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ネイルサロン開業・経営に使える補助金・助成金制度と活用事例を紹介

ネイルサロン開業・経営に使える補助金・助成金制度と活用事例を紹介

株式会社リクルートの市場規模推計によると、2024年にはネイルサロン市場が1,390億円規模になるようです。2023年に続いて拡大傾向なうえ、2023年からの前年比は16.3%増と、ネイルサロン市場は留まることを知りません。

それにともない、今後はさらに競合が増える可能性があるため、設備や人材に投資して他社との差別化を図ることが求められるでしょう。その際に役立つのが、補助金や助成金です。ネイルサロン開業や経営など小規模サロンでも使える助成金や補助金の制度は多数あるため、有効活用しましょう。

今回は補助金・助成金について知らない方でも使い始められるように、基礎的な知識から実際に利用できる制度までを網羅的に解説します。ケース別に分けて紹介するので、今の状況にあわせて参考にしてください。

補助金と助成金の基礎知識

補助金や助成金と聞くものの、実際に何かわからない方も多いのではないでしょうか。補助金や助成金とは、国や地方自治体が行う給付制度です。詳細についてはこの後の章で詳しく解説します。

補助金や助成金と聞くと大企業や中小企業のみが受けられる補助制度のイメージを持つかもしれませんが、小規模事業所でも活用は可能です。

そこでまずは、ネイルサロンではどのように活用できるのかについて使い方や事例を紹介します。

ネイルサロンにも補助金・助成金が使える

補助金・助成金には、対象者が設定されています。そのうち、「中小企業事業主」の範囲は厚生労働省によると以下の通りです。

▼中小企業事業主等の範囲

雇用調整助成金の対象

制度によって設定される対象は異なるものの、厚生労働省の定めた範囲は多くの補助金・助成金制度に共通します。

また、中小企業と同じように補助金の対象によく挙げられる「小規模事業者」の場合、従業員数が20人以下など、さらに規模は小さくなります。

つまり、小規模なネイルサロンでも利用は可能です。

開業時の使い方

ネイルサロンや美容室は、最初は大きなサロンに所属して技術を磨いてから独立開業を考える方も多いでしょう。開業時の開業資金や初期の設備投資に、補助金・助成金制度は活用できます。

まつエクサロンを独立開業したオーナーのMihoさんは、一人経営でも各種情報を効率的に得て上手に活用し、事業を軌道に乗せました。

お金がかかることも多いですが、今は自治体ごとに小規模事業者向けの補助金制度もあるので、そういった情報をしっかりキャッチして積極的に活用しています。

引用:モアリジョブ|salon de beaute Jolieオーナー Mihoさん

経営時の使い方

補助金・助成金制度は、開業してからしばらく経過した後でも利用できます。たとえば、初期の立ち上げはうまくいったものの、ライバル店の出店やリピーター獲得への苦戦などで経営が難しくなったときにも利用可能です。

独立開業は、自由な営業時間による経営も魅力のひとつです。女性によくある出産・育児などのライフイベントにも独立開業であれば対応できるでしょう。営業時間を減らして収入が一時的に減少した場合にも助成金が活用できます。

シングルマザーをしながら自宅ネイルサロンを経営するチヒロさんも、助成金制度を利用してピンチをチャンスに変えました。

ここまで一気に予約枠を減らしたのは、子どものためはもちろんなんですが、コロナ禍の影響もあったんです。消毒や空気の入れ替えなどで以前よりも時間のかかることや気を遣うことが増えたので。そのため助成金の制度などを活用することができて、新宿のときと比べても4分の1ほどの減収ですみました。

引用:モアリジョブ|チヒロさん

チヒロさんは、予約枠を絞りながらも単価の見直しなどを行い、OLやサロン勤めよりも多くの収入を得ているそうです。

ほかにも、新規事業への方向転換や人材採用・育成でも、補助金・助成金の給付を受けられます。

補助金・助成金の共通点と違い

補助金・助成金とひとまとめにしてはいるものの、細かく分類すると違いがあります。共通する点や異なる部分を理解することで、実際に申請するのはどれが良いのかを探しやすくなるでしょう。

また、申請の流れはどちらも似ているためあわせて解説するので、申請前の参考にしてください。

補助金・助成金の共通点

補助金・助成金の多くは、以下が共通します。

  • 行政が支給元である
  • 受給するには審査を通過する必要がある
  • 基本的には返済は不要
  • 申請までの大体の流れ

補助金・助成金は、どちらも国や都道府県、市区町村が支給しています。支給金額は税金から出資されるため、受給するには審査が必要です。ただし、受給できれば返済は不要なケースが一般的です。

審査を受けるために行う書類の用意から提出までの流れも類似します。そのため、一度補助金・助成金を受給できれば、ほかの制度の申請もスムーズになるでしょう。

補助金・助成金で異なる部分

一方で、補助金・助成金には以下のような違いがあります。

 

補助金

助成金

受給のしやすさ

受給できる件数が定められており、受けられない可能性がある

申請すると審査に合格さえすればほとんどは受給できる

支給タイミング

自社で支払い後の後払いが多い

短期間の支給要件など、比較的早期受給が可能な場合もある

使い方や支援範囲

主に「事業拡大」や「設備投資」の支援

主に「雇用促進」や「職場環境改善」などの支援

助成金は、雇用や職場関係での利用が基本です。イメージ的には、従業員や経営者の経営や雇用を守るために利用する給付金といえるでしょう。補助金よりも受給しやすい点が特徴です。

助成金に比べて補助金は後払いが多く、使用目的はあくまで補助です。一旦は必要資金を全額用意しなければなりません。会社の成長や設備投資を通じての事業拡大が目的の給付金制度といえます。

補助金・助成金申請の基本的な流れ

補助金・助成金制度の申請についての申請から受給までの流れは制度の記載ページで説明されています。ここでは、基本的な流れについて経済産業省の補助金受給までの5つのステップから抜粋して説明するので、申請したときの動きや準備物をイメージするヒントとしてください。

  • 利用できる補助金・助成金を探す

目的や対象から自店舗で利用できる制度を探します。

  • 申請する

電子申請や郵送などの手段を用いて、事務局へ応募に必要な書類を一式提出します。

必要書類例

  • 応募申請書
  • 事業計画書
  • 経費明細書
  • 事業要請書

 など

助成金の場合、雇用関係の書類が求められます。制度によって提出書類は違うため、必ず募集要項を熟読して用意しましょう。

なお、申請書類は提出後も原本の保管が必須です。補助金や助成金関連の書類は5年間の保存が義務付けられているので、受理後も捨てないようにしてください。

  • 採択される

申請した内容を元に審査を受け、採択決定者(支給を受ける権利を得た申請者)には支給元から通知されます。採択が決定後に支給を受け取るための手続きが必要です。手続きが受理され次第、補助事業が開始されます。

助成金の場合、申請時の計画届で提出した内容を実施後、最終的な支給認定を受けるケースもあります。

  • 事業を実施する

交付した内容に則って事業を開始します。事業内容を変更する場合、事前に計画変更申請の提出などの手続きが必要です。

  • 交付を受ける

実績報告書や請求書といった各種請求書類を提出し、経費を報告します。正しく実施したことを認められると交付額が受理可能です。

補助金・助成金は、目的によって流れも異なります。ここで紹介した流れはあくまでも参考のひとつとしてください。

ネイルサロン開業に必要な費用

補助金・助成金は、全額の負担を約束するわけではありません。一部、もしくは全額を一時的に負担する必要があります。

そこで、ネイルサロン開業に多い自宅型と店舗型の2パターンについて初期投資で必要な費用を説明します。

予算の想定と一致するのか、いくらくらいの給付がなければ開業が難しいのかを把握したうえで準備しましょう。

自宅型ネイルサロンの場合

ネイルブックの行ったサロン開業についてのアンケートでは、独立開業にかかった費用については最も多かったのは100万円未満という回答でした。

独立開業にかかった費用

ホームサロンであれば家賃が必要なく、テーブルや椅子のような家具とマシーンやネイル用品一式を含めてトータルで30万〜50万程度の費用の場合が多いようです。

また、開業時には初期投資に加えて、運転資金も用意しておきましょう。運転資金とは、開業後の光熱費や人件費、消耗品費などが軌道に乗らずに支払えない状況になったときのために備えて用意しておく資金です。

運転資金は概算でも3か月分、余裕を持つなら6ヵ月分の経費を想定して用意するとよいでしょう。

店舗型ネイルサロンの場合

ネイルブックによると、自宅ネイルサロンから店舗型ネイルサロンに移行したい希望を持つ経営者も多くいます。どのような営業形態で開業したいかの質問に対しては、店舗型ネイルサロンのほうが人気である結果となりました。

エステサロンで希望する営業形態

開業初期は自宅型で経営後、軌道に乗ったタイミングで店舗型ネイルサロンに移行することを想定するなら、250万円程度は初期費用として用意しましょう。

ネイルマシンや用品に加えて、家賃と仲介手数料、テナントの場合は保証金が必要です。保証金は家賃の8〜10ヵ月分ほどを最初に支払うもので、敷金・礼金と同じく修繕費以外は返還されます。とはいえ、初期費用としてまとまった金額が求められます。

内装やインテリアにもこだわり、理想の空間を演出できる代わりにリフォーム費は居抜き物件でも30〜50万円、店舗型で人気のスケルトン物件なら150万円程度と高額です。

店舗の立地を駅近くや利便性の高い人気エリアにする場合、さらに家賃は高くなるでしょう。

ネイルサロン開業に使える補助金・助成金

ネイルサロン開業をするときに使える補助金・助成金制度について具体的に紹介します。自宅開業であれば大きな金額は必要ないかもしれませんが、開業後の運転資金も考えると受けられる補助や助成金は受けておくのがベターでしょう。

地域ごとに活用できる補助金や助成金が異なるため、開業する土地でどのようなサポートを受けられるのか調べてみるとよいでしょう。京都のヘアサロン経営から香川県の離島への移転、美容室以外にもハーブ栽培やカフェ運営など、幅広く事業展開をする山口さんも補助金を活用して成功した一人です。

今まで継続していた仕事を移住先で新たにスタートする場合、香川県から補助金がもらえたんです。それを使い、元からあった建物をリノベーションしてサロンを作りました。結局のところ、そうやって自分で作っていくのが、僕は好きなんだと思います。

引用:モアリジョブ|象と太陽社 山口憲太郎さん

本項では、ネイルサロン開業に使える補助金・助成金について、対象要件や最大金額、使用目的について説明するので、開業時に使えそうかどうかを考えながらご覧ください。

創業者向け補助金・助成金

各自治体では、創業者を対象とした助成金・補助金制度が独自に発足し、支給されています。

たとえば東京都の行う創業助成事業による助成金の場合、助成対象者や申請要件は以下の通りです。

対象者

都内創業予定者又は創業して5年未満の中小企業者等

申請要件

  • 都内区市町村で認定特定創業支援等事業(産業競争力強化法)による支援を受けた方
  • 東京都及び都内区市町村が行う創業を対象とする制度融資利用者
  • TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援の終了者
  • インキュベーション施設運営計画認定事業の認定施設の入居者

対象事業要件

都内に本店又は主たる事業所等を有し、活動を行う事業等

助成限度額

400万円(対象経費のうち3分の2以内)

助成対象経費

賃借料、広告費、器具備品購入費、従業員人件費、市場調査・分析費

東京都の助成金の申請要件を満たすには、概ね2ヶ月以上を要します。加えて申請期間も短いことがあります。令和6年の申請期間の場合、4月9日〜18日と約一週間しかありませんでした。計画性をもって申請しなければならないでしょう。

制度がよくわからなくても、一旦は支援センターやハローワークなどで相談するのもひとつの手です。出張ヘッドスパサロンを思いつき、自分らしい働き方を手に入れたまなみんさんは支援センターで相談をしたことで制度を知り、活用できました。

なんといっても、開業資金です。融資を受けるにも何からはじめればいいかわからず、札幌中小企業支援センターに相談をしたところ、さまざまな補助金や助成金の制度があることを教えていただきました。

引用:モアリジョブ|「Smile rainbow」まなみんさん

興味を持ったなら、まずは「出店予定の都道府県名」+「助成金or補助金」でインターネットで検索してみるとよいでしょう。

地域雇用開発助成金

地域雇用開発助成金は、厚生労働省が行っている助成金です。対象となるのは、雇用機会が著しく不足する地域に出店している事業主で、条件を満たせば1年に最大で3回の受給ができます。該当地域には田舎や地方だけではなく、主要都市や首都圏が含まれることもあります。

受給額は必要とした設備・整備費用に伴い、期間中にどれだけ労働者数を増加できたかによって助成割合が決定します。たとえば設置・設備費用300万円以上なら、増加人数3~4人で50万円、増加人数5~9人なら80万円が受給額のように変動します。目的が雇用者の増加のため個人サロンでは利用できませんが、小規模サロンならばオープンから成長過程まで、雇用人数の増加を活かして受給できる助成金制度です。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、通称ものづくり補助金と言われています。中小企業の生産性向上や賃上げを行った事業所を対象に、設備投資などの経費を一部支援する補助金制度です。

対象となるには、付加価値額(生産活動によって産出した利益のようなもの)の年間平均成長率3%以上の向上や、事業内の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に向上するなどの条件があります。

ネイルサロンのような小規模事業者でも受けることができ、設備投資に費やしたコストのうち1/3~2/3が補助されます。従業員数5人以下でも、最大で750万円(参考:令和6年3月申請分)まで受給可能です。

IT導入補助金

IT導入補助金は労働生産性の向上を目的とし、ITツール導入を支援する補助金制度です。業務効率化やDX化を目的としたITツール全般が補助範囲であり、ソフトウェアやアプリ、サービスなどが含まれます。

ITツールだけでなく、事業所がインボイス制度に対応している場合はPC・タブレット、レジ・券売機のような機器本体も含めることができます。ほかにも、セキュリティ対策ソフトのサービス利用料最大2年分の補助を受けることも可能です。

補助率は最大で半額負担となっており、従業員の少ないネイルサロンでも活用しやすい補助金といえるでしょう。

ネイルサロン開業で使える融資・補助制度

補助金・助成金制度の活用によって初期費用は抑えられるものの、ほとんどの場合は受け取るまでにはある程度の期間が必要です。対象に承認されて事業や計画を開始後、試行結果を報告後の支給となることが多く、最初の資金不足を補えない可能性があります。

そこで補助金・助成金制度にあわせて、開業時に活用できる融資・補助制度についても説明します。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、主に資金調達が困難になることが多い中小企業や小規模事業者を対象に融資する金融機関です。政府系の金融機関であるため、自社利益を優先する民間の金融機関よりも開業資金のサポート制度が充実している点が特徴です。

創業時は経営が安定せずに貸し倒れのリスクがあるため、民間の金融機関は融資には消極的なことが多いですが、日本政策金融公庫は創業時の融資にも積極的に相談に乗ってくれます。

新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)

新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)は、新規開業資金のなかでも以下の条件に当てはまる創業者が受けられる融資です。

  • 女性
  • 35歳未満(性別問わず)
  • 55歳以上(性別問わず)

融資限度額は最大で7,200万円(うち運転資金が4,800万円)で、設備投資や運転資金を目的とした資金運用の場合に適用できます。融資を受ける条件は、創業計画書を提出することなどです。

返済期間は設備投資が20年以内、運転資金は10年以内で、利率が低い特別利率が設定されています。

新規開業資金(再挑戦支援関連)

新規開業資金(再挑戦支援関連)は、廃業歴があり、再度事業創業にチャレンジする人を支援する融資です。この資金は全事業で抱えた債務返済にも利用できるうえ、長期間での返済期間が設定されています。

融資限度額は女性、若者/シニア起業関連と同じく7,200万円で、設備資金は20年以内、運転資金は15年以内での返済が条件です。

ネイルサロンの採用・雇用・育成に使える助成金・補助金

経営が軌道に乗って雇用できたとしてもネイリストを定着させるのは難しく、新卒では50〜80%もの人が離職するといわれています。少しでも離職率を下げるには、設備や環境を整えたり、賃金アップをしたりすることが大切です。

予算の都合上、それらの施策が難しい場合は、助成金や補助金の活用を検討しましょう。

リジョブが独自に行ったアンケート調査によると、ネイリストは職場選びの際に、会社の雰囲気の次に給与を重視していることがわかりました。

職場探しで重視すること

ここからは、ネイルサロンでの採用や雇用・育成に活用できる補助金・助成金制度を紹介します。ネイリストのスキルや賃金のアップなどにも利用できるため、サービスや従業員満足度の向上へつなげましょう。

なおリジョブでは、美容・ヘルスケア業界の求職者が職場に求める条件について調べたアンケートの結果を資料として提供しています。ネイリスト以外にも美容師やアイリストなどの他の美容職のデータを網羅しました。

さらに、アンケートの結果をもとに導き出した求人広告の作成ポイントも解説しているので、ぜひ無料でダウンロードしてご覧ください。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、休業や教育訓練、出向をする際に利用できる助成金制度です。景気の変動や経済上の理由で従業員の雇用が維持できないときに利用する制度です。

1年の期間中に行った調整が対象であり、雇用期間が6カ月以上の従業員に適用されます。ほかの助成金に比べて、守るための助成金といえるでしょう。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、就職困難者の継続した雇用によって受給できる助成金制度です。この助成金制度は、特定求職者の対象によって以下のようなコースに分かれます。そのうちネイルサロンでも利用できるコースは以下の通りです。

コース名

対象者の概要

特定就職困難者コース

60歳以上の高年齢者、障害者、母(父)子家庭の親

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害者または難治性疾患患者

就職氷河期世代安定雇用実現コース

昭和43年から昭和63年生まれで非正規、不安定な仕事に付いている方など

生活保護受給者等雇用開発コース

ハローワークに就労支援の要請があった生活保護受給者など

成長分野等人材確保・育成コース

デジタルやグリーン分野の雇用

なお、雇用対象にはネイリストだけでなく事務や管理業務に従事する従業員も含まれます。また、助成金額は対象によって異なります。

キャリアアップ助成金

キャリアップ助成金は、非正規雇用の労働者のキャリアップ促進を目的とし、正社員化や処遇改善の取り組みを行った事業主へ支給される助成金制度です。非正規労働者には、有期雇用の労働者や短時間労働者、派遣労働者が含まれます。

キャリアップ助成金には、以下のようなコースがあります。

コース名

対象の要件

正社員化コース

有期雇用労働者などを正社員にする

障害者正社員化コース

障がいのある有期雇用労働者などを正規雇用に転換する

賃金規定等改定コース

有期雇用労働者の基本給の賃金規定を改定、3%以上増額する

賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者などと正規雇用労働者との共通の賃金規定などを新たに規定・適用する

賞与・退職金制度導入コース

有期雇用労働者などを対象に賞与または退職金制度を導入、または積立を実施する

社会保険適用時処遇改善コース(令和8年3月31日まで)

新たに社会保険に加入するとともに収入を増加させる。または労働時間を延長して社会保険に適用させる

支給申請をする前に正社員化、もしくは処遇改善の取組を実施する必要があり、どちらも適用6カ月後から申請できます。支給金額は選んだコースや対象の状況によって異なるため、申請前には要件を熟読しましょう。

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立を支援する事業主が受けられる助成金制度です。出産時のパパ向けの休業支援や、育児休業の支援コースなどがあり、出産や育児、介護休業でも使えます。

仕事と家庭を両立するための制度を作ったり、不妊治療と仕事を両立できるようにフレックスタイムや時短勤務制度の導入をしたり、働きやすさを向上させたいときには活用しましょう。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、主にすでに雇用している従業員に対してさらなるスキルアップを目的とした研修や訓練を行ったときに受給できる助成金制度です。

従業員のスキル向上を目的とした教育訓練休暇制度の導入や、労働者が自発的に行った訓練費用を事業主が負担する場合、適用ができます。

また、事業拡大に伴う新しいスキル習得のための訓練実施でも助成が受けられます。助成金を活用すれば、ネイルと合わせてアイラッシュやメイクなどの新規サービスを開始し、客単価アップにもつなげられるでしょう。

人材開発支援助成金については、こちらの記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。


トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、職業経験や技能・知識の不足が原因で安定した就職ができない人を雇用した事業主が受け取れる助成金制度です。1人あたりで月額最大4万円(母子または父子家庭の場合は月額5万円)、最大3カ月分を受給できます。

離職や転職を繰り返したり、妊娠や出産を理由に離職後に安定した仕事に就けない期間が1年を超えていたりする求職者が対象です。

制度を利用する場合、ハローワークからの紹介を受ける必要があります。また、1週間の所定労働時間は原則30時間を超えていなければ要件を満たせません。

ネイルサロン経営で使える助成金・補助金

ネイルサロンを長く経営していると、常に順風満帆ではないかもしれません。

NPO法人日本ネイリスト協会が毎年発行する「ネイル白書2023」によると、2023年のネイル産業市場は2,115億円と予測しています。コロナ禍の2021年には一時落ち込んだものの、コロナ禍以降は順調に成長している状況です。

競争率が高い市場では、サービスの差別化や新規事業への参入をしなければ、他社に勝つことは難しくなるでしょう。店舗経営でも攻めにも守りにも使えるのが補助金・助成金制度です。

そこでここからは、経営に利用できる補助金・助成金制度について説明します。

業務改善助成金

業務改善助成金は、生産性向上を目的とした設備投資(コンサルティング導入や人材育成・教育訓練を含む)を行うのに加えて、事業場内最低賃金をコースごとに定められた一定額以上引上げた場合、設備投資費の費用の一部を受給できる助成金制度です。

地域別に設定された最低賃金よりも差額が50円以上、賃金引上げは最低でも30円以上なければ申請はできません。ただし人数の制限は1人から適用が可能なため、個人経営の小規模なネイルサロンでも利用は可能です。

厚生労働省の作成したヒント集による事例によると、エステ業や美容業では以下のような施策を実施したようです。

業務改善助成金の活用事例

エステティック

新型脱毛機器の導入により、連射照射が可能になって従来約2時間を要していた全

身脱毛の施術時間が従来の1/3(約40分)程度に短縮され、回転率上昇と客単価ア

ップやより質の高い施術ができるようになった。

美容院

自動釣銭機の導入により、会計時のミスが無くなった上、閉店後に通常30分程度要

していた毎日の現金締め処理が約1分で完了するようになった。また、再計算等が必

要になることもなくなったことで、時間外労働が削減された。

引用:厚生労働省「生産性向上のヒント集」

事例にもあるような機器の導入による生産性向上なども対象になるため、最新のネイルマシンの導入による施術時間短縮にも活用できるでしょう。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、日本商工会議所が行っている小規模事業者に限定した補助金制度です。従業員数が5人以下から利用でき、販路開拓のための取組全般に対して補助が受けられます。

商工会議所の作成した要項によると、以下のような取り組みが販路開拓等の事例とのことです。

  • 新商品を陳列するための棚の購入
  • 新たな販促用チラシの作成、送付
  • 新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)
  • 新たな販促品の調達、配布
  • ネット販売システムの構築
  • 国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加
  • 新商品の開発
  • 新商品の開発にあたって必要な図書の購入
  • 新たな販促用チラシのポスティング
  • 国内外での商品PRイベントの実施
  • ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言
  • 新商品開発にともなう成分分析の依頼
  • 店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む。)

ブランディングのためのHP製作や店舗改装まで一通りが含まれているため、積極的に活用してみましょう。補助上限額は50万円とし、補助率は対象経費の3分の2以内が対象です。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナウィルスの影響を受ける事業者を支援することに重点を置いた補助金制度です。複数あるコースのうち、コロナ回復加速化枠ならネイルサロンでも受給可能です。

コロナ禍の経営悪化により事業再生が必要な状況の事業者へ、以下の取り組みに対して支援が受けられます。

  • 新市場への進出
  • 事業・業種転換
  • 事業再編
  • 国内回帰
  • 地域サプライチェーン維持・強靭化
  • 上記取組を通じた規模の拡大など

ネイルサロンであれば、たとえば本業に加えてスクール事業を開始した場合などは再構築要件に該当する可能性が高くなるでしょう。

補助対象費には、建築・改修費や機械装置・システム構築費や広告宣伝費、技術導入費(ネイル資格の取得費用)も含まれます。補助上限額は5人以下でも1,000万円が受給でき、補助率は3分の2以内が対象なため、事業進出に伴う大幅な改修工事もしやすくなります。

まとめ

ネイルサロンで利用できる補助金・助成金制度について解説しました。この記事でのポイントは、以下の通りです。

  • 助成金のほうが受給難易度は低く、条件さえ満たせば受給ができる
  • 補助金・助成金はどちらも基本的に返済は不要になる
  • 自宅型ネイルサロンなら100万円以下、店舗型ネイルサロンなら250万円程度の初期費用が必要となる
  • 補助金・助成金制度は開業時だけでなく、採用や長期経営でも利用できる

補助金・助成金制度は、知らなければ利用できないものです。募集要項を見ても複雑なため、最初は利用に抵抗を覚えるかもしれません。

しかし、本記事の事例で紹介したように、専門家の知恵を借りたり、支援してくれる窓口へ相談に行ったりすることで、意外な支援制度が見つかる可能性があります。

本記事を参考にして、興味を持った方はぜひさまざまな補助金・助成金制度を活用してみてください。

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Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。