採用計画の作り方とは?採用計画の意義や手順を解説!
「売上目標を達成するために、採用計画を立てたい」
「業務量に見合った社員を確保するためにはどうすればいいのか」
企業成長や売り上げに貢献できる人材を採用するためには、企業の状況や目標を考慮して、実効性のある採用計画を立てることが大切です。本記事では、採用計画の策定手順について具体例やデータを交えてわかりやすく解説します。
採用計画とは
採用計画とは、企業の経営方針やプロジェクト計画、事業計画にあわせて必要な人材を確保するための計画です。
たとえば、新店舗のオープンを計画する場合は、新店舗の運営に必要な採用人数を算出して計画をたてます。
また業績の成長を見込んだ場合は、来店客数の増加が想定されるため、その点を考慮して、採用するべき人数を割り出すこともあります。
採用計画は企業活動と連動させ、業績の成長に合わせて策定することが大切です。
採用計画を立てる意義
採用計画を立てる意義は、事業計画を達成するための人材や業務をカバーするために必要な人材を確保できることです。
事業計画を達成するための人材を確保できる
事業目標達成のため必要な工数から逆算して採用する人数を決めることで、実効性のある採用活動につなげられます。
たとえば、新しい美容室を1年後にオープンさせて、その店舗で〇万円の売上げを見込んだとします。
この場合、まずは〇万円の売上を達成するために必要な来店客数を計算。予想される来店客数に対応するためにも、適切な数のスタイリストやアシスタントをバランスよく配置する必要があります。
来店客1人当たりに必要な施術時間を考慮しつつ、必要なスタイリストやアシスタントの人数を算出します。導き出した社員数を達成できるように採用方法を選んだり、予算を組んだりすることが大切です。
以上のように、例えば新店舗オープンのような事業計画を考慮して採用計画を立てると、必要な人材を確保しやすくなります。
求める人材を採用できる
採用計画を立てる際には、事前に採用する目的を決めます。たとえば人材採用の目的が、人手が足りない業務をカバーすることであれば、採用した人材に任せる業務内容が明確になります。
求人票に具体的に担当してもらいたい業務内容を記載できるため、求める人材を採用しやすくなるのです。
たとえば美容室のスタイリストの場合、シャンプーやカット、カラー、パーマ、ヘアセットなどお客様への施術を一通り担当できます。一方でアシスタントは業務内容の一部しか担当できません。
同じ社員数でもスタイリストとアシスタントの割合によって、対応できる顧客数が変わるため、達成できる売上が異なるのです。
売上目標を達成するために必要な人材を考えて、採用計画を立てることが大切です。以降では採用計画の作り方について順を追って解説します。
【採用計画の作り方1】必要な人材を洗い出す
採用計画を作成するために、まずは必要な人材を洗い出しましょう。そのためにも、自社の情報を集めたうえで現状を把握して、そこからターゲットを明確にする必要があります。
自社の情報を集めて現状を把握する
自社の情報を集める場合は、財務情報や業務量、予算などを確認しましょう。そこから現状を把握したら、事業計画の目標と現状を比べてギャップを把握します。そのギャップを埋められるような採用計画を立てると、売上目標に近づきます。
たとえば、現状の売上が2500万円で、年間3000万円の売上を目標にしているとします。
この場合、500万円の差を埋めるための人材が必要です。現状と目標の差から逆算して、いつまでにどのような人材が、どれくらいの人数必要であるかを考えるようにしましょう。
ターゲットを明確にする
ターゲットを明確にするためには、自社の求める人材についてスキルや人柄、経験などを言語化することが大切です。たとえば、次の項目ごとに求める人材を考えてみましょう。
- 価値観・志向
- 人柄・性格
- 能力・役割
- 勤務条件・働き方
以上を明確にしてターゲットに共感してもらえるようなメッセージを考えると、計画通りに人材を採用しやすくなります。
ターゲットの設定とメッセージの作成方法については、下記の資料で詳しく解説しています。無料でダウンロードできますので、どうぞご利用ください。
【採用計画の作り方2】採用者の雇用形態を決める
採用者の雇用形態を決める場合は、役割分担を明確にしたうえで、その役割に適した雇用形態を決める必要があります。
役割分担の明確化
人材が不足する業務について、その業務を効率的に進められるような役割分担について考えてみましょう。
たとえば、美容室の場合、シャンプーやカット、カラー、パーマ、ヘアセットを1通り終えると施術が完了します。
このなかで、スタイリストの担当業務をアシスタントに任せて役割を分担することも可能です。スタイリストとアシスタントの役割分担が適切かどうかをチェックして、効率的な人材配置になるように採用数を決定するとよいでしょう
雇用形態の種類
店舗で雇う人材の雇用形態として、次の6パターンが考えられます。
- 正社員
- 短時間正社員
- 派遣社員
- 契約社員
- パートタイマー・アルバイト
- フリーランス
それぞれについて解説します。
正社員
正社員とは雇用期間を決めずに会社と労働条件を結んで働く人をさします。一般には正規雇用とも呼ばれ、フルタイムで働くことが一般的です。
正社員採用には簡単に解雇できなかったり、社会保険や福利厚生による負担が発生したりするデメリットがあります。その一方で、長期的な人材育成や責任のある仕事を任せやすいなどのメリットがあります。
短時間正社員
短時間正社員はフルタイムで働く正社員に対して、限られた時間で働く(時短)正社員を指し、次の2パターンに分けられます。
- 正社員と同じく雇用期間が定められていないパターン
- 基本給や賞与、退職金などの算定方法が正社員と同じであるパターン
短時間正社員制度を導入すると、社員を短時間正社員として雇えます。たとえばパートやアルバイトだった社員を、短時間正社員として雇うことも可能です。
フルタイムでは働けないからとパート雇用している社員を、前述の『短時間正社員制度』を導入して短時間正社員に、またはアルバイト社員を正社員にするといった方法があります」
引用:モアリジョブ /社会保険労務士 東久仁子
出産育児中の社員に働いてもらう場合も、短時間正社員制度はおすすめです。
具体的には、スキルアップを評価して給与に反映できるような『評価制度』や出産育児などに合わせた『短時間正社員制度』を導入することも安心して働き続ける環境づくりに繋がりますよ
引用:モアリジョブ /社会保険労務士 東久仁子
派遣社員
派遣社員とは派遣会社と契約を結んだ社員で、派遣された会社の指示に従って業務を行います。派遣社員と労働契約を結ぶのは派遣会社である一方、賃金を払うのは派遣社員を雇っている派遣会社です。
契約社員
契約社員は限られた雇用期間内で働く人をさします。正社員とは異なり労働契約に雇用期間が定められていて、1回の契約で原則最大3年の雇用が可能です。社員登用制度を設けている会社では、契約社員を正社員として雇うケースもあります。
パートタイマー・アルバイト
パートタイマーやアルバイトは、1週間の所定労働時間が正社員に比べて短い人材を指します。
パート・アルバイトの希望者は、短時間勤務を希望する人の多いことが特徴です。株式会社アイデムの調査によると、週に20時間未満を希望する人が6割近くいて、他の雇用形態と比べても短時間勤務を希望する割合が高いです。
▼パート・アルバイトで働く人が希望する勤務時間
フリーランス
フリーランスは、業務内容に応じて会社や団体と自由に契約を交わして働く人を指し、会社と業務委託契約を結んで働くケースが一般的です。
しかし美容師やセラピストの業界においては、面貸しと呼ばれる業界ならではの特徴的な働き方があります。面貸しは店舗のスペースや道具、材料、設備を借りて施術をすることです。
業務委託契約を結んだフリーランスは店舗が集客した顧客に対して施術をします。一方で、面貸しはフリーランスが集客をして、自分が連れてきた顧客に対して施術を行います。
【採用計画の作り方3】必要な採用人数を決める
ここでは、必要な採用人数を計算する方法や店舗ビジネスで採用数を決める際の具体例について解説します。
一般企業における採用人数の計算方法
採用人数を計算する場合は、まずは財務情報や予算、業務量の情報をもとに必要な社員数を計算します。そこから在籍中の社員数を差し引くと採用数を導き出せます。
採用数=必要な社員数ー在籍中の社員数 |
財務情報や予算などをもとにした計算はトップダウン方式と呼ばれる一方で、業務量をもとにした計算方法はボトルアップ方式と呼ばれます。
トップダウン方式は予算オーバーしにくいメリットがあり、ボトルアップ方式は現場のニーズを満たしやすいメリットがあります。会社の事情に合わせて、両者を使い分けるとよいでしょう。
以降では各種情報をもとにした必要な社員数の計算方法を、解説します。
財務情報に基づいた計算方法
財務情報のひとつである売上をもとに計算する場合は、次の計算式を用います。
▼売上をもとに必要な社員数を計算
必要な社員数=(売上高ー人件費以外の全経費ー目標利益)/1人あたりの人件費 |
以上は、大幅な売上の変動がない場合に適した計算方法です。売上の触れ幅が大きい会社が、この計算方法を用いると採用後に売上が低下した場合に、経営を圧迫する可能性があるため注意しましょう。
売上が安定しない場合や開店して間もない場合は、次に紹介する予算に基づいた計算方法を利用しましょう。
予算に基づいた計算方法
予算にもとづいた計算方法では、あらかじめ人件費にあてる予算を決めて必要な社員数を計算します。
▼予算をもとに必要な社員数を計算
必要な社員数=人件費にあてる予算/1人あたりの人件費 |
店舗運営で赤字を避けるためには人件費とその他諸経費の合計が、予想売上を下回るようにします。
想定される売上を低めに設定したり、人件費以外の諸経費を大きめに設定したりすると人件費に充てられる予算が減少しますが、赤字のリスクも減らせます。
業務量に基づいた計算方法
業務量を消化するために必要な社員数を計算する場合は、次の計算式を用います。
▼業務量をもとに必要な社員数を計算
必要な社員数=総労働時間(業務量)/1人あたりの労働時間 |
正確な業務量を求める場合は、繁閑の波を織り込んで総労働時間を計算することが大切です。たとえば平日と休日で来店数が大きく異なる場合は、休日と平日それぞれの平均来店数を算出して、繁閑に差のある曜日ごとに分けて必要な社員数を求めるとよいでしょう。
業務量に基づいた計算方法については、次の項目で詳しく解説します。
店舗ビジネスにおける具体的な採用数の計算方法
店舗の採用数に影響を与える要因として、座席数やベッド数、来店人数(平常時や繁忙期によって異なる)、人材配置などが考えられます。
ここでは以上のなかから、来店数をもとに必要な社員数を計算する方法について解説します。必要な社員数を計算できれば、そこから既存社員を差し引くことで、採用数の計算が可能です。
来店人数に基づいた社員数の計算方法
今回は次の条件を持つ美容室を想定して、必要な社員数を計算します。
▼シミュレーションの条件
現在、1人で美容室を切り盛りしていて予約を断っている状態です。予約を断らずに、すべての顧客を受け入れた場合の平均来店者数を割り出してみると、平日10人と休日13.9人となりました。 【店舗の詳細】 平均来店者数:平日が10人、休日が13.9人 顧客の平均滞在時間:85分 1日の営業時間:10時~19時までの9時間(社員が1時間の休憩をとると想定して、労働時間を8時間とする) |
まずは美容室への平均来店者数と、顧客1人あたりの滞在時間をもとに必要な総労働時間を割り出します。
▼総労働時間の計算
平日:85分×10人=850分(約14.2時間) 休日:85分×13.9人=1,181.5分(約19.7時間) |
次に、総労働時間を社員1人当たりの1日の労働時間で割って、必要な社員数を計算します。
▼必要な社員数の計算
平日:14.2÷8時間=約1.8人 休日:19.7÷8時間=約2.5人 |
来店客数に余裕を持って対応するためには、小数点以下を切り上げて、平日2人と休日3人にした方がよいでしょう。
美容室で既に働いている自分を差し引くと、平日に1人、休日に2人の社員を採用すると、断っていた予約にも対応できることになります。
【採用計画の作り方4】採用方法の決定
採用方法を決定する場合、まずは採用に利用する媒体を検討することになります。採用ターゲットや雇用形態によって適した媒体が異なるため、各媒体の特徴やメリット、デメリットを把握した上で決めることが大切です。
また厚生労働省の調査によると、昨今はインターネット求人サイトを利用している求職者が半数を占めます。
そのため求人サイトを、活用する媒体に含めることをおすすめします。求人サイトのなかには総合型サイトや専門特化型サイト、検索エンジンなどさまざまな種類があるため、自社の採用ターゲットに適した媒体を選ぶようにしましょう。
各種採用媒体や採用方法に関する詳細については、次の記事を参考にしてください。
「採用 媒体」(作成中)
【採用計画の作り方5】採用スケジュールの立案
採用スケジュールを立てる場合は、新卒採用と中途採用を分けて考えることが大切です。
新卒採用のスケジュール
ここでは、新卒採用のスケジュールについて大卒と専門学校卒に分けて解説します。
大学生の採用スケジュール
マイナビ2023年卒企業新卒採用活動調査によると、大卒の採用スケジュールでは個別企業セミナー(会社説明会)や面接、内々定の決定時期が3月~4月に集中していることがわかります。
3月~4月に本格化する採用活動に向けて、人員を動員できるように準備しておくことが大切です。
また内閣府の調査によると、約9割の会社が6月までに内々定を決定しています。
他の会社に遅れを取らないようにするためにも、6月より前に内々定を決定できるようにスケジュールを組みましょう。
専門学校生の採用スケジュール
3年制の専門学校の場合は、2年生の3月~3年生の4月に就職ガイダンスが始まります。就職ガイダンスは求人の探し方や企業の調べ方、訪問の仕方などについて学生が学ぶ機会です。同時期に専門学校内で、合同会社説明会が開かれることもあります。
また専門学校卒の場合、1月以降は国家試験の勉強に集中するためにも、12月までに内定を確定させるのが一般的です。
中途採用のスケジュール
中途採用のスケジュールを立てる場合は、転職希望者に合わせつつ、事業計画から逆算するとよいでしょう。
転職希望者に合わせてスケジュールを立てる
転職希望者の動向を調べる手段として、Googleトレンドを使って「転職」のキーワードがどれくらい調べられているかを確認する方法があります。
Googleトレンドは、検索キーワードの需要をチェックできるツールで、キーワード需要の推移が人気度と呼ばれるバロメーターで表されます。
実際に「転職」のキーワードで調べた結果は次のとおりでした。
▼検索キーワード「転職」の人気度の動向
「転職」について、通年の人気度の推移から、ほぼ1年中「転職」のキーワードが調べられていることがわかります。
ただし、ゴールデンウィークやお盆、年末などの長期休暇の前は「転職」のキーワードで検索する人が比較的低くなる点も特徴です。
つまり長期休暇の前は、通常時よりも転職活動に積極的な人が減ると考えられます。採用活動の開始時期が、長期休暇の前になることは避けた方がよいでしょう。
一方で転職活動が活発になる長期休暇明けに、採用活動を開始することはおすすめです。
事業計画や社員の欠員予定日から逆算してスケジュールを立てる
事業計画からスケジュールを立てる場合は、例えば以下の予定日を逆算の起点日にするとよいでしょう。
- 新店舗のオープン予定日
- 新規サービスの開始日
- 社員が産休に入る予定日
- 社員の退職予定日
新規店舗をオープンする場合は、まとまった社員数をオープン日までに確保できるようなスケジュールを立てる必要があります。
また個人店舗や中小企業の場合、もともと少数の社員で運営していることもあり、1人の社員が欠けることで業務に支障をきたすリスクがあります。
中小企業庁が発行する「中小企業白書」によると、実際に事業規模が小さくなるほど欠員率が大きくなることがわかります。
▼企業規模が小さいほど人手不足になりやすいことを示すデータ
人材が不足して業務が回らない状態になることを避けるためには、欠員がでる予定日を早めに把握し、必要な人材を確保することが大切です。
さらに働きながら転職活動をする人材は、採用決定後に退職交渉に入るため実際に働けるようになるまでにある程度の時間を見込む必要があります。
ビズヒッツの調査によると、働きながら転職活動をする人材が半数以上を占めます。
採用したものの退職交渉に時間がかかって、人材が必要な日に間に合わなくなる事態を避けるように注意しましょう。
採用活動をする企業に対してワークポートが行った調査によると、内定から入社まで最長で2~3カ月待つと回答した企業が半数以上に上りました。
欠員が出る日から2~3カ月前には採用を決定できるように、余裕をもって採用計画を立てるようにしましょう。
【採用計画の作り方6】内定者をフォローするためのイベントの計画
内定後は辞退者を出さないためにも入社までの間に、イベントを計画してフォローすることが大切です。
ディスコの調査によると、内定者懇親会や現場見学会、内定式などのイベントが内定者の入社意欲を高めることがわかりました。
内定者懇親会
内定者懇親会は自己紹介やグループワーク、食事会などを通して、内定者同士や既に会社で働く先輩とのつながりを作るために開かれるイベントです。
内定者は「同期や先輩と円滑にコミュニケーションがとれるか」や「入社後にうまく働けるかどうか」などの不安を抱えています。
内定者懇親会を実施することで、それらの不安を解消して働くモチベーションを入社日まで保つ効果が期待できます。
職場見学会
職場見学会は内定者が入社する前に職場を見学するイベントです。内定者が職場の雰囲気や業務内容を把握することで、会社で働く状態をイメージしやすくなります。
案内人となる社員ともコミュニケーションが取れるため、内定者が実際の働き方について質問できる点もメリットです。
言語化しにくい会社の雰囲気や社風への理解を、職場見学会を通して深めてもらえるため、入社後のミスマッチを防ぐ効果が期待できます。
内定式
内定式は次年度の新入社員を確定させるために実施されるイベントです。主に新卒者に対して行われ、会社は学生に対して採用通知を渡し、学生は会社に入社許諾書を提出します。
内定式のあとに内定者同士の交流や会社に所属する先輩や役員とのコミュニケーションを図る場を設けると、入社前に学生が抱える不安を払しょくする効果が期待できます。
まとめ
会社の成長に合わせて社員を確保したい場合は、経営方針やプロジェクト計画、新規事業の予定に沿った採用計画を立てることが大切です。採用計画を立てる際には、次のポイントをチェックしましょう。
・採用計画は企業の状況や目標に対応させ、実効性のある形で作成することが大切
・事業計画を達成したり、求める人材を採用したりするためにも採用計画の策定は重要
・最後は内定者のフォローまで計画を立てることで、内定辞退者の数を抑えられる
自社に適した採用計画を立てて、円滑な事業運営を図りましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部