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鍼灸師を採用するためのポイントは?将来的な採用活動の行方についても解説!

最近は医療機関が鍼灸を取り入れたり、美容サロンが美容鍼に対応できる鍼灸師を採用したりするケースがでてきました。

そのため、現在は鍼灸師をスムーズに採用できていても、将来的に採用競争が激しくなり鍼灸師の採用が難しくなる可能性があります。

そこで本記事では、鍼灸師の採用活動における現状や採用のポイント、将来的な鍼灸師採用の行方について詳しく解説します。鍼灸師の採用について不安を抱えている場合は、ぜひご覧ください。

鍼灸師の採用活動における現状

鍼灸師ははり師・きゅう師の2つの国家資格からなる職種です。日本標準職業分類では、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師と同じく「その他の保健医療従事者」に分類されます。

その他の保健医療従事者の有効求人倍率

その他の保健医療従事者の有料求人倍率

(「 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) / 一般職業紹介状況 / ~令和5年3月【旧様式】 」をもとに作図)

令和4年における「その他の保健医療従事者」の有効求人倍率は、1.35倍でした。全職業の平均を上回る値ですが、専門的・技術的職業のなかでは比較的低い倍率です。

また過去の推移をみると、2019年のコロナ禍以降に有効求人倍率が低下していることがわかります。しかし今後は、コロナ禍の収束とともに、有効求人倍率が現状の1.35倍からコロナ禍以前の1.7倍以上の値まで戻る可能性があります。有効求人倍率が高くなると、採用競争が激しくなり採用の難易度も上がるでしょう。

次に、より正確な有効求人倍率を把握するために、はり師・きゅう師に絞ったデータも見ていきましょう。

はり師・きゅう師の有効求人倍率

厚生労働省運営のjobtag (※2023年9月時点)で調べると、はり師・きゅう師の有効求人倍率は0.82倍と1倍を下回る状況です。そのため、求人に対して求職者の数が余っていることになります。

鍼灸師は、現在のところは比較的採用しやすい職業といえます。しかし、施術所の数は増加傾向にあるため、今後は人材獲得競争が激しくなり、採用難になる恐れがあります。

平成30年から令和2年にかけての施術所数の増加にいたっては、有効求人倍率3.6倍の柔道整復師を大きく上回っている点もポイントです。

施術所数が増加するほど、はり師・きゅう師の採用が難しくなる可能性があるため、今後も注視する必要があるでしょう。

以降では鍼灸師の採用が難しいと感じる鍼灸院オーナーや担当者に向けて、鍼灸師を採用するためのポイントを解説します。

鍼灸師が利用する採用媒体での掲載

鍼灸師の採用を有利に進めるためには、まずは鍼灸師によく利用される媒体で採用活動を進めるようにしましょう。マイナビの転職動向調査2023によると、鍼灸師が属するサービス職では、ハローワークや転職サイトを利用する求職者が多いです。

鍼灸師が利用する採用媒体

次の記事では、ハローワークや転職サイトをはじめとした各採用媒体のメリットや特徴について解説しているので、参考にしてくだささい。

「求人 媒体 比較」の記事

採用したい鍼灸師とのマッチング率を上げる

鍼灸施術には多様なあり方があり、対応できる症状もさまざまです。採用した鍼灸師が自社の提供する施術を学ぼうとする意欲が低かったり、取り扱うことの多い症状に対応できなかったりすると、早期離職につながる恐れがあります。

そのため、客層や扱える症状、施術メニュー、医学理論を求職者に詳しく伝えて、採用したい鍼灸師とのマッチング率を上げることが大切です。

客層・扱える症状を詳しく伝える

扱える症状が多岐にわたる点が鍼灸の特徴。肩こりや腰痛などの運動器の疾患だけではなく、内科や精神疾患、難治性疾患に対応する鍼灸院も存在します。

症状によっては、鍼灸師の得意・不得意があるため、客層や対応症状について求人票に掲載して、求職者が自分に適した鍼灸院であるかどうかを判断できるようにしましょう。

求人票への記載例

肩こりや腰痛などの運動器以外の疾患にも対応しており、内科疾患や自律神経まで整えることを目指しています。

女性向け鍼灸では婦人科疾患の治療に美容鍼を併用し、身体の中から美しく健康になって頂けるような施術を提供しています。

身体を治すだけではなく、心も健康にできる治療が当院で提供する施術の特徴です。技術力の向上を徹底し、地域で一番の鍼灸院を目指します。

扱う施術メニューや理論を詳しく伝える

鍼灸院が扱う施術メニューは幅広く、スポーツ鍼灸や美容鍼、パルス鍼(通電療法)などさまざまです。また鍼灸整骨院の場合、骨盤矯正や姿勢矯正などを鍼灸師が担当する場合もあります。

鍼灸師に対応してもらいたい施術内容を求人票に明記して、自社の求める業務内容を遂行できる鍼灸師を採用しましょう。

また、特定の医学理論に基づいて施術を行っている場合は、それに触れておくこともおすすめです。たとえばトリガーポイント療法や経絡治療、井穴刺絡療法などの施術手法を具体的に掲載しておくと、それに興味のある鍼灸師が求人に応募してくれる可能性があります。

求人票への記載例

硬結や反応点、トリガーポイントを基軸にした現代鍼灸を中心に行っています。ただし、症状によっては独自の特効穴を用いる場合もあります。東洋医学的な視点で施術も行っており、経絡治療も得意な鍼灸院です。

新卒を採用する

新卒を採用する場合は、まずは専門学校とのつながりを作っておきましょう。さらに鍼灸専門学校の卒業生は年齢層が高い点を意識して、新卒を採用するようにしましょう。

専門学校とのつながりを作る

新卒を採用する場合は、鍼灸師の専門学校とのつながりを作っておくことが大切です。専門学校の公式サイトには、採用担当者向けのページが準備されているので、そこから問い合わせるとよいでしょう。

また、新卒者向けの就職ガイダンスに参加したり、自社サイトに新卒採用ページを作ったりするのもおすすめです。

新卒の年齢層が高いことを意識する

鍼灸専門学校の卒業生は、比較的年齢層が高い人が多い点も特徴です。 東洋鍼灸専門学校 への入学生の平均年齢を確認すると、40.5歳と比較的年齢が高いこともわかりました。

2_東洋鍼灸専門学校への入学生の平均年齢

40代以降に鍼灸師を目指す人も多いため、採用する場合も年齢層が高い点を意識するとよいでしょう。たとえば年齢制限がないことをアピールすると、年齢層の高い新卒の鍼灸師を採用しやすくなります。または、40代以降のスタッフへのインタビューを掲載するのもおすすめです。

さらにセカンドキャリアで鍼灸師になった人が多い点も特徴です。セカンドキャリアで鍼灸師を目指す人は、鍼灸師になる目的や鍼灸に対するこだわりが明確な場合が多いです。

採用の際には、求職者の考え方や思いに耳を傾け、自社の方針に合っているのかを確認するとよいでしょう。実際にセカンドキャリアとして鍼灸師を選んだ人に話を伺うと、次のような鍼灸への考え方が聞かれました。

僕のイメージですが、トレーナーの仕事って、健康な人を向上させる、ゼロからプラスにしていく感じで、鍼灸師の仕事は痛みのあるマイナスからゼロに持っていく感じなんです。どちらも体験してみて、僕はマイナスからゼロにする方がおもしろかったんですよね。痛い、つらい、というところから、普通の生活ができるようにアプローチして結果を出すことに、充実感を感じられたんです。

引用元: モアリジョブ

僕は東洋医学メインの治療をしているのですが、現代医学の主流である西洋医学とは別次元の理論で動いているんですよね。西洋医学のパラダイムで考えるとあり得ないようなことが起こるので、それが本当に面白くて。自分でも「なんでこうなるんだろう」というのを楽しみつつ、患者さんにもそれを伝えて「一緒に楽しみましょう」という感じで治療しています。

引用元: モアリジョブ

鍼灸師としてのスタートは50代になってからと人より遅いのですが、それは決してハンディではありません。成長期、思春期、仕事でストレスを抱える時期、更年期、親を介護する時期、それぞれの時期を経験したからこそ、一人ひとりの不調や状況に共感することができる。それは、臨床に立つうえで強みなのではないかと感じています。

引用元: モアリジョブ

セカンドキャリアの鍼灸師の採用に力を入れる一方で、他の業種と同じように若年層の新卒者をターゲットとした採用活動も重要です。治療業界のZ世代の若年層を採用するポイントについては、無料でダウンロード出来る次の資料を参考にしてください。

データから⾒るZ世代(18〜24歳)-治療業界-

鍼灸師を採用する際のポイント

ブランクのある鍼灸師や女性鍼灸師を採用すると、採用数の底上げにつながります。また採用活動を優位に進めるためにも、業界で人気のある施術メニューに携われることを求職者にアピールするのもおすすめです。

ブランクのある鍼灸師を採用する

卒業後に鍼灸師にならない人も一定数存在するため、ブランクのある鍼灸師の採用もおすすめです。「免許取得者の進路状況アンケート調査報告書」によると、約5人に1人(18%)の割合で鍼灸師が卒業後に実務についていないことがわかりました。

鍼灸師の実務に従事の有無

卒業後に実務につかなかったブランクのある鍼灸師を採用する場合は、教育制度が整っていることを強調して、ブランクがあっても働けることをアピールするとよいでしょう。

業界で人気のある施術メニューに携われることをアピールする

昨今は美容鍼やスポーツ鍼灸などの施術が人気を集めており、美容鍼灸科やスポーツ鍼灸科を設置している専門学校もあります。人気の施術に携われることをアピールすると、それを専門に学んだ鍼灸師を採用しやすくなるでしょう。

また「 データから⾒るZ世代(18〜24歳)-治療業界- 」によると、「美容鍼灸」の検索ワードがZ世代の求職者のなかで人気を集めていることがわかりました。

治療院業界で転職を希望するZ世代に人気の検索条件ワード

美容鍼灸を施術に取り入れている場合は、その点をアピールするとZ世代の若手鍼灸師を採用しやすくなるでしょう。

女性鍼灸師を募集する

現在、女性鍼灸師の数は上昇傾向にあります。「 免許取得者の進路状況

アンケート調査報告書 」によると、20代前半や40代などの一部の年齢層では、男性よりも女性の方が多いと調査報告されています。

鍼灸師における年代別の男女比

婦人科や美容系などの女性施術者が担当しやすい施術メニューを扱っている場合は、その点をアピールして女性鍼灸師の採用につなげるとよいでしょう。

今後の鍼灸師採用の行方について

今後は美容分野や医療分野での美容鍼灸の需要拡大が予想されるため、鍼灸師の採用が難しくなる可能性があります。

美容分野での需要が堅調

検索キーワード「美容鍼」のインターネット検索トレンドの動向

(検索キーワード「美容鍼」のインターネット検索トレンドの動向| Googleトレンドより引用

美容鍼が注目を浴びてインターネットで検索されはじめたのは、2007年くらいからです。それ以降は徐々に検索回数が増え、2015年くらいから急激に上昇。2023年現在に至るまで、検索回数の高い状態が維持されています。そのため、美容鍼の人気は過去から現在にかけて健在で、施術を受ける人も多いと考えられます。

美容鍼は心身の不調に根本アプローチできるため、健康維持やエイジングケアの手段として人気があるのです。

リフトアップやむくみ、くすみのケアといった美顔のニーズは多いですね。お顔には髪の毛ほどのごく細い鍼を使いますが、顔周辺は鍼の効果がより出やすい部位になります。

頭皮の健康維持も人気メニューの1つです。現代女性はストレスで頭皮が硬くなりがちですが、頭皮と顔はつながっているため、その影響が顔にも出やすくなります。頭皮に鍼を打って血流を高めることで、頭皮だけでなく顔のエイジングケアにもつながります。

引用元: モアリジョブ

鍼灸師が美容をやる目的は、体の乱れを整え、土台を整え、その上でキレイな肌に導くこと。表面だけをキレイにするのであれば、化粧品や美顔器に取って代わられるので、生き残る道はありません。逆を言えば、根本原因である土台の乱れを整えてあげられるのは、鍼灸しかいないと思っています。

引用元: モアリジョブ

美容分野での需要が堅調なことから、美容鍼に対応できる鍼灸師の採用が増えると予想されます。

医療分野での需要拡大

医療分野での鍼灸施術の需要が拡大しているため、病院やクリニックが鍼灸師を採用する機会が増える可能性があります。病院やクリニックが鍼灸師を採用する動きが出てくると、採用競争が激しくなり鍼灸師の獲得が難しくなるかもしれません。

実際に柔道整復師の療養費が減少しているのに対して、鍼灸師の療養費は増加傾向にあります。このことから、医療分野での鍼灸の需要が拡大していると考えられます。

療養費

鍼灸に理解を示す医師の数が増えると、今後はさらに病院で鍼灸治療が提供される可能性があります。鍼治療について次のようにコメントして、その有効性を主張する医師もいます。

鍼治療に取り組む医師はまだ少ないかもしれませんが、麻酔科や整形外科、神経内科の先生方から治療に関する質問や相談を受ける機会は増えてきています。特に麻酔科では、ペインコントロールの選択肢の一つとして取り入れている医師も増えてきています。

引用元: m3.com

もともと鍼灸に興味があったからこそ、西洋医学を学んだと言ってもいいですね。そもそも麻酔というのも神経をブロックして痛みをなくすものなので、考え方としては鍼灸と非常に似ています。なので、医者としての知識もすごくプラスになりました。

引用元: モアリジョブ

鍼灸師の採用が難しくなる前に、教育カリキュラムや採用プロセスを整えて、鍼灸師が魅力を感じる職場環境へと整えることも大切です。

まとめ

美容分野や医療分野の需要拡大を背景として、今後は鍼灸師の採用競争が激しくなる可能性があります。次のポイントに注意して、鍼灸師の採用活動を優位に進めましょう。

  • 採用したい鍼灸師とのマッチング率を上げるために、求人票に扱える症状や施術メニュー、施術理論について記載する
  • 新卒採用をする場合は、セカンドキャリアとして鍼灸師を選んだ人材が多い点や、年齢層が高い点を意識する
  • 美容鍼をはじめとした人気のある施術に携われることをアピールすると、若手鍼灸師を採用しやすくなる

鍼灸師の採用を成功に導くためにも、以上の点に注意して採用活動を行ってください。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。