開業直後は順調でも徐々に集客がうまくいかなくなったり、スタッフが辞めてしまったりして失敗に終わるケースもあります。
実際開業してみると、はじめのスタートダッシュは結構よかったんです。でも3カ月でスタッフが全員辞めて、受けた融資も底をつきました。
集客を成功させるためには、立地や競合を調べてテナント選びをする必要があります。またスタッフが離職しないためには、採用戦略を考えて整骨院にマッチした人材を雇うことが大切です。
また採用や経営への抵抗感や苦手感があって整骨院の開業に踏み込めない場合は、採用に対する考え方を変えてみるのもおすすめです。自分の足りない部分を補ってくれる仲間を集めるようなイメージで人材を採用すると、開業に前向きになれるかもしれません。
自分のなかでは映画『アベンジャーズ』みたいな組織にしたいなと思っていて、アイアンマンみたいなカリスマな人もいるけど、強いハルクやナターシャのような女性も活躍する。それぞれ自分にはないアイデンティティを持っている組織にしたいなと思っていました。そうすると、自分よりも魅力的な先生、自分よりも人気がある先生が増えてエンパワーメントされてきました。
整骨院を開業を成功させるためには、集客や採用戦略などについて総合的に考えて持続可能な経営体制を整えることが大切です。
本記事では整骨院を開業する流れについて、保険請求に必要な手続きに触れながら解説します。さらにこれからの整骨院開業を成功させるためのポイントやおすすめの補助金も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
整骨院を開業する流れ
保険を取り扱うことを前提に整骨院を開業する場合、次の流れで準備を進めるとよいでしょう。
- 施術管理者の要件を確認する
- 整骨院のコンセプトを考える
- 事業計画書を作成する
- 資金を調達する
- 整骨院の立地を決める
- 内装工事を依頼する
- 施術機器や備品を購入する
- 開設届けを提出する
- 請求代行団体への加入を検討する
- 保険請求に必要な書類を提出する
- スタッフを雇用する
- 集客方法を考える
- 整骨院を開業する
それぞれの過程を詳しく解説するので、参考にしてください。
施術管理者の要件を確認する
療養費の受領委任を取り扱う整骨院を開業するためには、柔道整復師の資格を取得するだけではなく施術管理者になる必要があります。施術管理者になるための条件は次のとおりです。
- 実務経験期間
- 施術管理者研修の受講
受領委任とは、患者様に代わり柔道整復師が施術にかかった療養費を保険者に請求する仕組みです。整骨院で保険を扱うためには受領委任の取り扱いが必要であるため、開業前に条件を満たしているかどうか確認してみてください。
なお、受領委任を扱わずに自費施術を専門とした整骨院を立ち上げる場合は、ここで紹介する条件を満たす必要はありません。
実務経験期間
令和6年4月以降に施術管理者の届出を行う場合、3年の実務経験を満たす必要があります。なお、届け出る時期によって実務経験の期間には次の違いがあります。
「施術管理者」の届出期間 |
実務経験の期間 |
---|---|
平成30年4月から令和4年3月まで |
1年間 |
令和4年4月から令和6年3月まで |
2年間 |
令和6年4月以降 |
3年間 |
※「施術管理者の要件について|厚生労働省」をもとに作表
職場の上司や学校の先輩に話を聞いて、開業を目指すことがあるかもしれません。その場合、届出の期間ごとに必要な実務経験の期間が異なる点に注意しましょう。
施術管理者研修の受講
施術管理者研修は、適切な保険請求と質の高い施術をできる柔道整復師を育てることを目的に、柔道整復研修試験財団によって実施されます。2日間にわたり、合計16時間のプログラムが実施されます。
費用は2万円でインターネットの申し込みができ、会場での受講とオンライン受講を選べます。
整骨院のコンセプトを考える
整骨院のコンセプトを考える場合、どのような整骨院にしたいのかをはっきりさせることが大切です。ターゲットや競合との差別化、施術メニュー、単価などを明確にしてコンセプトを決めましょう。
モアリジョブの事例には、たとえば次のようなコンセプトを抱える整骨院があります。
「海と空のくじら整骨院」は子連れのお母さんをターゲットに、施術後のケアや予防のトレーニングなど体づくりに特化しています。
あとは、産後骨盤矯正をはじめとした美容メニューにも力を入れています。
以上のようにターゲットを決めて、それに合わせた施術メニューを考えるとコンセプトを明確にしやすくなります。以降では、コンセプトの作り方について詳しく解説します。
ターゲットを決める
ターゲットを明確にするためには、はじめに自分自身が得意とする施術手法や経験、キャリアを洗い出し、どのような顧客の悩みを解決できるのかを考えるとよいでしょう。実際にターゲットを考える場合は、次に示すような顧客のステータスを考えてみてください。
- 年齢層
- 性別
- 結婚の有無
- 収入
- 職業
- 症状
たとえば、以前勤めた整骨院でスポーツ外傷をメインに対応していた場合、ケガをした運動部の学生やスポーツ愛好家、アスリートなどから具体的なターゲットを考えるとよいでしょう。
ターゲットをイメージできない場合は、過去に施術したことのある顧客をイメージするのもおすすめです。
競合を調べる
開業を成功させるためには、競合と差別化したコンセプトを考えることも大切です。そのためにも開業する地域にて、競合店の客層や価格、サービス内容、スタッフ人数などについて調べておきましょう。
たとえば若手スタッフを多く抱え、低価格を売りにする競合店が多い地域で開業する場合、高単価で落ち着きのある整骨院で差別化する方法が考えられます。
施術メニューを決める
施術メニューを決める際には、ターゲットに合わせたサービスにする必要があります。
たとえばアスリートをターゲットにした整骨院を開業する場合は、テーピングやスポーツマッサージ、EMSなどの電気治療が施術メニューとして考えられます。
さらに運動部に所属する学生をターゲットにする場合は、保険を取り扱うようにして施術単価を抑えた方が集客しやすくなるでしょう。整形外科医院との提携も視野に入れておくと、骨折や脱臼などの医師の同意が必要な外傷についても対応しやすくなります。
一方で30~40代の働く年齢層がターゲットであれば、肩こりや腰痛などの慢性症状を軽減するような施術メニューやリラクゼーション系のメニューを作ると集客しやすくなる可能性があります。その場合、保険施術以外にも、自費メニューの充実も図る必要があるでしょう。
施術単価を決める
整骨院で施術単価を決める場合、まずは保険施術と自費施術を分けて考える必要があります。保険施術の場合は、決められた療養費に対して年齢ごとに決められた保険の負担割合(1~3割)に応じて、窓口で支払う料金が決まります。
一方で自費施術の料金は、自由に決められます。少人数で開業した場合、大手のグループ整骨院や整体院のような低単価を設定すると経営が苦しくなる場合があるため、単価を落とし過ぎないように注意しましょう。
適切な単価を設定するためには、目標とする月の売上や営業日数、1日に対応可能な顧客数から逆算することをおすすめします。
事業計画書を作成する
ここでは、事業計画書に書くべき内容と相談先として活用できる商工会議所について解説します。
事業計画書に書くべき内容
事業計画書に書くべき内容は次のとおりです。
- 事業計画書には、主に次の内容を記載します。
- 事業をはじめる動機
- 経営者の略歴
- 取り扱うサービスについての詳細
- 従業員数
- 借り入れの状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(売上高や経費)
日本政策金融公庫では、次の書式が見本として紹介されています。
▼事業計画書(創業計画書)の具体例
事業計画書は融資を受ける際にも提出が必要な書類です。融資を受けて整骨院を開業しようと考えている場合は、商工会や商工会議所に相談して事業計画書を作成するのもおすすめです。
商工会・商工会議所の活用
商工会・商工会議所とは、地域における商工業者の経営改善や地域経済の活性化を目的に作られた公共機関です。商工会や商工会議所のある地区内で事業を営んでいる場合は、法人や団体、個人を問わず誰でも入会できます。
事業計画の相談も受け付けているので、事業計画書の書き方が分からない場合は相談するとよいでしょう。商工会議所に相談することで、日本政策金融公庫や地銀、信用金庫から融資を受けやすくなる可能性があります。
たとえば東京商工会議所には、「創業支援融資保証制度」と呼ばれる制度があります。この制度では、商工会議所から計画書の作成から企業後のフォローアップまでのサポートを受けられるうえに、保証協会を介して融資の斡旋も受けられます。
▼東京商工会議所に相談して民間の金融機関から融資を斡旋してもらう仕組み
東京以外の商工会や商工会議所でも、創業支援制度が準備されています。インターネット検索に、「地域名 商工会」「地域名 商工会議所」などのキーワードを入れて調べてみるとよいでしょう。
資金を調達する
融資の相談先としては、日本政策金融公庫や地方銀行、信用金庫などが考えられます。他には、親戚などから援助を受けるケースもあります。それぞれについて解説するので、自分に合った資金の調達法を考える際には参考にしてください。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は国民生活の向上を目的に作られた政府系金融機関です。整骨院を開業する際は、新規開業資金として設備資金や運転資金の借り入れについて日本政策金融公庫に相談できます。
また女性や若者、シニアで開業する場合は通常よりも金利面などで有利な条件で融資を受けられるケースがあります。整骨院を新規開業する場合は、資金の調達先としてはじめに検討するべき金融機関です。
地方銀行
地方銀行は地域の発展を目標に掲げていることから、新規開業での借り入れが難しい大手銀行とは異なり、創業融資をしてもらえるケースがあります。
ただし営利を目的に運営されるため、日本政策金融公庫よりも財務状況を厳しくチェックされます。手持ちの資金を十分に確保して相談に行くことが大切です。(※1)
※1 参考:Tips Note|税理士法人 Bricks&UK
信用金庫
信用金庫は営利を目的としておらず、地域の相互扶助を目的に設立された協同組織です。地方銀行よりも融資を受けやすい反面、金利が若干高めに設定される傾向にあります。(※2)まとまった資金を借り入れしにくいため、開業後に事業を拡大する場合は信用金庫から地方銀行へとメインバンクを切り替えることも考えておく必要があります。
※2 参考:税理士法人ユア・サポート
援助
親戚や親などから資金援助を受けられる場合は、それを頼るのも1つの手段です。資金援助を受ける場合は、利息を付けて返済するようにしましょう。利息を付けずに元本のみを返済すると、支払っていない利息金額が贈与とみなされて、贈与税が発生する可能性があります。
また支援金額が110万円を超えて、それが返済されない状態が続くと全額が贈与税と見なされる可能性もあるため注意してください。贈与税と見なされないためには、110万円を超える支援を受けたら、毎月必ず返済することが大切です。
整骨院の立地を決める
整骨院の立地を決める際には、近隣店舗の調査と需要の確認が欠かせません。
近隣店舗の調査
近隣店舗を調査する目的は、地域住民が利用するサービスの内容や価格帯および、店舗の雰囲気や利用者層を把握するためです。また同時に、整骨院や整体院、鍼灸院など、どのような競合店舗がどれだけ存在するのかを調べて、他院との差別化を図れるかどうかを確認する必要があります。
保険を取り扱う場合は、提携先となり得る整形外科やその他クリニックが存在するかどうかを確認するのもおすすめです。近隣の医療機関と提携できれば、外傷の患者さんや交通事故治療を受けるために来院した患者さんを、レントゲン検査へとスムーズに誘導しやすくなります。
需要の確認
どのような施術サービスに需要があるかどうかを調べることも大切です。開業予定のテナント前を通る人の属性や、人通りの多さなどを確認しましょう。そうすると、ターゲットが近隣に住んでるのかどうかを見極められます。
また駅やバス停などの整骨院に到達するまでの導線をチェックしておくことも大切です。駅やバス停から整骨院が遠い場合は、駐車場の有無を確認して、自動車での来院が可能かどうかも確認しましょう。
内装工事を依頼する
内装工事を行う際は、まずは整骨院の設置基準を守る必要があります。またターゲットに合わせたレイアウトを意識すると、集客しやすくなります。
整骨院の施設基準
柔道整復師法では、施術所の構造設備について次のように定められています。
一 六・六平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
二 三・三平方メートル以上の待合室を有すること。
三 施術室は、室面積の七分の一以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
四 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
引用:柔道整復師法|第十八条
施術室だけではなく、待合室の確保が必要な点がポイントです。窓が少なく外気に開放すべき面積を満たせない場合は、内装工事をする際に換気設備の設置も検討しましょう。
ターゲットに合わせたレイアウト
施設基準を守ったうえで、ターゲットに合わせたレイアウトを考えると顧客満足度を高めたり、ターゲットに向けて設備をアピールできたりします。ターゲットごとにニーズの具体例を挙げると、次のとおりです。
- 女性がターゲットであれば化粧台や鏡の設置
- 子育て世代がターゲットであればキッズスペースの設置
- 学生がターゲットであれば待合室にマンガを設置 など
施術機器や備品を購入する
内装工事と同時に、設備機械や備品の購入を進めましょう。とくに整骨院で保険を取り扱う場合は、電気治療に使う器械が欠かせません。他にも、温罨法(温める施術)に利用できるマイクロ波やリラクゼーションとして活用できるウォータベッドなどを導入することも多いです。
施術機器にかけるコストを安く抑えたい場合は、専門の業者から中古機器を購入するとよいでしょう。一方で新しい器械を導入する場合は、メーカーやディーラーとリース契約を結ぶのが一般的です。また備品を揃える場合は、ECサイトを活用すると便利です。施術機器や備品の購入について詳しく解説します。
中古機器を購入
整骨院を開業する場合、施術に必要な機器を中古で購入することもあります。新品よりも安価に購入できる点が魅力で、50~60%の価格(※1)で購入可能です。融資の金額が想定よりも下回って資金が足りない場合などに、中古機器の購入を検討するとよいでしょう。
※1 参考元:一般社団法人 全国統合医療協会
リースの活用
新品の器械を購入する場合は、リースを活用するのが一般的です。リース契約を結ぶと毎月リース料をリース会社に支払いながら、機器を使用することになります。リースの仕組みを図式化すると次のとおりです。
▼リース契約の仕組み
メーカー(ディーラー)が施術機器を整骨院に納品するとリース会社から代金が支払われます。整骨院は毎月の定額を決められた期間リース会社に支払うのが一般的です。
リース契約を結んだあとは数年に渡りリース料を支払うことになり、途中解約をできない点は注意が必要です。資金計画を立て、リース料を払い続けても経営的に問題がないかどうかを十分に検討して契約しましょう。
ECサイトの利用
タオルやテーピング、包帯などはECサイトを利用すると便利です。まとめ買いで比較的安価に購入できるので、「トワテック」や「アトラスストア」、「からだはうす」などの複数のECサイトを比較して利用を検討するとよいでしょう。
開設届けを提出する
整骨院を開業したら、保健所に開設届を提出しましょう。整骨院は許認可制なので、開業前ではなく開業後に開設届けを提出します。
▼柔道整復師の施術所開設届の一例
引用:和歌山市
請求代行団体への加入を検討する
保険を取り扱う場合は、保険請求団体へ加入するのもおすすめです。保険の請求代行団体とは保険請求業務や入金チェックを行うために、整骨院や接骨院を営む柔道整復師が集まって作られた組織ですが、なかには企業が運営する請求代行団体もあります。
▼請求代行のシステム
請求代行団体のメリットやデメリットを紹介します。
メリット
請求代行団体に加入すると、保険請求業務についてサポートを受けられます。受領委任払いを介するために必要な書類の提出も支援してくれるため、保険の取り扱いをはじめるにあたってどうすればよいか分からない場合は、相談するとよいでしょう。
また保険の請求内容について保険者から疑義が生じた場合の対応についても相談できます。保険講習会や技術セミナーなど、さまざまな講座が開かれる団体もあるので、自分にあった団体に加入するとよいでしょう。
デメリット
請求代行団体のデメリットは、入会金や年会費、さらに請求額に応じた手数料がかかることです。そのため、整骨院運営にかかるコストを抑えたい場合は、自分の力で保険請求業務を行う方がよいでしょう。
保険請求に必要な書類を提出する
保険(療養費)を請求するためには、事前に次の書類を提出する必要があります。
- 受領委任取扱い契約の届出(届出先:地方厚生(支)局)
- 共済組合・防衛省等への届出(届出先:共済組合・防衛省)
- 労災保険指定医療機関への届出(届出先:都道府県労働局)
- 生活保護法等指定施術機関への届出(届出先:管轄の福祉事務所)
- 税務署への届出(届出先:管轄の税務署)
申請後は保険を取り扱えるようになるまで日数を要する場合もあります。提出の際には、いつから保険を取り扱えるようになるのかを担当窓口に確認しておきましょう。
スタッフを雇用する
スタッフを雇用する際には、採用と教育の両輪で考えることが大切です。
採用
スタッフを採用したい場合は、まずは求人広告を出して人材を募集するとよいでしょう。求人広告の訴求力を高めるためには、求職者に疑問を抱かせないことが大切です。とくに給与は資格や経験、雇用形態ごとに具体的に書きましょう。
▼求人広告での給与欄の書き方に関する具体例
リジョブが提供するホワイトペーパーには、他にも求職者の興味をひく求人広告の書き方を多数紹介しています。下記より資料をダウンロードするとご覧になれますので、どうぞご活用ください。
「治療業界の方必見!応募が殺到した求⼈のみ厳選成功事例20選!」をダウンロードする
求人広告に応募があったら、面接をして採用するかどうかを決めます。その際は、既存スタッフの意見も取り入れると現場に適用しやすいスタッフを雇えるでしょう。
採用は僕も関与していますが、うちの社員が一緒に働きたいと思うか、どれだけ理念に共感しているかを大事にしています。僕が一緒に働いているよりも、他のスタッフが一緒に働いている時間の方が長いですから。僕のところに来る前に採用が決まっているケースが多くて、後は「ハンコください」っていう(笑)。
教育
複数のスタッフを教育するためには、まずはマニュアルを作成して業務内容を覚えやすくするとよいでしょう。さらに評価制度の整備や定期ミーティングの実施により、スタッフのモチベーションを維持することも大切です。
たとえばスタッフに将来のキャリアを聞き出して、それを積極的にサポートするとモチベーションを維持しやすくなるでしょう。
こちらの意見を押し付けすぎないようにすること、将来の自分の姿がイメージできるようになってもらうことです。
具体的にはスタッフが20年後にどうなりたいか、将来像を聞き出してそのために何が必要なのか?を考えるための個人ミーティングを月一で励行しています。どういう計画を立てれば理想像に近づけるのかアドバイスをして、個人のモチベーションアップに繋がればいいなと思って取り組んでいます。
集客方法を考える
店舗集客を実施する場合、オンライン集客とオフライン集客の両方をバランスよく行うことが大切です。ターゲットによって、利用する媒体が異なる点も加味する必要があります。
たとえば若年層はインターネットを利用する割合が高いため、オンライン集客に注力することをおすすめします。具体的にはホームページの作成や口コミサイトへの登録、SNSの活用などが考えられます。
一方で高齢者をターゲットにした店舗を開業する場合は、一般的な集客方法としてチラシの新聞への折込みやポスティングなどが考えられます。しかし整骨院の場合は、チラシで記載する表現について柔道整復師法を厳守する必要があります。そのため、チラシを使った広告で整骨院の特徴や魅力を伝えることが難しいです。
そこで高齢者がターゲットの場合は、地域イベントへの参加や既存顧客からの紹介を重視して集客するとよいでしょう。整骨院の地域イベントへの参加方法として、救護ブースを設置してそこで施術サービスを提供する事例があります。
救護ブースでは姿勢チェックが行われ、現状と今後 健康に過ごすためのアドバイスを行っていました。
また、普段から身体の痛みや悩みを抱えている方が相談に来られ、施術を受けながら家でできる予防ストレッチなどアドバイスも行っていました。
施術を受けられた方は「痛みがこんな短期で和らぐとは思っていなかった」や「同じ悩みを抱えている友人がいるので教えてあげたい」など嬉しい声が上がっていました。
引用:堺整骨院グループ
整骨院を開業する
整骨院を開業したあとも運営の方針や集客方法、人材採用について分析と改善を繰り返しながら、企業努力を続けることが大切です。
昨今は、整骨院も競合が増えて倒産件数が増加傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、2016年以降は一段と倒産件数の増加が顕著です。
競合の多い業界で経営を続けるためには、より一層の企業努力が求められるでしょう。
これからの整骨院開業を成功させるためのポイント
これからの整骨院開業を成功させるためには、採用の強化と広告ガイドライン動向の注視、自費メニューへの注力がポイントになります。それぞれについて詳しく解説します。
採用を強化する
整骨院や接骨院が増加傾向にあることや柔道整復師の合格者数が減っていることを考えると、今後は柔道整復師の数が減少する可能性があります。その結果、店舗数に対して柔道整復師が不足するかもしれません。
厚生労働省の発表によると、整骨院や接骨院の数は増加傾向です。平成30年以降は増加の割合が鈍化しましたが、令和4年には5万件を超えています。
※「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省」をもとに作図
2024年1月時点で全国にあるコンビニの数が約5万5千件(※3)であるため、整骨院や接骨院の数はコンビニの数に匹敵するほどです。さらに柔道整復研修試験財団によると、柔道整復師の合格者数は年々減少傾向です。
※3 参考元:コンビニエンスストア統計データ|日本フランチャイズチェーン協会
※「柔道整復研修試験財団」をもとに作図
平成25年の合格者数が7,102名だったのに対して、令和4年の合格者数は4,521名でした。合格者数が急激に減少している要因は受検者数が少ないことと、合格率が低下していることです。
柔道整復師になる人材が減少することで、競合の多い業界で人材確保がより難しくなることが予想されます。
次の記事では柔道整復師を採用するためのポイントを解説しています。整骨院を開業した後に採用に力を入れようと考えている場合は、ぜひ参考にしてください。
広告ガイドラインの動向を注視する
現在、厚生労働省では柔道整復師向けの広告ガイドラインについて話し合われています。広告については柔道整復師法でもルールが決められていますが、オンライン広告に関するルールが設けられていないため現状に合わなくなったのです。また柔道整復師が「整骨院」の名称を使うと、整形外科と誤認される恐れがあるとの疑義も生じています。
そこで医療広告ガイドラインをもとに、柔道整復師や鍼灸師、あんまマッサージ指圧師などの保管医療
を取り締まるための広告ガイドラインが作成されることになりました。
2018年より断続的に開かれている同検討会は、令和5年2月13日に9回目を迎え、今後も継続して話し合いの場が持たれる予定です。
話し合いの結果によっては、「整骨院」の名称を使えなくなったり、Web広告の取り締まりが厳しくなったりする可能性があります。整骨院の集客のあり方にも大きな影響を与える可能性があるため、検討会の成り行きを注視しましょう。
参考:あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会|厚生労働省
自費メニューに力を入れる
柔道整復師が請求する療養費は減少傾向にあるため、今後は自費メニューに力を入れて保険施術に依存しない経営を目指すことが大切です。厚生労働省によると、平成25年以降の柔道整復師の療養費は次のように推移しています。
※「柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)|厚生労働省」をもとに図式化
上記によると平成25年から令和2年にかけて療養費が一貫して減少していることがわかります。令和3年はかろうじて上昇しましたが、平成25年に比べると約1,000億円の減少です。
療養費が減少する背景として、保険請求の適正化によって柔道整復師が保険を適用できる症状が以前に比べ限られる点が挙げられます。
今後は保険施術による売上をカバーするためにも、自費施術に力を入れることが重要な取り組みの1つとなるでしょう。
整骨院開業に活用できる補助金
整骨院開業に活用できる補助金として、次の3つがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
それぞれについて概要を解説します。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際に、費用の一部を補助してもらえる制度です。開業時にこの補助金を活用する場合、創業枠に申し込むとよいでしょう。条件を満たすと、インボイス特例と合わせて上限250万円(※4)まで補助を受けられます。
整骨院の事例では、最新機器の導入で販路開拓を目指す事例があります。
従来、痛みがあってから治すために通院する整骨院(=その他大勢の整骨院)から今までにない整骨院を目指して補助金を申請。ターゲットを働く世代に絞って仕事のパフォーマンスを高めるための正しいカラダの動かし方を知り、しなやかなカラダづくりができる最新機具の設置を行う。
※4 参考元:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局
IT導入補助金
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者などが労働生産性の向上を目的に、ITツールを導入すると費用の一部について補助を受けられる制度です。開業後であれば、IT導入補助金の要件を満たせるため、補助金の申請ができます。
IT導入補助金を申請するためにはIT導入補助金支援事業者と連携する必要があります。IT導入補助金支援事業者はITベンダーとも呼ばれ、IT導入補助金を申請する企業を支援して、導入や申請のサポートをおこなうパートナーです。
▼IT導入補助金に申請する事業者と支援事業者の関係
引用:IT導入補助金2024
IT補助金を活用してITツールを導入するためには、IT導入支援事業者による対象ツールの登録が必要です。整骨院に関連するツールとしては、過去に姿勢分析ツールが補助金の対象ツールとして登録されたことがあります。
補助金交付対象ツールとして、クラウド型の業務支援ソリューション「ゆがみーる(R)クラウドPRO」が認定されました。これにより、中小企業・小規模事業者等が低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)に採択された場合、「ゆがみーる(R)クラウドPRO」の導入・運用費用の最大3分の2の金額を補助金として受け取ることが可能になりました。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、サービスの開発や試作品の開発、生産プロセスの改善のための設備投資に充てる費用を補助する制度です。整骨院もものづくり補助金への申請が可能で、過去にはエコー測定器を導入した事例があります。
捻挫、肉離れ、骨折の有無など皮膚の下の状態を可視化し、組織の損傷度を把握できる超音波スクリーニング検査を可能にするエコー測定器の導入に活用した。
たとえば同院では、野球チームに所属する小中高生が多く、試合日程が過密になると肘に負担がかかり、疲労骨折や軟骨がすり減る症状が表れてくる。このような障害の度合いを、従来は施術者が手で押した時の痛みの度合い等で診断していた。しかし超音波エコーで測定できるエコー測定器であれば、患部のデータを高画質モニターで表示することで科学的エビデンスを把握でき、最適な施術の提供が可能になってくる。
まとめ
本記事を総括すると、次のとおりです。
- 整骨院を開業するためには、まずは施術管理者の要件を満たす必要がある
- 開業後は採用を強化して人手不足対策をすることも大切
- 補助金を活用する整骨院の開業を有利に進められる
とくに今後は、競合店の多さや柔道整復師の合格者の減少を加味すると、人手不足への対策が不可欠となるでしょう。整骨院の規模や売上の拡大を図りたいのであれば、採用戦略の策定や教育制度の整備まで視野に入れて開業の準備を進めることも大切です。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部