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アイリストが辞める本当の理由と即効性のある対策6選

アイリストが辞める本当の理由と即効性のある対策6選

採用に力を入れて多くのアイリストを雇用しても、数カ月で辞めてしまっては意味が無く、採用コストも無駄になります。しかし、効率的な採用活動を行い、定着率を上げるのは容易ではありません。

そこで本記事では、アイリストが辞める本当の理由に加え、即効性のある離職対策を6つ紹介します。「なぜアイリストが辞める理由を把握すべきなのか」という根本的な部分からお伝えするので、アイリストの定着率を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。

アイリストが辞める理由を把握すべき背景

厚生労働省の調査によると、アイリストが含まれる生活関連サービス業・娯楽業は、入職率32.8%、離職率28.1%と全産業平均(入職率16.4%、離職率15.4%)を大きく上回っています。特にパートタイム労働者においては、入職率49.2%、離職率36.9%と数値が非常に高いです。

よって、アイリストを含む美容業界は人材の流動性が高く、「辞める理由」の把握が経営上極めて重要であるといえます。

また、技術習得に時間がかかるアイリストの離職は、人手不足だけでなく、サロンの技術力低下やお客様離れにもつながる重大な問題です。そのため、アイリストが辞める具体的な理由を把握して対策を講じることは、サロン経営の成長にとって不可欠といえるでしょう。

アイリストの中途・新卒採用は難しい

厚生労働省の調査によると、アイリストが含まれる「生活衛生サービス」の有効求人倍率は約3倍と高く、1人のアイリスト志望者を3つの企業が取り合う状況です。競合が多くなると採用が難航しやすくなるだけでなく、採用コストも増大します。結果的に、中途・新卒採用が難しくなるでしょう。

また同調査によると、アイリストの33.8%が直近1年間で転職しており、他の美容関連職種と比べて転職意向をもつスタッフが最も多く、採用後の定着も課題となっています。

売上低下で倒産するリスクがある

アイリストの離職は、サロン経営に深刻な影響を与えます。日本政策金融公庫の調査によると、人手不足の小企業では約4割が「売上機会を逸失」していると報告されています。アイリスト業界も例外ではなく、熟練アイリストの離職は直接的な売上減少につながりかねません。

1(差し替え後)人手不足の影響 1.人手不足が与える影響

また、同調査では人手不足企業の15.5%が「残業代、外注費等のコストが増加し、利益が減少している」と回答しています。アイリストの離職に伴う採用コストの増加や、残ったスタッフの残業増加などがサロンの収益性を圧迫する要因です。

このような状況下で、アイリストの離職による顧客離れやコスト増加が続けば、資金力の乏しい小規模サロンにとって倒産リスクは現実的な脅威となるでしょう。

離職が連鎖して職場崩壊を引き起こすリスクがある

一件の離職から連鎖が生まれ、職場崩壊を引き起こすリスクもあります。たとえば、職場の中心人物だったベテランが辞めたことで、他の新人アイリストが不安になり、連鎖的に辞めてしまうといったケースです。

企業への聞き取りで「エース級の人材だった〇〇さんが辞めたことで、会社の将来に不安を覚えた若手社員たちが大量に連鎖退職した」という話を何度か耳にした。

引用元:読売新聞

こういった事態を防ぐためにも、アイリストが辞める理由を把握し、事前に対策しましょう。

アイリストが辞める理由

アイリストが辞める主な理由は次の通りです。

  • 肉体的につらい
  • 人間関係が上手くいかない
  • リピート客がつかない
  • 給与が上がらない
  • モチベーションが上がらない
  • プライベートと仕事が両立できない
  • キャリアアップしたい
  • 技術に自信がない
  • サロンの運営方針と合わない
  • 研修期間を乗り越えられない
  • 精神的なプレッシャーが強い

それぞれの理由について解説します。

肉体的につらい

アイリストの仕事は肉体的な負担が大きい職業です。まつ毛エクステンションの施術では、長時間同じ姿勢を保ちながら繊細な作業に集中し続けなければなりません。この状態が日々続くと、眼精疲労、肩こりや腰痛、手首や指の痛みといった問題が生じます。

実際に現場の声をみてみましょう。

社会人1年目アイリストです。
2週間前から腰が痛いです。
じっとしてるだけでも痛くて、座っても立っても苦痛です。
仕事に集中ができなくて、1週間前に整形外科に行きましたが異常なしでした。
鍼灸院行ったりしたのですが治りませんでした。
仕事が苦痛です。
これはただの腰痛ですか?

 

引用元:Yahoo!知恵袋

社会人1年目のアイリストです。

最近腰痛、肩こりに悩んでいます。

施術中もしんどくて、電車で座ってる時間も腰がしんどいです。

立ってる時は背中、肩首が重いって感じで、20歳で腰痛に悩んでいます。

腰のことも今後心配なので、1年経ったら辞めようと思っているのですが、もうすでに腰痛で仕事が辛いです。

引用元:Yahoo!知恵袋

人間関係が上手くいかない

特に小規模な美容サロンなどでは、限られたコミュニティ内で独特の人間関係が生まれがちです。少人数で働くため問題が生じると逃げ場がなく、スタッフ間で派閥が生まれて孤立するケースもあります。

さらに、技術の差による競争心や嫉妬心が人間関係の悪化につながるケースもあるでしょう。そういった人間関係によるストレスが「この職場から離れたい」という思いにつながります。

リピート客がつかない

アイリストは技術だけでなく、接客スキルも重要です。しかし、コミュニケーション能力の不足や施術に対する不満、お客様との相性などの問題から中々リピート客を獲得できないケースがあります。

多くのサロンでは指名料や歩合制を導入しており、リピート客の有無は直接収入に影響します。そのため、固定客を獲得できないことによる経済的・精神的な不安が退職へとつながるケースもあるでしょう。

私はアイリスト2年半です。

指名料はかからないお店なのですが私の顧客さんの再来頻度が1ヶ月以上周期的に開く方が多く、毎月の指名人数が安定しません。

(中略)

最近同期と比べて指名数が上がらないことにすごく落ち込みます。。

アドバイスなどあればぜひ教えて欲しいです。

引用元:Yahoo!知恵袋

給与が上がらない

国税庁の調査によると、日本の平均給与は460万円です。しかし、求人ボックスの調査によると、アイリストの平均年収は363万円となっており、約97万円の差があります。平均給与が低いと、アイリストは「このまま給与が上がらないのではないか」と不安を覚え、離職につながります。

アイリスト4 年目で年収約250万です。手取りが16~18万円台。ボーナスなし。北関東です。

これ、普通ですか?低いですよね?

給料上げる交渉してもほぼ変わらずでした。

引用元:Yahoo!知恵袋

モチベーションが上がらない

アイリストとして働き続けるためには、技術向上への意欲や顧客満足への喜びなど、モチベーションの維持が重要です。しかし、理想と現実のギャップ、技術的な壁、評価制度への不満などから意欲が低下する人もいます。

「理想の仕上がりを実現できない」「カウンセリングがうまくいかない」といった具体的な悩みも、モチベーション低下につながります。仕事への情熱が失われると、転職を考える要因となり、早期離職につながるのです。

プライベートと仕事が両立できない

アイリストは土日・祝日の出勤が基本で平日休みが多く、不規則な勤務形態になりがちです。また予約が詰まっている日は残業が多く、体力的にも消耗します。

このような働き方はプライベートとの両立を難しくし、退職を考える原因となります。特に結婚や出産後は、家族との時間を大切にしたいと考えるアイリストは多いため、仕事時間の超過は退職の原因になりやすいのです。

キャリアアップしたい

アイリストを辞める前向きな理由として、さらなるスキルアップや独立を目指すケースがあります。アイリストは技術を磨き、経営を学べば独立も可能な職業です。そのため、自分のサロンをオープンしたいという目標を掲げ、退職する人も多くいます。

個人の成長や目標に応じたキャリア選択として退職を選ぶのは、アイリストならではの特徴といえるでしょう。そのため、サロン側はアイリストがもつ多様なニーズに合った働き方を提供する必要があります。

技術に自信がない

アイリストは高度な技術が求められる職業です。たとえば、まつげエクステの装着には繊細な作業と確かな技術が必要なため、「自分は向いていないのでは」と技術面で不安を抱える人もいます。特に、経験の浅いアイリストは、施術がうまくいかなかった場合の口コミで自信を失うこともあります。

アイリストに転職をして2ヶ月です。

なかなか技術が上手くいかずこのまま続けていいのか迷っています。

会社の本部と店舗の連携もあまりできてないのか不安な事ばかりです。

まだ研修中なのでモデルを呼んでの入客ですが、なかなかうまくいかず自信もなくなってきています。

引用元:Yahoo!知恵袋

上記事例のように、結果が出ないことで不安が募り、他の仕事への転職を選択するケースも少なくありません。

サロンの運営方針と合わない

サロンスタッフとして働く場合、施術や接客に関する細かなマニュアルに従うことが求められます。経験を積むにつれて自分なりのスタイルが確立されると、サロンの料金設定やサービス内容、接客方針などに疑問や不満を感じる人もいます。このような価値観の不一致が重なり、退職を検討する人も多いでしょう。

また、下記事例のように、入社前に聞いていたサロン方針と、実際に働いて感じたサロン方針に違いを感じて苦しむ人もいます。

現在アイリストをしています。会社の方針に違和感を感じています。

売り上げを上げるために、今後2枠で予約を取れと言われています。まつげカールで放置時間があるためその時間がもったいないからと。今はどこのサロンもそうしていると言われました。

(中略)会社として売り上げを上げていきたい気持ちもわかりますが、技術者としてお客様の気持ちを考えたら一対一でしっかり施術に入りたいと言う気持ちの方が大きいです。

引用元:Yahoo!知恵袋

研修期間を乗り越えられない

アイリストとして働き始める際の研修期間は、基礎技術や接客マナーを学ぶ大切な時間ですが、その厳しさから挫折してしまう人もいます。アイリストは、デリケートな目元を扱うため常に緊張感が必要で、予約時間内で作業を終えるスピードも求められます。

この緊張感とプレッシャーが未経験から始めたアイリストにとって大きな壁となり、研修期間中に辞めてしまう人もいます。

また、研修期間中に時給が発生しないサロンもあります。そのため下記事例のように、肉体的な疲労と将来的な不安が重なり、研修中に辞める人も多いです。

私は今、アイリストとして働いていますが未経験で入社したばかりです。

(中略)

私はまだ始めたばかりなのでお給料は頂いてませんが、先輩の話では1ヶ月目は6万円程だとおっしゃっていました。

研修期間中はその程度が続くみたいです。

練習時間は時給がつきません。

ちなみに10時30分出勤、19時退社です。

引用元:Yahoo!知恵袋

精神的なプレッシャーが強い

アイリストの仕事は、お客様の目元を扱うという責任の重さから、常に精神的なプレッシャーがあります。一歩間違えば目のトラブルを引き起こす可能性もあり、その緊張感は決して軽くありません。

また、限られた時間内で高品質な施術を提供するプレッシャーや、お客様の期待に応えられるかという不安も常につきまといます。このような継続的なストレスに耐えられないと感じ、別の職種への転職を選ぶアイリストも少なくありません。

春からアイリストとして働き始めましたが、もう辞めたいです。

理由としては、クレームが来てお店の評判を落としてしまうかもという恐怖、仕上がりが上手くできる自信がいつまでも自信が持てない、ミリ単位の作業を何時間も行う辛さ、リピートしてきてくださった方を途切れさせてしまうかもという恐怖(以下略)

引用元:Yahoo!知恵袋

アイリストの離職率を抑える対策6選

アイリストの離職率を抑える対策は次の通りです。

  • 雇用形態の増加
  • 給与額の見直し
  • 休日やプライベートの充実化
  • 人間関係を加味した採用
  • 個人面談の実施
  • キャリアアップのサポート

それぞれの対策について解説します。

雇用形態の増加

現在、働き方改革やコロナ禍の影響によりニーズが多様化し、雇用形態が増加しています。そのため採用担当者は、この従業員のニーズに合った雇用形態を把握する必要があります。

▼各年齢層別の希望雇用形態

2.各年齢層別の希望雇用形態

リジョブによる上記調査の通り、とくに30代以降は、アルバイトでの雇用を希望している人が多いです。正社員とアルバイトでは、効率的な募集方法が異なるため、どの雇用形態を優先するべきか見極めましょう。

給与額の見直し

給与額が平均を下回っている場合は、見直しが必要です。リジョブの調査によると、アイリストの月給(エリア別)は次の通りとなっています。

▼【エリア別】アイリストの時給・月給

3.【エリア別】アイリストの時給・月給

▼【都心部】アイリストの時給・月給

4.【都心部】アイリストの時給・月給

このように、アイリストの給与はエリアによって異なります。自院のエリアを確認し、対応の有無を決めましょう。

休日やプライベートの充実化

アイリストが働くうえで重要だと思っていることを把握し、現場に反映しましょう。

たとえば、ホットペッパービューティーの調査によると、アイリストは下記を重要視しています。

  • 休日日数(47.0%)
  • 勤務時間(47.0%)
  • 仕事とプライベートの充実化(41.1%)

その他にも、アイリストは「サロンの雰囲気やテイストが合う(41.1%)」「給与(54.3%)」などを重視していますが、上記の3つは「時間」という点で共通しています。

よって、担当者は「アイリストが働く時間を適切に設定できているか」を確認する必要があります。長すぎる場合は、すぐに対応しましょう。

人間関係を加味した採用

アイリストが辞める理由として多いのが「人間関係」であり、チームの雰囲気や相性が重要です。そのため、採用時には技術力だけでなく人柄や価値観、サロンの理念との相性も重視しましょう。

具体的には以下のような対策が効果的です。

  • 面接時に既存スタッフとの交流機会を設ける
  • トライアル期間を設けて相性を双方から確認する
  • チームワークを重視する質問を面接に取り入れる
  • サロンの雰囲気や価値観を明確に伝える

技術は教育で身につけられますが、人間性や価値観の一致は簡単には変えられません。長期的に働いてもらうためにも、最初の採用段階から人間関係を意識した選考が重要です。

「CHESTNUTS Nail&Eyelash」で採用担当を務める鈴木茜さんも、現状の人間関係を加味した採用を重要視しています。

とくに注意して見ているのは、他のスタッフとのバランスです。このチェックは円滑なサロンワークを実現するために、とても重要だと考えています。

サロンには、さまざまな個性を持ったスタッフがいます。魅力的なサロンにしていくには、1人ひとりがその個性を強みにしていかなければなりません。

そこで「もしかしたら、あのスタッフとうまく嚙み合わないかもしれない」など、サロンのバランスが崩れると感じた場合には技術力があってもあえて採用を見送っています。

引用元:モアリジョブ|「CHESTNUTS Nail&Eyelash」採用担当 鈴木茜さん

個人面談の実施

アイリストの悩みや不満は、日常業務の中では気づきにくいものです。定期的な個人面談を実施すれば、早期に問題を発見して解決できます。

効果的な個人面談のポイントは以下の通りです。

  • 月に1回など定期的なスケジュールを設定
  • 業務や数字の話だけでなく、プライベートや将来の希望を聞く
  • 面談の際は話しやすい環境や時間帯を選ぶ
  • 聞いた意見に対して可能な限り対応する

特に「聞きっぱなし」にならないことが重要です。面談で出た意見や要望に合った適切なフィードバックをし、対応の結果を伝えることで信頼関係を築けます。

キャリアアップのサポート

アイリストとして働く多くの人は、スキルアップや成長を望んでいます。そのため、キャリアアップのサポート体制を整えれば、モチベーション向上と離職防止につながります。

具体的なサポート方法は次の通りです。

  • 技術研修や勉強会の定期開催
  • 外部セミナーへの参加費用補助
  • 認定資格取得のサポート
  • 店長やマネージャーなどのポジションを設置
  • 将来の独立をサポートするプログラムの提供

特に、将来独立したいという希望をもつアイリストも多いため、サロン内でのキャリアパスだけでなく、独立を視野に入れたサポートを検討するのは効果的です。独立したスタッフとの良好な関係は、将来的なネットワーク構築にもつながるでしょう。

アイリストが辞める理由を踏まえた採用活動が重要

前述の通り、アイリスト業界の有効求人倍率は約3倍と高く、採用競争が激しい環境です。採用成功のカギは、アイリストが辞める理由を理解し、それを踏まえた戦略を立てることにあります。

まず、自社の価値観や特徴を明確にして「技術向上に力を入れている」などの方針を言語化しましょう。次に、転職率の高いアイリスト業界の特徴を理解したうえで、適切なターゲット像を設定します。

また、採用媒体選びも重要です。アイリストを採用する場合は、美容系専門の求人サイトや自社ホームページの活用が効果的です。この際、約5割のアイリストが子育て中という特徴を踏まえて柔軟な働き方をアピールすれば、応募率の向上が見込めます。

経験者の採用が難しい場合は未経験者も検討し、研修内容を具体的に示して安心感を与えるとよいです。

こういったアイリストの実践的な採用方法について、さらに詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

まとめ

アイリストが辞める理由はさまざまなので、サロン経営者は退職の実態を把握し、採用活動に反映する必要があります。

アイリストを採用する際のポイントは次の通りです。

  • 自社の採用目的や価値観などを明確にする
  • 「なぜアイリストが辞めるのか」を把握する
  • 現状とこれまでの傾向を加味した採用戦略を立てる

まずはアイリストが辞める原因を把握することから始め、自社に合った採用戦略を構築していきましょう。

まとめ

アイリストが辞める理由はさまざまなので、サロン経営者は退職の実態を把握し、採用活動に反映する必要があります。

アイリストを採用する際のポイントは次の通りです。

  • 自社の採用目的や価値観などを明確にする
  • 「なぜアイリストが辞めるのか」を把握する
  • 現状とこれまでの傾向を加味した採用戦略を立てる

まずはアイリストが辞める原因を把握することから始め、自社に合った採用戦略を構築していきましょう。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。