採用ペルソナとは?作成方法とよくある失敗を徹底解説します
採用ペルソナは、企業の採用活動を効率化したり、自社にマッチした候補者を集めたりするうえで極めて重要な要素です。
そこで本記事では、採用ペルソナの重要性やメリットを再確認すると共に、効果的な作り方や注意点などを詳しく解説します。
いま欲している人材を確保するだけでなく、長く定着してもらいたいと考えている企業はぜひ参考にしてください。
採用ペルソナとは
採用ペルソナとは、企業が理想とする候補者の具体的な人物像を描く手法です。単に応募条件をリストアップするのではなく、候補者のスキル、経験、性格、価値観、動機などを詳細に定義するのがペルソナの特徴です。
この採用ペルソナを作成することで、採用プロセス全体が効率化され、企業と候補者のマッチングが向上します。
たとえば、エンジニア職を募集する場合、単に「プログラミングスキルがある人」ではなく、「最新の技術トレンドに関心を持ち、自発的に学習を続ける意欲のあるエンジニア」という具体的なペルソナを設定することで、求める人材像が明確になります。
また、採用ペルソナは、採用広告や面接質問など、あらゆる場面で役立ちます。採用活動の根幹部分にあたると言ってよいでしょう。
採用ペルソナの重要性
採用ペルソナの重要性は、採用プロセスの効果を最大化する点にあります。まず、明確なペルソナを設定することで、企業は求める人材の具体的なイメージを共有しやすくなります。これにより、求人広告や採用ページが応募者に対して魅力的に映りやすくなるため、応募者数の増加につながります。
そのほかにも、ペルソナを設定することで以下のメリットを得られます。
- 早期離職を防ぐ
- 長期的な雇用安定
- 応募者と企業のミスマッチを防ぐ
こうしたメリットについては後ほど詳しく解説します。
また実際のところ、CareerMapの調査では「応募者数が予定より少なかった」「内定辞退が少なかった」などと採用課題を感じている企業が多いことから、採用ペルソナの設定は非常に重要であることが分かります。特に「本選考への応募が少ない」と回答した企業は1163社にも及び、その重大さが伺えます。
採用ペルソナと採用ターゲットの違い
採用ペルソナと採用ターゲットは、どちらも理想的な候補者を選定する際に用いられます。しかし、その2つはアプローチと具体性に違いがあります。
まず採用ターゲットは、一般的に年齢、性別、学歴、職歴といった基本的で大まかな情報の集まりを指します。実際の採用ターゲットを見てみましょう。
▼採用ターゲット
年齢 |
20~30代 |
性別 |
不問 |
学歴 |
美容専門学校卒業 |
職歴 |
1年以上の美容師経験 |
一方、採用ペルソナは、上記の基本情報に加え、その人物のキャリアゴール、価値観、性格、趣味嗜好、ライフスタイルなどといった詳細な情報の集まりを指します。
このように、採用ペルソナと採用ターゲットでは「詳細さ」という意味で大きな違いがあります。
採用ペルソナの完成図ものちほど紹介しますので参考にしてみてください。
採用ペルソナを設計するメリット
採用ペルソナを設計するメリットは次の点にあります。
- ミスマッチのリスク低減
- 採用面接に一貫性をもたせる
- 採用活動の効率化
以下にて詳しく解説していきます。
ミスマッチのリスク低減
採用ペルソナの設計により、企業と候補者の間のミスマッチを減少させられます。具体的なペルソナを設定することで、企業が求めるスキルや経験、価値観を明確にし、それにもとづいた候補者を探せるようになるためです。
採用ペルソナを軸にした採用活動ができれば、候補者が入社後に企業文化や職務内容に適応できないといったリスクを大幅に低減できるでしょう。
さらに、ミスマッチが減ることで、早期離職のリスクも低下し、採用後の定着率が向上します。
結果として、企業は長期的な人材の安定確保を実現しやすくなり、組織全体の生産性を高めることにもつながります。
採用面接に一貫性をもたせる
採用ペルソナの設計は、採用面接に一貫性をもたせるうえで非常に重要です。明確なペルソナがあれば、面接官はその基準に沿って候補者を評価することができるため、面接の質を均一化できます。
これにより、複数の面接官が面接を担当する場合でも評価基準がぶれることなく、公平で客観的な判断が可能となります。
また一貫した評価基準にもとづいた面接はプロフェッショナルで信頼性の高い印象を与えるため、候補者の志望度も向上させてくれるでしょう。
採用活動の効率化
採用ペルソナを設計することで、採用活動全体の効率化が図れます。
たとえば、求人広告の作成や応募者の選定、面接の準備において、ペルソナがあれば基準が明確になるため、効率的に自社にマッチした人材を採用できます。
またペルソナにより求人広告や面接の内容を最適化することも可能なため、適切な候補者が早期に見つかります。これにより、採用にかかる時間とコストも削減できるでしょう。
このように明確なペルソナがあると、採用プロセスの各段階で無駄が減り、自社にマッチした候補者を迅速に見つけ出せるようになります。
求人票制作の効率化
Thinkings株式会社の調査によると、全体の75%の面接担当者が求人票制作に課題があると感じています。また具体的な課題として以下を挙げています。
適切な採用ペルソナを設定すると、上記の課題を解決しやすくなります。
たとえば、自社にマッチした人材からの応募が少ないのは、具体的な人物像(ペルソナ)を設定しないためです。同様に、魅力を伝える文章を作るのが難しいと感じる原因も、ペルソナを設定していないことに他なりません。
また「他社との違いを上手く訴求できない」という点も、ペルソナを設定する手順で解決することが可能です。ぜひ以下で解説する手順を参考にして、ペルソナを設計してみてください。
採用ペルソナ設計の手順
採用ペルソナの設計は次の手順で進めるとよいです。
- 採用目的の明確化
- 自社の情報整理
- 欲しい人材の要素に順位付け
- ペルソナをフォーマットに落とし込む
- 社内でペルソナの整合性をとる
- 採用ペルソナと採用市場のマッチ度を調整する
それぞれの手順ごとに解説します。
なおリジョブでは、美容・ヘルスケア関連職の採用ターゲットやペルソナの作成に活用できるワークシートを準備しました。手順に沿って記入するだけで、ターゲット像を明確にできますので、ぜひ無料でダウンロードしてご活用ください。
1.採用目的の明確化
最初のステップは、採用の目的を明確にすることです。企業が新たに人材を採用する理由や、その人材に期待する役割と成果を明確にすると、採用活動の方向性が定まります。
たとえば、新規事業の立ち上げに伴う専門知識の確保や、既存チームのスキル補完など、具体的な目的を設定します。
こうした目的を明確化することで、目指すべきゴールを全社で共有できるだけでなく、ブレのない採用活動を進められるようになります。
2.自社の情報整理
次に、自社の情報を整理します。このステップでは、自社のビジネスモデル、企業文化、現在のチーム構成、強みと弱みなどを詳細に把握することが重要です。
自社の情報を整理し、明確にすると、どのような人材が自社に適しているかを具体的にイメージしやすくなります。特に、企業のミッションやビジョンに共感できる人材を見つけるためには、自社の価値観や文化を明確に理解し、それをペルソナに反映させることが不可欠です。
3.欲しい人材の要素に順位付け
次に、欲しい人材の要素に順位付けを行います。
具体的には、必要なスキル、経験、性格特性、価値観などをリストアップし、それぞれの重要度を精査します。
自社にとって重要となる人材を選定することで、必須条件と望ましい条件を明確に区別できます。これにより、求人作成や面接といった重要な採用プロセスにおける判断基準が明確になり、最も適した候補者を効率的に選定できます。
なお、帝国データバンクの調査によると、企業が求める人材像で最も需要が高いのはコミュニケーション能力であることが分かっています。
4.ペルソナをフォーマットに落とし込む
次に、前のステップで整理した情報をもとに、ペルソナを具体的なフォーマットに落とし込みます。このフォーマットに含まれる項目は、次のとおりです。
- 名前
- 年齢
- 性別
- 学歴
- 経験
- 性格
- キャリアビジョン
- 趣味・関心
- ライフスタイル
上記を詳細に設定すると、採用の担当者同士が具体的な人物像を共有し、全員が同じ基準で候補者を評価できます。各項目の基準が具体的かつ詳細であるほど効果的です。
採用ペルソナの完成図については、後ほど「新卒採用」「中途採用」の2パターンで紹介します。どれくらい詳細にすればよいか分からない場合は、そちらの完成図を参考にしてみてください。
5.社内でペルソナの整合性をとる
ペルソナを作成したら、次に社内でその整合性をとることが重要です。これは、ペルソナが各部署やチームのニーズに一致しているかを確認するためのプロセスです。
全員の意見を反映させると、採用プロセスが一貫性を持ち、社内全体で共通の理解をもつことができます。ペルソナが全員に理解され、支持されることで、採用活動が円滑に進行します。
6.採用ペルソナと採用市場のマッチ度を調整する
最後に、作成した採用ペルソナと実際の採用市場のマッチ度を調整します。市場調査を行い、ペルソナに合致する候補者がどの程度存在するのかを確認しましょう。
必要に応じて、ペルソナの要素を修正し、現実的な期待値に合わせます。これにより、理想と現実のバランスが取れるため、採用活動が実現可能かつ効果的なものになります。
採用ペルソナの完成図
ここでは、新卒採用と中途採用に分け、採用ペルソナの完成図を紹介します。
新卒採用の採用ペルソナ完成図
美容師を例に、新卒採用ペルソナを見てみましょう。
▼採用ペルソナ(例:美容師)
名前 |
加藤 日葵(かとう ひまり) |
年齢 |
22歳 |
性別 |
女性 |
学歴 |
美容専門学校卒業 |
経験 |
|
性格 |
|
キャリアビジョン |
|
趣味・関心 |
|
ライフスタイル |
|
中途採用の採用ペルソナ完成図
中途採用のペルソナは以下を参考にしてみてください。
▼採用ペルソナ(例:美容師)
名前 |
伊藤 早紀(いとう さき) |
年齢 |
28歳 |
性別 |
女性 |
学歴 |
美容専門学校卒業 |
経験 |
|
性格 |
|
キャリアビジョン |
|
趣味・関心 |
|
ライフスタイル |
|
採用ペルソナを作成する際のコツ
採用ペルソナを作成する際は以下のコツを意識しましょう。
- 自社の魅力を深掘りする
- 採用ペルソナは複数作る
- 採用環境のトレンドを取り入れる
それぞれのコツについて解説します。
自社の魅力を深掘りする
自社の魅力を深掘りすることが重要です。自社が提供できる価値や、他社と差別化できる強みを明確にしてペルソナを作成すると、それに近い人材を採用しやすくなるためです。
具体的には、自社の文化、働き方、成長機会、福利厚生などを詳しく分析し、これらがどのような人材に響くのかを考えます。
たとえば、創業から間もない若い会社の場合、「安定していない」という見方もできますが、「新規事業の立ち上げに携われる」「経営者と横並びで業務に携われる」といった強みにも取れます。こうした強みは「成長意欲の高い人材」「将来的に起業したいと考える人材」などに響くことが想定できます。
こういった観点で自社の特性を深掘りし、ペルソナに反映させることで採用活動をより効果的にすることが可能です。
採用ペルソナは複数作る
採用ペルソナは複数作ることをおすすめします。企業が必要とする人材は1パターンでなく、複数の役割やスキルセットをもつ人材が求められるケースが多いためです。
たとえば、営業職、技術職、マーケティング職など、職種ごとに異なるペルソナを作成すると、よりターゲットを絞って採用活動ができるようになります。
この際、職種が違う場合でもペルソナ作成に一貫性をもたせることが重要です。まったく異なる価値観で各職種のペルソナを作成すると社員同士の歯車が噛み合わず、早期退職が増加するリスクがあるため注意しましょう。
このように、複数のペルソナを作成することで、各職種に最適な人材を効率的に見つけられるようになり、採用の成功率が高まります。
社会情勢の変化に対応する
社会情勢の変化を意識して、ペルソナを作成することも重要です。労働市場や業界の動向、テクノロジーの進化など、現在の社会情勢に合わせたペルソナを作成すると、時代に合った採用活動ができます。
たとえば、DISCOの調査によると、コロナ禍では34.0%の企業が「新型コロナウイルスの影響で新たにWebセミナーを導入した」と回答しています。
さらに同調査によると、導入した企業のうち57.3%の企業が「コロナ収束後も引き続きWebセミナーをやりたい」と回答しています。
このことから、突発的に発生した社会問題がその後の採用活動に変化をもたらすこともあるため、社会情勢に対応する姿勢は重要であると言えます。
採用ペルソナを活用する重要なコツ
採用ペルソナを活用する際のコツは次の通りです。
- 社内全体で共有する
- 採用ペルソナを求人コンテンツに反映する
- 採用ペルソナをブラッシュアップする
それぞれのコツについて詳しく解説します。
社内全体で共有する
採用ペルソナを作成しただけでは、その効果は限定的です。そこで重要になるのが、ペルソナを社内全体で共有し、共通の認識をもつことです。
社内全体で共有することにより、採用担当者だけでなく、面接官や他の部門の関係者も一貫した基準で候補者を評価できるようになります。
具体的には、ペルソナを社内のイントラネットに掲載したり、定期的に共有ミーティングを行ったりすることでペルソナにもとづいた採用プロセスを浸透させることが可能です。
また全員が同じ採用ビジョンをもつことで、採用活動もスムーズに進みます。さらに、求める人材とのミスマッチ防止や、副次的な効果としてリファラル採用の促進にもつながります。
採用ペルソナを求人コンテンツに反映する
採用ペルソナを効果的に活用するためには、ペルソナを求人コンテンツに反映させることが重要です。ペルソナが求めるスキルや経験、価値観を明確に記載することで、ターゲットとする候補者からの応募を増やしたり、志望度を上げたりすることが可能です。
具体的には、求人広告や採用ページ、面接時の質問項目などにペルソナの要素を取り入れます。これにより、求職者が自分と企業とのフィット感をより具体的にイメージできるようになります。加えて、次に紹介する「採用ペルソナのブラッシュアップ」も効率的に行えます。
また、ペルソナにもとづいたストーリーテリングを取り入れることで、企業の魅力を伝える効果を高めることも可能です。たとえば、キャリアアップを重視する人材(候補者)には「スキルアップや資格取得を行いながら次のキャリアに進んでいける道筋」をストーリーとして紹介することが効果的です。
採用ペルソナをブラッシュアップする
採用ペルソナは一度作成したら終わりではなく、定期的にブラッシュアップすることが重要です。市場の変化や企業の成長に伴って求める人材像が変化し、ペルソナもそれに合わせて更新する必要があるためです。
定期的に採用プロセスを振り返り、得られたデータやフィードバックをもとにペルソナを見直します。たとえば、採用後のパフォーマンス評価や離職率などのデータを分析し、ペルソナの精度を高めることで、より効果的な採用活動を行えるようになります。
ブラッシュアップを怠らないことで、常に最適な人材を確保できるでしょう。
【失敗例】採用ペルソナを作成する際の注意点
採用ペルソナを作成する際に注意しておきたいポイントを見てみましょう。
- 採用ペルソナを細かく設定しすぎる
- 経営層や現場の社員を巻き込めていない
- 理想像だけが先行している
採用ペルソナの効果を最大化させたい場合は要チェックです。以下にて詳しく解説します。
採用ペルソナを細かく設定しすぎる
採用ペルソナを細かく設定しすぎると、かえって実用性が低くなるため注意しましょう。
たとえば、候補者の趣味や性格まで詳細に設定しすぎると、理想の候補者像が狭くなり、実際の採用活動で役立たなくなることが多々あります。
過度に具体的なペルソナは、現実の応募者と一致しない可能性が高く、結果として応募者の多様性を損ないかねません。そのため、ペルソナ作成時には、必要最低限の具体性に留め、柔軟性を持たせることが重要です。具体性については上述した採用ペルソナ完成図を参考にしてください。
経営層や現場の社員を巻き込んでいない
採用ペルソナを作成する際、経営層や現場の社員を巻き込んでいないと、現実と乖離したペルソナが出来上がってしまいます。
加えて、経営層のビジョンや戦略を理解せずにペルソナを作成すると、企業の方向性と合わない人材を採用するリスクも高まります。
また、現場の社員の意見を反映しないと、実際の業務環境や文化に合わないペルソナが作成されることになります。
よって、ペルソナを作成する際のプロセスには、経営層、現場の社員、人事部門など、関係者全員を巻き込むことが重要です。企業の実態に即した、現実的かつ効果的なペルソナ作成を心がけましょう。
理想像だけが先行している
採用ペルソナを作成する際、理想像だけが先行すると、実用性にかける非効果的なペルソナになります。
たとえば、優秀で長期にわたって活躍してくれる人材がよいからといって、キャリアビジョンの項目に「高い能力をもっていて同じ会社でキャリアを重ねたいと考えている」と記載するのは危険です。
こうした理想ベースのペルソナにしてしまうと、その基準を満たす候補者が極端に少なくなり、採用活動が停滞します。加えて、真に欲しい人材と乖離するリスクもあります。
理想的な候補者像を描くことは重要ですが、それが現実的であるかを常に確認する姿勢を持ちましょう。
そのためには、現実的な労働市場の状況や、自社の提供できる報酬や福利厚生とのバランスを考慮することが大切です。
まとめ
本記事では採用ペルソナの重要性や具体的な作成方法を紹介しました。
採用ペルソナは、採用活動の効率化や、質を向上させるうえで重要な要素です。しかし作り方を誤ると、かえって採用活動が非効率になるリスクもあります。
そのため、採用ペルソナを作成する際は、本記事で紹介した完成図や注意点を確認し、慎重に進めましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部