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店舗スタッフの教育を成功させるには?よくある課題やポイントを解説

店舗スタッフの教育を成功させるには?よくある課題やポイントを解説

店舗を経営するうえで、スタッフの教育は欠かせないものです。しかし、教育に取り組んでいるものの、思ったように教育が進まず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

スタッフへの教育がうまく進んでいない店舗は、共通の課題を抱えているケースが少なくありません。教育がうまくいっていないときのサインに気づき、対処することが重要です。

本記事では、店舗スタッフに教育が必要な理由やよくある課題とともに、教育がうまくいっていないときのサインや教育を成功させるポイントについて解説します。

店舗スタッフに教育が必要な理由

店舗スタッフに教育が必要な理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 人材を有効に活用するため
  • 外部からの信頼を得るため
  • 生産性を高めるため

ここでは、それぞれの理由について解説します。

人材を有効に活用するため

近年、日本では少子高齢化が進み、労働人口は減少傾向です。厚生労働省が公表した「人材開発政策の現状と課題について」によると、日本の総人口は2019年の1億2617万人をピークに減少が続いており、2065年には9000万人を下回ると見込まれています。

2065年には高齢化率が38.4%まで上昇すると予測され、労働人口は大きく減少し、優秀な人材を新たに確保することは現在よりも難しくなるでしょう。一度採用したスタッフが離職した場合、自社が求める人材を再び採用するのは簡単ではありません。

そのため、既存スタッフのモチベーションを高め、スキルアップを支援することが大切です。既存スタッフへの教育を通じて能力を引き出し、長く活躍してもらうことが、これからの店舗運営には不可欠といえます。

外部からの信頼を得るため

店舗スタッフへの教育は、店舗がお客様や地域社会といった外部から信頼を得るためにも必要です。店舗で働くスタッフは、お客様の目に直接触れる存在であり、いわば「店舗の顔」です。スタッフ一人ひとりの接客態度や言葉遣いが、店舗全体の印象を左右します。

スタッフのスキルやマナーが高ければ、店舗の雰囲気も自然と良くなり、お客様の満足度も向上するはずです。顧客満足度が上がれば良い評判が広がり、店舗に対する外部からの評価も高まります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」によると、能力開発や人材育成が顧客満足度の向上に「効果がある」と回答した企業が約8割にのぼりました。

店舗スタッフへの教育は、お客様からの評価を高め、店舗の信頼性を着実に築き上げていくうえで重要な取り組みといえるでしょう。

生産性を高めるため

スタッフ間でスキルや知識に差がある場合、お客様に提供するサービスの質を一定に保つことは困難です。経験の浅いスタッフの業務を他のスタッフが手伝ったり、ミスやトラブルが発生した際の対応に時間を取られたりすると、店舗全体の業務効率は下がります。

教育を通じて、業務に必要なノウハウやスキルを全スタッフで共有し、スタッフ一人ひとりが自身の能力を十分に発揮できるようになれば、店舗全体の生産性は向上します。厚生労働省の資料によると、能力開発に積極的な企業で働く従業員は、仕事に対するモチベーションが上昇しやすい傾向がわかりました。

店舗全体の生産性を向上させる観点からも、スタッフ教育は欠かせない取り組みといえます。

店舗スタッフの教育でよくある課題

店舗スタッフの教育でよくある課題として、以下のものが挙げられます。

  • 育成を行う時間と余裕がない
  • 育成の知識やスキルが不足している
  • 目標を設定せずに教育している

これらの課題を理解し、対策を講じることが、効果的な人材育成につながります。

育成を行う時間と余裕がない

厚生労働省が公表した「人材開発政策の現状と課題について」によると、多くの企業が人材育成の問題点として「人材育成を行う時間がない」ことを挙げています。

1.人材育成に関する問題があるとする事業所及び問題点の内訳-1

本来、スタッフ教育も業務のひとつであるものの、日々の店舗運営や接客などの通常業務を優先してしまい、教育のための時間や精神的な余裕を確保できないケースは少なくありません。

教育の重要性を認識し、意識的に教育時間を捻出する工夫が求められます。現状の課題と、育成によってスタッフがどのように成長し店舗に貢献できるか、具体的な将来像を示すことも有効でしょう。人事評価制度の中に、教育への貢献度や部下の育成に関する項目を加える見直しも、時間確保を後押しするひとつの方法です。

育成の知識やスキルが不足している

教育のための時間を確保できても、教える側に育成の知識やスキルが不足していると、効果的な教育ができません。先に挙げた厚生労働省の「人材開発政策の現状と課題について」によると、人材育成における問題点として「指導する人材が不足している」ことを多くの企業が挙げています。

株式会社Hajimariが実施した調査でも、社員研修の課題として「上司の育成能力・指導意識不足」が上位にきていました。

2.社員研修の課題

店舗で優れた実績を上げる能力と、部下や後輩を育てるために必要なスキルは別物です。スタッフ一人ひとりの個性や得意不得意によっても、適した教え方は異なります。

また、教育を担当する人が頻繁に変わると、教育内容や指導方法に一貫性がなくなり、教育に再現性がなくなる懸念もあります。教育の成果を安定して出すためには、教育を担当する人材自身の育成にも力を入れることが重要です。社内での育成が難しい場合は、外部の研修機関などの活用もひとつの方法です。

目標を設定せずに教育している

教育時間や教育担当者のスキルがある場合でも育成が進まない場合、明確な目標を設定せずに教育を行っている可能性があります。教育を行う際に具体的な目標が設定されていない場合、何をどのレベルまで習得すればよいのかが曖昧になります。教育の効果を客観的に測定することも難しいでしょう。

その結果、習得したスキルの定着度が低かったり、目標達成までに必要以上の時間がかかったりする場合があります。厚生労働省が実施した調査によると、上司からのフィードバックが少ない職場では「働きにくい」と感じる従業員が多い一方、頻繁なフィードバックが行われている事業所では「働きやすい」と感じる従業員が多いことがわかりました。

3.上司からのフィードバックの頻度と働きやすさ

効果的な教育をするためには、具体的な目標設定と定期的な効果測定、フィードバックを行うことが重要です。

店舗スタッフの教育がうまくいっていないときのサイン

店舗スタッフの教育が計画通りに進んでいない場合、スタッフからのコミュニケーションの減少や、スタッフのモチベーション低下などのサインが現れることがあります。教育効果を高めるためには、これらのサインを見逃さず、早期に対応するのが重要です。

スタッフからのコミュニケーションが減っている

本来、スタッフは上司や教育担当者を信頼していれば、業務を進めるうえでコミュニケーションが重要だと理解し、積極的に関わろうとします。しかし、上司や教育担当者への信頼感や関係性が崩れている場合、スタッフは心理的な安全性を感じられなくなり、自らコミュニケーションを取ることをためらうようになります。

具体的に挙げられる現象は以下のとおりです。

  • スタッフから積極的に業務報告をしてこない
  • スタッフから業務の相談を受ける機会が減った
  • スタッフが自己判断で業務を進めることが増えた

スタッフからのコミュニケーションが以前より少ないと感じた場合、教育方法や関係性を見直す必要があります。

経営側がスタッフの現状を理解できていない

経営側がスタッフの現状を正確に把握できていない状態も、教育が停滞しているサインといえます。効果的な育成を行うためには、スタッフ一人ひとりのスキルレベルや課題を把握し、状況に応じたサポートや目標設定をする必要があります。

しかし、経営側がスタッフの現状を把握していない場合、適切な指導ができず、スキルがなかなか身につきません。例えば、以下の状況に陥っている場合は注意が必要です。

  • 経営側が多忙でスタッフの様子を十分に観察できていない
  • スタッフの進捗状況の把握は自己申告に頼っている
  • 教育担当者にスタッフの育成を任せたままにしている

スタッフの状況を定期的に確認し、適切な関与を続けることが、効果的な教育には不可欠です。

スタッフのモチベーションが低下している

育成が順調に進み、できる業務が増えていけば、スタッフはやりがいや達成感を実感し、仕事への意欲は自然と高まります。しかし、育成が計画通りに進まず成長を感じられない状況が続くと、やりがいや達成感を得られず、モチベーションが低下しかねません。

モチベーション低下のサインとして挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 業務に対する積極性や主体性がなく上司の指示を待つようになった
  • 業務外と業務中の表情や態度が異なるようになった
  • 以前よりもスタッフの口数が少なくなった

スタッフの様子に変化が見られたら、育成方法や目標設定が本人のレベルに合っていない可能性があります。スタッフのモチベーションの変化に早期に気づき、迅速に対応することが重要です。

店舗スタッフの教育を成功させるポイント

店舗スタッフの教育を成功させるためには、理念を伝えたりマニュアルを作成したりといったポイントがあります。これらのポイントを押さえた取り組みが、スタッフの成長と店舗の発展につながるでしょう。ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

理念を伝える

店舗がどのような考えや価値観を大切にして運営しているのかをスタッフが理解すれば、日々の業務で自分がどのように行動すべきかがわかるようになります。理念への共感は、仕事への誇りややりがいにも影響します。そのため、教育のはじめに、スタッフには店舗の理念や方針を伝え、理解してもらうことが重要です。

「東京ヴァンテアン」はスタッフに配布した手帳に企業理念やコンセプトなどを記載し、いつでも確認できるようにしています。

カリキュラムのスケジュールは、毎年スタッフ全員に配布している手帳に記載されていて、いつでも自分の成長度合いを実感することができます。

ここまででお話させていただいた企業理念やコンセプト、毎年のテーマが記載されています。ちなみに2024年のテーマは「自身の武器を作ろう」で、美容師として自分の得意な技術、やりたいことを見つけてよりよい美容師を目指そうという内容です。

引用:モアリジョブ|東京ヴァンテアン 取締役社長 中林章 さん

マニュアルを作成する

わかりやすい業務マニュアルがあれば、作業中に不明点が生じてもスタッフ自身で確認でき、作業時間の短縮につながります。マニュアルは、新人スタッフの指導や業務の引き継ぎにも活用できるため、研修に要する時間を削減する効果も期待できます。

育成マニュアルを作成し、教育自体を業務として標準化するのも有効な手段です。育成マニュアルを整備すれば、教育担当者による指導内容のばらつきや、日によって指導内容が変わってしまうことを防げます。

文章やイラストに加えて、動画も活用するとよいでしょう。マニュアルの活用は、教育の質を安定させ、スタッフがスムーズに業務を習得できるようにサポートできる有効な手段です。マニュアルはさまざまなケースを想定することがポイントです。

ハーブピーリング専門店「EMILUCA(エミルカ)」では、3種類のマニュアルを用意し、使い分けています。

弊社は「技術」「接客」「肌について」、3つのマニュアルを用意しています。これらは全て私の15年ほどの美容業経験をベースに作成しています。

総ページ数は200ページ超えとかなりボリュームがあり、読み解くのに時間がかかるのですが(笑)。マニュアルをマスターすれば、未経験者でも95%のリピート率が見込めるコツが分かるようにしました。「本当?」と思われるかもしれませんが、実際にエステ未経験だったアイリストの方にマニュアルを元に勉強いただいた結果、研修後にはリピート率95%を達成しているんですよ。

引用:モアリジョブ|EMILUCA(エミルカ) 経営者 佐々木沙織 さん

マニュアルの作り方については、以下の記事で詳しく解説しています。

人材に合わせた教育を実施する

店舗で働くスタッフは、社会人経験の長さや入社時点でのスキルレベルが異なります。全員に同じ内容の教育を画一的に行うだけでは、個々のレベルに合わず、途中でつまずいてしまう可能性があるでしょう。

スタッフの現在のスキルレベルを把握し、必要に応じて個別の教育プランを作成すれば、一人ひとりに合わせた教育ができます。スキルレベルの把握には、スキルチェックシートを活用したり、学習状況やスキルを可視化できるシステムを導入したりするとよいでしょう。

厚生労働省が提供している職業能力の指標であるキャリアマップは、実務での活用を想定して作られており、現場業務を担う店舗やサロンスタッフ向けのものも存在しています。

スタッフの個性に合わせた教育をするうえで参考になるのが、DiSC理論です。DiSC理論とは、人の行動パターンを4つのタイプに分類するコミュニケーション理論です。スタッフの行動パターンに合わせた教育をすることにより、効率的な育成につながります。

整体サロン「POWWOW」では、若年層だけでなく、未経験の30~40代向けの研修を用意しています。

セラピストの仕事をやってみたいけど、体力に自信がなくて足踏みしている30~40代の未経験の方が結構いらっしゃるんですよね。でも、うちのようにその人に合わせた研修を用意しているサロンも増えています。50代でデビューされた方もいらっしゃるので、やってみたいというその気持ちをぜひ大事にしてほしいと思います。

引用:モアリジョブ|POWWOW 育成・研修担当 泉安奈 さん

短いスパンで目標を設定した教育計画を立てる

短い期間で達成可能な具体的な目標を設定することは、スタッフの成長実感とモチベーション維持に効果的です。目標を設定する際は、以下のポイントに考慮しましょう。

  • 内容が具体的である
  • 達成度を測定できる
  • 努力すれば達成できる
  • 店舗全体の目標と関連性がある
  • 達成までの期限が明確である

スタッフごとに能力や経験が異なることを踏まえ、それぞれに適したレベルの目標を設定することも重要です。教育計画は「計画 → 実行 → 評価 → 改善」のPDCAサイクルを意識して立てると、継続的な改善につながります。

見て覚えるだけで仕事を覚えられる人は多くありません。知識を教えるだけでなく、実際に業務を経験する機会を設け、小さな成功体験を積ませるようにしましょう。

株式会社オブでは、短期、中期、長期の3つに分けた目標設定をして教育しています。

夢を叶えるためには短期、中期、長期の3つに分けた目標設定が大切です。10年後にサロンを持つという長期目標があるとすると、サロンに入りたてのアシスタントであれば、そのためには、3年後にスタイリストになっていなければいけないという中期目標ができ、そのために、今はいろんな勉強をしておくなど短期目標ができる。そうして目標を具体的にしていけば、ひとつひとつのハードルはそんなに高くありません。ざっくりした目標だけだと、具体的な行動ができないんです。具体的に行動に落としていけば、必ず要所要所でいいアドバイスをしてくれる人が出てくるはずです。

引用:モアリジョブ|オブ 代表 古里オサム さん

評価制度を整備する

スタッフのスキルや店舗への貢献度に応じた評価制度を整備し、その評価が給与や待遇に反映されるようにすれば、スタッフの仕事への意欲向上につながります。目標を達成した場合は、昇給や賞与、表彰、昇進といった形で報いる制度を設けるとよいでしょう。

また、教育を受ける側のスタッフだけでなく、指導役となる教育担当者の貢献度を評価する制度も整備すると、教育への意欲を高める助けになります。担当者の貢献が認められる環境は、教育の質の向上にもつながるでしょう。

est-r.Fukuoka福岡博多店では、スタッフ全員が一人ひとりを評価する制度を導入しています。

自社でつくった育成シートをもとにした、「評価制度」も特徴的。これは月に1回、スタッフ全員が一人ひとりを評価するもので、たとえ目上の人だろうと、忖度は一切なし!

チェック項目は、「お客さまの名前を呼んでいるか」「きちんと目線を合わせているか」など計20個。各項目ごとにA~Eランクをつけ、最後にフリーコメントで「GOODポイント」を記入する。

引用:ホットペッパービューティーアカデミー|est-r.Fukuoka福岡博多店 

教育担当者への教育を実施する

自身がプレイヤーとして高いパフォーマンスを発揮する能力と、他者にわかりやすく物事を教え、導く能力は、異なるスキルが求められます。教育担当者に対して、効果的な指導方法やコミュニケーションスキル、フィードバックの方法などに関する教育を実施したうえでスタッフの育成に取り組んでもらえれば、より質の高い教育が実施できます。指導方法に悩む教育担当者の負担軽減にもつながるでしょう。

美容サロン「FILMS」では、役職メンバーに対し、コーチングの勉強会を実施しています。

例えば自分の技術の進捗や抱えている悩みなどを出せる場として、役職のあるメンバーとの1on1ミーティングを全スタッフが毎月行います。その精度を上げるために、役職メンバーには講師を入れたコーチングの勉強会もしているんです。

引用:モアリジョブ|FILMS 代表 若林紀元 さん

スタッフのフォロー体制を作る

スタッフが安心して業務に取り組み、成長していけるよう、精神的なフォロー体制を整えることも大切です。新しい環境や業務に慣れる過程では、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、思うようにスキルが身につかなかったりして、不安や悩みを抱えてしまうスタッフも存在します。

そのようなスタッフに対し、定期的に面談を実施したり日々の業務の中でフィードバックの機会を設けたりすることで、抱える不満や不安に早期に気づき、対応できる仕組みを作れます。

先輩スタッフが、新人や若手スタッフの相談役となる「メンター制度」を導入することもひとつの方法です。厚生労働省が公表した「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によると、メンター制度から得られる直接的な効果で、40%以上の回答を得た効果は以下のとおりでした。

  • メンターの人材育成意識が向上:65.3%
  • メンティ(被指導役)のモチベーション向上:63.6%
  • メンティの職場環境への職場環境への適応:58.5%
  • メンティの知識・スキル獲得:48.3%
  • メンティの定着率の向上:47.5%
  • 部門や職種をまたがるコミュニケーションの活性化:47.5%
  • メンティの視野拡大:44.9%

メンター制度を導入する際は、関係者への目的や役割に関する事前説明や、必要に応じた研修会の開催などの準備が必要です。FORTE Lei青山では、新人にメンターをつけ、スタッフのフォローに成功しています。

メンターという教育係の先輩が新人それぞれについてくれるんですね。僕の場合は、現在のお店のオーナーが最初の配属先でメンターになってくれたのですが、技術や仕事全般に関わることはもちろん、プライベートの相談まで聞いてもらっていたほど。そのときは、つくづくFORTEにしてよかったなと思いました。

引用:モアリジョブ|FORTE Lei青山 美容師 岳上拓実 さん

学びの環境を提供する

教育は一度実施したら終わりではありません。継続的に学び続けられる環境を整えることで、スタッフは常に自身のスキルアップを目指し、業務の質の向上につながります。

例えば、新しい技術や薬剤、接客トレンドに関する研修を定期的に実施し、常に最新の情報を提供するとよいでしょう。スタッフが空いた時間を利用して自主的に学べるよう、社内資料やオンライン学習コンテンツなどの教材を用意したり、外部セミナーへの参加を支援したりするのも有効です。

また、教育のための時間を確保することも重要です。可能な範囲で勤務時間内に教育時間を設ける仕組みを作れば、時間外での学習負担に対するスタッフの不満を軽減し、学習意欲を維持しやすくなります。

ネイル&アイラッシュTerraでは「研修を最優先にする」方針で良質なサービス提供に取り組んでいます。

ちなみに、『研修を最優先にして、しっかりと時間を取る』という研修スタイルはオープン当初から変わっていません。売上はもちろん大切ですが、技術研修会は良質なサービスを生むためには欠かすことができない時間です。

引用:モアリジョブ|ネイル&アイラッシュTerra 取締役事業部長 北川亜由美 さん

チームワークを強化する活動を実施する

チームワークを強化する活動は、協力的な職場環境と円滑な業務遂行の基盤となります。例えば懇親会や社内イベント、共同でのプロジェクトなどを実施すれば、スタッフ間のコミュニケーションが促進され、部署や役職を超えた結束力が強まります。

仕事以外の活動をすることにより互いの人となりや考え方を理解し、尊重し合う関係が築かれれば、日々の業務においても自然と協力し合い、困ったときに支え合う雰囲気が生まれるでしょう。

「SENSE beauty salon」では、抽象的な議題についてディスカッションする場を設けスタッフの考え方を理解し合う取り組みをしています。

時間だけはたくさんあったので、マネジメントに時間を割くことにしました。具体的には、店長教育、組織やルール作りをしたほか、ミーティングの時間を取って、抽象的な議題についてみんなで考えたり、ディスカッションする時間も作りました。たとえばスタッフがどんな理由で美容師になって、どんなことを成し遂げたいか、美容師としてどう輝きたいかなど、抽象度の高い問いをたくさん立てました。正解はとくにないので、スタッフも考え続けることになります。それまでは日々の業務に忙殺されていましたが、自分はどうありたいか、何を目指すかということを意識するきっかけにもなったと思います。

引用:モアリジョブ|SENSE beauty salon オーナー 木田昌吾 さん

育成能力が高い人材を採用する

スタッフ育成の経験や能力を持つ人材を採用することで、店舗の教育体制を強化できます。店舗数が増えていくような場合、各店舗の運営管理や人材育成を任せられる人材がいなければ、サービスの質低下や業務効率の悪化を招き、店舗全体のパフォーマンスに影響が出る可能性があるでしょう。

特に、店長やリーダーといったマネジメント層に、育成能力の高い人材を配置すれば、店舗運営の質を向上させられます。そのためには、採用力を強化するための戦略的な取り組みが必要です。

採用力の向上を図る際は、まずどのようなスキルや経験を持つ人材を求めているのかを明確にすることから始めましょう。ターゲットが明確になれば、求職者に響くメッセージや効果的な求人媒体の選定、適切な選考基準などを具体的に検討できます。

リタ株式会社は、自社の理念に共感してもらえた人材を採用し、店舗の成長につなげています。

いい人材が集まってくれたことが、とても大きいと思っています。弊社の理念に共感し、お店を展開していくことを一緒に楽しみながら成長してくれるスタッフが揃ったときに、急激に成長をしたと感じます。

引用:モアリジョブ|リタ株式会社 営業最高執行責任者 小森谷亮太 さん

リジョブでは、採用ターゲットの決め方や給与設定、求人サイト選びなど、採用成功のためのノウハウを提供しています。手順を詳しく知りたい場合は、無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。

まとめ

店舗スタッフへの教育は、人材の活用や外部からの信頼獲得、生産性向上の面から、欠かせないものです。ただし、店舗スタッフへの教育では、以下の課題を抱えている企業が多く存在します。

  • 育成を行う時間と余裕がない
  • 育成の知識やスキルが不足している
  • 目標を設定せずに教育している

店舗スタッフの教育が計画通りに進んでいない場合、スタッフからのコミュニケーションの減少や、経営側の現状把握不足、スタッフのモチベーション低下などのサインが現れることがあります。これらのサインを見逃さず、早期に対応しなければなりません。

本記事で解説したポイントを参考に、自店の教育状況を把握したうえで、必要な対策を講じましょう。

田仲ダイ(Tanaka Dai) プロフィール画像
執筆者情報
田仲ダイ(Tanaka Dai)
エンジニアリング会社にて、人事・採用・従業員評価・業務管理・部門管理・社内監査など、さまざまな業務に計14年従事。これまでの経験を活かし、bizリジョブ編集部では、採用や店舗経営に役立つリアルな情報を記事として発信する。