美容師が辞める主な理由は、「美容業界全体に起因するもの」と「サロン固有の状況によるもの」の2つです。一方で、退職をする際に本当の理由を伝えて辞める人は2人に1人という驚きのデータがあります。辞める本当の理由を正しく理解しておかないと、経営にとって大きなリスクになりかねません。スタッフが長く働き続けてくれるサロンづくりの、具体的な方法を解説していきます。
オーナーにとって、「辞める理由」を知る意味とは?
国家資格が無いと働くことのできない職場である美容室サロンにおいて、美容師が一人辞めてしまうことは、経営上大きなリスクが伴います。「辞める理由」を正しく把握しないと、想定外の採用活動費がかかる、連鎖退職に繋がるなど、経営を大きく圧迫することに繋がりかねません。
ここでは、離職が経営に与える悪影響を解説します。「辞める理由」を、オーナーが知る意味を理解しましょう。
離職が経営に及ぼす影響
スタッフが離職すると、採用活動やスタッフ教育にかかるコストが収益を圧迫します。
また、スタッフ1人の離職をきっかけに、他のスタッフが次々と辞めていく現象(連鎖退職)が起きるリスクもあるのです(『連鎖退職』(山本寛 著))。残されたスタッフへの負担が大きくなるなどの要因で連鎖退職が起きると、経営にとって大きなマイナスになります。
支出への影響
1人のスタッフを採用して入社させるまでに、多くのコストを要します。スタッフを新規で採用する際、一般的に以下のフローを辿ります。
一連の採用活動において、求人サイトを利用して採用をした場合、過去の事例ではアシスタント1名で約17万4000円~22万円。スタイリストで約33万円の費用がかかっています。
他にも掲載文を作成する時間や求人媒体の選定、面接のための時間など、採用に関わるスタッフが多くの業務時間を割くことになります。
収益への影響
収益面においても、「人材=利益を生む存在」であるサービス業において、早期に離職されることは大きな収益減に繋がります。以下の具体例を見てみましょう。
例)スタイリスト1名
|
このスタイリストが、月にあげる利益は
60(万円)×10%=6万円
となります。
半年間このペースで働いた場合
6(万円)×6カ月=36万円
となり、半年でようやく採用費の33万円を超えて、収益に転じます。
もったいない「辞める理由」は防ぐべき
美容師が辞める理由は大きく分けて、「美容業界に起因する理由」と「会社固有の理由」の2つがあります。
美容業界に起因する理由
- 仕事内容、美容師そのものが合っていないと感じる
- 経済面(美容業界全体として低賃金)
- 体力面(体力的に重労働、手荒れ、腰痛等)
会社固有の理由
- 人間関係
- 会社の価値観(サロンの雰囲気・企業風土)
- 勤務条件(給与・勤務形態・休暇制度等)
離職理由の多くは防げる可能性があります。特に会社固有の理由は、経営方法を改善することで今後の離職率を下げることに繋がるものです。そのためには、「辞める本当の理由」を知ることが最も重要です。
美容師の職業を辞める理由
(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023 によると免許保持かつ美容師経験ありの中で、美容師を離職した人の割合は、46.5%です。
国家資格取得のために費用と時間をかけたのに、美容師として働くことを辞めるというのは大きな決断です。同調査にて、美容師そのものを辞めた理由として、店舗固有の要因以外の業界の要因の中で多いものは以下の通りです。ここでは各要因に対して解説します。
仕事・プライペートの両立が難しい
国勢調査 によると、美容師は男女比が2:8と圧倒的に女性が多い職場です。
結婚・出産を機に離職した女性美容師を対象にしたアンケートでは、以下のような、生活との両立の難しさがあることが浮き彫りになっています。
●離職前のランクはアシスタントが16%、スタイリストが73%
※アシスタントは技術習得前に離職しているため、子育てをしながらスタイリストとしての技術習得のハードルが高く、美容師として働くことを断念しているケースが多い
●結婚と出産に関連して離職期間がどのくらいかという問いに対しては、「ない」が24%と最も高かったがほとんどが経営者であった。ついで、「1年以上2年未満」が23%、「5年以上」が18%となっている。
※離職期間が長くなると、復職にあたって「技術」と「指名が取りづらいこと」に対する不安感が強いようです。
●復職したママ美容師の末子の年齢は、「0歳」が20%、「1歳」が18%、「2歳」が16%と、全体の54%が乳幼児を抱えて働いている
※待機児童問題、急な発熱で早退しづらい等の悩みがある
●復職する際に希望する働き方としては「パートタイム」が71%、次いで「フリーランス」が12%と、子育てとの両立にはパートタイム勤務を望む人が最も多い
●復職に対する気持ちとして、「美容師を辞めたくない」「今すぐ復職したい」と辞めたくない気持ちが強くある一方で、「仕事を休むことが不安」という声が2位に上がっている
厚生労働省が若年層(15~34歳)を対象とした「若い世代の労働者の意識」の転職理由に関する調査では、以下のような調査結果があります。
(出典: 厚生労働省「我が国における時間外労働の現状」 )
若年層では、特にワークライフバランスを重視する考え方に変化しています。
仕事内容のハードさ・体調不良
指名の無いアシスタントの期間は、先輩のサポートや雑務に追われます。繁忙期の店舗になると以下の事例のように手荒れや腰痛といった体調の問題がおき、中には離職を余儀なくされるスタッフも少なくありません。
●手荒れが冬だけでなく夏でもひどく、手だけ肌の色はいつも日焼けしているような褐色で、指紋に沿ってひび割れ。そこには、短い毛が刺さったりして、常に出血していました。
●シャンプーをするのに中腰姿勢が多いため、腰が悪くなり、ある日動けなくなって病院へ搬送。それ以来、腰痛持ちで、未だに病院に通院することが…。
(引用: 美容~アシスタント時代について | ラララとらばーゆ総研100人調査)
雇用・収入の安定や将来性
理美容全体の業界で見ると、2022年は過去最高の330万円となっています。一方で社会人全体の平均年収は458万円。これは年収ベースで約120万円も下回る数値です。( 国税庁「令和4年分 民間給与統計実態調査」 )
結婚をして子供も育てていくことを希望する場合、一人の収入では家計を十分に支えていくことが難しい金額です。
また、「基本給+歩合」や「完全歩合制」の働き方が多く、十分な指名客や顧客を獲得できない場合、収入が不安定にならざるを得ないという、美容業界ならではの働き方に起因する「収入面への不安」も大きな原因です。
離職理由の24.5%が「給与に対する不安・不満」であることも、事実として無視はできません。
アシスタント期間でやりがいを感じられない
美容業界においてアシスタントという見習い期間は、平均1~3年と非常に長くなっています。この期間の離職では、以下の理由が大きなものになります。
- 給与が低いが、練習用の教材や道具費がかさみ生活を圧迫する
- 勤務時間が長く、ワークライフバランスが仕事に傾くため、余暇でリフレッシュをすることが難しい
- 明確なキャリアパスが提示されていないことが多いため、具体的にどうなればデビューできるのか、いつお客様のカットをできるのか不安を抱えている
- アシスタント期間で離職をすると実績がないのに退職をしているので、転職時に不利になり、美容師として働くこと自体をあきらめざるを得ない
美容師からの職業変化は、美容系職業が約40%
美容師を離職した後の美容系業種への職業変化は約40%となっています。
エステティシャン | ネイリスト | リラクゼーションサロン | アイビューティー | メイクアップアーティスト |
47.5% | 37.7% | 38% | 29.2% | 23.1% |
一方で、美容業界を6割以上の人が離れているという結果が出ています。
●別の職業について働いたことはない 41.6% ●この中に当てはまる職業はない 19.8% |
参考: ホットペッパービューティー【美容就業実態調査2023】
働き続けてもらうには、美容サロンの相場を意識するだけでなく、上記の「美容関連サロン」の勤務体系や給与面を比較し、改善していく必要があることが分かります。
美容師を続けるが、そのサロンを辞める理由
美容師自体は続けているものの、サロン固有の理由で転職をする人はどのような理由があるのでしょう。
給与体系・評価制度
給与・評価に関わる部分では、以下のような理由が挙げられています。
・求める生活水準に対して不足しているから | 43% |
・労働時間と見合わないから | 41.5% |
この2点が全経験年数で最も多く、次いで
・責任やポジションに見合わないから | 26.5% |
・仕事の成果がきちんと反映されていないから | 24.5% |
・他社に比べて低いから | 23.5% |
・自分の能力が評価されていないから | 23% |
となっています。
給与水準が低いことに加えて、働くことに対する正当な評価がされていない、成果や実績が給与に反映されていない等が主な原因です。
勤務時間
美容師の勤務時間は、 厚生労働省 によると平均で175時間/月であり、1日約9時間程度です。さらに、アシスタントはスタイリストデビューするための練習時間もあります。サロンによって練習時間は異なるものの、例えば業務開始前の早朝練習で1時間、業務終了後の2時間などです。
また、休日についても月平均5.5日( 厚生労働省 )と、隔週で週休二日制になっている実態があります。有給休暇は雇用関係であれば発生し、勤続経験が長くなるほど増えますが、その分指名客が入るようになり、取得しづらい現状があります。
人間関係
美容師は男女比が2:8( 国勢調査 )と、女性が圧倒的に多い職場になります。一方で女性の美容室管理職は20.7%しかいません。女性が8割の職場を男性管理職が管理しているという実態があります。
女の転職typeの調査によると、「人間関係を理由に離職を考えたことがあり実際に転職した人」が48.9%、「考えたことがあるが転職はしなかった人」が29.5%と、「人間関係」は女性の多い職場で最も離職に繋がる要因になっています。
同調査で、具体的に不満を感じる相手としては、「上司」が圧倒的に多く57.0%。次いで「先輩」「同僚」となっています。
(出典: 女の転職type )
上記の不満を感じた相手の、何に不満を感じているかという調査においては、「信頼できない」が52.3%と最も多く、「尊敬できない」「価値観・性格が合わない」「ハラスメントを感じる」が続きます。
先にも触れた通り、8割が女性の職場を男性管理職がまとめている実態があるため、女性が安心して働ける職場づくりとして、「ハラスメント」にも特に注意が必要です。
(出典: 女の転職type )
サロンの雰囲気・テイスト
国際文化理容美容専門学校 のサイトでは、サロン経営の方向性において以下の4つのタイプがあるとしています。
A低価格化
低価格店の象徴ともいえるのが「クイックカット」とも称されるヘアカット専門店。消費者にとっては必要なときに必要な分だけサービスを受けられる店舗経営です。
従業員にとっては、特定の技術に特化したスキルが修得できる反面、やりたい方向性が明確にある場合は、その経験が全くできないサロンタイプと言えるでしょう。
B高級化・ファッション重視
ブランド力のある有名店やカリスマ美容師を多く抱えるサロン激戦区の店舗では、サービスメニューも高価格です。また、サービスクオリティに加え、技術や知識、ファッション、人間性なども総合的に求められます。
美容師にとっては、アシスタント期間が長くなる傾向がある一方で、スタイリストになれば高収入が見込まれますし、まさにプロとして勝負ができるサロンです。
C複合化・総合サービス化
エステティックなどの美容関連業界のサービス、ペットケアまでさまざまな業種と連携をしてサービスを提供していくスタイルです。
個人店と企業型サロンとで提供できるサービスにも違いがあり、これからさらに伸びていく業態ともいえるでしょう。
D家庭内生産
家庭でセルフヘアケアをするためのアイテムは、コンビニやスーパー、ドラッグストアでも気軽に買える時代になりました。
共働き世帯も増えており、ホームヘアケアは家族との楽しい時間にもなっています。顧客のニーズを掴み、サロンに呼び戻していく努力が必要になるでしょう。
このように美容サロンといってもさまざまな方向性があるため、スタッフがどういった希望やスキルの修得を思い描いて入社してきたかを理解することは、離職対策としても重要な視点になります。
「辞める」と言われた後に、オーナーがするべきこと
「en転職」の退職者1500人に実施したアンケートでは、2人に1人が退職に繋がった「本音」を言っていないという結果があります。
(出典:en人事のミカタ「 en人事のミカタ「転職理由(退職理由)の ホンネとタテマエ」 )
退職意向者のホンネをつかむ
本音を聞き出すには、「辞めたい」という気持ちを真正面から受け止め、「改善に役立てたいので率直な意見を聞かせてください」といった、真摯な対応をすることが重要です。間違っても、「なぜ辞めるんだ! 」等の対応は厳禁です。心を閉ざし、建前を述べられるだけに終わってしまいます。
悩みを”早急に”解決する
ホンネを引き出せた際に、その理由が「人間関係」であった場合は、早急に「異動」などの具体的な対処をしましょう。
ポイントは「早急な対応」です。「後で何とかする」といった対応は、かえって不信感をあおるだけですので注意しましょう。
退職理由を解消する条件提示はできるだけ避ける
意外に思われるかもしれませんが、「退職理由を解消する条件提示を行なっているか」という質問に対し、「特に条件を提示していない」企業が57%と、半数以上になりました。
(出典: en人事のミカタ「慰留対象になりやすいのは、優秀な若手・役職なし・営業職人材!」 )
「悪しき前例になる」「条件提示によって退職慰留ができる人材は、また何かをきっかけに退職しようとする」といった理由によるものです。
辞めることを引き留められずとも、会社改善に繋げる
「en人事のミカタ」によると、退職慰留の成功率は「1%~10%」が最も多く28%でした。10人に1人は引き留めが出来たという結果になっています。
(出典: 「en人事のミカタ」 )
退職慰留が難しい場合は、今後の離職を防ぐための改善策に繋げましょう。
近年は「エグジットインタビュー」という手法が取られています。個人店等では難しいかもしれませんが、人事部など直属の上司にあたらない人が対応できる場合には、そのような「第三者」が退職手続きが完了した後に、改めて面談によるヒアリングを行うことを言います。
「残念ですが退職は認めます。今回の退職理由とは別に」と前置きをした上で、人間関係やマネジメント、人事・評価制度、移籍先などのデータを集めます。
これらのデータを分析することで、店舗に合わない人材の適性も見えてくることがあるので、今後の採用時の基準とすれば、定着率UPにも繋がるでしょう。
(参考: en人事のミカタ「退職慰留が難しい理由は、ホンネが聞けてないから」 )
そもそも「辞めたい」と言われないサロンにするために
辞める意向を伝えられてからの退職慰留はあまり効果的ではありません。すぐに全部は改善できなくても、長期的なプランでスタッフが長く働き続けたくなる仕組みを作っていきましょう。
給与・評価制度の改善
漫然と過ごしていたり、人によって評価が分かれているように感じたりすると、不平・不満が出やすくなり、プロとして競争関係にある美容師同士の人間関係の悪化も招きかねません。
個々人と店舗全体で意欲に繋がるよう、業績に応じた賞与を検討することと、定量的にはかることの出来る評価制度を作成して、それに基づいて全員がそれぞれのステップアップを目指せる給与制度を設けることが重要です。
ランク制度を整備
※キャリアパスプランを明確にし、ランクやキャリア、個人の希望に応じて成長できるものにする
例)
他にも以下のような方法で、少ないコストで個人・店舗全体の意欲UPに繋げることができます。
- ランクアップに試験制度の導入
- 店舗報奨金の導入
- 年間表彰
仕事とプライベートを両立しやすい働き方
若年層に対しては、完全週休二日制の導入や、休憩時間をしっかりと取らせるなど、心身共に健康で長く働き続けられる環境づくりが重要です。
また、美容師は女性が多い業界です。出産を機に離職した女性美容師はスタイリストが73%となっています。
引用:ママ美容師復職支援MAMASTA!|ママ美容師の復職『1000人アンケート』集計結果」
女性のライフプラン・ライフステージに合わせて、働き方を柔軟に選べる制度を充実させることで、技術や経験があるママ美容師の復職を進めることにも繋がります。企業としても即戦力であり、収益化に早く結びつくので、復職しやすい環境を整えていきたいところです。
設備などのハード面での対策
●託児所を併設する ●ママ美容師のみの店舗を設ける (事例) 子育て中のスタッフと単身者が半々の店舗では、単身者の負担が大きくなり不満が出た。思い切って子育て中で、一定以上のスキルのあるスタッフ(教育の必要がなく、全員が採用費に対してすぐに収益化できる即戦力)のみで運営する店舗を設けた。 グループ内の他店舗では、営業時間が9時~19時で土日も営業しているのに対し、ママサロンは9時~17時の営業で日曜は定休日。スタッフ同士もお互い様で協力し合うことができ、顧客も事情を勘案して、指名スタッフの出勤日を確認して来店してくれるようになった。 結果として、営業時間が短いにもかかわらず、生産性が最も高い店舗となっている。 参考: 「PROSOL山本店の取り組み」 |
勤務体系などのソフト面での対策
●パートタイム勤務(土日祝日休み、時短勤務) ●面貸し契約(店舗の一部を時短勤務のスタッフ専用とする等) ●訪問美容師などのサービス(スマホ等で予約が入った分だけ施術しに行く働き方) ●復職前研修 ※離職期間が長くなると復職にあたって技術の復習をしたいという声への対応 ●新規客やヘアスタイルにこだわりの無い顧客を担当 ※指名客のみで固めてしまうと、子どもの体調などに対応が難しくなるため |
手荒れ・腰痛などに対する対策
アシスタントが頻回なシャンプーで酷い手荒れや腰痛になり、離職に繋がっているケースも少なくありません。手が荒れにくい溶剤の選定やハンドケアアイテムの設置。腰痛になりにくい姿勢の指導やマシンの導入などで、体調を崩さずに働ける環境づくりをしていきましょう。
1on1・面談で人間関係に悩まない組織づくり
1on1や個人面談を定期的に設けることは、離職を防ぐ上で非常に有効です。
しかし、上司と部下の1on1は緊張感を与え、本音を話してくれない場合もあります。 臨床心理士 三瓶真理子 氏によると、1on1を実施する際には、以下の3つがポイントとなるようです。
- 安心感を与える
- 話を聴く(傾聴)
- 質問をする
事前に「面談に要する時間」「目的」を伝え、面談によって不利になることはないこと、働きやすい環境を作り、会社としてできるサポートをしていくためであることを伝えることで、安心して面談に臨める環境を作ります。
スタッフが話している間は、意見を挟まずに聞き役に徹しましょう。
また、「どんな答えでも大丈夫」「○○さんの意見を聞かせて欲しい」といった表現で、自由にスタッフが話せる土俵を作った上で、「この目標を達成できたときが10として、今どの辺だと思いますか? 」等と、簡単なスケールでお互いの感覚をすり合わせていくことも有効です。
会社・サロンの方向性をスタッフと一緒に創る
組織改革コンサルタントの森田満昭 氏によると、組織変革・経営の事業推進には、会社の意向も汲み取りながらポジティブに捉えて仕事を意欲的に進める「キーパーソン」が重要です。
美容室で言えば、スタッフ間で何か問題が起きたとき、「話し合おうよ」とお互いの気持ちを思いやりながら声をかけたり、サロンの問題に気づいたときに経営者の視点も理解したりしながら、周囲を巻き込み自ら動いていく人材です。
このようなキーパーソンに積極的に協力を仰ぎ、スタッフが自発的に始めた勉強会や話し合いなどに手当を出すなどして、フォーマルな会としていくと、自然と参加率や参加意識が高まります。そこで話し合われた内容は、全員が意欲的に取り組んでくれるようになるでしょう。スタッフ全員を巻き込みながら、サロンの方向性を創りあげていくことで離職への対策にも繋がります。
その際、一緒になって問題点をネガティブに発言するようでは逆効果になるので、キーパーソンは慎重に見極めなければなりません。
採用する人材要件の見直し
前章で解説した方法でホンネを聞き出した際に、その理由が「人間関係」であった場合は、その人材がサロンとミスマッチを起こしていた可能性もあります。
離職者の傾向や人材適性を把握・分析することで、採用時の人材要件の見直しも合わせて行いましょう。
以下の記事で、人材採用をする際、自社で活躍してくれる採用ターゲットの決め方や採用方法を解説しています。
まとめ
離職の多い業界ではありますが、中には経営の努力で改善できることも多々あります。全ての離職を防ぐことはできませんが、もったいない離職を防ぐためには以下のポイントをおさえることが大切です。
- 美容師が辞める理由として多い理由を理解し、実際にそれが自社で起きているか確認する
- その中で、自社で解決できる理由から改善していく
- 「辞める」と言われた際には、無理に引き止めず、本音を理解しながら対処していく
- そもそも辞めたいと言われないサロンにするため、働き方や組織文化、採用戦略から改善していく
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部