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美容室の人手不足の現実とは?スタッフが集まらない時オーナーがすべきこと

美容室の人手不足の現実とは?スタッフが集まらない時にオーナーがすべきことをわかりやすく解説

美容室が求人をする場合、厚生労働省の調査によると3社が1人を取り合う状況にあるため、以下のように多くの美容室オーナーが人手不足に苦しんでいます。

「出産などでスタッフが半分辞めたが、採用ができない」
「予約は来るのに、人手不足のために断らざるを得ない」
「色んな働き方をアピールして魅力づけしても、求人に応募がこない」

美容室の人手不足を解消するためには、まずは自社が人手不足に陥っている本当の要因を正しく分析することが大切です。
人手が不足したらすぐ「採用」という考えになるかもしれませんが、要因によっては採用以外の解決策が効果的になります。この記事では、美容室が人手不足になる要因や具体的な対策を詳しく解説します。

美容室の人手不足問題とは

個々の店舗の問題では解消しきれない、美容室業界全体の人材不足問題や採用難易度を知った上で自社がやるべきことを考えなければいけません。美容室業界全体の人材不足問題に関する最新データや、美容室オーナーが抱える具体的な悩みについて解説していきます。

美容師の有効求人倍率は約3倍

厚生労働省の調査 によると、美容師が属する「生活衛生サービス」の有効求人倍率は3.21倍であり、1人の求職者を3つの企業が取り合う状況となります。
また、以下のデータの通り、生活衛生サービスの有効求人倍率は、コロナ禍で高齢社会で人手不足が社会問題となっている医療や介護業界と同じくらいの高い水準となっています。他の業種と比べても、採用難易度が高い業界と言えます。

各業種の有効求人倍率

(引用:一般職業紹介状況(令和5年6月分)について|厚生労働省

コロナ禍と今後の美容室の人材確保の動向

以下の厚生労働省の調査データによると美容室が属する生活衛生サービスの有効求人倍率は、コロナ禍前は4.28倍まで伸びましたが、コロナ禍以降の2021年に一旦低下し、その後は3倍前後で底堅く推移しました。

生活衛生サービスの有効求人倍率の推移

(参考:厚生労働省の調査( 2019年4月 2020年4月 2021年4月 2022年4月 2023年4月 )を元に作図)

2023年現在は、企業の採用活動がコロナ禍の影響から回復する途上と考えられるため、今後も有効求人倍率が上昇する可能性があります。2019年4月の有効求人倍率が4.28倍だったことを考えると、約3倍だった有効求人倍率は4倍以上まで上昇し、さらに採用活動に苦戦する美容室も増える可能性が高いでしょう。

オーナーの9割は悩む美容師業界の人手不足の現実

JOBOONの調査 によると、人材不足や採用活動に悩んだことのある美容室オーナーは9割以上に上りました。
美容室オーナーは、採用の難しさについてたとえば次のような悩みを抱えています。

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(引用: 美容師採用が難しい!経営者20名に聞いた人材不足の実態と解決策を紹介|JOBOON

具体的な美容室オーナーの声を紹介すると次のとおりです。

ハローワークや求人媒体を通じて何名か面接したが、自分の店舗にマッチした人材にはなかなか出会えなかった。アシスタントの方を採用し、こちらとしてはスタイリストとして働けるよう育てるつもりだったが当人にその気がなく半年足らずで辞めてしまった。(引用:JOBOON

ランニングコストがかかる割に「いつ成果に繋がるかわからない」という不安が付きまとう。確かに一時的に応募数は増えたが、価格と見合った結果が得られなかった様に思う。(引用:JOBOON

知り合いのオーナーに話を聞いたりもするが、結局どこの媒体がいいのか未だにわからない。(引用:JOBOON

以上のように美容師の採用は難しいため、人手不足の解消のための取り組みとして採用だけに頼っていても厳しいという現実があります。人手不足を解消するためには、その状況に陥っている本当の要因を正しく分析し、採用および他の手段も検討する必要があります。
次項では美容室の人手不足として起こりがちな要因を紹介するので、分析する際に役立ててみてください。

サロンによって違う!人手不足の要因は?

美容室が人手不足に陥る場合、さまざまな要因に対応しようとすると、労力が分散されて根本的な解決に至らない可能性があります。そこで効率よく問題を解決するために、まずは対処すべき要因を絞ることが大切です。
たとえば、人手不足に陥っていない企業を分析してみるのも1つの手段として考えられます。以下の 帝国データバンクの調査 より、人手不足解消につながった取り組みとしては採用活動以外も多くあることがわかります。

人手が不足していない要因(複数回答)

人手が不足していない要因(複数回答)

(引用:人手不足解消のカギ、「賃上げ」が 51.7%でトップ|帝国データバンク)

以上のデータからわかることは、「賃金や賞与の引き上げ」や「働きやすい職場環境づくり」「業務プロセスの見直しなどによる効率化」などの現在の環境の改善で人手不足解消ができないか考える必要があるということです。
一方で現在の環境に大きな問題を抱えていない場合や集客が伸びている場合は、新規採用を検討する方がよいでしょう。美容業界が抱える人手不足の具体的な要因については、以降で詳しく解説していきます。

要因1:業務の生産性が低い・不要な業務が多い

美容業界はDX(デジタル・トランスフォーメーション)が遅れており、DX推進による業務効率化の伸び代があると考えられます。DXとは、ITやデジタル技術を駆使して業務を効率化し、自社サービスを改善することです。
総務省が発表した資料によると、美容業界が属する「生活関連サービス業・娯楽業」の80%以上でDXが進んでいないことがわかります。

各業界のDX推進状況

(引用:情報通信白書|総務省)

DXが進まない美容業界は業務の効率化も進まず、労働時間の長さが問題になっている業界です。たとえば Yahoo!ニュース では、1日14時間以上働いても手取り15万円以下という美容師の苦境を伝えるニュースが特集されたこともあります。
施術やそれ以外の雑務の中で、

  • アナログにやっていてIT化していない
  • 仕組み化せず属人的な人力が頼り
  • この業務が本当に必要か考えられていない

などのようなことが起こっていたら、業務の効率化に取り組むべきと言えます。
雑務の負担を軽減し、若手スタッフが実務にコミットする余裕も生まれ、生産性が向上し人手不足が解消する可能性があります。

要因2:スタッフの離職率が高い

美容業界の離職率は他の業界よりも高く(厚生労働省の調査( 新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者) 新規学卒者の離職状況 )より)人材不足に陥る要因の1つです。しかし、離職理由に向き合い必要な努力をすれば、自社の離職率が下がる可能性は大いにあります。 なぜなら、条件面だけではなく人間関係や会社の将来への不安など、すぐ始めやすい対策で事前に解消できる離職理由も多いためです。
美容師の離職理由や離職率を下げる方法について詳しくは、次の記事を参考にしてください。

要因3:スタッフの採用が難しい

既存の環境や業務の生産性は問題ない、集客が伸びている場合は採用をしていくべきですが、美容師の採用が難しいことが要因で美容師スタッフが集まらずに、人手不足であり続ける美容室は多くあります。
厚生労働省の調査によると、平成5年~令和3年における美容室の件数は年々増加傾向です。1人の求職者を3社以上が取り合う美容業界では、企業側は他店との差別化や必要な投資をしないと採用に至りません。

  • 他の店舗にはない魅力があるか
  • 魅力があっても、求人において求職者に伝わっているか
  • 求職者に伝えるための、必要な採用費用の投資や行動が足りているか

という観点を考え、採用活動について伸び代がないかを検討しましょう。

美容室の人手不足への代表的な対策方法と取り組み方

自社の人手不足問題はどこから着手するのが最も効果が高いのか、要因を見極めた上で適した対策を打ちましょう。美容室の人手不足に対する主な対策方法は次のとおりです。

  • 業務の削減・効率化で生産性を上げる
  • スタッフの定着率を上げる
  • スタッフの採用率を上げる

まずは店舗システムの見直しや既存スタッフの待遇改善などの、労働環境に関する施策を検討してみましょう。そうすることで、現状のスタッフ数でも十分売上が上がる、またはスタッフの定着率が向上するなどして、人材不足が解消される可能性があります。既存の環境やスタッフの定着率が問題なくても人手不足の場合は、採用を始めることをおすすめします。
具体のアクションを紹介するので、自社で取り組めるものがあれば実践してみてください。

対策1:業務の削減・効率化で生産性を上げる

まずは店舗内の業務の効率化や生産性の向上を目指すとよいでしょう。都内で美容室を経営する Belle Kichijoji 新井直樹さんのインタビュー では、効率化で削減された分、力を入れるべき実務や教育に時間を使う、働き方の自由度を上げるなど取り組まれています。工数の削減だけでなくその先のスタッフの働き方改善を目的に試行錯誤することが大切です。

業務の標準化・効率化

施術、カウンセリング、予約管理、会計、顧客データ管理、商品管理、SNS/集客サイト管理、掃除、練習、教育などの中で、時間を多く使っているものから標準化・効率化につながります。マニュアルを作成する、業務完了までの目安時間を設ける、チェック項目を設定するなどして、すべてのスタッフが同じように働ける無駄のないフローを目指してみましょう。

ITシステムの導入

美容室の場合、予約や顧客、会計などの管理にITシステムを導入し自動化することで、スタッフが接客やヘアカットなどの実務に集中できます。
実際に、雑務をITシステムによりデジタル化することで、店舗全体のパフォーマンス向上につながったとする事例があります。

アシスタントでもできるメニューを増やす

技術不足なスタッフが担当できるメニューを増やすのも1つの手段です。シャンプーやトリートメントなどをメニュー化すると、アシスタントクラスのスタッフでも売上につながる業務を担当できるようになるでしょう。特に美容業界ではヘアケアがトレンドであり、 ミニモの検索キーワード調査 からも、髪質改善メニューのニーズが高いことがわかります。つまりトリートメントメニューの充実は、生産性だけでなく売上全体を上げる施策としても効果が見込めます。

また、カット以外のアシスタント業務を未熟なスタッフに任せ、即戦力のスタイリストはカットに集中するなど業務の適材適所が効率化につながります。チームとしてサービスを提供するように取り組むと、スタッフの手の空いた状態を減らして生産性を向上できるでしょう。

対策2:スタッフの定着率を上げる

ホットペッパービューティーの調査によると、美容師が働くにあたって重要視している点を多いものから順に並べると、次のとおりでした。

美容師が働くにあたって重要視している点

その中で、例えば以下のように自社でも変えられることにフォーカスして改善すると、スタッフの定着率向上につながるでしょう。

  • 給与の見直し
  • 仕事とプライベートの両立
  • スタッフ同士・オーナーとの関係性を良くする

各項目について詳細を解説していきます。

給与の見直し

まずは給与や勤務時間を見直してみましょう。美容師の給与に対する満足度を上げるためには、スタッフの貢献度に対して適切か、給与の相場に合っているかが大切な観点です。
以下の美容師の方が給与に不満足である理由の調査でわかる通り、スタッフがなぜどこに不満なのか理解する必要があります。

現在の給与に対して不満な理由

その上で、具体的な方法としては、業務負担を減らしたり、ポジションに応じて固定給をアップしたり、成果が反映されるように各種手当や歩合率を見直したりすることが考えられます。もし、今すぐ給与額を変えられない場合でも、昇給のタイミングや条件が明確で努力する指標が明確化し、未来のイメージを具体的に持ってもらうだけでも満足度向上に繋がります。

仕事とプライベートの両立

結婚や出産などのライフイベントと仕事が重なることで、仕事を続けられるかどうか不安を抱えていたり、プライベートと仕事を両立に悩む美容師スタッフが、離職を選ばないための取り組みも大切です。その際、人手不足の状態でも売上を落とさずに働き方を柔軟にするためには、例えば以下の事例のように、生産性の向上がセットで必要になります。

  • 2人で施術して時短をしたり予約の取り方の調整をして、時短勤務のワーママでも働きやすくする(引用: Moreリジョブ/QUEEN’S GARDEN by K-two 銀座
  • メニュー改善で高単価を実現し、実働時間8hのフレックス制・週休3日OKなどの働き方ができるようにする(引用: Moreリジョブ/Vesper
  • 18時以降予約がなければ退勤OK、午後予約があったら遅番にするなどスケジュールを調整、忙しすぎて休憩が取れなかった日は残業代にまわしてもらう(引用: Moreリジョブ/JNOËL(ジェノール)

従業員がプライベートを犠牲にせずに済むような職場づくりが、以下の事例のように長い目で見ても離職を減らし人手不足の解消につながります。

働く環境の整備をして、離職率を下げたいという思いがあります。有給を取れるようにしたり、営業時間を11時から20時にして、講習会もなるべく営業時間内に行い労働時間が短くなることを目指しています。その甲斐あってか、このサロンは3年経った今もひとりの退職者も出していないんです。
(引用: moreリジョブ  働き方改革で離職率「ゼロ!」を達成し続ける『Lusso』)

スタッフ同士・オーナーとの関係性を良くする

スタッフ同士もしくはオーナーとスタッフの関係性が要因で、もったいない離職になる場合もあり、気を配ることが大切です。
上下関係において、上の立場にある人が立場上弱いスタッフに強い口調や態度で接するとパワハラになりかねません。相性が悪いスタッフがいた場合でも放置せず、両者の気持ちを理解し助言する、できれば当人たちで解決できるようにするなど、オーナーもスタッフもそれぞれ関係性を良くする努力が必要です。

すべてのスタッフが、気軽に人間関係について相談できるように、定期的に面談などで些細な悩みでも言ってもらうなど、寄り添うコミュニケーションや雰囲気づくりが大切でしょう。

対策3:スタッフの採用率を上げる

事業展開や集客の伸びで人手不足に陥っている場合は、採用プロセスの改善や人材確保のための投資を考えてみるのもおすすめです。

採用方法を検討する

採用方法を検討する場合は、美容師の求職者の利用が多い方法を優先的に選ぶとよいでしょう。美容師が仕事探しをする場合、次の手段を利用することが多いようです。

美容師が仕事探しをする場合の手段
(参考:ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023

すでに自社ホームページや掲載中の集客サイトがある場合は、求人欄を設けるだけでもスタッフの採用につながる可能性があります。さらに、採用スピードを早めて本当に必要な人を確実に採用するため、有料の求人媒体を利用することも必要な投資と言えます。

求職者の転職の軸を理解し魅力づけする

美容師が働くにあたってが重視していることや離職理由を理解することで、既存スタッフの定着率の向上を図りつつ、求職者のニーズに応えられます。

働くにあたって重要なこと 美容師が働くにあたって重要なこと(引用:ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023

美容職業を辞めた・離れた理由 美容職業を辞めた・離れた理由(引用:ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023

加えて、人手不足状態だからこそ求職者目線に立つことが重要です。

人手不足状態では、即戦力となる実力のある経験者は魅力的ですが、同時に引き合いも強く、さらには独立開業をすることも考えられるため、それらの選択肢に比べ自社が魅力的かを考える必要があります。
また、人手不足ですぐに人が欲しいという求人は、忙しい・業務負荷が高いと思われ嫌煙されることも起こりうるので、求職者にとってのメリットや魅力に変換して伝える必要があります。

求職者の期待を理解し、求人広告や選考の際にその期待に沿うように伝えると、応募率・採用率の向上につながります。自社が伝えたいことを伝えるのではなく、求職者がなぜ転職を考えていて、転職先には何を求めるのかを想像し、求職者に寄り添って伝えることが大切です。

まとめ

  • 人手不足だからといってすぐに採用をするのではなく、まずは自社の状況から取り組むべき要因を見つける。
  • 業務の効率化・スタッフの定着率改善など、既存の環境の改善でできることがあればそこから取り組む。
  • 採用が必要であれば、求職者の動向や気持ちを理解し寄り添うことで採用率を上げる。
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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。