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採用マーケティングとは?進め方や使えるフレームワークを解説

採用マーケティングとは?進め方や使えるフレームワークを解説

採用戦略の一環として、採用マーケティングに取り組む企業が増えてきました。採用マーケティングは企業規模に関係なく取り組める戦略です。企業規模よりも企業の強みや特徴を持っていることが重要です。

次のようにお考えであれば、ぜひこの記事をご覧ください。

「戦略的に採用活動を行いたい」

「採用マーケティングのメリットや進め方、フレームワークを知りたい」

「美容業界における採用マーケティングの事例を知りたい」

この記事では、採用マーケティングの概要やメリット・デメリットとともに、進め方や使えるフレームワーク、美容業界での成功事例を紹介します。小規模企業における採用マーケティング戦略の取り組み方が理解できるので、ぜひ最後までご覧ください。

採用マーケティングとは

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を取り入れた採用戦略のことです。マーケティングでは、商品やサービスの認知から購入までの一つひとつの行動を区切り、各プロセスの施策を講じます。

マーケティングには「顧客が顧客を呼ぶ」という考え方があります。これまでの採用活動では、転職顕在層のみにフォーカスを当てていました。採用マーケティングでは、入社後の定着・活躍までの戦略を立てることにより、アプローチする範囲を広げる狙いもあります。

採用マーケティングが注目されている背景

近年の日本は、少子高齢化による労働人口減により売り手市場となっています。厚生労働省の調査によると、月間有効求職者と月間有効求人数は以下のとおりで、2015年度を境に求職者に対し求人数が上回っていることがわかります。

▼月間有効求職者と月間有効求人数の年度別比較

厚生労働省の調査よりグラフ化して掲載

Wantedlyの調査によると求職者が会社に求める価値観は多様化しており、知名度や待遇だけではく、有意義な仕事やカルチャーマッチなどの項目も求められていることが明らかになりました。

近年では、スマートフォンやタブレット端末などの普及とともに、YouTubeやX(旧:Twitter)、Instagramなどのプラットフォームが登場しました。それにより、これまでのマスメディアを中心としたマーケティングからデジタルマーケティングに移行しつつあります。

YouTubeやX(旧:Twitter)、Instagramなどを活用したデジタルマーケティングは、比較的導入障壁が低く、規模の小さな企業でも始められます。売り手市場のためアプローチ対象を広げる必要が出てきたことや、デジタルマーケティングの難易度が下がったことにより、採用マーケティングが注目されるようになりました。

採用マーケティングのターゲット

採用マーケティングのターゲットは、潜在層を含む転職希望者だけではありません。「選ばれる側」になった企業は、アプローチ対象を広げる必要が出てきました。転職希望者以外のターゲットに挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 自社の従業員
  • 退職者
  • 過去の不採用者
  • 内定辞退者

マーケティングの考え方を採用活動に当てはめると、「従業員=既存顧客」です。従業員が自社のファンになれば、口コミやSNSで好意的な情報を発信してもらえるため、リファラル採用につながります。退職者は「アルムナイ」とも呼ばれ、アルムナイ採用を導入する企業も存在します。

パーソル総合研究所の調査によると「元の会社に戻りたい」と考えている人が、8.3%も存在することが明らかになりました。アルムナイを採用マーケティングのターゲットにすることは、即戦力としての期待だけではありません。アルムナイは、マーケティングでいえば「製品やサービスの体験者」です。たとえ応募に至らなかったとしても、好意的な情報発信者としても期待できるでしょう。

好意的な情報発信者としてのターゲットには、不採用者や内定辞退者も該当します。選考参加者への対応が誠実ではなかった場合、口コミやSNSでネガティブな情報を発信されてしまう可能性があるでしょう。

選考参加者もターゲットとしてアプローチすることにより、ネガティブな情報の拡散を防止できるだけでなく、再び候補者となる可能性もあります。採用活動に関わった人材を広くターゲットにし、情報発信者としての役割も期待することが採用マーケティングにおけるターゲットの考え方です。

採用マーケティングにおけるファネル

マーケティングでは、消費者が商品を認知してから購入に至るまでの意識変化を「ファネル」で表現します。ファネルの元となる意味は漏斗(ろうと)です。購入に近づくにつれて数が減っていく現象を、液体が漏斗に流れていく様子に例えています。

採用マーケティングでは、認知から入社までのプロセスをファネルとして捉え、各ファネルに対して施策を講じることにより、入社やその後の採用活動につなげます。

採用ブランディングとの違い

採用マーケティングと似た用語に「採用ブランディング」があります。採用ブランディングとは、自社をブランド化してファンを増やすことにより、理念に共感した人材の採用につなげることです。一方、採用マーケティングはマーケティングの考え方を取り入れたうえで、認知から購入までの各プロセスの施策を講じるものです。

採用マーケティングでも、認知や興味に対する施策としてブランド化に取り組みます。そのため、採用ブランディングは採用マーケティングの施策のひとつといえます。

採用マーケティングのメリット

むすび株式会社の調査をもとに、採用ブランディングの実践で実感できた効果を、回答割合の高いものから順に並べると以下のとおりでした。

  1. ターゲティングの明確化:53.5%
  2. 認知度向上:39.9%
  3. 競合との差別化:36.5%
  4. 採用フローの明確化:36.1%
  5. エントリー数の増加:31.9%
  6. 説明会や面接参加者数の増加:22.6%
  7. 応募者の質(自社へのマッチ度合い )が向上:21.9%
  8. 内定承諾率が向上:19.4%
  9. 採用予算の抑制:14.6%
  10. 離職率低下:17.0%
  11. 競合他社ではなく自社への入社が増えた:9.0%
  12. 特にない:1.0%
  13. わからない:0.7%

採用マーケティングに取り組めば戦略的な採用が可能です。それによるメリットは以下のとおりです。

  • 市場に応じて戦略を立案できる
  • ターゲット層に対する理解が深まる
  • 応募者数の増加
  • 採用ミスマッチの防止
  • 採用活動コストの削減

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

市場に応じて戦略を立案できる

求人サイトやハローワークなどの全方位型の求人広告では、他の求人広告に埋もれると、自社の採用ターゲットにアプローチするのは困難です。求職者のニーズを把握せず、自社が求める条件に合致する人材を探しても、求職者側から選ばれる可能性は低いでしょう。

特に近年では働き方に対する価値観が多様化しています。採用マーケティングに取り組めば、求職者のニーズや価値観を把握できるため、市場に応じた戦略を立てられます。

適切な施策を講じられる

マーケティングでは、顧客の分析が欠かせません。顧客を分析せずに商品やサービスを提供した場合、ターゲット層が集まらない場所で提供してしまう可能性があります。それでは、どんなに良い商品やサービスでも購入に至りません。

課題やニーズ、行動特性を分析し、ターゲット層のニーズや集まる場所を理解することにより効果のある施策を考えられます。採用マーケティングであれば、ターゲットとなる人材のニーズや行動特性を分析すれば、企業に求めるものや出会えるチャネルを想定できるでしょう。

ターゲット層が企業に求めるものや出会えるチャネルがわかれば、アプローチの手段を最適化できます。それにより、自社で活躍できる人材を採用できる可能性も高まるでしょう。

応募者数の増加

採用マーケティングにおける認知や興味に対する施策としてブランド化への取り組みが必要です。前述のむすび株式会社の調査でも採用ブランディングにより認知度が向上することが明らかになりました。認知度が上がれば、興味を持つ人材や話を聞いてみたいと思う人材からの求人への応募が増加します。

現に、むすび株式会社の調査でもエントリー数や説明会や面接の参加者数の増加だけでなく、「応募者の質が向上した」との回答もありました。SNSや動画プラットフォームを活用して情報発信すれば、転職潜在層にもリーチできるでしょう。

採用ミスマッチの防止

前述したように、自社の理念や働く様子に共感した人材が集まれば、ターゲットに近い人材からの応募数が増加し、企業風土や人材特性に共感した人材を採用しやすくなります。ターゲットに近い人材を採用できれば、採用によるミスマッチで発生する離職も防止できるでしょう。

むすび株式会社の調査でも、採用ブランディングの効果として「離職率低下」を挙げる回答が17.0%ありました。

採用活動コストの削減

ターゲットに近い人材の採用が増え、離職率が低下すれば、採用活動自体の工数が削減されます。自社の認知度が高まれば、自然に応募数が増えるため、追加料金を支払ってまで求人広告や人材紹介サービスを利用する必要がありません。

自社の採用ページからの応募も増えるでしょう。ターゲットと出会えるチャネルを分析したうえでチャネルを選定すれば、費用対効果も上がります。

採用担当だけでなく、全従業員も自社が求めるターゲットを理解し、魅力を発信すれば、友人・知人を紹介する「リファラル採用」も増えるでしょう。むすび株式会社の調査でも採用ブランディングのメリットとして、「採用予算の抑制」との回答がありました。

ただし、採用ブランディングに取り組むためには、情報発信やコンテンツ作成などの工数や費用がかかります。短期的にはコストが増えることを理解しておきましょう。

採用マーケティングのデメリット

採用マーケティングは短期的な取り組みでは結果が出ないため、成果が出るまでに時間が必要です。また、長期的には採用活動のコストを削減できるものの、短期的には負担が増加することもデメリットです。ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

短期的に負担が増加する

採用マーケティングに取り組むと、従来の業務だけでなく戦略立案や手法選定など、慣れない業務が発生するため、一時的に採用担当者の負担が増加します。採用担当者の負担が増えた結果、取り組みが中途半端なものになっては意味がありません。

特に初期段階のブランド化への取り組みは継続的な発信が必要です。そのため、初期段階では人員を補充したり一部の業務を外部に委託したりするなど、採用担当者の負担を軽減する対策を講じることが大切です。

成果が出るまでに時間が必要

採用マーケティングは、自社を認知してもらい、興味関心から応募に至るまで、地道な作業を継続しなければなりません。例えばSNSで認知を獲得するには、継続的な発信だけでなく、効果測定や分析、改善といったプロセスが必要です。

パナソニック株式会社では、認知から選択検討へのブランドリフト率が2倍になるのに2年かかっています。採用ブランディングの成果が出るまでに時間がかかることを理解したうえで、中長期的に取り組むことが大切です。

参考:パナソニック、LINE、ニトリによる採用×広報(PR)とは【セミナーレポート】|d’s JOURNAL

採用マーケティングの進め方

採用マーケティングの進め方は、以下のとおりです。

  1. 自社を分析する
  2. 採用ターゲットを明確にする
  3. 採用ターゲットのニーズを分析する
  4. 発信する情報の内容と手段を決める
  5. 効果測定しながら情報発信を継続する

ここでは、各工程のポイントについて解説します。

自社を分析する

はじめに、自社の現状を分析します。市場でどのような立ち位置にあるのか、採用に関する強み・弱みを分析し、現状を把握します。強みでいえば福利厚生や独自のサービス、弱みでいえば特定の年齢層が少ないなどが挙げられるでしょう。

分析では、フレームワークの使用が効果的です。具体的なフレームワークについては後述します。自社分析をする際は、自社の経営理念や戦略とも照らし合わせることが大切です。

リジョブでは、価値観を言語化し、ターゲットに伝えるメッセージを作成するためのノウハウを持っています。手順を詳しく知りたい場合は無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。

採用ターゲットを明確にする

自社を分析したら、自社がどのような人材を求めているのかを明確にします。スキルや経験だけでなく、価値観や考え方などの特性も明確にしましょう。ただし、採用ターゲットの条件は増やそうと思えば際限なく増やせます。

条件を増やしすぎた結果、世の中に存在しないような高レベルの人物像を作り上げ、「ターゲットに近い人材が見つからない」というケースは珍しくありません。そのため、設定した条件に優先順位をつけることがポイントです。

採用ターゲットのニーズを分析する

採用ターゲットを明確にしたら、ターゲットがどのようなニーズを持っているかを分析します。例えば、平日勤務や臨機応変なシフト対応といった労働条件を求めているとわかれば、これらの条件を訴求すると、採用ターゲットの興味や関心を引けるでしょう。

ニーズの調査は、SNSを利用したアンケート調査やこれまでの採用活動で取得した応募者の情報から収集できます。また、ターゲットに近い人材のアンケート結果を所有している求人広告代理店も存在するため、相談してみるのもひとつの方法です。

リジョブでは美容・ヘルスケア関連職の求職者のニーズを独自に調査しました。下記の資料に結果をまとめましたので、よろしければ無料でダウンロードしてご覧ください。

発信する情報の内容と手段を決める

ファネルによって適したチャネルは異なるため、分析したニーズに合わせたチャネルを選ぶことが大切です。例えば認知であれば、自社を知らない人から「あの会社楽しそう」「変わったことをしている」と好印象を持ってもらえるような施策が求められます。そのため、露出度の高いチャネルを選ぶ必要があります。各ファネルに適したチャネルは以下のとおりです。

ファネル

目的

適したチャネル

認知

・採用ターゲットに自社を認知してもらう

・自社の立ち位置や事業概況などを簡潔にわかりやすく伝える

・SNS

・求人媒体

・動画プラットフォーム

・外部イベント

興味

・自社を認識した採用ターゲットに自社を詳しく知ってもらう

・自社の理念や強みを伝える

・SNS

・求人媒体

・動画プラットフォーム

・オウンドメディア

・会社説明会

・ミートアップ

・インターンシップ

・カジュアル面談

・リファラル

・プレスリリース

応募

・就職先候補に選んでもらう

・職場の様子や具体的な仕事内容、社員の人柄を知ってもらう

・SNS

・求人媒体

・スカウトメール

・リファラル

・採用広報記事

・採用ピッチ資料

・カルチャーデック

選考/内定

・入社の意思を高めてもらう

・自社の魅力と課題を伝える

・面接

・内定者イベント

・オファーメッセージ

入社後

・長く自社で活躍してもらう

・自社の魅力を発信してもらう

・SNS

・社内研修

・メンター制度

・1on1ミーティング

・社内広報

効果測定しながら情報発信を継続する

採用マーケティングは、中長期的に取り組むものです。そのため、さまざまなデータを数値化・分析し、改善につなげる必要があります。KPIを設定し、定期的に効果測定しながら継続的に取り組むとよいでしょう。KPIとは、Key Performance Indicatorの略で目標に対する達成度を評価する指標をさします。

具体的なKPIとして挙げられるのは、SNSのフォロワー数や採用ホームページのアクセス数、応募者数などです。測定結果から取り組みの実効性を評価し、改善につなげましょう。

採用マーケティングで活用できるフレームワーク

採用マーケティングで、自社分析や採用ターゲットのニーズ分析に活用できるフレームワークには、さまざまなものがあります。ここでは、主なフレームワークを5つ紹介します。

3C分析

3C分析とは、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の3つの視点で事実を整理し、マーケティング環境を把握するフレームワークです。採用マーケティングにおいては、以下のように解釈します。

3C分析により、採用市場における自社の立ち位置や競合との違いを把握し、採用戦略の立案に活かせます。

5A理論

5A理論とは、アメリカの経営学者「コトラー」が提唱した理論で、消費者行動をAware(認知)・Appeal(訴求)・Ask(調査)・Act(行動)・Advocate(推奨)の5つの顧客行動を段階的に捉えるフレームワークです。採用マーケティングに置き換えると、以下のようになります。

5A理論により、採用ターゲットの行動段階を理解できます。

カスタマージャーニー

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスの購入に至るまでの行動や思考のプロセスをストーリー化するフレームワークです。採用マーケティングに置き換えると、以下のようになります。

フェーズ

採用ターゲットの期待

自社の課題

施策

認知

良い企業に出会いたい

・SNSのフォロワー数が少ない

・採用ホームページのアクセス数が少ない

・SNS運用の見直し

・外部イベントへの参加

興味

企業の情報が欲しい

・情報発信ができていない

・発信している情報が古い

・発信している情報量が少ない

・SNS運用の見直し

・オウンドメディア運用

・会社説明会の開催

応募

企業で働くイメージを持ちたい

・自社で働くイメージがわくような情報を発信していない

・採用動画の公開

・社内ブログの運用

・インターンシップ

選考

最終選考まで進むための決め手が欲しい

選考段階での離脱が多い

・職場見学会

・先輩社員との座談会

内定/入社

入社に対する不安を払拭したい

内定辞退が多い

・人事面談

・見学会

・入社前研修

カスタマージャーニーマップの作成により視覚的にプロセスを把握でき、自社の課題やそれに対する施策を検討できます。

SWOT分析

SWOT分析とは、縦軸に内部環境/外部環境、横軸にプラス/マイナスをとり、自社の状況をStrength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)に分類するフレームワークです。採用マーケティングにおいては、以下のように解釈します。

SWOT分析により、自社が採用ターゲットに対してどのように魅力をアピールすればよいのかを把握し、採用戦略の立案に活かせます。

4C分析

4C分析とは、Customer value(顧客価値)・Customer Cost(顧客コスト)・Convenience(利便性)・Communication(コミュニケーションのとりやすさ)を整理するフレームワークです。採用マーケティングにおいては、以下のように解釈します。

4C分析により、採用ターゲット目線でのコミュニケーション施策を考案できます。

美容業界で採用マーケティングに成功した事例

採用マーケティングは、企業規模によってチャネルや方針が異なり、同じ美容業界でも、さまざまな切り口が存在します。ここでは、美容業界で採用マーケティングに成功した事例について解説します。

バックオフィスを設置した例

株式会社オニカムが運営する美容室「ALBUM」は、Instagramや予約サイトを徹底的に分析し、ブランディングの確立とフォロワー数の獲得に成功しています。オフィシャルアカウントだけでなく、各個人スタイリストのアカウントも運用しており、個人アカウントで発信した技術をオフィシャルアカウントが集約する戦略により人気を得ています。

ALBUMがマーケティングに成功した理由として挙げられるのが、バックオフィス部門を設けたことです。バックオフィスメンバーが、採用や人事、広報を担当し、SNS運用についても分析しながら改善を継続しています。

それにより、美容師もサロンワークへの専念が可能です。また、ALBUMは、美容師としての基本的な技術を教えるためのアカデミーも開設しており、競合にはない強みになっています。

ALBUMは、強みを持つとともに採用マーケティングに専念できる部署の設置により、採用マーケティングに成功した事例です。

参考1:インスタのフォロワー14万人超えの美容師NOBUが語る「フォロワー数の増やし方」|WWD

参考2:採用サイト|ALBUM

YouTubeを活用した例

大阪を中心に美容室を展開する「BELOグループ」は、YouTubeを活用し、採用マーケティングに取り組んでいます。BELOグループは順調に売り上げが伸びていたものの、その理由はオーナーの人気であることを受け、他のスタイリストにも直接指名がつくような施策を考えていました。

「BELOのブランド力を確立する」ことを狙いとし、現役美容師または美容師になりたい人向けのカット技術コンテンツの発信を始めました。

オーナーが実演するコンテンツから始め、少しずつ所属スタイリストの実演に切り替えることにより、他のスタイリストの技術力に対する信頼も高めていったのです。また、多数の出演者での掛け合いを増やし、エンターテインメント性を高めることにより、ファン獲得に成功しています。

それにより、2022年にオープンした店舗の求人では、有料求人広告を一切出さずに普段の10倍以上の応募を獲得しました。BELOグループは、技術の見せ方の不空によりファンを獲得し、採用マーケティングに成功した事例です。

参考1:ヘアサロングループBELO|TEMPER

参考2:BELO CHANNEL - YouTube

採用ページを活用した事例

都内に開業した地域密着型の美容室は、自社採用サイトを制作し、ママさん美容師の採用に取り組みました。オーナーの想いとともに、サロンの取り組みやママさん美容師に対する職場環境、在籍しているママさん美容師の紹介などの情報を掲載し、美容師への復職を考えているママさんの心配事を解決できるコンテンツにしました。

強みとしたのは、働く時間帯と休日です。働く時間帯と給与形態を選択できる制度設計により、「育児や家事との両立ができる企業」であるとアピールしました。また、急なシフト変更にも対応できる体制の構築や、既存スタッフへの理解を促す環境整備にも取り組むことにより、ママさん美容師が働きやすい環境作りに取り組みました。

それにより、ママさん美容師から求人のお問い合わせが来るようになったのです。この美容室は、採用ターゲットに向けた環境整備と、その取り組みを掲載した採用サイトにより、採用マーケティングに成功した事例です。

参考:ママさん美容師(パート・業務委託)を採用したいあなたへ。求人の成功事例のご紹介。|SALON HACK

採用マーケティングを実施する際のポイント

採用マーケティング成功の鍵を握るのは、ターゲットをどれだけ理解できるかです。そのためには、以下のポイントを押さえる必要があります。

  • データを取得・管理する習慣をつける
  • 伝えるメッセージを工夫する
  • 専属のマーケターに依頼する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

データを取得・管理する習慣をつける

これまでの採用活動は、採用ターゲットの情報を得るには多くの人材と話すことが重視されていました。主観的な印象をもとに対策を講じていたケースもあるでしょう。しかし、採用マーケティングでは、求人媒体ごとの応募者数や属性など、さまざまな客観的データを活用したコンテンツの企画力も求められます。

客観的データを取得し、論理的な対策を講じることにより、採用活動の精度が上がります。そのためには、計測するデータの管理方法や計測方法を整備することが大切です。例えば各ファネルでは、以下のようなデータが管理対象に挙げられます。

  • 認知:ページビュー数
  • 興味:クリック率・継続接触率
  • 応募:応募率
  • 選考:選考通過率
  • 内定:内的受諾率

これらのデータを管理し計測するには、採用管理システムやマーケティングオートメーション(MA)などのツールの導入も有効です。効率的にデータを管理・計測することにより、採用担当者の負担も軽減できるでしょう。

伝えるメッセージを工夫する

採用マーケティングでは、さまざまなチャネルで自社の理念や強み、働き方などの情報を伝えます。その際に、情報を羅列するだけでは採用ターゲットに興味を持ってもらえません。採用ターゲットの響くようなメッセージを伝えることにより、自社に興味を持ってもらえます。

例えば、前述した美容室「ALBUM」の採用サイトでは「夢の1ページを創るCompany、聳え立つ軸と共に反映し続ける未来を胸に~」という「ALBUM」にかけたメッセージで採用ターゲットの目を引いています。

ただし、アピールを意識するあまり、誇張した情報や普段と異なる職場風景を伝えてはいけません。間違った情報や過度なPRは、採用ターゲットから嫌悪感や不信感を持たれる可能性があります。ありのままの情報を伝えるとともに、どのようなメッセージであれば、自社の強みや特徴を伝えられ、共感してもらえるのかを試行錯誤することが大切です。

専属のマーケターに依頼する

採用マーケティングは採用だけでなくマーケティングの知識も必要です。前述したように、過度なPRは、採用ターゲットから嫌悪感や不信感を持たれる可能性があります。応募者の立場から戦略を立てるためにも、豊富なノウハウを持ったマーケターが欠かせません。

マーケターを置く際に注意したいポイントは、マーケティングに専念できる環境の整備です。採用マーケティングは、地道な作業を継続してはじめて成果が出ます。そのため、他の業務との兼任ではなく、専属としてマーケターを設置することが重要です。

もし、社内にマーケターがいないのであれば、外部に委託するのも1つの方法です。

まとめ

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を取り入れ、採用ターゲットの自社の認知から入社後までの各プロセスに対して施策を講じる採用戦略のことです。これまでの採用活動では転職顕在層のみにフォーカスを当てていましたが、採用マーケティングでは入社後の定着・活躍までの戦略を立案することにより、アプローチする範囲を広げます。

採用マーケティングによるメリットは以下のとおりです。

  • 市場に応じて戦略を立案できる
  • ターゲット層に対する理解が深まる
  • 応募者数の増加
  • 採用ミスマッチの防止
  • 採用活動コストの削減

採用マーケティングは、自社の立ち位置に適した戦略を実行すれば、企業規模に関係なく成功に近づけます。本記事で紹介した進め方や事例、ポイントを参考に、自社に適した方法で採用活動に取り組みましょう。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。