採用要件とは?決め方やポイント、項目の具体例を紹介!
採用要件とは、企業が採用する際に求職者に対して求めるスキルや経験、能力などです。昨今は業務を遂行するためのスキルや能力以外にも、人柄や性格などを重視する傾向にあります。
人柄や性格を重視する場合、とくに面接で採用要件を満たしているかどうかを判断することが求められます。
採用の最終決定は現場の店長の采配も大きいのですが、やっぱり「いいやつ」という判断は共通しています。共通点は、斜めにいろいろなことを見ない、明るく素直な人柄。その人柄を、面接のなかで判断しています。
引用: モアリジョブ |株式会社Lond ゼネラルマネージャー/リクルーター 関根孝文さん
そのため複数の面接官がいる場合は、それぞれが採用要件を共有して、同じ基準のもとで面接を受けにきた求職者を評価することが求められます。
本記事では、採用要件を作る目的や作り方、ポイントについて昨今のトレンドや事例を織り交ぜながら解説します。
採用要件とは
採用要件とは、企業が採用する際に求職者に対して求めるスキルや経験、資格、能力などの基準を指します。具体的には、次の項目ごとに採用の基準を設けます。
- 学歴
- 職務経験
- 専門知識の有無
- コミュニケーション能力 など
以上の項目は、職務内容を遂行できる人物像をもとに設定され、適切な候補者を選び出すための指針となります。採用要件を設定すると、企業は求める人材について明確なイメージを持てるため、効率的に採用活動ができるでしょう。また求職者にとっても、採用要件は応募を検討する際の重要な判断材料となります。
重視されやすい採用要件
中途と新卒のそれぞれの採用要件において、「人柄」重視という同じような傾向が見られました。アンケート調査をもとに、それぞれの傾向を解説します。
中途採用の場合
ヒトクルの調査 によると、採用基準で重視する項目として、「人柄」を挙げる企業の割合が最も多い結果でした。
▼採用要件として重視する項目(3つまで)
また「人柄」に次いで「今後の可能性」が重視されており、経験や能力以上にポテンシャルに関連する項目が重視される傾向が見られます。採用が厳しくなる状況において、経験や能力などで採用対象者を限定せずに、柔軟に対応しようとする各企業の姿勢が垣間見られます。
一方で 株式会社学情の調査 によると、書類選考に限定した場合、経験を重視するとの回答が最も多い結果でした。しかし同調査の面接での評価については、「人柄・社風との相性」を採用要件として重視する企業が89.4%に上りました。
このことから考えると、職務を遂行するにあたって最低限の能力があるかどうかを職務経歴書や履歴書などで精査したあとに、面接では人柄の良し悪しをチェックするのが中途採用における要件設定の傾向とみられます。
新卒採用の場合
「マイナビ 2024年卒 企業新卒採用予定調査 」によると、新卒採用も中途採用と同じく人柄重視の傾向が目立ちます。
▼人材採用で重視する要素
さらに人柄に次いで、企業の価値観や人間関係、社風などの企業文化に合った人材かどうかも要件として設定する企業が多いです。
企業文化にあった人材を採用要件として設定することは、新卒に限らず中途採用においても重要です。都内を中心にヘアサロンを多店舗展開する株式会社エターナルのLallYou 渋谷で代表を務める守道さんは、自社で定める採用要件について次のようにコメントしています。
第一条件は、会社の理念を理解してくれていること。「有名だから」「聞いたことがあるから」という感覚だと、もし入社できたとしても1年くらいで「何か違いました」と辞めてしまうことが多いんです。
正反対の2ブランドを運営している分、合わない考え方を選ぶとすぐ辞めてしまうんだなというのを、すごく実感します。働き方や考え方に共感できていれば、働き始めてすぐに「合わないな」と感じることはないと思うんです。これは新卒、中途を問わず、求めていることです。
引用: モアリジョブ |LallYou 渋谷 代表 守道さん
入社後の早期離職を防ぐためにも、企業文化にマッチした人材を採用することが重要と考えられます。
採用要件を作る目的
採用要件は、企業が求める人材を明確にし、適切な選考プロセスを導くために重要な役割を果たします。ここでは採用要件を作る目的として、次の6項目を解説します。
- 求める人物像を明確にするため
- 適した選考方法を選ぶため
- 選考基準を標準化するため
- 経験やスキルを持った人材を獲得するため
- 早期離職を防止するため
- 自社の方針に共感する人材を採用するため
求める人物像を明確にするため
採用要件を設定すると、企業が求める人物像を具体的に描けます。業務を遂行するにあたって必要なスキルや経験、またはどのような性格や価値観を持った人材が会社に適しているかを事前に定義すると、採用の方向性が定まります。
ただし、求める人物像は時代とともに変化することを意識することが大切です。経済産業省が取りまとめた報告書によると、技術の飛躍的な進歩によって、現代は知識やスキルの賞味期限が短期化しているといわれています。
このように求められる知識やスキルの変化が激しい現代において、求められる素養のひとつに、自ら能力をアップデートしていける力が挙げられます。
必要となる人材も大幅に変化している。技術の飛躍的・非連続的な進歩により、知識やスキルの「賞味期限」は短期化しており、時代に応じて自ら随時アップデートしていくことができる人材が求められるようになった。
引用:「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書| 経済産業省 中小企業庁
このような能力は社会人基礎力と呼ばれており、同資料において次の3つが定義されています。
- 前に踏み出す力(アクション):一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力
- 考え抜く力(シンキング):疑問を持ち、考え抜く力
- チームで働く力(チームワーク):多様な人々とともに、目標に向けて協力する力
求める人物を明確にすることを目的に採用要件を設定する場合は、具体的なスキルや能力だけではなく、以上のようなビジネスの基盤となる能力についても定めることが重要です。
適した選考方法を選ぶため
採用要件に基づき求める人物像を明確にすると、候補者を評価するための最適な選考方法を選べます。面接や筆記試験、実技試験など、求めるスキルや資質に応じた選考プロセスを組み立てることで、効率的かつ的確な人材選定が可能です。
たとえば美容サロンや整体院などの店舗経営で人手不足が発生している場合、実技試験で応募者のスキルをしっかりと見極める必要があります。
中途の場合は、基本的に人手不足による募集が目的です。1対1で面接したあと、技術の習得具合を見させていただき、おおむね問題ないようであれば、働き始められる期間や時間帯など具体的な内容を詰めていきます。とにかく目的のために早めの対応が求められているので、後者の話を軸に面接を行うことが多いですね。
引用: モアリジョブ |GARDEN Tokyo代表 久分 祐太郎さん
人手不足のなかで、どのような業務を担当させたいのかを採用要件で明確に定義して、その業務を遂行できるかどうかを見極めることが大切です。
一方で、新卒採用でポテンシャルを重視するのであれば、実技試験を実施せずに面接のみで採用を決めることもあるでしょう。
新卒の場合も、選考は面接のみです。新卒の面接では、挨拶の仕方、話している時の表情、笑顔が魅力的かなど、主に人柄をチェックしています。技術は後から身に付いても人柄はなかなか変わりませんから、サロンにマッチする性格であるかチェックすることが大切です。
引用: モアリジョブ |BY THE SALON 金澤真由美さん
このように、求める人物像に応じて採用プロセスも変化します。適切な選考方法を選ぶためにも、採用要件を作ることが重要です。
選考基準を標準化するため
採用要件を明確にすると、選考基準を統一し、すべての候補者に対して公平な評価を行えます。これにより評価者の主観に左右されず、一貫性のある選考が可能です。
採用プロセスのなかでも選考基準を標準化しづらい工程として、面接が挙げられます。面接は複数の面接官で担当することもあるため、その担当者ごとに人材の評価に違いが生じるのです。
選考基準を標準化するためにも、採用要件のなかで面接で評価すべき基準を定め、面接の合否判定の透明化を図ることが大切です。
経験やスキルを持った人材を獲得するため
採用要件には、具体的な職務経験や技術的なスキルも設定すると、それに合致する候補者を見つけやすくなります。とくに専門性の高いポジションでは、求めるスキルセットを明確にしておくことが、採用活動を成功させるために大切です。
たとえば美容業界の場合、技術チェックの時間を設けて基本スキルをチェックできるようにしておくと、採用要件にマッチした人材を採用しやすくなります。
技術チェックでは、ネイリストであればマシーンワーク、ワンカラー、フレンチなど、アイリストであればシングルラッシュなど、基本的な施術を見せてもらっています。最終選考の時間は、おおよそ60~90分くらいですね。中途採用の方の場合には、ご自身のスキル+αの技術もチェックしています。
引用: モアリジョグ |ネイル&アイラッシュTerra 取締役事業部長 北川亜由美さん
早期離職を防止するため
採用要件を明確にすると、企業のニーズに合わない候補者を排除し、長期間勤務してもらえる人材を採用しやすくなります。ミスマッチを防ぐことで、早期離職のリスクを軽減し、企業の安定的な運営に貢献します。
「人材紹介、人材派遣なら - アデコ株式会社 」が行った調査によると、3年以内で企業を退職した理由として、「自身の希望と業務内容のミスマッチ」を挙げる人材の数が最も多い結果でした。
▼3年以内で退職した理由
つまり採用要件を作成する過程で、採用した人材にどのような業務に従事してもらうのかを明確にしないと、採用後にミスマッチが起こり、早期離職につながる可能性があるため注意が必要です。
同調査によると、19.1%が「自身の性格と所属先の風土のミスマッチ」を3年以内の退職理由として挙げています。採用要件には、企業文化や風土にマッチする人材かどうかを判断するための基準を設けましょう。
自社の方針に共感する人材を採用するため
採用要件には、スキルや経験だけでなく、企業の方針や価値観に共感できるかどうかも含まれます。企業の方針に共感する人材を採用すると、長期的な成長に寄与し、組織内での調和が生まれやすくなります。
自社の方針に共感する人材を集めることは、「共感採用」とも呼ばれており、採用コストをかけられない中小企業を中心に注目されている採用手法のひとつです。
共感採用で人材を集めるためには、企業のこだわりや理念、方針などを採用要件で明確に定め、それを世の中に示すことが大切です。さらに顧客に対して常に良質なサービスや商品を提供することも求められます。そうすることで、企業文化に共感した人のなかから求人への応募を検討する人材が出てきます。
岡山にあるジーンズの縫製会社「内田縫製」は、共感採用で2人の人材を獲得したそうです。
Makuakeでレインボーデニムを応援購入してくれたお客さんが、うちに入社を決めてくれたんです! しかも2人も! そのうちのひとりは県外から岡山に移住までしてくれました
引用:かつての「顧客」が「同僚」に。共感採用がもたらす大きな効果| Forbes JAPAN
企業に共感して求人に応募した求職者は、内田縫製のプロダクトが好きで、モノづくりへのこだわりにも共感していたからこそ求人にエントリーしたそうです。
採用要件の決め方
主な採用要件の決め方として、既存スタッフを参考にするケースと自社の方針をもとに決めるケースの2パターンが考えられます。
既存スタッフを参考にして決める
既存スタッフを参考にして採用要件を決める際は、次の手順で進めるとよいでしょう。
- モデルスタッフの選抜
- モデルスタッフの働きぶりから要件を抽出
- 各要件の重要度を設定
以上の手順で決定した採用要件をもとに、人材の採用を進めることをコンピテンシー採用とも呼びます。各ステップを解説します。
モデルスタッフの選抜
まず、社内で活躍しているスタッフをモデルとして選び、その人のスキルや特性を基準に、理想的な人材像を描きます。モデルスタッフは、企業で成果や好成績を収めたスタッフのなかから選ぶのが一般的です。好成績を収めた人材をモデルスタッフに設定して、その特徴を新しい採用要件に反映させると、同じような成果を期待できます。
モデルを選ぶ際には、ひとりにしぼらずに複数名を選抜して、各スタッフに見られる傾向を分析することが大切です。
美容サロンの場合は、指名数や売上げを基準にすると、モデルスタッフを選びやすいでしょう。
モデルスタッフの働きぶりから要件を抽出
次に、モデルとして選んだスタッフがどのように働いているかを観察し、具体的な業務やスキル、コミュニケーションの仕方などを分析します。
要件を抽出する際には、スキルや知識のみに着目するのではなく、しっかりとヒアリングをして、人柄や思考習慣などについても抽出することが大切です。スタッフの観察やヒアリングから得られた情報をもとに、採用要件を具体化します。
たとえば美容サロンでモデルスタッフを抽出する場合、カットやカラーリングなどのスキル面だけではなく、顧客との会話内容や同僚との関わり方についても情報を集めましょう。
各要件の重要度を設定
抽出された要件に対して、必須項目と歓迎項目を区別します。例えば、経験や資格が必要不可欠か、それともあれば好ましいレベルなのかを明確にすることで、採用活動がより効率的になります。
各要素の重要度を設定する際には、次の3つのカテゴリーに分けるとよいでしょう。
- 必須要件:満たすべき要件
- 歓迎要件:満たしていれば加点する要件
- 不要要件:満たしても加点しない要件、もしくは満たすと不採用とする要件
自社の方針から決める
自社の方針から決める際は、次の手順で進めるとよいでしょう。
- 事業計画から要件を抽出
- 現場スタッフにヒアリング
- 各要件の重要度を設定
各項目について解説します。
事業計画から要件を抽出
自社の事業計画や経営方針を考慮して要件を設定します。たとえば新規出店を計画している場合、店長候補や必要な施術スタッフのスキルや経験をもとに、求める人材を明確にすることが重要です。可能であれば経営層にも相談すると、より具体的な要件を設定できるでしょう。
現場スタッフにヒアリング
事業計画や経営層へのヒアリングで要件を抽出したあとは、現場で働くスタッフに意見を聞くことも重要です。彼らが日々の業務でどのような人材を求めているか、またどのスキルが不足しているかを確認すると、現場の即戦力として働ける人材を採用しやすくなります。
各要件の重要度を設定
抽出作業が完了したら、前項で示した採用要件の決め方と同じく、必須要件と歓迎要件、不要要件の3つのカテゴリーに分けて各要素の重要度を設定します。
採用要件を作成したら、それを採用チーム全体で共有して、同じ基準のもとで人材の採用と不採用を決定することが大切です。
採用要件を作る際のポイント
採用要件を作る際には、次のポイントを意識しましょう。
- 現場が求めるスキルを加味する
- ポテンシャルを加味する
- 採用における3Cの観点で考える
- 採用要件を採用チームに共有する
- 定期的な見直しと調整を行う
各ポイントについて事例を交えながら解説します。
現場が求めるスキルを加味する
企業が求める条件だけを重視するのではなく、実際に現場で必要とされるスキルを加味することが、採用の効率化につながります。
現場のニーズを無視して基準を設けてしまうと、入社後にミスマッチが生じ、早期離職や業務上の問題を引き起こす可能性があります。そのため管理職や現場スタッフからのフィードバックを収集し、業務に必要なスキルや資格、性格特性を具体的に洗い出すことが不可欠です。
たとえば美容室でアシスタントを採用する場合は、現場で働くスタイリストの意見をしっかりとヒアリングする必要があります。
採用に携わる場合、押さえておきたいのが現場の声。月1回、現場で働くスタイリストたちとのミーティングは欠かさず行っています。実際に働くのは現場のスタイリストですから、採用状況と現場との間に大きなギャップがないか確認することは必須条件だと捉えているので、現場の解像度を高めるために、雰囲気を細かく共有してもらっています。
引用: モアリジョブ |ALBUM 経営管理部広報部門長 山本剛瑠さん
また、チームワークが求められる美容サロンでスタッフを採用する場合は、既存スタッフとの相性やバランスを加味することも大切です。
サロンには、さまざまな個性を持ったスタッフがいます。魅力的なサロンにしていくには、1人ひとりがその個性を強みにしていかなければなりません。そこで「もしかしたら、あのスタッフとうまく嚙み合わないかもしれない」など、サロンのバランスが崩れると感じた場合には技術力があってもあえて採用を見送っています。
引用: モアリジョブ |CHESTNUTS Nail&Eyelash 鈴木茜さん
ポテンシャルを加味する
採用要件を設定する際には、応募者の現時点でのスキルや経験だけでなく、将来的な成長や発展の可能性などのポテンシャルを加味することも重要です。
とくに多くの企業は、即戦力だけではなく長期的に活躍できる人材の採用が求められることもあるでしょう。その場合、ポテンシャルを加味して採用要件に設定すると、企業成長に長期的に貢献できる人材を見極めることができます。
ポテンシャルを評価する際には、応募者が今後どのように成長し、組織内で役割を広げられるかを想像することが必要です。具体的には、学習意欲や適応力、問題解決能力など、将来的なスキルアップに寄与する要素を見極めます。これにより、現時点でのスキルが不足していても、ポテンシャルが高い人材を採用し、組織の将来に備えることが可能です。
たとえばサロンワークに従事する人材を求める場合は、向上心やコミュニケーション能力、人間性などを要件に設定し、技術以外のポテンシャルも重視して採用することが大切です。
稼げる人=技術力が高い人、というイメージがあると思いますが、そこは必ずしもイコールではありません。技術は3カ月もあれば基礎的なところは身に付きますし、本人に上達したいという意志があれば、隙間時間に練習してスキルアップも可能です。
カウンセリングについては、寄り添う姿勢がないとなかなかしっかり汲み取ることができないので、未経験での転職の場合はとくにチェックします。
引用: モアリジョブ |まつげエクステ専門サロンAngela 代表 伊東真紀 さん
ポテンシャル採用は、短期的な成果だけでなく、長期的な組織の発展を支える重要な取り組みのひとつです。
採用における3Cの観点で考える
採用要件を設定する際には、「3C」の観点を取り入れるのもおすすめです。この3Cとは、次に示す要素の頭文字を取った言葉です。
- 顧客(Customer)
- 自社(Company)
- 競合他社(Competitor)
以上の3項目について分析する取り組みは、主にマーケティング戦略を立案する際に用いられる分析手法です。本来は自社の商品やサービスの強みや弱みを抽出して販売戦略に活かすことを目的に用いられます。これを採用活動に応用する場合、顧客を求職者に置き換えて考えます。
そのため、まずは自社が求める人物像(求職者)を明確にしましょう。次に、自社が提示できる採用要件のなかから求職者のニーズに適したものを抽出してください。
さらに競合他社の求人票をチェックして、どのような採用要件のもとで人材を募集しているのかを把握します。それに自社が差別化できる要素を加えると、より精度の高い採用要件を設定できるでしょう。
まずは求職者のニーズを把握して、そのニーズに合致した採用要件のなかでも競合他社と差別化できる要件を明確化しましょう。さらに、それを求人票や採用ページなどでアピールすると、他者よりも優位に採用活動を展開できます。
採用要件を採用チームに共有する
採用要件は単に作成するだけではなく、採用チーム全体にしっかりと共有することが重要です。採用に関わるメンバー全員が、共通の視点で候補者を評価できるよう、要件や基準を正確に理解していることが求められます。
これにより面接官ごとに基準がブレにくくなるため、公平に選考できます。また、採用プロセス全体において評価が統一されるため、結果的に入社後のミスマッチも防げるでしょう。
定期的な見直しと調整を行う
採用要件は一度作成して終わらせるのではなく、定期的に見直したり、調整したりすることが必要です。
とくに時代の変化や市場のニーズにより、求める人物像や必要とされるスキルが変化する点を意識して、採用要件の見直しを行いましょう。たとえば業界のトレンドや競合他社の動向を注視し、必要に応じて採用要件を見直すことが重要です。
美容業界をもとに具体例を挙げると、SNSを活用した情報発信が集客手法におけるトレンドのひとつになっています。とくに昨今は、スタッフがSNSで美容サービスに関連した情報を発信すると集客につながるケースが多く見られるようになりました。そのためSNSで情報発信している人材を評価するように、採用要件を設定するケースがみられます。
AI TOKYOはSNSへの感度が高いので、履歴書でアピールしていれば、詳しく聞くようにしています。どんな投稿をしていて、どのくらいの人から注目を集めているのか、など。SNSをしていると、自己プロデュースが分かっている人が多いため、学生のうちに取り組んでいる人はデビューしてからの初速が早いですね。新卒でSNSに力を入れていることはかなり有利に働くと感じます。
引用: モアリジョブ |AI TOKYO S スタイリスト 中島翼さん
また、自社の事業計画や戦略の変更に合わせて、採用要件をアップデートすることで、常に適切な人材を確保できます。事業計画に則した採用を進めるためには、次の記事を参考にして採用計画を立てるのもおすすめです。採用計画を立てる手順について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
内部リンク: 採用 計画
採用要件を作る際の注意点
採用要件を作る際には、採用要件を厳しくし過ぎないことや定量的データを活用することが重要です。
採用要件を厳しくし過ぎない
採用要件を過度に厳しく設定すると、必要以上に人材の幅を狭め、応募者数が減少する可能性があります。その結果、多大な採用コストがかかり、想定した人数を採用できなくなる恐れがあるため、注意が必要です。
とくにスキルや経験に重きを置きすぎると、学習意欲や成長ポテンシャルを持つ人材を見逃すこともあるでしょう。企業が長期的に成長するためには、現在のスキルだけでなく、将来の成長可能性や適応力を見極める視点も重要です。
必須要件と歓迎要件あるいは、人柄とスキルなどをバランスよく採用要件に設定し、柔軟に採用プロセスを進めると自社にマッチした人材を集められるでしょう。
定量的データを活用する
採用活動において、主観的な評価だけでは応募者の実力や適性を正確に把握することが難しいケースもあります。
主観的な評価だけでは、面接官や書類選考の担当者ごとに判断基準にブレが起きて、統一した評価基準で採用を判断できなくなります。
そこで採用要件には、定量的データも含めることが有効です。定量的なデータをもとに客観的に人材の採用を判断することを、採用アセスメントもしくは人材アセスメントと呼びます。
採用アセスメントを実施する場合、適性検査を実施して、複数の項目ごとに求人へ応募者に点数を付けるのが一般的です。適性検査は能力検査(学力検査)と性格検査の2パターンに分かれており、それぞれに対して求人への応募者に回答してもらい、採用の適性を判断する材料のひとつにします。
採用アセスメントは採用担当者の個人的なバイアスを減らし、評価のばらつきを抑え、ミスマッチを防げる点がメリットです。またデータを活用することで、応募者の適性や潜在能力をより正確に把握できるため、入社後の活躍や定着率の向上にもつながります。
一方で適性検査を実施するためには、システムやツールを導入する必要があるため、一定のコストが発生するデメリットがあります。
なるべく客観的な判断のもとで採用の可否を判断したい場合は、予算を加味しながら、採用アセスメントを取り入れるのも有効です。
採用要件の項目例
採用要件の項目例として、次の5つを解説します。
- 価値観・志向
- 人柄・性格
- 能力・役割
- 勤務条件・働き方
- 経験
なお、ここで紹介する内容はリジョブで作成した資料を参考にしています。同資料では、美容・ヘルスケア業界向けに採用で成功率を挙げるためのフレームワークを紹介しているので、ぜひ無料でダウンロードしてご覧ください。
〜今日からできる!成功のカギ〜美容・ヘルスケア業界 採用成功率アップのための4STEP
価値観・志向
価値観や志向の項目では、求職者がどのような信念や目標を持っているのかを見極めます。求職者の価値観や志向が企業文化やビジョンに合致していることは、その求職者が入社したあとに長期的に活躍できるかどうかを判断する基準のひとつになります。
美容室で採用を検討する場合、たとえば次のようなことが明確になるように採用要件を設定するとよいでしょう。
「どのような技術に関心を示しているのか?」
「顧客に対してどのような価値を提供したいと考えているのか?」
「チームワークを重視しているのか?」
人柄・性格
人柄や性格も、採用の重要な要素です。リーダーシップ、協調性、柔軟性といった性格的な資質が、職場での働き方や他者との関わり方に影響を与えます。
チームワークを重視する場合は、協調性を重視する必要があるでしょう。一方で採用後のポテンシャルを重視する場合は、成長意欲が高いことは採用要件から外せない項目です。具体的なエピソードを通じて求職者の行動や姿勢を探ることで、人柄や性格を把握しやすくなります。
能力・役割
業務を遂行するために必要なスキルや知識、そしてそれを活かす役割の明確化も欠かせません。この項目では、専門的な技術や管理能力、問題解決力、またはリーダーシップの有無など、候補者が持つ具体的な能力に注目します。また、その能力が採用するポジションでどのような役割を果たすことができるかを考慮し、適材適所の配置を検討します。
勤務条件・働き方
採用要件を決める際は、求職者がどのような働き方を望んでいるか、また、企業が提示する勤務条件に適応できるかなどの求職者側のニーズを汲み取ることも大切です。
とくに昨今はワークライフバランスを重視する傾向にあるため、フレックス制度や短時間勤務などの比較的自由な働き方が求められています。そのため土日は必ず出勤する必要があったり、深夜にも入ってもらう必要があったりする場合は、採用要件に含めて求職者との間で勤務条件に齟齬が生じないようにすることが大切です。
経験
職務経験は採用要件のなかで最も明確かつ重要なポイントです。中途採用の場合、同業種や同職種での経験年数、成功事例やプロジェクト実績が重視されます。
美容師で人材を採用する場合は、アシスタント勤務あるいはスタイリスト勤務のそれぞれで何年の勤務経験があるのかを明確にする必要があります。応募者の経験が、採用するポジションにどれほど活かせるかを具体的に見極めることが重要です。
もし未経験者も採用要件に含める場合は、コミュニケーション能力や向上心などの要件を明確に示して、将来的に成長できる人材を採用できるようにしましょう。
まとめ
採用要件は、企業が求職者の採用の可否を判断するためのスキルや経験、能力などの基準です。近年では、スキルや能力だけでなく「人柄」や「性格」も重視される傾向が強まっています。採用要件を設定すると、効率的に適切な人材を見つけられ、求職者もその要件を基に応募を検討します。
- 採用活動では、書類選考でスキルを評価し、面接では人柄や社風との相性を見極める傾向が強い
- 企業文化に合った人材を採用することで、早期離職を防げる
- 採用要件は、採用担当者や面接官で共有して評価基準を統一することが大切
採用要件の設定は、長期的な企業の成長にも寄与します。
採用要件を設定したら、その要件に適した人材が集まりやすい求人サイトに求人票を掲載することも大切です。要件に合った登録者が多い求人サイトで求職者を募ると、自社の求める人物像にマッチした人材からの応募が増えやすくなるでしょう。
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- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部