企業が成長を続けるうえで欠かせないのが適切な「採用活動」です。ただ一方で、目的や種類、進め方が複雑で、何を基準に判断すべきか迷う担当者も少なくありません。
実際、東京商工リサーチの調査では正社員不足が69.3%、非正規社員不足も38.7%にのぼり、宿泊・飲食・旅客運送などでは9割近くが人手不足を抱えるなど、多くの企業が採用難に直面しています。
実際、東京商工リサーチの調査 では、実際、東京商工リサーチの調査では正社員不足が69.3%、非正規社員不足も38.7%にのぼり、宿泊・飲食・旅客運送などでは9割近くが人手不足を抱えるなど、多くの企業が採用難に直面しています。
▼業種別の正社員不足・非正規社員不足の割合
こうした状況を改善するためには、採用の基本を正しく理解し、目的や種類、全体プロセスを体系的に整理することが重要です。
そこで本記事では、新卒・中途・アルバイトから派遣・業務委託・外国人採用まで幅広い雇用形態を比較し、それぞれの特徴や判断軸をわかりやすく解説します。採用に課題を感じている方や見直したい方に向けて基礎から実務まで理解できる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、採用を単なる募集活動ではなく、経営戦略の一部として設計するための視点も重要です。採用戦略の立て方や事例・優先順位の決め方については、以下を参考にしてください。
採用とは
採用とは、企業や組織が事業や組織の目的を達成するために、必要な人材を定義し、適切な方法で惹きつけ、選考し、迎え入れ、定着・活躍につなげていく一連の活動を指します。
一般的には「人を雇うこと」と捉えられがちですが、実際の採用はそれほど単純なものではありません。求人情報の発信、応募者の集客、選考・面接、内定・入社対応、そして入社後の定着や戦力化まで含めて、はじめて採用活動は完結します。
また、採用は単なる人員補充ではなく、企業の成長戦略や組織課題と密接に結びついた重要な経営施策の一つです。採用の目的や状況によって、新卒採用・中途採用・アルバイト採用など選ぶべき方法や進め方は大きく変わります。
次の項目以降から、こうした採用活動を体系的に理解するために、採用の目的・種類・代表的な手法・進め方・重要点を順を追って解説していきます。
なお、「採用」という言葉の意味や基本的なプロセスをまず整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。
採用をする5つの主な目的
採用活動には、主に5つの目的があります。自社が経営において何かしらの課題を感じている場合、以下の5つに当てはまることが多いです。
- 欠員の補充を行うため
- 従業員の不足を解消するため
- 自店舗の抱える課題を解消するため
- 新しい事業や出店を進めるため
- 先の未来のリーダー・責任者候補を育てるため
この後紹介するように採用の種類はさまざまあるものの、根っこにある問題はいずれかに該当するはずです。自社に適した効果的な採用活動をするためにも、まずは自社に当てはまるのは何かを考えてみましょう。
なお採用で陥りがちな課題を整理した以下の記事も参照すると原因把握に役立ちます。
1.欠員の補充を行うため
日本商工会議所は、横手商工会議所が実施した採用の目的についてのアンケートの結果を発表しました。それによると、5割近くの企業が欠員補充を目的とした採用を行っていることがわかりました。
何かしらの理由で退職する従業員が出ることは仕方のないことです。しかし退職した原因をはっきりさせずに改善策を講じないと、残った従業員の満足度低下につながります。
働き方改革が重要視されている昨今では、芋づる式に従業員の退職が相次ぐリスクが高まるでしょう。有給休暇の取得ができなかったり、慢性的な残業があったりなどは避けなくてはいけません。
欠員の補充の場合、早急な現場回復が求められます。即戦力として活躍できるような人材の採用を目指す必要があるでしょう。募集から選考までの無駄を省く実務ポイントをまとめた以下の記事で、現場を止めない採用フローの最適化方法を確認できます。
関連リンク
2.従業員の不足を解消するため
企業活動の基本は、前年以上の売上や利益を残すことです。目標を上げるならそれに伴っての従業員増加も行わなければ、現在いる従業員への負担は増す一方です。そのため、経営者は目標から逆算した採用を行うことで生産性をコントロールします。
人手不足の深刻さは多くの企業が抱えている問題です。中小機構の行った中小企業や小規模企業者を対象とした人手不足の深刻度についての質問では、「大変深刻」、もしくは「深刻でこのままでは経営に支障が出る状況」との回答が実に3割強も集まりました。
「重要な問題」との回答も合わせると、69.2%もの企業は人手不足を問題視しています。
このように多くの企業が人手不足を抱えている状態では、採用活動をしても順調に人が集まるとは限りません。現状では足りている場合にも、将来的に不足する見通しであれば早めのアクションも検討しましょう。
事業目標から逆算して必要人数を算出する方法は以下の記事で詳しく解説しています。年度計画・月次逆算の作り方や、計画を現場施策に落とし込むテンプレートも活用可能ですので、ぜひお役立てください。
3.自店舗の抱える課題を解消するため
社内の成長を止めているボトルネックに対処するには、今いる従業員を育成するよりもスペシャリストを採用したほうが早期解決できるケースもあります。自店舗が抱える課題の解決策を考える際、選択肢のひとつに採用も含めてみましょう。
例えば、マネジメント力の強化や経理関係の書類を作成する担当者の増員などが挙げられます。また、株式上場のための準備なども法律や法令が関わるため専門家に任せることが多いです。
こういった専門性の高い業務を効率的に進めるためには、それを得意とするスペシャリストを採用するとよいでしょう。
ただし、長期的な取り組みの場合はコスト面で採用よりも人材育成が良いケースもあります。課題解決のための採用の場合、期間とコストも視野に入れて検討しましょう。
4.新しい事業や出店を進めるため
企業を成長させるのに、新規出店や新規事業は欠かせません。現在の状況を維持しながら新しいことを始めるためには、採用は必須です。
新しい事業や出店のための採用を進めるときには、まずは必要なポジションを考えましょう。次に当てはまるポジションに合わせて新規採用か現職場からの異動かを考えます。
特に責任者にはリーダーとしての総合的なマネジメント力が求められます。また、立ち上げ当初はコミュニケーションを綿密に取る場面が多いため、なるべく関係性が構築された従業員を起用することが望ましいです。
そのため新しい取り組みを想定して採用する場合、抜けた人員を埋めることを目的とした採用と、新規店舗の目標達成を目的とした人事・採用を考えて検討するとよいでしょう。
5.先の未来のリーダー・責任者候補を育てるため
多くの企業が次世代のリーダーや責任者候補の育成に関して課題を抱えています。株式会社リクルートの行った人材マネジメントについての調査では、人事の課題と感じているものについて、多くの企業が「次世代リーダーの育成」と回答しています。
リーダー育成に付随して、「管理職のマネジメントスキル向上」や「中途採用の強化」についての回答も高い比率を占めました。
リーダーに必要な要素は、通常の従業員とは異なる部分も多くあります。ある程度の社会人経験があり、リーダーとしての素養がある従業員を新規で採用したほうがうまくいくこともあるかもしれません。
中長期でリーダー候補を確保するには、組織全体の採用力を底上げする必要があります。以下の記事では、優秀人材を安定確保するための評価基準づくり・社内体制の整え方を紹介しています。
採用の種類と特徴
「採用する」とひと言で言っても、採用の種類にはさまざまなものがあります。目的に合わせた採用を行うには、それぞれの特徴を理解して判断しなければなりません。
ここからは、店舗責任者や経営者の方が参考になるように、正規雇用以外にも採用の種類を網羅的に説明します。内容をまとめると以下の通りです。
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種類 |
特徴・概要 |
メリット |
デメリット |
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新卒採用 |
学校卒業者を採用する |
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中途採用 |
新卒以外の年齢を採用する |
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派遣・契約社員採用 |
有期雇用の社員採用 |
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アルバイト・パート採用 |
学生や主婦、フリーターを採用 |
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業務委託採用 |
契約内容に基づいて一定期間だけの業務依頼をする |
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外国人採用 |
訪日外国人を採用 |
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障がい者採用 |
障がい者認定された人を採用 |
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高卒採用 |
高卒人材を採用 |
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高齢者採用 |
60歳以上の高齢者を採用・再雇用 |
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詳しくはこの後から説明します。
新卒採用
新卒採用では、大学や専門学校といった学校を卒業してはじめて社会人になる学生を対象として採用活動を行います。
社会人経験やスキルがなく、入社後に育成する必要のある学生を採用する点が特徴です。そのためある程度軌道に乗っており、育成ができる環境が整っている中小企業や大企業が行う採用方法として有効です。
新卒採用のメリットは、伸びしろのある人員を確保できることです。社会人経験が少ない分、自社の経営方針や社風にも馴染みやすいでしょう。
デメリットは、独り立ちするまでは育成担当が必要となることです。基本的には、育てている期間は業務を一人では任せられません。また育成や研修制度が構築されていなければ、退職するリスクも高くなります。
新卒採用の概要や進め方は、以下の記事で体系的に整理しています。
あわせて、選考期間や採用スケジュールの立て方については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご活用ください。
また、2034年頃までの新卒学生が当てはまる「Z世代」の特徴や職業観について理解することも欠かせません。
中途採用
中途採用は、新卒以外を対象に採用活動を行います。転職して次の職場を探す人も多く、新卒採用に比べるとある程度の社会人経験を積んでいることも多々あります。
昨今では、中途採用の一種でキャリア採用という種類も注目されています。キャリア採用は、中途採用よりもより専門性の高い人材確保を目的としたものです。プログラマーやエンジニアなど、専門性がカギとなる職種でよく取り入れられます。
中途採用のメリットは、育成時間を短縮できることです。社会常識などの基本知識を教育する時間も減らせるうえ、同業種を経験している人材であれば自社ならではのやり方を伝えるのみで即戦力となる可能性を秘めています。
デメリットは、自分の考えややり方に固執する危険性がある点です。前職での経験がプラスに働かない場合もあり、「前はこれでうまくいったから」など、経験を元に新しい考えや方針をスムーズに受け入れられないこともあります。
中途の即戦力採用を安定させるには、母集団形成の仕組みが重要です。以下の記事では求人媒体・紹介・ダイレクトリクルーティングまで手法比較をまとめています。
派遣・契約社員採用
派遣・契約社員は、正社員とは異なり、期間満了とともに契約を終了できる点が特徴です。また同じ職場で継続して働ける期間は、どちらも3年までです。
派遣社員は、正規雇用よりも自由な時間や条件で働きやすく、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できます。そのため結婚・出産や介護をしている人が選択することの多い働き方です。
厚生労働省の派遣労働者の調査によると、採用するコストや時間が正規雇用よりも短くなるため、欠員補充や一時的な業務量の変化に合わせて採用することが多いとの回答でした。
契約社員採用は、正社員雇用の前に試用期間として行うことも多いです。
とはいえ、期間が限定される点はデメリットでもあり、責任ある仕事や立場はあまり任せられません。
また、昨今政府は、雇用期間の定めのない「短時間正社員制度」の導入も推進しています。働き方改革の推進や共働き世帯の増加もともない、正規雇用がフルタイムで働くという常識があてはまらない時代になってきているといえるでしょう。
アルバイト・パート採用
アルバイト・パート採用は、主に小売店やサービス業などの現場で取り入れられる採用方法です。両者に法的な違いはありませんが、世間的なイメージではアルバイトは学生や若いフリーターが働く場合を指し、パートは主婦(主夫)が行う短時間労働を指す言葉として使われます。
アルバイト・パート採用のメリットは、正社員雇用よりもコストを安くできることです。時給換算で労働してもらえるので、コスト調整もしやすくなります。
デメリットは、任せられる業務が限定的である点です。業務内容の範囲に定めはないため現場の方針にもよりますが、責任の伴う金銭や雇用についての管理は原則的に正社員の業務です。
またアルバイトの場合、役目を任せたとしても学生などは卒業とともに退職します。安定的な運営が難しくなるでしょう。
業務委託採用
業務委託採用は、副業やフリーランスの広がりとともに増えている採用方法です。キャリア採用に似ていますが、より短時間で即戦力となる人材をピンポイントで採用できます。
委託方法は成果物の納品で報酬が発生する請負契約型、委任された業務を実施することで報酬が発生する委任契約型の2つです。クオリティの高い納品物が必要なら請負契約型、継続したサポートをしてもらうなら委任契約型というように使い分けるのが一般的です。
必要な時にスポットで依頼できるため、業務の内容に合わせた人員調整もできます。
ただしデメリットは、自社の従業員が育たない点や、ノウハウが蓄積できない点です。また成果物に関する認識に齟齬があるとトラブルの原因になることもあり、契約時には成果物の定義や納品方法、納期などが明記された契約書の作成が重要となるでしょう。
外国人採用
外国人採用は、グローバル展開を目指す企業や、訪日外国人の利用者数増加を目指す店舗などが積極的に導入する傾向のある方法です。外国人採用をするときには、出入国管理及び難民認定法で定められている在留資格の範囲を守らなくてはなりません。就労が認められるのは、以下の通りとされています。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士、ポイント制等)
引用:厚生労働省「在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格18種類」
留学生や滞在中の外国人がアルバイトなどで働く場合、入国管理局から資格外活動の許可が必要です。許可がある場合にも1週28時間まで、夏休み期間でも1日8時間までと就労時間にも決まりがあります。
外国人採用をする際には、国ごとの文化の違いにも留意しておかなければうまくいきません。言語だけでなく日本の文化やマナーもしっかりと伝えることで、顧客満足度を下げずに対応できるようになるでしょう。
障がい者採用
厚生労働省によると障がい者雇用は、従業員40人以上を雇用している事業所では1人の採用が義務となっています。民間企業での法定雇用率は障害者雇用促進法によって定められており、2.5%を遵守しなければなりません。
障がい者とは、以下の定義にあてはまる人のことです。
《「障害者」の範囲》
障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています(短時間労働者は原則0.5人カウント)。
ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんの方も対象となり、またハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援においては、「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」が対象となります。
引用:厚生労働省「障害者雇用のルール」
障がい者雇用において、差別は禁じられています。また障がいの特性にも配慮した職場づくりも求められます。
障がい者採用では、通常の健常者よりも多くのコミュニケーションが重要です。得意としていることを任せれば、健常者以上の結果が期待できることも少なくはありません。
できること、できないことを確認し、負担に感じないような業務内容を明確にしたうえで業務を遂行してもらうようにしましょう。
高卒採用
高卒採用は、人手不足の現在注目されている採用方法です。新卒採用の一種ですが、大学よりもさらに早く採用することで教育時間をより一層確保できます。
大学や専門学校などの知識は不要なものの専門性の高い仕事に従事する人材や、専門学科で学んだ人材を確保したい場合には、特におすすめの方法です。
高卒採用した従業員は意欲が高い傾向であるうえ、初任給も大学に比べて低く設定されることからコストを抑えることもできます。
ただし、大学卒よりも高い離職率であることも忘れてはいけません。以下は厚生労働省の新規学卒者の離職状況です。大学卒の比率よりも高校卒のほうが高くなっています。
より手厚く教育環境を整えなければ定着してもらうことは難しいことも覚えておきましょう。
高卒採用については、厳守しなければならないルールも数多くあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
さらに、高卒採用のスケジュールについては以下の記事で具体的に解説していますので、あわせてご覧ください。
高齢者採用
少子高齢化が加速している日本において、高齢者の働き方も広がっています。厚生労働省でも各種助成金制度を制定するなどからも、その力の入り方は伝わるでしょう。
助成金制度のなかでも「65歳超雇用推進助成金」は、以下3つのコースで推進活動をした事業主に対して助成金が支払われる制度です。
- 65歳超継続雇用促進コース:定年引上げ、定年廃止、66歳以上の継続雇用制度の導入
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース:雇用管理制度の整備等に関わる措置を実施
- 高年齢者無期雇用転換コース:50歳以上かつ低年齢未満の有期契約を無期契約に転換
参考:厚生労働省「65歳超雇用推進助成金の概要」
高齢者でも働く意欲のある人は多くいます。事実、内閣府の高齢者社会白書での「何歳ごろまで収入を伴う仕事がしたいか」の結果では、60歳以上の人は9割近く働く意欲があるとの回答でした。
高齢者採用では、雇用に伴うルールの厳守や体力や仕事内容など、一層の配慮が必要となります。しかし人手不足の企業を救う一手となるかもしれません。
採用に活用される主な手法
採用したい人材に合わせて、取れる手法も多種多様です。ここからは代表的な採用手法について、説明します。
なお、こちらの記事では人材募集の手法についてより網羅的に解説しているので、より詳しく知りたい方はあわせて参考にしてください。
ハローワーク
ハローワークは、無料で行える採用手法です。知名度も高く、一度は利用を検討した経営者も多いのではないでしょうか。
はじめての利用の際は、事業所情報登録も必要です。管轄地域が決まっているため、掲載依頼は事業所を管轄しているハローワークかインターネットから行います。ただしインターネットからの登録は、事業所登録完了後ではないとできません。
ハローワークの大きな魅力は、費用の安さです。求人票の掲載に費用は発生しません。しかし、ミスマッチの多さが懸念されます。専門性・技術性が求められる職業の場合、能力不足と感じる人材が集まってしまうかもしれません。
ハローワークで求人を掲載する方法については、次の記事を参考にしてください。
就職・転職サイト
就職・転職サイトは、インターネットを通じて求人募集を行う採用手法です。就職・転職サイトには、さまざまな種類があります。
ハローワークよりも多くの人に利用されており、多くの応募者数も期待できます。料金体系は掲載課金型と成果報酬型の2つです。
費用面で不安がある場合、成果報酬型を選択すれば費用に見合った成果を得られるでしょう。ただし、成果報酬型は掲載課金型よりも割高な傾向のため、利用する前にはその点も踏まえて慎重に検討する必要があります。
ダイレクトリクルーティング・スカウト採用
ダイレクトリクルーティングとは、企業やエージェントが求職者に対して直接働きかける採用手法です。ダイレクトリクルーティングは、個人の能力を確認してから採用活動をすることで、ピンポイントに優秀な人材を集めやすくなります。
そのため、リーダー候補や即戦力人材の採用と相性が良い採用手法として有名です。
似た手法にスカウト採用がありますが、送信する規模感が異なります。ダイレクトリクルーティングは求職者個人へ送信する一方、スカウト採用は条件に合う求職者全体が対象です。ただ、一般的に同等の意味合いで用いられているケースも多いため、意識し過ぎる必要はありません。
ダイレクトリクルーティングは比較的費用も抑えやすい反面、候補者の選定に時間がかかってしまったりスカウトメールの作成に手間がかかったりといったデメリットもあります。人材が必要になるまでの期間なども考慮して取り入れましょう。
攻めの採用を実践したい場合は以下の記事を参照ください。スカウト文面の作り方や、高反応率のためのペルソナ設計ポイントも掲載しています。
リファラル・縁故採用
リファラル採用とは、自社の社員から友人・知人を紹介してもらう採用手法のことです。縁故採用と似ていますが、リファラル採用は正式な選考フローをはさみます。
どちらにも共通しているメリットは、採用コストが発生しない点と、紹介者によって会社の雰囲気や文化が伝わっているためにミスマッチが起こりにくい点です。
ただし、紹介できるような人材が現れなければ成立せず、採用までが長期化する傾向にあります。また、紹介できる人材=どこの会社からも魅力的な人材であることが多く、人材がいたとしてもうまく進まないことも起こりうるでしょう。
合同企業説明会
複数の会社が集まって説明会を行う採用手法が合同企業説明会です。コロナ禍の影響もあり、昨今ではWebやオンラインで開催することも増えています。Webで開催する場合、参加者を集めやすく、会場の準備にかかる費用を抑えられることが魅力です。
合同説明会には多くの企業が参加するので、ネームバリューのある大企業・有名企業に参加者が集中する傾向があります。とはいえ、他社目当ての参加者が思わぬきっかけで自社に注目することもあり、アピールの仕方さえ工夫すれば活路が見いだせるかもしれません。
自社サイト・SNS
自社の公式サイトで求人ページを設けたり、SNSを活用したりする採用活動はICT導入の促進に伴って、昨今注目されている採用手法です。
特にSNSを活用したソーシャルリクルーティングは、SNSに馴染みの深い20〜30代の若い世代の募集に取り入れられています。LINEやX(旧Twitter)など、ブランディングしたい内容に合わせて効果的なものを活用してみるとよいでしょう。
SNSでの求人活動は、ビジネスプランなどの導入をしない限り費用が必要ありません。自社HPをすでに持っている場合も同様です。
デメリットとしては、作成の手間がかかる点が挙げられます。閲覧数やフォロワー数に依存するため、日ごろからの更新や運用によって成果に大きな差が出るでしょう。
アルムナイ採用
アルムナイ採用とは、何かしらの理由で自社を一度退職した従業員を再度雇用する採用手法です。退職者からの希望や、在籍している従業員の紹介など、きっかけはさまざまにあります。
株式会社プロフェッショナルバンクの再雇用をしたことがあるかのアンケートでは、67%もの企業が再雇用したことがあると回答しています。
同アンケートでは、再雇用してよかった点として、即戦力としての活躍や、採用・教育コストを抑えられた点が挙げられました。
しかし、アルムナイ採用には在職者の退職ハードルを下げたり、人事や給与面での調整の手間が必要になったりするデメリットもあります。
導入するには、しっかりとした話し合いができる環境作りや、従業員との信頼関係がある程度成り立っているかなどを確認してから行いましょう。
【ポイント付き】採用を成功させるための3ステップ
ここまでの内容を踏まえて、自社が採用活動を成功させるために踏むべき3つのステップについて解説します。
採用の目的がどんなものでも該当する項目になるので、情報をまとめて自社が動き出すときの参考にしてください。
ステップ1.自社を分析して求める人材を定める
自社が抱えている課題は何か、解決するためにはどんな人材が欲しいかを考えましょう。そのとき、具体的にどのような業務・仕事内容を任せるかを軸にすると、採用後の失敗が減らせます。
以下は具体的な例です。
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美容室において1店舗目が順調に進んでおり新規出店を目指したい場合
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このとき、「妥協できる点」も考えておくと募集段階で調整がしやすくなります。既存の職場であれば、すでに働いているメンバーとのバランスも踏まえて検討しましょう。
ステップ2.いつまでに何人を採用するのか決める
次に、その人材はいつまでに揃っているのが理想的かも考えておくと、予算や手法を考えるヒントになります。
例えば最初のステップのような例であれば、店舗がオープンするタイミングから逆算していきます。考えるときには、教育する時間、準備などの時間を含めましょう。
人数を考える際には、採用後のトラブルやスタッフの希望にも対処できるよう、必要人数よりも余裕を持って採用できると理想的です。
ステップ3.ターゲットに合わせて手法を選ぶ
ターゲットに合わせて採用手法を決定します。長期的な取り組みができるのか、短期的に決着しないといけないのかによっても適した採用手法は異なります。
紹介している採用手法以外にも行える手法はさまざまです。特徴とメリット・デメリットがそれぞれにあるため、予算と期間に合わせて自社にあったものを選択してみてください。
今回の例のような、特に技術職や専門職の募集には特化型の求人サイトがおすすめです。欲しい人物像に合わせて、アピールしたい内容をしっかりと記載できる媒体を探してみましょう。
リジョブは美容・エステティシャン・セラピスト・整体師などに特化した求人掲載メディアです。経験者や資格保有者の比率が高く、希望に沿った人材確保を叶えます。求人掲載を希望する方は、まずは以下から詳細をご覧ください。
関連リンク
なお、ここで整理した3ステップは採用活動全体の“道しるべ”となるものです。次の項目では、これらのステップをさらに実務レベルへ落とし込み、採用プロセスに沿って具体的な取り組み方を詳しく解説します。
採用プロセスの重要点を理解する
前項目の3ステップでは、採用活動の大きな流れを俯瞰しました。ここでは、その内容をさらに実務へ落とし込み、採用活動で実施するプロセス順に重要ポイントを紹介します。
採用要件の定義、ペルソナ設計、媒体選定、広報、選考設計、コスト管理など、各プロセスはすべて連動しており、1つのズレが全体に影響するため、体系的に理解することが欠かせません。ぜひ、以下を参考に効果的かつ効率的な採用活動を実現させましょう。
採用要件の定義
採用活動の起点となるのが「採用要件の定義」です。求める人物像が曖昧なままだと、求人原稿・選考基準・媒体選定など、後工程のすべてがぶれてしまいます。
まずは「業務要件」「スキル要件」「マインド・価値観」の3つを軸として整理し、自社が求める水準と“妥協できる範囲”を明確にしておきましょう。
特に、既存スタッフとの役割分担やカルチャーとの相性は、採用後のミスマッチを防ぐために欠かせません。現場の声や実際の業務量を踏まえて要件を更新することで、選考基準の一貫性が保たれ、面接評価も安定します。
「採用要件」について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ペルソナ設計
要件定義で求める人材の条件が定まったら、「その人物像が実際にどこにいて、何を大事にして働いているのか」を言語化するのがペルソナ設計です。
年齢・経歴・価値観・行動パターン・情報収集チャネルなどを細かく設定すると、媒体選定や訴求メッセージのズレがなくなり、応募率改善に直結します。
例えば美容・リラクゼーション業界では、Z世代は動画・SNSの情報接触が圧倒的に多く、30代以上は口コミ・求人サイト・店舗ページの閲覧率が高い傾向があります。
ペルソナを明確にすることで、発信する内容・使う媒体・応募動線の作り方まで、戦略として設計しやすくなります。ペルソナの作り方を詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
採用ファネルとKPI設計
採用人数や時期が決まったら、採用ファネル上でどの数値をどれだけ改善するべきかを決めます。
「応募を増やすべきなのか」「書類通過率を改善すべきなのか」「面接辞退を防ぐ必要があるのか」など、注力すべきポイントは会社ごとに異なります。
ファネル構造を可視化することで、下記のどこにボトルネックがあるかが明確になり、改善施策を一段ずつ積み上げられます。
- 母集団(PV・クリック・応募数)
- 選考プロセス(書類・一次面接・最終面接)
- 内定承諾率
採用ファネルの考え方は、以下の記事で詳しく紹介しています。
採用における集客|採用マーケティングと媒体選定
採用プロセスの中でも特に影響が大きいのが「集客」です。
求める人材が普段どこで情報収集をしているのかを踏まえ、検索・SNS・求人媒体・動画・紹介など、複数チャネルを組み合わせて最適な応募導線をつくることが重要です。
媒体選定では、「即効性」「専門性」「コスト」「ターゲットとの相性」を軸に比較すると失敗が減ります。美容業界のように専門性が高い職種では、業界特化型媒体がもっとも費用対効果が高いケースが多いです。
さらに、求人原稿の訴求ポイントと画像選定、導線、検索対策(SEO)など、採用マーケティングの概念を取り入れて改善することで応募数は大きく変化します。
「採用における集客」の考え方は、以下の記事で体系的に理解できます。
採用ブランディング
集客および応募率を上げるには、求人情報を出すだけでなく「なぜこの会社で働くのか」を伝える採用ブランディングが欠かせません。
企業の強み・カルチャー・働く価値を一貫したメッセージとして整理し、求人広告・SNS・動画・面談など全ての接点で同じ世界観を届けることで、認知〜応募検討の離脱を大きく減らせます。
例えば、美容業界では職場の雰囲気、育成方針、キャリアの描きやすさなどが判断軸となるため、1日の流れや教育の様子、スタッフの想いなど“リアルが伝わる情報”を積極的に発信することが効果的です。共感度の高い応募者が増えることで、応募率だけでなく入社後の定着にもプラスに働きます。
採用ブランディングの具体的な進め方は、以下の記事で解説しています。
採用広報
応募前の段階で求職者が会社を知るきっかけをつくる「採用広報」は、Z世代・若年層が多い美容業界では特に有効です。
例えば、ショート動画、YouTube、Instagram、TikTok、ストーリーズなどを活用し、働く人の雰囲気・実際の業務・教育体制・キャリアのリアルを伝えることで、興味関心を高められます。
さらに、採用広報と並行して採用広告を活用すると、接触ポイントを広げられます。求人広告、紙媒体(チラシ・新聞・ポスター)、求人検索エンジン、ハローワーク、人材紹介(エージェント)などの基本的な手段に加え、YouTube広告やSNS広告を組み合わせることで、特に若手層へのリーチを強化できます。
とりわけ美容業界では、動画を使った職場紹介や1日の流れを広告として出稿することで、視覚的な訴求がしやすく、応募の後押しにもつながります。
また、会社のミッション・ビジョン・カルチャーを分かりやすく発信することで、応募者の質やミスマッチ低減にも寄与します。
採用広報と、それを支える採用広告・採用動画の詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。
コスト管理
採用費用は、媒体掲載料・人材紹介手数料・広告運用費・工数(時間)・動画制作費など多岐にわたります。
そのため、採用活動を正しく評価するためには「1人あたり採用単価(CAC)」を把握し、媒体別の効果を比較することが重要です。
計画段階で費用配分を決めておくと、予算超過を防ぎつつ、効果の出やすい施策への投資判断がしやすくなります。経理処理における勘定科目の整理や月次集計の仕組み化もあわせて進めると管理が格段に楽になります。
採用コストの考え方は、以下の記事でより具体的に紹介しています。
選考設計と内定
応募者が増えても、選考プロセスの設計が不十分だと採用成功にはつながりません。面接の目的・評価基準・質問項目・合否判断の基準を統一し、ぶれのない選考を行うことで、ミスマッチ防止と選考時間の効率化が実現できます。
また、面接辞退や内定辞退は「返信速度」「接触頻度」「伝え方」の工夫で大きく改善します。選考中の連絡は会社の印象を決める重要なポイントで、丁寧な案内やスムーズな返信が成果につながります。
選考連絡・お断りメールの具体例は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
定着と組織化
採用は「内定で終わり」ではなく、早期離職を防ぎ、現場で活躍できる状態に導くことまでを含めて成功です。
オンボーディング施策、研修設計、メンター制度、評価制度など、人材が成長・定着する仕組みづくりが長期的な採用力強化につながります。
そして採用と組織開発を一体で考えることで、採用の質とスピードが向上し、企業全体として持続的な成長が見込めます。組織としての「採用力」の高め方は、以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
職種別・場面別の採用工夫
美容室、アイサロン、整体院、リラクゼーションサロンなど、業態や職種によって採用課題は異なります。
専門スキルの習熟度、営業時間帯、スタッフ構成、来店ニーズによって、求人の訴求ポイントや選考基準、教育体制は大きく変わります。
職種ごとに成果が出やすい募集方法・強みの伝え方・求める経験値は異なるため、成功事例を参照しながら自社に合う工夫を取り入れましょう。
職種別の採用ノウハウは以下の記事でまとめています。
まとめ
採用は単なる「人を増やす活動」ではなく、企業の課題解決や事業成長を支える重要な経営行為です。目的や状況によって選ぶべき手法や採用タイプは大きく異なり、それぞれの特徴を理解したうえで判断することが成果につながります。
本記事で紹介した重要ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 採用の目的は「欠員補充」「不足解消」「課題解決」「新規事業」「リーダー確保」の5つに集約できる
- 採用手法は多様化しており、雇用形態ごとにメリット・デメリットが異なる
- 新卒は伸びしろ、中途は即戦力、アルバイトや派遣は柔軟性が強みとなる
- 経営計画・事業計画と連動した採用計画が欠かせない
- 採用力を高めるには、要件定義・選考設計・オンボーディングまで一貫性が必要
自社の現状と照らし合わせながら、最適な採用方法を選ぶことが成果への近道です。ぜひ本記事を今後の採用活動の精度を高めるためのガイドとしてご活用ください。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部