柔道整復師が独立をする場合、次の2つのパターンが考えられます。
- 保険を扱う整骨院で開業するパターン
- 自費施術のみを提供する整骨院や整体院で開業するパターン
療養費が比較的支給されやすかった以前と比べ、現在は支給されづらくなったこともあり、自費施術を提供する柔道整復師が増えています。
神戸で接骨院を開業しました。でも保険診療に頼るのが嫌で、1年で見切りをつけました。保険診療は、いつどうなるかわからない不安が大きかったんですよね。だからその不安を取り除くにはどうしたらいいか考えて、自費診療ができる技術と経験を手に入れようと思いました。
またコンプライアンスの観点から適正な保険請求が求められる反面、保険を適用できる症状について患者様に理解を求めることが難しい側面もあります。そのため、保険をまったく扱わずに自費専門の整骨院や整体院を開業する柔道整復師も増加傾向です。
整骨院を開いていたときも自費治療とそうでないものを分けて施術を提供していたのですが、来院した患者さんからは「なんで保険が使えないの?使えるようにするのが親切なんじゃないの?」と言われることが多々あって。正しいことをしていても、そういうことを言われるのが嫌だったので、であれば100%自費治療を行う整体院にしてしまおうと思ったんです。
本記事では柔道整復師が開業するメリットやデメリットおよび、保険を扱う整骨院を開業する場合と自費を扱う整骨院や整体院で開業する場合の違いについて解説します。柔道整復師として開業しようか迷っていたり、保険と自費のどちらをメインに施術を展開しようか悩んでいたりする場合は参考にしてください。
柔道整復師が開業するメリット・デメリット
柔道整復師が開業するメリット・デメリットについて解説します。
メリット
柔道整復師が開業するメリットとして、収入を伸ばせることや自由に働けることが考えられます。
収入を伸ばせる
独立を果たすと、雇用されて働くよりも収入アップが期待できることに魅力を感じて開業する人は多いようです。株式会社Daiの調査によると、独立を検討する理由として「収入を増やしたい」と回答した人の割合が男女ともに最も多い結果でした。
雇用されて働いた場合は、企業や組織で報酬がある程度決められていて、それを上回ることはありません。一方で独立開業を果たすと、売上から経費を差し引いた金額が自分の報酬になります。収入の上限がないため、収入を伸ばすことを目的に開業する人も多いと考えらえます。
収入を大きく伸ばすためには、開業当初からスタッフを雇用して規模拡大を視野に入れることも大切です。
1人で整骨院を運営すると、顧客対応や施術、受付業務、集客などすべてを自分でカバーする必要があるため対応可能な顧客数が少なく売上の伸びしろが限られます。
そもそもお客さんをよくするには、スタッフがいないとできないので、出勤してくれるだけでもありがたいというか(笑)。いっぱいお客さんが来たいと言ってくれても、僕1人では限界がありますから。
一方で、人を雇って業務を分担できれば、より多くの顧客に対応できるため収入が増えると考えられます。
自由に働ける
開業した柔道整復師は、雇われて働くよりも自由に働けることも魅力。なかでも時間の融通が効きやすい点は、独立開業のメリットになるようです。
1カ月のなかで予約可能な日をオープンにして、その中でセラピーやレッスンを受け入れています。レッスンはお1人が手を上げてくださったら、その日に向けて人を集めます。最初から日時を決めて人を集めると、そこに向けての宣伝などの努力も必要になるんですよね。その大変さも前職で知っていますから。できるだけ自由に動けるスタンスで、お仕事を続けていきたいと思っています。
基本的には、曜日ごとに仕事内容を決めるようにしています。フリーランスになって、自分で自由に調整できるようになったので、そこはいいなと思います。
また自分が納得できる施術サービスを提供して自由に働くためには、スタッフの採用を考えることも大切です。マッサージ店のような顧客の健康に寄り添う仕事は、自分の力だけでは顧客の悩みに対応できない場合もあります。そのようなときに、自分とは違った経験やスキルを持ったスタッフを雇用すると自分に足りない部分を補えるため、顧客により良いサービスを提供しやすくなるのです。
そこで、正しい知識と運動法を熟知しているトレーナーが必要だと感じました。子どもは限界を分かっておらず、無理をしてしまうことが多い。そこをカバーできるトレーナースタッフを構築していきたいです。目先の目標としては、一緒に働いていただける方を見つけることが課題ですね。
デメリット
柔道整復師が開業した場合、整骨院や整体院、マッサージ店などの競合が多いため、準備を徹底しないと廃業のリスクがあります。新日本法規の調べによると、整骨院やマッサージ事業者の倒産件数は上昇傾向です。
とくに融資を受けて開業した場合、失敗すると借金が残る可能性があり、なかなか開業に踏み切れないケースも多いと考えられます。自由な働き方を求めつつも、リスクを抑えて開業したい場合は、できる限り低コストで開業することが大切です。
たとえば、出張で開業すると初期コストを大幅に抑えられます。
元々、鍼灸師になったのも「最終的には自分1人で完結する仕事がしたい」という思いがあったんです。素直に人の言うことがあまり聞けるタイプではなかったので(笑)、自分で考えて、責任を持ちたい気持ちが強くて。ただこのときは独立したいと思って辞めたわけではなくて、私がブラックな環境でどんどん精神的に参ってしまって辞めざるを得なくなり、残された選択肢が出張での開業だったという感じですね。
当時勤めていた鍼灸院のお客さま3名がとても心配してくれて、その方たちのお宅に出張する形でスタートし、知り合いやご家族にも施術をさせていただいていました。
柔道整復師の場合、自費専門の店舗を開業し、採算の取れる施術単価を設定したうえで、出張整体をするとコストを大幅に抑えられます。またスタッフを雇用して責任が生じることに負担を感じる場合は、施術所をシェアするのもおすすめです。
そうなんです。独りでやるのには不安もあったし、家賃負担もキツそうだったので、周りの信頼できる鍼灸師に声をかけて、一緒にやってくれそうな仲間を探しました。相談しながら進めるメリットも大きいと思って。
開業にあたっての契約や内装などの費用負担は私がしています。『代表』と名乗るからにはその辺りのことは私がしっかりしておこうと思って。あとは、営業を曜日で担当してもらって、家賃などを担当分シェアしてもらっているという形です。
採用する場合、雇用することで給料を支払う必要があり、経済的負担が生じます。そこでシェアという形態をとると、店舗の家賃を折半して負担を抑えられるうえに、雇用による負担も生じません。
柔道整復師の開業パターン
柔道整復師の開業パターンは主に保険を取り扱う場合と保険を扱わない場合の2種類です。
保険を扱う整骨院
保険を扱う整骨院を開業する場合、施術サービスを安価に提供できるため、集客がしやすいメリットがあります。その反面、保険請求の代行団体への支払いや機器類の購入にコストがかかります。
柔道整復師が保険を扱う際は、手続きや請求業務が負担になるため、保険請求代行団体や事業者に加盟してサポートを受けることが多いです。
また保険の請求内容に対して疑義が生じると、保険者から請求書が返戻されるケースもあります。返戻への対処法がわからず不安を抱える柔道整復師もいます。そのような場合は、年会費や月会費、請求手数料を払って保険代行団体に加盟してサポートを受けるのが一般的です。
さらに保険を扱う際は、「電療」や「温罨法」、「冷罨法」など決められた通りに施術を行う必要がある点も特徴です。電療専用の器械を導入するための費用を確保する必要があります。
自費施術を提供する整骨院・整体院
柔道整復師が自費施術を提供する整骨院を開業する場合、保険施術と自費施術の両方を提供する場合と、すべての施術を自費で提供する場合があります。
保険施術と自費施術の両方を提供する場合、打撲やねん挫などの急性症状は保険施術で対応して、肩こりや関節症などの慢性症状は自費施術で対応します。料金トラブルを防ぐためにも、保険施術と自費施術の料金体系を明確にすることが大切です。
一方ですべて自費で施術サービスを提供する場合は、整体院として開業するケースも多いです。この場合、ベッド1台を準備して1人で開業することできるため、コストを大幅に縮小できます。
しかし施術費用を保険でカバーできないため、施術単価が高額になりがちです。単価が高額で集客の難易度が高いため、マーケティングを意識した経営が求められます。
柔道整復師が開業を成功させるためのポイント
柔道整復師が開業を成功させるためのポイントは、次のとおりです。
- コミュニケーション力を磨く
- 施術スキルを高める
- マーケティングを学ぶ
- 保険システムを理解する
- 開業資金を準備する
- チームを作る
それぞれについて解説します。
コミュニケーション力を磨く
整骨院で施術をする前にはカウンセリングを行います。ヒアリングや説明など、顧客とコミュニケーションをとる機会が多いので、コミュニケーション力が必要です。
他にもコミュニケーションの仕方を指導していますが、これは伝えることが非常に難しくて…。密接に関わり合い繋がりが深い地方で開業していることもあり、コミュニケーションについては徹底的にレベルを上げるよう指導しています。今後も院を経営していくために大事なことだと感じています。
カウンセリングに限らず、誰とでも雑談や打ち解けた会話ができる能力も求められます。雑談や何気ない会話を通して顧客との信頼関係を築けると、口コミや紹介が増える可能性があります。
問診だけじゃなく、コミュニケーションが取れないと、周りの人に紹介もしてもらえないですよね。今でこそYouTubeやSNSでたくさんの人に知ってもらえますが、そもそも接骨院はローカルビジネスなので、口コミや紹介が集客の肝になります。
どんな仕事でもコミュニケーションは大切ですが、ヘルスケアのお仕事では特に大切になると思います。これからこの業界を目指す人は、誰とでもいろんな会話ができるようにしておくことをオススメします!
施術スキルを高める
開業した直後は、技術力不足で思うように集客できないこともあります。そのため、コツコツと勉強を続けて施術スキルを高めることが大切です。
開業当初は、やはり技術力が未熟なために十分な施術ができていなかったのでしょうか。思うように集客が見込めず、少々悩みましたね。
技術面も集客面も急激に上達、改善するような秘策はないと思っています。しかも、運悪くコロナ禍が重なってきたこともあったので、耐えてこれまでやってきたことを継続してきました。
チラシでの集客を続けつつ、技術面も地道にコツコツ勉強して自分に足りないところを補うように心がけていました。そのときの志を忘れないよう、今でも月一回は全国各地で行われている技術セミナーで学び続けています。
引用:モアリジョブ|颯整体院 代表 石田一平さん
施術スキルが高いと自然と口コミが集まり、新規顧客を集客しやすくなります。
それでも自然とお客様から口コミを書いて下さるケースが多く、施術でお客様のニーズをきちんと満たすことができれば、こちらからお願いしなくても自然と口コミを書いて下さったり、SNSなどで発信して下さるんだと分かりました。
そこで、着実に技術を磨いてきた僕のこれまでの行動は間違ってなかったんだと大きな自信につながりましたね。それにお客様が感じたことをありのままに書いて下さった口コミは、他院と比べてとても具体的に書かれているため、新たなお客様の来店にもつながりやすく日々ありがたみを感じています。
引用:モアリジョブ|TSL とがし整体Labo 富樫こうちさん
自然と口コミが広がる状況を作り出せると、広告費をかけずに集客できるため整骨院経営も軌道に乗りやすくなるでしょう。
マーケティングを学ぶ
マーケティングとは商品やサービスを販売するための仕組みづくりです。柔道整復師の場合は、新規集客とリピーター獲得を意識すると経営が安定します。
新規集客をするためには、マーケティングの知識が欠かせません。独立してすぐにマーケティングを実践して集客するためにも、開業前に学んでおくことも大切です。
独立してすぐに営業する方もいらっしゃいますが、やはり広報面の準備をしっかり固めてからスタートする必要はあると思います。集客ができなければ、何もできませんから。
しかし、ただ広告に力を入れるといっても、広告費ばかり嵩んで集客につながらなければ意味がありません。広告を適当にすると、広告費の無駄打ちになってしまいます。
また代替医療分野のマーケティング戦略で重要なことは、ポジショニングによる他店との差別化です。
理由はいくつかあるのですが、一番大きいのはそのポジションが空いているかどうかでした。出張での経営がうまくいかない間、時間だけはたくさんあったので、本はたくさん読んで、マーケティングについても学びました。そこで学んだのがポジショニングについてです。
京都には有名な鍼灸師の先生も大勢いらっしゃいますし、若手の私は差別化しないと経営を立ちいかせるのは困難だと思って、ポジションがあいていたお灸の専門院にすることにしました。メニューを増やすと複雑化するし、そもそもできないことも多いので、お灸のみにしぼったんです。その後はSNSなども活用しながら徐々に集客できるようになっていったんです。
とくに昨今は整骨院や鍼灸院などの代替医療分野では競合の増加が顕著なため、マーケティングを成功させるためには差別化戦略が重要なウェイトを占めます。
整骨院がマーケティングに取り組む際には、柔道整復師法や景品表示法、医師法・医療法などの法律を守って広告する必要がある点も押さえておきましょう。次の記事では、整骨院における集客のポイントと広告に関係する法律について詳しく解説しているので、参考にしてください。
保険システムを理解する
柔道整復師として保険を扱う場合、開業前に受領委任払いのシステムを理解しておきましょう。受領委任払いとは、柔道整復師が患者に代わって療養費を申請することで、医療機関とは異なる保険のシステムです。
本来であれば、柔道整復師から施術を受けた患者は、施術料の全額を柔道整復師に支払い、その後保険組合に申請して支払った施術料の払い戻しを受けます。このシステムは償還払いと呼ばれます。
しかし償還払いの場合、患者が経済的に負担がかかったり、手続きに時間がかかったりするデメリットがあるため受領委任払いが導入されました。
▼償還払い
▼受領委任払い
また医療機関の保険システムとは異なり、点数制ではない点も特徴です。1~3部位と施術箇所の数によって請求できる療法費が変わります。
保険を適用できる症状も、骨折や脱臼、打撲、捻挫、挫傷のみに限定されていて、肩こりや慢性腰痛、関節症などの症状には適用できません。柔道整復師が扱う保険の仕組みやルールを理解して、適切に療養費を請求しましょう。
開業資金を準備する
開業するためには、店舗の賃貸料や設備費、運転資金などを賄うために開業資金を準備する必要があります。保険を扱う場合と、保険を扱わない場合で開業資金の金額には傾向があります。
保険を扱う整骨院を開業する場合
保険を扱う整骨院を開業する場合、施術機器や設備費がかかるため多額の費用がかかる傾向にあります。整骨院で提供する施術内容は次のように決められており、症状に応じてルール通りに施術しないと療養費を加算できない仕組みです。
- 冷罨法
- 温罨法
- 電療
- 後療
以上のうち電療や温罨法を実施する際は、低周波治療器やマイクロ波などの施術機器を利用するのが一般的です。施術機器を中古で購入すると数十万円程度、新しく購入すると数百万円必要な場合もあります。
多額の開業資金を自己資金で賄えない場合は、日本政策金融公庫や地方銀行、信用金庫から融資を受けて開業します。
保険を扱わない整骨院を開業する場合
保険を扱わない整骨院を開業する場合、施術方法について保険のルールに従う必要がないため施術機器を使わずに手技のみで施術をすることも可能です。そのため保険を扱わない場合、施術機器を導入せずに開業する柔道整復師も多いです。この場合、整骨院ではなく整体院として開業するケースも見られます。
さらにスタッフを雇わずに1人で独立する場合は、ベッド1台でも営業できるため、テナントのスペースが狭くても開業できる点も特徴です。
機器の導入費を省いたり、店舗の家賃を低く抑えたりできるため、保険を扱う整骨院よりも開業費用を安く抑えられます。しかし施術単価が高くなるため、開業当初から集客を工夫したり、広告費をかけたりしないと売上が伸びない可能性があります。
チームを作る
整骨院で売上を伸ばしたい場合は、スタッフを採用してチーム作りをすることも大切です。
整骨院の売上を伸ばすためには保険施術だけではなく、自費の施術メニューを充実させることが大切です。自費の施術メニューには保険が適用されない分、顧客が支払う料金が高額になるため、マーケティングによる集客が欠かせません。
高額なサービスに対しては、顧客側も整骨院選びに慎重になるため、マーケティングによって自院をアピールすることが大切です。
開業当初は1人でもマーケティングを実践できますが、売上の拡大にともない、やることが増えて手が回らなくなることもあります。そのような場合は、施術担当のスタッフを採用して院長がマーケティングを実施したり、ブログやSNSの運用経験のあるスタッフを雇ってマーケティングをスタッフに任せたりする必要があります。
チームとしてマーケティングに取り組むことで、大きな成果が期待できるケースもあります。
僕がプロデュースしたヘッドスパ専門店はチームとして動いているんです。だから例えば、各々たかが知れている広告費でも、チームとしてそれを動かしたら、より大きな効果を生み出すことができます。
多店舗展開をして売上拡大を図る場合も、チーム作りは重要な要素の1つです。
1つの院なら商業範囲半径1~2km程度。でも各駅に直営店が1つあれば、半径1~2kmの円がどんどんつながって大きな円になります。そうできるように27店舗全てでチームだという認識を持つためにも、直営店というかたちで展開しているんです。
(中略)
経営について言えば、やっぱり人材が一番大事。一緒に働いてくれるスタッフをいかに大切にできるかが、店舗の成果や院長としての自己成長にもつながると思います。
柔道整復師が整骨院を開業するまでの流れ
柔道整復師が整骨院を開業するためには、まずは実務経験を積み、施術管理者講習会を受けて施術管理者の要件を満たす必要があります。その後、テナント選びや内装工事、設備備品の購入などの準備を進め、必要な手続きを終えると開業できます。
実務経験を積む
整骨院を開業するためには、決められた期間で実務経験を積んで施術管理者の届出を行う必要があります。2024年4月以降に届出をする場合は、3年間の実務経験が必要です。
実務経験を積める勤務先としては、整骨院や医療機関が該当します。ただし医療機関の実務経験が認められる期間は2年間までで、残りの1年間は整骨院や接骨院などの柔道整復師の施術所で実務経験を積む必要があります。
施術管理者研修を受ける
実務経験を積んだ後は、施術管理者研修を受ける必要があります。同研修は合計16時間の講習が2日間にわたって実施されます。
【研修の内容】
- 職業倫理について
- 適切な保険請求
- 適切な施術所管理
- 安全な臨床
開業の準備を進める
柔道整復師が開業する場合、はじめに整骨院のコンセプトを考えることが大切です。まずはターゲットを決め、誰にどのようなサービスを提供するのかを考えましょう。
コンセプトを決めたら、事業計画書を作成して資金の調達方法を決めます。金融機関から融資を受ける場合は、自己資金の準備も必要です。日本政策金融公庫の調査をもとに、2023年における調達資金の平均額を調達先別に挙げると次のとおりです。
▼開業時の資金調達額(平均)
調達先 |
金額 |
全体に占める割合 |
---|---|---|
金融機関などからの借り入れ |
768万円 |
65.1% |
自己資金 |
280万円 |
23.8% |
配偶者・親・兄弟・親戚 |
50万円 |
4.2% |
友人・知人など |
37万円 |
3.1% |
その他 |
45万円 |
3.8% |
合計 |
1180万円 |
金融機関から借り入れる金額が、開業資金のなかで占める割合は約65%です。自己資金は開業資金の3割必要とも言われているように、開業資金を借りるためには一定の自己資金が求められます。開業を目指す場合は、勤務している段階で資金を貯めるように心がけましょう。
柔道整復師が整骨院を開業するために必要な手続き
柔道整復師が整骨院を開業するためには、保健所への届出や税務署への届出、保険を取り扱うための届出が必要です。なお柔道整復師が整体院を開業する場合は、税務署に届けるだけで開業できます。
保険所への届出
柔道整復師が施術所を開業したら、10日以内に以下の書類を管轄の保健所へ提出する必要があります。
【保健所に届出を行う際に必要な書類】
- 施術所開設届
- 柔道整復師免許の原本と写し
- 施術所の平面図
- 最寄駅からの案内地図
- 法人の場合は定款(写し)と登記簿謄本
- 施術所が賃貸の場合は賃貸契約書の写し
整骨院は届出制であるため、開業前に届出するのではなく開業後に届出をする点がポイントです。
▼柔道整復師の施術所開設届
引用元:熊本市ホームページ
施術所開設届は、各保健所の窓口に問い合わせたり、ホームページからダウンロードしたりすると入手できます。
税務署への届出
税務署には以下の開業届を提出する必要があります。
▼開業届
引用元:国税局
開業届で青色申告の利用を申請すると、年間の所得金額から最高で65万円を控除できるため節税効果があります。提出の期限は1か月以内で、整骨院を開業した納税地を所管する税務署に提出します。
地方厚生局への届出
柔道整復師が受領委任払いを利用して施術を提供する場合は、地方厚生局と受領委任契約を結ぶ必要があります。対象となる保険は、社会保険(協会けんぽ、健保組合など)、国保、後期高齢者医療保険、船員保険、退職者国保です。届出の際は、下記の書類を提出する必要があります。
- 確約書(様式第1号)
- 柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(様式第2号)
- 施術管理者選任証明(開設者と施術管理者が違う場合)
- 柔道整復施術療養費の受領委任の取扱いに係る申し出(同意書)(様式2号の2)
- 誓約書(様式2号の3)
- 欠格事由非該当届出書
- 実務経験期間証明書
上記は地域ごとに異なるため、正確な提出書類を知りたい場合は管轄の厚生局に問い合わせましょう。各書式は地方厚生局のホームページからダウンロードすることも可能です。
共済組合・防衛省への届け出
地方厚生局と結ぶ受領委任契約には、公務員の関係者が加盟する共済組合連盟や地方公務員共済組合協議会、防衛省は含まれていません。そのため、共済組合や防衛省への届出は別途行う必要があります。
共済組合に届出を行うためには、共済組合連盟から発行を受けた所定の書式に記入して、柔道整復師免許所のコピーと一緒に提出します。
共済組合の連絡先は次のとおりです。
▼一般社団法人 共済組合連盟への連絡先
一般社団法人 共済組合連盟 〒102-0071 東京都千代田区富士見1-7-5 共済ビル TEL 03-3261-0073 |
また地方公務員の保険を扱う場合は、地方公務員共済組合協議会に届け出る必要があります。
防衛省職員や自衛官の保険を扱う場合は、防衛省に届け出ます。必要な書類は、次のとおりです。
- 【様式第1】柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る申出書
- 【様式第2】遵守事項確約書
- 柔道整復師免許のコピー
様式1と2は防衛省のホームページからダウンロード可能です。
参考:柔道整復療養費の受領委任の取扱いに係る個人契約について|防衛省
労働基準監督署の届け出
柔道整復師が労災保険を扱うためには所轄の労働基準監督署に申請して、労災の指定機関として指定を受ける必要があります。
申請に必要な書類は、次に示す2パターンで異なります。
柔道整復師が複数人いる場合や開設者が法人の場合 |
柔道整復師が1人で開設者と同一人物の場合 |
---|---|
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|
各種書式は、整骨院が所属する管轄の労働局のホームページからダウンロードできます。
まとめ
本記事を総括すると次のとおりです。
- 柔道整復師が独立する場合、保険を扱う整骨院と自費施術のみを提供する整骨院や整体院での開業が考えられる
- 整骨院で開業する場合は保健所への届け出が必要で、さらに保険を扱う場合は保険関連の届け出も必要
- 整骨院と整体院ともに開業後に売上を伸ばすためには、スタッフを採用して集客に力を入れることが大切
現在は保険施術のみで整骨院の経営を成り立たせるのは難しいため、自費施術を導入して慢性症状にも対応できる整骨院を開業するケースが増えています。
自費施術を導入して売上を伸ばすためには、集客に注力する必要があります。そのためには、スタッフを採用してマーケティングに取り組める体制を整えることも大切です。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部