柔軟な休日設定がなされやすいです。
お盆や年末年始に長期休暇を設定したり、思い切って土日を定休日にしたりするケースも見られます。スタッフ数が少ないからこそ、全員で一斉に休む方が管理しやすく、効率的だと判断されるためです。
中途半端に営業して人件費をかけるよりも、サロン自体を完全に閉めてしまい、スタッフのリフレッシュ期間に充てるのがおすすめです。スタッフが心置きなく体を休められます。店自体が休みなので、休日出勤やお客様からの急な連絡を気にする必要もありません。
完全予約サロンは予約状況でシフト変更をする
完全予約店では、日々の予約状況に応じてスタッフの出勤や休日を柔軟に調整するケースがあります。予約が少ない日にはスタッフを早めに帰宅させたり半日休みにしたりする一方で、予約が集中する日には出勤時間を調整するといった運用です。
無駄な待機時間を削減し、効率的に働けます。サロン側は人件費を最適化でき、スタッフは閑散期に休みを取りやすくなるでしょう。
しかし、スタッフの休日が直前まで確定しないデメリットも存在します。プライベートの予定が立てにくく、収入が予約状況に左右される点もデメリットです。
スタッフに不満を抱かせないために固定休を確保した上で、追加の休みを予約状況に応じて付与しましょう。あるいは最低保証給与を設定するなど、安心して働ける仕組み作りがあるとよいかもしれません。
大型サロンはシフト制が主流
従業員の人数が充実している大規模なサロンでは、シフト制が主流となります。豊富な人材を活かし、スタッフが交代で休みを取ってサロンを年中無休で稼働させる方式です。
多くのスタッフが在籍しているため、個々の希望休が通りやすくなります。大型連休の取得なども、比較的叶えやすいのは強みです。福利厚生を充実させ、休日制度も明確に整備すればスタッフは安心して働けます。
しかし、スタッフの人数が多い分、シフト管理は非常に大変になります。誰がいつ休み、どの時間帯に何人出勤しているのかを正確に把握し、公平なシフトを組まねばなりません。管理が杜撰になると、特定のスタッフに負担が集中したり希望休を巡るトラブルが発生します。
専門のシフト管理システムやアプリを導入し、スタッフがスマートフォンから希望休を申請できるようにしましょう。管理者がそれを基に自動でシフトを生成するようなツールを活用すれば、管理業務を効率化して公平性を保てます。
地域でも美容師の休みパターンは異なる
美容師の休日事情は、全国一律ではありません。休日数や休みの取り方には、地域で差があります。
【主要地域別・美容師の休日パターン比較表】
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地域 |
年間平均休日数 |
曜日 |
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関東 |
75日~90日 |
月または火 |
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関西 |
80日 |
月が多い |
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その他全国平均 |
80日 |
東北圏は組合により休日が決まりやすい チェーン店は不定休が多い |
全国的な動向を把握しつつ、自店が位置するエリアの競合サロンがどんな休日制度を設けているのかをリサーチしましょう。地域内で働きやすいサロンとしてのポジションを確立すれば、人材確保が楽になります。
美容師のキャリア別休日設定は?
アシスタント、スタイリスト、業務委託といったキャリア別に、適切な休日設定の考え方を見ていきましょう。
アシスタントは休日が減りやすくカバーが必要
美容師のキャリアの第一歩であるアシスタントは、一般的にスタイリストよりも休日が少なくなりがちなポジションです。基本サロンワークに加え、スタイリストデビューに向けた技術向上のための練習が欠かせません。
これらの練習は、かつては営業後や休日に行うのが当たり前とされてきました。自主練習に参加しなければデビューが遅れるというプレッシャーから、休日を返上して練習に時間を費やすアシスタントは少なくありません。外部講習への参加も多く、完全にオフの日として過ごすのが難しいのが実情です。
休日は月に5〜8日程度が目安となります。しかし「休みであって休みでない日」が多く含まれる可能性があります。アシスタント時代の過酷な労働環境は、美容師という職業の早期離職につながる最大の原因の一つです。
経営者としてはアシスタントの情熱に甘えるのではなく、彼らが長期的にキャリアを築けるよう、休日をしっかりと確保せねばなりません。
- 練習時間の一部を営業時間内に組み込む「レッスンカリキュラムの効率化」
- 休日に行った講習には「代休を付与する」ルールの徹底
- 「明確な成長プランと目標設定」の共有
上記の工夫で、無駄な長時間練習をなくす配慮が求められます。
一般スタイリストにはプライベートと仕事を両立できる休日設定を
スタイリストになると、休日は比較的取りやすくなります。多くのサロンでは、月に6〜10日程度の休日が設定されており、希望休や有給休暇も取得しやすい傾向にあるからです。
スタイリストは自分を指名してくれるお客様を担当する立場となります。責任が大きくなる一方で、自身のスケジュール管理の裁量も増えるでしょう。仕事とプライベートのバランスをいかに両立させるかが、モチベーションを維持し長く活躍し続けるための重要なテーマとなります。
土日休みは依然として難しい場合が多いです。しかし、シフト制を導入しているサロンでは、事前に申請すれば取得できるケースも増えています。経営者は、スタイリストが顧客に最高のパフォーマンスを提供し続けられるよう、心身ともにリフレッシュできる休日設定を重視しましょう。
「月に一度は土日どちらかの休みを取得可能にする」「長期勤続者にはリフレッシュ休暇を与える」といった制度は、スタイリストの満足度を大きく向上させる切り札です。
業務委託の場合は休日設定も当人に任せるのが基本
近年増加している業務委託契約で働く美容師は、サロンに雇用されるのではなく、個人事業主としてサロンと対等な立場で契約を結びます。休日の設定も基本的に本人の自由です。
出勤日や休日、勤務時間を自分で決められるのは、業務委託という働き方の最大の強みといえます。サロンの定休日に縛られず、自分のライフスタイルに合わせて勤務可能です。
土日や祝日に休むのも、長期休暇を取得のも比較的容易です。「休日設定の自由度」を最優先に考える美容師にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。
経営者が注意すべき点は、業務委託の美容師に対して出勤日や休日を強制することはできない点です。無視して指揮命令を行うと、「偽装請負」とみなされ、労働基準法違反に問われる可能性があります。
サロン側ができるのは、あくまで予約管理のサポートや、働きやすい環境を提供することです。このサロンで働き続けたいと思えるような、集客支援や良好な人間関係といった付加価値を提供するのが、優秀な業務委託美容師を繋ぎとめる鍵となります。
経営者が雇用する美容師の休みを設定するポイント
現代の美容師に選ばれるサロンになるための、休日設定における5つの重要なポイントを解説します。
柔軟な休みの設定でライフスタイルを考慮する
現代の働き手の価値観は多様化しています。「子育てや介護と仕事を両立したい」「趣味や自己投資の時間を大切にしたい」など、一人ひとりのライフスタイルは異なります。従来の画一的な固定休制だけでは、これらの多様なニーズに応えるのは困難です。
以下制度を組み合わせることで、スタッフの満足度を大きく高めましょう。
- シフト制の導入では週単位や月単位で希望休を提出してもらう
- 時短勤務制度で育児や介護などフルタイム勤務が難しいスタッフに対応する
- 「午前だけ」「午後だけ」といった短い時間単位での休暇を認める
- 「月1回まで」などルールを設けた上で、土日祝日の休みを申請できる仕組みを作る
個々の事情を丁寧にヒアリングし、可能な限り寄り添う姿勢を見せてください。スタッフのエンゲージメントを高め、長く働きたいと思える環境作りの第一歩となります。
特別休暇やリフレッシュ休暇を取り入れる
労働基準法で定められた年次有給休暇とは別に、サロン独自の特別休暇を設けることは、スタッフへの感謝の気持ちを表し、他店との明確な差別化を図るための有効な手段です。
これらの休暇は、単なる「休み」ではなく、スタッフが心身ともにリフレッシュし、新たな気持ちで仕事に取り組むための「投資」といえます。
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リフレッシュ休暇 |
勤続の節目に、5日~10日程度の連続休暇を付与する |
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アニバーサリー休暇(誕生日休暇 |
スタッフ本人や家族の誕生日に休暇を取得できる |
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夏季・冬季休暇 |
お盆や年末年始に、有給とは別に3日~5日程度の連休を設定する |
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冠婚葬祭休暇 |
結婚や出産、身内の不幸などに際して休暇を付与する |
上記のような制度を導入する際は、スタッフの趣味や家族構成などを普段から把握し、計画的に取得を促すコミュニケーションをしておきましょう。
連休に関する取得ルールを設ける
特に美容室の繁忙期である土日やゴールデンウィーク、年末などに、スタッフ全員が自由に連休を取得することは現実的に困難といえます。
希望が重なった際にトラブルになったり、特定のスタッフに不満が溜まったりするのを防ぐためには、連休取得に関する明確なルールを事前に設けておくのが極めて重要です。
ルール作りのポイントは、公平性と透明性です。
- 「連休の申請は希望日の2ヶ月前まで」など期限を明確にする
- 「年間の連休取得は2回まで」「1回の連休は最大5日まで」などの上限を設ける
- 繁忙期の休み方にはルールを定める
- 希望が重複した場合の優先順位を決めておく
管理は紙の書類ではなく、GoogleカレンダーやSlack、シフト管理アプリなどにしましょう。スタッフ全員がいつでも確認できるデジタルツールで共有・管理してください。「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、スムーズな運用が可能になります。
各従業員の有給は計画的に設定する
2019年4月の法改正により、企業は年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、年に5日間、時季を指定して確実に取得させる義務を負っています。これに違反した場合、罰則が科される可能性が高いです。
スタッフが気兼ねなく有給を使えるようにするために有効なのが「有給休暇の計画的付与制度」です。労使協定を結んだ上で、会社側が計画的に従業員の有給取得日を割り振る制度として知られています。
サロンの閑散期に合わせて「〇月〇日~〇日は全員で有給を取得して3連休にする」といった運用をしてみましょう。スタッフは罪悪感なく堂々と休むことができ、サロン側も計画的に人員を調整できます。
個人の自由に取得できる日数を5日以上残しておけば、急な用事にも対応できるでしょう。
雇用形態を多様化し休みを分散する
サロンで働くスタッフ全員が正社員である必要はありません。多様な雇用形態を導入すれば働き方の選択肢が広がり、結果的にスタッフ一人ひとりの休日を確保しやすくなります。
平日の日中だけ働きたい主婦(主夫)層をパートタイマーとして採用すれば、正社員が休憩を取りやすくなったり、練習時間を確保しやすくなったりするでしょう。週末だけ働きたい学生をアルバイトとして採用すれば、繁忙期のマンパワーを補強できます。
異なる勤務時間や休日設定を持つスタッフを、パズルのように組み合わせてみてください。お店全体の営業時間を維持、あるいは拡大しつつ個々のスタッフの休日希望を叶えられます。
美容師の休日を経営者が設定する際の注意点
経営者が休日を設定する際に、特に注意すべき5つの点を解説します。
労働基準法は必ず順守する
休日設定における大前提は、労働基準法の遵守です。
魅力的な制度を作っても、法律の基準を満たさねば意味がありません。経営者が最低限押さえておくべきなのは、主に以下の2点です。
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法定休日(労働基準法第35条) |
使用者(会社)は、労働者に対して「毎週少なくとも1回の休日」または「4週間を通じて4日以上の休日」を与えなければならない これを下回る休日設定は違法と |
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年次有給休暇の取得義務(労働基準法第39条) |
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日は使用者が時季を指定して取得させなければならない |
これらの法律に違反した場合、労働基準監督署からの是正勧告や、悪質な場合には罰金や懲役が科されるリスクがあります。
法律は、従業員を守るための最低限のルールです。従業員が安心して働ける環境を整備し、将来的な労使トラブルを未然に防ぐためにルールを守りましょう。
美容室に関わる労働基準法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
休日を研修会などの拘束時間に設定しない
休日は本来労働者が労働義務から完全に解放され、自由な利用が保障されている時間です。休日に設定された研修が、事実上の強制参加ではいけません。
参加しないと評価が下がったりデビューが遅れたりする研修は、「労働時間」とみなされます。会社は当然ながら賃金を支払う義務があるのです。トラブルを避けるためには、以下の対策が考えられます。
- 研修は可能な限り営業時間内に実施する
- 休日に実施する場合は、参加を完全に任意とする
- 不参加による不利益はないと明確に伝える
- やむを得ず休日に業務命令として研修を行う場合は労働時間として扱い、適切な賃金と代休を付与する
従業員が「参加したい!」と自主的に思える魅力的な研修内容を、出勤予定の日に合わせ企画しましょう。
予約やスタッフの休み管理を徹底する
休日制度を柔軟にすればするほど、予約管理とシフト管理の重要性は増します。管理が杜撰だと、以下の問題が発生するかもしれません。
- 特定のスタイリストの休日に予約を入れてしまうダブルブッキングが起こる
- 負担が偏り業務に不公平感が生まれる
- 申請したはずの希望休が忘れられるトラブルの発生
こうしたミスはスタッフのモチベーションを著しく低下させ、信頼関係を損ないます。手書きの予約帳やカレンダーでの管理には、限界があるものです。予約管理システムと連携できる、シフト管理ツールの導入を検討しましょう。
誰がいつ休むのかが一目で可視化され、予約の受け入れ可否もシステムが自動で判断してくれます。ヒューマンエラーを防ぐのに効果的です。
急な体調不良などでスタッフが欠員した場合に備え、近隣の店舗と協力してスタッフを派遣し合える体制を整えるのもおすすめです。単発で依頼できるフリーランス美容師のリストを持っておくのも、サロンを円滑に運営する上で有効なリスク管理となります。
求人には休みの規定を明記する
新しく人材を募集する際、求職者が最も注意深くチェックする項目の一つが休日規定です。情報が曖昧だったり実態と異なっていたりすると、応募が集まりません。結果的に、採用後のミスマッチや早期離職の大きな原因となります。
「月6日~」「週休2日制」などの例は、完全週休2日制と誤解されやすいです。「完全週休2日制(毎週火曜+他1日シフト制)」「月8日休み(シフト制/希望休月3日まで可)」のように、具体的な日数や曜日、制度を明記しましょう。求職者は入社後の働き方を明確にイメージできます。
リジョブのような美容業界に特化した求人サイトでは、休日制度を詳細に設定して検索できる機能があります。求職者に自社の魅力を的確にアピールすることが可能です。求人情報をオープンにして、誠実な企業姿勢を示し信頼構築の第一歩を作りましょう。
スタッフ面接時にはしっかり休みの希望を聞いておく
採用面接は、サロンが候補者を選ぶだけの場ではありません。候補者とサロンの価値観がマッチするかどうかをすり合わせる重要な機会です。特に休日の希望については、入社後のトラブルを避けるためにも具体的にヒアリングしましょう。
ていねいに聞き取りをすれば、ライフスタイルやキャリアプランをしっかり理解し、入社後のシフト調整をスムーズに行えます。認識のずれをなくし、従業員が長期的に活躍できる基盤を築きましょう。
【面接時に聞いておきたい休日に関する質問リスト】
- 「当サロンの休日規定は〇〇ですが、ご自身の希望(例:月8日休みなど)と比べていかがですか?」
- 「土日祝日の休みについては、どのくらいの頻度で希望されますか?」
- 「お盆や年末年始などの長期休暇の過ごし方について、何かご希望はありますか?」
- 「これまでの職場で、休日の取り方に関して困った経験や、もっとこうだったら良かったと感じたことはありますか?」
- 「プライベートで大切にされている時間(趣味、ご家族との時間など)はありますか?そのために必要な休日の取り方などあれば教えてください。」
休みの設定で美容師の満足度を上げた美容院の事例を紹介
実際に休日設定を見直すことで、スタッフの満足度を向上させ、採用力の強化や離職率の低下に成功した美容院の事例を2つ紹介します。
ワークライフバランスを重視した休日設定で応募者を増やした事例
以下の事例では、働きやすい環境こそが良い美容師を育てると考え、休日制度を大幅に刷新しました。結果として求人への応募者が増加し、優秀な人材の確保に成功しています。
ワークライフバランスを保ちやすい点ですね。この会社は完全週休2日制に加えて、店舗状況にもよりますが休日を自由に設定することが可能。また社員には有給休暇を付与しており、有給休暇の消化漏れがないように、残りの有給日数を定期的にアナウンスしています。
私は魅力的な美容師というのは、技術力や接客力が高いだけでなく、プライベートも充実し楽しく働ける人だと考えています。休日のお出かけや遊びから得られる刺激は、美容師としての感性にもつながると思うので、スタッフがいい美容師になれるように努めています。
また弊社には子育てをしながら働く方が多くいるので、育児休暇も自由に取得できるようにしています。
引用:モアリジョブ|「Rosso」代表取締役 阿部洋介さん
休日設定を充実させ退職者を減少させた事例
以下の事例では、休日制度を見直し、自由度の高いシフトや育休制度を整備したことで、スタッフが安心して長く働ける環境を実現しました。その結果、モチベーションの向上や店舗の継続的な成長に結びついています。
休みと給料はスタッフのモチベーションに直接つながります。職場環境を整えて退職者を減らすことで、安定した人材確保を実現し、着実に店舗展開をしていったんです。
弊社は育休や産休の取得率が高い上に、ほとんどの方が育休明けに職場復帰します。同じ境遇のスタッフが多くいるので、保育園や学校から急な呼び出しがあったときにも、お互いさまだと考えて助け合う雰囲気が根付いています。
弊社は自由度の高いシフト制度を採用しています。1ヶ月前に提出する形で、パートであれば土日に休日を取得することも可能なので、運動会といった子どものイベントにも参加しやすいんです。ちなみに社員も有給を利用すれば、土日休暇は取得できます。
引用:モアリジョブ│「Dash」小守雄貴さん
まとめ
- 美容師の休日は他業種に比べて少なく、有給休暇も取得しづらい
- 地域や経営店舗の数・種類でも休日数は変わる
- 働き手の価値観が大きく変化した今、この「当たり前」を見直すことが、サロンが生き残り、成長していくための不可欠な要素
- 休日出勤が当たり前なのはNG
- 休み方に柔軟性をもたせ、さまざまな勤務・休日形態を作るのが成功の鍵
サロンの休日制度を見直し、スタッフ一人ひとりが輝きながら長く活躍できる環境を経営者として築きましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部