ネイリストは離職率の高い職業といわれています。実際に半数近くのネイリストが離職を経験していることを示すデータもあります。(※1)
ネイリストの離職や人手不足に悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、経営者や責任者向けにネイリストの離職率や離職理由、予防策を解説します。
もしも離職したいと相談された時の対応までお伝えするので、ぜひ最後まで参考にしてください。
※1 参考:【美容就業実態調査2024】チャート集|ホットペッパービューティー
ネイリストの離職率は高い!平均離職率と比較
ネイリストの離職率は、一般職と比べると高いと言われています。確実なデータはありませんでしたが、新卒離職率は5〜8割程度になるとのことです。
厚生労働省の調査結果で就職3年以内の大学卒平均離職率が32.3%であることを考えると、ネイリストの離職率の高さが伝わるでしょう。
また、厚生労働省の定めた産業別分類ではネイリストは「生活関連サービス業」に含まれます。令和5年の厚生労働省の発表では、全産業分類中で最も離職率が高いのが「生活関連サービス業、娯楽業」でした。
さらに調べてみると、ホットペッパービューティーの調査でネイリストの離職経験者の割合が47.0%であることもわかりました。
▼離職経験の有無
同調査結果から判明した美容業全体の平均離職経験有の比率である40.5%と比べても、ネイリストは一般職のみならず他美容業のなかでも離職率が高いと予想できます。
ネイリストの離職する8つの理由
ネイリストの離職率が平均より高いのは、なぜなのでしょうか。考えられるのは、以下の8つです。
- 理由1:給料面の不満
- 理由2:体力面の負担の大きさ
- 理由3:利用客とのコミュニケーションの難しさ
- 理由4:サロン内での人間関係
- 理由5:健康面の不安
- 理由6:勤務時間外に必要になる技術練習
- 理由7:小規模サロンの福利厚生不足
- 理由8:安定した収入を得るまでの期間の長さ
ここからは、具体的に何が退職したいほどの不満につながっているのか、実際によくある場面を挙げて解説します。
理由1:給料面の不満
離職理由の大きな要因と考えられるのが、給与面に対する不満です。
リジョブの調査では、ネイリストの給与・給与体系に対する満足度は「やや不満」が最も多く40.5%、かなり不満が22%と、あわせて6割以上のネイリストが給与に不満を感じているとの回答でした。
実際にどれくらい平均と比べて給料が低いのかを確認してみましょう。厚生労働省の調査を元に、ネイルサービス業が含まれる「美容サービス・浴場従事者(美容師を除く)」と、平均的な年収を比較すると以下の通りです。
項目 |
全体※2 |
ネイリスト※3 |
---|---|---|
きまって支給する現金給与額 |
34万円 |
24万円 |
年間賞与その他特別給与額 |
90万円 |
12万円 |
年間収入 |
498万円 |
300万円 |
※2「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類」の数値、端数は切り捨て
※3「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」の小分類「美容サービス・浴場従事者(美容師を除く)」の数値、端数は切捨て
全体平均と比較すると、ネイリストの給与は給与に比べて200万円近く低いことがわかりました。特に目立つのは、賞与額の低さです。ネイリストの雇用主に個人経営者や小規模店舗が多い点を考慮すると、ボーナスがあまり期待できません。
さらに年収が平均よりも低いのに加え、ネイリストは出費もかさみます。大きな出費要因は2つあり、対面接客だからこその身だしなみ関連の出費と、ネイルの高額用品の購入費です。
仕事で使う筆やスカルプなどの消耗品は1点が3,000円以上するものもありますが、施術内容によって使い分けたり取り替えたりとこまめな購入が求められます。
歩合制のサロンも多く、安定した収入を得るのが難しいのも給料面の不満につながっています。
美容業界特化の転職サイトを運営するリジョブでは、ほかにも給与体系や理想の歩合率など、ネイリストに給与に関するアンケートを実施しています。詳しい内容は以下のリンクよりご覧ください。
理由2:体力面の負担の大きさ
ネイリストの仕事には、激しい動きがあるわけではありません。しかし一点を見つめ、絵を描いたりストーンを貼ったりして装飾を施す細かい仕事はかなりの集中力が必要です。
施術は、1人のお客様の対応が2時間を超えることも一般的です。長時間座り続け、同じ姿勢で意識を集中するため、腰や肩、首などの体を痛めるのも珍しくはありません。
ネイルサロンによってはお客様対応に時間をとられて、十分に休憩を取れないケースもあります。また指名を受けると、休日を取れなくなることも少なくはありません。
理由3:利用客とのコミュニケーションの難しさ
美容業界全体の離職率の高さとつながるのが、お客様を長時間接客するために必要となる高いコミュニケーションスキルです。2〜3時間程度の長時間を無言で黙々と施術するわけにはいきません。
苦手を理由に会話は避けられませんし、誰とでも話を弾ませる会話力が必要不可欠です。しかしネイルスクールで技術を磨いたとしても、ほとんどのスクールで会話術まではカリキュラムに含まれません。
また、お客様からの理不尽なクレームに遭遇する可能性もあります。このような問題から、施術はできるものの離職を選ぶネイリストもいます。
理由4:サロン内での人間関係
ネイルサロンは女性スタッフのみの場合が多いです。また、少人数のサロンが多いため、雰囲気の良い職場ではないと人間関係で悩まされることも増えがちです。
ホットペッパービューティーの調査によると、ネイリストを辞めた理由として、「給与に関する不満」に次いで多い項目が「職場の人間関係が良くなかったから、自分とは合わなかったから」です。
女性独特の派閥争いに巻き込まれたり、先輩スタッフとの人間関係にトラブルを抱えたり、離職につながる人間関係の問題はさまざまです。経営者には、チーム全員が快く働ける環境づくりが求められます。
理由5:健康面の不安
休日が少ないうえに、勤務時間が長時間になると、精神的な病気になるリスクが上がります。厚生労働省の公表した調査によると、1週間あたりの実労働時間が長くなるに従い、うつ病や不安障害などの精神疾患の割合が高くなることがわかりました。
とくに実労働時間が60時間以上になると、約半数が精神状態に不安を抱えたり、精神疾患を抱えたりするため注意が必要です。
さらに、ネイリストにはネイルダストによる粉じん病害のリスクもあります。ネイルダストとは、ネイル施術で爪を削った時に発生する粉末や粉じんのことです。工場や林業で問題視されている粉じんですが、ネイルダストも粉じんの一種です。
粉じん病害は、ダストや粉じんを吸い込むことで発症します。微小なために急に発症することはありませんが、長期間をかけて肺や気管に沈着し、喘息などの呼吸器系の病害を発生させます。
ネイリストは施術中に爪に顔を近づける場面が増えるため、粉じん病害のリスクは常に高い状況といえるでしょう。
理由6:勤務時間外に必要になる技術練習
特に新人時代は、勤務時間外に技術練習をしてスキルを身につけなくては施術者としてデビューできません。後輩指導をするサロンもあるものの、先輩スタッフがお客様の相手をしていないときに教えるケースが多く、休憩時間や勤務時間外になりやすいです。
また流行や新しい技術を常に学ばなければ継続して指名を受けられないため、新人だけでなくベテランスタッフもスキルアップを続ける必要があります。
練習のための残業や、長時間勤務の後の練習時間の確保は大きな負担に感じ、ネイリストを辞めようと考えても不思議ではありません。
理由7:小規模サロンの福利厚生不足
ネイルサロンは、個人経営や小規模経営が多くあります。規模の小さい店舗ほど、福利厚生がおろそかになりがちですが、ネイリスト目線では重要な基準のひとつです。
ネイリストジョブの調査によると、現役ネイリストはお店の雰囲気の次に「福利厚生の充実」を重要視しているというアンケート結果もありました。
低い給与でもネイルサロンを続けたいスタッフのなかには、安心して働ける環境だけは確保したいと考える人も多いようです。福利厚生と教育制度の充実したサロンを望んで転職したスタッフもいました。
最初就職したサロンでは、余りにも忙しすぎて、スキルアップする術もなかなかなく、残業やノルマなどとにかく大変だったので、転職時福利厚生と教育体制の整ったサロンを選びました。(3年以上5年未満)
引用:ネイリストジョブ
理由8:安定した収入を得るまでの期間の長さ
リジョブの調査でネイリストの給与体系についてアンケートしたところ、以下の回答が集まりました。
月額固定制と同じく基本給+歩合制や完全歩合制も多いようです。ネイリスト歴3年未満でも割合はあまり変わらず、歩合制は取り入れられています。
歩合制の良いところは、自分が働いた分だけ給料に還元される点です。しかし一方で、ノルマを達成できなければ一般的な基本給や固定給よりも低い収入になる可能性も高まります。
特に完全歩合制の場合、一定のファンが付いて指名を継続的に受けられるようにならなければ安定した給料を得ることはできないでしょう。
ネイリストの離職防止のためにできること
ここからは、離職する理由を踏まえて経営者として離職防止のためにできることを解説します。成功した事例や具体的な方法を説明するので、自店舗でできていない部分があればぜひ取り入れてみてください。
サロンにマッチした人材を採用する
人材採用の段階から経営者としての考えを伝え、相性の良い人材を厳選して採用するのは、離職防止策として有効です。
未経験者であっても、人柄や熱意など、技術以外の要素で採用して成功するケースもあります。
経験がどれくらいあるかよりも、応募者の熱い思いや、人間としての魅力を信じて採用してもうまくいくんだということです。この経験を通して、面接時に視野を広げて応募者を見られるようになりました。
引用:モアリジョブ|「la vela tokyo」オーナー 田崎明日香さん
上記の事例で採用したスタッフは、3年目の今ではサロン内の売上トップを誇るそうです。
サロンにマッチした人材を採用するには、募集段階からありきたりではなく、自分の想いを込めたメッセージを入れてみましょう。
「どんな人に来て欲しいのか」、「経営するサロンでは何を大事にしているのか」を入れて募集すると、イメージ通りのスタッフを採用できる確率がアップします。
▼募集文例
新たにネイリストとして活躍したい⽅⼤歓迎です!マンツーマンで個⼈に合わせた内容、スピードで研修を⾏っています☆ 未経験からスタートしたスタッフが60%なので、初めの不安な気持ちも理解していますし、しっかり1⼈前のネイリストとしてデビューできるので安⼼してください! 「このサロンでよかった」とスタッフも⾔ってくれているので、きっとあなたもそう思えるはずです^^ 引用: リジョブ |
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リジョブでは他にも、ネイリスト求人への応募につながった文例を無料提供しています。興味のある方は、以下のリンクからご覧ください。
人員採用は余裕を持って行う
採用するときは、ギリギリの人数ではなく余裕を持ちましょう。急な産休や有給を取得しても問題がないくらいの人員を採用しておくのがベストです。
多くの女性スタッフを抱えるネイルサロンでは、女性のライフスタイルにあわせて融通が効く職場を作ると、人材を採用しやすくなります。
子育てをしていると止むを得ず「土日は出勤できない」「16時までに退勤しなければならない」「急きょ休みが必要となる」といった可能性が高くなってしまいますよね。そうすると採用してくれるサロンってなかなかないんです。でもなかにはすごくいい方もたくさんいるので、そこで諦めてしまうのはもったいないと思って。そのため「Nailsalon.BIEN」はやる気がある方であれば採用して、勤務時間などはスタッフみんなで補い合う仕組みを作ろうと決めました。
引用:モアリジョブ|「Nailsalon.BIEN」オーナー・稲村裕子さん
ホットペッパービューティーの調査では、復職先サロンの重視点について「休日日数の多さ」や「結婚・出産後も働きやすい環境である」など、他美容業と比べて女性ならでは部分の充実を望む声が多くありました。
採用人数を充実させるのに加え、時短勤務や有給の時間休取得といった柔軟な働き方の選択肢も積極的に増やしていきましょう。
評価制度を整える
個人経営では、評価制度がない場合があります。評価制度を作るのは、かなりの手間と労力が必要です。作成する時間を確保できずに経営者独自の視点から、漠然と「この人は良い」という感覚のみで昇給しているケースもあるかもしれません。
しかし評価制度は、スタッフの頑張りを正当に評価するためにはなくてはならないものです。そしてネイルサロンの評価制度は、サロンワークや個人技術に特化したネイリスト専用の評価項目を設定することが重要です。
また、長く働いてもらうためにはスタッフにあったキャリアプランを提示できているかも再確認してください。とくにネイリストの場合、プレイヤーとして活躍する人材が評価される体制を整えることも大切です。
ネイル業界は、なぜこんなにも個人サロンという形での独立が多いのか?と問いを立てた時に、現存の人事評価制度に問題があることに気がつきました。キャリアプランが「管理職への昇進」一辺倒なんです。プレイヤーがより高い収入を得るには、管理職になるしかない。でも本来は、プレイヤーとしてその腕を磨き続けることも、リーダーになることと変わらず尊いはず。
リーダーになることや、数字管理を苦手とする人もいて当然です。そういう人達も、頑張った分だけ高い収入になるような人事評価システムを構築しています。
引用:リジョブ|「NAILsGUSH」・「NAIL MAFIA」 オーナー 木下さとこさん
管理職だけでなく、プレイヤーも評価される多様性重視の人事制度を取り入れることで、木下さんの店舗では、オープン以降の6年間、離職率5〜10%未満を維持しているそうです。
設備を整えて負担を軽減する
ネイルサロンの設備を整えると、スタッフの業務負担を軽減できます。たとえば長時間座っても腰の疲れにくい椅子を購入すれば、身体の負担を減らせるでしょう。
また、ネイルマシンを導入して施術の自動化を推進すると、施術時間を短縮できるため、労働時間の短縮が可能です。
設備投資では、5名以下の事業所でも利用できる小規模事業者持続化補助金制度や各種助成金制度が利用できます。ただし補助金制度は、採択されるために審査を受けて合格しなければ受給できません。
ネイルサロンで使える補助金・助成金制度については、以下の記事で詳しく説明しているので、あわせてご覧ください。
定期的な面談を実施する
定期的に面談を実施すると、離職リスクの低下につながります。
HR総研がアンケート調査によると、離職防止対策として「上司との定期的な面談」を実施する企業が多いことがわかりました。
▽企業規模別 実施している新入社員のオンボーディング施策
またスタッフとの1対1のコミュニケーションを意識して、関係性を良好に保っている事例もあります。
基本的には、1対1でのコミュニケーションを意識しており、たとえばホームページをリニューアルしたかった時は、得意そうなスタッフに『ちょっと、相談に乗ってくれない?』と声をかけて1時間ほど時間をもらっています。
他にも『ありがとう』という感謝を伝えることをはじめ、報告、連絡、相談をこまめに行うことなど、当たり前のルールを大切にしています。
引用:モアリジョブ|「pour toujours」オーナー 山口麗さん
さらに個人ミーティングを実施して、スタッフが悩みや将来の目標を話せる機会を設けるのも離職防止に有効です。
技術練習や接客のロールプレイングは1日に1回以上設け、不安なことや技術の足りないところを振り返る時間を大切にしています。
さらに、スタッフ全員との個人ミーティングを月に1回以上設けており、悩んでいることや今後の目標など共有しています。
引用:モアリジョブ|「メディカルスリム&ビューティー レイア 銀座本店」鈴木春香さん
スキルアップできる制度を作る
技術の習得に貪欲なネイリストにとって、スキルアップできる環境が整ったサロンは魅力的な職場です。
リジョブの調査では、Z世代の就職についてこだわりたい条件を聞いたところ、「スキルアップできる環境」が「福利厚生、収入・待遇」と同率でした。
ネイリストのスキルアップ補助は、研修制度と資格取得のサポートの2つが考えられます。
研修制度を導入する
ネイリストの研修制度は、主に技術面と接遇にわかれます。技術面での研修制度では、基礎研修、実技研修、ステップアップ研修と在籍している期間やレベルに分けて研修を行うと良いでしょう。
入社時のデビュー前研修で一通りできるようになるまでサポートし、デビュー後は自主的に学ばなければならないサロンも多いです。しかし接客がスタートした後も研修は定期的に開催すると、スタッフ全体のサービスレベルの向上も期待できます。
ホットペッパービューティーの調査では、OJTの機会があるかの質問に対して自主的な学習によってのみ技術を身につけているスタッフも多いことがわかりました。
ネイルサロンは小規模や個人経営も多く、研修制度の導入が難しい店舗もあるかもしれません。しかし接客や接遇についてのセミナーは外部受講もできます。技術研修を行っているネイルスクールもあるため、自店舗での実施が難しい場合には外部研修を活用しましょう。
ネイリスト資格の取得をサポートする
ネイリスト資格には、基本的な技術取得の証明ができる「JNECネイリスト技能検定」、「JNAジェルネイル検定」がありますが、2つの資格ともに高難易度の上級資格があります。さらに、フットケアや衛生管理士もネイルのプロとして取得しておくと便利な資格です。
資格取得には、費用がかかります。サロンとして受験費用や検定講座の一部負担があるのは、スタッフにとってうれしい補助でしょう。また、JNA認定講師や、資格取得者によるこまめな指導も有効です。
職場内でのコミュニケーションを活発にする
働きやすさには、給料面以外でも職場の雰囲気が重視されます。HR総研の調査では、効果が感じられる若手人材の離職防止を意識した取り組みについて「待遇改善」と同じく「社内コミュニケーションの活性化」が1位となりました。
▼実施した取り組みのうち、効果が感じられた若手人材の離職防止を意識した取り組み
コミュニケーションの活性化は、金額をかけずにできる離職防止策です。たとえばスタッフが仕事以外にも雑談できる場を設けたり、ランチを大人数で一緒に食べられる環境を整えたりして、話せる雰囲気づくりを心がけてみましょう。
職場全体が話しやすい雰囲気になることで、離職の原因である悩んだときに相談できない閉塞感や孤独感を和らげられます。
1人で頑張り続けてしまうと、悩みが蓄積していき、相談相手もおらず孤独になり、挫折につながります。そのため、同期がいないのであれば先輩にどんな小さな悩みでも相談しつつ、助けが欲しいときは素直に頼ることを意識して新人時代を過ごせば挫折しづらくなるのでおすすめです。
引用:モアリジョブ|「M.SLASH 表参道」紫藤大貴さん
リスク管理を徹底する
ネイリストは、多くのリスクと隣り合わせの仕事です。しかし経営者として適切に対処や予防を行うことで、大事故やトラブルに発展する可能性は極力ゼロに近づけられます。
厚生労働省が作成した職場のあんぜんサイトのネイル編では、以下のようなリスクと対策のチェックリストが掲載されていました。
- 取り扱う化学物質の危険有害性や適正な使用量・保管量を把握しているか?
- 作業場は十分な換気が行われているか?
- 容器のふたは毎回きちんとしめているか?
- 作業時に静電気や火花は発生しないようにしているか?
- ネイル作業で取り扱う化学物質の危険有害性の例を把握しているか?
- ジェルネイルを削った際の粉じんやアクリルパウダーを吸い込まないようにマスク着用をしているか?
経営者やリーダーがリスクを理解するのは、スタッフの安全を守るための義務といっても過言ではありません。万が一不安がある場合、今のうちにリスク管理について見直しておきましょう。
ネイリストに辞めたいと相談された場合の対応
どれだけ気を配っていたとしても、ある日ネイリストが辞めたいと相談してくることはあります。うまく対応できれば引き止めに成功したり、双方納得した状況に導けたりもできるかもしれません。
相談に対してどう対応するかで、退職を相談したスタッフとの関係だけでなく職場の雰囲気自体も変わります。退職の相談をされたときこそ、丁寧な対応が重要です。
そこでここからは、辞めたいと相談された場合の話の進め方から、退職時の対応まで説明します。もしもに備えるための参考にしてください。
基本はとにかく聞き役に徹する
店長としての考え、意見を挟みたくなるかもしれませんが、基本的には聞き役になる意識で傾聴しましょう。退職理由を話すとき、最初は本当の理由を言わないケースも多くあります。
エン・ジャパン株式会社の行った調査では、退職時に本当の退職理由を伝えなかった人は54%との結果でした。さらに「本当の理由を伝えなかった」と回答した人のうち、46%は「話しても理解してもらえないと思ったから」という理由で伝えなかったようです。
▼会社に「本当の退職理由」を伝えなかった理由は次のうちどれですか?
逆に傾聴したことで、円滑に話が進められた事例もあります。厚生労働省の明るい職場応援団では、女性相談員が根気強く傾聴したことで内容をしっかりとヒアリングできた事例が記載されています。
当初、相談者は何から話せば良いのか困った様子で言い淀んでいたので、「間」を大切にしつつ、お互いの信頼関係の形成を意識しながら傾聴していくことで、徐々に警戒心が解かれ、相談内容に入ることができました。
引用:明るい職場応援団|パワハラ対策7つのメニュー
相談を受けるときは、同ページの相談対応手順に従うと良いでしょう。記載の一部を紹介します。
- 相談者の話をゆっくり、時間をかけて聴いて、内容の確認を急ぐあまり、話をせかすようなことはしないようにしましょう。
- 軽微と思われる内容であっても、深刻な問題が潜んでいる場合や、この段階での対応次第で、相談者の不信感を生み、問題解決に支障が出るばかりか、会社に対する不信感が生じる可能性があります。加えて、相談窓口担当者は、相談者の話を傾聴する姿勢が大切であることを認識し、詰問にならないように注意する必要があります。
引用:明るい職場応援団|相談対応手順
離職したい理由を聞く
退職したい理由は、引き止めができる理由と難しい理由に分かれます。相談内容がどちらにあてはまるのかをまずは分別しなければ、適切な対応ができません。
ここからは、それぞれのケースと対応について詳しく説明します。
引き止められる可能性がある理由
ネイリストの退職理由で引き止められる可能性があるのは、自分の技術への不安や労働環境への不満を相談してきた場合です。
たとえば不安が原因の退職理由には、以下のような相談例があります。
- ネイリストを続ける自信がない
- 自分は向いていない・才能がないと感じる
- ミスをしてクレームを貰ってしまったのがつらい
不安が原因の場合、周りがフォローすることで解消できるかもしれません。また、本当は辞めたいのではなく「そんなことはない、大丈夫」と言ってもらいたい気持ちが強いケースもあります。
独立希望についての相談は、詳細を聞いて切り分けましょう。独立したい理由が給与面や勤務状況の不満から楽になりたい気持ちが表れている場合、職場の環境を改善することで引き止められる可能性があります。
ただし、基本的には一度本気で辞めたいと考えた人のモチベーションを戻すことは難しいです。無理に引き止めてもメリットがあまりないのは、念頭に入れておきましょう。
また、引き止めのためにそのスタッフだけを優遇するのも不和が生まれる原因となります。待遇改善をするなら、職場全体のバランスを考えて実施しましょう。
引き止めるのが難しい理由
引き止めが難しいのは、職場では対処のしようがない理由です。あるいは、離職したい理由についてのアンケート結果の「本音を言わないパターン」が該当します。
たとえば、以下の理由は引き止めが難しいです。
- 育児や介護のため
- 病気になったので療養のため
- 引っ越しや家族の転勤のため
加えて、「とにかくつらいので辞めたい」と明確な理由を頑なに話さないのもすでに引き止めは難しいかもしれません。
理由自体が嘘の可能性もあります。しかし本音を言わずに退職希望をしている時点で、引き止めないほうがよい状況といえるでしょう。
スケジュールを調整する
話し合いの結果、退職の意志が固いことがわかった場合、退職までのスケジュールを調整しましょう。退職には、スタッフが一方的に契約を終了する「辞職」と、スタッフとサロン両方の合意によって雇用契約を終了する「合意退職」があります。
合意退職の成立ができずに辞職になった場合、有期雇用は「やむを得ない事由」があれば即雇用契約の終了が可能です。サロン側の過失や賃金不払いは「やむを得ない事由」に該当します。無期雇用契約なら、申入れ日から2週間後の時点で契約終了できます。
退職関連で注意が必要なのは、引継ぎについてです。引継ぎを辞退するスタッフに強要はできません。スタッフには引継ぎを拒否したり、退職日まで有給を消化して出勤しなかったりする権利があります。
そのため、サロン側はなるべく円満退職を成立させ、引継ぎや常連客への挨拶期間を自主的に設けるようにしてもらえたほうが理想でしょう。
参考:美容法務ドットコム
人数が足りない場合は採用を考える
退職が決定した時点で、職場の必要人数を再確認しましょう。足りないと判明した時点で、なるべく早めに募集をはじめると早い段階で不足した人員を埋められます。
自店舗の魅力が伝わる募集文も重要ですが、サロンの雰囲気を伝えるには見学も取り入れることで採用のミスマッチをさらに減らせるかもしれません。
――採用選考では、どのようなポイントを大切にしていますか?
選考に進む前に条件やサロンについての説明を丁寧に行う、サロン見学の機会を必ず設けることです。このステップによって採用後のアンマッチを防ぎ、気持ちよく働けるように心掛けています。
サロン見学では30~60分ほどをかけて、設備や道具、雇用形態、給与体制、お店のスタイルなどについて説明します。
引用:モアリジョブ|「la vela tokyo」オーナー 田崎明日香さん
リジョブは、転職満足度98%を誇る美容・ヘルスケア業界専門の求人サイトです。多くのネイリスト志望者様に選ばれており、会員数は79,000人を超えました。(2022年4月時点)
「求人募集をしたものの効果が実感できない」、「低コストで効果を得たい」、このように考えている経営者に特におすすめです。さらに知りたい方は、以下のリンクで選ばれる理由や利用者様の声などの詳細を紹介しているのでご覧ください。
関連リンク
まとめ
本記事では、ネイリストの離職率と離職理由、対策、退職の相談をされたときの対応について解説しました。この記事のポイントは、以下の通りです。
- ネイリストの離職率は一般的職種や他美容業と比べても高い
- 離職する理由は給料や待遇の不満や長時間の接客と女性社会ならではの難しさが原因
- 離職防止のためには評価やスキルアップ環境の整備が大切
- 退職相談された際には聞き役に徹し、引き止められるか引き止められないかを判断して対処する
ネイリストの離職率が高いのは事実なものの、サロンの対応次第で下げられる部分もあります。
離職率を改善したい場合は、まずは定期的な面談やコミュニケーションの見直しからはじめてみましょう。この記事を参考にして、普段からスタッフの希望や悩みにアンテナを張ることが大切です。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部