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【採用担当者向け】美容室の採用面接のコツ|業界ならではの質問例、NG事例、準備や注意点を解説

【採用担当者向け】美容室の採用面接のコツ|業界ならではの質問例、NG事例、準備や注意点を解説

美容師業界は採用難といわれており、面接で採用率や、採用後の定着率を上げることは重要です。

人が資本の中心を担う業界であるため、採用要件を妥協して人材を採用しても、売上に悪影響を及ぼす恐れがあります。さらに美容室内の既存スタッフとのトラブルを招くケースも少なくありません。

d’s JOURNALの調査 によると、面接の内容によっては、志望度の低下を経験した人が69.1%もいたこともわかりました。

より良い面接にするためには、面接に対する心構えなどを知っておく必要があります。これから紹介する内容を参考に、面接のやり方も見直しておきましょう。

美容室が採用面接を重要視したほうがいい理由

現在、美容室の数が増えるなか、美容師の人材不足が続いています。さらに 東京商工リサーチ によれば、物価高が重なり、経営が困難な美容室が増えているようです。

美容室の倒産推移

人手不足と人件費の上昇で美容師の確保も難しくなるなか、水道・光熱費や美容資材の価格も上昇し、カット料金の値上げが避けられない状況にある。実質賃金のマイナスが続くなか、値上げは顧客の足が遠のく要因になりかねず、美容室の倒産はしばらく増勢が続く可能性が高い。

引用 :東京商工リサーチ

美容室の経営難を乗り切るためには、新しい人材の確保が欠かせません。

美容業界は人との繋がりが重視されており、経営を続けるためには美容室で働く美容師を確保しなければ、お客様が増えても対応できません。より質の高い面接を行うことが必須事項だと認識しておきましょう。

d’s JOURNALの調査 によると、面接を受けた時点で志望度が下がったというデータがあります。面接を受けた時点での志望度が下がった経験の有無

せっかく応募してくれた美容師ががっかりして面接を辞退されないように、働きたいと思ってもらえる面接方法を知ることが大切です。

本記事では美容室の面接の流れだけでなく、NG例など具体的な面接方法もまとめています。どのように面接を進めればよいかわからない方は、これから紹介する美容室の面接方法を参考にしてください。

面接をする目的・ポイント

美容室が面接を行う目的は明確です。それは、足りていない美容師の人材を確保することです。美容師として働くためには、国家資格である美容師免許を取得する必要があります。

ホットペッパービューティーアカデミー の調査によると、美容師免許を持っているが、現役美容師として働いていない休眠美容師の割合は58.3%となっています。この層をターゲットに面接を行うことができれば、即戦力として期待できるでしょう。

▼美容師の離職率と休眠美容師率の割合

美容師の離職率と休眠美容師率の割合

以降では、面接の目的や心構えなどのポイントをまとめています。これを把握してから、面接に臨んでみてください。

美容室の採用活動において面接とは?

採用面接をする前に、必ず覚えておいてほしいポイントがあります。それは美容業界が、美容師の売り手市場であることです。

求職者に対して面接官は、選ばれる側の立場だという意識を持ち、応募があれば丁寧に面接を行いましょう。これも美容師業界全体が人手不足であることが大きな原因です。

詳しくは次の記事で紹介しているので、面接の大切さを知る意味でも、目を通しておくと理解が深まるでしょう。

 

 

また ホットペッパービューティーアカデミー の調査を見ればわかるように、様々な理由で転職活動をしている美容師が多いのも事実です。

【働くに当たって重視すること(割合の高い順から7項目を抽出)】

  • 通勤がしやすい
  • 働いているスタッフの人柄
  • サロンの雰囲気やテイストが合う
  • 給与
  • 勤務時間
  • 休日日数
  • 仕事とプライベートの両立 など

双方で納得して働ける内容に着地できるように、うまく面接で話を進めていきましょう。 

面接に対する考え方・心構え

いくら人手不足だからといっても、面接に来た美容師が本当に欲しい人材かどうか見極める必要があります。求人を出す前に、欲しい人材の特徴について具体的に考えておきましょう。

例えば、ヘアカラーに特化した美容室なら、ブリーチを使ったダブルカラーが得意な美容師を募集するなど、具体的な求人条件を示すことで、面接の流れを作りやすくなります。

また、上記でも紹介したように、企業が選ばれる側でもあることを忘れてはいけません。求職者側の売り手市場であることを念頭に置き、他の美容室よりも給料が高く希望通りの仕事ができるなど、魅力的な美容室であることを伝える面接ができれば、採用率も高くなるでしょう。

そして、公正な選考ができるように、面接ですべきではない質問は避けてください。特に、本人の能力などに関係のない質問はトラブルの原因となります。

例えば、家庭環境などを理由に不採用とすることは重大な問題です。このような質問は周りからの評判を悪化させ、面接に来る美容師そのものが減ってしまうリスクも高まるため、仕事に関係のない質問は極力しないように意識しましょう。

面接までにするべき事前準備

何の準備もしないで面接を行うと、せっかく応募してきた求職者からの印象が悪くなります。

採用を逃すリスクが高まるだけでなく、良い人材であっても、それに気付かずに不採用としてしまう可能性すら考えられます。採用を成功させるためには、以下の点に意識して事前準備をしておくと安心です。

  • 求める人材の特徴を決める
  • その人材に合わせた選考フローや面接方法を決める
  • 面接官を決めて履歴書の読み方も共有しておく
  • 具体的な面接の流れを把握してもらう
  • 誰が面接官をしても公正に評価されるように評価方法も決めておく

何も面接について決めていないのなら、この際に以上を見直しておきましょう。

求める人材

面接を行う前に、どのような人材を求めているのかを明確にしましょう。これを採用要件といい、美容室での仕事に必要なスキルや経験など、採用の基準となるボーダーラインを設定します。

例えば同じカットができる人であっても、得意分野ごとに次のように分けられます。

  • メンズカットが得意な人
  • 女性のカットが得意な人
  • 丁寧にカットできる人
  • 素早くカットできる人
  • カットをしながら顧客とコミュニケーションを取ることが得意な人 など

以上のなかからどのようなタイプの人を採用したいのか面接官同士で共有しておくと、採用をスムーズに進められます。

もちろん、上記は一例です。採用のボーダーラインは、美容室で働く美容師全員で話し合って決めておくことが大切です。そうすることで、希望に近い人材が採用されやすくなります。

選考に必要なフロー・面接方法を決める

事前に選考に必要なフローや面接方法を決めておくことで、急に応募の申し込みが来ても慌てずに対応できます。

まず、応募が来た時の連絡事項についてです。例えば、誰が採用担当なのかを全員に共有しておけば、営業中の忙しい時に連絡が来たとしてもスムーズに対応できます。

逆に、採用担当が誰か共有されていないと、営業中にバタバタしているタイミングで電話がかかってきた際に引継ぎがうまくできず、冷静に対処できなくなります。

求職者の電話番号を聞き間違えれば、面接の日程も決められず、話が進まなくなります。良い人材を逃すリスクが高まるため、必ず採用担当者を決めておき、全員に共有してください。

また、ポートフォリオが必要なら、その準備を求職者に伝えましょう。ポートフォリオとは、技術力がわかる作品集です。

現在では、Instagramなどを使えば簡単に作成できます。それがない場合は、コンテストの受賞歴がわかるものでも良いでしょう。ポートフォリオを準備できない場合は、技術力を確認するために、面接とは別に技術チェックの場を設けることを検討してください。

面接官の選定

面接官の選定も、良い人材を見つける上で大事なポイントです。 ホットペッパービューティー アカデミーの調査によると、復職先サロンを決めるポイントとして、「働く人の人柄がいいと感じた」と答えた人の割合が29.4%と2番目に高い割合でした。

▼復職先サロンを決める際に重視すること

復職先サロンを決めるポイント

割合

通勤がしやすい

46.0%

働く人の人柄が良い(自分に合っている)

29.4%

サロンの雰囲気やテイストが自分に合っている

26.8%

※「【美容就業実態調査2024】チャート集|ホットペッパービューティーアカデミー」をもとに作表

つまり、面接官はオーナーだけでなく、実際に美容室で働く美容師も面接官になったほうが、採用がうまくいく可能性があります。求職者と近い環境の美容師が面接官となれば、親近感から働きたいと思ってくれるかもしれません。

履歴書や職務経歴書の見方を押さえて読む

面接官となる予定の人は、履歴書や職務経歴書の見方を把握しましょう。見るべきポイントは、最低でも大きく分けて次の4つです。

  • 身だしなみが整えられた写真
  • 丁寧に書かれた文字
  • 転職した回数がわかる職歴
  • 本気度が伝わる志望動機

写真は、しっかり身だしなみが整えられた髪型をしているか確認しましょう。

いくら髪型が比較的自由な美容室で働くからといっても、面接の時だけでも髪型は整えてもらいたいところ。ビジネスマナーの理解度や面接に挑む本気度も伝わる部分でもあるので、髪型や服装は確認しましょう。

文字に関しても同じです。丁寧に文字が書かれていれば、面接に対する本気度が伝わります。文字の大きさによっても性格が出るともいわれているので、チェックしておいて損はありません。

職歴は、短期間のうちに何度も美容室をやめていないか、確認してみてください。 ホットペッパービューティーアカデミー のデータによれば、社会人になって転職した美容師のうち76.4%の人が2回以内です。

▼社会人になってから同職業内転職した回数(美容師)

社会人になってから同職業内転職した回数(美容師)

この回数よりも頻繁に転職しているのなら、転職回数が多すぎるといえるので、転職が多い理由を面接で聞くとよいでしょう。

また志望動機の内容をチェックすると、どのような人材なのか把握しやすくなります。採用されたいと強く思っている人ほど、志望動機が充実した内容で、丁寧に書かれているはずです。

面接のシナリオ・質問例を準備する

求職者と面接する時の話の流れも把握しておくと、スムーズに面接ができます。ある程度の流れを決めておけば、相手を見る余裕が生まれます。

1.面接前の雑談

2.お互いの自己紹介

3.求職者への質問

4.求職者が面接官へ質問

5.クロージング

まず面接をする前に、求職者がリラックスしやすいように簡単な雑談をしましょう。面接に来てくれたことへの労いの意味も込めて、「今日も暑いですね。部屋の温度は暑くないですか?」「すごい雨が降っていましたね。ここまで来る時は大丈夫でしたか?」など、天候の話をすると良いかもしれません。

そして、面接を始める際には、お互いの自己紹介をしましょう。面接官も自己紹介をして、求職者が自己紹介しやすい雰囲気を作ることで、スムーズに会話が進みます。

自己紹介が終われば、履歴書や職務経歴書を見ながら求職者に質問してみてください。例えば、「志望動機の部分を詳しく教えてください。」など、さりげなく求職者の本音を把握できる質問をすると、採用の判断材料となります。

こちらの聞きたいことが一区切りついたら、求職者から面接官への質問がないか確認してください。待遇に関する質問があった場合は、具体的に説明することで不信感をなくせるはずです。

特に質問がなければ、面接に来てくれたことへのお礼を伝え、合否の連絡やその後の日程について説明して面接を締めくくりましょう。以上が面接の一般的な流れです。

面接の評価方法を標準化する

評価方法は面接で大事なポイントです。どんな人が面接官になっても、同じような評価ができるようにならないと、選考にバラつきが生まれます。良い人材が誰なのかわからなくなるので、評価方法は決めておきましょう。

例えば、美容室で必要なコミュニケーション能力や技術力、協調性など、必要だと思われる項目を作っておきます。それを5段階評価にしておき、点数で評価すれば、求職者への評価を把握しやすくなるでしょう。

美容室の面接のポイント

美容室で面接する場合の大事なポイントは、自社の魅力をしっかりと伝えて、志望度を上げることです。必要な人材かどうかを見極めるのと同時に、自社の魅力も伝えましょう。

もちろん誇張して魅力を伝える必要はありません。本項では選考フローや考え方についてもまとめてあるので、これから初めて面接官を務める予定の人は参考にしてください。

魅力を伝え、志望度を上げることも大切

面接という場は、自社の魅力を伝える最適な環境であると覚えておきましょう。それは「志望度が高まった経験がある」と答えた求職者が74.8%もいたという調査を、 d’s JOURNAL が出していることからもわかります。

志望度が高まった経験

もちろんただ面接をするだけでは、ここまでの数値は出せません。面接に応募してきた求職者に対して、面接官が適切な対応ができていればの話です。

また ホットペッパービューティーアカデミー の調査をもとに、復職先サロンで重視する点について上位3つを挙げると次のとおりです。

▼復職先サロンの最重視点(SA)|美容師(2024年)

復職先サロンで重視する点

割合

通勤がしやすい

15.1%

働く人の人柄が良い(自分に合っている)

11.5%

結婚出産後も働きやすい環境である

11.0%

※「【美容就業実態調査2024】チャート集|ホットペッパービューティーアカデミー」をもとに作表

以上を参考にして、自社で働く魅力を伝えるのも1つの手段です。

たとえば面接官を選定する場合は、なるべく求職者に近い環境の人を選んでください。そして人柄がいいと感じてもらうために、面接中は求職者の話に合わせて、居心地のいい雰囲気づくりを心がけましょう。

最初に面接官が自己紹介をする際は、ゆっくりとした口調を意識し、笑顔で受け応えするなどして話しやすい雰囲気を作るだけでも印象は変わります。

もちろん、面接を受ける美容師は採用されることが目的です。たとえば子育て中の美容師に対しては、「結婚・出産後も働きやすい環境である」という部分を意識して面接を進めてください。

前田「私自身2児の母ですが、結婚や出産しても無理なく働けるような仕組みになっているので、今日も子どもを保育所に送ってから出勤し夕方5時までの勤務なので、子どもと過ごす時間をしっかり持つことができます。会社が子育てを理解してくれているので働きやすく、日曜日に出勤するのも月に1度。そのため働くことに対して家族からの理解も得られやすいですね。」

引用: モアリジョブ |美容師 スタイリスト 前田雪絵さん

とくに労働時間や休日は、採用後のシフト決めにも影響を与える重要なことです。

面接官とオーナーがしっかり話し合い、面接を受ける美容師からの質問に対してスムーズに受け応えできるようにしましょう。勤務時間の短さをアピールできれば、働きやすい職場環境だと感じてもらいやすくなります。

入社後ギャップを減らす見極め

入社後のギャップを減らすために、コンピテシー面接という方法を試してみてはいかがでしょうか?

コンピテシー面接とは、面接をする時に、複数の面接官がヒアリングをし、求職者のこれまで取り組んできた内容を掘り下げる面接手法です。

事前に評価シートを準備して、それを面接官同士で共有すると、面接者に対する評価基準を標準化できます。誰が面接をしても、同じような評価が出せるでしょう。

面接の進め方をマニュアル化する点もポイントです。マニュアルがあると、待遇や労働条件について面接時に行う説明を統一できるので、採用された人材が入社後にギャップを感じにくくなります。

業界ならではの選考フローも検討する

美容室での面接は、基本的には次のような流れで行われるので覚えておきましょう。

1.サロン見学

2.一次面接

3.技術チェックも兼ねた二次面接

4.内定

現代は、Web面接が浸透しましたが、美容業界は、未だに対面での面接が多い業界です。それは「人」が大事な業界だからです。お金を払ってくれるお客様も人なのに対して、働く美容師も同じ人になります。実際に会ってみないとわからない部分が多いのも大きな要因でしょう。

特に面接では、コミュニケーション能力だけでなく、技術チェックをする場面も少なくありません。だからこそ、対面で様々なスキルをチェックする必要があります。

サロン見学

サロン見学は、求職者が入社後にギャップを感じずに済むことを目的に行われる選考フローです。ただサロンワークを眺めてもらうだけでなく、美容室での理念や思想などを伝える場としても役立ちます。

サロン見学では、1時間以上をかけて会社のことをしっかり説明しています。とくに重視しているのは、会社の理念、どういう想いを持って美容室を運営しているのかをきちんと伝えることです。その後、細かな待遇面について伝え、最後に質疑応答というかたちで個別に話を聞く時間も取っています。

引用: モアリジョブ |株式会社Lond ゼネラルマネージャー/リクルーター 関根孝文さん

働いている美容師に入社希望者が見学に来ることを伝えておいてください。いつも通りの雰囲気でサロンワークを行ってもらうと、入社後にギャップを感じずに済みます。

技術チェック

美容業界では、面接時に技術チェックをする時があります。求められるレベルが高くなるに従い、技術力を確認しておいたほうが、人材のミスマッチを防げます。

面接で技術チェックをする場合は、前もって求職者にその旨を伝え、必要な道具やモデルの有無まで伝達しましょう。抜き打ちで確認する美容室もありますが、事前に伝えることで、求職者に好印象を与えられるでしょう。

基本的に美容師の技術チェックをする場合、仕上がりとともに手順を見るケースが一般的です。自社のやり方と違った流れで施術をしていたら、サロンワークに支障が出るかもしれないからです。チェック項目を事前に決めておくと、スムーズに合否を判定できます。

質問項目の種類・評価方法・質問例

面接における質問の受け応えによって、求職者の人間性や技術レベルなどがわかります。本項では美容室での専門的な質問内容を具体的にまとめたので、各項目を参考にして、質問の内容や評価方法を決めてみましょう。

 

基本的な面接の考え方や見るべきポイントについては、以下の記事を参考にしてください。

スキル(知識・経験・技術など)

美容室の面接でスキルのレベルを見抜きたい時には、口頭で質問するだけでは不十分です。実際に施術をしてもらって、自分の目で確かめたほうがスキルのレベルを把握できるでしょう。

特にカットやカラー、パーマなどの施術レベルは、美容師のこれまでの練習量によってかなり変わってきます。

2次面接では実際に30分間のサロンワークを行い、どのような動きをするかを見ます。掃除を一生懸命する人、お客さまとコミュニケーションをとろうとする人など、それぞれが意識的に取り組もうとしていることが見えるんです。どれがいいというわけではないので、どんなタイプなのかを見ているという感じでしょうか。

引用: モアリジョブ|December 代表 北田ゆうすけさん

もちろん技術レベルを見るだけでなく、実際に業務を行ってもらったほうがサロンワークの方針を汲み取ってもらいやすいでしょう。

またサロンワークの後は、疑問に思ったことがないか求職者に確認すると、サロンワークへの理解を深めてもらえます。

美容師として「自分のタイプを把握できているか?」も意識して聞いています。ファンを獲得するためには自分の強みを伸ばすことが大切なので、接客でお客さまをつかむのが得意なのか、技術をウリにするのかなど、客観的に自分を見る力の有無はとても大切です。

引用: モアリジョブ|Chara 総店長 大西けん太さん

求職者と一緒にサロンワークをすれば、面接官となった人だけでなく、既存スタッフともコミュニケーションを取ることになります。違和感があれば、そのスタッフからの意見も取り入れることができるため、より評価の精度が高くなるでしょう。

価値観・行動特性

スマホの普及により、現場でSNSアカウントを運用している美容室も増えてきました。多くの美容室が採用活動の一環として情報発信を行っているため、なにも工夫をせずに発信しても埋もれるでしょう。

埋もれることを防ぐためには競合との差別化が必要なので、まずは美容室の強みを理解しましょう。

美容室の強みを把握するためには、「なぜ当社を選んだのですか?」と志願理由をしっかり聞いてみましょう。

「ALBUMが良い」理由に対して、「なんで?」の答えを必ずもらうことで、日頃からしっかり自分で考えられる力があるか見定めているんです。その裏付けがしっかり話せると、自分で考える力があると判断できますからね。

引用: モアリジョブ|ALBUM 経営管理部広報部門長 山本剛瑠さん

しっかり考えて行動できる美容師ほど、はっきりとした志願理由を答えてくれます。美容室で働きたいという想いが強ければ、しっかり美容室の情報をリサーチしているはずです。美容室で働く本気度が理解できるので、一石二鳥の質問です。

待遇・条件

ホットペッパービューティーアカデミー が出したアンケートによれば、美容師が転職した理由で最も多いものが「給与に関しての不満」でした。

▼転職した理由(MA)|美容師

転職した理由

割合

給与に関して不満があったから(給与が低い、収入が不安定など)

36.6%

サロンの雰囲気やテイストが合わなかったから

24.0%

拘束時間に関して不満があるから(休みが少ない、労働時間が長いなど)

22.8%

※「【美容就業実態調査2024】チャート集|ホットペッパービューティーアカデミー」をもとに作表

美容師の給料は安いという話自体が有名ではないでしょうか?だからこそ、面接の時から待遇や条件についてしっかり話ができていないと、待遇を不満にして途中でやめてしまう美容師が多くなるでしょう。

とはいえ立場上、求職者のほうから待遇に関する質問を切り出すこと自体が難しいと考えられます。

そこで積極的に面接官のほうから、待遇に関する話を持ち出してください。ただ給料の金額について話すだけでは不十分です。昇給制度など、どのような頑張りがあれば給料が上がっていくのか、細かい仕組みまで話ができるようにしましょう。稼げないと思われてしまうと、入社後にやめてしまうリスクが高まります。

そのリスクをおさえるためにも、質疑応答の部分で「給料などの待遇のことで質問はありませんか?」と、聞きやすい雰囲気を作って不安を取り除いてください。

とくに重視しているのは、会社の理念、どういう想いを持って美容室を運営しているのかをきちんと伝えることです。その後、細かな待遇面について伝え、最後に質疑応答というかたちで個別に話を聞く時間も取っています。

引用: モアリジョブ |株式会社Lond ゼネラルマネージャー/リクルーター 関根孝文さん

このように、会社の理念と一緒に待遇の話をすると自然です。何度も給料や待遇について説明をされると、労働者に対してやさしい職場だと理解してもらいやすくなります。

美容室ならではの質問例と評価方法

離職を減らすためには、面接の際に求職者と面接官の目指す方向性のギャップを埋める必要があります。 リジョブ のデータによると、求職者が就職を辞退した1番の理由が「目指す方向の不一致」だからです。

美容師求職者の辞退理由ランキング

できるだけ、働き方に関する方向性のギャップを埋めるために、丁寧に質問を繰り返しましょう。本項では個人の視点から会社の視点、業界の視点まで、より具体的な質問例をまとめました。それを参考にして、評価方法などの詳しい面接の進行を決めてみてください。

どのような美容師になりたいか

面接の時に、「どのような美容師になりたいですか?」と質問をしてみましょう。この質問の回答から求職者との方向性のギャップがあるかどうかわかります。

例えば、求職者が世界で活躍する美容師になりたいと、スケールの大きい話をしたとします。面接をする側の美容室が地域密着型だった場合、働き甲斐を感じなくなる瞬間が出てくるかもしれません。

その理由は、お互いに顧客にしたいターゲットが異なるからです。求められる技術力にも違いが出るため、求職者が次第にストレスを感じるでしょう。だからこそ面接中に美容室の経営方針を伝えて、問題ないか確認しておいてください。

とはいえ、美容師として技術力を高めたいという意識の高さは、美容室のオーナーからしてみれば魅力に感じる部分です。海外研修をするなどの譲歩する方法はあるので、面接で話し合って折り合いをつけてみてください。

どんな美容室が流行すると思うか

美容師がお客様の立場になって、どのような考え方をしているのか知るためには、「どんな美容室が流行すると思いますか?」と聞いてみましょう。

例えば、求職者が物価高で困っている人が多いからと、「価格の安い美容室が流行る」と答えたとします。仮にこの回答が美容室の運営方針と異なる場合は、入社後に方針の違いで対立が生じないか確認しておきましょう。

そして、入社したらどんなことに貢献できるのか聞いておくと、どこまで物事を考えて行動できる人材なのか確かめられます。

それに対して、ストレスを溜めている人が多いから「リラクゼーション系の美容室が流行る」と答えたのなら、お客様を丁寧に扱いたいと思う表れかもしれません。それを踏まえてヘッドスパや接客スキルなど、持ち合わせているのか聞いてみるのも面白いでしょう。

自分の考えを言葉にできる人材は貴重です。話す内容に違和感がないかしっかり確認しながら、求職者と美容室との間で方向性の不一致がないかチェックしましょう。

美容業界の今後はどうなっていくか

美容業界全体のことを考えている人材は少なく貴重です。そこで「美容業界の今後はどうなっていくと思いますか?」と面接を受けにきた美容師に聞いてみましょう。

例えばその質問に対して、美容業界全体が人材不足で困っている点について問題を提起し、さらに次のような具体的な対策を述べられる美容師であれば、魅力ある人材です。

  • 客単価を上げてスタッフの給与を改善する
  • 短時間勤務を導入してライフワークバランスを整えやすい職場を目指す
  • 業務委託契約を取り入れて多用な働き方を推進する

仮に「客単価を上げてスタッフの給与を改善する」と返答ができたのなら、さらに踏み込んで「自分に何ができますか?」と聞いてみてください。

「ヘアカラーが得意だから、単価を上げてでもお客様から満足してもらえる」と答えてくれるのなら、昇給のためのサポート体制の仕組みを紹介するのもよいでしょう。

美容室の面接でNGな質問例・対応例

面接の時に、やってはいけない質問があります。それは本人とは無関係の部分を理由に不採用になったと求職者の勘違いを招くような質問です。

コンプライアンスの観点から、質問もしないほうがいいと厚生労働省からも発表されています。また、本来は自由であるべき内容なのに、それを理由に不採用とするのもトラブルを引き起こす原因となるでしょう。

また、せっかく良い面接ができたとしても、不快と感じられる対応をすると、採用を辞退される可能性があります。様々なポイントを意識しないといけないので、本項ではNG質問の具体例をまとめました。これらを面接官が把握して、採用率を下げないようにしましょう。

個人情報に関する質問

個人情報に関する内容は、よく考えてから質問しましょう。特に本籍地や家族のことなど、本人の力ではどうにもならない内容で不採用となれば、トラブルの原因となります。

▼NGの質問例

  • 出生地の住所を教えてください。
  • 離婚されてお母さんと2人暮らしと聞きましたが、本当ですか?
  • 家業を継ぐ予定ですか?

口頭で聞けない場合、住民票や戸籍謄本などを持参させようと考える人がいるかもしれません。これもコンプライアンス違反として、基本的人権の侵害だとみなされるケースがあります。

また、残業をしてもらいたいがために家庭環境を聞き出すなど、理由に正当性がありそうなケースであっても質問自体がよくありません。

仕事の関係上、どうしても聞かなければいけないのなら、「迷わずにここまで来られましたか?」など、雑談などの会話の中で自然と求職者に話してもらえるように遠回しに聞いてみてください。 

宗教や思想に関する質問

宗教や思想に関する質問は、直接的に聞かないようにしましょう。

▼NGの質問例

  • 信仰している宗派は何ですか?
  • 投票した政党は何か覚えていますか?
  • 愛読書があれば教えてください。

宗教の自由は憲法で保障されているため、安易に質問して不採用となった場合、クレームを付けられる可能性があります。

仮に宗教が原因で不採用にしたわけではなくとも、求職者が勘違いをしてしまいトラブルに発展する恐れがあるため注意してください。採用の基準としてはいけないので、面接では聞かないようにしましょう。

また、「尊敬している人物は?」といった質問も面接で聞かれそうなですが、これも基本的人権に反してしまいます。愛読書に関しても同様です。

美容室の企業理念などを説明する程度に留めておき、必要以上に思想に関して聞き出すことはやめましょう。

性に関する質問

性に関してもナイーブな問題が多く、それを理由に採用の可否について判断を下すのはやめましょう。

▼NGの質問例

  • 結婚してから子供を作る気はありますか?
  • 女性経験がないのは本当ですか?
  • 容姿がかわいいですね。

男性だから、女性だからといった直接的な理由だけでなく、間接的な内容に関してもよくありません。

求職者に対して不快だと思われてはいけないので、仕事に関して聞きたいのなら「希望する働き方はありますか?」というように、性とは関係のない内容で相談すると大きな失敗はなくなるでしょう。

選考フローでの連絡が遅い

選考フローでの連絡が遅いと、求職者が入社するのを辞退してくる可能性があります。面接を行った後の連絡は早ければ早いほうがいいので、採用を予定するのなら連絡は遅くならないようにしましょう。

当社リジョブ の調査によれば、連絡が遅かったというだけで求職者が辞退したといったケースがあったからです。方向性の不一致や待遇面の不一致に次いで3番目の24.4%という高い数値が出ています。

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さらに同調査では、次のデータも示されています。

  • 24時間以内に連絡すると採⽤率 1.27倍
  • 3時間以内に連絡すると採⽤率 1.39倍

以上からも選考フローに関する連絡は早い方が、人材採用につながることがわかります。 

誠意がないと感じられる対応をする

面接官の対応も、志望度を下げる要因になりえます。求職者が不信感を抱かないように、誠実な対応を心がけましょう。

例えば、面接官が横暴だったと求職者が感じれば、美容室そのものに不信感が生まれるでしょう。面接中に、求職者が話をしている最中だというのに、スマホを触って目も合わせてくれなかったらどう思うでしょうか?

労働者を大切に扱ってくれない職場だと思われ、これだけで志望度が下がってしまいます。仕事が忙しいからといっても、面接中は求職者の話をしっかりと聞き、誠意のある対応を心がけましょう。

また、実際に入社した後に、待遇が聞いていた内容と違うと思われる時も要注意です。ボーナスや給料、休日出勤の数など、少しでも違和感のある職場環境だと思われれば、すぐに離職されてしまう可能性があります。

面接に集中して、待遇に関しても面接中に折り合いをつけてください。入社後の条件を変えないことも、人材を減らさない重要なポイントです。

まとめ

美容業界では人手不足が深刻であるため、採用に力を入れて、人員確保に努めることが重要です。そのためにも、適切な面接を心がけましょう。

美容室は人材のあり方が売上に影響を与える業界です。そのため、良い人材を確保するためにも面接で自社にマッチした人材を判断する必要があります。

コミュニケーション能力だけでなく、美容師特有のスキルが必要だからです。丁寧に面接を行い、ちょっとした違和感から面接を辞退されないように心がけましょう。

逆に良い人材に恵まれた場合、面接で話し合った待遇のとおり昇給を行い、長く良好な関係を築くことが大切です。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。